JP2010053331A - 熱伝導材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐熱性、耐久性を有するとともに、従来技術で問題視されている環状シロキサン等による接点障害が改善されており、さらに室温にて容易に硬化させることが可能な、室温硬化型熱伝導性組成物、並びにその組成物を硬化させてなる熱伝導材の提供を目的とする。
【解決手段】架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)、及び、熱伝導性充填材(II)よりなり、硬化前の粘度が3000Pa・s以下の、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を発熱体と放熱体との間に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させてなる、硬化後の厚みが0.5mm未満の熱伝導材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器や、LED、EL等の照明及び表示機器など、種々の装置の放熱に利用される熱伝導材料に関する。更に詳しくは、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)、及び、熱伝導性充填材(II)を含有し、硬化前の粘度が3000Pa・s以下の、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を、発熱体と放熱体との間に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させてなる、硬化後の厚みが0.5mm未満の熱伝導材料に関する。
近年、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器や、LED、EL等の照明及び表示機器などの性能向上は著しく、それは演算素子や発光素子の著しい性能向上によっている。この様に演算素子や発光素子の性能向上に伴い発熱量も著しく増加し、電子機器、照明、表示機器における放熱をどの様に行うかが重要な課題になっている。熱対策として、演算素子や発光素子の発生する熱を出来るだけ迅速に広い面積に拡散させて放熱する方法は冷却効率を上げることを目的としたもので、積極的に冷却をするものではないが、携帯電話やパソコンなどの小型電子機器や照明における冷却方法としては最も現実的なものである。
この様な放熱、伝熱の目的に使用される熱伝導性材料としては、例えばシリコーンゴム等のベースゴムに熱伝導性フィラーを高充填し硬化させた、軟質放熱シートが知られており、各種熱伝導性フィラーとシリコーンゴムとの組合せによる技術が開示されている(特許文献1〜3参照)。
この様な熱伝導を目的とした放熱シートには、材料自体の熱伝導だけでなく、発熱体や放熱体との熱抵抗を低くする必要があることから、発熱体や放熱体との密着性が重要とされている。この発熱体や放熱体との密着性には、発熱体や放熱体表面への密着性、並びに発熱体や放熱体の形状や変形に対する追従性が重要となる。ところが放熱シートの熱伝導率を高くするために熱伝導性フィラーを高充填すると、シートの硬度が硬くなってしまうことから、発熱体や放熱体表面との密着性及び形状追随性が低下してしまうという問題があった。
これらの問題を解決するため、例えば特許文献4には、硬化前のシリコーンゴムに熱伝導性フィラーを高充填した液状物を塗布した後、室温で硬化させることが可能な、室温硬化型熱伝導性シリコーンゴム組成物が開示されており、液状物であるため熱体や放熱体との密着性が非常に良好となり好適である。しかしながら未硬化のシリコーンゴム組成物であることから、使用時に低分子シロキサン成分や環状シロキサン成分の揮発が多くなるという課題がある。シリコーン樹脂にはしばしば低分子成分である環状シロキサンの揮発により、電気部品の接点不良を誘発したり、ハードディスクなどの精密機器の読み取り不良を誘発したりすると言う課題が指摘されている。
一方例えば特許文献5には、ポリαオレフィンオリゴマーに熱伝導性フィラーを高充填させた熱伝導性グリースが開示されている。このような組成物を用いれば、液状物であるため熱体や放熱体との密着性が非常に良好となり、なおかつ使用時に低分子シロキサン成分が揮発する可能性も少ない。しかしながらこのような組成物は室温で硬化することが無いため、発熱体が高温となった際に、低粘度となった液状グリースが流出してしまい、周囲の電子機器を汚染してしまうことがあるという課題を有している。
特許文献6には、ポリアルキレングリコールやポリイソブチレン等の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有オリゴマーをベースに、熱伝導性充填材を配合したものは、優れた強度と密着性を併せ持つ樹脂組成物であることが開示されている。しかしながら加水分解性シリル基含有ポリアルキレングリコール系オリゴマーは耐熱性が十分でない場合があり、また、加水分解性シリル基含有ポリイソブチレン系オリゴマーは、比較的粘度が高くハンドリングが困難なほか、硬化速度が遅いため、1液型組成物として用いるには困難な場合が多い。
また特許文献7〜8には、分子量分布が1.8以下のリビングラジカル重合法にて製造されたビニル系重合体に、熱伝導性フィラーを充填した放熱シート用組成物が示されているが、液状物のまま室温硬化型熱伝導性組成物として利用する方法に関しては記されていない。
特公平6−55891号公報 特公平6−38460号公報 特公平7−91468号公報 特開2004−352947号公報 特開2008−19319号公報 特開2001−302936号公報 特開2006−274094号公報 特開2006−278476号公報
上述のように、硬化性樹脂組成物や熱伝導性グリースを発熱体や放熱体表面へ塗布する従来技術には様々な課題があった。予め硬化させた放熱シートを用いる場合には、熱抵抗が高くなるという課題があった。放熱シートの厚みをできるだけ薄くすることで、放熱シート自体の熱抵抗を低減させることが可能であるが、発熱体や放熱体表面への密着性及び形状追随性を向上させるために放熱シートを柔らかくしたうえで、かつ厚み0.5mm未満程度の薄いシートにしようとすると、放熱シートが発熱体への貼り付け作業時に破れるなどして破損しやすく、取扱が非常に煩雑になるという課題が生じる。そのため市販されている軟質放熱シートは一般的には0.5mm以上の厚みを有しており、0.5mm未満の厚みとする場合には放熱シートをある程度硬くして対応する必要があった。
本発明は、優れた耐熱性、耐久性、を有するとともに、従来技術で問題視されている環状シロキサン等による接点障害の可能性が低く、低粘度であるため塗布などの操作が容易であり、さらに室温にて硬化させることが可能な、室温硬化型熱伝導性組成物、並びにその組成物を硬化させてなる熱伝導材を目的とする。
本発明者らは上述の現状に鑑み鋭意検討した結果、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)、及び、熱伝導性充填材(II)を含有し、硬化前の粘度を3000Pa・s以下と低く抑えることにより、塗布性に優れた流動性を有する室温にて硬化可能な組成物が得られること、これらの組成物を発熱体と放熱体との間に薄く塗布した後発熱体と放熱体との間にて硬化させ、硬化後の厚みを0.5mm未満とすることで、発熱体と放熱体との間の熱抵抗を顕著に低減させることが可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の第1は1)架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)、及び、熱伝導性充填材(II)を含有し、硬化前の粘度が3000Pa・s以下の、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を発熱体と放熱体との間に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させてなる、硬化後の厚みが0.5mm未満の熱伝導材料に関する。
本発明の第2は2)更に、ビニル系重合体(I)の硬化触媒(III)を含有することを特徴とする1)に記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第3は3)分子量分布が1.8未満であるビニル系重合体(I)を含有することを特徴とする1)に記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第4は4)架橋性シリル基が一般式(1)で表されることを特徴とする1)〜3)のうち何れかに記載の熱伝導材料に関する。
−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a(1)
(式中、R1およびR2は、同一若しくは異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R′)3SiO−で表されるトリオルガノシロキシ基を示す(式中、R′は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。複数のR′は同一であってもよく又は異なっていてもよい)。R1またはR2がそれぞれ2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を示す。bは0、1、または2を示す。mは0〜19の整数を示す。ただし、a+mb≧1であることを満足する。)
本発明の第5は5)主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものであるビニル系重合体(I)を含有することを特徴とする1)〜4)のうち何れかに記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第6は6)主鎖が、(メタ)アクリル酸エステル系重合体であるビニル系重合体(I)を含有することを特徴とする5)に記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第7は7)ビニル系重合体(I)の主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする1)〜6)のうち何れかに記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第8は8)ビニル系重合体(I)の主鎖が原子移動ラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする7)記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第9は9)ビニル系重合体(I)の架橋性シリル基が分子鎖末端にあることを特徴とする1)〜8)のうち何れかに記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第10は10)熱伝導性充填材(II)が炭素化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカ、有機ポリマー焼成物、Znフェライトとの複合フェライト、Fe−Al−Si系三元合金、および金属粉末から選ばれる少なくとも1種であることを特徴する1)〜9)のいずれかに記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第11は11)熱伝導性充填材(II)がグラファイト、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、結晶化シリカ、Fe−Al−Si系三元合金、およびカルボニル鉄から選ばれる1種以上であることを特徴する10)に記載の熱伝導材料に関する。
本発明の第12は12)熱伝導性充填材(II)の容積率が、全組成物中25容量%以上であることを特徴する1)〜11)の何れかに記載の熱伝導材料に関する。
本発明の、室温にて硬化可能な熱伝導性組成物を硬化させてなる熱伝導材は、優れた耐熱性、耐久性を有するとともに、従来技術で問題視されている環状シロキサン等による接点障害が改善されるという特徴を有する。
以下に本発明の硬化性組成物について詳述する。
<<ビニル系重合体(I)について>>
本発明においては、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を得るために、架橋性シリル基を分子中に平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)を使用する。ビニル系重合体(I)の使用量は、硬化前の粘度と硬化性と硬化後の熱抵抗のバランスの観点から、全組成物中0.1重量%〜90重量%とすることが好ましく、1重量%〜60重量%とすることがより好ましく、5重量%〜35重量%とすることが特に好ましい。
<主鎖>
本発明者らは、これまでに様々な架橋性官能基を重合体末端に有するビニル系重合体、その製造法、硬化性組成物、及び用途に関して数々の発明を行ってきた(特開平11−080249、特開平11−080250、特開平11−005815、特開平11−116617、特開平11−116606、特開平11−080571、特開平11−080570、特開平11−130931、特開平11−100433、特開平11−116763、特開平9−272714号、特開平9−272715号等を参照)。本発明のビニル系重合体(I)としては特に限定されないが、上に例示した発明で開示される重合体をすべて好適に用いることができる。
本発明のビニル系重合体の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
ビニル系重合体の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち30モル%以上、好ましくは50モル%以上が、上記モノマーであることを意味する。
なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーである。本用途においては配合物の低粘度、硬化物の耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチルモノマーが更に好ましい。一方、耐油性が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途によってはその比率を80モル%以下にするのが好ましく、60モル%以下にするのがより好ましく、40モル%以下にするのが更に好ましく、30モル%以下にするのがもっと好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は60モル%以下にするのが好ましく、40%以下にするのが更に好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/20〜30)の共重合体が挙げられる。
なお、本発明のビニル系重合体にエポキシ樹脂を添加する場合において、その硬化性組成物を硬化させた時の硬化物が透明であるものを得るためには、該ビニル系重合体としてはエポキシ樹脂と相溶するものが好ましく、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高い重合体または共重合体が好適であり、該ビニル系重合体の主鎖が一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する重合体または共重合体であることがより好ましい。
−[CH2−CR(COOR’)]− (2)
(式中、Rは水素、又はメチル基、R’は、同一若しくは異なって、アルコキシアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基である。)
アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高い重合体または共重合体には、特に限定はないが、アクリル酸ブチルと、アクリル酸ブチルよりも極性が高いモノマーとの共重合体などが挙げられる。ここで、アクリル酸ブチルよりも極性が高いモノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどが挙げられる。例えば、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/20〜30)の共重合体が各種エポキシ樹脂と相溶し易く、透明な硬化物を得易いため、好適である。
他のポリマー、例えば、変成シリコーン樹脂(架橋性シリル基を有するオキシアルキレン重合体)との相溶性を向上させるためにステアリル基やラウリル基等の長鎖のアルキル基を持ったモノマー等を共重合させても良い。特に限定はされないが、例えば、アクリル酸ステアリルやアクリル酸ラウリルを5〜30モル%共重合することで変成シリコーン樹脂との相溶性が非常に良好になる。それぞれのポリマーの分子量によって相溶性が変わるため、この共重合させるモノマーの比率はそれに応じて選択することが好ましい。また、その際には、ブロック共重合させても構わない。少量で効果を発現する場合がある。
官能性シリル基を持ったビニル系重合体を含む硬化性組成物は、貯蔵によりその硬化性が遅くなることが、つまり貯蔵安定性が悪くなることがある。例えば、アクリル酸メチルを共重合することにより、そのような減少を抑制することが可能になる場合がある。また硬化物の強度を向上させたい場合に用いても構わない。この場合にも、共重合させるモノマーの比率は分子量に応じて選択しても、並びに/又はブロック共重合させても構わない。
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
本発明のビニル系重合体の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、分子量分布が1.8未満、特に1.3未満が、作業性の点から好ましい。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
本発明におけるビニル系重合体の数平均分子量は特に制限はない。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、500〜1,000,000、特に5,000〜50,000が作業性、物性上の点から好ましい。また、当然ながら、分子量が小さい程、他の樹脂(各種重合体)と相溶し易く、かつ得られた硬化物は高モジュラス、低伸びの傾向を示し、逆に分子量が大きければその逆の傾向を示す。
<主鎖の合成法>
本発明における、ビニル系重合体の合成法は、限定はされず、フリーラジカル重合でも構わないが、制御ラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましい。以下にこれらについて説明する。
制御ラジカル重合
ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量使用ではこの特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題点がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
「制御ラジカル重合法」は、更に、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合をおこなうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
「リビングラジカル重合法」は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、たとえばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカルキャッピング剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などが挙げられる。
本発明において、これらのリビングラジカル重合のうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
以下にリビングラジカル重合について詳細に説明していくが、その前に、後に説明するビニル系重合体の製造に用いることができる制御ラジカル重合のうちの一つ、連鎖移動剤を用いた重合について説明する。連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合としては、特に限定されないが、本発明に適した末端構造を有したビニル系重合体を得る方法としては、次の2つの方法が例示される。
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィド等を連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
以下に、リビングラジカル重合について説明する。
そのうち、まず、ニトロキシド化合物などのラジカルキャッピング剤を用いる方法について説明する。この重合では一般に安定なニトロキシフリーラジカル(=N−O・)をラジカルキャッピング剤として用いる。このような化合物類としては、限定はされないが、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが好ましい。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
上記ラジカルキャッピング剤はラジカル発生剤と併用される。ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤との反応生成物が重合開始剤となって付加重合性モノマーの重合が進行すると考えられる。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル発生剤0.1〜10モルが適当である。
ラジカル発生剤としては、種々の化合物を使用することができるが、重合温度条件下で、ラジカルを発生しうるパーオキシドが好ましい。このパーオキシドとしては、限定はされないが、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等がある。特にベンゾイルパーオキシドが好ましい。さらに、パーオキシドの代わりにアゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等のラジカル発生剤も使用しうる。
Macromolecules 1995,28,P.2993で報告されているように、ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤を併用する代わりに、下図のようなアルコキシアミン化合物を開始剤として用いても構わない。
Figure 2010053331
アルコキシアミン化合物を開始剤として用いる場合、それが上図で示されているような水酸基等の官能基を有するものを用いると、末端に官能基を有する重合体が得られる。これを本発明の方法に利用すると、末端に官能基を有する重合体が得られる。
上記のニトロキシド化合物などのラジカルキャッピング剤を用いる重合で用いられるモノマー、溶媒、重合温度等の重合条件は、限定されないが、次に説明する原子移動ラジカル重合について用いるものと同様で構わない。
