JP3722427B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気電子機器用、特に積層板、封止材、接着剤、塗料及び電気絶縁材料として有用な、難燃性、耐熱性及び電気特性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、様々の分野で使用されている。使用されているエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエ−テルやフェノ−ル又はo−クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が一般的であり、硬化剤としては、フェノールノボラック等のフェノール系硬化剤、ジシアンジアミドや芳香族アミン等のアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が一般的である。
【0003】
しかし、上記エポキシ樹脂や硬化剤の組み合わせのみでは難燃性が無いため、高い難燃性を要求される電気・電子材料部品の用途にはハロゲン系難燃剤を添加したり、エポキシ樹脂骨格中に臭素を導入することにより難燃性を付与した臭素化エポキシ樹脂が使用される。更に、難燃助剤として、三酸化アンチモンやその他の難燃剤が併用される場合もあるが、主たる難燃成分は塩素、臭素などのハロゲン含有物質である。
【0004】
ところが、近年、ハロゲン系の難燃剤は社会問題となっているダイオキシン類の発生原因の一つとして懸念されており、ハロゲン系難燃剤や臭素化エポキシ樹脂についてもこのような有害物質の排出といった環境面や、使用済みの電気・電子機器類のリサイクル性の視点から、その使用が問題視されつつある。
【0005】
そこで、これらのハロゲン系難燃剤や臭素化エポキシ樹脂に替わる材料として、ハロゲンを使用しない難燃化手法が開発されている。例えば、窒素系難燃剤を応用した手法として、トリアジン環を有する化合物を硬化剤として用いる方法(特開平3−62825号公報、特開平8−253557号公報参照)が提案されているが、トリアジン環を分子内に少量しか導入できないため、エポキシ硬化物の難燃性改良効果がそれ程高くなく、また、親水性の極性基が多く硬化物の吸水率が高いという問題もある。
【0006】
また、リン系化合物の難燃剤を添加する方法(特開平11−124489号公報、特開平11−166035号公報参照)が提案されているが、このようなリン系化合物を添加する方法は、充分な難燃性を付与させるために多量のリン系化合物を配合する必要があり、その結果、耐熱性、耐湿性、リン化合物のブリードアウトや溶出などといった基本的な性能を著しく損なう欠点を有している。これらの問題を解決するためにエポキシ樹脂のエポキシ基と反応する反応基を有する反応型リン化合物をエポキシ樹脂組成物中にブレンドする方法、反応型リン化合物をあらかじめエポキシ樹脂と反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂を使用する方法(特開平4−11662号公報、特開平11−279258号公報参照)も提案されている。しかし、このような反応型リン化合物を使用した系でも、リン化合物のブリードアウトや溶出などの問題は改良されるものの、耐熱性や耐湿性の問題が完全に解決されるわけではない。
【0007】
また、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物を添加する方法(ドイツ特許出願公開第3540524号明細書参照)も提案されているが、燃焼時に有害なガス等を発生しないという意味で環境への影響が少ない点では有利であるが、多量に配合すると接着性をはじめとする機械強度や電気特性が低下したり、硬化前後の作業性、加工性が悪化するなどの問題や高温での使用時に金属水和物からの脱水が発生して成型体の品質が劣化する問題を抱えている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性、耐湿性、接着性や、硬化前後の作業性、加工性を損なうことなく、難燃性に優れた硬化物を与えることができる、熱硬化性のエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の化合物について鋭意検討した結果、特定の共縮合ノボラックを硬化剤成分として用いることで、耐熱性や耐湿性等の性能を損なわず、難燃性の改良効果に優れる硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物が得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
、本発明は、以下の各発明を包含する。
【0010】
(1)p−クレゾールとm−クレゾールとホルムアルデヒドよりなる共縮合ノボラックであって、p−クレゾールとm−クレゾールの合計量に対するp−クレゾールの割合が、90〜99.5質量%である共縮合ノボラックを硬化剤成分として含有することを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
【0011】
(2)前記共縮合ノボラックは、その軟化点が70〜140℃である前記(1)記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)前記共縮合ノボラックを、シクロヘキサノン及び/又はジメチルホルムアミド(DMF)を30〜100質量%含む溶剤中、固形分濃度30〜90質量%の溶液として使用することを特徴とする、前記(1)又は(2)記載のエポキシ樹脂組成物。
【0012】
