〔第1の実施の形態〕
以下に、本発明に係る第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、プラズマディスプレイパネルとなる基板に所定のパターンを形成する印刷装置を例示して説明するがこれに限られない。
[印刷装置の構成]
まず、第1の実施の形態の印刷装置の構成について、図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す正面図である。図2は、基板に印刷された各電極および各電極のアライメントマークを示す模式図であり、(A)は透明電極およびこの透明電極のアライメントマークが印刷された状態、(B)は(A)の状態からバス電極およびこのバス電極のアライメントマークが印刷された状態、(C)は(B)の状態における透明電極のアライメントマークおよびバス電極のアライメントマークの相対位置関係を表す。
図1において、100は印刷装置である。この印刷装置100は、プラズマディスプレイパネルとなる略矩形板状の基板Q1に、印刷版P1に形成された所定のパターンにしたがってインク材料を転写する装置である。この印刷装置100は、基板Q1に所定のパターンを形成する印刷部200と、基板Q1に形成されたパターンを認識するマーク認識手段としてのパターン認識部300と、印刷部200の温度を適宜調整する温度調整部400と、などを備えている。
印刷部200は、基板Q1が配設される基板載置部210と、印刷版P1が配設される印刷版載置部220と、印刷版P1に塗布されたインク材料を基板Q1に転写するブランケットであるブランケットローラ230と、印刷版P1にインク材料を塗布する図示しないインク塗布部と、印刷部200の動作を制御する図示しない印刷制御部と、などを備えている。
基板載置部210は、例えば金属などの材料により略矩形箱状に形成されている。この基板載置部210の上面は、例えば略矩形状の基板Q1が載置される載置面211とされている。この載置面211には、基板Q1の載置位置を決めるための図示しない位置決め手段が設けられている。ここで、位置決め手段としては、載置面211から略短尺柱状に突出された例えば複数の位置決め部材や、載置面211に開口形成された吸着孔から基板Q1を吸着する吸着手段を設けた構成などが例示できるがこれに限られない。基板Q1の表面には、例えば図2(A)に示すように、略短尺細長矩形状を有する例えば10個の透明電極G1と、これら透明電極G1のアライメントマークである基板上に設けられたマークとしての基板マークH11,H12と、が印刷されている。
印刷版載置部220は、伝熱性を有する例えば金属などの材料により、基板載置部210の高さと略同一の高さを有する略矩形箱状に形成されている。この印刷版載置部220は、基板載置部210に隣接されている。印刷版載置部220の上面は、印刷版P1が載置される載置面221とされている。この載置面221には、印刷版P1の載置位置を決めるための図示しない位置決め手段が設けられている。ここで、位置決め手段としては、基板載置部210と同様の構成の他、例えば印刷版P1の隅部に挿通された図示しないねじが螺合されるねじ孔を設けた構成などが例示できるがこれに限られない。印刷版P1は、例えば鋼板やガラス基板などの熱膨張係数α1がa×10−6m/℃の材料により、例えば基板Q1と略同一の略矩形状に形成されている。この印刷版P1の表面には、基板Q1に印刷される例えば図2(B)に示すような、略細長矩形状を有する例えば2個のパターンとしてのバス電極Eと、これらバス電極Eのアライメントマークである基板に印刷されるマークとしての印刷マークF1,F2と、に対応する図示しない凹部が形成されている。
ブランケットローラ230は、例えばゴムなどの材料により略円柱状に形成されている。このブランケットローラ230は、図示しない印刷ヘッダにより、印刷版載置部220の上方に配設される状態に、かつ、軸方向が印刷版載置部220から基板載置部210にかけての方向R1(以下、印刷方向R1と称す)と略直交する状態に保持されている。このブランケットローラ230は、印刷ヘッダにより軸を中心に適宜回転されるとともに、印刷方向R1およびこの印刷方向R1と反対の方向R2(以下、退行方向R2と称す)に適宜移動される。
インク塗布部は、例えば略円柱状に形成されている。このインク塗布部の円周面には、図示しないインク供給部により任意の厚さのインク材料が適宜塗布される。インク塗布部は、印刷ヘッダにより、例えばブランケットローラ230の退行方向R2側に配設される状態に、かつ、軸方向がブランケットローラ230の軸方向と略一致する状態に保持されている。このインク塗布部は、印刷ヘッダにより軸を中心に適宜回転される。
印刷制御部は、ブランケットローラ230やインク塗布部などの動作を制御することにより印刷を適宜実施する。具体的には、印刷制御部は、インク供給部を制御してインク塗布部にインク材料を塗布する。そして、印刷ヘッダを印刷版P1の退行方向R2側から印刷方向R1へ移動させ、インク塗布部を印刷版P1に接触させた状態で回転移動させる。これにより、インク塗布部に塗布されていたインク材料が印刷版P1に塗布される。次に、印刷ヘッダを、ブランケットローラ230およびインク塗布部が印刷版P1に接触しない状態で印刷版P1の退行方向R2側へ移動させる。この後、インク供給部によりインク塗布部にインク材料を塗布する。
そして、印刷制御部は、印刷ヘッダを印刷方向R1へ移動させ、ブランケットローラ230を印刷版P1に接触させた状態で回転移動させるとともに、インク塗布部を印刷版P1に接触させた状態で回転移動させる。これにより、印刷版P1に塗布されていたインク材料が、印刷版P1に形成されたパターンにしたがってブランケットローラ230に受理(転写)される。また、インク塗布部に塗布されていたインク材料が印刷版P1に塗布される。この後、印刷制御部は、印刷ヘッダをさらに印刷方向R1へ移動させ、ブランケットローラ230を透明電極G1および基板マークH11,H12が印刷されている基板Q1に接触させた状態で回転移動させる。これにより、ブランケットローラ230に受理されていたインク材料が基板Q1に転写され、基板Q1に例えば図2(B)に示すようなバス電極Eおよび印刷マークF1,F2が印刷される。
パターン認識部300は、基板Q1に印刷された各マークF1,F2,H11,H12を撮像する撮像部310と、撮像部310にて撮像した各マークF1,F2,H11,H12の位置などを認識する画像処理装置320と、などを備えている。
撮像部310は、画像処理装置320に各種情報が送受信可能に接続されている。この撮像部310は、基板載置部210の上方における印刷方向R1側に配設されたCCDカメラ311と、退行方向R2側に配設されたCCDカメラ312と、を備えている。CCDカメラ311は、基板載置部210に載置された基板Q1の印刷マークF1印刷部分に対応する位置に配設されている。このCCDカメラ311は、画像処理装置320の制御により、基板Q1に印刷された各マークF1,H11を適宜撮像する。そして、各マークF1,H11の印刷位置に関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp1を生成して、画像処理装置320へ出力する。また、CCDカメラ312は、基板載置部210に載置された基板Q1の印刷マークF2印刷部分に対応する位置に配設されている。このCCDカメラ312は、画像処理装置320の制御により、基板Q1に印刷された各マークF2,H12を適宜撮像する。そして、各マークF2,H12に関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp2を生成して、画像処理装置320へ出力する。なお、ここでは、撮像部310にCCDカメラ311,312を設けた構成について例示したが、これに限らず例えば以下のような構成などとしてもよい。すなわち、CCDカメラ311のみを設け、このCCDカメラ311を移動させて各マークF1,H11,F2,H12を撮像することにより、これらに関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp1を生成する構成などとしてもよい。また、基板マークおよび印刷マークが4つずつ印刷される構成の場合には、この4つの各マークに関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp1を生成する構成などとしてもよい。
