JP2010068732A - 高蛋白質ゲル状食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品において、高温処理を施したにもかかわらず配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離することなくゲル中に保持された高蛋白質ゲル状食品を提供する。
【解決手段】 食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品において、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合し、粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、pHが3.8〜4.5、平均粒子径が40μm以下である水中油型乳化物からなる加工液卵白であって、該加工液卵白が乳酸発酵されてなる加工液卵白を配合した高蛋白質ゲル状食品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、蛋白質を5%以上配合し、かつ食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品に関し、高温処理を施したとしても配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離することなくゲル中に保持された高蛋白質ゲル状食品に関する。
卵白は、他の蛋白質と比較しアミノ酸バランスに優れた蛋白原料であり、熱凝固性、起泡性、結着性、ゲル化能等の特殊な機能を有している。したがって、卵白は、上記特性を活かして様々な加工食品に利用されている。
このように汎用的に利用されている卵白に、上記以外の機能、例えば、油脂の保持能力、特に、レトルト処理等の高温処理を施したとしても同機能を有するならば、従来、高蛋白質ゲル状食品等の加工食品に配合されているガム質、澱粉、乳化剤等に代わり更なる利用が期待される。卵白は、卵白蛋白質を主成分としていることから、強力ではないが乳化力を有する。この卵白の乳化力を利用し、例えば、特開平8−56571号公報(特許文献1)には、高温下の保存においても高い乳化安定性を有する水中油型乳化物が提案されている。しかしながら、特許文献1で提案されている高温下の保存とは、せいぜいマヨネーズやスプレッド等の水中油型乳化物が流通過程で保管される程度の温度、具体的には、30℃程度のことである。したがって、加熱調理やレトルト処理等の加熱殺菌等、加熱処理を伴う加工食品に卵白を配合すると、卵白が加熱変性し、加工食品に配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離し、加工食品の外観を損なうという問題があった。
また、高齢者や、疾病等が原因で経口栄養摂取にリハビリが必要な人等は、嚥下(食物を飲み込むこと)機能が低下しているため、加工食品に配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂のような低粘度の液体が分離した場合、むせ易く誤嚥により肺炎を発症する場合がある。さらに、誤嚥を恐れ十分な食物摂取を行うことができず、蛋白質、脂質、糖質、ミネラル類、ビタミン類といった種々の栄養素が不足がちになり、特に高齢者は蛋白質不足が問題になる場合が多い。そこで、従来より、油脂の分離を起こすことなくゲル中に安定に保持させた高栄養、高蛋白質ゲル状食品が求められてきた。
しかし、高蛋白質ゲル状食品は、蛋白質配合量が高いほど高温処理等による蛋白質変性の影響を受けるため、高蛋白質ゲル状食品に特有の問題である油脂の分離を抑制することは困難であり、油脂が分離することなくゲル中に安定に保持された高蛋白質ゲル状食品が要望されている。
特開平8−56571号公報 特開2006−320288号公報 特開昭53−9353号公報
本発明の目的は、食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品において、高温処理を施したにもかかわらず配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離することなくゲル中に保持された高蛋白質ゲル状食品を提供するものである。
本発明者等は、上記目的を達成すべく卵白の加工方法について鋭意研究を重ねた。その結果、食用油脂を配合させた卵白混合液を特定処理した加工液卵白、さらに当該加工液卵白を乾燥した加工乾燥卵白を高蛋白質ゲル状食品に配合するならば、意外にも高温処理を施したにもかかわらず配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離することなくゲル中に保持されることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)蛋白質を5%以上配合し、かつ食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品において、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合し、粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、pHが3.8〜4.5、平均粒子径が40μm以下である水中油型乳化物からなる加工液卵白であって、該加工液卵白が乳酸発酵されてなる加工液卵白を配合したことを特徴とする高蛋白質ゲル状食品、
(2)前記加工液卵白が、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合した卵白混合液をpHが3.8〜4.5となるように乳酸発酵し、次いで加熱殺菌し、該殺菌発酵液を30〜55℃に冷却した後、均質化処理を施して得られる加工液卵白である(1)記載の高蛋白質ゲル状食品、
