JP5048386B2 - 硬化性組成物 - Google Patents

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本発明は硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)、錫系硬化触媒(II)及びカルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)を含有してなる硬化性組成物に関する。
官能基を有する硬化性組成物としては、例えば架橋性シリル基を有し、主鎖がポリシロキサン系、ポリオキシプロピレン系、ポリイソブチレン系である湿分硬化型液状重合体が既に知られている。
しかし、これらを用いた硬化性組成物には改善すべき点がある。ポリシロキサン系は耐候性、耐熱性、耐寒性、可撓性等に優れるものの、低分子成分のブリードによる汚染性や塗装性に問題点を残している。ポリオキシプロピレン系は可撓性や塗装性、耐汚染性に優れる一方、耐候性が十分でない場合がある。ポリイソブチレン系は耐候性、耐透湿性に特徴を有するものの、比較的粘度が高くハンドリングが困難な場合があり、また、1液化するためには若干工夫を要する。
また、官能基としてアルケニル基を有する重合体も硬化性組成物として利用される。ヒドロシリル基を有する化合物を硬化剤として用いることにより、耐熱性や耐久性、深部硬化性に優れた硬化物を与えることが知られている。このような、アルケニル基を有する重合体の主鎖骨格としては、種々のものが知られており、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、それらの水素添加物等の炭化水素系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン等のポリエステル系重合体;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系重合体等が例示される。
これらの重合体を用いた硬化性組成物にも、改善すべき点がある。例えば、ポリエーテル系硬化物では、用途によっては耐熱性や耐候性が不十分な場合がある。ポリブタジエンやポリイソプレン等の炭化水素系硬化物では、主鎖中に残った内部二重結合のために、用途によっては若干耐熱性や耐候性が不足することがある。内部二重結合を持たないポリイソブチレン系硬化物では耐候性は優れているものの、比較的粘度が高くハンドリングが困難な場合がある。ポリエステル系硬化物も、用途によっては耐候性が不足することがある。シリコーン系硬化物は耐候性、耐熱性、耐寒性、作業性の点で非常に優れているものの、塗料付着性や汚染性等に問題を残している。
一方、官能基を有するビニル系重合体についても種々のものが知られている。例えば、連鎖移動剤としてアルケニル基含有ジスルフィドを用いる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の合成法(特許文献1及び特許文献2参照)や、ヒドロキシル基を有するジスルフィドを用いて、両末端にヒドロキシル基を有するビニル系重合体を合成し、さらにヒドロキシル基の反応性を利用して、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得る方法(特許文献3参照)、また、ヒドロキシル基を有するポリスルフィドを用いて、両末端にヒドロキシル基を有するビニル系重合体を合成し、さらにヒドロキシル基の反応性を利用して、末端にシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得る方法(特許文献4参照)が既に開示されている。
また他方で、従来、成形用のアクリルゴム組成物には、活性塩素基やエポキシ基を導入したアクリル系ゴム重合体が用いられ、耐熱性、耐油性の良い成形品が得られていたが、さらに耐熱性を向上したいというニーズに対処するため、ビニル基含有有機ケイ素基を導入する技術が提案された(特許文献5及び特許文献6参照)。
これらの方法により得られたアルケニル基や架橋性シリル基を側鎖に有する重合体を含有する硬化性組成物は、高耐候性の塗料等に利用されている。
しかし、これらの方法では容易に重合体を製造することができるが、確実に重合体の両末端にケイ素基を導入することが困難であり、その硬化物は、伸び等のゴム物性が不十分であり、満足な特性を有する硬化性組成物を得ることができなかった。両末端に確実に官能基を導入するためには、連鎖移動剤を大量に使用しなければならず、製造工程上問題であった。また、これらの方法では通常のラジカル重合が用いられているため、得られる重合体の分子量、分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)のコントロールは困難であった。
架橋性シリル基を分子鎖末端に有するビニル系重合体を簡便な方法で得ることができれば、側鎖に架橋性基を有するものに比較して硬化物物性の優れた硬化物を得ることができる。従って、これまで多くの研究者によって、その製造法が検討されてきたが、それらを工業的に製造することは容易ではない。
そこで、この問題を解決するために、末端に官能基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法が開発されてきた。特にリビングラジカル重合を利用して合成された重合体は、分子量や分子量分布を任意に制御でき、末端にも定量的に官能基の導入が可能であり、その結果、耐候性、耐熱性、耐油性等に優れ、上記のポリエーテル系重合体や炭化水素系重合体、あるいはポリエステル系重合体では得られない良好な機械物性を有する硬化性組成物に利用できる(特許文献7〜特許文献17参照)。
ところが、この架橋性シリル基を少なくとも1個有し、主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたビニル系重合体は、良好な耐熱性、耐油性、耐候性が期待した程得られないことがあった。特に、炭酸カルシウム系の充填材を添加した配合物ではシリカ系やカーボンブラック系の充填材を添加した配合物よりも劣ることがある(特許文献18〜特許文献20参照)。
本発明と同様の加水分解性シリル基末端官能基を有するポリマーと硬化触媒及びカルボン酸化合物を用いた硬化性組成物に関する発明としては、特許文献21〜特許文献23に記載したものがある。しかし、この特許では、ポリマーの主鎖がポリエーテル系で構成要素が全く異なること、及び硬化速度と貯蔵安定性を改善する技術であり、耐熱性の改善に言及されたものはない。
特開平01−247403号公報 特開平05−255415号公報 特開平05−262808号公報 特開平05−211922号公報 特開昭61−127711号公報 特公平02−001859号公報 特開平09−272714号公報 特開平11−005815号公報 特開平11−043512号公報 特開平11−080571号公報 特開平11−116617号公報 特開平11−130931号公報 特開平12−086999号公報 特開平12−191912号公報 特開2000−038404号公報 特開2000−044626号公報 特開2000−072804号公報 特開2003−327852号公報 特開2004−083865号公報 特開2002−868482号公報 特開平05−117518号公報 特開平09−12860号公報 特開2002−37953号公報
本発明は、硬化させた時の硬化物が耐熱性、耐候性に優れ、かつ、充分な硬化速度が得られる硬化性組成物の提供を目的とする。
上述の現状に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、錫系硬化触媒及びカルボン酸化合物を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)、錫系硬化触媒(II)及びカルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)を含有してなる硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」と称することがある)に関する。
上記錫系硬化触媒(II)は、ジアルキル錫オキサイド及びエステル化合物を反応させて得られる錫化合物であることが好ましい。
上記錫系硬化触媒(II)は、ジアルキル錫ジカルボキシレート化合物又はビス(ジアルキル錫カルボキシレート)オキサイド化合物であることが好ましい。
上記錫系硬化触媒(II)は、ジアルキル錫ジアルコキシド化合物であることが好ましい。
上記錫系硬化触媒(II)は、ジアルキル錫オキサイド及びシリケート化合物を反応させて得られる錫化合物、又は、これらのオキシ誘導体であることが好ましい。
上記錫系硬化触媒(II)は、2価の錫化合物とアミン系化合物との混合物であることが好ましい。
上記カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)は、炭素数10〜20の飽和脂肪酸であることが好ましい。
上記カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)は、カルボン酸とアルカリ金属からなる金属塩であることが好ましい。
架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)(以下、単に「ビニル系重合体(I)」と略することがある)は、分子量分布が1.8未満であることが好ましく、また、その架橋性シリル基が一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y)(1)
(式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で表されるトリオルガノシロキシ基を示す。R又はRがそれぞれ2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3を示す。bは0、1又は2を示す。mは0〜19の整数を示す。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
上記ビニル系重合体(I)の主鎖は、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましく;(メタ)アクリル系重合体であることがより好ましく;アクリル系重合体であることがさらに好ましく;アクリル酸エステル系重合体であることが特に好ましい。
また、上記ビニル系重合体(I)の主鎖は、リビングラジカル重合法により製造されたものであることが好ましく;原子移動ラジカル重合法により製造されたものであることがより好ましい。
上記ビニル系重合体(I)の架橋性シリル基は、分子鎖末端にあることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、さらに、ポリエーテル系重合体(IV)を含有することができる。当該ポリエーテル系重合体(IV)の主鎖は、本質的にポリプロピレンオキサイドであることが好ましい。また、当該ポリエーテル系重合体(IV)は、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有する重合体であることが好ましい。
さらに、本発明の硬化性組成物は、湿分を吸収することにより架橋硬化できるように一液型に梱包されていることが好ましく、また、湿分を吸収することにより架橋硬化できるように二液型に梱包されていることが好ましい。
以下に、本発明の硬化性組成物について詳述する。
本発明の硬化性組成物は、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)、錫系硬化触媒(II)、及び、カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)を含有してなる組成物である。
<<ビニル系重合体(I)>>
<主鎖>
本発明者らは、これまでに様々な架橋性官能基を重合体末端に有するビニル系重合体、その製造法、硬化性組成物、及び用途に関して数々の発明を行ってきた(特開平11−080249、特開平11−080250、特開平11−005815、特開平11−116617、特開平11−116606、特開平11−080571、特開平11−080570、特開平11−130931、特開平11−100433、特開平11−116763、特開平9−272714号、特開平9−272715号等を参照)。本発明のビニル系重合体(I)としては特に限定されないが、上に例示した発明で開示される重合体をすべて好適に用いることができる。
本発明のビニル系重合体(I)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
ビニル系重合体(I)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体(I)を構成するモノマー単位のうち50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーである。
一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候性、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチルモノマーがさらに好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体がさらに好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途によってはその比率を80モル%以下にするのが好ましく、60モル%以下にするのがより好ましく、40モル%以下にするのがさらに好ましく、30モル%以下にするのがもっと好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は60モル%以下にするのが好ましく、40%以下にするのがさらに好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/20〜30)の共重合体が挙げられる。
なお、本発明のビニル系重合体(I)にエポキシ樹脂を添加する場合において、その硬化性組成物を硬化させた時の硬化物が透明であるものを得るためには、該ビニル系重合体(I)としてはエポキシ樹脂と相溶するものが好ましく、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高い重合体又は共重合体が好適であり、該ビニル系重合体(I)の主鎖が一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する重合体又は共重合体であることがより好ましい。
−[CH−CR(COOR”)]− (2)
(式中、Rは水素、又はメチル基、R”は、同一若しくは異なって、アルコキシアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高い重合体又は共重合体には、特に限定はないが、アクリル酸ブチルと、アクリル酸ブチルよりも極性が高いモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸ブチルよりも極性が高いモノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル等が挙げられる。例えば、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/20〜30)の共重合体が各種エポキシ樹脂と相溶し易く、透明な硬化物を得易いため、好適である。
他のポリマー、例えば、変成シリコーン樹脂(架橋性シリル基を有するオキシアルキレン重合体)との相溶性を向上させるためにステアリル基やラウリル基等の長鎖のアルキル基を持ったモノマー等を共重合させても良い。特に限定はされないが、例えば、アクリル酸ステアリルやアクリル酸ラウリルを5〜30モル%共重合することで変成シリコーン樹脂との相溶性が非常に良好になる。それぞれのポリマーの分子量によって相溶性が変わるため、この共重合させるモノマーの比率はそれに応じて選択することが好ましい。また、その際には、ブロック共重合させても構わない。少量で効果を発現する場合がある。
架橋性シリル基を持ったビニル系重合体(I)を含む硬化性組成物は、貯蔵によりその硬化性が遅くなることが、つまり貯蔵安定性が悪くなることがある。例えば、アクリル酸メチルを共重合することにより、そのような減少を抑制することが可能になる場合がある。また硬化物の強度を向上させたい場合に用いても構わない。この場合にも、共重合させるモノマーの比率は分子量に応じて選択してもよいし、ブロック共重合させても構わない。
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、さらにはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
本発明のビニル系重合体(I)の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、1.8未満が好ましく、1.3以下が作業性の点から特に好ましい。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