画像処理装置320は、温度調整部400に各種情報が送受信可能に接続されている。この画像処理装置320は、撮像部310からの印刷位置信号Sp1,Sp2に基づいて、印刷精度に関する印刷精度情報が記載された印刷精度信号Sseを生成する。具体的には、画像処理装置320は、撮像部310から印刷位置信号Sp1,Sp2を取得する。そして、印刷位置信号Sp1に記載された印刷位置情報に基づいて、例えば図2(C)に示すような各マークF1,H11の印刷方向R1と略平行な方向における相対距離Δx1と、印刷方向R1と略直交する方向における相対距離Δy1と、を演算する。この後、これら相対距離Δx1,Δy1に基づいて、各マークF1,H11の中心座標を求める。また、同様にして、印刷位置信号Sp2に基づいて、各マークF2,H12の相対距離Δx2,Δy2を演算する。この後、これら相対距離Δx2,Δy2に基づいて、各マークF2,H12の中心座標を求める。次に、画像処理装置320は、印刷マークF1,F2の中心座標に基づいて、印刷マークF1,F2間のピッチである印刷ピッチを演算する。また、基板マークH11,H12の中心座標に基づいて、基板マークH11,H12間のピッチである基板ピッチを演算する。そして、印刷ピッチおよび基板ピッチの差(以下、基板印刷差と称す)を求める。また、印刷ピッチおよび基板ピッチの大小関係(以下、ピッチ大小関係と称す)を認識する。この後、基板印刷差およびピッチ大小関係に関する印刷精度情報が記載された印刷精度信号Sseを生成する。そして、この印刷精度信号Sseを温度調整部400へ出力する。
なお、例えば略細長矩形状の電極を形成するなど、電極の長手方向と略直交する方向のみの印刷精度のみが重要な場合、この略直交する方向のみの相対距離に基づいて、基板印刷差を求める構成などとしてもよい。例えば、本実施の形態において、バス電極Eの長手方向と略直交する方向における相対距離Δx1,Δx2のみを演算することにより基板印刷差を求める構成などとしてもよい。
温度調整部400は、画像処理装置320からの印刷精度信号Sseに基づいて、印刷版載置部220の温度を適宜調整する。この温度調整部400は、印刷版載置部220の温度を検知するための例えば4つの熱伝対410と、印刷版載置部220の温度を適宜設定する温度設定手段420と、この温度設定手段420にて設定する温度を制御する温度制御手段430と、などを備えている。
熱伝対410は、温度制御手段430に各種情報が送受信可能に接続されている。熱伝対410は、印刷版載置部220の内部における例えば載置面221近傍に、かつ、印刷版P1の載置部分に対応する位置に配設されている。熱伝対410は、例えば印刷方向R1に略同一間隔で配設されている。熱伝対410は、温度制御手段430により制御され、印刷版載置部220の温度に対応する測定温度信号Sonを適宜生成する。そして、この測定温度信号Sonを温度制御手段430へ出力する。なお、印刷版載置部220の温度に対応した測定温度信号Sonを生成する構成としては、例えば想像線で示すように印刷版載置部220の例えば上方に放射温度計411を配設する構成など、温度に対応した測定温度信号Sonを生成可能ないずれの構成を用いてもよい。
温度制御手段430は、温度設定手段420に各種情報が送受信可能に接続されている。この温度制御手段430は、画像処理装置320からの印刷精度信号Sseおよび熱伝対410からの測定温度信号Sonに基づいて、温度設定手段420で設定する温度を適宜制御する。具体的には、温度制御手段430は、熱伝対410から測定温度信号Sonを取得する。そして、この測定温度信号Sonに記載された温度を、例えばn回目(nは自然数)の印刷時における印刷版載置部220の設定温度Tnとして認識する。また、温度制御手段430は、画像処理装置320から印刷精度信号Sseを取得する。そして、印刷精度信号Sseに記載された印刷精度情報に基づいて、基板印刷差と、印刷ピッチおよび基板ピッチの大小関係と、を認識する。この後、この基板印刷差の絶対値が予め設定されたずれ量規定値よりも大きいと判断した場合、この基板印刷差の絶対値を印刷版P1の熱膨張係数α1で除した値を演算補正温度ΔUnとして決定する。そして、温度制御手段430は、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、設定温度Tnから演算補正温度ΔUnを減じた温度を、(n+1)回目の印刷時における印刷版載置部220の設定温度T(n+1)として決定する。また、温度制御手段430は、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、設定温度Tnに演算補正温度ΔUnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する。そして、温度制御手段430は、印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)となるように、印刷版載置部220の温度設定を要求する旨の設定温度情報が記載された設定温度信号Steを生成する。この後、この設定温度信号Steを温度設定手段420へ出力する。
温度設定手段420は、印刷版載置部220の内部における例えば載置面221近傍に、かつ、印刷版P1の載置部分に対応する位置に配設されている。この温度設定手段420は、温度制御手段430により制御され、温度制御手段430からの設定温度信号Steに基づいて、印刷版載置部220の温度を適宜設定する。この温度設定手段420としては、ヒータを備えた構成、冷水や温水あるいは冷風や温風により温度を設定する構成など、温度設定が可能ないずれの構成を用いてもよい。
[印刷装置の動作]
次に、印刷装置100の動作を図3を参照して説明する。図3は、温度制御処理を示すフローチャートである。
まず、印刷装置100は、図3に示すように、印刷版P1を用いて例えば図2(A)に示すような透明電極G1および基板マークH11,H12が印刷された基板Q1への、バス電極Eおよび印刷マークF1,F2の印刷を実施する(ステップS101)。次に、印刷装置100は、この基板Q1の印刷が終了すると、パターン認識部300の撮像部310にて、基板Q1に印刷された各マークF1,F2,H11,H12を撮像する。そして、撮像部310は、この撮像した各マークF1,F2,H11,H12に関する印刷位置情報を生成して画像処理装置320へ出力する。この後、画像処理装置320は、撮像部310からの印刷位置情報に基づいて、印刷マークF1,F2および基板マークH11,H12の位置を認識する(ステップS102)。次に、画像処理装置320は、ステップS102において認識した各マークF1,F2,H11,H12の位置に基づいて、印刷のずれ量である基板印刷差を演算する(ステップS103)とともに、ピッチ大小関係を認識する。この後、画像処理装置320は、基板印刷差およびピッチ大小関係に関する印刷精度情報を生成して温度調整部400へ出力する。