(3)前記加工液卵白に乾燥処理が施されてなる加工乾燥卵白を配合した(1)又は(2)記載の高蛋白質ゲル状食品、
(4)前記加工液卵白又は前記加工乾燥卵白の配合量が、高蛋白質ゲル状食品全体に対し固形分換算で0.5〜15%である(1)乃至(3)記載の高蛋白質ゲル状食品、
(5)咀嚼・嚥下困難者用である(1)乃至(4)記載の高蛋白質ゲル状食品、である。
なお、本出願人は、既に加工液卵白又は加工乾燥卵白を含む呈味改善材に係る発明を出願している(特開2006−320288号公報:特許文献2)。特許文献2に開示の加工液卵白又は加工乾燥卵白は、食用油脂を配合させることなく、卵白及び乳酸菌資化性糖類を含む水溶液に乳酸菌を添加して発酵させたものである。しかしながら、前記加工液卵白又は加工乾燥卵白を、食用油脂や肉を配合した高蛋白質ゲル状食品等の加工食品に配合すると、加熱調理やレトルト処理等の加熱処理を伴うためか、加工食品中に保持されていた油脂が分離し、加工食品の外観を損なうという問題があった。
また、特開昭53−9353号公報(特許文献3)には、卵を用いたペースト状醗酵食品の製造方法に関し、卵として卵白が例示され、加工液卵白又は加工乾燥卵白を製した後に当該加工液卵白又は加工乾燥卵白と食用油脂とを均質化処理したペースト状発酵食品が示唆されている。しかしながら、得られる発酵食品は、食用油脂を本願発明と同程度配合させた場合、当該発酵食品を食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品等の加工食品に配合すると、加熱調理やレトルト処理等の加熱処理を伴うためか、油脂が分離し、特許文献2の加工液卵白又は加工乾燥卵白と同様、加工食品の外観を損なうという問題があった。
本発明によれば、高温処理を施したにも拘わらず配合した食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離することなくゲル中に保持された外観上好ましい高蛋白質ゲル状食品を提供することが出来る。したがって、高蛋白質ゲル状食品の更なる需要拡大が期待できる。
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
本発明は、食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品において、特定の加工卵白を配合した高蛋白質ゲル状食品に係る発明であるが、前記加工卵白の加工液卵白の製造方法に特徴を有することから、説明上、まず本発明で用いる加工液卵白の代表的な製造方法を中心に詳述する。
本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白は、卵白及び食用油脂を主成分とした加工液卵白であって、その製造方法に特徴を有する。つまり、本発明で用いる加工液卵白は、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合した卵白混合液をpHが3.8〜4.5となるように乳酸発酵し、次いで加熱殺菌し、該殺菌発酵液を30〜55℃に冷却した後、均質化処理を施すことを特徴とし、食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品に前記加工液卵白を添加することにより、高温処理を施したにも拘わらず食用油脂及び/又は食肉由来の油脂が分離することなくゲル中に保持された高蛋白質ゲル状食品が得られる。
上記加工液卵白で用いる卵白蛋白質としては、水分を除く卵白成分の9割が卵白蛋白質であることから、例えば、鶏等の鳥類の卵を割卵し卵黄を分離したものであり工業的に得られる生卵白、またこれを殺菌、凍結したもの、濃縮又は希釈したもの、特定の成分(リゾチームやアビジン等)を除去したもの、乾燥させたもの等を用いると良い。また本発明においては、効果に影響を及ぼさない程度に卵黄やその他の卵由来の成分を含んでいても差し支えない。
また、上記加工液卵白で用いる食用油脂としては、食用に供される油脂であればいずれのもので良い。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油等の動植物油又はこれらの精製油、あるいはMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的、酵素的処理等を施して得られる油脂等が挙げられる。
本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白は、まず、卵白及び食用油脂を配合した卵白混合液を調製する。卵白混合液に対する卵白の配合量は卵白蛋白質換算で2〜8%、好ましくは3〜8%である。つまり、卵白蛋白質の原料として生卵白やこれを殺菌した殺菌卵白を用いた場合、五訂食品成分表2001(女子栄養大学出版部発行)によると生卵白は水分が88.4%、蛋白質が10.5%であることより、卵白混合液に対し生卵白を19〜76%、好ましくは28.5〜76%配合することとなる。また、卵白混合液に対する食用油脂の配合量は5〜20%、好ましくは5〜15%である。本発明の加工液卵白は、前記卵白混合液を後述する乳酸発酵により発酵させたものである。したがって、卵白混合液中の卵白蛋白質及び食用油脂の配合量は、本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白中の配合量となる。
卵白混合液中の卵白蛋白質の配合量が前記範囲より少ない、あるいは食用油脂の配合量が前記範囲より少ないと、得られる加工液卵白は、レトルト処理等の高温処理を施した時、油脂の保持能力を有さず好ましくない。一方、卵白蛋白質の配合量が前記範囲より多いと、乳酸発酵前の殺菌を兼ねた加熱処理において、全体がセットしてしまう場合があり、その後の乳酸発酵が出来ない場合がある。また、食用油脂の配合量が前記範囲より多いと、乳酸発酵が困難となる場合がある。
