JP2010077375A - エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とが含まれており、1分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基とを有するオルガノアルコキシシラン化合物を加水分解させてなる加水分解性生物がさらに含有されており、前記固体状エポキシ樹脂の含有量が前記液状エポキシ樹脂以上であることを特徴としている。
【選択図】 なし
Description
エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度を向上させる試みとしては各種検討されており、例えば、下記特許文献1には、特定の構造を有するフェノール樹脂を硬化剤として用いることで高いガラス転移温度のエポキシ樹脂硬化物が得られることが記載されている。
したがって、従来のエポキシ樹脂硬化物は、高温時において種々の特性を低下させてしまうおそれを有する。
このことによって、硬化物のガラス転移温度を向上させることができる。
特には、フェノール樹脂などをエポキシ樹脂の硬化剤として用いることにより、硬化物に極めて高いガラス転移温度を付与させうる。
また、本発明に係るエポキシ樹脂硬化物は、高いガラス転移温度を有することから高温時における特性低下のおそれが抑制されうる。
まず、エポキシ樹脂組成物について説明する。
本実施形態における、エポキシ樹脂組成物は、常温液体状の液状エポキシ樹脂と、常温固体状の固体状エポキシ樹脂とが含有されており、しかも、前記固体状エポキシ樹脂が前記液状エポキシ樹脂よりも多く含有されている。
また、本実施形態における、エポキシ樹脂組成物は、1分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基を有するオルガノアルコキシシラン化合物を加水分解させてなる加水分解生成物がさらに含有されている。
さらに、本実施形態におけるエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂を硬化させるためのフェノール樹脂とその他の配合剤が含有されている。
このような液状エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ当量が300g/eq以下(例えば、180〜200g/eq)のビスフェノールAタイプ、あるいは、ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂が挙げられる。
なお、本明細書中においては、特段の記載がない限りにおいて前記エポキシ当量とはJIS K 7236により求められる値を意図している。
なお、このビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂の構造中のメチル基に代えて水素原子が結合されているものを、通常、ビスフェノールFタイプと呼んでいる。
固体状エポキシ樹脂としては、nが2や4などとなる構造を有するビスフェノールAタイプのものやノボラックタイプのものが一般的である。
したがって、液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とは、分子中に水酸基を有しているか否かを相違点として有している。
エポキシ樹脂と加水分解生成物との結合が過剰に進展すると、該結合によって形成されるポリマーの高分子量化が過剰に進展することになるため、このポリマーの熱溶融物や、該ポリマーを有機溶媒などに溶解させた溶液の粘度が高くなって、いわゆる、ゲル化現象を発生させることとなる。
そのため、本実施形態における液状エポキシ樹脂は、分子中に水酸基のない低分子量のエポキシ樹脂成分として必須なものである。
このような固体状エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ当量が400〜5000g/eqのビスフェノールAタイプ、あるいは、ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂が挙げられる。
また、エポキシ当量が、150〜250g/eqのビフェニルタイプ、あるいは、クレゾールノボラックタイプ、あるいは、フェノールノボラックタイプのエポキシ樹脂が挙げられる。
特に、前記式(1)における繰り返し数(n)が2となる構造を有するエポキシ樹脂が、本実施形態における固体状エポキシ樹脂として好適である。
なお、これらの液状エポキシ樹脂や固体状エポキシ樹脂としては、例えば、ゴム変性等の各種変性がなされたものも用いられうる。
この固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂との含有量が上記のような関係となっていることが重要なのは、固体状エポキシ樹脂の含有量が、重量で、液状エポキシ樹脂の含有量未満である場合には、高温時における特性低下の抑制されたエポキシ樹脂硬化物を得られにくくなるためである。
すなわち、液状エポキシ樹脂が固体状エポキシ樹脂よりも多く含有されているエポキシ樹脂組成物では、例えば、貯蔵弾性率などの機械的特性において、常温(例えば、23℃)における値に比べて高温(例えば、150℃以上)における値の低下が抑制されたエポキシ樹脂硬化物を得ることが困難である。
一方で、エポキシ樹脂組成物に液状エポキシを全く含ませず、含有させるエポキシ樹脂を固体状エポキシ樹脂のみとした場合には、後述する脱水・脱アルコール処理時においてゲル化を生じやすく、エポキシ樹脂硬化物の形成を容易に実施させることが困難になる。
上記範囲(80/20〜97/3)の内のいずれかの割合で用いられるエポキシ樹脂の内、固体状エポキシ樹脂としては、エポキシ当量450〜500g/eqのいずれかで、JIS K7234の環球法に基づく軟化点が60〜70℃のいずれかであるビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂が特に好ましい。
また、液状エポキシ樹脂としては、エポキシ当量184〜194g/eqのいずれかであるビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
この1分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基を有するオルガノアルコキシシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシランなどを使用することができる。
なかでも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、エポキシ樹脂硬化物の高温時における物性低下の抑制に特に有効である。
この分解物や縮合重合物としては、オルガノアルコキシシラン化合物をジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの加水分解触媒と水との存在下において常温、又は加熱して得られるものが挙げられる。