(4)エポキシ樹脂組成物中の全塩素及び全臭素の含有量の合計が1800ppm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(5)エポキシ樹脂組成物中の全アルカリ金属含有量の合計が4ppm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0013】
(6)エポキシ樹脂組成物に、難燃剤としてリン元素換算で0.1〜10質量%のリン化合物が配合されていることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(7)エポキシ樹脂組成物に、難燃剤として金属水酸化物が1〜50質量%配合されていることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0014】
(8)前記金属水酸化物が水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする、前記(7)記載のエポキシ樹脂組成物。
(9)窒素元素を含有する硬化促進剤を、エポキシ樹脂組成物中窒素元素含有量が0.05〜1質量%となるように配合したことを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0015】
(10)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と無機繊維の織布基材及び/又は不織布基材からなる、電気・電子機器用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【0016】
(11)前記電気・電子機器用難燃性エポキシ樹脂組成物を成型、硬化させてなる、電気・電子機器用成型体。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される共縮合ノボラックは、p−クレゾールとm−クレゾールとホルムアルデヒドを共縮合させることによって得ることが出来る。但しp−クレゾールとm−クレゾールの合計量に対するp−クレゾールの割合が60〜99.5質量%である必要があり、さらに80〜99.4質量%が好ましく、90〜99.3質量%が非常に好ましい。
【0018】
もし、p−クレゾールの割合が60質量%より少ないと、難燃性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られない。逆にp−クレゾール成分が60質量%を越え量が多い程、より難燃性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を与えることが出来る。しかし、p−クレゾール成分が99.5質量%より多い場合、得られる共縮合ノボラックが溶剤に溶解し難くなったり、あるいは一旦は溶液化できたとしても、その溶液の保存安定性が悪くなり、保存中に共縮合ノボラックの一部成分が結晶化し析出する。
【0019】
本発明者らは、p−クレゾールと少量のm−クレゾールを併用して共縮合ノボラックとすることで、溶液を非常に安定性良く改良することが出来ることを見出した。p−クレゾール成分が99.5質量%、すなわち併用するm−クレゾールの割合が0.5質量%といった少量でも、意外に顕著な溶液安定化の効果があるが、さらにp−クレゾール成分が99.4質量%以下、すなわちm−クレゾールの割合が0.6質量%以上が好ましく、p−クレゾール成分が99.3質量%以下、すなわちm−クレゾールの割合が0.7質量%以上であることが非常に好ましい。結晶析出等の溶液安定性の問題を解決するには、併用するm−クレゾールの量が多いほど結晶化し難くなるが、前述したように難燃性には不利になるため、併用量は少ない方が望ましい。難燃性の改良のみを追求するのであればp−クレゾールが100質量%であることが好ましいが、溶液化して使用する場合には安定性が非常に悪く実用的でない。
【0020】
p−クレゾールノボラックをエポキシ樹脂組成物の硬化剤成分として使用する例は、幾つかの公知文献として挙げることが出来る。例えば、特開2001―123045号公報、特開平10−330592号公報、特開平8−12744号公報等が挙げられるが、いずれもp−クレゾールノボラック純品でのものであり、本発明の共縮合ノボラックのようにp−クレゾール成分を特定の比率で含有する状態で顕著な難燃性と溶液安定性を合わせ持つことを示唆する記載があるわけではない。
【0021】
p−クレゾールと併用するものとしては、m−クレゾールが好ましいが、効果を阻害しない程度に他のフェノール類を併用することもできる。例を挙げれば、フェノール、o−クレゾール、o−t−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール等の置換フェノール類、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール等のジヒドロキシフェノール類、1−ナフトール、2−ナフトール等のナフトール類、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のポリヒドロキシナフタレン類、4,4′−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類が挙げられる。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化剤成分である共縮合ノボラックの製造に用いられるホルムアルデヒドとしては、その水溶液やパラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒド重合体も使用することができる。また、ホルムアルデヒド以外のアルデヒド類、ケトン類を本発明の効果を阻害しない程度に少量併用することもできる。そのアルデヒド類、ケトン類としては例えば、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシヒドロキシベンズアルデヒド、アクリルアルデヒド、メタクリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、グリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、スベリンアルデヒド、アゼラインアルデヒド、セバシンアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤成分である共縮合ノボラックの製造方法としては、一般的に次の2種類の方法がある。