原子移動ラジカル重合
次に、本発明のリビングラジカル重合としてより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、
65−CH2X、C65−C(H)(X)CH3、C65−C(X)(CH32
(ただし、上の化学式中、C65はフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
3−C(H)(X)−CO24、R3−C(CH3)(X)−CO24、R3−C(H)(X)−C(O)R4、R3−C(CH3)(X)−C(O)R4
(式中、R3、R4は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
3−C64−SO2
(式中、R3は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端に原子移動ラジカル重合の生長末端構造を有するビニル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(3)に示す構造を有するものが例示される。
67C(X)−R8−R9−C(R5)=CH2 (3)
(式中、R5は水素、またはメチル基、R6、R7は水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、または他端において相互に連結したもの、R8は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R9は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
置換基R6、R7の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R6とR7は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
一般式(3)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCH2C(O)O(CH2nCH=CH2、H3CC(H)(X)C(O)O(CH2nCH=CH2、(H3C)2C(X)C(O)O(CH2nCH=CH2、CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2nCH=CH2
Figure 2010053331
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCH2C(O)O(CH2nO(CH2mCH=CH2、H3CC(H)(X)C(O)O(CH2nO(CH2mCH=CH2、(H3C)2C(X)C(O)O(CH2nO(CH2mCH=CH2、CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2nO(CH2mCH=CH2
Figure 2010053331
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−(CH2n−CH=CH2、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−(CH2n−CH=CH2、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−(CH2n−CH=CH2
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−(CH2n−O−(CH2mCH=CH2
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−O−(CH2n−CH=CH2、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−O−(CH2n−CH=CH2、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−O−(CH2n−CH=CH2
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−O−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−O−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−O−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
2C=C(R5)−R9−C(R6)(X)−R10−R7 (4)
(式中、R5、R6、R7、R9、Xは上記に同じ、R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
9は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R9が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
一般式(4)の化合物を具体的に例示するならば、
CH2=CHCH2X、CH2=C(CH3)CH2X、CH2=CHC(H)(X)CH3、CH2=C(CH3)C(H)(X)CH3、CH2=CHC(X)(CH32、CH2=CHC(H)(X)C25、CH2=CHC(H)(X)CH(CH32、CH2=CHC(H)(X)C65、CH2=CHC(H)(X)CH265、CH2=CHCH2C(H)(X)−CO2R、CH2=CH(CH22C(H)(X)−CO2R、CH2=CH(CH23C(H)(X)−CO2R、CH2=CH(CH28C(H)(X)−CO2R、CH2=CHCH2C(H)(X)−C65、CH2=CH(CH22C(H)(X)−C65、CH2=CH(CH23C(H)(X)−C65
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2n−C64−SO2X、o−,m−,p−CH2=CH−(CH2n−O−C64−SO2X、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式(5)に示す構造を有するものが例示される。
67C(X)−R8−R9−C(H)(R5)CH2−[Si(R112-b(Y)bO]m−Si(R123-a(Y)a (5)
(式中、R5、R6、R7、R8、R9、Xは上記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
一般式(5)の化合物を具体的に例示するならば、
XCH2C(O)O(CH2nSi(OCH33、CH3C(H)(X)C(O)O(CH2nSi(OCH33、(CH32C(X)C(O)O(CH2nSi(OCH33、XCH2C(O)O(CH2nSi(CH3)(OCH32、CH3C(H)(X)C(O)O(CH2nSi(CH3)(OCH32、(CH32C(X)C(O)O(CH2nSi(CH3)(OCH32
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCH2C(O)O(CH2nO(CH2mSi(OCH33、H3CC(H)(X)C(O)O(CH2nO(CH2mSi(OCH33、(H3C)2C(X)C(O)O(CH2nO(CH2mSi(OCH33、CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2nO(CH2mSi(OCH33、XCH2C(O)O(CH2nO(CH2mSi(CH3)(OCH32、H3CC(H)(X)C(O)O(CH2nO(CH2m−Si(CH3)(OCH32、(H3C)2C(X)C(O)O(CH2nO(CH2m−Si(CH3)(OCH32、CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2nO(CH2m−Si(CH3)(OCH32
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−(CH22Si(OCH33、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−(CH22Si(OCH33、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−(CH22Si(OCH33、o,m,p−XCH2−C64−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−(CH23Si(OCH33、o,m,p−XCH2−C64−(CH22−O−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−(CH22−O−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−(CH22−O−(CH23Si(OCH33、o,m,p−XCH2−C64−O−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−O−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−O−(CH23−Si(OCH33、o,m,p−XCH2−C64−O−(CH22−O−(CH23−Si(OCH33、o,m,p−CH3C(H)(X)−C64−O−(CH22−O−(CH23Si(OCH33、o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C64−O−(CH22−O−(CH23Si(OCH33
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式(6)で示される構造を有するものが例示される。
(R123-a(Y)aSi−[OSi(R112-b(Y)bm−CH2−C(H)(R5)−R9−C(R6)(X)−R10−R7 (6)
(式中、R5、R6、R7、R9、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CH3O)3SiCH2CH2C(H)(X)C65、(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C(H)(X)C65、(CH3O)3Si(CH22C(H)(X)−CO2R、(CH3O)2(CH3)Si(CH22C(H)(X)−CO2R、(CH3O)3Si(CH23C(H)(X)−CO2R、(CH3O)2(CH3)Si(CH23C(H)(X)−CO2R、(CH3O)3Si(CH24C(H)(X)−CO2R、(CH3O)2(CH3)Si(CH24C(H)(X)−CO2R、(CH3O)3Si(CH29C(H)(X)−CO2R、(CH3O)2(CH3)Si(CH29C(H)(X)−CO2R、(CH3O)3Si(CH23C(H)(X)−C65、(CH3O)2(CH3)Si(CH23C(H)(X)−C65、(CH3O)3Si(CH24C(H)(X)−C65、(CH3O)2(CH3)Si(CH24C(H)(X)−C65
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH2n−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
2N−(CH2n−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
Figure 2010053331
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
生長末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
Figure 2010053331
Figure 2010053331
等が挙げられる。
この重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、既に例示したものをすべて好適に用いることができる。
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が添加される。好ましい配位子は、含窒素化合物であり、より好ましい配位子は、キレート型含窒素化合物であり、さらに好ましい配位子は、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンである。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も、触媒として好適である。
重合は無溶剤または各種の溶剤中で行なうことができる。溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いることができる。
また、限定はされないが、重合は0℃〜200℃の範囲で行なうことができ、好ましくは50〜150℃である。
本発明の原子移動ラジカル重合には、いわゆるリバース原子移動ラジカル重合も含まれる。リバース原子移動ラジカル重合とは、通常の原子移動ラジカル重合触媒がラジカルを発生させた時の高酸化状態、例えば、Cu(I)を触媒として用いた時のCu(II)に対し、過酸化物等の一般的なラジカル開始剤を作用させ、その結果として原子移動ラジカル重合と同様の平衡状態を生み出す方法である(Macromolecules 1999,32,2872参照)。
<官能基>
架橋性シリル基の数
ビニル系重合体の架橋性シリル基の数は、特に限定されないが、組成物の硬化性、及び硬化物の物性の観点から、分子中に平均して1個以上有することが好ましく、より好ましくは1.1個以上4.0以下、さらに好ましくは1.2個以上3.5個以下である。
架橋性シリル基の位置
本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性官能基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性官能基を分子鎖末端に有するものである。
上記架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有するビニル系重合体、中でも(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に開示されている。しかしながらこれらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、架橋性シリル基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、Mw/Mnで表される分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を得る場合には、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましいが、分子量分布の狭い重合体に特定するものではない。
以下にこれらの官能基について説明する。
架橋性シリル基
本発明の架橋性シリル基としては、一般式(1);
−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a (1)
{式中、R1、R2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
で表される基があげられる。
加水分解性基としては、たとえば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取扱い易いという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基…の順に反応性が低くなり、目的や用途に応じて選択できる。
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。とくに、一般式(7)
−Si(R23-a(Y)a (7)
(式中、R2、Yは前記と同じ、aは1〜3の整数)で表される架橋性シリル基が、入手が容易であるので好ましい。
なお、特に限定はされないが、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
このような架橋性シリル基を有するビニル系重合体は珪素原子1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる加水分解性珪素基を有する重合体が用いられることが多いが、接着剤の用途等や低温で使用する場合等、特に非常に速い硬化速度を必要とする場合、その硬化速度は充分ではなく、また硬化後の柔軟性を出したい場合には、架橋密度を低下させる必要があり、そのため架橋密度が充分でないためにべたつき(表面タック)があることもあった。その際には、aが3のもの(例えばトリメトキシ官能基)であるのが好ましい。
また、aが3のもの(例えばトリメトキシ官能基)は2のもの(例えばジメトキシ官能基)よりも硬化が速いが、貯蔵安定性や力学物性(伸び等)に関しては2のものの方が優れている場合がある。硬化性と物性バランスをとるために、2のもの(例えばジメトキシ官能基)と3のもの(例えばトリメトキシ官能基)を併用してもよい。
例えば、Yが同一の場合、aが多いほどYの反応性が高くなるため、Yとaを種々選択することにより硬化性や硬化物の機械物性等を制御することが可能であり、目的や用途に応じて選択できる。また、aが1のものは鎖延長剤として架橋性シリル基を有する重合体、具体的にはポリシロキサン系、ポリオキシプロピレン系、ポリイソブチレン系からなる少なくとも1種の重合体と混合して使用できる。硬化前に低粘度、硬化後に高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性、優れた塗料密着性を有する組成物とすることが可能である。
架橋性シリル基の導入法
以下に、本発明のビニル系重合体への架橋性シリル基の導入法について説明するが、これに限定されるものではない。
まず、末端官能基変換により架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基を導入する方法について記述する。これらの官能基はお互いに前駆体となりうるので、架橋性シリル基から溯る順序で記述していく。
架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法としては、
(A)アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体に架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下に付加させる方法
(B)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体に一分子中に架橋性シリル基とイソシアネート基を有する化合物のような、水酸基と反応し得る基を有する化合物を反応させる方法
(C)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、1分子中に重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物を反応させる方法
(D)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、架橋性シリル基を有する連鎖移動剤を用いる方法
(E)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に1分子中に架橋性シリル基と安定なカルバニオンを有する化合物を反応させる方法;などが挙げられる。
(A)の方法で用いるアルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は種々の方法で得られる。以下に合成方法を例示するが、これらに限定されるわけではない。
(A−a)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、例えば下記の一般式(9)に挙げられるような一分子中に重合性のアルケニル基と重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
2C=C(R14)−R15−R16−C(R17)=CH2 (9)
(式中、R14は水素またはメチル基を示し、R15は−C(O)O−、またはo−,m−,p−フェニレン基を示し、R16は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。R17は水素、または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を示す)
なお、一分子中に重合性のアルケニル基と重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(A−b)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどのような重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
(A−c)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫などの有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲンを置換する方法。
(A−d)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(10)に挙げられるようなアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
+-(R18)(R19)−R20−C(R17)=CH2 (10)
(式中、R17は上記に同じ、R18、R19はともにカルバニオンC-を安定化する電子吸引基であるか、または一方が前記電子吸引基で他方が水素または炭素数1〜10のアルキル基、またはフェニル基を示す。R20は直接結合、または炭素数1〜10の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。M+はアルカリ金属イオン、または4級アンモニウムイオンを示す)
18、R19の電子吸引基としては、−CO2R、−C(O)Rおよび−CNの構造を有するものが特に好ましい。
(A−e)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等の、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
(A−f)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば一般式(11)あるいは(12)に示されるようなアルケニル基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
2C=C(R17)−R21−O-+ (11)
(式中、R17、M+は上記に同じ。R21は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
2C=C(R17)−R22−C(O)O-+ (12)
(式中、R17、M+は上記に同じ。R22は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