そして、印刷装置100は、温度調整部400の温度制御手段430にて画像処理装置320から印刷精度情報を取得する。また、温度制御手段430は、熱伝対410から印刷版載置部220の温度に関する情報を適宜取得し、n回目の印刷時における印刷版載置部220の設定温度Tnを適宜認識する。そして、温度制御手段430は、基板印刷差の絶対値がずれ量規定値よりも小さいか否か、すなわち印刷のずれ量が規定内であるか否かを判断する(ステップS104)。
このステップS104において、温度制御手段430は、ずれ量が規定内であると判断した場合、設定温度Tnを(n+1)回目の印刷時における設定温度T(n+1)として設定する、すなわち印刷版載置部220の設定温度Tnを維持する(ステップS105)。この後、印刷装置100は、印刷制御部にて、例えば予め設定された枚数の印刷が終了したか否かを判断する(ステップS106)。このステップS106において、印刷制御部は、印刷が終了したと判断した場合、温度制御処理を終了する。一方で、ステップS106において、印刷制御部は、印刷が終了していないと判断した場合、ステップS101に戻る。
また、ステップS104において、温度制御手段430は、ずれ量が規定外であると判断した場合、基板印刷差などに基づいて演算補正温度ΔUnを演算する(ステップS107)。そして、温度制御手段430は、ピッチ大小関係、設定温度Tn、演算補正温度ΔUnに基づいて設定温度T(n+1)を決定する(ステップS108)。例えば、温度制御手段430は、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、設定温度Tnから演算補正温度ΔUnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、設定温度Tnに演算補正温度ΔUnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する。そして、この設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。
この後、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して設定温度T(n+1)を認識する。そして、印刷版載置部220が設定温度T(n+1)となるように温度調整を適宜実施する(ステップS109)。例えば、温度設定手段420は、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、印刷版載置部220の温度が設定温度Tnよりも演算補正温度ΔUnだけ低い温度になるように温度設定を実施する。そして、印刷版載置部220の温度が演算補正温度ΔUnだけ低い温度になると、この印刷版載置部220に載置された印刷版P1も演算補正温度ΔUnと略同一の温度だけ低い温度になる。この後、この印刷版P1の温度下降により印刷版P1が収縮し、この収縮した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチが小さくなる。ここで、演算補正温度ΔUnは、基板印刷差の絶対値を熱膨張係数α1で除することにより決定されている。このため、収縮した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチ、すなわち(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、基板印刷差の絶対値と略同一量だけ小さくなる。
また、例えば、温度設定手段420は、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、印刷版載置部220が設定温度Tnよりも演算補正温度ΔUnだけ高い温度になるように温度設定を実施する。そして、印刷版載置部220の温度が演算補正温度ΔUnだけ高い温度になると、この印刷版載置部220に載置された印刷版P1も演算補正温度ΔUnと略同一の温度だけ高い温度になる。この後、この印刷版P1の温度上昇により印刷版P1が膨張し、この膨張した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチが大きくなる。ここで、演算補正温度ΔUnは、上述したように決定されているので、膨張した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチ、すなわち(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、基板印刷差の絶対値と略同一量だけ大きくなる。この後、印刷装置100は、印刷制御部にてステップS106の処理を実施する。
[第1の実施の形態の作用効果]
上述したように、上記第1の実施の形態では、以下に示すような作用効果を奏することができる。
(1)印刷装置100は、パターン認識部300にて基板Q1に印刷される印刷マークF1,F2を認識する。次に、パターン認識部300は、印刷マークF1,F2間のピッチである印刷ピッチに関する印刷精度情報を生成して温度制御手段430へ出力する。この後、温度制御手段430は、印刷精度情報を取得して、印刷ピッチを大きくする場合、温度設定手段420で設定している設定温度Tnよりも高い温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、印刷ピッチを小さくする場合、温度設定手段420で設定している設定温度Tnよりも低い温度を設定温度T(n+1)として決定する。次に、温度制御手段430は、設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420に出力する。そして、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して、(n+1)回目の印刷時における印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)となるように温度設定を適宜実施する。この後、印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)になると印刷版P1が収縮または膨張し、(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、小さくまたは大きくなる。このため、印刷装置100は、例えば製造精度が異なる印刷版P1を用いた場合でも、印刷版載置部220の温度を適宜調整することにより印刷ピッチのばらつきを最小限に抑えることができる。したがって、印刷版P1を精度よく製造することなく、印刷精度を容易に高めることができる。
(2)パターン認識部300は、基板Q1に予め印刷されている基板マークH11,H12を認識する。次に、基板マークH11,H12間のピッチである基板ピッチと、印刷ピッチと、の差である基板印刷差を求める。そして、基板印刷差と、印刷ピッチおよび基板ピッチの大小関係と、に関する印刷精度情報を生成して温度制御手段430へ出力する。この後、温度制御手段430は、印刷精度情報を取得して、基板印刷差がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、温度設定手段420で設定している設定温度Tnよりも高い温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、基板印刷差がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、温度設定手段420で設定している設定温度Tnよりも低い温度を設定温度T(n+1)として決定する。このため、印刷装置100は、例えば製造精度が異なる印刷版P1を用いた場合でも、印刷版載置部220の温度を適宜調整することにより、基板印刷差をずれ量規定値よりも小さくでき、印刷マークF1,F2と基板マークH11,H12との相対位置関係を略同一にできる。したがって、印刷版P1を精度よく製造することなく、バス電極Eと透明電極G1との相対位置関係を略同一にでき、バス電極Eと透明電極G1との導通を適宜確実にとることが可能な印刷をすることができる。