1段法: p−クレゾールとm−クレゾールとホルムアルデヒドを酸触媒の存在下に1段でノボラック化する方法。
2段法: p−クレゾール及び/又はm−クレゾールと、ホルムアルデヒドをアルカリ触媒の存在下に反応させ、一旦メチロール化体(モノメチロール化体、ジメチロール化体、多メチロール化体あるいはこれらの混合物)を作り、そのメチロール化体にさらにp−クレゾール及び/又はm−クレゾールを酸触媒存在下に反応させてノボラックを2段で製造する方法。
それぞれの、反応条件、酸触媒、アルカリ触媒や精製方法については、公知の方法が使用できる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される共縮合ノボラックは、その軟化点が70〜140℃であることが望ましいが、さらに75〜135℃がより好ましく、80〜130℃であることが非常に好ましい。軟化点が低すぎると、その硬化物の耐熱性、特にガラス転移温度が低くなり、好ましくない。逆に軟化点が高すぎると組成物の粘度が高くなりすぎ、成型性が悪くなるので好ましくない。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される共縮合ノボラック系硬化剤は、有機溶剤で溶解した溶液とし、エポキシ樹脂組成物に配合して使用することが好ましい。その溶剤としては、本発明の共縮合ノボラック系硬化剤を溶解するものが好ましいが、さらに、その溶液を保存した場合、溶液の安定性が良いことが必要である。例えば、一定期間保存した後に濁りや結晶析出したり、増粘する等の変化があるものは好ましくない。
【0026】
以上のような条件を満足させるため、本発明者らが種々検討を行った結果、特に好ましい溶剤としては、シクロヘキサノン及びジメチルホルムアミドである。本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される共縮合ノボラックをシクロヘキサノン及び/又はジメチルホルムアミドを30〜100質量%含む溶剤で固形分濃度30〜90質量%の溶液として使用する必要がある。これらの溶剤は前記条件を満足する範囲内で他の溶剤と併用することができる。これら2種類の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂における共縮合ノボラック系硬化剤を良く溶解し、また溶液の保存安定性が非常に良好であるため好ましい。これら2種類以外の溶剤は本発明で使用する共縮合ノボラック系硬化剤の溶解性が悪いか保存時に結晶が析出する問題がある。したがってシクロヘキサノン及び/又はジメチルホルムアミド以外の溶剤を含む混合溶剤の場合は、シクロヘキサノン及びジメチルホルムアミドの1種又は2種を30質量%以上含有していることが必要であり、30質量%より少ない場合、保存時の結晶化の問題が顕在化してくる。
【0027】
混合溶剤系の場合、シクロヘキサノン及びジメチルホルムアミドと組み合わせる溶剤としては、例えば、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、グリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
芳香族系溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、アセチルアセトン、ジオキサンなどが挙げられる。アミド系溶剤の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。そして、これらの溶剤は併用することができる。
前記に挙げた溶剤の内、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤が好ましく、さらにアセトン、メチルエチルケトンがより好ましい。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物で共縮合ノボラック系硬化剤を溶液として使用する場合の固形分濃度は30〜90質量%が好ましく、更に35〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%が非常に好ましい。固形分濃度が90質量%より高い場合、溶液粘度が非常に高くなり取り扱いが難しくなり好ましくない。また固形分濃度が30質量%より低い場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分濃度が低すぎて、溶剤除去後の例えばプリプレグの樹脂含量が低くなり過ぎたり、エポキシ樹脂組成物の粘度が低くなりすぎて取り扱い性が悪くなる。
【0029】