などが挙げられる。
上述の反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成法は、前述のような有機ハロゲン化物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
またアルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体から得ることも可能であり、以下に例示する方法が利用できるがこれらに限定されるわけではない。水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基に、
(A−g)ナトリウムメトキシドのような塩基を作用させ、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法。
(A−h)アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物を反応させる方法。
(A−i)(メタ)アクリル酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物をピリジン等の塩基存在下に反応させる方法。
(A−j)アクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸を酸触媒の存在下に反応させる方法;等が挙げられる。
本発明では(A−a)(A−b)のようなアルケニル基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合には、リビングラジカル重合法を用いてビニル系重合体を合成することが好ましい。制御がより容易である点から(A−b)の方法がさらに好ましい。
反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することによりアルケニル基を導入する場合は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーをラジカル重合すること(原子移動ラジカル重合法)により得る、末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いるのが好ましい。制御がより容易である点から(A−f)の方法がさらに好ましい。
また、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式(13)で示される化合物が例示される。
H−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a (13)
{式中、R1、R2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式(14)
H−Si(R23-a(Y)a (14)
(式中、R2、Y、aは前記に同じ)
で示される架橋性基を有する化合物が入手容易な点から好ましい。
上記の架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物をアルケニル基に付加させる際には、遷移金属触媒が通常用いられる。遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4等が挙げられる。
(B)および(A−g)〜(A−j)の方法で用いる水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の製造方法は以下のような方法が例示されるが、これらの方法に限定されるものではない。
(B−a)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、例えば下記の一般式(15)に挙げられるような一分子中に重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
2C=C(R14)−R15−R16−OH (15)
(式中、R14、R15、R16は上記に同じ)
なお、一分子中に重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(B−b)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールを反応させる方法。
(B−c)例えば特開平5−262808に示される水酸基含有ポリスルフィドのような水酸基含有連鎖移動剤を多量に用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
(B−d)例えば特開平6−239912、特開平8−283310に示されるような過酸化水素あるいは水酸基含有開始剤を用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
(B−e)例えば特開平6−116312に示されるようなアルコール類を過剰に用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
(B−f)例えば特開平4−132706などに示されるような方法で、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個に有するビニル系重合体のハロゲンを加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
(B−g)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(16)に挙げられるような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
+-(R18)(R19)−R20−OH (16)
(式中、R18、R19、R20、は上記に同じ)
18、R19の電子吸引基としては、−CO2R、−C(O)Rおよび−CNの構造を有するものが特に好ましい。
(B−h)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にアルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
(B−i)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば一般式(17)あるいは(18)に示されるような水酸基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
HO−R21−O-+ (17)
(式中、R21およびM+は前記に同じ)
HO−R22−C(O)O-+ (18)
(式中、R22およびM+は前記に同じ)
(B−j)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
このような化合物としては特に限定されないが、一般式(19)に示される化合物等が挙げられる。
2C=C(R14)−R21−OH (19)
(式中、R14およびR21は上述したものと同様である。)
上記一般式(19)に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
本発明では(B−a)〜(B−e)及び(B−j)のような水酸基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合には、リビングラジカル重合法を用いてビニル系重合体を合成することが好ましい。制御がより容易である点から(B−b)の方法がさらに好ましい。
反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーをラジカル重合すること(原子移動ラジカル重合法)により得る、末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いるのが好ましい。制御がより容易である点から(B−i)の方法がさらに好ましい。
また、一分子中に架橋性シリル基とイソシアネート基のような水酸基と反応し得る基を有する化合物としては、例えばγ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、必要により一般に知られているウレタン化反応の触媒を使用できる。
(C)の方法で用いる一分子中に重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物としては、例えばトリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートなどのような、下記一般式(20)で示すものが挙げられる。
2C=C(R14)−R15−R23−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a (20)
(式中、R1、R2、R14、R15、Y、a、b、mは上記に同じ。R23は、直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。)
一分子中に重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物を反応させる時期に特に制限はないが、特にリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(D)の連鎖移動剤法で用いられる、架橋性シリル基を有する連鎖移動剤としては例えば特公平3−14068、特公平4−55444に示される、架橋性シリル基を有するメルカプタン、架橋性シリル基を有するヒドロシランなどが挙げられる。
(E)の方法で用いられる、上述の反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成法は、前述のような有機ハロゲン化物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。一分子中に架橋性シリル基と安定化カルバニオンを併せ持つ化合物としては一般式(21)で示すものが挙げられる。
+-(R18)(R19)−R24−C(H)(R25)−CH2−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a (21)
(式中、R1、R2、R18、R19、Y、a、b、m、は前記に同じ。R24は直接結合、または炭素数1〜10の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、R25は水素、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
18、R19の電子吸引基としては、−CO2R、−C(O)Rおよび−CNの構造を有するものが特に好ましい。
<複数のビニル系重合体の使用>
上記したビニル系重合体は一種のみ使用することもでき、2種以上のビニル系重合体を組合せて使用することもできる。一種のみ使用する場合は、分子量5,000〜50,000で架橋性シリル基の数が1.2〜3.5個のビニル重合体を使用することが好ましい。2種以上のビニル系重合体を組合せる場合は第一の重合体は分子量5,000〜50,000で架橋性シリル基の数が1.2〜3.5個のビニル重合体であって、第2の重合体は架橋性シリル基の数が少ない重合体とすると、高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性、優れた塗料密着性を有する硬化物を得ることができる。また、第2の重合体の分子量をより小さく設定することにより、組成物の粘度を低下させることができる。低分子量成分となる重合体の好ましい分子量は10,000未満、さらには5,000未満であり、好ましい架橋性シリル基の数は1.2未満、さらには1以下である。また、さらに粘度を低下させることができるので分子量分布は1.8未満が好ましい。架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体と片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を添加すると低粘度化効果が顕著である。
このような低分子量で架橋性シリル基の数が少ない重合体として次のような製法で得られる片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を使用することが確実に架橋性シリル基を導入できるので好ましい。
片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体は、重合体末端に架橋性シリル基を1分子あたりほぼ1個有するものである。前記のリビングラジカル重合法、特に、原子移動ラジカル重合法を用いることが、高い割合で分子鎖末端に架橋性シリル基を有し、分子量分布が1.8未満で分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体が得られるので好ましい。
片末端に架橋性シリル基を導入する方法については、例えば、下記に示す方法を使用することができる。なお、末端官能基変換により架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基を導入する方法において、これらの官能基はお互いに前駆体となりうるので、架橋性シリル基を導入する方法から溯る順序で記述する。
(1)アルケニル基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下に付加させる方法、
(2)水酸基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、一分子中に架橋性シリル基とイソシアネート基のような水酸基と反応し得る基を併せ持つ化合物を反応させる方法、
(3)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、一分子中に架橋性シリル基と安定なカルバニオンを有する化合物を反応させる方法、
などがあげられる。
(1)の方法で用いるアルケニル基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体は種々の方法で得られる。以下に製造方法を例示するが、これらに限定されるわけではない。
(1−1)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、例えばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫などの有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲンを置換する方法。
(1−2)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、一般式(10)にあげられるようなアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
+-(R18)(R19)−R20−C(R17)=CH2 (10)
(式中、R18、R19はともにカルバニオンC-を安定化する電子吸引基であるか、または一方が前記電子吸引基で他方が水素または炭素数1〜10のアルキル基、またはフェニル基を示す。R20は直接結合、または炭素数1〜10の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。R17は水素、または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を示す。M+はアルカリ金属イオン、または4級アンモニウムイオンを示す)
18、R19の電子吸引基としては、−CO2R、−C(O)Rおよび−CNの構造を有するものが特に好ましい。
(1−3)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等の、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
(1−4)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、例えば一般式(11)あるいは(12)に示されるようなアルケニル基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
2C=C(R17)−R21−O-+ (11)
(式中、R17、M+は前記に同じ。R21は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエ−テル結合を含んでいてもよい)
2C=C(R17)−R22−C(O)O-+ (12)
(式中、R17、M+は前記に同じ。R22は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
などがあげられる。
上述の反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体の合成法は、前述のような有機ハロゲン化物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
またアルケニル基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体は、水酸基を分子鎖末端に少なくとも1個有する重合体から得ることも可能であり、以下に例示する方法が利用できるがこれらに限定されるわけではない。
水酸基を分子鎖末端に少なくとも1個有する重合体の水酸基に、
(1−5)ナトリウムメトキシドのような塩基を作用させ、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法、
(1−6)アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物を反応させる方法、
(1−7)(メタ)アクリル酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物をピリジン等の塩基存在下に反応させる方法、
(1−8)アクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸を酸触媒の存在下に反応させる方法、
などがあげられる。
反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体のハロゲンを変換することによりアルケニル基を導入する場合は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を1分子当たり1個有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系単量体をラジカル重合(原子移動ラジカル重合)することにより得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体を用いることが好ましい。
また、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式(13)で示される化合物が例示される。
H−[Si(R1 2-b)(Yb)O]m−Si(R2 3-a)Ya (13)
(式中、R1、R2、Y、a,b,mは前記に同じ。R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式(14)
H−Si(R2 3-a)Ya (14)
(式中、R2、Y、aは前記に同じ)
で示される架橋性シリル基を有する化合物が入手容易な点から好ましい。
上記の架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物をアルケニル基に付加させる際には、遷移金属触媒が通常用いられる。遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4等があげられる。
片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体、好ましくは分子量分布が1.8未満の重合体、の使用量としては、ビニル系重合体100重量部に対し、モジュラス、伸びの点から5〜400重量部であることが好ましい。
2種以上のビニル系重合体を組合せて使用する第2の態様として、分子量分布が1.8以上のビニル重合体と分子量分布が1.8未満のビニル重合体を組合せて使用することもできる。分子量分布が1.8以上のビニル重合体は架橋性ケイ素基を有していてもいなくてもよいが架橋性ケイ素基を有するほうが耐候性や接着強度、破断時強度がより向上するので好ましい。また、組成物の硬化物の引裂き強度の改善が期待できる。第1の重合体として使用する、分子量分布が1.8以上のビニル系重合体や第2の重合体として使用する、分子量分布が1.8未満のビニル系重合体の主鎖としては、すでに述べたビニル系モノマーに起因する重合体を使用することができ、両重合体ともアクリル酸エステル系重合体が好ましい。
分子量分布が1.8以上のビニル系重合体は、通常のビニル重合の方法、例えば、ラジカル反応による溶液重合法により得ることができる。重合は、通常、前記の単量体およびラジカル開始剤や連鎖移動剤等を加えて50〜150℃で反応させることにより行われる。この場合一般的に分子量分布は1.8以上のものが得られる。
前記ラジカル開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック)アシッド、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、アゾビスイソ酪酸アミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチルなどの有機過酸化物系開始剤があげられるが、重合に使用する溶媒の影響を受けない、爆発等の危険性が低いなどの点から、アゾ系開始剤の使用が好ましい。
連鎖移動剤の例としては、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン類や含ハロゲン化合物等があげられる。
重合は溶剤中で行なってもよい。溶剤の例としては、エーテル類、炭化水素類、エステル類などの非反応性の溶剤が好ましい。
架橋性シリル基を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和結合と架橋性シリル基とを併せ持つ化合物を(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と共重合させる方法があげられる。重合性不飽和結合と架橋性シリル基とを併せ持つ化合物としては、一般式(26):
CH2=C(R28)COOR30−[Si(R1 2-b)(Yb)O]mSi(R2 3-a)Ya (26)
(式中、R28は前記に同じ。R30は炭素数1〜6の2価のアルキレン基を示す。R1,R2,Y,a,b,mは前記と同じ。)
または一般式(27):
CH2=C(R28)−[Si(R1 2-b)(Yb)O]mSi(R2 3-a)Ya (27)
(式中、R28,R1,R2,Y,a,b,mは前記と同じ。)