卵白混合液は、次工程で乳酸発酵処理を施すが、乳酸発酵の効率を改善する目的で一般的に添加されている乳酸菌資化性糖類、発酵促進物質及びpH調整剤を卵白混合液に配合させることが好ましい。また、卵白にはリゾチーム等の微生物増殖抑制因子を配合するが、乳酸発酵を円滑に促進する目的で、卵白混合液の加熱殺菌も兼ねて前記因子の失活処理を施すことが好ましい。
乳酸菌資化性糖類としては、例えば、単糖類(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン等)、二糖類(ラクトース、マルトース、スクロース、セルビオース、トレハロース等)、オリゴ糖類(特に3〜5個の単糖類が結合しているもの)、ブドウ糖果糖液糖等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて卵白混合液に配合させることが出来る。また、卵白混合液に対する乳酸菌資化性糖類の配合量は、1〜15%が好ましく、2〜10%がさらに好ましい。乳酸菌資化性糖類の配合量が前記範囲より少ないと、乳酸菌資化性糖類不足により発酵が十分に進行しない場合があり、一方、前記範囲より多いと浸透圧上昇により発酵が進行しにくくなる傾向がある。
発酵促進物質としては、発酵を促進するための成分、例えば、ビタミン(ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン等)、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、又は核酸等を含んだものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、カゼイン加水分解物、卵黄、脱脂粉乳、ビタミン類、補酵素類、ミネラル類等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて卵白混合液に配合させることが出来る。また、卵白混合液に対する発酵促進物質の配合量は、1〜20%が好ましく、2〜20%がさらに好ましい。発酵促進物質の配合量が前記範囲より少ないと、発酵促進としての機能を発揮し難く、一方、前記範囲より多くしたとしても配合量に応じた発酵促進機能が期待し難く経済的でない。
pH調整剤としては、卵白混合液中の卵白がアルカリ性を呈すること、及び乳酸発酵の至適pHが5.0〜7.5であることより、酸剤を用いることが好ましい。酸剤としては、具体的には、例えば、乳酸、クエン酸、酢酸、塩酸等が挙げられ、本発明は乳酸発酵処理を施すことから、乳酸が好ましい。なお、pH調整剤の添加量は、卵白混合液が上記至適pHとなるように添加すれば良い。また、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤と組み合わせても良い。
本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白は、卵白蛋白質及び食用油脂、並びに乳酸発酵の効率を改善する目的で一般的に添加されている乳酸菌資化性糖類及び発酵促進物質を配合し、pH調整剤により乳酸発酵の至適pHに調整した卵白混合液を、微生物増殖抑制因子の失活と加熱殺菌を兼ねて加熱処理を施すと良い。加熱処理は、卵白蛋白質が加熱変性される程度の条件で行えば良く、具体的には、60〜110℃が好ましく、70〜95℃がより好ましい。前記範囲より加熱温度が低いと卵白蛋白質中に存在する微生物増殖抑制因子の失活や殺菌が不十分で乳酸発酵が不十分となる場合があり、前記範囲より加熱温度が高いと褐変や焦げ付きにより工業的利用が困難になる場合がある。また、処理時間は、加熱温度にもよるが、1〜60分が好ましく、5〜40分がより好ましい。卵白混合液の加熱処理は、加熱による卵白蛋白質の局部的な凝固物の発生を防止するため、流動性を持たせながら行うことが好ましい。例えば、攪拌機で攪拌したり、プレートヒーターで流しながら行う等の方法で行うと良い。
次に、得られた卵白蛋白質及び食用油脂を配合した卵白混合液を乳酸発酵の至適温度、具体的には、15〜50℃に冷却した後、pHが3.8〜4.5となるように乳酸発酵する。上記食用油脂を配合した卵白混合液を乳酸発酵し、その後の工程を行って得られる本発明で用いる加工液卵白は、粘度が800mPa・s以上となり、高温処理したとしても油脂の保持能力を有する。これに対し、後述の試験例で示しているとおり食用油脂を配合しない卵白混合液を本発明と同様、乳酸発酵させ均質化処理して加工液卵白を製した後、当該加工液卵白に食用油脂を添加して再度、均質化処理したものは、粘度が800mPa・sを下回り、高温処理した場合の油脂の保持能力を有さず好ましくない。また、乳酸発酵もpHが4.5以下となるように行わないと、高温処理を施した時、油脂の保持能力を有さず好ましくない。なお、乳酸発酵が進行するとpHが徐々に低下するが、pHが低くなり過ぎると酸により逆に乳酸菌が死滅し発酵効率が低下し、実質的にpHを3.8より低くすることが出来ない。
乳酸発酵に用いる乳酸菌は、特に限定するものではなく、一般的にヨーグルトやチーズの製造に利用される例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus bulgaricus等)、ストレプトコッカス属(Streptococcus thermophilus、Streptococcus diacetylactis等)、ラクトコッカス属(Lactococcus lactis等)、ロイコノストック属(Leuconostoc cremoris等)、エンテロコッカス属(Enterococcus faecalis)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium Bbifidum等)等が挙げられ、本発明の乳酸発酵は、これらの乳酸菌の1種又は2種以上を含んだ乳酸菌スターターを用いると良い。また、乳酸発酵の条件も、一般的な条件で行うと良く、具体的には、例えば、乳酸菌スターターを1mLあたり好ましくは10〜10、さらに好ましくは10〜10になるように卵白混合液に添加し、15〜50℃で8〜72時間発酵すると良い。