上記のように、本発明のエポキシ樹脂組成物において、共縮合ノボラック系硬化剤を溶液として使用する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物に溶剤が含まれることになるが、エポキシ樹脂組成物の時点で更に溶剤を追加したりすることも可能である。その溶剤としては、シクロヘキサノン及びジメチルホルムアミド以外に前記に例を挙げた芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、グリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、他の通常のエポキシ樹脂用硬化剤を本発明の効果を阻害しない程度に、少量併用することもできる。それらを例として挙げると以下のものである。
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブチルビスフェノールA、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック樹脂、共縮合ノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、重質油変性フェノール樹脂などの種々の多価フェノール類、及び種々のフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のトリアジン誘導体とフェノール類とアルデヒド類との縮合物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン類などなどが挙げられる。これらエポキシ樹脂用硬化剤は、1種単独でも、2種以上併用しても良い。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用される硬化剤の使用割合は、全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対して、全硬化剤成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.2〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは0.3〜1.5モルになる量である。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、以下のものが挙げられる。
(1)ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、3,3',5,5'-テトラメチルビスフェノールF、テトラブチルビスフェノールA、ビスフェノールS、ビフェノール、3,3',5,5'-テトラメチルビフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシスチルベン類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等。
【0033】
(2)グリシジルエーテル型多官能エポキシ樹脂類;
フェノールノボラック樹脂、共縮合ノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂、などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール系化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等。
【0034】
(3)グリシジルアミン類;
ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミンなどの種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等。
(4)グリシジルエステル類;
フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸などの種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等。
【0035】
(5)2段法エポキシ樹脂類;
上記(1)のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類とジヒドロキシ化合物類との反応で得られる2段法エポキシ樹脂、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類とジヒドロキシ化合物類との組み合わせに更に上記(2)、(3)、(4)のエポキシ樹脂類や多価フェノール類やモノフェノール類等を適量加えて反応した2段法共重合エポキシ樹脂等。
【0036】
これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても、複数を組み合わせて併用しても良い。これらのエポキシ樹脂の中で、特に上記(2)グリシジルエーテル型多官能エポキシ樹脂類が好ましく、更にこの中でフェノールノボラック樹脂、共縮合ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、重質油変性フェノール樹脂や、フェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、あるいはグリオキザールとの縮合反応で得られる多価フェノール樹脂と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂が、耐熱性や難燃性を確保するためには、より好ましい。また、(1)のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類や(5)の2段法エポキシ樹脂類を、粘度や流動性、可撓性を調整するために、多官能エポキシ樹脂類と併用して使用することもできる。
【0037】