本発明におけるビニル系重合体(I)の数平均分子量は特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、500〜1,000,000が好ましく、5,000〜50,000が作業性、物性上の点から特に好ましい。また、当然ながら、分子量が小さい程、他の樹脂(各種重合体)と相溶し易く、かつ得られた硬化物は高モジュラス、低伸びの傾向を示し、逆に分子量が大きければその逆の傾向を示す。
<主鎖の合成法>
本発明における、ビニル系重合体(I)の合成法は、限定はされず、フリーラジカル重合でも構わないが、制御ラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましい。以下にこれらについて説明する。
制御ラジカル重合
ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端等の制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量使用ではこの特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題点がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合をおこなうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応等を起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリング等による停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
「リビングラジカル重合法」は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、例えばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物等のラジカルキャッピング剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)等が挙げられる。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報等が挙げられる。
本発明において、これらのリビングラジカル重合のうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
以下にリビングラジカル重合について詳細に説明していくが、その前に、後に説明するビニル系重合体の製造に用いることができる制御ラジカル重合のうちの一つ、連鎖移動剤を用いた重合について説明する。連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合としては、特に限定されないが、本発明に適した末端構造を有したビニル系重合体を得る方法としては、次の2つの方法が例示される。
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィド等を連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
以下に、リビングラジカル重合について説明する。
そのうち、まず、ニトロキシド化合物等のラジカルキャッピング剤を用いる方法について説明する。この重合では一般に安定なニトロキシフリーラジカル(=N−O・)をラジカルキャッピング剤として用いる。このような化合物類としては、限定はされないが、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが好ましい。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
上記ラジカルキャッピング剤はラジカル発生剤と併用される。ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤との反応生成物が重合開始剤となって付加重合性モノマーの重合が進行すると考えられる。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル発生剤0.1〜10モルが適当である。
ラジカル発生剤としては、種々の化合物を使用することができるが、重合温度条件下で、ラジカルを発生しうるパーオキサイドが好ましい。このパーオキサイドとしては、限定はされないが、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等がある。特にベンゾイルパーオキサイドが好ましい。さらに、パーオキサイドの代わりにアゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等のラジカル発生剤も使用しうる。
Macromolecules 1995,28,P.2993で報告されているように、ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤を併用する代わりに、下式のようなアルコキシアミン化合物を開始剤として用いても構わない。
Figure 0005048386
アルコキシアミン化合物を開始剤として用いる場合、それが上式で示されているような水酸基等の官能基を有するものを用いると、末端に官能基を有する重合体が得られる。これを本発明の方法に利用すると、末端に官能基を有する重合体が得られる。
上記のニトロキシド化合物等のラジカルキャッピング剤を用いる重合で用いられるモノマー、溶媒、重合温度等の重合条件は、限定されないが、次に説明する原子移動ラジカル重合について用いるものと同様で構わない。
原子移動ラジカル重合
次に、本発明のリビングラジカル重合としてより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、
−CHX、C−C(H)(X)CH、C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
−C(H)(X)−CO、R−C(CH)(X)−CO、R−C(H)(X)−C(O)R、R−C(CH)(X)−C(O)R
(式中、R、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
−C−SO
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
等が挙げられる。
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端に原子移動ラジカル重合の生長末端構造を有するビニル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(3)に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(R)=CH (3)
(式中、Rは水素、又はメチル基、R、Rは水素、又は、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、又は他端において相互に連結したもの、Rは、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、又はo−,m−,p−フェニレン基、Rは直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
置換基R、Rの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。RとRは他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
一般式(3)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
Figure 0005048386
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
Figure 0005048386
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
C=C(R)−R−C(R)(X)−R10−R (4)
(式中、R、R、R、R、Xは上記に同じ、R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、又は、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。Rが直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
一般式(4)の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、CH=C(CH)CHX、CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH、CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH、CH=CHCHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CHCHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式(5)に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(H)(R)CH−[Si(R112−b(Y)O]−Si(R123−a(Y) (5)
(式中、R、R、R、R、R、Xは上記に同じ、R11、R12は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11又はR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
一般式(5)の化合物を具体的に例示するならば、
XCHC(O)O(CHSi(OCH、CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(OCH、(CHC(X)C(O)O(CHSi(OCH、XCHC(O)O(CHSi(CH)(OCH、CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH、(CHC(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCHC(O)O(CHO(CHSi(OCH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、XCHC(O)O(CHO(CHSi(CH)(OCH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−Si(OCH、o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−Si(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
等が挙げられる。
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式(6)で示される構造を有するものが例示される。
(R123−a(Y)Si−[OSi(R112−b(Y)−CH−C(H)(R)−R−C(R)(X)−R10−R (6)
(式中、R、R、R、R、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CHO)SiCHCHC(H)(X)C、(CHO)(CH)SiCHCHC(H)(X)C、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
N−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
Figure 0005048386
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
生長末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
Figure 0005048386
Figure 0005048386
等が挙げられる。
この重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、既に例示したものをすべて好適に用いることができる。
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体である。さらに好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が添加される。好ましい配位子は、含窒素化合物であり、より好ましい配位子は、キレート型含窒素化合物であり、さらに好ましい配位子は、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンである。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキサイド類が添加される。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
重合は無溶剤又は各種の溶剤中で行なうことができる。溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、限定はされないが、重合は0℃〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
本発明の原子移動ラジカル重合には、いわゆるリバース原子移動ラジカル重合も含まれる。リバース原子移動ラジカル重合とは、通常の原子移動ラジカル重合触媒がラジカルを発生させた時の高酸化状態、例えば、Cu(I)を触媒として用いた時のCu(II’)に対し、過酸化物等の一般的なラジカル開始剤を作用させ、その結果として原子移動ラジカル重合と同様の平衡状態を生み出す方法である(Macromolecules 1999,32,2872参照)。
<官能基>
架橋性シリル基の数
ビニル系重合体(I)は、重合体1分子中に平均して少なくとも1個の架橋性シリル基を有するものである。また、組成物の硬化性及び硬化物の物性の観点から、架橋性シリル基の数は、分子中に平均して、好ましくは1.1個以上4.0以下、より好ましくは1.2個以上3.5個以下である。
架橋性シリル基の位置
本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性シリル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性シリル基を分子鎖末端に有するものである。
上記架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有するビニル系重合体、中でも(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に開示されている。しかしながらこれらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、架橋性シリル基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、Mw/Mnで表される分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を得る場合には、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましいが、分子量分布の狭い重合体に特定するものではない。
以下にこれらの官能基について説明する。
架橋性シリル基
本発明の架橋性シリル基としては、一般式(1);
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
(式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で表されるトリオルガノシロキシ基を示す。R又はRがそれぞれ2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3を示す。bは0、1又は2を示す。mは0〜19の整数を示す。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
で表される基が挙げられる。
、Rの炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル等が挙げられる。
、Rの炭素数6〜20のアリール基としては、特に限定されず、例えばフェニル基、ナフチル基、トルイル基等が挙げられる。
、Rの炭素数7〜20のアラルキル基としては、特に限定されず、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
R’の炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、特に限定されず、例えば炭素数1〜20のアルキル基等が好ましく挙げられ、その具体例は上記のものと同様である。