したがって、オルガノアルコキシシラン化合物の加水分解生成物が含有されることで、通常、アルコールや水分も含有されることとなるが、本実施形態のエポキシ樹脂組成物においては、これらの含有量が極力低減されていることが好ましい。
したがって、オルガノアルコキシシラン化合物、加水分解触媒、及び水の混合液が、本実施形態のエポキシ樹脂組成物に用いられるに際して水及びアルコールを除去する脱水・脱アルコール処理が実施されていることが好ましい。
この脱水・脱アルコール処理の具体的な方法については後述するが、通常、前記混合液を所定時間反応させた後に、この混合液が適度に加温されて実施されるものであることから、前記縮合重合反応を伴うものである。
通常、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加水分解させてなる加水分解生成物の重量は、加水分解前のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに比べてわずかにしか変化しない。
したがって、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計100重量部に対して、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを110重量部以上含有させた混合液を作製して加水分解を実施するなどしてエポキシ樹脂組成物を作製することで、前記加水分解生成物が、エポキシ樹脂以上に含有されたエポキシ樹脂組成物となしうる。
なお、加水分解生成物をあまり多く含有させてもエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度をそれ以上向上させることが困難になることから、通常、この加水分解生成物の含有量は、重量で、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計量の2倍未満であることが好ましい。
このように液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂の存在下にて脱水・脱アルコール処理が実施されることにより、オルガノアルコキシシラン化合物の加水分解生成物(分解物又はその縮合重合物)と液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂との一部を反応させることができ、硬化物の高温時における特性低下のおそれがより一層低減されうる。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物には、前記液状エポキシ樹脂及び前記固体状エポキシ樹脂が未硬化状態で含有されており、前記フェノール樹脂は、先にも述べたように、この液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを熱硬化させるための硬化剤として含有されている。
これらアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂は、いずれか1種を単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
このような軟化点を有するフェノール樹脂を硬化剤として使用することにより、このエポキシ樹脂組成物を硬化させてエポキシ樹脂硬化物を形成させた際に、ガラス転移温度の極めて高いものを得ることができ、高温時における特性低下がより一層抑制されたエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
なお、上記フェノール樹脂は、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計100重量部に対して、通常、40〜70重量部のいずれかの量でエポキシ組成物に含有させ得る。
まず、オルガノアルコキシシラン化合物、加水分解触媒及び少量の水を混合した混合液を作製し、この混合液を常温、又は加熱状態で保持して加水分解反応を生じさせた後に、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを混ぜた状態で、例えば、100〜200℃程度の温度に加熱して脱水・脱アルコール処理を実施するとともに、この混合液中に液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを溶解させる。
そして、この加熱状態を、例えば、1〜10時間程度保持させることによって、十分に脱水・脱アルコールさせる。このとき、一部が縮合重合することによって新たに水、アルコール等が発生することとなるが、これらについても混合溶液から除去させる。
この脱水・脱アルコール処理においては、オルガノアルコキシシラン化合物が加水分解された分解物の一部に縮合重合反応を発生させて縮合重合物を形成させることができ、この縮合重合物の形成は、脱水・脱アルコール処理の温度や時間などといった処理条件によって調整が可能である。
そして、この液状のエポキシ樹脂組成物を、例えば、150〜200℃のいずれかの温度となるように加熱して、この温度を、例えば、1〜10時間程度保持させることによってエポキシ樹脂の硬化反応を進行させてエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
また、通常、このエポキシ樹脂硬化物は、常温時における貯蔵弾性率と、150℃程度の高温における貯蔵弾性率の値との差が、従来のエポキシ樹脂硬化物に比べて格段に小さく、高温時における物性低下が抑制されたものとなっている。
上記のように、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、簡便なる方法で高温時における特性低下の抑制されたエポキシ樹脂硬化物を形成させることができる。
(工程1)
信越化学社製のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM403」)と純水と加水分解触媒(ジブチル錫ジラウレート:DBTDL)とを表1の配合割合で混合し、室温で1日間放置して混合液Aを作製した。
この混合液Aに液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社(JER)製ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、グレード名「828」、エポキシ当量:標準値184〜194g/eq)を表2の配合割合となるように混合して混合液B(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:液状エポキシ樹脂≒118:100)を作製した。