(2)のグリシジルエーテル型多官能エポキシ樹脂の中でも軟化点が100℃以下であるものが好ましく、さらに95℃以下であるものがより好ましく、さらに90℃以下であるものが非常に好ましい。もし軟化点が100℃より高い場合は、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて加工性が悪くなる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ハロゲンフリーで高度な難燃性を発現するものを目的としているものであるため、ハロゲン非含有であることが好ましい。したがって、ハロゲン化変性されてないエポキシ樹脂やハロゲンを含まない硬化剤やその他配合材料を使用する必要がある。ただし、エポキシ樹脂製造時の原料であるエピクロルヒドリン由来の微量の塩素不純物やその他の原因で混入するハロゲン不純物は微量なら含んでいてもよく、具体的には、エポキシ樹脂組成物中の塩素及び臭素含有量が合計1800ppm以下であることが必要であり、さらに塩素及び臭素含有量がそれぞれ900ppm以下であることが好ましい。さらに合計1700ppm以下であることがより好ましく、さらに1600ppm以下であることが非常に好ましい。
【0039】
塩素及び臭素含有量が合計1800ppmより多い場合、本発明の目的であるハロゲンフリーで高度な難燃性を発現すると言うことから逸脱するだけでなく、例えば銅張り積層板にして長期熱劣化試験を行うと銅箔引き剥がし強度の低下が顕著に発生し好ましくなくなる。これは、熱分解により微量発生するハロゲン化水素ガスによる銅箔と樹脂界面部での劣化が原因で接着強度が低下するためであると推定され、特に本発明のエポキシ樹脂組成物ではハロゲン不純物の悪影響が大きく、塩素及び臭素含有量が一定量以上であると、このような傾向が強く現れる。従って、具体的には塩素及び臭素含有量が合計1800ppm以下であることが前述のように必要である。
【0040】
このように、エポキシ樹脂組成物の塩素及び臭素含有量を低くするためには、使用するエポキシ樹脂を製造後にアルカリで処理し、その後水洗する等の脱ハロゲン化処理を行ったりすることで達成することができる。また2段法エポキシ樹脂類の場合は、特に、原料であるエポキシ樹脂の塩素及び臭素含有量を一定量以下にする方法がより現実的である。具体的には、原料エポキシ樹脂の塩素及び臭素含有量が合計5000ppm以下であることが必要であり、さらに3000ppm以下であることがより好ましく、さらに2000ppm以下であることが非常に好ましい。またその2段法エポキシ樹脂類を製造する際に使用される触媒は、ハロゲンを含まない触媒を使用することが好ましく、仮にハロゲンを含むような触媒を使用する場合でも、その使用量を少なくしたり、他のハロゲンを含まない触媒と併用したり、反応後に水洗等の処理でハロゲンイオンを取り除く等で、2段法エポキシ樹脂中の塩素及び臭素含有量が合計1800ppm以下にすることが必要である。
【0041】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、リチウムイオン、ナトリウムイオンやカリウムイオン含有量が低く抑えられていることが必要であり、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン含有量の合計が4ppm以下であることが必要であり、さらに3ppm以下であることがより好ましく、さらに2ppm以下であることが非常に好ましい。リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン含有量が4ppmより多い場合、その他配合剤の添加で薄くなるにしても、それらの影響で、その硬化物の絶縁特性等が悪化する。具体的には、積層板の場合、耐マイグレーション特性が悪化したり、封止材の場合、半導体素子の配線が腐食し、信頼性が著しく悪化する。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物中のリチウムイオン、ナトリウムイオンやカリウムイオン含有量を低減させるには、エポキシ樹脂成分や硬化剤成分のリチウムイオン、ナトリウムイオンやカリウムイオン含有量が一定量以下である必要がある。具体的にはエポキシ樹脂成分や硬化剤成分を水洗等で精製することで達成することができる。
【0043】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、エポキシ樹脂の末端基不純物である可鹸化塩素濃度及びα−グリコール基濃度が低く抑えられていることが必要であり、具体的には可鹸化塩素濃度が500wtppm以下であり、α−グリコール基濃度が200meq/kg以下であることが必要であり、さらに可鹸化塩素濃度が450wtppm以下、α−グリコール基濃度が100meq/kg以下であることがより好ましく、さらに可鹸化塩素濃度が400wtppm以下、α−グリコール基濃度が50meq/kg以下であることが非常に好ましい。
この可鹸化塩素基とα−グリコール基は、本来硬化剤等と反応するエポキシ基であるべき部位が可鹸化塩素基やα−グリコール基に置き換わっているため、硬化物の架橋点がその分減少してガラス転移温度が低下したり、可鹸化塩素基やα−グリコール基自体が親水性の水酸基を含むため、硬化物の耐湿性が著しく悪化する等の問題が発生する。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、難燃性を有しているとはいえ、更に難燃性を付与するため、難燃剤を配合することが好ましい。それらの難燃剤の中でもノンハロゲン系の難燃剤が好ましい。そのようなノンハロゲンタイプの難燃剤としては、例えば、リン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物、リン酸アミド系化合物、メラミンリン酸塩、ホスファゼン化合物、表面被覆型赤リン等のリン化合物、あるいはエポキシ基と反応する反応基を有するリン含有化合物や、グアニジン化合物、トリアジン化合物等の窒素化合物、シリコーン化合物、さらに無機系難燃剤の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、スズ酸亜鉛、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらのノンハロゲンタイプの難燃剤は、単独で配合しても良いし、複数種を併用して配合しても良い。