Yの加水分解性基としては、特に限定されず、例えば水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の一般に使用されている基が挙げられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱い易いという点から、アルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基・・・の順に反応性が低くなり、目的や用途に応じて選択できる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。
ケトキシメート基としては、炭素数1〜20のものが好ましく挙げられる。
アルケニルオキシ基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えばビニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等が挙げられる。
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合等により連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。特に、一般式(7)
−Si(R3−a(Y) (7)
(式中、R、Yは前記と同じ、aは1〜3の整数)で表される架橋性シリル基が、入手が容易であるので好ましい。
なお、特に限定はされないが、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
このような架橋性シリル基を有するビニル系重合体は珪素原子1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる加水分解性珪素基を有する重合体が用いられることが多いが、接着剤の用途等や低温で使用する場合等、特に非常に速い硬化速度を必要とする場合、その硬化速度は充分ではなく、また硬化後の柔軟性を出したい場合には、架橋密度を低下させる必要があり、そのため架橋密度が充分でないためにべたつき(表面タック)があることもあった。その際には、aが3のもの(例えばトリメトキシ官能基)であるのが好ましい。
また、aが3のもの(例えばトリメトキシ官能基)は2のもの(例えばジメトキシ官能基)よりも硬化が速いが、貯蔵安定性や力学物性(伸び等)に関しては2のものの方が優れている場合がある。硬化性と物性バランスをとるために、2のもの(例えばジメトキシ官能基)と3のもの(例えばトリメトキシ官能基)を併用してもよい。
例えば、Yが同一の場合、aが多いほどYの反応性が高くなるため、Yとaを種々選択することにより硬化性や硬化物の機械物性等を制御することが可能であり、目的や用途に応じて選択できる。また、aが1のものは鎖延長剤として架橋性シリル基を有する重合体、具体的にはポリシロキサン系、ポリオキシプロピレン系、ポリイソブチレン系からなる少なくとも1種の重合体と混合して使用できる。硬化前に低粘度、硬化後に高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性、優れた塗料密着性を有する組成物とすることが可能である。
架橋性シリル基の導入法
以下に、本発明のビニル系重合体(I)への架橋性シリル基の導入法について説明するが、これに限定されるものではない。
まず、末端官能基変換により架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基を導入する方法について記述する。これらの官能基はお互いに前駆体となりうるので、架橋性シリル基から溯る順序で記述していく。
架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法としては、
(A)アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下に付加させる方法
(B)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一分子中に架橋性シリル基とイソシアネート基を有する化合物のような水酸基と反応し得る基を有する化合物を反応させる方法
(C)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、1分子中に重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物を反応させる方法
(D)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、架橋性シリル基を有する連鎖移動剤を用いる方法
(E)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、1分子中に架橋性シリル基と安定なカルバニオンを有する化合物を反応させる方法;
等が挙げられる。
(A)の方法で用いるアルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は種々の方法で得られる。以下に合成方法を例示するが、これらに限定されるわけではない。
(A−a)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、例えば下記の一般式(8)に挙げられるような一分子中に重合性のアルケニル基と重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
C=C(R14)−R15−R16−C(R17)=CH (8)
(式中、R14は水素又はメチル基を示し、R15は−C(O)O−、又はo−,m−,p−フェニレン基を示し、R16は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。R17は水素、又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す)
なお、一分子中に重合性のアルケニル基と重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(A−b)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のような重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
(A−c)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫等の有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲンを置換する方法。
(A−d)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(9)に挙げられるようなアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R18)(R19)−R20−C(R17)=CH (9)
(式中、R17は上記に同じ、R18、R19はともにカルバニオンCを安定化する電子吸引基であるか、又は一方が前記電子吸引基で他方が水素又は炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基を示す。R20は直接結合、又は炭素数1〜10の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。Mはアルカリ金属イオン、又は4級アンモニウムイオンを示す)
18、R19の電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNの構造を有するものが特に好ましい。
(A−e)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等の、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
(A−f)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば一般式(10)あるいは(11)に示されるようなアルケニル基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
C=C(R17)−R21−O (10)
(式中、R17、Mは上記に同じ。R21は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
C=C(R17)−R22−C(O)O (11)
(式中、R17、Mは上記に同じ。R22は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
等が挙げられる。
上述の反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成法は、前述のような有機ハロゲン化物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
またアルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体から得ることも可能であり、以下に例示する方法が利用できるがこれらに限定されるわけではない。
水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基に、
(A−g)ナトリウムメトキシドのような塩基を作用させ、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法、
(A−h)アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物を反応させる方法、
(A−i)(メタ)アクリル酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物をピリジン等の塩基存在下に反応させる方法、
(A−j)アクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸を酸触媒の存在下に反応させる方法;等が挙げられる。
本発明では(A−a)、(A−b)のようなアルケニル基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合には、リビングラジカル重合法を用いてビニル系重合体を合成することが好ましい。制御がより容易である点から(A−b)の方法がさらに好ましい。
反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することによりアルケニル基を導入する場合は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーをラジカル重合すること(原子移動ラジカル重合法)により得る、末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いるのが好ましい。制御がより容易である点から(A−f)の方法がさらに好ましい。
また、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式(12)で示される化合物が例示される。
H−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (12)
(式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で表されるトリオルガノシロキシ基を示す。R又はRがそれぞれ2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3を示す。bは0、1又は2を示す。mは0〜19の整数を示す。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式(13)
H−Si(R3−a(Y) (13)
(式中、R、Yは前記に同じ、aは1〜3の整数。)
で示される架橋性基を有する化合物が入手容易な点から好ましい。
上記の架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物をアルケニル基に付加させる際には、遷移金属触媒が通常用いられる。遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh,RhCl,RuCl,IrCl,FeCl,AlCl,PdCl・HO,NiCl,TiCl等が挙げられる。
(B)及び(A−g)〜(A−j)の方法で用いる水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の製造方法は以下のような方法が例示されるが、これらの方法に限定されるものではない。
(B−a)ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、例えば下記の一般式(14)に挙げられるような一分子中に重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
C=C(R14)−R15−R16−OH (14)
(式中、R14、R15、R16は上記に同じ)
なお、一分子中に重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(B−b)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールを反応させる方法。
(B−c)例えば特開平5−262808号公報に示される水酸基含有ポリスルフィドのような水酸基含有連鎖移動剤を多量に用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
(B−d)例えば特開平6−239912号公報、特開平8−283310号公報に示されるような過酸化水素あるいは水酸基含有開始剤を用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
(B−e)例えば特開平6−116312号公報に示されるようなアルコール類を過剰に用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
(B−f)例えば特開平4−132706号公報等に示されるような方法で、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
(B−g)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(15)に挙げられるような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R18)(R19)−R20−OH (15)
(式中、R18、R19、R20、Mは上記に同じ)
18、R19の電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNの構造を有するものが特に好ましい。
(B−h)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にアルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
(B−i)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば一般式(16)あるいは(17)に示されるような水酸基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
HO−R21−O (16)
(式中、R21及びMは前記に同じ)
HO−R22−C(O)O (17)
(式中、R22及びMは前記に同じ)
(B−j)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基及び水酸基を有する化合物を反応させる方法。
このような化合物としては特に限定されないが、一般式(18)に示される化合物等が挙げられる。
C=C(R14)−R21−OH (18)
(式中、R14及びR21は上述したものと同様である。)
上記一般式(18)に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
本発明では(B−a)〜(B−e)及び(B−j)のような水酸基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合には、リビングラジカル重合法を用いてビニル系重合体を合成することが好ましい。制御がより容易である点から(B−b)の方法がさらに好ましい。
反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合は、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーをラジカル重合すること(原子移動ラジカル重合法)により得る、末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いるのが好ましい。制御がより容易である点から(B−i)の方法がさらに好ましい。
また、一分子中に架橋性シリル基とイソシアネート基のような水酸基と反応し得る基を有する化合物としては、例えばγ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、必要により一般に知られているウレタン化反応の触媒を使用できる。