次いで、この混合液Bをフラスコ内で150℃の温度に加熱して、この温度(150℃)を、2時間保持させてオルガノアルコキシシラン化合物(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)の加水分解生成物からの脱水・脱アルコール処理を行い、やや黄味を帯びた混合液Cを作製した。
この混合液Cに、エポキシ樹脂の硬化剤である1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ−CN)を、混合液C100重量部に対して5重量部加え液状のエポキシ樹脂組成物(比較例1)を作製した。
しかし、この場合、「工程3」(脱水・脱アルコール処理)における混合液のゲル化が激しく、その後の工程を実施することが困難となった。
また、硬化時間を4時間、16時間としたエポキシ樹脂硬化物も併せて作製した。
測定は、50℃の温度と220℃の温度の2回実施した。
また、50℃における貯蔵弾性率の値を100%とした際に、220℃の温度における貯蔵弾性率が何%の値となるかを計算し、高温時の特性保持の指標とした。
さらには、DMSの引張りモードでのガラス転移温度測定も実施した。
測定結果を表3に示す。
また、実施例1のエポキシ樹脂組成物が用いられてなるエポキシ樹脂硬化物は、比較例1のエポキシ樹脂組成物が用いられてなるエポキシ樹脂硬化物よりも高いガラス転移温度を有している。
上記実施例1では、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解性生物の脱水・脱アルコール処理の条件を140℃×4時間としていたが、これを、140℃×1時間(実施例2)、140℃×2時間(実施例3)、140℃×3時間(実施例4)、140℃×6時間(実施例5)としてエポキシ樹脂組成物を作製し、実施例1と同様にガラス繊維に含浸させて硬化(180℃×2時間と180℃×4時間との2通り)させたエポキシ樹脂硬化物を作製した。
また、これとは別に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが含まれていないエポキシ樹脂組成物(従来例2)を作製し、同様にエポキシ樹脂硬化物を作製した。
これらについて、ガラス転移温度、貯蔵弾性率等の測定を実験例1と同様に実施した結果を、表4に示す。
先の実験例1、2においては、液状エポキシ樹脂(JER「828」)、固体状エポキシ樹脂(JER「1001」)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学「KBM403」)のそれぞれの配合比率が、50:50:68とされ、これらの合計100重量部に対して、2E4MZ−CNが5重量部含有されているエポキシ樹脂組成物について検討してきたが、ここでは(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)=50:50:118の場合、ならびに、20:80:118の場合について検討することとした。
しかも、2E4MZ−CNの配合量を1重量部とし、代わりに、下記の3種のフェノール樹脂を配合してエポキシ樹脂組成物を作製した。
フェノール樹脂1:昭和高分子製、アルキル系の非熱反応型のノボラック系フェノール
樹脂、グレード名「CKM−2400」、軟化点110℃、平均分
子量1100〜1300
フェノール樹脂2:昭和高分子製、ハイオルソノボラック系フェノール樹脂、「NCR
−189」、軟化点137℃、平均分子量1600〜1800
フェノール樹脂3:昭和高分子製、ノボラック型フェノール樹脂、グレード名「CRM
−990」、軟化点160℃、平均分子量2500〜2800
また、これまでの実験例と同様にこれらのエポキシ樹脂組成物をガラスクロスに含浸させて硬化(条件は「180℃×2時間」のみ)させたエポキシ樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度、ならびに、貯蔵弾性率の測定を実施した。
結果を、表5に示す。
また、表5からは、(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)=50:50:118の場合と、20:80:118の場合とについて比較した場合には、後者の方が高いガラス転移温度を有するエポキシ硬化物を得られやすいこともわかる。
さらにこの表5からは、軟化点が130℃以上のフェノール樹脂(「NCR−189」、「CRM−990」)の方が、軟化点が130℃未満のフェノール樹脂(「CKM−2400」)に比べてガラス転移温度の高いエポキシ樹脂硬化物が得られやすいこともわかる。
先の実験例3において、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との比率が20:80となる以上に固体状エポキシ樹脂が多く含有されている方が高いガラス転移温度を有するエポキシ樹脂硬化物を得られやすいことが確認されたため、さらに、固体状エポキシ樹脂が高配合された(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)=10:90:118の場合と、5:95:118の場合とについて検討した。
また、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのさらなる増量について検討すべく(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)=5:95:130の場合についても検討した。
ここで、硬化剤は、先の実験例3において、良好なる結果が得られた「NCR−189」と「CRM−990」の二種類とした。
得られたエポキシ樹脂組成物は、これまでの実験例と同様に評価を実施するとともに、熱機械分析装置(TMA)での線膨張係数と、このTMAでの引張りモードによるガラス転移温度の測定とを新たに実施した。なお、今回DMSによる貯蔵弾性率の測定は、低温側は、これまで通りの50℃としたが、高温側は、220℃ではなく260℃とした。
得られた結果を、表6に示す。
すなわち、この“5:95”の比率を中心として、例えば、(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)が(7:93)〜(3:97)のいずれかに設定され、且つ、軟化点が150℃以上のノボラック型フェノール樹脂が用いられることによって、特に優れたエポキシ樹脂硬化物を得られやすいことが確認された。
実験例4において、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との割合が、(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)=5:95とすることで特に優れたエポキシ樹脂硬化物を得られやすいことが確認されたことから、この系を基本としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの変量について検討を行った。