で表される単量体、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−メタクリロキシプロピルポリアルコキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−アクリロキシプロピルポリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルアルキルポリアルコキシシランなどがあげられる。また、メルカプト基と架橋性シリル基とを併せ持つ化合物を連鎖移動剤に用いると重合体末端に架橋性シリル基を導入することができる。そのような連鎖移動剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン類があげられる。
架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体は、GPC測定によるポリスチレン換算での数平均分子量が500〜100,000のものが取扱いの容易さの点から好ましい。さらに1,500〜30,000のものが硬化物の耐候性、作業性が良好であることからより好ましい。
<<熱伝導性充填材(II)>>
本発明の熱伝導性充填材は、市販されている一般的な良熱伝導性充填材を用いることが出来る。なかでも、熱伝導率、入手性、絶縁性・電磁波シールド性・電磁波吸収性など特定の電気特性を付与可能である、等の観点から、グラファイト、ダイヤモンド、等の炭素化合物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等の金属炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;結晶性シリカ:アクリロニトリル系ポリマー焼成物、フラン樹脂焼成物、クレゾール樹脂焼成物、ポリ塩化ビニル焼成物、砂糖の焼成物、木炭の焼成物等の有機性ポリマー焼成物;Znフェライトとの複合フェライト;Fe−Al−Si系三元合金;金属粉末、等が好ましく挙げられる。
さらに、入手性や熱伝導性の観点から、グラファイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、結晶化シリカがより好ましく、グラファイト、α―アルミナ、六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、Mn−Zn系ソフトフェライト、Ni−Zn系ソフトフェライト、Fe−Al−Si系三元合金( センダスト)、カルボニル鉄、鉄ニッケル合金( パーマロイ)がより好ましく、球状化グラファイト、丸み状あるいは球状のα―アルミナ、球状化六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、Mn−Zn系ソフトフェライト、Ni−Zn系ソフトフェライト、球状Fe−Al−Si系三元合金( センダスト)、カルボニル鉄、が特に好ましい。
本発明でカルボニル鉄を用いる場合には、還元カルボニル鉄粉であることが望ましい。還元カルボニル鉄粉とは、標準グレードではなく、還元グレードに分類されるカルボニル鉄粉であり、標準グレードに比べ、カーボンと窒素の含有量が低いことが特徴である。
また、これらの熱伝導性充填材は、ビニル系重合体(I)に対する分散性が向上する点から、シランカップリング剤(ビニルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナートシラン、クロロシラン、アミノシラン等)やチタネートカップリング剤(アルコキシチタネート、アミノチタネート等)、又は、脂肪酸(カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸、ソルビン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸等)や樹脂酸(アビエチン酸、ピマル酸、レボピマール酸、ネオアピチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、コルム酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸等)等により、表面が処理されたものであることが好ましい。
これらのうち、一部の熱伝導率を挙げると、例えば、シリカは1.5W/mK、アルミナは20W/mK、酸化マグネシュウムは40W/mK、窒化ホウ素は60W/mK、窒化アルミは70W/mK、銅は398W/mK、アルミは237W/mK、等の良好な熱伝導率を示す。
このような熱伝導性充填材の使用量としては、本発明の組成物から得られる熱伝導性材料の熱伝導率を高くすることができる点から、熱伝導性充填材の容積率(%)が全組成物中の25容量%以上となることが好ましい。25容量%よりも少ない場合は、熱伝導性が十分でなくなる傾向がある。さらに高い熱伝導率を望む場合は、熱伝導性充填材の使用量を、全組成物中の40容量%以上とすることがより好ましい。
ここで熱伝導性充填材の容積率(%)とは、樹脂分及び熱伝導性充填材のそれぞれの重量分率と比重から算出されるものであり、次式により求められる。なお、次式においては、熱伝導性充填材を単に「充填材」と記載した。
充填材容積率(容量%)=(充填材重量比率/充填材比重)÷[(樹脂分重量比率/樹脂分比重)+(充填材重量比率/充填材比重)]×100
ここで、樹脂分とは、熱伝導性充填材を除いた全成分を指し、具体的にはビニル系重合体(I)、硬化触媒・硬化剤(III)、その他粘着付与樹脂等各種添加剤を指す。
また、ビニル系重合体(I)に対する熱伝導性充填材の充填率を高める1手法として、粒子径の異なる熱伝導性充填材を2種類以上併用することが好適である。この場合、粒子径の大きい熱伝導性充填材を10μmを超えるものとし、粒子径の小さい熱伝導性充填材を10μm以下とすることが好ましい。
また、これら熱伝導性充填材は、同一種類の熱伝導性充填材だけでなく、種類の異なる2種以上を併用することもできる。また本発明の効果を妨げない程度に、熱伝導性充填材以外の各種充填材を必要に応じて用いても良い。熱伝導性充填材以外の各種充填材としては、特に限定されないが、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、ケイソウ土、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、非晶質球形シリカ等)、カーボンブラックのような補強性充填材;ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛およびシラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末などの充填材;石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填材等が挙げられる。 これら充填材のうちでは沈降性シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、酸化チタン、タルクなどが好ましい。なおこれら充填材の中には、わずかに熱伝導性充填材としての機能を有しているものもあり、また炭素繊維、各種金属粉、各種金属酸化物、各種有機繊維のように、組成、合成方法、結晶化度、結晶構造によっては優れた熱伝導性充填材として使用可能となるものもある。
<<硬化触媒・硬化剤(III)>>
架橋性シリル基を有する重合体は、従来公知の各種縮合触媒の存在下、あるいは非存在下にシロキサン結合を形成することにより架橋、硬化する。硬化物の性状としては、重合体の分子量と主鎖骨格に応じて、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作成することができる。
このような縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等のジアルキル錫ジカルボキシレート類、例えば、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド等のジアルキル錫アルコキシド類、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジエチルアセトアセテートなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類、例えば、ジブチル錫オキシドやジオクチル錫オキシド等のジアルキル錫オキシドと例えば、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、メチルマレエート等のエステル化合物との反応物、例えば、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリエトキシシリケート等のジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応物、およびこれらジアルキル錫化合物のオキシ誘導体(スタノキサン化合物)等の4価のスズ化合物類;例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、フェルザチック酸スズ等の2価のスズ化合物類、あるいはこれらと後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物および混合物;例えば、モノブチル錫トリスオクトエートやモノブチル錫トリイソプロポキシド等のモノブチル錫化合物やモノオクチル錫化合物等のモノアルキル錫類;例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉄、カルボン酸チタニウム、カルボン酸鉛、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸マンガン、カルボン酸セリウム、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸亜鉛、カルボン酸アルミニウム等のカルボン酸(2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、オレイン酸、ナフテン酸等)金属塩、あるいはこれらと後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物および混合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトナート、ジブトキシジルコニウムジアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン、などの脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物、あるいはこれらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩;ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物あるいは混合物のようなアミン系化合物と有機錫化合物との反応物および混合物;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;等のシラノール縮合触媒、さらにはフェルザチック酸等の脂肪酸や有機酸性リン酸エステル化合物等他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が例示できる。
酸性触媒の有機酸性リン酸エステル化合物としては、(CH3O)2−P(=O)(−OH)、(CH3O)−P(=O)(−OH)2、(C25O)2−P(=O)(−OH)、(C25O)−P(=O)(−OH)2、(C37O)2−P(=O)(−OH)、(C37O)−P(=O)(−OH)2、(C49O)2−P(=O)(−OH)、(C49O)−P(=O)(−OH)2、(C817O)2−P(=O)(−OH)、(C817O)−P(=O)(−OH)2、(C1021O)2−P(=O)(−OH)、(C1021O)−P(=O)(−OH)2、(C1327O)2−P(=O)(−OH)、(C1327O)−P(=O)(−OH)2、(C1633O)2−P(=O)(−OH)、(C1633O)−P(=O)(−OH)2、(HO−C612O)2−P(=O)(−OH)、(HO−C612O)−P(=O)(−OH)2、(HO−C816O)−P(=O)(−OH)、(HO−C816O)−P(=O)(−OH)2、[(CH2OH)(CHOH)O]2−P(=O)(−OH)、[(CH2OH)(CHOH)O]−P(=O)(−OH)2、[(CH2OH)(CHOH)C24O]2−P(=O)(−OH)、[(CH2OH)(CHOH)C24O]−P(=O)(−OH)2などがあげられるが、例示物質に限定されるものではない。
これら有機酸類とアミンの併用系は、触媒活性が高くなるため、使用量を減少できる観点でより好ましい。有機酸とアミン併用系の中では、酸性リン酸エステルとアミン、有機カルボン酸とアミン、特に有機酸性リン酸エステルとアミン、脂肪族カルボン酸とアミンの併用系は、触媒活性がより高く、速硬化性の観点で好ましい。
これらの触媒は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。この縮合触媒の配合量は、架橋性シリル基を有する重合体100部(重量部、以下同じ)に対して0.01〜20部程度が好ましく、0.5〜5部が更に好ましい。シラノール縮合触媒の配合量がこの範囲を下回ると硬化速度が遅くなることがあり、また硬化反応が十分に進行し難くなる場合がある。一方、シラノール縮合触媒の配合量がこの範囲を上回ると硬化時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られ難くなるほか、ポットライフが短くなり過ぎ、作業性の点からも好ましくない。なお、特に限定はされないが、錫系硬化触媒が硬化性を制御し易い点で好ましい結果を与える。
特に限定はされないが、後述のような1成分系組成物にする際には、硬化速度や組成物の貯蔵安定性などの面から、錫系硬化触媒の場合、4価錫が好ましいが、2価錫と有機アミンの組み合わせや非錫化合物も使用できる。
また、特に限定はされないが、4価錫を用いると、1成分系、2成分系問わず、硬化物が応力緩和し易いことから、被着体にダメージを与えない、接着界面での剥離が起き難いなどの特徴を活かし易い。
近年、環境問題に焦点が当てられ、錫系触媒が嫌われることもあるが、その様な場合にはカルボン酸ビスマスやカルボン酸チタン等他の非錫系触媒を選択しても良い。
また、本発明の硬化性組成物においては、縮合触媒の活性をより高めるために、アミン系化合物と同様に、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤を助触媒として使用することも可能である。このアミノ基含有シランカップリング剤は、加水分解性基が結合したケイ素原子を含む基(以下加水分解性シリル基という)及びアミノ基を有する化合物であり、この加水分解性基として既に例示した基を挙げることができるが、メトキシ基、エトキシ基等が加水分解速度の点から好ましい。加水分解性基の個数は、2個以上、特に3個以上が好ましい。
これらのアミン化合物の配合量は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して0.01〜50重量部程度が好ましく、更に0.1〜20重量部がより好ましい。アミン化合物の配合量が0.01重量部未満であると硬化速度が遅くなる場合があり、また硬化反応が充分に進行し難くなる場合がある。一方、アミン化合物の配合量が30重量部を越えると、ポットライフが短くなり過ぎる場合があり、作業性の点から好ましくない。
これらのアミン化合物は、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
更に、アミノ基やシラノール基をもたないケイ素化合物を助触媒として添加しても構わない。これらのケイ素化合物としては、限定はされないが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等が好ましい。特に、ジフェニルジメトキシシランやジフェニルジエトキシシランは、低コストであり、入手が容易であるために最も好ましい。
このケイ素化合物の配合量は、架橋性シリル基を有する重合体100部に対して0.01〜20部程度が好ましく、0.1〜10部が更に好ましい。ケイ素化合物の配合量がこの範囲を下回ると硬化反応を加速する効果が小さくなる場合がある。一方、ケイ素化合物の配合量がこの範囲を上回ると、硬化物の硬度や引張強度が低下することがある。
なお、硬化触媒・硬化剤の種類や添加量は目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。また、架橋性シリル基を有する重合体のシリル基の反応性によっても硬化触媒・硬化剤の種類や添加量を変えることが可能であり、反応性が高い場合は0.01〜1部の少量の範囲で充分硬化させることが可能である。
硬化触媒・硬化剤の種類や添加量は、例えば、本発明の架橋性シリル基を有する重合体の架橋性シリル基、一般式(1)中のYの種類とaの数によって選択することが可能であり、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。Yがアルコキシ基である場合、炭素数の少ない方が反応性が高く、またaが多い方が反応性が高いため少量で充分硬化させることが可能である。
<<粘着付与樹脂>>
本発明の粘着付与樹脂は特に限定はなく、通常使用されるものを使用できる。具体例としては、例えばフェノール樹脂、変性フェノール樹脂(例えばカシューオイル変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂など)、テルペンフェノール樹脂、キシレン−フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、フェノール変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。粘着付与樹脂の使用量は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して10〜140重量部、さらには15〜80重量部が好ましい。
<<ポリエーテル系重合体>>
なお本発明においては、ポリエーテル系重合体を用いることも可能である。
なお、本発明において、架橋性シリル基を有する重合体とは、架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)のことであり、また、架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するポリエーテル系重合体を使用する場合は、架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)および架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するポリエーテル系重合体を指す。
<<架橋性官能基を有するポリエーテル系重合体>>
主鎖
ポリエーテル系重合体の主鎖は特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリフェニレンオキシドなどが挙げられる。このうち、本質的にポリオキシアルキレンであることが好ましく、本質的にポリプロピレンオキシドであることがより好ましく、これは、プロピレンオキシド以外に、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、フェニレンオキシドなどを含んでもよい。また、ポリエーテル系重合体は、主鎖中にウレタン結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ここで「主鎖が本質的にポリプロピレンオキシドである」とは、プロピレンオキシド単位が、主鎖を構成する繰り返し単位のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上を占めることをいう。より低粘度であれば取扱い性が良好になるので、ポリプロピレンオキシド系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下のものがより好ましい。
架橋性官能基
ポリエーテル系重合体中の架橋性官能基としては特に限定されず、好ましいものとして、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基が挙げられる。特に、架橋性シリル基が好ましい。
ポリエーテル系重合体が有する架橋性官能基の個数は少なくとも1個有するのが好ましいが、1個以下でも構わない。組成物の硬化性の観点から、1個より多く有することが好ましく、より好ましくは平均して1.1〜4.0個、さらに好ましくは平均して1.5〜2.5個である。また、架橋性官能基は、ポリエーテル系重合体の末端にあることが、硬化物のゴム弾性の観点から好ましい。より好ましくは重合体の両末端に官能基があることである。
分子量
この架橋性官能基を少なくとも一個有するポリエーテル系重合体としては、数平均分子量7500以上のものが好ましいが7500以下でも構わない。特に数平均分子量7500〜25000の有機重合体を使用することがより好ましい。ポリエーテル系重合体の数平均分子量が7500より低い場合は硬化物が硬く、かつ伸びが低いものとなり、数平均分子量が25000を超えると硬化物の柔軟性および伸びは問題ないが、該重合体自体の接着性が著しく低くなってしまい、実用性が低くなる。但し、分子量が低くても、架橋性官能基の個数が少ないと柔軟性および伸びが向上することがあるし、分子量が高くても、架橋性官能基の個数が多いと接着性が向上することがある。数平均分子量は特に8000〜20000が粘度の点から好ましいが、8000以下でも構わないし、20000以上でも構わない。
ポリエーテル系重合体の使用量
ポリエーテル系重合体を添加する場合の使用量は、任意の量で構わないが、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体(I)に対し、重量比で100/1〜1/100の範囲が好ましく、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることが更に好ましい。各用途、目的に応じて添加量を設定できる。ただし、添加量が多すぎると本発明の効果の1つである優れた耐熱性や耐候性が低下することがある。
上記のポリエーテル系重合体中に一般的なラジカル重合法で製造された(メタ)アクリル系重合体、または高温連続塊状重合体(例えば東亜合成(株)製SGOオリゴマーまたはそれらのシリル化物をあらかじめ混合させたものをビニル系重合体との混合に用いてもよい。
<架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体>
以下に架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体について説明する。
主鎖
架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体の主鎖構造としては、上記したものと同じである。主鎖は直鎖状であっても分枝状であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。その中でも特に好ましいのはポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオールやそれらの混合物に起因する主鎖である。また、他の単量体単位等が含まれていてもよいが、上記式に表わされる単量体単位が、重合体中に50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。