(C)の方法で用いる一分子中に重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物としては、例えばトリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等のような、下記一般式(19)で示すものが挙げられる。
C=C(R14)−R15−R23−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (19)
(式中、R、R、R14、R15、Y、a、b、mは上記に同じ。R23は、直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。)
一分子中に重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物を反応させる時期に特に制限はないが、特にリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(D)の連鎖移動剤法で用いられる、架橋性シリル基を有する連鎖移動剤としては例えば特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報に示される、架橋性シリル基を有するメルカプタン、架橋性シリル基を有するヒドロシラン等が挙げられる。
(E)の方法で用いられる、上述の反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成法は、前述のような有機ハロゲン化物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。一分子中に架橋性シリル基と安定化カルバニオンを併せ持つ化合物としては一般式(20)で示すものが挙げられる。
(R18)(R19)−R24−C(H)(R25)−CH−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (20)
(式中、R、R、R18、R19、Y、a、b、m、Mは前記に同じ。R24は直接結合、又は炭素数1〜10の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、R25は水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
18、R19の電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNの構造を有するものが特に好ましい。
<複数のビニル系重合体の使用>
上記したビニル系重合体は一種のみ使用することもでき、2種以上のビニル系重合体を組み合わせて使用することもできる。一種のみ使用する場合は、分子量5,000〜50,000で架橋性シリル基の数が1.2〜3.5個のビニル重合体を使用することが好ましい。2種以上のビニル系重合体を組み合わせる場合は第一の重合体は分子量5,000〜50,000で架橋性シリル基の数が1.2〜3.5個のビニル重合体であって、第2の重合体は架橋性シリル基の数が少ない重合体とすると、高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性、優れた塗料密着性を有する硬化物を得ることができる。また、第2の重合体の分子量をより小さく設定することにより、組成物の粘度を低下させることができる。低分子量成分となる重合体の好ましい分子量は10,000未満、さらには5,000未満であり、好ましい架橋性シリル基の数は1.2未満、さらには1以下である。また、さらに粘度を低下させることができるので分子量分布は1.8未満が好ましい。架橋性官能基を有し分子量分布が1.8未満のビニル系重合体と片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を添加すると低粘度化効果が顕著である。
このような低分子量で架橋性シリル基の数が少ない重合体として次のような製法で得られる片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を使用することが確実に架橋性シリル基を導入できるので好ましい。
片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体は、重合体末端に架橋性シリル基を1分子あたりほぼ1個有するものである。前記のリビングラジカル重合法、特に、原子移動ラジカル重合法を用いることが、高い割合で分子鎖末端に架橋性シリル基を有し、分子量分布が1.8未満で分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体が得られるので好ましい。
片末端に架橋性シリル基を導入する方法については、例えば、下記に示す方法を使用することができる。なお、末端官能基変換により架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基を導入する方法において、これらの官能基はお互いに前駆体となりうるので、架橋性シリル基を導入する方法から溯る順序で記述する。
(1)アルケニル基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下に付加させる方法、
(2)水酸基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、一分子中に架橋性シリル基とイソシアネート基のような水酸基と反応し得る基を併せ持つ化合物を反応させる方法、
(3)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、一分子中に架橋性シリル基と安定なカルバニオンを有する化合物を反応させる方法、
等が挙げられる。
(1)の方法で用いるアルケニル基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体は種々の方法で得られる。以下に製造方法を例示するが、これらに限定されるわけではない。
(1−1)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、例えばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫等の有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲンを置換する方法。
(1−2)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、一般式(9)に挙げられるようなアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R18)(R19)−R20−C(R17)=CH (9)
(式中、R18、R19はともにカルバニオンCを安定化する電子吸引基であるか、又は一方が前記電子吸引基で他方が水素又は炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基を示す。R20は直接結合、又は炭素数1〜10の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。R17は水素、又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。Mはアルカリ金属イオン、又は4級アンモニウムイオンを示す)
18、R19の電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNの構造を有するものが特に好ましい。
(1−3)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等の、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
(1−4)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体に、例えば一般式(10)あるいは(11)に示されるようなアルケニル基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
C=C(R17)−R21−O (10)
(式中、R17、Mは前記に同じ。R21は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエ−テル結合を含んでいてもよい)
C=C(R17)−R22−C(O)O (11)
(式中、R17、Mは前記に同じ。R22は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
等が挙げられる。
上述の反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体の合成法は、前述のような有機ハロゲン化物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
またアルケニル基を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体は、水酸基を分子鎖末端に少なくとも1個有する重合体から得ることも可能であり、以下に例示する方法が利用できるがこれらに限定されるわけではない。
水酸基を分子鎖末端に少なくとも1個有する重合体の水酸基に、
(1−5)ナトリウムメトキシドのような塩基を作用させ、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法、
(1−6)アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物を反応させる方法、
(1−7)(メタ)アクリル酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物をピリジン等の塩基存在下に反応させる方法、
(1−8)アクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸を酸触媒の存在下に反応させる方法、
等が挙げられる。
反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体のハロゲンを変換することによりアルケニル基を導入する場合は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を1分子当たり1個有する有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系単量体をラジカル重合(原子移動ラジカル重合)することにより得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に1分子当たり1個有する重合体を用いることが好ましい。
また、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式(12)で示される化合物が例示される。
H−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (12)
(式中、R、R、Y、a,b,mは前記に同じ。R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式(13)
H−Si(R3−a(Y) (13)
(式中、R、Yは前記に同じ、aは1〜3の整数。)
で示される架橋性シリル基を有する化合物が入手容易な点から好ましい。
上記の架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物をアルケニル基に付加させる際には、遷移金属触媒が通常用いられる。遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh,RhCl,RuCl,IrCl,FeCl,AlCl,PdCl・HO,NiCl,TiCl等が挙げられる。
片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体、好ましくは分子量分布が1.8未満の重合体、の使用量としては、ビニル系重合体100重量部に対し、モジュラス、伸びの点から5〜400重量部であることが好ましい。
2種以上のビニル系重合体を組み合わせて使用する第2の態様として、分子量分布が1.8以上のビニル重合体と分子量分布が1.8未満のビニル重合体を組み合わせて使用することもできる。分子量分布が1.8以上のビニル重合体は架橋性ケイ素基を有していてもいなくてもよいが架橋性ケイ素基を有するほうが耐候性や接着強度、破断時強度がより向上するので好ましい。また、組成物の硬化物の引裂き強度の改善が期待できる。第1の重合体として使用する、分子量分布が1.8以上のビニル系重合体や第2の重合体として使用する、分子量分布が1.8未満のビニル系重合体の主鎖としては、すでに述べたビニル系モノマーに起因する重合体を使用することができ、両重合体ともアクリル酸エステル系重合体が好ましい。
分子量分布が1.8以上のビニル系重合体は、通常のビニル重合の方法、例えば、ラジカル反応による溶液重合法により得ることができる。重合は、通常、前記の単量体及びラジカル開始剤や連鎖移動剤等を加えて50〜150℃で反応させることにより行われる。この場合一般的に分子量分布は1.8以上のものが得られる。
前記ラジカル開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック)アシッド、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、アゾビスイソ酪酸アミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチル等の有機過酸化物系開始剤が挙げられるが、重合に使用する溶媒の影響を受けない、爆発等の危険性が低い等の点から、アゾ系開始剤の使用が好ましい。
連鎖移動剤の例としては、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン類や含ハロゲン化合物等が挙げられる。
重合は溶剤中で行なってもよい。溶剤の例としては、エーテル類、炭化水素類、エステル類等の非反応性の溶剤が好ましい。
架橋性シリル基を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和結合と架橋性シリル基とを併せ持つ化合物を(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と共重合させる方法が挙げられる。
重合性不飽和結合と架橋性シリル基とを併せ持つ化合物としては、一般式(21):
CH=C(R28)COOR30−[Si(R2−b(Y)O]Si(R3−a(Y) (21)
(式中、R28は前記に同じ。R30は炭素数1〜6の2価のアルキレン基を示す。R,R,Y,a,b,mは前記と同じ。)
又は一般式(22):
CH=C(R28)−[Si(R2−b(Y)O]Si(R3−a(Y) (22)
(式中、R28,R,R,Y,a,b,mは前記と同じ。)
で表される単量体、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−メタクリロキシプロピルポリアルコキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−アクリロキシプロピルポリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルアルキルポリアルコキシシラン等が挙げられる。
また、メルカプト基と架橋性シリル基とを併せ持つ化合物を連鎖移動剤に用いると重合体末端に架橋性シリル基を導入することができる。そのような連鎖移動剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン類が挙げられる。
架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体は、GPC測定によるポリスチレン換算での数平均分子量が500〜100,000のものが取り扱いの容易さの点から好ましい。さらに1,500〜30,000のものが硬化物の耐候性、作業性が良好であることからより好ましい。
<<錫系硬化触媒(II)>>
本発明で使用される架橋性シリル基を有するビニル系重合体(I)は、錫系硬化触媒(II)の存在下に、シロキサン結合を形成することにより架橋、硬化する。硬化物の性状としては、重合体の分子量と主鎖骨格に応じて、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作製することができる。