(3)温度制御手段430は、基板印刷差を印刷版P1の熱膨張係数α1で除した値を演算補正温度ΔUnとして決定する。そして、温度制御手段430は、演算補正温度ΔUnに基づいて設定温度T(n+1)を決定する。このため、印刷装置100は、設定温度T(n+1)を印刷版P1の熱膨張係数α1に基づいて決定するので、印刷版P1の収縮または膨張に伴う印刷ピッチの変化量をより確実に制御できる。したがって、印刷精度をより高めることができる。
(4)温度制御手段430は、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、設定温度Tnに演算補正温度ΔUnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定し、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、設定温度Tnから演算補正温度ΔUnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。このため、温度制御手段430は、n回目の印刷時における設定温度Tnおよび演算補正温度ΔUnを加算または減算するだけの簡単な方法で設定温度T(n+1)を決定できる。したがって、設定温度T(n+1)を決定する処理を容易にかつ迅速にできる。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明に係る第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態および以下に示す第3の実施の形態では、第1の実施の形態の印刷装置と同様の印刷装置を例示して説明するがこれに限られない。なお、印刷装置の動作については第1の実施の形態と異なる動作について詳細に説明し、その他の動作については説明を省略または簡略化する。
[印刷装置の構成]
まず、第2の実施の形態の構成について、図1および図2(A)に基づいて説明する。
図1において、100は第2の実施の形態の印刷装置である。この印刷装置100は、第1の実施の形態のパターン認識部300および温度調整部400の動作内容を別の動作内容にしたものである。そして、印刷装置100は、印刷部200と、パターン認識部300と、温度調整部400と、などを備えている。
印刷部200は、基板載置部210と、印刷版載置部220と、ブランケットローラ230と、図示しない、インク塗布部と、印刷制御部と、などを備えている。基板載置部210の載置面211には、各電極E,G1や各マークF1,F2,H21,H22などのパターンが印刷されていない基板Q2が載置される。印刷版載置部220の載置面221には、例えば図2(A)に示すような、パターンとしての透明電極G2と、これら透明電極G2のアライメントマークである基板に印刷されるマークとしての印刷マークH21,H22と、に対応する図示しない凹部が形成された印刷版P2が載置されている。この印刷版P2は、例えば鋼板やガラス基板などの熱膨張係数α2がb×10−6m/℃の材料により、例えば基板Q2と略同一の略矩形状に形成されている。
パターン認識部300は、撮像部310と、画像処理装置320と、などを備えている。撮像部310は、CCDカメラ311と、CCDカメラ312と、を備えている。CCDカメラ311,312は、基板Q2に印刷された印刷マークH21,H22をそれぞれ適宜撮像する。そして、印刷マークH21,H22に関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp1,Sp2を生成して画像処理装置320へ出力する。画像処理装置320は、撮像部310からの印刷位置信号Sp1,Sp2に基づいて、印刷精度に関する印刷精度信号Sseを生成する。具体的には、画像処理装置320は、撮像部310からの印刷位置信号Sp1,Sp2に記載された印刷位置情報に基づいて、例えば図2(A)に示すような印刷マークH21,H22の中心座標を求める。次に、画像処理装置320は、印刷マークH21,H22の中心座標に基づいて、印刷マークH21,H22間の印刷ピッチを演算する。そして、この印刷ピッチに関する印刷精度情報が記載された印刷精度信号Sseを生成する。この後、この印刷精度信号Sseを温度調整部400へ出力する。
温度調整部400は、例えば4つの熱伝対410と、温度設定手段420と、温度制御手段430と、などを備えている。温度制御手段430は、画像処理装置320からの印刷精度信号Sseおよび熱伝対410からの測定温度信号Sonに基づいて、温度設定手段420の動作を適宜制御する。具体的には、温度制御手段430は、熱伝対410から測定温度信号Sonを取得して、この測定温度信号Sonに記載された温度を、印刷版載置部220の設定温度Tnとして認識する。また、温度制御手段430は、画像処理装置320から印刷精度信号Sseを取得して、この印刷精度信号Sseに記載された印刷精度情報に基づいて印刷ピッチを認識する。この後、この印刷ピッチが予め設定された最小許容値よりも小さいと判断した場合、最小許容値および予め設定された最大許容値の間に設定された所定距離としての設計値と印刷ピッチとの差(以下、設計印刷差と称す)の絶対値を求める。次に、この設計印刷差の絶対値を印刷版P2の熱膨張係数α2で除した値を演算補正温度ΔVnとして決定する。そして、温度制御手段430は、設定温度Tnに演算補正温度ΔVnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、温度制御手段430は、印刷ピッチが最大許容値よりも大きいと判断した場合、設計印刷差の絶対値を熱膨張係数α2で除した値を演算補正温度ΔVnとして決定する。この後、設定温度Tnから演算補正温度ΔVnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。そして、温度制御手段430は、印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)となるように、印刷版載置部220の温度調整を要求する旨の設定温度情報が記載された設定温度信号Steを生成する。この後、この設定温度信号Steを温度設定手段420へ出力する。
[印刷装置の動作]
次に、印刷装置100の動作を図4を参照して説明する。図4は、温度制御処理を示すフローチャートである。
まず、印刷装置100は、図4に示すように、印刷版P2を用いてパターンが印刷されていない基板Q2への透明電極G2および印刷マークH21,H22の印刷を実施する(ステップS201)。次に、印刷装置100は、この基板Q2の印刷が終了すると、パターン認識部300の撮像部310にて、基板Q2に印刷された印刷マークH21,H22を撮像する。そして、撮像部310は、この撮像した印刷マークH21,H22に関する印刷位置情報を生成して画像処理装置320へ出力する。この後、画像処理装置320は、印刷位置情報に基づいて、印刷マークH21,H22の位置を認識する(ステップS202)。次に、画像処理装置320は、ステップS202において認識した印刷マークH21,H22の位置に基づいて、印刷マークH21,H22間のピッチ量である印刷ピッチを演算する(ステップS203)。この後、画像処理装置320は、この印刷ピッチに関する印刷精度情報を生成して温度調整部400へ出力する。そして、温度調整部400の温度制御手段430は、画像処理装置320からの印刷精度情報を取得する。また、温度制御手段430は、熱伝対410から印刷版載置部220の温度に関する情報を適宜取得し、n回目の印刷時における印刷版載置部220の設定温度Tnを適宜認識する。そして、温度制御手段430は、印刷ピッチが最小許容値よりも大きくかつ最大許容値よりも小さいか否か、すなわち印刷マークH21,H22間のピッチ量が規定内であるか否かを判断する(ステップS204)。