なお、主鎖中にウレタン結合、ないしはウレア結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
ポリエーテル系重合体の分子構造は、使用用途や目的とする特性により相違し、特開昭63−112642記載のもの等が使用できる。このようなポリオキシアルキレンは通常の重合方法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)や、セシウム金属触媒、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号および特開昭61−218632号等に例示されるポルフィリン/アルミ錯体触媒、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に例示される複合金属シアン化錯体触媒、特開平10−273512に例示されるポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いた方法等により得ることができる。
ポルフィリン/アルミ錯体触媒、複合金属シアン化錯体触媒やポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いた方法では分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下、さらには1.5以下などの小さい値のオキシアルキレン重合体を得ることができ、分子量分布が小さい場合、硬化物の低モジュラスと高伸びを維持して組成物粘度を小さくできるという利点がある。
架橋性シリル基
架橋性シリル基としては、ビニル系重合体と同様に、一般式(1)で表される基を用いることができ、一般式(7)で表される基が好ましい。一般式(1)や一般式(7)で表される基についてした説明は架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体についても同じように適用される。ポリエーテル系重合体中の架橋性シリル基は、架橋性シリル基を有するビニル系重合体中の架橋性シリル基と同じ構造のものでもよいし、異なる構造のものでもよい。
架橋性シリル基とポリエーテル部分の間の結合部は、耐加水分解性を有することから、シリル基のケイ素原子とポリエーテル部分のエーテル酸素原子の間に少なくとも3個の炭素原子が存在するように、トリメチレン、テトラメチレンのようなアルキレン基であることが好ましい。
架橋性シリル基の数と位置
架橋性シリル基の数は組成物の硬化性等の観点から少なくとも1.2個より多く有することが好ましく、1.2個以上4.0以下であることがより好ましく、更に好ましくは1.5〜2.5個以下である。また、ポリエーテル系重合体の架橋性シリル基は、硬化物のゴム弾性の観点から分子鎖の末端にあることが好ましく、より好ましくは重合体の両末端に官能基があることである。
また、平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル重合体を使用することもできる。この場合、高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性、優れた塗料密着性を有する硬化物を得ることができる。また、この重合体の分子量をより小さく設定することにより、組成物の粘度を低下させることができる。架橋性シリル基の個数の下限は少なくとも0.1個以上であることが好ましく、0.3個以上であることがより好ましく、0.5個以上であることが更に好ましい。架橋性シリル基は分子鎖の末端にあることが好ましい。また、このポリエーテル系重合体の架橋性シリル基は、主鎖中の一つの末端にのみ有し、他の末端には有しないものが好ましいが、平均して1.2個以下であれば特に限定されるものではない。平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル重合体を使用して低粘度化を図る場合、好ましい分子量は10,000未満、さらには5,000未満である。
架橋性シリル基の導入法
架橋性シリル基の導入は公知の方法で行なえばよい。すなわち、例えば、以下の方法が挙げられる。例えば複合金属シアン化錯体触媒を用いて得られるオキシアルキレン重合体の場合は特開平3−72527に、ポリフォスファゼン塩と活性水素を触媒として得られるオキシアルキレン重合体の場合は特開平11−60723に記載されている。
(1)末端に水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体と、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させるか、もしくは不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により、不飽和基含有オキシアルキレン重合体を得る。次いで、得られた反応生成物に架橋性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)(1)法と同様にして得られた不飽和基含有オキシアルキレン重合体にメルカプト基及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
(3)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基(以下、Y官能基という)を有するオキシアルキレン重合体に、このY官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Y′官能基という)及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
このY′官能基を有するケイ素化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノ,2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ,2−メチルプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ,3−メチルプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ,3−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、N―フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、さらには各種アミノ基含有シランとマレイン酸エステルやアクリレート化合物との部分マイケル付加反応物などのようなアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのようなメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのようなエポキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどのようなビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのような塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのようなイソシアネート含有シラン類;メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、トリエトキシシランなどのようなハイドロシラン類などが具体的に例示されうるが、これらに限定されるものではない。
また、架橋性シリル基の数が平均して1.2個以下の重合体を製造する場合、架橋性シリル基を導入する際に、分子内にただ一個の官能基を有するポリエーテル系重合体を用い、その官能基と当量ないしはより少ない量の、架橋性シリル基を有する化合物を反応させることにより、架橋性シリル基を平均して1.2個以下有するポリエーテル系重合体を得る方法と、平均して分子内に一個以上の官能基を有するポリエーテル系重合体を用い、その官能基よりも更に少ない架橋性シリル基を有する化合物を反応させることにより、結果的に架橋性シリル基を平均して1.2個以下有するポリエーテル系重合体を得る方法がある。
架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体の使用量
架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体を使用する場合の使用量は、任意の量で構わないが、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体(I)に対し、重量比で100/1〜1/100の範囲が好ましく、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることが更に好ましい。各用途、目的に応じて添加量を設定できる。ただし、添加量が多すぎると本発明の効果の1つである優れた耐熱性や耐候性が低下することがある。
平均して1.2個以下の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体を使用する場合その使用量としては、ビニル系重合体100重量部に対し1重量部以上200重量部以下が好ましく、3重量部以上100重量部以下がより好ましく、5重量部以上80重量部以下が更に好ましい。1重量部未満では添加効果が得られにくく、200重量部を超えると硬化物の物性が不安定になる傾向がある。
混合使用する態様として、1)一般式(1)で表される架橋性シリル基を有するビニル系重合体に、架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに平均して1.2個以下の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体を添加すること、2)架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を添加すること、3)架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体を添加する場合、平均して1.2個以下の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を添加すること、4)平均して1.2個以下の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体と架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体を添加すること等があげられるがこれらに限定されない。
<<各種の架橋性官能基を有する重合体任意成分>>
本発明の硬化性組成物においては、任意成分として各種の架橋性官能基を有する重合体を添加しても構わない。架橋性官能基を有する重合体としては、(i)架橋性官能基を有するポリイソブチレン系重合体、特に架橋性シリル基を有するポリイソブチレン系重合体、(ii)ポリシロキサンを例示することができる。これらの重合体は1種または2種以上を用いて添加することが出来る。
これらの重合体任意成分を、本発明の架橋性シリル基を有するビニル系重合体に添加する際に、珪素原子1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる加水分解性珪素基を有するビニル系重合体と、架橋性官能基1つあたり3つの加水分解性基が結合してなる重合体任意成分を組合せても良いし、逆に、珪素原子1つあたり3つの加水分解性基が結合してなる加水分解性珪素基を有するビニル系重合体と、架橋性官能基1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる重合体任意成分を組合せても良い。また、何れの重合体も3つの加水分解性基が結合してなる架橋性官能基を有する組合せでも構わないし、2つの加水分解性基が結合してなる架橋性官能基を有する組合せでも構わない。更には、1つから3つのものが混在していても構わない。
<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物においては、目的とする物性に応じて、各種の配合剤を添加しても構わない。
<脱水剤>
硬化性組成物は、作製する際の水分等によって、その貯蔵している間に増粘、ゲル化が進み、使用する際の作業性に難が生じたり、また、その増粘、ゲル化が進んだ硬化性組成物を使用することにより、硬化後の硬化物の物性が低下して、本来の目的である密着性等を損なったりする問題が生じることがある。つまり硬化性組成物の貯蔵安定性が問題となることがある。
この硬化性組成物の貯蔵安定性を改良するには、硬化性組成物に、共沸脱水により含水分量を減らす方法がある。例えば、水に対して極小共沸点を有する揮発性有機化合物を0.1〜10重量部程度添加し、均一に混合した後、50〜90℃程度に加熱し真空ポンプで吸引しながら水−有機化合物の共沸組成物を系外に取出す方法が挙げられる。水に対して極小共沸点を有する揮発性有機化合物としては塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化物;エタノール、アリルアルコール、1−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;メチルエチルケトン、3−メチル−2−ブタノン等のケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類等が例示できる。しかしながら、この方法は脱揮操作が入るため、揮発性の他の配合剤に対する工夫が必要となったり、共沸させる揮発性有機化合物の処理、回収等が必要になったりする。そのため、以下の脱水剤を添加する方が好ましいことがある。
上述の様に、本発明の組成物には、貯蔵安定性を改良する目的で組成物中の水分を除去するための脱水剤を添加することができる。脱水剤としては、例えば、5酸化リンや炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム(無水ボウ硝)、モレキュラーシーブス等の無機固体等が挙げられる。これらの固体脱水剤でも構わないが、添加後の液性が酸性や塩基性に傾いて逆に縮合し易く貯蔵安定性が悪くなったり、固体を後で取り除くなどの作業性が悪くなったりすることもあるため、後述の、液状の加水分解性のエステル化合物が好ましい。加水分解性のエステル化合物としては、オルトぎ酸トリメチル、オルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリプロピル、オルトぎ酸トリブチル等のオルトぎ酸トリアルキルや、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチル等のオルト酢酸トリアルキル等、およびそれらの化合物から成る群から選ばれるものが挙げられる。
それ以外の加水分解性のエステル化合物としては、更に、式R4-nSiYn(式中、Yは加水分解可能な基、Rは有機基で官能基を含んでいても含まなくともよい。nは1〜4の整数であり、好ましくは3または4である)で示される加水分解性有機シリコン化合物が挙げられ、その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、オルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシランないしはメチルシリケート)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシランないしはエチルシリケート)、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチル等のシラン化合物またはこれらの部分加水分解縮合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤、またはこれらの部分加水分解縮合物等が挙げられる。これらの中から1種または2種以上併用して配合することができる。
上記の脱水剤は、貯蔵中にビニル系重合体が加水分解し、シラノール縮合反応により三次元的網状組織を形成することを防ぐのみならず、ケチミンが水によって分解し、エポキシ樹脂と反応し硬化することを防ぐため、貯蔵安定性改良剤としてはより好ましい。
貯蔵安定性改良剤の使用量としては、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対し、0.1〜30重量部が好ましく、0.3〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。
なお、これらの貯蔵安定性改良剤を添加する際には硬化性組成物を無水の状態にしてから行なうのが好ましいが、水分を含んだままの状態で添加しても構わない。
<接着性付与剤>
本発明の硬化性組成物には、シランカップリング剤や、シランカップリング剤以外の接着性付与剤を添加することができる。接着付与剤を添加すると、熱伝導材に発熱体と放熱体とを接着するための接着剤としての機能も同時に付与することが可能である。また、場合によっては接着性向上の為に用いるプライマーの使用の必要性がなくなり、作業の簡略化が期待される。シランカップリング剤の具体例としてはアミノ基や、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲン等の官能基をもったシランカップリング剤が例示でき、その具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン等のポリスルファン類等を挙げることができる。また、上記のアミノ基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応物、アミノ基含有シラン類とアクロイルオキシ基含有シラン類との反応物、アミノ基含有シラン類とイソシアネート基含有シラン類との反応物も使用できる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、ブロックイソシアネートシラン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。また、上記のアミノ基含有シラン類と例えばメチルイソブチルケトン等のケトン化合物との反応によって得られるケチミン化合物等もシランカップリング剤として用いることができる。
シランカップリング剤は、通常、架橋性シリル基を有する重合体100部に対し、0.1〜20部の範囲で使用することが好ましい。特に、0.5〜10部の範囲で使用するのがより好ましい。本発明の硬化性組成物に添加されるシランカップリング剤の効果は、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタルなどの無機基材や、塩ビ、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機基材に用いた場合、ノンプライマー条件またはプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示すことである。ノンプライマー条件下で使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。また、使用量が架橋性シリル基を有する重合体100部に対し1部程度であれば、硬化物の透明性にほとんど影響しない。
シランカップリング剤以外の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン/ブタジエン共重合体−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレン共重合体−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン共重合体−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレン等の直鎖状または分岐状のブロック共重合体、アルキルスルフォン酸エステル、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。エポキシ樹脂は上記のアミノ基含有シラン類と反応させて使用することができる。
上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。これら接着性付与剤は添加することにより被着体に対する接着性を改善することができる。特に限定はされないが、接着性、特に金属被着面に対する接着性を向上させるために、上記接着性付与剤の中でもシランカップリング剤を0.1〜20重量部、併用することが好ましい。
接着性付与剤の種類や添加量は、例えば、本発明の架橋性シリル基を有する重合体の架橋性シリル基、一般式(1)中のYの種類とaの数によって選択することが可能であり、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。特に硬化性や伸びに影響するためその選択には注意が必要である。
<可塑剤>
本発明の硬化性組成物には、各種可塑剤を必要に応じて用いても良い。可塑剤を後述する充填材と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできたり、多量の充填材を混合できたりするためより有利となるが、必ずしも添加しなければならないものではない。可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、これらポリエーテルポリオールの水酸基の片末端または両末端もしくは全末端をアルキルエステル基またはアルキルエーテル基などに変換したアルキル誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル、E−PS等のエポキシ基含有可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。
なかでも数平均分子量500〜15,000の重合体である高分子可塑剤は、添加することにより、該硬化性組成物の粘度やスランプ性および該組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸びなどの機械特性が調整できるとともに、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持し、該硬化物にアルキッド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
上記で高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15,000と記載したが、好ましくは800〜10,000であり、より好ましくは1,000〜8,000である。分子量が低すぎると熱により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキッド塗装性が改善できないことがある。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。