次に、得られた乳酸発酵液を乳酸菌を死滅させるために加熱殺菌し殺菌発酵液を調製する。加熱殺菌は、具体的には、70〜140℃で2秒〜30分行うことが好ましく、70〜95℃で30秒〜20分行うことがより好ましい。
本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白は、上記得られた殺菌発酵液を30〜55℃、好ましくは35〜50℃に冷却した後、均質化処理を施す必要がある。殺菌発酵液を冷却せずに、あるいは冷却しても冷却温度が前記範囲より高い状態で均質化処理を施すと、得られる加工液卵白は、平均粒子径が40μmより大きく、高温処理を施した時、油脂の保持能力を有さず好ましくない。一方、冷却温度が前記範囲より低い状態で均質化処理を施すと、得られる加工液卵白は、粘度が800mPa・sより低く、高温処理を施した時、油脂の保持能力を有さず好ましくない。
冷却は、工業的規模での生産性を考慮し冷却水を用いて行うと良い。また、均質化処理は、加工液卵白の平均粒子径が40μm以下となるようなせん断力に優れた均質化処理機であればいずれのものでも良い。例えば、高圧ホモゲナイザーを用いる場合は、工業規模での生産性を考慮し、圧力5〜100MPa(ゲージ圧)で処理することが好ましく、8〜70MPaで処理することがより好ましい。
均質化処理を施した上記加工液卵白は、常法に則り、室温(30℃以下)以下に冷却し、細菌面を考慮し10℃以下で冷蔵保管する。
以上の製造方法で得られた加工液卵白は、卵白蛋白質2〜8%(好ましくは3〜8%)及び食用油脂5〜20%(好ましくは5〜15%)を配合し、粘度が800mPa・s以上(好ましくは1,000mPa・s以上)(品温10℃)、pHが3.8〜4.5、平均粒子径が40μm以下(好ましくは30μm以下)である水中油型乳化物からなる加工液卵白であり、当該加工液卵白が乳酸発酵されたものである。これにより、本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白は、レトルト処理等の高温処理を施したとしても油脂の保持能力を有している。ここで、加工液卵白が乳酸発酵されたものとは、加工液卵白の製造工程の何れかで乳酸発酵工程を含んでいるということである。
これに対し、後述の試験例で示しているとおり卵白蛋白質を2〜8%及び食用油脂を5〜20%配合した卵白混合液を乳酸発酵させることなくpHを3.8〜4.5となるように調整し、その後、均質化処理を施したものは、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合し、粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、pHが3.8〜4.5、平均粒子径が40μm以下である水中油型乳化物からなる加工液卵白が得られる。しかしながら、上述した加工液卵白は、加工液卵白を乳酸発酵されていないためか、本発明で用いる加工液卵白と同様の高温処理を施した時、油脂の保持能力を有したものでなく好ましくない。
また、本発明で用いる加工液卵白に、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉等の増粘剤を安定化剤として添加した場合、本発明で用いる加工液卵白の上記粘度は、当該増粘剤を添加していない時の粘度である。また、粘度は品温10℃の時の粘度であり、BH形粘度計を用いローター:No.5、回転数:20rpmの条件で測定し、2回転後の示度により算出した値である。
また、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装(株)製、商品名「マイクロトラックMT3300EXII」)を用いて、試料をセットしてから超音波をかけることなく1.5分後に測定開始し、2.5分後に測定終了して得られた値である。
本発明で用いる加工液卵白において、粘度の上限及び平均粒子径の下限については、特に規定していないが、工業的規模での生産性、並びに卵白蛋白質及び食用油脂の配合量より、上述した方法で得られる加工液卵白は、粘度が20,000mPa・s以下(品温10℃)、平均粒子径が1μm以上程度である。
本発明は、長期保管を考慮し、上記本発明で用いる加工液卵白に、必要に応じデキストリン等の賦形材や清水等の水系媒体を添加した後、乾燥処理を施した加工乾燥卵白としても良い。乾燥処理は、例えば、スプレードライ、フリーズドライ、パンドライ等、任意の方法を採用することが出来る。特に、スプレードライは、瞬時に乾燥されるためか、加工乾燥卵白中の食用油脂の油滲みが殆どなく、上述した本発明で用いる加工液卵白と同様、高温処理を施したとしても油脂の保持能力を有したものが得られ易いことから好ましい。
本発明の高蛋白質ゲル状食品は、蛋白質を5%以上配合し、かつ、食用油脂及び/又は食肉を配合したもので、高温処理を施したものである。少量の食事で十分な栄養を摂取する点から、蛋白質6%以上が好ましく、8%以上がより好ましい。なお、蛋白質の測定方法は、栄養表示基準(平成8年5月20日厚生省告示第146号)別表第1の第3欄記載の方法、すなわち、窒素定量換算法に準ずる。