このステップS204において、温度制御手段430は、ピッチ量が規定内であると判断した場合、設定温度Tnを(n+1)回目の印刷時における設定温度T(n+1)として設定する、すなわち印刷版載置部220の設定温度Tnを維持する(ステップS205)。この後、印刷装置100は、印刷制御部にて、例えば予め設定された枚数の印刷が終了したか否かを判断する(ステップS206)。このステップS206において、印刷制御部は、印刷が終了したと判断した場合、温度制御処理を終了する。一方で、ステップS206において、印刷制御部は、印刷が終了していないと判断した場合、ステップS201に戻る。
また、ステップS204において、温度制御手段430は、ピッチ量が規定外であると判断した場合、設計印刷差などに基づいて演算補正温度ΔVnを演算する(ステップS207)。そして、温度制御手段430は、印刷ピッチの量、設定温度Tn、演算補正温度ΔVnに基づいて設定温度T(n+1)を決定する(ステップS208)。例えば、温度制御手段430は、印刷ピッチが最小許容値よりも小さい場合、設定温度Tnに演算補正温度ΔVnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定し、印刷ピッチが最大許容量よりも大きい場合、設定温度Tnから演算補正温度ΔVnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。そして、この設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。
この後、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して設定温度T(n+1)を認識する。そして、印刷版載置部220が設定温度T(n+1)となるように温度調整を実施する(ステップS209)。例えば、温度設定手段420は、印刷ピッチが最小許容値よりも小さい場合、印刷版載置部220が設定温度Tnよりも演算補正温度ΔVnだけ高い温度になるように温度調整を実施する。そして、印刷版載置部220の温度が演算補正温度ΔVnだけ高い温度になると、この印刷版載置部220に載置された印刷版P2も演算補正温度ΔVnだけ高い温度になる。この後、この印刷版P2の温度上昇により印刷版P2が膨張し、この膨張した印刷版P2により印刷される印刷マークH21,H22間の印刷ピッチが大きくなる。ここで、演算補正温度ΔVnは、設計印刷差の絶対値を熱膨張係数α2で除することにより決定されている。このため、膨張した印刷版P2により印刷される印刷マークH21,H22間の印刷ピッチ、すなわち(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、設計印刷差の絶対値と略同一量だけ大きくなる。
また、例えば、温度設定手段420は、印刷ピッチが最大許容値よりも大きい場合、印刷版載置部220が設定温度Tnよりも演算補正温度ΔVnだけ低い温度になるように温度調整を実施する。そして、印刷版載置部220の温度が演算補正温度ΔVnだけ低い温度になると、この印刷版載置部220に載置された印刷版P2も演算補正温度ΔVnだけ低い温度になる。この後、この印刷版P2の温度下降により印刷版P2が収縮し、この収縮した印刷版P2により印刷される印刷マークH21,H22間の印刷ピッチが小さくなる。ここで、演算補正温度ΔVnは、上述したように決定されているので、収縮した印刷版P2により印刷される印刷マークH21,H22間の印刷ピッチ、すなわち(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、設計印刷差の絶対値と略同一量だけ小さくなる。この後、印刷装置100は、印刷制御部にてステップS106の処理を実施する。
[第2の実施の形態の作用効果]
上述したように、上記第2の実施の形態では、上述した(1),(3),(4)と同様の作用効果に加え、以下に示すような作用効果を奏することができる。
(5)パターン認識部300は、基板Q2に印刷される印刷マークH21,H22を認識する。次に、印刷マークH21,H22間の印刷ピッチを求め、この印刷ピッチに関する印刷精度情報を生成して温度制御手段430へ出力する。この後、温度制御手段430は、印刷精度情報を取得して、印刷ピッチが最小許容値よりも小さいと判断した場合、印刷ピッチと設計値との差である設計印刷差を求める。そして、設計印刷差を印刷版P1の熱膨張係数α2で除した値を演算補正温度ΔVnとして決定する。この後、設定温度Tnに演算補正温度ΔVnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、印刷ピッチが最大許容値よりも大きいと判断した場合、設定温度Tnから演算補正温度ΔVnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。このため、印刷装置100は、例えば製造精度が異なる印刷版P1を用いた場合でも、印刷版載置部220の温度を適宜調整することにより、印刷ピッチの設計値に対するばらつきを最小限に抑えることができる。したがって、印刷版P1を精度よく製造することなく、設計値に対する印刷精度を容易に高めることができる。
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明に係る第3の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[印刷装置の構成]
まず、第3の実施の形態の構成について、図1および図2に基づいて説明する。
図1において、100は第3の実施の形態の印刷装置である。この印刷装置100は、第1の実施の形態の温度調整部400の動作内容を別の動作内容にしたものである。そして、印刷装置100は、印刷部200と、パターン認識部300と、温度調整部400と、などを備えている。
印刷部200は、基板載置部210と、印刷版載置部220と、ブランケットローラ230と、図示しない、インク塗布部と、印刷制御部と、などを備えている。基板載置部210の載置面211には、基板Q1が載置される。印刷版載置部220の載置面221には、印刷版P3が載置されている。ここで、印刷版P3の表面には、第1の実施の形態の印刷版P1と同様の凹部が形成されている。また、印刷版P3の熱膨張係数は、不明とされている。
パターン認識部300は、撮像部310と、画像処理装置320と、などを備えている。撮像部310は、基板Q1に印刷された各マークF1,H1に関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp1と、各マークF2,H2に関する印刷位置情報が記載された印刷位置信号Sp2と、を生成する。そして、印刷位置信号Sp1,Sp2を画像処理装置320へ出力する。画像処理装置320は、撮像部310からの印刷位置信号Sp1,Sp2に基づいて、基板印刷差を求めるとともにピッチ大小関係を認識する。そして、基板印刷差およびピッチ大小関係に関する印刷精度情報が記載された印刷精度信号Sseを生成して、温度調整部400へ出力する。