これらの高分子可塑剤の中ではポリエーテル系可塑剤と(メタ)アクリル系重合体可塑剤が高伸び特性あるいは高耐候性の点から好ましい。アクリル系重合体の合成法は、従来からの溶液重合で得られるものや、無溶剤型アクリルポリマー等を挙げることができる。後者のアクリル系可塑剤は溶剤や連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法(USP4414370、特開昭59−6207、特公平5−58005、特開平1−313522、USP5010166)にて作製されるため本発明の目的にはより好ましい。その例としては特に限定されないが例えば東亞合成品のARUFON UPシリーズ(UP−1000、UP−1110、UP−2000、UP−2130)(SGOと呼ばれる)等が挙げられる(防水ジャーナル2002年6月号参照)。勿論、他の合成法としてリビングラジカル重合法をも挙げることができる。この方法によれば、その重合体の分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことから好ましく、更には原子移動ラジカル重合法がより好ましいが、これに限定されるものではない。
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、粘度の点から狭いことが好ましく、1.8未満が好ましい。1.7以下がより好ましく、1.6以下がなお好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
なお、粘度の点から言えば、主鎖に分岐構造を有する方が同一分子量では粘度が低くなるので好ましい。上述の高温連続重合法はこの例として挙げられる。
上記高分子可塑剤を含む可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、必ずしも必要とするものではない。また必要によっては高分子可塑剤を用い、物性に悪影響を与えない範囲で低分子可塑剤を更に併用しても良い。また、例えば、本発明のビニル系重合体と架橋性官能基を有する重合体任意成分の一つであるポリエーテル系重合体とを混合した組成物の場合には、混合物の相溶性の点から、フタル酸エステル類、アクリル系重合体が特に好ましい。
なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、20〜100重量部がさらに好ましい。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しにくく、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
<物性調整剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。
更に、物性の大きな低下を起こすことなく軽量化、低コスト化を図ることを目的として、微小中空粒子をこれら補強性充填材に併用しても良い。但し微小中空粒子を大量に添加すると、熱伝導性の低下を招く場合がある。微少中空粒子(以下バルーンという)は、特に限定はされないが、「機能性フィラーの最新技術」(CMC)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm3以下である微少中空体を用いることが好ましく、更には0.5g/cm3以下である微少中空体を用いることが好ましい。
その他物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本発明の組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、硬度を下げ、伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
<シラノール含有化合物>
本発明の硬化性組成物には、硬化物の物性を変える等の必要に応じてシラノール含有化合物を添加しても良い。シラノール含有化合物とは、分子内に1個のシラノール基を有する化合物、及び/又は、水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物のことをいう。これらは一方のみを用いてもよいし、両化合物を同時に用いてもよい。
シラノール含有化合物の一つである分子内に1個のシラノール基を有する化合物は、特に限定されず、下記に示した化合物、
(CH33SiOH、(CH3CH23SiOH、(CH3CH2CH23SiOH、(n−Bu)3SiOH、(sec−Bu)3SiOH、(t−Bu)3SiOH、(t−Bu)Si(CH32OH、(C5113SiOH、(C6133SiOH、(C653SiOH、(C652Si(CH3)OH、(C65)Si(CH32OH、(C652Si(C25)OH、C65Si(C252OH、C65CH2Si(C252OH、C107Si(CH32OH
(ただし、上記式中C65はフェニル基を、C107はナフチル基を示す。)
等のような(R”)3SiOH(ただし式中R”は同一または異種の置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基)で表わすことができる化合物、
Figure 2010053331
等のようなシラノール基を含有する環状ポリシロキサン化合物、
Figure 2010053331
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を、nは1〜20の整数を示す。)
等のようなシラノール基を含有する鎖状ポリシロキサン化合物、
Figure 2010053331
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を、nは1〜20の整数を示す。)
等のような主鎖が珪素、炭素からなるポリマー末端にシラノール基が結合した化合物、
Figure 2010053331
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を、nは1〜20の整数を示す。)
等のようなポリシラン主鎖末端にシラノール基が結合した化合物、
Figure 2010053331
(式中、nは1〜20の整数、mは1〜20の整数を示す。)
等のような主鎖が珪素、炭素、酸素からなるポリマー末端にシラノール基が結合した化合物等が例示できる。中でも、入手が容易であり、効果の点から分子量の小さい(CH33SiOH等が好ましい。
上記、分子内に1個のシラノール基を有する化合物は、架橋性シリル基を有する重合体の架橋性シリル基あるいは架橋により生成したシロキサン結合と反応することにより、架橋点の数を減少させ、硬化物に柔軟性を与えるとともに表面低タックや耐埃付着性に優れた組成物を与える。
また本発明の成分の1つである、水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、特に限定されないが、
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、ビストリメチルシリル尿素、N−(t−ブチルジメチルシリル)N−メチルトリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(N,N−ジエチルアミノ)トリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物、(CH33SiNHSi(CH33、(CH33SiNSi(CH32、アリロキシトリメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、ビストリメチルシリル尿素、N−(t−ブチルジメチルシリル)N−メチルトリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(N,N−ジエチルアミノ)トリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物、(CH33SiNHSi(CH33、(CH33SiNSi(CH32
Figure 2010053331
等が好適に使用できるが加水分解生成物の含有シラノール基の量からは(CH33SiNHSi(CH33が特に好ましい。
さらには本発明の成分の1つである、水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、特に限定されないが、上記化合物以外に下記一般式(46)で表される化合物が好ましい。
((R583SiO)n59 (46)
(式中、R58は上述したものと同様である。nは正数を、R59は活性水素含有化合物から一部あるいは全ての活性水素を除いた基を示す。)
58は、メチル基、エチル基、ビニル基、t−ブチル基、フェニル基が好ましく、さらにメチル基が好ましい。
(R583Si基は、3個のR58が全てメチル基であるトリメチルシリル基が特に好ましい。また、nは1〜5が好ましい。
上記R59の由来となる活性水素含有化合物としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類;フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ヒドロキノン等のフェノール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、イミダゾール等のアミン類;アセトアミド、ベンズアミド等の酸アミド類、尿素、N,N’−ジフェニル尿素等の尿素類;アセトン、アセチルアセトン、2,4−ヘプタジオン等のケトン類等が挙げられる。
上記一般式(46)で表される水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、例えば上述の活性水素含有化合物等に、トリメチルシリルクロリドやジメチル(t−ブチル)クロリド等のようなシリル化剤とも呼ばれる(R583Si基とともにハロゲン基等の活性水素と反応し得る基を有する化合物を反応させることにより得ることができるが、これらに限定されるものではない(ただし、R58は上述したものと同様である。)。
上記一般式(46)で表される化合物を具体的に例示すると、
アリロキシトリメチルシラン、 N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、ビストリメチルシリル尿素、N−(t−ブチルジメチルシリル)N−メチルトリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(N,N−ジエチルアミノ)トリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物、ポリプロピレングリコールのトリメチルシリル化物、ポリプロピレントリオールのトリメチルシリル化物等ポリエーテルポリオールのトリメチルシリル化物、ポリプロピレンテトラオールのトリメチルシリル化物、アクリルポリオールのトリメチルシリル化物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、一般式(((R603SiO)(R61O)stZで表すことができるような化合物、CH3O(CH2CH(CH3)O)5Si(CH33
CH2=CHCH2(CH2CH(CH3)O)5Si(CH33
(CH33SiO(CH2CH(CH3)O)5Si(CH33
(CH33SiO(CH2CH(CH3)O)7Si(CH33
(式中、R60は同一または異種の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基または水素原子、R61は炭素数1〜8の2価の炭化水素基、s、tは正の整数で、sは1〜6、s×tは5以上、Zは1〜6価の有機基)
等も好適に使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物の中では、貯蔵安定性、耐候性等に悪影響を及ぼさない点で、加水分解後に生成する活性水素化合物はフェノール類、酸アミド類及びアルコール類が好ましく、活性水素化合物が水酸基であるフェノール類およびアルコール類が更に好ましい。
上記の化合物の中では、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物等が好ましい。
この水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、貯蔵時、硬化時あるいは硬化後に水分と反応することにより、分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成する。この様にして生成した分子内に1個のシラノール基を有する化合物は、上述のようにビニル系重合体の架橋性シリル基あるいは架橋により生成したシロキサン結合と反応することにより、架橋点の数を減少させ、硬化物に柔軟性を与えているものと推定される。
このシラノール含有化合物の構造は、本発明のビニル系重合体のYの種類とaの数によって選択することが可能であり、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。
シラノール含有化合物は、後述の空気酸化硬化性物質と併用してもよく、併用することにより、硬化物のモジュラスを低いままに保ち、表面へ塗装したアルキッド塗料の硬化性および埃付着性を改善するので好ましい。
シラノール含有化合物の添加量は、硬化物の期待物性に応じて適宜調整可能である。シラノール含有化合物は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部添加できる。0.1重量部未満では添加効果が現れず、50重量部を越えると架橋が不十分になり、硬化物の強度やゲル分率が低下しすぎる。
また、シラノール含有化合物を添加する時期は特に限定されず、重合体の製造時に添加してもよく、硬化性組成物の作製時に添加してもよい。
<チクソ性付与剤(垂れ防止剤)>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。
チクソ性付与剤(垂れ防止剤)は揺変性付与剤ともいう。チクソ性付与とはカートリッジからビード状に押出したり、ヘラ等により塗布したり、スプレー等により吹付けたりするときのように強い力を加えられる時には流動性を示し、塗布ないしは施工後に硬化するまでの間、流下しない性質を付与するものである。
また、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)としては特に限定されないが、例えば、ディスパロン(楠本化成製)に代表されるアマイドワックスや水添ヒマシ油、水添ヒマシ油誘導体類、脂肪酸の誘導体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類、1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート等の有機系化合物や、脂肪酸や樹脂酸で表面処理した炭酸カルシウムや微粉末シリカ、カーボンブラック等の無機系化合物が挙げられる。
微粉末シリカとは、二酸化ケイ素を主成分とする天然又は人工の無機充填剤を意味する。具体的には、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト、有機ベントナイト等を例示できる。
なかでも、ケイ素を含む揮発性化合物を気相で反応させることによって作られる超微粒子状無水シリカや有機ベントナイトが好ましい。少なくとも50m2/g、更には50〜400m2/gの比表面積を有していることが好ましい。また、親水性シリカ、疎水性シリカの何れをも使用することができる。表面処理はあってもなくても構わないが、ケイ素原子に結合した有機置換基としてメチル基のみを有するシラザン、クロロシラン、アルコキシシランもしくはポリシロキサンによりその表面が疎水処理されている疎水性シリカが好ましい。
上記の表面処理剤を具体的に例示すると、ヘキサメチルジシラザン等のようなシラザン類;トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のようなハロゲン化シラン類;トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン等のようなアルコキシシラン類(ここで、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる);環状あるいは直鎖状のポリジメチルシロキサン等のようなシロキサン類等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組合せて使用してもよい。これらの中でもシロキサン類(ジメチルシリコーンオイル)によって表面処理を施された疎水性微粉末シリカが揺変性付与効果の面から好ましい。
また、微粉末シリカにジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物,ポリエーテル化合物と官能性シランの反応生成物等やエチレンオキシド鎖を有する非イオン系界面活性剤を併用するとチクソ性が増す。この非イオン系界面活性剤は1種又は2種以上使用してもよい。
この微粉末シリカの具体例としては、例えば、日本アエロジル製の商品名Aerosil R974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、RY200、RX200、RY200S、#130、#200、#300、R202等や、日本シリカ製の商品名Nipsil SSシリーズ、徳山曹達製の商品名Rheorosil MT−10、MT−30、QS−102、QS−103、Cabot製の商品名Cabosil TS−720、MS−5,MS−7、豊順洋行製のエスベンやオルガナイト等の市販品が挙げられる。
また、有機ベントナイトとは、主にモンモリロナイト鉱石を細かく粉砕した粉末状の物質で、これを各種有機物質で表面処理したものをいう。有機化合物としては脂肪族第1級アミン、脂肪族第4級アミン(これらはいずれも炭素数20以下が好ましい)などが用いられる。この有機ベントナイトの具体例としては、例えば、白石工業製の商品名オルベンD、NewDオルベン、土屋カオリン製の商品名ハードシル、Bergess Pigment製のクレー#30、Southern Clay社#33、米国National Lead製の「ベントン(Bentone)34」(ジメチルオクタデシルアンモニウムベントナイト)等が挙げられる。
チクソ性指標とは、回転粘度計による粘度測定において、回転速度の低速(例えば、0.5〜12rpm)と高速(例えば、2.5〜60rpm)とにおける見掛け粘度の比を意味する(ただし、高速回転の速度と低速回転の速度の比が少なくとも5、更には5〜10の範囲内が好ましい。
これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
<光硬化性物質>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて光硬化性物質を添加しても良い。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間に、分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この光硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。この光硬化性物質は、光をあてることにより硬化し得る物質であるが、代表的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近)に1日間、室温で静置することにより硬化させることができる物質である。この種の化合物には、有機単量体、オリゴマー、樹脂あるいはそれらを含む組成物など多くのものが知られており、その種類は特に限定されないが、例えば、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
不飽和アクリル系化合物としては、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコール等の低分子量アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類(オリゴエステルアクリレート);ビスフェノールA、イソシアヌル酸等の酸あるいは上記低分子量アルコール等をエチレンオキシドやプロピレンオキシドで変性したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;主鎖がポリエーテルで末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、主鎖がポリエーテルであるポリオール中でビニル系モノマーをラジカル重合することにより得られるポリマーポリオール、主鎖がポリエステルで末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、主鎖がビニル系あるいは(メタ)アクリル系重合体であり、主鎖中に水酸基を有するポリオール等の(メタ)アクリル酸エステル類;主鎖がビニル系あるいは(メタ)アクリル系重合体であり、主鎖中に多官能アクリレートを共重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル類;ビスフェノールA型やノボラック型等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られるエポキシアクリレート系オリゴマー類;ポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレート等を反応させることにより得られる分子鎖中にウレタン結合および(メタ)アクリル基を有するウレタンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
ポリケイ皮酸ビニル類とは、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂であり、ポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル系誘導体が挙げられる。
アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液のほか「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、93頁〜、106頁から、117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。
エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物としては、エポキシ基末端またはビニルエーテル基末端ポリイソブチレン等が挙げられる。
上記の光硬化性物質の中では、取扱い易いという理由で不飽和アクリル系化合物が好ましい。
光硬化性物質は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して0.01〜20重量部添加するのが好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類等の促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