錫系硬化触媒としては、特に限定されないが、4価の錫化合物類等が好適に挙げられ、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等のジアルキル錫ジカルボキシレート化合物類;ビス(ジブチル錫ラウレート)オキサイド、ビス(ジブチル錫ステアレート)オキサイド等のビス(ジアルキル錫カルボキシレート)オキサイド化合物類;ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド等のジアルキル錫ジアルコキシド化合物類;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジエチルアセトアセテート等のジアルキル錫の分子内配位性誘導体類;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド等のジアルキル錫オキサイドと、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、メチルマレエート、アジピン酸ジメチル等のエステル化合物との反応物;ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリエトキシシリケート等のジアルキル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、及び、これらジアルキル錫化合物のオキシ誘導体(スタノキサン化合物)等;モノブチル錫トリスオクトエート、モノブチル錫トリイソプロポキシド等のモノブチル錫化合物やモノオクチル錫化合物等のモノアルキル錫類等が例示できる。
また、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、バーサチック酸錫等の2価の錫化合物類、並びに、これらと後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物及び混合物等も用いることができる。
このうち、ジアルキル錫オキサイド及びエステル化合物を反応させて得られる錫化合物、ジアルキル錫ジカルボキシレート化合物、ビス(ジアルキル錫カルボキシレート)オキサイド化合物、ジアルキル錫ジアルコキシド化合物、ジアルキル錫オキサイド及びシリケート化合物を反応させて得られる錫化合物及びこれらのオキシ誘導体、及び、2価の錫化合物とアミン系化合物との混合物が好ましい。
これらの錫系硬化触媒は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
錫系硬化触媒(II)の配合量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して、又は、後述のポリエーテル系重合体(IV)をさらに含有する場合にはビニル系重合体(I)及びポリエーテル系重合体(IV)の総量100重量部に対して、0.01〜20重量部程度が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。錫系硬化触媒の配合量が0.01重量部未満であると硬化速度が遅くなることがあり、また硬化反応が十分に進行し難くなる場合がある。一方、錫系硬化触媒の配合量が20重量部を超えると硬化時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られ難くなったり、ポットライフが短くなり、作業性が低下する傾向がある。
なお、錫系硬化触媒(II)の種類や添加量は、本発明のビニル系重合体(I)が一般式(1)で示す架橋性シリル基を有する場合、一般式(1)のYの種類とaの数によって選択することが好ましく、選択することによって目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。例えば、一般式(1)のYがアルコキシ基である場合、アルコキシ基の構造の観点からは炭素数の少ない方が反応性が高く、また、アルコキシ基の数(a)の観点からはaが多い方が反応性が高い。そのため、このような場合には、硬化触媒の添加量は、少量で充分硬化させることが可能である。
<<カルボン酸化合物(III)>>
本発明で使用されるカルボキシル基を少なくとも1つ有するカルボン酸化合物(III)としては、特に限定されず、例えば、一般式(23)
Z−(C(O)−O−H) (23)
(式中、Zは炭素数1〜20の有機基であり、酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい。nは1〜3の整数。)
で表されるカルボン酸化合物を好適に用いることができる。
Zの酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基としては、特に限定されないが、脂肪族であっても良く、芳香族であっても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい。また、脂肪族は飽和であっても良く、不飽和であっても良い。
一般式(23)で表されるカルボン酸化合物としては、具体的には以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、エチルメチル酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、エトキシ酢酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、バーサチック酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸等の飽和モノカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、10−ウンデセン酸、エライジン酸、エルカ酸、オレイン酸等のオレフィンモノカルボン酸;プロピル酸等のアセチレンモノカルボン酸;リノール酸、リノエライジン酸等のジオレフィンカルボン酸;リノレン酸、アラキドン酸等の高度不飽和モノカルボン酸;クロロ酢酸、2−クロロアクリル酸、クロロ安息香酸等のモノカルボン酸のハロゲン置換体等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、オキシ二酢酸等の飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、9−アントラセンカルボン酸、アトロラクチン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸等の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。その他、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン等のアミノ酸;エチレンジアミン2酢酸、プロピレンジアミン2酢酸等の含窒素ジカルボン酸;エチレンジアミン4酢酸、プロピレンジアミン4酢酸等の含窒素ポリカルボン酸等が挙げられる。
このように、カルボン酸化合物(III)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有している化合物であれば、どのようなものでもよい。
なお、上記化合物のうち、脂肪族モノカルボン酸が好ましい。より好ましくは、炭素数が10〜20の飽和脂肪酸であり、具体的にはデカン酸、バーサチック酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸等が挙げられる。さらに好ましくは、炭素数が14〜18の飽和脂肪酸であり、具体的にはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等である。
本発明の課題である耐熱性の低下は、錫系硬化触媒(II)の影響により引き起こされる部分が大きく、その影響は、錫系硬化触媒(II)の活性が高い方が大きい傾向にある。カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)の添加による耐熱性の改善は、錫系硬化触媒(II)へのカルボキシル基の反応による錫系硬化触媒の活性低下に由来すると考えられる。したがって、その効果発現には、耐熱評価温度においてカルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)が液状であることが好ましい。一方で、常温で液体の場合には、貯蔵中での錫系硬化触媒(II)との反応により硬化速度を低下させる恐れがある。
よって、本発明におけるカルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)は、限定はされないが、室温(23℃)〜150℃の融点を持つものが好ましく、40℃〜120℃の融点を持つものがより好ましく、60℃〜100℃の融点を持つものがさらに好ましい。
また、ビニル系重合体を含有する硬化性組成物を硬化させた硬化物は、その性状から良好な耐熱、耐油、耐候性を有するが、上述の錫系硬化触媒(II)のうち4価の錫化合物類を用いて硬化させたものは、その利点が失われることがあり、特に充填材として炭酸カルシウムを用いた配合系にその傾向が見られる。しかし、この場合でも、当該カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)を添加することにより、良好な耐熱性及び耐候性を有する硬化物が得られる。
また、本発明で使用されるカルボキシル基を少なくとも1つ有するカルボン酸化合物(III)は、例えば、一般式(24)
Z−(C(O)−O (24)
(式中、Zは炭素数1〜20の有機基であり、酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい。Mは金属イオンを示す。nは1〜3の整数。)
で表されるカルボン酸金属塩構造を有するものも好適に用いることができる。
この時、Zとしては特に限定されないが、脂肪族であっても良く、芳香族であっても良く、酸素原子又は窒素原子を含有していても良い。Mとしては特に限定されないが、アルカリ金属イオンが好ましく、Na、K、Liがより好ましい。
一般式(24)で表されるカルボン酸金属塩の具体例としては、特に限定されないが、前述の一般式(23)で表されるカルボン酸化合物の具体例の金属塩等が挙げられる。
また、一般式(23)、(24)の他に、一般式(25)
Z−(C(O)−S−W) (25)
(式中、Zは炭素数1〜20の有機基であり、酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい。Wは水素原子、金属原子又は炭素数1〜20の有機基を示す。nは1〜3の整数。)
に示す構造を有するものを好適に用いることができる。
一般式(25)の化合物としては、具体的には限定されないが、チオ酢酸−S−t−ブチルエステル、チオ酢酸−S−ノルボニルエステル、チオ酢酸−S−フェニルエステル等が挙げられる。
このようにカルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)は、硬化性組成物の硬化物中においてカルボン酸を生成する化合物であれば、どのようなものでも良い。
一般に、反応性の高い官能基をその後の反応に対して不活性な官能基とすることを保護といい、その官能基を保護基と言う。また、保護した官能基は、必要な反応が終了した後、適当な反応によって保護をはずす。このことを脱保護という。
本発明においても、カルボキシル基を少なくとも1つ有するカルボン酸化合物(III)のカルボキシル基に保護基を導入することが可能である。保護基としては、例えば加熱によって硬化性組成物の硬化物中で分解され、カルボン酸化合物を生成することで上記のカルボン酸化合物と同様の効果が得られるものが好ましい。
このような保護基としては、限定されないが、エステル基、アミド基、シリル基等を好適に用いることができる。
エステル基としては、限定されないが加熱時の分解性から、メチルエステル基、t−ブチルエステル基、イソボルニルエステル基、ノルボニルエステル基、アダマンチルエステル基等が好ましく挙げられる。
アミド基としては、N−メチルアミド基やN−フェニルアミド基等のN−置換アミド基等が挙げられる。
シリル基としては、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基等が挙げられる。
これらカルボン酸化合物(III)は、単独で用いても、併用しても構わない。
上記のカルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)の使用量は、錫系硬化触媒(II)量に対して、2mol〜90mol当量が好ましく、5mol〜30mol当量がより好ましい。また、架橋性シリル基を有するビニル系重合体(I)100重量部に対しては、1重量部〜10重量部であることが好ましく、3重量部〜7重量部がより好ましい。1重量部未満であると効果が得られにくい傾向があり、10重量部を超えると作業性が低下する傾向がある。
<<ポリエーテル系重合体(IV)>>
本発明においては、必要に応じて、ポリエーテル系重合体(IV)を用いることも可能である。
<架橋性官能基を有するポリエーテル系重合体>
主鎖
ポリエーテル系重合体の主鎖は特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。このうち、本質的にポリオキシアルキレンであることが好ましく、本質的にポリプロピレンオキサイドであることがより好ましく、これは、プロピレンオキサイド以外に、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、フェニレンオキサイド等を含んでもよい。また、ポリエーテル系重合体は、主鎖中にウレタン結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
ここで「主鎖が本質的にポリプロピレンオキサイドである」とは、プロピレンオキサイド単位が、主鎖を構成する繰り返し単位のうち50%以上を占めることをいい、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
より低粘度であれば取扱い性が良好になるので、ポリプロピレンオキサイド系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下のものがより好ましい。
架橋性官能基
ポリエーテル系重合体中の架橋性官能基としては特に限定されず、好ましいものとして、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基が挙げられる。特に、架橋性シリル基が好ましい。
ポリエーテル系重合体が有する架橋性官能基の個数は、少なくとも1個が好ましいが、1個未満でも構わない。組成物の硬化性の観点から、1個より多く有することが好ましく、より好ましくは平均して1.1〜4.0個、さらに好ましくは平均して1.5〜2.5個である。また、架橋性官能基は、ポリエーテル系重合体の末端にあることが、硬化物のゴム弾性の観点から好ましい。より好ましくは重合体の両末端に官能基があることである。
分子量
この架橋性官能基を少なくとも1個有するポリエーテル系重合体としては、数平均分子量7500以上のものが好ましいが7500未満でも構わない。特に数平均分子量7500〜25000の有機重合体を使用することがより好ましい。ポリエーテル系重合体の数平均分子量が7500より小さい場合は硬化物が硬く、かつ伸びが低いものとなる傾向があり、数平均分子量が25000を超えると硬化物の柔軟性及び伸びは問題ないが、該重合体自体の接着性が低くなり、実用性が低くなる傾向がある。但し、分子量が低くても、架橋性官能基の個数が少ないと柔軟性及び伸びが向上することがあるし、分子量が高くても、架橋性官能基の個数が多いと接着性が向上することがある。数平均分子量は特に8000〜20000が粘度の点から好ましいが、8000以下でも構わないし、20000以上でも構わない。
ポリエーテル系重合体(IV)の使用量
ポリエーテル系重合体(IV)を添加する場合の使用量は、任意の量で構わないが、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体(I)に対し、重量比((IV)/(I))で100/1〜1/100の範囲が好ましく、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることがさらに好ましい。各用途、目的に応じて添加量を設定できる。ただし、添加量が多すぎると本発明の効果の1つである優れた耐熱性や耐候性が低下することがある。
上記のポリエーテル系重合体中に、一般的なラジカル重合法で製造された(メタ)アクリル系重合体、又は高温連続塊状重合体(例えば東亜合成(株)製SGOオリゴマー)又はそれらのシリル化物をあらかじめ混合させたものを、ビニル系重合体との混合に用いてもよい。
<架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体>
以下に架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体について説明する。
主鎖
架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体の主鎖構造としては、上記したものと同じである。主鎖は直鎖状であっても分枝状であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。その中でも特に好ましいのはポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオールやそれらの混合物に起因する主鎖である。また、他の単量体単位等が含まれていてもよいが、上記式に表わされる単量体単位が、重合体中に50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。
なお、主鎖中にウレタン結合、ないしはウレア結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