温度調整部400は、例えば4つの熱伝対410と、温度設定手段420と、温度制御手段430と、などを備えている。
温度制御手段430は、画像処理装置320からの印刷精度信号Sseおよび熱伝対410からの測定温度信号Sonに基づいて、温度設定手段420の動作を適宜制御する。具体的には、温度制御手段430は、熱伝対410から測定温度信号Sonを取得して、n回目の印刷時における印刷版載置部220の設定温度Tnを認識する。また、温度制御手段430は、画像処理装置320から印刷精度信号Sseを取得して、基板印刷差およびピッチ大小関係を認識する。そして、温度制御手段430は、この基板印刷差の絶対値が予め設定されたずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さいと判断した場合、設定温度Tnにn回目の印刷時における設定補正温度ΔWnを加えた温度を(n+1)回目の印刷時における設定温度T(n+1)として決定する。ここで、1回目の印刷時における設定補正温度ΔWnは、印刷版P1の熱膨張係数α1に関係なく予め設定された任意の温度とされている。一方で、温度制御手段430は、基板印刷差の絶対値がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きいと判断した場合、設定温度Tnから設定補正温度ΔWnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。
そして、温度制御手段430は、印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)となるように、印刷版載置部220の温度調整を要求する旨の設定温度情報が記載された設定温度信号Steを生成する。この後、この設定温度信号Steを温度設定手段420へ出力する。また、温度制御手段430は、設定補正温度ΔWnからこの設定補正温度ΔWnよりも小さい温度である所定温度σを減じた温度を、(n+1)回目の印刷時における設定補正温度ΔW(n+1)として決定する。
[印刷装置の動作]
次に、印刷装置100の動作を図5および図6を参照して説明する。図5は、温度制御処理を示すフローチャートである。図6は、印刷回数と印刷のずれ量との概略関係を示すグラフである。なお、図6のグラフでは、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合の印刷のずれ量を正の値とし、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合の印刷のずれ量を負の値として示している。
まず、印刷装置100は、図5に示すように、印刷版P1を用いて例えば図2(A)に示すような透明電極G1および基板マークH11,H12が印刷された基板Q1への、バス電極Eおよび印刷マークF1,F2の印刷を実施する(ステップS301)。次に、印刷装置100は、第1の実施の形態のステップS102と同様の処理を実施して、画像処理装置320にて、各マークF1,F2,H1,H2の位置を認識する(ステップS302)。そして、画像処理装置320は、第1の実施の形態のステップS103と同様の処理を実施して、印刷のずれ量である基板印刷差を演算する(ステップS303)とともに、ピッチ大小関係を認識し、これらに関する印刷精度情報を温度調整部400へ出力する。この後、温度調整部400の温度制御手段430は、画像処理装置320から印刷精度情報を取得する。また、温度制御手段430は、熱伝対410から印刷版載置部220の温度に関する情報を適宜取得し、n回目の印刷時における印刷版載置部220の設定温度Tnを適宜認識する。そして、温度制御手段430は、第1の実施の形態のステップS104と同様の処理を実施して、印刷のずれ量が規定内であるか否かを判断する(ステップS304)。
このステップS304において、温度制御手段430は、ずれ量が規定内であると判断した場合、設定温度Tnを(n+1)回目の印刷時における設定温度T(n+1)として設定する、すなわち印刷版載置部220の設定温度Tnを維持する(ステップS305)。この後、温度制御手段430は、(n+1)回目の印刷時における設定補正温度ΔW(n+1)の設定を実施する(ステップS306)。このステップS306において、温度制御手段430は、ステップS305の処理を実施した場合、この時点で設定されている設定補正温度ΔWnをそのまま設定補正温度ΔW(n+1)として設定する。
そして、温度制御手段430は、ステップS305において設定した設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。この後、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して設定温度T(n+1)を認識する。そして、印刷版載置部220が設定温度T(n+1)となるように温度調整を実施する(ステップS307)。このステップS307において、温度設定手段420は、ステップS305の処理を実施した温度制御手段430から設定温度情報を取得している場合、n回目の印刷時における設定温度Tnが設定温度T(n+1)として設定されているので特に処理を実施しない。
そして、印刷装置100は、印刷制御部にて、例えば予め設定された枚数の印刷が終了したか否かを判断する(ステップS308)。このステップS308において、印刷制御部は、印刷が終了したと判断した場合、温度制御処理を終了する。一方で、ステップS308において、印刷制御部は、印刷が終了していないと判断した場合、ステップS301に戻る。
また、ステップS304において、温度制御手段430は、ずれ量が規定外であると判断した場合、ピッチ大小関係に基づいて、印刷ピッチが基板ピッチがよりも大きいか否かを判断する(ステップS309)。このステップS309において、温度制御手段430は、印刷ピッチが基板ピッチより小さいと判断した場合、設定温度Tnに設定補正温度ΔWnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する(ステップS310)。この後、温度制御手段430は、ステップS306の処理を実施する。ここで、温度制御手段430は、ステップS310の処理を実施している場合、この時点で設定されている設定補正温度ΔWnから所定温度σを減じた温度を設定補正温度ΔW(n+1)として設定する。この後、温度制御手段430は、ステップS310において決定した設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。そして、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して設定温度T(n+1)を認識し、ステップS307の処理を実施する。このステップS307において、温度設定手段420は、ステップS310の処理を実施した温度制御手段430から設定温度情報を取得している場合、印刷版載置部220がn回目の印刷時における設定温度Tnよりも設定補正温度ΔWnだけ高い温度になるように温度調整を実施する。この温度調整により印刷版載置部220の温度が設定補正温度ΔWnだけ高い温度になると、この印刷版載置部220に載置された印刷版P1も設定補正温度ΔWnだけ高い温度になる。この後、印刷版P1は、温度上昇に伴い膨張する。そして、この膨張した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチは大きくなる。ここで、設定補正温度ΔWnは、印刷版P1の熱膨張係数α1に関係なく決定される値とされている。このため、膨張した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチ、すなわち(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、設定補正温度ΔWnに対応した量だけ大きくなる。そして、印刷装置100は、ステップS308の処理を実施する。