これらのノンハロゲンタイプの難燃剤のうち、特にリン化合物系の難燃剤や金属水和物系の難燃剤が望ましい。
【0045】
この中で、リン化合物系の難燃剤を使用する場合、その配合量はエポキシ樹脂組成物中にリン元素の含有量として、0.1〜10質量%であることが好ましい。さらに0.2〜8質量%であることがより好ましく、0.3〜6質量%であることが非常に好ましい。リン元素の含有量が0.1質量%より少ないと、エポキシ樹脂組成物の硬化物の難燃性を更に付与する効果が非常に小さくなる。リン元素の含有量が10質量%より多いと、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性が低下したり機械的物性が低下し好ましくない。但し、難燃性の程度はリン元素の含有量が多い程良くなるので、目標とする難燃性に達する程度の含有量に調整する必要がある。本発明のエポキシ樹脂組成物は、難燃剤を配合しなくても元々燃えにくい特徴を有しており、従来公知のエポキシ樹脂組成物と比較してリン化合物系の難燃剤を配合して難燃性を更に付与するにしても、その配合量をより少なくできる。
【0046】
また、金属水酸化物を難燃剤として使用する場合、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを使用することが好ましい。その配合量は、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物中、金属水酸化物が1〜50質量%であることが好ましく、さらに5〜40質量%がより好ましい。但し、ここで言う金属水酸化物の質量%は、特に積層板の場合はガラスクロス等の基材を除いた成分中の質量比、また半導体封止材等で金属水和物以外の無機充填剤が配合されている場合は、その無機充填剤を除いた成分中の質量比を示す。
【0047】
金属水酸化物は高温にさらされた時に脱水して水分を発生することにより難燃性を発現するものであるが、もし金属水酸化物の配合量が50質量%より多い場合、難燃性は向上するが、実用時に比較的高温で処理された場合に脱水による水分の発生が多くなるため、逆に硬化物の耐熱性等に悪影響を及ぼす。但し、それ程高温で使用したり処理したりすることのない用途や、金属水酸化物の中でも脱水開始温度が高いものを使用する場合は、むしろ金属水酸化物の配合量が多い程、難燃性以外にも硬化物の熱膨張係数が低くなったり、剛性が高くなる利点もあるため、50質量%より多く使用してもかまわない。
また、これらの無機系難燃剤を使用する場合、それらの表面をシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤あるいはプライマー処理する等の表面処理を行ったものも使用できる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤、強化用繊維、硬化促進剤、カップリング剤、可塑剤、顔料、着色剤、希釈剤、可撓性付与剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、HALS等の光安定剤、ゴム微粒子等の強化剤、溶剤、ノンハロゲンタイプ難燃剤等を適宜に配合することができる。
【0049】
そのような無機充填剤の種類としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物、その他、ガラス粉、タルク、カオリン、ドロマイト、マイカ、石英粉末、グラファイト、炭化ケイ素、二酸化チタン、ボロンナイトライド、窒化ケイ素、二硫化モリブデン等が挙げられる。その形状としては、破砕型又は球状が挙げられる。さらに繊維質の補強剤や充填剤、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、カ−ボンファイバ−、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維等である。
【0050】
各種の無機充填剤は、単独で又は2種以上混合して用いられる。その使用量は、前述の無機系難燃剤及び強化用繊維との合計で、組成物全体の95質量%以下であり、好ましくは93質量%以下である。また、これらの無機充填剤からは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンが、樹脂中に溶出しないことが必要であるか、実質問題にならない程度の溶出量であることが好ましい。
【0051】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と硬化剤中の活性基との反応を促進する化合物である。
その硬化促進剤としては、例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル−S−トリアジン、2,4−ジシアノ−6−[2-ウンデシルイミダゾリル-(1)]-エチル-S-トリアジンなどのイミダゾール類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)-オクタンなどのジアザビシクロ化合物、それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
【0052】