<空気酸化硬化性物質>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて空気酸化硬化性物質を添加しても良い。空気酸化硬化性物質とは、空気中の酸素により架橋硬化できる不飽和基を有する化合物である。この空気酸化硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。本発明における空気酸化硬化性物質は、空気と接触させることにより硬化し得る物質であり、より具体的には、空気中の酸素と反応して硬化する性質を有するものである。代表的な空気酸化硬化性物質は、例えば空気中で室内に1日間静置することにより硬化させることができる。
空気酸化硬化性物質としては、例えば、桐油、アマニ油等の乾性油;これら乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂;1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエンを、C5〜C8ジエンの重合体や共重合体、更には該重合体や共重合体の各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが具体例として挙げられる。これらのうちでは桐油、ジエン系重合体のうちの液状物(液状ジエン系重合体)やその変性物が特に好ましい。
上記液状ジエン系重合体の具体例としては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させて得られる液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させて得られるNBR,SBR等の重合体や更にはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら液状ジエン系化合物のうちでは液状ポリブタジエンが好ましい。
空気酸化硬化性物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また空気酸化硬化性物質と同時に酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果を高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩やアミン化合物等が例示される。
空気酸化硬化性物質は、前述の光硬化性物質と併用してもよく、さらに前述のシラノール含有化合物を併用することができる。これら2成分の併用または3成分の併用によりその効果を更に発揮し、特に長期に渡って曝露される場合や、塵埃や微粉土砂の多い汚染性の過酷な地域においても顕著な汚染防止効果を発揮することがあるので特に好ましい。
空気酸化硬化性物質は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して0.01〜20重量部添加するのが好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。 例えば、MARK PEP−36、MARK AO−23等のチオエーテル系(以上いずれも旭電化工業製)、Irgafos38、Irgafos168、IrgafosP−EPQ(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等のようなリン系酸化防止剤等が挙げられる。なかでも、以下に示したようなヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には以下のものが例示できる。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(又はジ又はトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
商品名で言えば、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業製)、MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO−616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−80、MARK AO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれも旭電化工業製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−565、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1035、IRGANOX−1076、IRGANOX−1081、IRGANOX−1098、IRGANOX−1222、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、SumilizerGM、SumilizerGA−80(以上いずれも住友化学製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
酸化防止剤は後述する光安定剤と併用してもよく、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐熱性が向上することがあるため特に好ましい。予め酸化防止剤と光安定剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)などを使用しても良い。
酸化防止剤の使用量は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、5重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
<耐光安定剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて耐光安定剤を添加しても良い。耐光安定剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられる。これらに限定されるわけではないが、耐光安定剤の中では、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤化合物が好ましい。具体的には、チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等のようなベンゾトリアゾール系化合物やチヌビン1577等のようなトリアジン系、CHIMASSORB81等のようなベンゾフェノン系、チヌビン120(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等のようなベンゾエート系化合物等が例示できる。
また、ヒンダードアミン系化合物も好ましく、そのような化合物を以下に記載する。
コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリディニル)エステル等が挙げられる。
商品名で言えば、チヌビン622LD、チヌビン144、CHIMASSORB944LD、CHIMASSORB119FL、Irgafos168、(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、MARK LA−52、MARK LA−57、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−82、MARK LA−87、(以上いずれも旭電化工業製)、サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−292、サノールLS−2626、サノールLS−1114、サノールLS−744、サノールLS−440(以上いずれも三共製)などが例示できるがこれらに限定されるものではない。
耐光安定剤は前述した酸化防止剤と併用してもよく、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。組合せは特に限定されないが、前述のヒンダードフェノール系酸化防止剤と例えばベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤との組合せや前述のヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤化合物との組合せが好ましい。あるいは、前述のヒンダードフェノール系酸化防止剤と例えばベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤化合物との組合せが好ましい。予め光安定剤と酸化防止剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)などを使用しても良い。
ヒンダードアミン系光安定剤は前述した光硬化性物質と併用してもよく、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。組合せは特に限定されないが、この場合、3級アミン含有のヒンダードアミン系光安定剤が貯蔵中の粘度上昇が少なく貯蔵安定性が良好のため好ましい。
光安定剤の使用量は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、5重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
<エポキシ樹脂>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じてエポキシ樹脂を添加しても良い。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型(水添ビスフェノールA型)エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンのような多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物などが例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらエポキシ樹脂は単独で用いても良く2種以上併用しても良い。
これらのエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、硬化に際し、反応性が高く硬化物が3次元的網目を作りやすいなどの点から好ましい。
また、本発明のビニル系重合体とエポキシ樹脂との混合物を硬化させた時の硬化物として透明なものを得るためには、該エポキシ樹脂はビニル系重合体と相溶することが好ましく、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は各種ビニル系重合体と相溶し易く、透明な硬化物を得易い。
ビニル系重合体とエポキシ樹脂の相溶性が良好な組合せの硬化性組成物は、それを硬化させた時に変調構造を取り易く、その結果、透明な硬化物を得易い。更には機械物性も格段に向上することがある。
例えば、主鎖が、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高いビニル系重合体またはビニル系共重合体と、芳香環を有するエポキシ樹脂との組合せや、ビニル系重合体またはビニル系共重合体と、芳香環を有しないエポキシ樹脂との組合せ等の好ましい組合せが挙げられる。
芳香環を有しないエポキシ樹脂の例としては、特に限定はされないが、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、グリシジル基が脂環に直接ついていないエポキシ樹脂がより好ましい。
主鎖が、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高いビニル系重合体またはビニル系共重合体としては、これに限定されるものではないが、好ましい例として一般式(2)で表される、重合体または共重合体が挙げられる。
−[CH2−CR(COOR’)]m− (2)
(式中、Rは水素、又はメチル基、R’は、同一若しくは異なって、アルコキシアルキル基、または炭素数1〜3のアルキル基である。)
具体的にはアクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体とビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の組合せや、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーと水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂やヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの組合せ等の好ましい組合せが挙げられるがこれに限定されるものではない。
エポキシ樹脂の添加量
エポキシ樹脂を添加する場合の添加量としては、架橋性シリル基を有する重合体とエポキシ樹脂の混合比にして、重量比で100/1〜1/100の範囲が好ましいが、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることが更に好ましいが、その混合比は限定されるものではなく、各用途、目的に応じて設定できる。この硬化性組成物はその特性から、線膨張係数の異なる材料の接着や、ヒートサイクルにより繰り返し変位を受けるような部材の接着に用いる弾性接着剤として用いたり、透明な硬化物になる場合はその特性を活かして、下地が見える用途でのコーティング剤等に用いたりすることが出来る。例えば、この弾性接着剤用途ではエポキシ樹脂の混合比は多過ぎると硬化物が硬くなって剥離強度が低下してしまい、少な過ぎると逆に接着強度や耐水性が低下してしまうので、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対し、通常10〜150重量部程度の範囲、好ましくは20〜100重量部の範囲で使用されるのが良い。
エポキシ樹脂の硬化触媒・硬化剤
更に必要に応じてエポキシ樹脂用硬化剤を含むことができる。エポキシ樹脂用硬化剤としては、従来公知のものを広く使用することができる。例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、グアニジン、テトラメチルグアニジン、オレイルアミン、等の脂肪族アミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、BASF社製ラミロンC−260、CIBA社製Araldit HY−964、ロームアンドハース社製メンセンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリシクロヘキシルポリアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)等の脂環族アミン類;m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン類;(CH32N(CH2nN(CH32(式中nは1〜10の整数)で示される直鎖状ジアミン、(CH32−N(CH2n−CH3(式中nは0〜10の整数)で示される直鎖第3級アミン、N{(CH2nCH33(式中nは1〜10の整数)で示されるアルキル第3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミン類;3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(ATU)、モルホリン、N−メチルモルホリン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のエーテル結合を有するアミン類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の水酸基含有アミン類;トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、ジアザビシクロウンデセン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸等の酸無水物類;ダイマー酸にジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等のポリアミンを反応させて得られるポリアミドや各種ポリアミド樹脂、ダイマー酸以外のポリカルボン酸を使ったポリアミド等のポリアミドアミン類;2−エチル−4−メチルイミダゾール等の各種イミダゾール類;ジシアンジアミドおよびその誘導体;ポリオキシプロピレン系ジアミン,ポリオキシプロピレン系トリアミン等のポリオキシプロピレン系アミン類;フェノール類;上記アミン類にエポキシ化合物を反応させて得られるエポキシ変性アミン、上記アミン類にホルマリン、フェノール類を反応させて得られるマンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミンといった変性アミン類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸塩等のアミン塩;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの一分子中にアミノ基と加水分解性シリル基を有する化合物等が挙げられる。ケチミン化合物の具体例としては例えば特開平7−242737号公報などが挙げられる。
これらの硬化剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。特に限定はされないが、これらエポキシ樹脂用硬化剤の中では、硬化性や物性バランスの点から、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールやポリオキシプロピレン系ジアミンが好ましい。
斯かるエポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂の配合量にもよるが、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対し、通常1〜60重量部程度の範囲、好ましくは2〜50重量部程度の範囲で使用されるのが良い。1重量部未満ではエポキシ樹脂の硬化が不十分となり接着強度が低下する。また、60重量部を超えると界面へのブリード等が起こって接着性が低下し好ましくない。
またこの硬化性樹脂組成物に、重合体(I)の架橋性シリル基とエポキシ樹脂のエポキシ基の両方に反応可能な基を有する化合物を添加すると強度がより向上するので好ましい。その具体例としては、例えばN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
<相溶化剤>
本発明の硬化性組成物には、相溶化剤を添加することができる。このような添加物の具体例は、たとえば、特開2001−329025の明細書に記載されている複数のビニル系モノマーの共重合体等が使用できる。
<分子中にα,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物>
本発明の硬化性組成物に含有される分子中にα,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物を添加しても構わない。α,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物としては、一般によく知られたものが利用できる。なお、本明細書中、上記α,βジオール構造は、隣接する炭素原子に2つの水酸基を有する構造を表し、上記α,γジオール構造は、一つおいて隣り合う炭素原子に2つの水酸基を有する構造を表し、また、グリセリン等に代表されるように、α,βジオール構造とα,γジオール構造の両方、ないしは何れかの構造を含むトリオールやテトラオール等のポリオールも含む。
上記分子中にα,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類;グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール等のトリオール類;ペンタエリスリトール、D−ソルビトール、D−マンニトール、ジグリセリン、ポリグリセリン等の4価以上のポリオール類;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノベヘネート等のグリセリンモノカルボン酸エステル類;
ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンジステアレート、テトラグリセリンジオレエート、テトラグリセリンジラウレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリンジオレエート、デカグリセリンジラウレート等のポリグリセリンカルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノイソステアレート、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノラウレート等のペンタエリスリトールモノカルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジオレエート、ペンタエリスリトールジラウレート等のペンタエリスリトールジカルボン酸エステル類;
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート等のソルビタンモノカルボン酸エステル類;ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジベヘネート等のソルビタンジカルボン酸エスエル類;グリセリンモノステアリルエーテル、グリセリンモノオレイルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテル、グリセリンモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のグリセリンモノアルキルエーテル類;ジグリセリンモノステアリルエーテル、ジグリセリンモノオレイルエーテル、ジグリセリンモノラウリルエーテル、テトラグリセリンモノステアリルエーテル、テトラグリセリンモノオレイルエーテル、テトラグリセリンモノラウリルエーテル、テトラグリセリンジステアリルエーテル、テトラグリセリンジオレイルエーテル、テトラグリセリンジラウリルエーテル、デカグリセリンモノステアリルエーテル、デカグリセリンモノオレイルエーテル、デカグリセリンモノラウリルエーテル、デカグリセリンジステアリルエーテル、デカグリセリンジオレイルエーテル、デカグリセリンジラウリルエーテル等のポリグリセリンアルキルエーテル類;
ペンタエリスリトールモノステアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノオレイルエーテル、ペンタエリスリトールモノラウリルエーテル等のペンタエリスリトールモノアルキルエーテル類;ペンタエリスリトールジステアリルエーテル、ペンタエリスリトールジオレイルエーテル、ペンタエリスリトールジラウリルエーテル等のペンタエリスリトールジアルキルエーテル類;ソルビタンモノステアリルエーテル、ソルビタンモノオレイルエーテル、ソルビタンモノラウリルエーテル等のソルビタンモノアルキルエーテル類;ソルビタンジステアリルエーテル、ソルビタンジオレイルエーテル、ソルビタンジラウリルエーテル等のソルビタンジアルキルエーテル類等を挙げることができる。