本発明の高蛋白質ゲル状食品に配合する食用油脂は、特に限定するものではなく、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヤシ油、綿実油、オリーブ油、紅花油、魚油、卵黄油等の動植物油、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂を挙げることができる。本発明の高蛋白質ゲル状食品に配合する食肉は、特に限定するものではなく、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉等の畜肉類、魚、貝、エビ、イカ、タコ等の魚介類等を挙げることができる。また、本発明の高蛋白質ゲル状食品の食用油脂及び/又は食肉の配合量は、高蛋白質ゲル状食品に通常配合されている量を配合すれば良く、具体的には、高蛋白質ゲル状食品全体に対し油脂換算で0.5〜30%が好ましい。前記範囲未満では高温処理時の油脂分離が問題にならない場合があり、前記範囲より多い場合は十分に油脂を保持できない場合がある。このような食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品としては、バラエティーに富んだ料理メニューに応用することができ、健常者向けの食事に近づけるため、本発明の効果を損なわない範囲で食肉等の固形状の原料をペースト状にして配合することにより、美味しくて、食欲の湧くバラエティーに富んだ高蛋白質ゲル状食品とすることができる。ペースト状にする方法は、特に限定するものではなく、具体的には、例えば、これら食材をその他原料とともに加熱調理後、ミキサーやコミトロール等を用いてペースト化する方法等が挙げられる。
本発明の高蛋白質ゲル状食品における高温処理とは、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、特に、過度な熱がかかるにも関わらず油分離を生じないので、長期常温保存を可能とするために、当該食品の中心部の品温を120℃、4分間以上又はこれと同等以上の効力を有する条件で加熱したいわゆるレトルト処理においてさらに好ましい。なお、高温処理の上限の温度としては、150℃以下が好ましい。高温処理の方法は、例えば、加熱調理や加熱殺菌を目的に、レトルト加熱、蒸煮、湯煎、高温短時間加熱等、加工食品で一般的に行われている高温処理方法をいう。
本発明の高蛋白質ゲル状食品に用いる加工液卵白又は加工乾燥卵白の配合量は、本発明の効果を奏する程度配合すれば良く、具体的には、高蛋白質ゲル状食品全体に対し加工液卵白の固形分換算で0.5〜15%が好ましく、1〜10%がより好ましい。配合量が前記範囲より少ないと本発明の効果である高温処理時の油脂の保持能力が発揮されない場合があり、一方、前記範囲より配合量を多くしたとしても、それ以上の効果が期待できず経済的でないためである。なお、加工液卵白の固形分換算とは、加工液卵白を用いた場合は、当該加工液卵白から水分を除いた部分を意味し、加工乾燥卵白を用いた場合は、原料の本発明の加工液卵白から水分を除いた部分を意味し、別途添加した賦形材等は含まれない。
本発明における加工液卵白又は加工乾燥卵白以外の蛋白質原料は、特に限定するものではないが、具体的には、例えば、卵白以外に、全卵、卵黄、ホスフォリパーゼA処理卵黄、卵白アルブミン等の卵蛋白質、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエー、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン等の乳蛋白質、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白等の大豆蛋白質、小麦蛋白質、血清蛋白質、ゼラチン、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉等の畜肉蛋白質、魚、貝、エビ、イカ、タコ等の魚介蛋白質及び/又は各蛋白質の加水分解物等が挙げられる。
本発明の高蛋白質ゲル状食品は、咀嚼・嚥下困難者用に利用される場合が多い。誤嚥を防止するためには、1×10〜1×10N/mの固さを有する物性となるようにゲル化したものが好ましく、1×10〜1×10N/mがより好ましい。前記範囲未満の場合では軟らか過ぎ誤嚥の恐れがあり、前記範囲より大きい場合では固すぎ気管に詰まる恐れがある。なお、測定方法は、厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知(平成6年2月23日発行)衛新第15号「高齢者用食品の標示許可の取扱いについて」記載の別紙「高齢者用食品の試験方法」に準ずる(直径20mmのプランジャー使用、圧縮距離10mm/s、クリアランス5mm、測定温度20±2℃)。
高蛋白質ゲル状食品には、本発明の高蛋白質ゲル状食品の必須原料である加工液卵白又は加工乾燥卵白、加工液卵白又は加工乾燥卵白以外の蛋白質原料、並びに食用油脂及び/又は食肉以外に、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し配合することができる。例えば、野菜、食酢、食塩、砂糖、醤油、味噌、核酸系旨味調味料、柑橘果汁、ケチャップ等の各種調味料、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化剤、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉等の増粘剤、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、各種スパイスオイル、香料、香辛料、色素等が挙げられる。