ポリエーテル系重合体の分子構造は、使用用途や目的とする特性により相違し、特開昭63−112642号公報記載のもの等が使用できる。このようなポリオキシアルキレンは通常の重合方法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)や、セシウム金属触媒、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号及び特開昭61−218632号等の各公報に例示されるポルフィリン/アルミ錯体触媒、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等の各公報に例示される複合金属シアン化錯体触媒、特開平10−273512号公報に例示されるポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いた方法等により得ることができる。
ポルフィリン/アルミ錯体触媒、複合金属シアン化錯体触媒やポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いた方法では、分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下、さらには1.5以下等の小さい値のオキシアルキレン重合体を得ることができ、分子量分布が小さい場合、硬化物の低モジュラスと高伸びを維持して組成物粘度を小さくできるという利点がある。
架橋性シリル基
架橋性シリル基としては、ビニル系重合体と同様に、一般式(1)で表される基を用いることができ、一般式(7)で表される基が好ましい。一般式(1)や一般式(7)で表される基についての説明は、架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体についても同じように適用される。ポリエーテル系重合体中の架橋性シリル基は、架橋性シリル基を有するビニル系重合体中の架橋性シリル基と同じ構造のものでもよいし、異なる構造のものでもよい。
架橋性シリル基とポリエーテル部分の間の結合部は、耐加水分解性を有することから、シリル基のケイ素原子とポリエーテル部分のエーテル酸素原子の間に少なくとも3個の炭素原子が存在するように、トリメチレン、テトラメチレンのようなアルキレン基であることが好ましい。
架橋性シリル基の数と位置
架橋性シリル基の数は、組成物の硬化性等の観点から、重合体1分子中に平均して少なくとも1個有することが好ましく、少なくとも1.2個以上有することが好ましく、1.2個以上4.0以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1.5以上2.5個以下である。また、ポリエーテル系重合体の架橋性シリル基は、硬化物のゴム弾性の観点から分子鎖の末端にあることが好ましく、より好ましくは重合体の両末端に官能基があることである。
また、平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体を使用することもできる。この場合、高い破断時伸び性、低ブリード性、表面低汚染性、優れた塗料密着性を有する硬化物を得ることができる。また、この重合体の分子量をより小さく設定することにより、組成物の粘度を低下させることができる。架橋性シリル基の個数の下限は少なくとも0.1個以上であることが好ましく、0.3個以上であることがより好ましく、0.5個以上であることがさらに好ましい。架橋性シリル基は分子鎖の末端にあることが好ましい。また、このポリエーテル系重合体の架橋性シリル基は、主鎖中の一つの末端にのみ有し、他の末端には有しないものが好ましいが、平均して1.2個未満であれば特に限定されるものではない。平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル重合体を使用して低粘度化を図る場合、好ましい分子量は10,000未満、さらには5,000未満である。
架橋性シリル基の導入法
架橋性シリル基の導入は公知の方法で行なえばよい。すなわち、例えば、以下の方法が挙げられる。例えば複合金属シアン化錯体触媒を用いて得られるオキシアルキレン重合体の場合は特開平3−72527号公報に、ポリフォスファゼン塩と活性水素を触媒として得られるオキシアルキレン重合体の場合は特開平11−60723号公報に記載されている。
(1)末端に水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体と、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させるか、もしくは不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により、不飽和基含有オキシアルキレン重合体を得る。次いで、得られた反応生成物に架橋性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)(1)法と同様にして得られた不飽和基含有オキシアルキレン重合体にメルカプト基及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
(3)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基(以下、Y官能基という)を有するオキシアルキレン重合体に、このY官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Y′官能基という)及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
このY′官能基を有するケイ素化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−メチルプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、さらには各種アミノ基含有シランとマレイン酸エステルやアクリレート化合物との部分マイケル付加反応物等のようなアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のようなメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようなエポキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のようなビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のような塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のようなイソシアネート含有シラン類;メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、トリエトキシシラン等のようなハイドロシラン類等が具体的に例示されうるが、これらに限定されるものではない。
また、架橋性シリル基の数が平均して1.2個未満の重合体を製造する場合、架橋性シリル基を導入する際に、分子内にただ一個の官能基を有するポリエーテル系重合体を用い、その官能基と当量ないしはより少ない量の、架橋性シリル基を有する化合物を反応させることにより、架橋性シリル基を平均して1.2個未満有するポリエーテル系重合体を得る方法と、平均して分子内に一個以上の官能基を有するポリエーテル系重合体を用い、その官能基よりもさらに少ない架橋性シリル基を有する化合物を反応させることにより、結果的に架橋性シリル基を平均して1.2個未満有するポリエーテル系重合体を得る方法がある。
架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体の使用量
架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体(IV)を使用する場合の使用量は、任意の量で構わないが、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体(I)に対し、重量比で100/1〜1/100の範囲が好ましく、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることがさらに好ましい。各用途、目的に応じて添加量を設定できる。ただし、添加量が多すぎると本発明の効果の1つである優れた耐熱性や耐候性が低下することがある。
平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体を使用する場合その使用量としては、ビニル系重合体100重量部に対して、1重量部以上200重量部以下が好ましく、3重量部以上100重量部以下がより好ましく、5重量部以上80重量部以下がさらに好ましい。1重量部未満では添加効果が得られにくく、200重量部を超えると硬化物の物性が不安定になる傾向がある。
混合使用する態様として、i)一般式(1)で表される架橋性シリル基を有するビニル系重合体に、架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体を添加すること、ii)架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を添加すること、iii)架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体を添加する場合、平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体とさらに片末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を添加すること、iv)平均して1.2個未満の架橋性シリル基を有するポリエーテル系重合体と架橋性官能基を有し分子量分布が1.8以上のビニル系重合体を添加すること等が挙げられるがこれらに限定されない。
<<各種の架橋性官能基を有する重合体任意成分>>
本発明の硬化性組成物においては、任意成分として各種の架橋性官能基を有する重合体を添加しても構わない。架橋性官能基を有する重合体としては、(i)架橋性官能基を有するポリイソブチレン系重合体、特に架橋性シリル基を有するポリイソブチレン系重合体、(ii)ポリシロキサンを例示することができる。これらの重合体は1種又は2種以上を用いて添加することが出来る。
これらの重合体任意成分を、本発明の架橋性シリル基を有するビニル系重合体に添加する際に、珪素原子1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる加水分解性珪素基を有するビニル系重合体と、架橋性官能基1つあたり3つの加水分解性基が結合してなる重合体任意成分を組合せても良いし、逆に、珪素原子1つあたり3つの加水分解性基が結合してなる加水分解性珪素基を有するビニル系重合体と、架橋性官能基1つあたり2つの加水分解性基が結合してなる重合体任意成分を組合せても良い。また、何れの重合体も3つの加水分解性基が結合してなる架橋性官能基を有する組合せでも構わないし、2つの加水分解性基が結合してなる架橋性官能基を有する組合せでも構わない。さらには、1つから3つのものが混在していても構わない。
<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物は、上述のように、架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有するビニル系重合体(I)、錫系硬化触媒(II)、及び、カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)を含有してなる組成物である。また、必要に応じて、ポリエーテル系重合体(IV)を含有させることができる。
さらに、本発明の硬化性組成物においては、目的とする物性に応じて、各種の配合剤を添加しても構わない。
<硬化触媒・硬化剤>
本発明における錫系硬化触媒(II)以外に、架橋性シリル基を有する重合体に用いる従来公知の各種縮合触媒を、本発明の効果を妨げない程度に用いても構わない。
架橋性シリル基を有するビニル系重合体(I)は、従来公知の各種縮合触媒の存在下、あるいは非存在下にシロキサン結合を形成することにより架橋、硬化する。硬化物の性状としては、重合体の分子量と主鎖骨格に応じて、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作製することができる。
このような縮合触媒としては、既に述べた錫系硬化触媒(II)以外に、次のようなものも使用できる。例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉄、カルボン酸チタニウム、カルボン酸鉛、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸マンガン、カルボン酸セリウム、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸亜鉛、カルボン酸アルミニウム等のカルボン酸(2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、オレイン酸、ナフテン酸等)金属塩、あるいはこれらと後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物及び混合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトナート、ジブトキシジルコニウムジアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物、あるいはこれらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;等のシラノール縮合触媒、さらにはフェルザチック酸等の脂肪酸や有機酸性リン酸エステル化合物等の他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が例示できる。
酸性触媒の有機酸性リン酸エステル化合物としては、(CHO)−P(=O)(−OH)、(CHO)−P(=O)(−OH)、(CO)−P(=O)(−OH)、(CO)−P(=O)(−OH)、(CO)−P(=O)(−OH)、(CO)−P(=O)(−OH)、(CO)−P(=O)(−OH)、(CO)−P(=O)(−OH)、(C17O)−P(=O)(−OH)、(C17O)−P(=O)(−OH)、(C1021O)−P(=O)(−OH)、(C1021O)−P(=O)(−OH)、(C1327O)−P(=O)(−OH)、(C1327O)−P(=O)(−OH)、(C1633O)−P(=O)(−OH)、(C1633O)−P(=O)(−OH)、(HO−C12O)−P(=O)(−OH)、(HO−C12O)−P(=O)(−OH)、(HO−C16O)−P(=O)(−OH)、(HO−C16O)−P(=O)(−OH)、[(CHOH)(CHOH)O]−P(=O)(−OH)、[(CHOH)(CHOH)O]−P(=O)(−OH)、[(CHOH)(CHOH)CO]−P(=O)(−OH)、[(CHOH)(CHOH)CO]−P(=O)(−OH)等が挙げられるが、例示物質に限定されるものではない。
これら有機酸類とアミンの併用系は、触媒活性が高くなるため、使用量を減少できる観点でより好ましい。有機酸とアミン併用系の中では、酸性リン酸エステルとアミン、有機カルボン酸とアミン、特に有機酸性リン酸エステルとアミン、脂肪族カルボン酸とアミンの併用系は、触媒活性がより高く、速硬化性の観点で好ましい。
これらの触媒は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
また、本発明の硬化性組成物においては、縮合触媒の活性をより高めるために、アミン系化合物と同様に、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤を助触媒として使用することも可能である。このアミノ基含有シランカップリング剤は、加水分解性基が結合したケイ素原子を含む基(以下、加水分解性シリル基という)及びアミノ基を有する化合物であり、この加水分解性基として既に例示した基を挙げることができるが、メトキシ基、エトキシ基等が加水分解速度の点から好ましい。加水分解性基の個数は、2個以上、特に3個以上が好ましい。
これらのアミン化合物の配合量は、硬化触媒に対して重量比で0.05〜10倍程度が好ましく、さらに0.1〜3倍がより好ましい。アミン化合物の配合量が少な過ぎたり多過ぎたりすると、硬化速度が遅くなったり、また硬化反応が充分に進行し難くなったり、ポットライフが短くなり過ぎたりする場合があり、作業性等が低下する傾向がある。
これらのアミン化合物は、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
これらアミン化合物は、有機酸類と併用することにより、触媒活性が高くなるため、使用量を減少できる観点でより好ましい。有機酸とアミン併用系の中では、酸性リン酸エステルとアミンやカルボン酸とアミンの組合せ等があるが、中でも、カルボン酸とアミンの併用系が、触媒活性がより高く、速硬化性の観点で好ましく、さらには、有機カルボン酸との併用系、特には脂肪族カルボン酸とアミンとの併用系が好ましい。