より具体的には、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計量100重量部に対して、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量を150重量部、180重量部、200重量部とした。
結果を先の実験例における実施例18、19の結果と併せて、下記表7に示す。
上記実験例5において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量が150重量部を超え、200重量部未満であることが好適であることを見出したことから、ここでは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量を、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計量100重量部に対して180重量部に固定して、硬化剤として用いられているフェノール樹脂の配合量について検討を行った。
具体的には、2E4MZ−CNを0.5重量部に減量するとともに、軟化点が150℃以上のノボラック型フェノール樹脂「CRM−990」の配合量を、40重量部、50重量部、60重量部、70重量部へと変化させて、これまでの実験例と同様に、ガラス転移温度等の測定を実施した。
結果を、実験例5の実施例23におけるデータとともに下記表8に示す。
具体的には、下記条件1〜4の配合系での検討を実施した。その結果、これらの条件では、脱水・脱アルコール工程において混合液が高粘度となることがわかった。
このことからも、450〜500g/eqのいずれかのエポキシ当量を有し且つ軟化点が60〜70℃のいずれかのビスフェノールAタイプの固体状エポキシ樹脂の使用が好適であることが確認できた。
条件1)液状エポキシ樹脂(JER「828」)、固体状エポキシ樹脂(JER「10
04」)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学「KBM
403」)のそれぞれの配合比率(重量比)が、5:95:180
条件2)液状エポキシ樹脂(JER「828」)、固体状エポキシ樹脂(JER「10
04」)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学「KBM
403」)のそれぞれの配合比率(重量比)が、20:80:200
条件3)液状エポキシ樹脂(JER「828」)、固体状エポキシ樹脂(JER「10
04」)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学「KBM
403」)のそれぞれの配合比率(重量比)が、20:80:300
条件4)液状エポキシ樹脂(JER「828」)、固体状エポキシ樹脂(JER「10
01」)、固体状エポキシ樹脂(JER「1007」)、γ−グリシドキシプ
ロピルトリメトキシシラン(信越化学「KBM403」)のそれぞれの配合比
率(重量比)が、20:40:40:300
すなわち、液状エポキシ樹脂(JER「828」)、固体状エポキシ樹脂(JER「1001」)、固体状エポキシ樹脂(JER「1004」)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学「KBM403」)のそれぞれの配合比率(重量比)が、20:40:40:300となる配合系(条件5)について検討したところ、140℃×4hの脱水・脱アルコール工程を実施しても、混合液の粘度は実質上問題のない良好なるレベルであった。
このエポキシ樹脂組成物の配合ならびにこのエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物(実施例30)をこれまでの実施例と同様に評価したところ、その物性は、下記表9に示すとおりであった。
このエポキシ樹脂硬化物は、低温(50℃)における貯蔵弾性率の絶対値は5.1GPaと、これまでの実施例に係るエポキシ樹脂硬化物に比べて低い値ではあるものの、高温(260℃)における保持率が82.4%と、特に優れていることがわかった。
Claims (7)
- 液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とが含まれており、1分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基とを有するオルガノアルコキシシラン化合物を加水分解させてなる加水分解生成物がさらに含有されており、前記固体状エポキシ樹脂の含有量が前記液状エポキシ樹脂以上であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 前記オルガノアルコキシシラン化合物がγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記固体状エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂との重量割合(固体状エポキシ樹脂/液状エポキシ樹脂)が、80/20〜97/3のいずれかである請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
- 液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とが含有されており、フェノール樹脂が硬化剤として含有されているエポキシ樹脂組成物が硬化されてなるエポキシ樹脂硬化物であって、
前記エポキシ樹脂組成物が、1分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基とを有するオルガノアルコキシシラン化合物を加水分解させてなる加水分解生成物をさらに含有し、前記固体状エポキシ樹脂の含有量が前記液状エポキシ樹脂以上であることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物。 - 前記オルガノアルコキシシラン化合物がγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである請求項4記載のエポキシ樹脂硬化物。
- 前記エポキシ樹脂組成物における固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂との重量割合(固体状エポキシ樹脂/液状エポキシ樹脂)が、80/20〜97/3のいずれかである請求項4又は5記載のエポキシ樹脂硬化物。
- 前記フェノール樹脂の軟化点が130℃以上である請求項4乃至6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化物。
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