また、高蛋白質ゲル状食品の製造方法は、本発明で用いる加工液卵白又は加工乾燥卵白、加工液卵白又は加工乾燥卵白以外の蛋白質原料、並びに食用油脂及び/又は食肉を配合し常法に則り製造すれば良いが、例えば、以下のように製造することができる。まず、風味の点から健常者向けの食事に配合する原料を適宜選択する。続いて、製品100g当たりの蛋白質が5g以上となるように、本発明で用いる加工液卵白又は加工乾燥卵白、及び上記卵、乳、大豆及び食肉等の蛋白質原料の配合量を決定する。次に、1×10〜1×10N/mの固さになるように、増粘剤の配合量を決定する。配合に基づき食用油脂等の原料を用意し、食肉及び野菜等の固形状の原料については、ニーダーに投入し加熱調理し、これに、その他の原料を投入して混合した後、コミトロール(アーシャル社製、モデルナンバー1700、200ブレード)等でペースト化処理する。そして、ペースト化処理した高蛋白質ゲル状食品原料を耐熱性容器に充填密封後、110〜125℃でレトルト処理し、高蛋白質ゲル状食品を製する。
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
[本発明品用加工液卵白の製造例1]
生卵白34部(卵白蛋白質3.6部)、菜種油10部、スクロース6部、生卵黄0.5部、酵母エキス0.05部、50%乳酸0.15部及び清水49.3部からなる卵白混合液100部(pH6.8)を攪拌、調製した。得られた卵白混合液を高速で攪拌させながら85℃で30分間加熱した後、冷水により35℃まで冷却し、次いで乳酸菌スターター0.01部(Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilus)を添加し、35℃で48時間発酵しpH4.2とした。次に、発酵液を85℃で5分間加熱殺菌した後、冷水により40℃まで冷却し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、冷水により10℃に冷却し本発明品用加工液卵白1を製した。
得られた本発明品用加工液卵白1は、卵白蛋白質3.6%、食用油脂10%配合し、固形分20%、粘度2,200mPa・s(品温10℃)、pH4.2、平均粒子径25μmである水中油型乳化物からなり、加工液卵白が乳酸発酵されたものである。
[本発明品用加工液卵白の製造例2]
生卵白50部(卵白蛋白質5.3部)、菜種油12部、スクロース6部、生卵黄0.5部、酵母エキス0.05部、50%乳酸0.15部及び清水31.3部からなる卵白混合液100部(pH7.0)を攪拌、調製した。得られた卵白混合液を高速で攪拌させながら75℃で15分間加熱した後、冷水により35℃まで冷却し、次いで乳酸菌スターター0.01部(Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilus)を添加し、35℃で24時間発酵しpH4.4とした。次に、発酵液を85℃で5分間加熱殺菌した後、冷水により45℃まで冷却し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて30MPaの圧力で処理し、冷水により10℃に冷却し本発明品用加工液卵白2を製した。
得られた本発明品用加工液卵白2は、卵白蛋白質5.3%、食用油脂12%を配合し、固形分24%、粘度が7,200mPa・s(品温10℃)、pHが4.4、平均粒子径が18μmである水中油型乳化物からなり、加工液卵白が乳酸発酵されたものである。
[本発明品用加工乾燥卵白の製造例3]
実施例1で得られた加工液卵白20部、デキストリン2部及び清水78部を混合した後、当該混合液を送風温度160℃、排風温度65℃の条件でスプレードライし本発明品用加工乾燥卵白3を製した。
得られた本発明品用加工乾燥卵白3は、卵白蛋白質11.5%、食用油脂32%を含有し、固形分64%、デキストリン32%、水分4%、pH4.2であり、乳酸発酵された加工液卵白を粉末化したものである。
[比較品用加工液卵白の製造例1]
本発明品用加工液卵白の製造例1において、菜種油10部を除いた配合で、本発明品用加工液卵白の製造例1の全工程と同様の方法で食用油脂を配合しないで乳酸発酵させた加工液卵白を製した後、当該加工液卵白90部に菜種油10部を添加混合し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、冷水により10℃に冷却し比較品用加工液卵白1を製した。
得られた比較品用加工液卵白1は、卵白蛋白質3.6%、食用油脂10%配合し、固形分20%、粘度700mPa・s(品温10℃)、pH4.2、平均粒子径22μmである水中油型乳化物からなり、加工液卵白が乳酸発酵されたものである。
[比較品用加工液卵白の製造例2]
本発明品用加工液卵白の製造例1において、本発明品用加工液卵白の製造例1と同様の配合で、本発明品用加工液卵白の製造例1の乳酸菌を添加する前までの工程を行った後、50%乳酸でpHを4.2に調整し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、冷水により10℃に冷却し比較品用加工液卵白2を製した。
得られた比較品用加工液卵白2は、卵白蛋白質3.6%、食用油脂10%を配合し、固形分20%、粘度が1,500mPa・s(品温10℃)、pHが4.2、平均粒子径が21μmである水中油型乳化物からなるものであるが、加工液卵白が乳酸発酵されたものでない。
[試験例1]
本発明品用加工液卵白1及び2、並びに比較品用加工液卵白1及び2のいずれかの加工液卵白、分離大豆蛋白質、大豆サラダ油及びペクチンを配合した後述のモデル高蛋白質ゲル状食品を調製し、各加工液卵白の製造方法の違いによるモデル高蛋白質ゲル状食品の油脂分離への影響を調べた。原料として、蛋白質配合量が7%程度となるように、下記配合表に従い、各加工液卵白(蛋白質配合量3.6%又は5.3%)、分離大豆蛋白質(蛋白質含有量90%)、大豆サラダ油、ペクチン及び清水を加えて高速攪拌機で均一に攪拌混合した。続いて、前記攪拌混合した原料をカップ型の耐熱性合成樹脂製容器(70ml容量)に60gずつ充填し、イージーピール可能な耐熱性合成樹脂製の蓋材で密封後、熱水式レトルト中で120℃、35分間加熱殺菌した後、冷却して、高蛋白質ゲル状食品を得た。