それらの硬化促進剤となる化合物の中では、特に三級アミン類、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、及びそれらの塩等の窒素元素を含有する化合物が好ましい。
これらの硬化促進剤は、単独で使用しても良いが、2種以上を併用して使用することも可能である。また、硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂組成物中窒素元素の含有量が、0.05〜1質量%、好ましくは、0.02〜0.9質量%、さらに好ましくは0.03〜0.8質量%で用いられることが好ましい。
【0053】
硬化促進剤の使用量が少なく、エポキシ樹脂組成物中窒素元素の含有量が0.01質量%未満であると、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化促進効果が少なく、1質量%を越えると、硬化前のエポキシ樹脂組成物の保存安定性が悪化したり、硬化物の耐水性や電気絶縁性が悪くなるため好ましくない。
但し、本発明のエポキシ樹脂組成物は、従来公知の物と比較して硬化促進剤の配合量を増やし窒素元素含有量が多くても、前記の問題が発生し難く、逆に難燃性が良くなる効果があることを見出した。すなわち、窒素含有化合物の一種である前述の効果促進剤が、従来公知の組成物に比べ多量に配合されることにより、難燃性が付与されたものと推定される。
【0054】
さらに、最終的な樹脂の性質を改善する目的で、本発明のエポキシ樹脂組成物には、種々の硬化性モノマー、オリゴマー及び合成樹脂を配合することができる。例えば、モノエポキシ等のエポキシ樹脂用希釈剤、マレイミド系、ベンゾオキサジン系、液状ポリブタジエン系、シリコーン系等のモノマーやオリゴマー、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせることが出来る。これらの硬化性モノマー、オリゴマー及び合成樹脂の配合割合は、本発明のエポキシ樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量、すなわちエポキシ樹脂と硬化剤と必要に応じて配合するその他の樹脂の和を100質量部として、それに対して50質量部以下が好ましい。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤及び任意成分の配合手段としては、加熱溶融混合、ロ−ル、ニーダーによる溶融混練、適当な有機溶剤を用いての湿式混合及び乾式混合等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、積層板、封止材、接着剤、塗料及び電気絶縁材料等に使用する事が出来るが、特にプリント配線板用プリプレグ、プリント配線板用積層板、半導体封止用封止材、電気絶縁用粉体塗料、電気・電子部品用注型材及び電気・電子部品用接着剤等に使用する事が出来る。
【0056】
また、本発明における、エポキシ樹脂組成物を用いた組成物を積層板に適用した場合、その積層板の吸水率(プレッシャークッカー試験器、121℃×100%RH×5時間処理)が2質量%以下であることが好ましく、1.6質量%以下であることがより好ましく、さらに1.2質量%以下であることが最も好ましい。吸水率が2質量%より大きい場合、積層板の吸湿ハンダ耐熱性が悪化したり、吸湿、吸水による電気特性の悪化の問題が発生するため好ましくない。
【0057】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、例中の部は質量部、%は質量%を意味する。
【0058】
<共縮合ノボラック樹脂製造例1〜12>
p−クレゾール(市販試薬を精製したもの)、m−クレゾール(市販試薬を精製したもの)、37%ホルマリン、及びシュウ酸又は35%塩酸を表1に示す質量計量して、撹拌装置、温度計、加熱装置付きフラスコにとり、撹拌しながら160℃まで昇温し、160℃で3時間保持した後、徐々に減圧して未反応クレゾールを回収した。クレゾールの回収後、共縮合ノボラック樹脂1〜12を得た。共縮合ノボラック樹脂1〜12の性状は表1の通りである。
【表1】
【0059】
<実験例1〜20>
共縮合ノボラック樹脂1〜12、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミドを表2に示す質量比で溶液にし、各溶液を23℃で保存し観察した。その結果は表2に示す通りである。
【表2】
【0060】
実施例2〜9、比較例1〜3、参考例1〜3
表3で示す質量比で配合したワニスをガラスクロスに含浸させ、熱風乾燥機中で溶剤をとばしプリプレグを作成した。そのプリプレグを8枚重ね、それらの35μm厚の銅箔を重ね熱プレスして銅張り積層板を得た。それらのワニスの分析結果及び積層板特性は、表3に示す通りである。
【表3】
【0061】
<実施例10>
表4に示す質量比で配合した実施例10のワニスをガラスクロスに含浸させ、熱風乾燥機中で溶剤をとばしプリプレグを作成した。そのプリプレグ8枚を重ね、それらの35μm厚の銅箔を重ね熱プレスして銅張り積層板を得た。そのワニスの分析結果及び積層板特性は、実施例4のものとの比較として表4に示す。
【表4】
【0062】
<分析法>
p−クレゾール含有量:
共重合ノボラックを高速液体クロマトグラフィー、NMRスペクトル法で分析した。NMRスペクトル法については、特開平3−253859号公報及び特開平3−253859号公報に記載の分析法を参考にした。
塩素及び臭素の含有量:
燃焼法で測定した。
【0063】
可鹸化塩素:
エポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解し、1N−NaOHエチレングリコールモノブチルエーテル溶液25mlを加え、25℃で60分放置し、硝酸銀標準溶液にて電位差滴定をした。