例えば、温度制御手段430は、図6に示すように、1回目の印刷における印刷のずれ量である基板印刷差が規定外の「Z1」であり、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、以下のような処理を実施する。すなわち、温度制御手段430は、1回目の印刷時における設定温度T1に設定補正温度ΔW1を加えた温度である「T1+ΔW1」を、2回目の印刷時における設定温度T2として決定する。また、温度制御手段430は、設定補正温度ΔW1から所定温度σを減じた温度の「ΔW1−σ」を設定補正温度ΔW2として設定する。そして、温度制御手段430は、設定温度T2に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。温度設定手段420は、設定温度情報に基づいて、印刷版載置部220が設定温度T1よりも設定補正温度ΔW1だけ高い温度になるように温度調整を実施する。これにより、印刷版P1が膨張し、この膨張した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチは、1回目の印刷における印刷ピッチよりも設定補正温度ΔW1に対応した例えば「Z1+Z2」だけ大きくなる。つまり、2回目の印刷における基板印刷差は「Z2」となる。また、印刷ピッチは基板ピッチよりも大きくなる。そして、印刷装置100は、ステップS308の処理を実施する。
一方で、ステップS309において、温度制御手段430は、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きいと判断した場合、設定温度Tnから設定補正温度ΔWnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する(ステップS311)。この後、温度制御手段430は、ステップS306の処理を実施する。ここで、温度制御手段430は、ステップS311の処理を実施している場合、この時点で設定されている設定補正温度ΔWnから所定温度σを減じた温度を設定補正温度ΔW(n+1)として設定する。この後、温度制御手段430は、ステップS311において決定した設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。そして、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して設定温度T(n+1)を認識し、ステップS307の処理を実施する。このステップS307において、温度設定手段420は、ステップS311の処理を実施した温度制御手段430から設定温度情報を取得している場合、印刷版載置部220がn回目の印刷時における設定温度Tnよりも設定補正温度ΔWnだけ低い温度になるように温度調整を実施する。この温度調整により印刷版載置部220の温度が設定補正温度ΔWnだけ低い温度になると、この印刷版載置部220に載置された印刷版P1も設定補正温度ΔWnだけ低い温度になる。この後、印刷版P1は、温度下降に伴い収縮する。そして、この収縮した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチは小さくなる。ここで、設定補正温度ΔWnは、上述した用の決定される値とされている。このため、収縮した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチ、すなわち(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、設定補正温度ΔWnに対応した量だけ小さくなる。そして、印刷装置100は、ステップS308の処理を実施する。
例えば、温度制御手段430は、図6に示すように、2回目の印刷における基板印刷差が規定外の「Z2」であり、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、以下のような処理を実施する。すなわち、温度制御手段430は、2回目の印刷における設定温度T2から設定補正温度ΔW2を減じた温度である「T2−ΔW2」を、3回目の印刷時における設定温度T3として決定する。また、温度制御手段430は、設定補正温度ΔW2から所定温度σを減じた温度の「ΔW2−σ」を設定補正温度ΔW3として決定する。そして、温度制御手段430は、設定温度T3に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420へ出力する。温度設定手段420は、設定温度情報に基づいて、印刷版載置部220が設定温度T2よりも設定補正温度ΔW2だけ低い温度になるように温度調整を実施する。これにより、印刷版P1が収縮し、この収縮した印刷版P1により印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチは、2回目の印刷における印刷ピッチよりも設定補正温度ΔW2に対応した例えば「Z2+Z3」だけ小さくなる。つまり、3回目の印刷における基板印刷差は「Z3」となる。また、印刷ピッチは基板ピッチよりも小さくなる。ここで、設定補正温度ΔW2は設定補正温度ΔW1よりも所定温度σだけ小さい値とされている。このため、設定補正温度ΔW2に対応した印刷ピッチの変化量「Z2+Z3」は、設定補正温度ΔW1に対応した印刷ピッチの変化量「Z1+Z2」よりも小さくなる。すなわち、Z3はZ1よりも小さくなる。そして、印刷装置100は、ステップS308の処理を実施する。
この後、印刷装置100にて上述した処理を実施して複数回の印刷を実施すると、印刷のずれ量は、図6に示すように、「−Z1」と「Z2」との間の任意の値である例えば「0」に徐々に近づく。
[第3の実施の形態の作用効果]
上述したように、上記第3の実施の形態では、上述した(1),(2)と同様の作用効果に加え、以下に示すような作用効果を奏することができる。
(6)パターン認識部300は、基板Q1に予め印刷されている基板マークH11,H12間の基板ピッチと、基板Q1に印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチと、の差である基板印刷差を求める。そして、基板印刷差と、印刷ピッチおよび基板ピッチの大小関係と、に関する印刷精度情報を生成して温度制御手段430へ出力する。この後、温度制御手段430は、印刷精度情報を取得して、基板印刷差がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも小さい場合、設定温度Tnに設定補正温度ΔWnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、基板印刷差がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも大きい場合、設定温度Tnから設定補正温度ΔWnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。また、温度制御手段430は、設定補正温度ΔWnから所定温度σを減じた温度を、(n+1)回目の印刷時における設定補正温度ΔW(n+1)として決定する。このため、印刷装置100は、例えば製造精度が異なりかつ熱膨張係数が不明な印刷版P3を用いた場合でも、印刷回数に応じて徐々に低く設定される設定補正温度ΔWnに基づいて印刷版載置部220の温度を適宜調整することにより、例えば図6に示すように、印刷のずれ量を「0」に徐々に近づけることができる。したがって、印刷版P3を精度よく製造することなく、かつ、熱膨張係数を予め調べることなく、印刷精度を容易に高めることができる。