製した高蛋白質ゲル状食品(蛋白質7%配合)について、35℃、4週間保存後の外観目視検査により油脂の分離状態を下記の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:殆ど油脂の分離が観察されない。
○:僅かに油脂分離が観察されるもの問題とならない程度である。
△:少量の油脂が分離している。
×:明らかに油脂が分離している。
表1より、乳酸発酵した油脂不配合の加工液卵白に食用油脂を添加し均質化処理した比較品用加工液卵白1は、平均粒子径が40μm以下であるが、粘度が800mPa・sより低く、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、明らかに油脂が分離していた。また、乳酸発酵していない比較品用加工液卵白2は、粘度も800mPa・s以上であり、平均粒子径も40μm以下であるが、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、明らかに油脂が分離していた。これに対し、油脂配合の状態で乳酸発酵した本発明用加工液卵白1及び2は、粘度が800mPa・s以上、平均粒子径が40μm以下であり、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、油脂が殆ど分離することなく高蛋白質ゲル状食品中に保持されていた。
[試験例2]
加工液卵白の卵白蛋白質及び食用油脂の配合量の違いによる高蛋白質ゲル状食品の油脂分離への影響を調べるため、本発明品用加工液卵白の製造例1に準じて、生卵白及び菜種油の配合量を表3のように変えた加工液卵白を調製した。なお、得られた加工液卵白は、いずれも粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、pHが3.8〜4.5、平均粒子径が40μm以下である水中油型乳化物からなる加工液卵白であって、当該加工液卵白が乳酸発酵されたものである。また、評価試験は、試験例1と同様のモデル高蛋白質ゲル状食品(蛋白質配合量7%)を調製し、外観を目視検査で評価した。
表3より、卵白蛋白質の配合量が2%より少ない加工液卵白、あるいは食用油脂が5%より少ない加工液卵白は、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時少量あるいは明らかに油脂が分離していた(卵白蛋白質配合量1.0%の場合、又は食用油脂配合量3%の場合)。これに対し卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合した加工液卵白は、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時油脂は殆ど分離していないか、あるいは問題とならない程度であり高蛋白質ゲル状食品中に保持されていた。
[試験例3]
加工液卵白の製造方法の違いによる高蛋白質ゲル状食品の油脂分離への影響を調べるため、本発明品用加工液卵白の製造例1に準じて、乳酸発酵し加熱殺菌した後の冷却温度を表4のように変えた加工液卵白を調製した。なお、得られた加工液卵白は、いずれもpHが3.8〜4.5である水中油型乳化物からなる加工液卵白であって、当該加工液卵白が乳酸発酵されたものである。また、評価試験は、試験例1と同様のモデル高蛋白質ゲル状食品を調製し、外観を目視検査で評価した。
表4より、冷却を55℃より高い状態までしか冷却を行わなかった加工液卵白は、粘度が800mPa・s以上(品温10℃)であるが、平均粒子径が40μmより大きく、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、少量の油脂が分離していた(冷却温度75℃の場合)。また、冷却を30℃より低い状態まで行った加工液卵白は、平均粒子径が40μm以下であるが、粘度が800mPa・s(品温10℃)より低く、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、少量の油脂が分離していた(冷却温度20℃の場合)。これに対し、冷却を30〜55℃まで行った加工液卵白は、粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、平均粒子径が40μm以下であり、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、油脂は殆ど分離していないか、あるいは問題とならない程度でありソース中に保持されていた。特に、冷却を35〜50℃まで行った加工液卵白は、粘度が1,000mPa・s以上(品温10℃)、平均粒子径が30μm以下であり、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、油脂が殆ど分離することなく高蛋白質ゲル状食品中に保持されていた。
[試験例4]
加工液卵白の製造方法の違いによる高蛋白質ゲル状食品の油脂分離への影響を調べるため、本発明品用加工液卵白の製造例1に準じて、処理時間を変え、下記表5のpHとなるように乳酸発酵の程度を調整した加工液卵白を調製した。なお、得られた加工液卵白は、いずれも粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、平均粒子径が40μm以下である水中油型乳化物からなる加工液卵白であって、当該加工液卵白が乳酸発酵されたものである。また、評価試験は、試験例1と同様のモデル高蛋白質ゲル状食品を調製し、外観を目視検査で評価した。