さらに、アミノ基やシラノール基をもたないケイ素化合物を助触媒として添加しても構わない。これらのケイ素化合物としては、限定はされないが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等が好ましい。特に、ジフェニルジメトキシシランやジフェニルジエトキシシランは、低コストであり、入手が容易であるために最も好ましい。
このケイ素化合物の配合量は、ビニル系重合体(I)100重量部(以下、「重量部」を単に「部」ということもある)に対して0.01〜20部程度が好ましく、0.1〜10部がさらに好ましい。ケイ素化合物の配合量が0.01部未満であると硬化反応を加速する効果が小さくなる場合がある。一方、ケイ素化合物の配合量が20部を超えると、硬化物の硬度や引張強度が低下することがある。
なお、硬化触媒・硬化剤の種類や添加量は、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。また、架橋性シリル基を有する重合体のシリル基の反応性によっても硬化触媒・硬化剤の種類や添加量を変えることが可能であり、反応性が高い場合は0.01〜1部の少量の範囲で充分硬化させることが可能である。
硬化触媒・硬化剤の種類や添加量は、例えば、本発明のビニル系重合体(I)の架橋性シリル基、一般式(1)中のYの種類とaの数によって選択することが可能であり、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。Yがアルコキシ基である場合、炭素数の少ない方が反応性が高く、またaが多い方が反応性が高いため少量で充分硬化させることが可能である。
<脱水剤>
硬化性組成物は、作製する際の水分等によって、その貯蔵している間に増粘、ゲル化が進み、使用する際の作業性に難が生じたり、また、その増粘、ゲル化が進んだ硬化性組成物を使用することにより、硬化後の硬化物の物性が低下して、本来の目的であるシール性等を損なったりする問題が生じることがある。つまり硬化性組成物の貯蔵安定性が問題となることがある。
この硬化性組成物の貯蔵安定性を改良するには、硬化性組成物に、共沸脱水により含水分量を減らす方法がある。例えば、水に対して極小共沸点を有する揮発性有機化合物を0.1〜10重量部程度添加し、均一に混合した後、50〜90℃程度に加熱し真空ポンプで吸引しながら水−有機化合物の共沸組成物を系外に取出す方法が挙げられる。水に対して極小共沸点を有する揮発性有機化合物としては塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化物;エタノール、アリルアルコール、1−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;メチルエチルケトン、3−メチル−2−ブタノン等のケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類等が例示できる。しかしながら、この方法は脱揮操作が入るため、揮発性の他の配合剤に対する工夫が必要となったり、共沸させる揮発性有機化合物の処理、回収等が必要になったりする。そのため、以下の脱水剤を添加する方が好ましいことがある。
上述の様に、本発明の組成物には、貯蔵安定性を改良する目的で組成物中の水分を除去するための脱水剤を添加することができる。脱水剤としては、例えば、5酸化リンや炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム(無水ボウ硝)、モレキュラーシーブス等の無機固体等が挙げられる。これらの固体脱水剤でも構わないが、添加後の液性が酸性や塩基性に傾いて逆に縮合し易く貯蔵安定性が悪くなったり、固体を後で取り除く等の作業性が悪くなったりすることもあるため、後述の、液状の加水分解性のエステル化合物が好ましい。加水分解性のエステル化合物としては、オルトぎ酸トリメチル、オルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリプロピル、オルトぎ酸トリブチル等のオルトぎ酸トリアルキルや、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチル等のオルト酢酸酸トリアルキル等、及びそれらの化合物から成る群から選ばれるものが挙げられる。
それ以外の加水分解性のエステル化合物としては、さらに、式R4−nSiY(式中、Yは加水分解可能な基、Rは有機基で官能基を含んでいても含まなくともよい。nは1〜4の整数であり、好ましくは3又は4である)で示される加水分解性有機シリコン化合物が挙げられる。その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、オルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシランないしはメチルシリケート)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシランないしはエチルシリケート)、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチル等のシラン化合物又はこれらの部分加水分解縮合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤、又はこれらの部分加水分解縮合物等が挙げられる。これらの中から1種又は2種以上併用して配合することができる。
上記の脱水剤は、貯蔵中にビニル系重合体が加水分解し、シラノール縮合反応により三次元的網状組織を形成することを防ぐのみならず、ケチミンが水によって分解し、エポキシ樹脂と反応し硬化することを防ぐため、貯蔵安定性改良剤としてはより好ましい。
脱水剤を用いる場合、その使用量としては、ビニル系重合体(I)100重量部に対し、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.3〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
なお、これらの脱水剤を添加する際には硬化性組成物を無水の状態にしてから行なうのが好ましいが、水分を含んだままの状態で添加しても構わない。
<接着性付与剤>
本発明の組成物には、シランカップリング剤や、シランカップリング剤以外の接着性付与剤を添加することができる。接着性付与剤を添加すると、外力により目地幅等が変動することによって、シーリング材がサイディングボード等の被着体から剥離する危険性をより低減することができる。また、場合によっては接着性向上の為に用いるプライマーの使用の必要性がなくなり、施工作業の簡略化が期待される。
シランカップリング剤の具体例としてはアミノ基や、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲン等の官能基をもったシランカップリング剤が例示でき、その具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類;ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン等のポリスルファン類等を挙げることができる。また、上記のアミノ基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応物、アミノ基含有シラン類とアクロイルオキシ基含有シラン類との反応物、アミノ基含有シラン類とイソシアネート基含有シラン類との反応物も使用できる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、ブロックイソシアネートシラン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。また、上記のアミノ基含有シラン類と例えばメチルイソブチルケトン等のケトン化合物との反応によって得られるケチミン化合物等もシランカップリング剤として用いることができる。
シランカップリング剤を用いる場合、その使用量は、通常、ビニル系重合体(I)100部に対し、0.1〜20部の範囲が好ましく、0.5〜10部の範囲がより好ましい。本発明の硬化性組成物に添加されるシランカップリング剤の効果は、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタル等の無機基材や、塩ビ、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の有機基材に用いた場合、ノンプライマー条件又はプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。また、使用量がビニル系重合体(I)100部に対し1部程度であれば、硬化物の透明性にほとんど影響しない。
シランカップリング剤以外の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン/ブタジエン共重合体−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレン共重合体−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン共重合体−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレン等の直鎖状又は分岐状のブロック共重合体、アルキルスルフォン酸エステル、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。エポキシ樹脂は上記のアミノ基含有シラン類と反応させて使用することができる。
上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。これら接着性付与剤は添加することにより被着体に対する接着性を改善することができる。特に限定はされないが、接着性、特にオイルパン等の金属被着面に対する接着性を向上させるために、上記接着性付与剤の中でもシランカップリング剤を0.1〜20重量部、併用することが好ましい。
接着性付与剤の種類や添加量は、本発明のビニル系重合体(I)の架橋性シリル基が一般式(1)である場合、一般式(1)のYの種類とaの数によって選択することが好ましく、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。特に硬化性や伸びに影響するためその選択には注意が必要である。
<可塑剤>
本発明の硬化性組成物には、各種可塑剤を必要に応じて用いても良い。可塑剤を後述する充填材と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできたり、多量の充填材を混合できたりするためより有利となるが、必ずしも添加しなければならないものではない。
可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、これらポリエーテルポリオールの水酸基の片末端又は両末端もしくは全末端をアルキルエステル基又はアルキルエーテル基等に変換したアルキル誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル、E−PS等のエポキシ基含有可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。
なかでも数平均分子量500〜15,000の重合体である高分子可塑剤は、添加することにより、該硬化性組成物の粘度やスランプ性及び該組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸び等の機械特性が調整できるとともに、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持し、該硬化物にアルキッド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
上記で高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15,000と記載したが、好ましくは800〜10,000であり、より好ましくは1,000〜8,000である。分子量が低すぎると熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキッド塗装性が改善できない。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。
これらの高分子可塑剤の中ではポリエーテル系可塑剤と(メタ)アクリル系重合体可塑剤が高伸び特性あるいは高耐候性の点から好ましい。アクリル系重合体の合成法は、従来からの溶液重合で得られるものや、無溶剤型アクリルポリマー等を挙げることができる。後者のアクリル系可塑剤は溶剤や連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法(USP4414370、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、USP5010166)にて作製されるため本発明の目的にはより好ましい。その例としては特に限定されないが例えば東亞合成品のARUFON UPシリーズ(UP−1000、UP−1110、UP−2000、UP−2130)(SGOと呼ばれる)等が挙げられる(防水ジャーナル2002年6月号参照)。勿論、他の合成法としてリビングラジカル重合法をも挙げることができる。この方法によれば、その重合体の分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことから好ましく、さらには原子移動ラジカル重合法がより好ましいが、これに限定されるものではない。
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、粘度の点から狭いことが好ましく、1.8未満が好ましい。1.7以下がより好ましく、1.6以下がなお好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
なお、粘度の点から言えば、主鎖に分岐構造を有する方が同一分子量では粘度が低くなるので好ましい。上述の高温連続重合法はこの例として挙げられる。
上記高分子可塑剤を含む可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、必ずしも必要とするものではない。また必要によっては高分子可塑剤を用い、物性に悪影響を与えない範囲で低分子可塑剤をさらに併用しても良い。また、例えば、本発明のビニル系重合体(I)と架橋性官能基を有する重合体任意成分の一つであるポリエーテル系重合体とを混合した組成物の場合には、混合物の相溶性の点から、フタル酸エステル類、アクリル系重合体が特に好ましい。
なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
可塑剤を用いる場合、その使用量は、限定されないが、ビニル系重合体(I)100重量部に対して5〜150重量部、好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しにくい傾向があり、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
<充填材>
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を妨げない程度に、各種充填材を必要に応じて用いても良い。
充填材としては、特に限定されないが、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、非晶質球形シリカ等)、カーボンブラックのような補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛及びシラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末等、樹脂粉末等の充填材;石綿、ガラス繊維及びガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填材等が挙げられる。
これら充填材のうちでは沈降性シリカ、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が好ましい。
特に、これら充填材で透明性又は強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華等から選ばれる充填材を添加できる。これらは透明建築用シーラント、透明DIY接着剤等に好適である。なかでも、比表面積(BET吸着法による)が10m/g以上、通常50〜400m/g、好ましくは100〜300m/g程度の超微粉末状のシリカが好ましい。またその表面が、オルガノシランやオルガノシラザン、ジオルガノシクロポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で予め疎水処理されたシリカがさらに好ましい。
補強性の高いシリカ系充填材のより具体的な例としては、特に限定されないが、ヒュームドシリカの1つである日本アエロジル社のアエロジルや、沈降法シリカの1つである日本シリカ社工業のNipsil等が挙げられる。平均粒径は1nm以上30μ以下のシリカが使用できる。特にヒュームドシリカについては、一次粒子の平均粒径1nm以上50nm以下のヒュームドシリカを用いると、補強効果が特に高いのでより好ましい。なお、本発明における平均粒径とは、篩い分け法による。具体的には、粉体を各種の目開きの篩(マイクロシーブ等)で分級し、測定に供した粉体の全重量の50重量%が通過した篩の目開きに相当する値(重量平均粒径)で定義されるものである。充填剤で補強された組成物は即固定性に優れ、自動車ガラスグレージング接着に好適である。