[実施の形態の変形]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
すなわち、例えば各実施の形態において、温度設定手段420を印刷版載置部220に設けた構成について例示したが、これに限らず例えば基板載置部210に設けてもよい。このような構成を例えば第1の実施の形態と同様の構成に適用した場合、温度制御手段430は、基板印刷差がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも例えば小さい場合、基板印刷差の絶対値を基板Q1の熱膨張係数で除した値を演算補正温度ΔUnとして決定する。そして、基板載置部210の設定温度Tnから演算補正温度ΔUnを減じた温度を設定温度T(n+1)として決定する。これにより、基板載置部210の温度が演算補正温度ΔUnだけ低い温度になると、この基板載置部210に載置された基板Q1も演算補正温度ΔUnと略同一の温度だけ低い温度になる。そして、基板Q1の温度下降によりこの基板Q1が収縮し、この収縮した基板Q1に予め印刷されている基板マークH11,H12間の基板ピッチが小さくなる。このため、(n+1)回目の印刷時における基板ピッチは、印刷ピッチと略同一となる。したがって、例えば基板ピッチが異なる基板Q1を印刷する場合でも、基板載置部210の温度を適宜調整することにより、印刷マークF1,F2と基板マークH11,H12との相対位置関係、すなわちバス電極Eと透明電極G1との相対位置関係を略同一にでき、バス電極Eと透明電極G1との導通を適宜確実にとることが可能な印刷をすることができる。よって、基板Q1の基板ピッチにかかわらず、印刷精度を容易に高めることができる。
各実施の形態において、温度設定手段420を印刷版載置部220および基板載置部210に設ける構成などとしてもよい。このような構成にすれば、温度設定手段420を印刷版載置部220に設けた構成における作用効果と、基板載置部210に設けた構成における作用効果と、を奏することができる利便性が高い印刷装置を提供できる。さらにこの場合、基板の熱膨張係数よりも熱膨張係数の小さい材料で構成される印刷版を用い、基板載置部210に設けられた温度設定手段420により粗調整を行い、印刷版載置部220に設けられた温度設定手段420により微調整を行えば、さらに精度を上げることができる。
各実施の形態において、温度設定手段420や熱伝対410を例えばブランケットローラ230に設けた構成などとしてもよい。このような構成を例えば第1の実施の形態と同様の構成に適用した場合、温度制御手段430は、基板印刷差がずれ量規定値よりも大きく、かつ、印刷ピッチが基板ピッチよりも例えば小さい場合、ブランケットローラ230の設定温度Tnに演算補正温度ΔUnを加えた温度を設定温度T(n+1)として決定する。これにより、ブランケットローラ230に受理されたインク材料を基板Q1に転写するまでの寸法安定性を高めることができる。したがって、印刷精度をより高めることができる。
この場合、ブランケットローラ230の熱膨張係数が予め分かっていれば、第1の実施形態や第2の実施形態と同様な方法で適応が可能であり、ブランケットローラ230の熱膨張係数が不明な場合でも第3の実施形態の方法で適応が可能である。なお、これらの場合では、ブランケットローラ230のインク材料受理後に温度調整をすることによって、印刷精度を高めることができる。
各実施の形態において、複数である例えば4つの温度設定手段420を、印刷版載置部220の載置面211を4分割した領域に対応する位置にそれぞれ配設する構成などとしてもよい。このような構成にすれば、印刷版載置部220の温度調整をより細かくでき、印刷精度をより高めることができる。
第1,3の実施の形態において、基板Q1に印刷される印刷マークF1,F2間の印刷ピッチと、基板Q1に予め印刷されている基板マークH11,H12間の基板ピッチとの差を基板印刷差とした構成について例示したが、これに限らず例えば以下のような構成などとしてもよい。すなわち、例えば基板Q1などの透明な材質への印刷を実施する場合、基板載置部210の載置面211に基板マークH11,H12と同様の載置マークを設け、この載置マーク間のピッチと印刷ピッチとの差を基板印刷差とする構成などとしてもよい。このような構成にすれば、基板マークH11,H12が印刷されていない基板Q1への印刷を実施する際にも、例えば第2の実施の形態の構成のように、温度制御手段430に設計値を記憶させることなく印刷精度を高めることができる。
第3の実施の形態において、例えば以下のような構成などとしてよい。すなわち、ステップS304,S305の処理を省略する。そして、ステップS309において、印刷ピッチと基板ピッチとが等しくなった場合、ステップS306の処理を実施して、設定補正温度ΔW(n+1)を極めて小さい値に設定する構成などとしてもよい。このような構成にしても、上述した(6)と同様の作用効果を奏することができる。また、ステップS305,S306の処理を省略できるので、温度制御処理を迅速にできる。
なお、これらの実施例においては、印刷版が平版式の印刷装置を例に説明したが、印刷版が胴形状のいわゆる、輪転式の印刷装置にも適応が可能である。その場合、基板載置部又はブランケットローラの少なくともいずれか一方に温度設定手段を設け、各実施の形態と同様な制御をすることによって、同様の作用効果を奏することができる。
本発明をプラズマディスプレイパネルとなる基板Q1,Q2への印刷を実施する印刷装置100に適用した構成について例示したが、これに限らず基板などの上に所定のパターンを形成するいかなる構成の印刷装置にも適用できる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
[実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施の形態では、印刷装置100は、パターン認識部300にて基板Q1に印刷される印刷マークF1,F2の印刷ピッチに関する印刷精度情報を生成して温度制御手段430へ出力する。この後、温度制御手段430は、印刷精度情報を取得して、印刷ピッチを大きくする場合、温度設定手段420で設定している設定温度Tnよりも高い温度を設定温度T(n+1)として決定する。一方で、印刷ピッチを小さくする場合、温度設定手段420で設定している設定温度Tnよりも低い温度を設定温度T(n+1)として決定する。次に、温度制御手段430は、設定温度T(n+1)に関する設定温度情報を生成して温度設定手段420に出力する。そして、温度設定手段420は、設定温度情報を取得して、(n+1)回目の印刷時における印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)となるように温度設定を適宜実施する。この後、印刷版載置部220の温度が設定温度T(n+1)になると印刷版P1が収縮または膨張し、(n+1)回目の印刷時における印刷ピッチは、小さくまたは大きくなる。このため、印刷装置100は、例えば製造精度が異なる印刷版P1を用いた場合でも、印刷版載置部220の温度を適宜調整することにより印刷ピッチのばらつきを最小限に抑えることができる。したがって、印刷版P1を精度よく製造することなく、印刷精度を容易に高めることができる。さらに、印刷版P1の精度が簡易化されるため、従来のように印刷版P1の材料として熱による収縮率が少ない低熱膨張係数のものを用いる必要がなくなる。したがって、印刷版P1の材料の選択範囲を広げることができる。