表5より、pHが4.5より高い加工液卵白は、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、少量の油脂が分離していた(pH5.8の場合)。pHが3.8〜4.5となるように乳酸発酵させた加工液卵白は、モデル高蛋白質ゲル状食品に配合した時、油脂が殆ど分離することなく高蛋白質ゲル状食品中に保持されていた。
[実施例1]
〔実施例1〕(鶏肉とタマネギの炒めもの風
高蛋白質ゲル状食品)
下記の配合の高蛋白質ゲル状食品を製した。つまり、鶏肉とタマネギの炒めもの風とするために、原料として、鶏もも肉、タマネギ、大豆サラダ油、醤油及び食塩、白胡椒、清水を用意した。次に、蛋白質配合量が7%、固さが1×10〜1×10N/mとなるように、分離大豆蛋白、製造例1で得られた本発明品用加工液卵白1及びペクチンを用意した。
すなわち、原料として、鶏もも肉(蛋白質含有量20%)10部、タマネギ2部、大豆サラダ油10部、醤油0.3部、食塩0.4部、白胡椒0.02部、分離大豆蛋白質(蛋白質含有量90%)4.5部、製造例1で得られた加工液卵白(本発明品用加工液卵白1)(蛋白質配合量3.6%、固形分換算20%)20部、ペクチン0.3部及び清水52.48部を用意した。
次に、攪拌機付きニーダーで鶏もも肉及びタマネギを大豆サラダ油の配合の一部でソテーし、これに清水、醤油、食塩、白胡椒、分離大豆蛋白、乳酸発酵卵白及びペクチンを加えて攪拌混合した後、コミトロール(アーシャル社製、モデルナンバー1700、200ブレード)でペースト化処理した。
続いて、前記ペースト化処理した原料をカップ型の耐熱性合成樹脂製容器(70ml容量)に60gずつ充填し、イージーピール可能な耐熱性合成樹脂製の蓋材で密封後、熱水式レトルト中で120℃、35分間加熱殺菌した後、冷却して、高蛋白質ゲル状食品を得た。
製した高蛋白質ゲル状食品について、35℃、4週間保存後の外観目視検査を行った結果、油脂の分離は確認されず均一で滑らかなゲル状の物性を維持していた。なお、高蛋白質ゲル状食品の蛋白質配合量は7%、高蛋白質ゲル状食品全体に対し本発明品用加工液卵白1の配合量は固形分換算で4%であり、その固さは4×10N/mであった。
[実施例2]
本発明品用加工液卵白1(蛋白質配合量3.6%、固形分換算20%)20%を、製造例2で得られた本発明品用加工液卵白2(蛋白質配合量5.3%、固形分換算24%)5%に変えた以外は、実施例1に準じて高蛋白質ゲル状食品を製した。
製した高蛋白質ゲル状食品について、35℃、4週間保存後の外観目視検査を行った結果、油脂の分離は確認されず均一で滑らかなゲル状の物性を維持していた。なお、高蛋白質ゲル状食品の蛋白質配合量は6%、高蛋白質ゲル状食品全体に対し本発明品用加工液卵白2の配合量は固形分換算で1.2%であり、その固さは1×10N/mであった。
[実施例3]
本発明品用加工液卵白1(蛋白質配合量3.6%、固形分換算20%)20%を、製造例3で得られた本発明品用加工乾燥卵白3(固形分換算64%(蛋白質配合量11.5%、脂質配合量32%)、デキストリン32%、水分4%)14%に変えた以外は、実施例1に準じて高蛋白質ゲル状食品を製した。
製した高蛋白質ゲル状食品について、35℃、4週間保存後の外観目視検査を行った結果、油脂の分離はほとんど確認されず均一で滑らかなゲル状の物性を維持していた。なお、高蛋白質ゲル状食品の蛋白質配合量は8%、高蛋白質ゲル状食品全体に対し本発明品用加工乾燥卵白3の配合量は固形分換算で9%であり、その固さは4×10N/mであった。
[比較例1]
本発明品用加工液卵白1(蛋白質配合量3.6%、固形分換算20%)20%を、乳クリーム(森永乳業(株)製「大雪原」、蛋白質含有量4%)20%に変えた以外は、実施例1に準じて高蛋白質ゲル状食品を製した。
製した高蛋白質ゲル状食品について、35℃、4週間保存後の外観目視検査を行った結果、ゲル表面一面に油脂の分離が確認され著しく外観を損ねていた。なお、高蛋白質ゲル状食品の蛋白質配合量は7%であり、その固さは4×10N/mであった。
以上の結果より、実施例1〜3で得られた本発明品の加工液卵白又は加工乾燥卵白を配合した高蛋白質ゲル状食品は、油脂がほとんど分離することなく高蛋白質ゲル状食品中に保持され、好ましい外観を保持していた。一方、比較例1で得られた本発明品の加工液卵白又は加工乾燥卵白を配合していない高蛋白質ゲル状食品は、油脂の分離がみられ高蛋白質ゲル状食品の外観を著しく損ねていた。

Claims (5)

  1. 蛋白質を5%以上配合し、かつ食用油脂及び/又は食肉を配合した高蛋白質ゲル状食品において、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合し、粘度が800mPa・s以上(品温10℃)、pHが3.8〜4.5、平均粒子径が40μm以下である水中油型乳化物からなる加工液卵白であって、該加工液卵白が乳酸発酵されてなる加工液卵白を配合したことを特徴とする高蛋白質ゲル状食品。
  2. 前記加工液卵白が、卵白蛋白質2〜8%及び食用油脂5〜20%を配合した卵白混合液をpHが3.8〜4.5となるように乳酸発酵し、次いで加熱殺菌し、該殺菌発酵液を30〜55℃に冷却した後、均質化処理を施して得られる加工液卵白である請求項1記載の高蛋白質ゲル状食品。
  3. 前記加工液卵白に乾燥処理が施されてなる加工乾燥卵白を配合した請求項1又は2記載の高蛋白質ゲル状食品。
  4. 前記加工液卵白又は前記加工乾燥卵白の配合量が、高蛋白質ゲル状食品全体に対し固形分換算で0.5〜15%である請求項1乃至3記載の高蛋白質ゲル状食品。
  5. 咀嚼・嚥下困難者用である請求項1乃至4記載の高蛋白質ゲル状食品。
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