α−グリコール基濃度:
エポキシ樹脂組成物のα−グリコール基濃度を過沃素酸酸化法により定量した。
【0064】
リチウム、ナトリウム、カリウム分:
原子吸光光度法にて濃度測定を行った。
リン含有量:
アルカリ溶融後、ICP発光分析により定量した。
窒素含有量:
積層板のリン元素定量分析をプラズマ発光分光法で行い、有機成分中のリン元素の質量%に換算して求めた。
水酸化アルミニウム含有量:
積層板中のアルミニウム元素定量分析をプラズマ発光分光法で行い、その値を水酸化アルミニウム量に換算して求めた。
【0065】
<評価方法>
ガラスクロス含有量:
積層板をルツボ中で800℃まで加熱し燃焼させたのち、ガラスクロスのみを取り出し質量を測定しガラスクロス含有量を求めた。
ガラス転移温度:
熱機械測定装置(TMA装置)にて、昇温速度3℃/minで測定し、TMA曲線の変曲点より求めた。
【0066】
吸水率:
5cm×5cmの積層板をプレッシャークッカー試験器にて、121℃×100%RH×5時間の条件で処理し、処理前後の質量変化から吸水率を計算した。
難燃性:
Underwriters Laboratoriesの"Test for Flammability of Plastic
Materials−UL 94"に従って試験を実施した。
銅はく引き剥がし強度:
銅はく(18μm厚)付き積層板をJIS−C6481に従って測定した。
【0067】
表2において、p−クレゾールの割合が99.5質量%以下である共縮合ノボラックであり、かつ溶剤中にシクロヘキサノン及び/又はジメチルホルムアミドを含む溶液で保存安定性が良好な結果が得られた。
表3において、p−クレゾールの割合が60質量%より低い共縮合ノボラック樹脂1及び2を使用した比較例1及び2は、燃焼試験時の残炎時間が長く難燃性に劣るのに対し、p−クレゾールの割合が60質量%以上の共縮合ノボラック樹脂を使用した参考例3、実施例2〜9は、難燃性が良好であった。
p−クレゾールの割合が多い程、難燃性は良好であり、比較例3のp−クレゾールの割合が100質量%の共縮合ノボラック樹脂が最も良好な難燃性を与えた。しかし、このものは、表2に示す結果から明らかなようにシクロヘキサノン又はジメチルホルムアミドを含む溶剤を使用した場合であっても溶液としての安定性が悪く実用化には適当でない。
【0068】
また、参考例1では、ワニス配合物中のCl、Br含有量が多い結果として、高温保持後の銅箔引き剥がし強度の劣化が激しく、積層板の吸水率も大きい結果となっている。参考例2では、ワニス配合物中のα−グリコール量が多くなっている結果として、積層板の吸水率が大きくガラス転移温度も低い結果となっている。
また、表4において、実施例4のワニス配合物中のエピキュア124の量を2.5倍としてワニス中の窒素含有量を増加させた実施例10では、さらに最大残炎時間が短くなっている。
【0069】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性、耐湿性や難燃性等に優れ、ハロゲンフリーで高度な難燃性を達成することが出来るため、特にプリント配線板用積層板、半導体封止用封止材、電気絶縁用粉体塗料、電気・電子部品用注型材料、電気・電子部品用接着剤等の電気・電子技術分野において有用である。
Claims (11)
- p−クレゾールとm−クレゾールとホルムアルデヒドよりなる共縮合ノボラックであって、p−クレゾールとm−クレゾールの合計量に対するp−クレゾールの割合が、90〜99.5質量%である共縮合ノボラックを硬化剤成分として含有することを特徴とする、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分から成るエポキシ樹脂組成物。
- 前記共縮合ノボラックは、その軟化点が70〜140℃であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記硬化剤成分は、シクロヘキサノン及び/又はジメチルホルムアミドを30〜100質量%含有する溶剤による前記共縮合ノボラック樹脂の固形分濃度30〜90質量%の溶液として使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 全塩素及び全臭素の含有量が合計1800ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 全アルカリ金属の含有量が合計4ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 難燃剤として、リン元素換算で0.1〜10質量%のリン化合物が配合されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 難燃剤として、金属水酸化物が1〜50質量%配合されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記金属水酸化物が水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする、請求項7記載のエポキシ樹脂組成物。
- 硬化促進剤として、窒素元素換算で0.05〜1質量%の窒素化合物が配合されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と無機繊維の織布状基材及び/又は不織布状基材とからなる電気・電子機器用難燃性エポキシ樹脂組成物。
- 請求項10記載の電気・電子機器用難燃性エポキシ樹脂組成物を成型、硬化させてなる電気・電子機器用成型体。
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