上記化合物の多くは、乳化剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、防曇剤、可溶化剤、増粘剤、滑剤として汎用のものが多く、容易に入手できる。
上記の化合物は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。上記の化合物の使用量は、架橋性シリル基を有する重合体100重量部に対し、0.01〜100重量部が好ましい。0.01重量部未満であると、目的とする効果が得られず、100重量部を超えると、硬化物の機械的強度が不足するという問題点を生じるため好ましくない。より好ましくは、0.1〜20重量部である。
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、難燃剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
このような添加物の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号の各明細書などに記載されている。
本発明の硬化性組成物は、実質的に無溶剤で使用できる。作業性の観点等から溶剤を使用しても構わないが、環境への影響から使用しないことが望ましい。
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、塗布後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製しても良く、架橋性シリル基を有する重合体とその硬化剤・硬化触媒を別々にして、別途、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材を使用前に混合する2成分型として調整しても良い。
例えば、限定はされないが、A剤として、架橋性シリル基を有する重合体等を調整し、B剤として、架橋性シリル基を有する重合体の硬化触媒としての錫化合物、水等を調整しておき、塗布直前に上記のA剤とB剤を混合して使用することも可能である。
1成分型にすると、塗布の際に混合・混練する手間が不要となり、同時にその際に生じる計量ミス(混合比の間違い)もなくなるため、硬化不良等のミスを防ぐことができる。
<<硬化前の粘度>>
本発明の熱伝導材は、硬化前の粘度が3000Pa・s以下の、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を、発熱体と放熱体との間に厚み0.5mm以下に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させて得られるものである。硬化前の粘度を3000Pa・s以下と低く保つことにより、発熱体と放熱体との間の隙間にくまなく硬化前の組成物が入り込み、固化後の熱抵抗を低減させることが可能である。硬化前の粘度が3000Pa・sを超えると、発熱体と放熱体との間の隙間を埋める効果が低くなってしまう。硬化前の粘度は好ましくは2500Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下、最も好ましくは1600Pa・s以下である。硬化前の粘度は、窒素置換された水分を含まない雰囲気下にて、23℃でBS型粘度計を用いて2rpmの条件で測定した値を用いる。硬化前の粘度の下限値に特に制限は無いが、あまり粘度が低すぎると塗布してから硬化が完了するまでの間に流失してしまう懸念があるため、一般的には0.1Pa・s以上のものが用いられる。
<<硬化後の厚み>>
本発明の熱伝導材は、硬化後の厚みを0.5mm未満とすることにより、優れた熱抵抗低減効果を示すものである。硬化後の厚みが0.5mm以上あると、熱伝導材自体の熱抵抗が増えてしまうため、熱抵抗低減効果が低くなってしまい好ましくない。硬化後の厚みは、硬化前の組成物を塗らない状態で、発熱体と放熱体とを密着させ、発熱体から放熱体までの全体の寸法を測定した後、発熱体と放熱体との間に硬化前の組成物を薄く塗布し、発熱体と放熱体とを密着させて硬化させ、硬化後に再度発熱体から放熱体までの全体の寸法を測定し、硬化前と硬化後との寸法変化から測定することができる。硬化後の熱伝導材の厚みは好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下、最も好ましくは0.2mm以下である。また硬化後の熱伝導材の厚みの下限は特に制限は無いが、一般的には0.01mm以上である。
<<使用法、用途>>
本発明の組成物は、発熱体と放熱体との間に薄く塗布した後、発熱体と放熱体との間にて厚みを0.5mm未満となるよう硬化させて使用される。
本発明の組成物は、発熱材料とヒートスプレッダー、ヒートスプレッダーと冷却部材、との間にある熱を伝えるサーマルインターフェイスとして用いることが出来る。また、ヒートスプレッダー自身としても使用可能である。発熱材料としては、特に限定はされないが、発熱性のあるヒーター、温度センサ、演算素子、トランジスタ、発光素子などの電子部品等が挙げられる。冷却部材としては、特に限定はされないが、放熱材料として放熱フィン等のヒートシンク等、グラファイトシート(グラファイトフィルム)、液体セラミックスやペルチェ素子等が挙げられる。これらの発熱材料からの熱を冷却部材等に放散させる熱伝導性材料として好適に用いられるものであり、放熱材料自身として用いても構わないということである。また、ヒートスプレッダーと冷却部材を兼ねても構わない。
本発明の組成物は、ビニル系重合体をベース樹脂として用いることから、耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐水性に優れるため、過酷な使用に耐え得るものである。また、電気絶縁性のフィラーを主体に使用する場合は電気絶縁性にも優れ、電気絶縁性が求められる部位に使用できる。一方、電気導電性のフィラーを主体に使用する場合には、電気導電性に優れ、電気導電性が求められる部位にも使用できる。
更に、本発明の組成物は、発熱体と放熱体との間に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させてなるものであるため、これら発熱材料や放熱材料との密着性に優れ、多少の凹凸があっても充分に熱を伝えることが可能である。
熱伝導性を活かした用途として限定はされないが、環状シロキサンによる接点障害が起きないため、携帯電話やパソコンなどの小型電子機器に特に好適である。更に、自動車や家電等の電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、電気電子用ポッティング剤等の様々な用途に利用可能である。
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
下記合成例、実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
本発明における重合体の合成例を以下に示した。
下記合成例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
(合成例1) 架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチル)共重合体の合成例
窒素雰囲気下、250L反応機にCuBr(1.21kg)、アセトニトリル(10.8kg)、アクリル酸ブチル(7.19kg)、アクリル酸エチル(10.3kg)、アクリル酸2−メトキシエチル(8.47kg)及び2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(3.37kg)を加え、70〜80℃で30分程度撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミンを加え、反応を開始した。反応開始30分後から2時間かけて、アクリル酸ブチル(28.8kg)、アクリル酸エチル(41.3kg)、アクリル酸2−メトキシエチル(33.9kg)の混合物を連続的に追加した。反応途中ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜添加し、内温70℃〜90℃となるようにした。ここまでで使用したペンタメチルジエチレントリアミン総量は243gであった。反応開始から4時間後、80℃で減圧下、加熱攪拌することにより揮発分を除去した。これにアセトニトリル(32.5kg)、1,7−オクタジエン(30.9kg)、ペンタメチルジエチレントリアミン(486g)を添加して4時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、ろ過助剤として珪藻土、吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、加熱攪拌した。混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を内温100℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
更にこの濃縮物に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイト、熱劣化防止剤を加え、減圧下、加熱攪拌した(平均温度約175℃、減圧度10Torr以下)。
更に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを追加し、酸化防止剤を加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、加熱攪拌した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を減圧下加熱攪拌して揮発分を除去し、アルケニル基を有する重合体を得た。
このアルケニル基を有する重合体、ジメトキシメチルシラン(アルケニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1.0モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のキシレン溶液:以下白金触媒という](白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、窒素雰囲気下、100℃で加熱攪拌した。アルケニル基が消失したことを確認し、反応混合物を濃縮して末端にジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチル)共重合体[P1]を得た。得られた共重合体の数平均分子量は約18000、分子量分布は1.2であった。共重合体1分子当たりに導入された平均のシリル基の数を1H NMR分析により求めたところ、約1.9個であった。
(合成例2) 架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)重合体の合成例
窒素雰囲気下、250L反応機にCuBr(1.09kg)、アセトニトリル(11.4kg)、アクリル酸ブチル(26.0kg)及び2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(2.28kg)を加え、70〜80℃で30分程度撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミンを加え、反応を開始した。反応開始30分後から2時間かけて、アクリル酸ブチル(104kg)を連続的に追加した。反応途中ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜添加し、内温70℃〜90℃となるようにした。ここまでで使用したペンタメチルジエチレントリアミン総量は220gであった。反応開始から4時間後、80℃で減圧下、加熱攪拌することにより揮発分を除去した。これにアセトニトリル(45.7kg)、1,7−オクタジエン(14.0kg)、ペンタメチルジエチレントリアミン(439g)を添加して8時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、ろ過助剤として珪藻土、吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温100℃で加熱攪拌した。混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を内温100℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
更にこの濃縮物に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイト、熱劣化防止剤を加え、減圧下、加熱攪拌した(平均温度約175℃、減圧度10Torr以下)。
更に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを追加し、酸化防止剤を加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温150℃で加熱攪拌した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を減圧下加熱攪拌して揮発分を除去し、アルケニル基を有する重合体を得た。
このアルケニル基を有する重合体、ジメトキシメチルシラン(アルケニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1.0モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のキシレン溶液:以下白金触媒という](白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、窒素雰囲気下、100℃で加熱攪拌した。アルケニル基が消失したことを確認し、反応混合物を濃縮して末端にジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)重合体[P2]を得た。得られた重合体の数平均分子量は約26000、分子量分布は1.3であった。重合体1分子当たりに導入された平均のシリル基の数を1H NMR分析により求めたところ、約1.8個であった。
(合成例3) 架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)重合体の合成例
合成例2と同様にして、モノマーと開始剤との比率を変更することにより、ほぼ両末端にジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)重合体[P3]を得た。得られた重合体の数平均分子量は約14000、分子量分布は1.1であった。重合体1分子当たりに導入された平均のシリル基の数を1H NMR分析により求めたところ、約2.0個であった。
(実施例1)
合成例で得られた重合体、可塑剤:UP−1020(アクリル系可塑剤、東亞合成製)、酸化防止剤:アデカスタブAO−60(アデカ製)、熱伝導性充填剤:AS−40(丸み状アルミナ、昭和電工製)、脱水剤:A171(ビニルトリメトキシシラン、東レダウコーニングシリコーン製)、を表1の配合表に従い、硬化触媒以外を手混ぜで充分撹拌混合した後に3本ペイントロールに3回通して各種硬化性組成物を得た。これらの硬化性組成物を真空脱泡装置にて脱泡処理した後、硬化触媒:ネオスタンU−220H(ジブチル錫ジアセチルアセトナート、日東化成製)と混合した。得られた混合物を、発熱体である15mm角のセラミックヒーター上に0.2mm厚のフィルム状に塗工し、放熱体である同寸法の金属性ヒートシンクで挟みつけた後、23℃×50%R.H.にて5分間静置し硬化させ、熱伝導材料を得た。
また得られた混合物を別途、標準ニッケル円板状プレート(純度:99.9%、直径:約12.7mm、厚み:約1.0mm)の全面に厚み約0.2mmとなるよう塗布し、その上にもう一枚標準ニッケル円板状プレートを重ねた後、2kgの錘をプレート上にかけ他状態で、23℃×50%R.H.にて5分間静置し硬化させ、熱抵抗測定用サンプルを得た。サンプル全体の厚みを測定後、既知の標準ニッケル円板状プレートの厚みを差し引くことにより、熱伝導材料の厚みを算出した。
(実施例2〜10、比較例2〜3)
重合体、可塑剤、熱伝導性充填剤、その他添加剤に下記のものを用い、表1に示す割合で混合した以外は実施例1と同様にして、熱伝導材料を得た。
(比較例1)
実施例3で得られたものと同様の組成物を、厚み1.3mmとなるよう保護フィルム上に塗布することにより、厚み約1.3mmの柔軟なシート状に硬化させた。これを発熱体と放熱体との間に挟み、熱伝導剤とした以外は実施例3と同様にして、熱伝導材料を得た。
可塑剤:DIDP(フタル酸ジイソデシル、ジェイ・プラス製)
熱伝導性充填剤:
PTX−60(球状化窒化ホウ素、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)
BF083(水酸化アルミニウム、日本軽金属製)
CGC−100(球状化黒鉛、日本黒鉛工業製)
WF−015(球状化黒鉛、中越黒鉛工業所製)
BSF−547(Mn−Zn系ソフトフェライト、戸田工業製)
R−1470(カルボニル鉄、戸田工業製)
接着性付与剤:A−1120(アミノシラン系化合物:N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、東レダウコーニングシリコーン製)
チクソ性付与剤:ディスパロン#6500(水添ひまし油、楠本化成製)
難燃剤:ノーバエクセル140(安定化赤燐、燐化学工業製)
[硬化前粘度]
得られた組成物にて硬化前の粘度を、23℃でBS型粘度計を用いて2rpmにて測定した。
[熱伝導率]
得られた厚み0.2mmの熱伝導材料から12.7mmφの円板状サンプルを切り出し、サンプル表面にレーザー光吸収用スプレー(ファインケミカルジャパン(株)製ブラックガードスプレーFC−153)を塗布し乾燥させた後、ASTM E1461に準拠し、NETZSCH製のXeフラッシュアナライザーLFA447Nanoflashを用い、厚み方向の熱拡散率を測定した。また熱容量が既知である参照標準物質との比較からサンプルの比熱を算出した。さらに別途水上置換法により測定した密度とから、次式により厚み方向の熱伝導率を算出した。
〔熱伝導率〕=〔熱拡散率〕×〔密度〕×〔比熱〕
[熱抵抗]
得られた熱抵抗測定用サンプルを用いて、得られたサンプル厚みにおける単位面積当たりの硬化物の熱抵抗(K/W)を、NETZSCH製のXeフラッシュアナライザーLFA447Nanoflashにより測定した。
Figure 2010053331
何れの実施例も熱抵抗を低く抑えることができた。
またこれら実施例とは別に、市販のアクリルゴムをベースとして、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物の作成を試みたが、長期間の保存安定性を有する組成物を得るのは困難であった。このことから、架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体を用いることが有用であることがわかる。

Claims (12)

  1. 架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)、及び、熱伝導性充填材(II)を含有し、硬化前の粘度が3000Pa・s以下の、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を発熱体と放熱体との間に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させてなる、硬化後の厚みが0.5mm未満の熱伝導材料。
  2. 更に、ビニル系重合体(I)の硬化触媒(III)を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱伝導材料。
  3. 分子量分布が1.8未満であるビニル系重合体(I)を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱伝導材料。
  4. 架橋性シリル基が一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜3のうち何れかに記載の熱伝導材料。
    −[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a(1)
    (式中、R1およびR2は、同一若しくは異なって、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R′)3SiO−で表されるトリオルガノシロキシ基を示す(式中、R′は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。複数のR′は同一であってもよく又は異なっていてもよい)。R1またはR2がそれぞれ2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を示す。bは0、1、または2を示す。mは0〜19の整数を示す。ただし、a+mb≧1であることを満足する。)
  5. 主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものであるビニル系重合体(I)を含有することを特徴とする請求項1〜4のうち何れかに記載の熱伝導材料。
  6. 主鎖が、(メタ)アクリル酸エステル系重合体であるビニル系重合体(I)を含有することを特徴とする請求項5に記載の熱伝導材料。
  7. ビニル系重合体(I)の主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜6のうち何れかに記載の熱伝導材料。
  8. ビニル系重合体(I)の主鎖が原子移動ラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする請求項7記載の熱伝導材料。
  9. ビニル系重合体(I)の架橋性シリル基が分子鎖末端にあることを特徴とする請求項1〜8のうち何れかに記載の熱伝導材料。
  10. 熱伝導性充填材(II)が炭素化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカ、有機ポリマー焼成物、Znフェライトとの複合フェライト、Fe−Al−Si系三元合金、および金属粉末から選ばれる少なくとも1種であることを特徴する請求項1〜9のいずれかに記載の熱伝導材料。
  11. 熱伝導性充填材(II)がグラファイト、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、結晶化シリカ、Fe−Al−Si系三元合金、およびカルボニル鉄から選ばれる1種以上であることを特徴する請求項10に記載の熱伝導材料。
  12. 熱伝導性充填材(II)の容積率が、全組成物中25容量%以上であることを特徴する請求項1〜11の何れかに記載の熱伝導材料。
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