透明性はPMMA粉末等樹脂粉末等を充填材に用いることによっても得ることができる。
また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーン等から選ばれる充填材を添加できる。なお、一般的に、炭酸カルシウムは、比表面積が小さいと、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがある。比表面積の値が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果はより大きくなる。炭酸カルシウムの形状は立方形非立方形、不定形等各種の形状が使用できる。
さらに、炭酸カルシウムは、表面処理剤を用いて表面処理を施してある方がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムを用いた場合、表面処理していない炭酸カルシウムを用いた場合に比較して、本発明の組成物の作業性を改善し、該硬化性組成物の接着性と耐候接着性の改善効果がより向上すると考えられる。前記の表面処理剤としては脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル等の有機物、各種界面活性剤、及び、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等の各種カップリング剤が用いられている。具体例としては、以下に限定されるものではないが、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の脂肪酸と、それら脂肪酸のナトリウム、カリウム等の塩、そして、それら脂肪酸のアルキルエステルが挙げられる。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルや長鎖アルコール硫酸エステル等と、それらのナトリウム塩、カリウム塩等の硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、またアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸等と、それらのナトリウム塩、カリウム塩等のスルホン酸型陰イオン界面活性剤等が挙げられる。
この表面処理剤の処理量は、炭酸カルシウムに対して、0.1〜20重量%の範囲で処理するのが好ましく、1〜5重量%の範囲で処理するのがより好ましい。処理量が0.1重量%未満の場合には、作業性、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがあり、20重量%を越えると、該硬化性組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
特に限定はされないが、炭酸カルシウムを用いる場合、配合物のチクソ性や硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性等の改善効果を特に期待する場合には膠質炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。
一方、重質炭酸カルシウムは配合物の低粘度化や増量、コストダウン等を目的として添加することがあるが、この重質炭酸カルシウムを用いる場合は必要に応じて下記のようなものを使用することができる。
重質炭酸カルシウムとは、天然のチョーク(白亜)、大理石、石灰石等を機械的に粉砕・加工したものである。粉砕方法については乾式法と湿式法があるが、湿式粉砕品は本発明の硬化性組成物の貯蔵安定性を悪化させることが多いために好ましくないことが多い。重質炭酸カルシウムは、分級により、様々な平均粒子径を有する製品となる。特に限定されないが、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果を期待する場合には、比表面積の値が1.5m/g以上50m/g以下のものが好ましく、2m/g以上50m/g以下がさらに好ましく、2.4m/g以上50m/g以下がより好ましく、3m/g以上50m/g以下が特に好ましい。比表面積が1.5m/g未満の場合には、その改善効果が充分でないことがある。もちろん、単に粘度を低下させる場合や増量のみを目的とする場合等はこの限りではない。
なお、比表面積の値とは、測定方法としてJIS K 5101に準じて行なった空気透過法(粉体充填層に対する空気の透過性から比表面積を求める方法)による測定値をいう。測定機器としては、島津製作所製の比表面積測定器SS−100型を用いるのが好ましい。
これらの充填材は目的や必要に応じて単独で併用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に限定はされないが、例えば、必要に応じて比表面積の値が1.5m/g以上の重質炭酸カルシウムと膠質炭酸カルシウムを組み合わせると、配合物の粘度の上昇を程々に抑え、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が大いに期待できる。
充填材を用いる場合の添加量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して、充填材を5〜1,000重量部の範囲で使用するのが好ましく、20〜500重量部の範囲で使用するのがより好ましく、40〜300重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがあり、1,000重量部を越えると該硬化性組成物の作業性が低下することがある。充填材は単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
なお、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等は多量に添加すると本発明の良好な耐熱性や耐候性、耐油性を妨げる場合があるので注意が必要である。
<微小中空粒子>
また、さらに、物性の大きな低下を起こすことなく軽量化、低コスト化を図ることを目的として、微小中空粒子を上記補強性充填材に併用しても良い。
このような微小中空粒子(以下バルーンという)は、特に限定はされないが、「機能性フィラーの最新技術」(CMC)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm以下である微小中空体を用いることが好ましく、さらには0.5g/cm以下である微小中空体を用いることが好ましい。
前記無機系バルーンとして、珪酸系バルーンと非珪酸系バルーンとが例示でき、珪酸系バルーンには、シラスバルーン、パーライト、ガラス(シリカ)バルーン、フライアッシュバルーン等が、非珪酸系バルーンには、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、カーボンバルーン等が例示できる。
これらの無機系バルーンの具体例として、シラスバルーンとしてイヂチ化成製のウインライト、三機工業製のサンキライト、ガラス(シリカ)バルーンとして富士シリシア化学のフジバルーン、日本板硝子製のカルーン、住友スリーエム製のセルスターZ−28、EMERSON&CUMING製のMICRO BALLOON、PITTSBURGE CORNING製のCELAMIC GLASSMODULES、3M製のGLASS BUBBLES、旭硝子製のQ−CEL、太平洋セメント製のE−SPHERES、フライアッシュバルーンとして、PFAMARKETING製のCEROSPHERES、FILLITE U.S.A製のFILLITE、アルミナバルーンとして昭和電工製のBW、ジルコニアバルーンとしてZIRCOA製のHOLLOW ZIRCONIUM SPHEES、カーボンバルーンとして呉羽化学製クレカスフェア、GENERAL TECHNOLOGIES製カーボスフェアが市販されている。
前記有機系バルーンとして、熱硬化性樹脂のバルーンと熱可塑性樹脂のバルーンが例示でき、熱硬化性のバルーンにはフェノールバルーン、エポキシバルーン、尿素バルーンが、熱可塑性バルーンにはサランバルーン、ポリスチレンバルーン、ポリメタクリレートバルーン、ポリビニルアルコールバルーン、スチレン−アクリル系バルーンが例示できる。また、架橋した熱可塑性樹脂のバルーンも使用できる。ここでいうバルーンは、発泡後のバルーンでも良く、発泡剤を含むものを配合後に発泡させてバルーンとしても良い。
これらの有機系バルーンの具体例として、フェノールバルーンとしてユニオンカーバイド製のUCAR及びPHENOLIC MICROBALLOONS、エポキシバルーンとしてEMERSON&CUMING製のECCOSPHERES、尿素バルーンとしてEMERSON&CUMING製のECCOSPHERES VF−O、サランバルーンとしてDOW CHEMICAL製のSARAN MICROSPHERES、日本フィラメント製のエクスパンセル、松本油脂製薬製のマツモトマイクロスフェア、ポリスチレンバルーンとしてARCO POLYMERS製のDYLITE EXPANDABLE POLYSTYRENE、BASF WYANDOTE製のEXPANDABLE POLYSTYRENE BEADS、架橋型スチレン−アクリル酸バルーンには日本合成ゴム製のSX863(P)が、市販されている。
上記バルーンは単独で使用しても良く、2種類以上混合して用いても良い。さらに、これらバルーンの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコール等で分散性及び配合物の作業性を改良するために処理したものも使用することができる。これらのバルーンは、配合物の硬化前では切れ性等の作業性改善、硬化後では柔軟性及び伸び・強度を損なうことなく、軽量化させることによるコストダウン、さらには表面のつや消し、スパッタ等、意匠性付与等のために使用される。
バルーンを用いる場合、その含有量は、特に限定されないがビニル系重合体(I)100重量部に対して、好ましくは0.1〜50部、さらに好ましくは0.1〜30部の範囲で使用できる。この量が0.1部未満では軽量化の効果が小さく、50部以上ではこの配合物を硬化させた場合の機械特性のうち、引張強度の低下が認められることがある。またバルーンの比重が0.1以上の場合は、3〜50部が好ましく、5〜30部がより好ましい。
<物性調整剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。
物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本発明の組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、硬度を下げ、伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
<シラノール含有化合物>
本発明の硬化性組成物には、硬化物の物性を変える等の必要に応じてシラノール含有化合物を添加しても良い。シラノール含有化合物とは、分子内に1個のシラノール基を有する化合物、及び/又は、水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物のことをいう。これらは一方のみを用いてもよいし、両化合物を同時に用いてもよい。
シラノール含有化合物の一つである分子内に1個のシラノール基を有する化合物は、特に限定されず、下記に示した化合物、
(CHSiOH、(CHCHSiOH、(CHCHCHSiOH、(n−Bu)SiOH、(sec−Bu)SiOH、(t−Bu)SiOH、(t−Bu)Si(CHOH、(C11SiOH、(C13SiOH、(CSiOH、(CSi(CH)OH、(C)Si(CHOH、(CSi(C)OH、CSi(COH、CCHSi(COH、C10Si(CHOH
(ただし、上記式中Cはフェニル基を、C10はナフチル基を示す。)
等のような(R”)SiOH(ただし式中R”は同一又は異種の置換もしくは非置換のアルキル基又はアリール基)で表わすことができる化合物、
Figure 0005048386
等のようなシラノール基を含有する環状ポリシロキサン化合物、
Figure 0005048386
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を、nは1〜20の整数を示す。)
等のようなシラノール基を含有する鎖状ポリシロキサン化合物、
Figure 0005048386
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を、nは1〜20の整数を示す。)
等のような主鎖が珪素、炭素からなるポリマー末端にシラノール基が結合した化合物、
Figure 0005048386
(式中、nは1〜20の整数を示す。)
等のようなポリシラン主鎖末端にシラノール基が結合した化合物、
Figure 0005048386
(式中、nは1〜20の整数、mは1〜20の整数を示す。)
等のような主鎖が珪素、炭素、酸素からなるポリマー末端にシラノール基が結合した化合物等が例示できる。中でも、入手が容易であり、効果の点から分子量の小さい(CHSiOH等が好ましい。
上記分子内に1個のシラノール基を有する化合物は、架橋性シリル基を有する重合体の架橋性シリル基あるいは架橋により生成したシロキサン結合と反応することにより、架橋点の数を減少させ、硬化物に柔軟性を与えるとともに表面低タックや耐埃付着性に優れた組成物を与える。
また、水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、特に限定されないが、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、ビストリメチルシリル尿素、N−(t−ブチルジメチルシリル)N−メチルトリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(N,N−ジエチルアミノ)トリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物、(CHSiNHSi(CH、(CHSiNSi(CH、アリロキシトリメチルシラン、
Figure 0005048386
等が好適に使用できるが、加水分解生成物の含有シラノール基の量からは(CHSiNHSi(CHが特に好ましい。
さらには、水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、特に限定されないが、上記化合物以外に下記一般式(26)で表される化合物が好ましい。
((R58SiO)59 (26)
(式中、R58は同一又は異種の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示す。nは正数を、R59は活性水素含有化合物から一部あるいは全ての活性水素を除いた基を示す。)
58は、メチル基、エチル基、ビニル基、t−ブチル基、フェニル基が好ましく、さらにメチル基が好ましい。
(R58Si基は、3個のR58が全てメチル基であるトリメチルシリル基が特に好ましい。また、nは1〜5が好ましい。
上記R59の由来となる活性水素含有化合物としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類;フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ヒドロキノン等のフェノール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、イミダゾール等のアミン類;アセトアミド、ベンズアミド等の酸アミド類、尿素、N,N’−ジフェニル尿素等の尿素類;アセトン、アセチルアセトン、2,4−ヘプタジオン等のケトン類等が挙げられる。
上記一般式(26)で表される水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、例えば上述の活性水素含有化合物等に、トリメチルシリルクロリドやジメチル(t−ブチル)クロリド等のようなシリル化剤とも呼ばれる(R58Si基とともにハロゲン基等の活性水素と反応し得る基を有する化合物を反応させることにより得ることができるが、これらに限定されるものではない(ただし、R58は上述したものと同様である。)。
上記一般式(26)で表される化合物を具体的に例示すると、アリロキシトリメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、ビストリメチルシリル尿素、N−(t−ブチルジメチルシリル)−N−メチルトリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(N,N−ジエチルアミノ)トリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物、ポリプロピレングリコールのトリメチルシリル化物、ポリプロピレントリオールのトリメチルシリル化物、ポリエーテルポリオールのトリメチルシリル化物、ポリプロピレンテトラオールのトリメチルシリル化物、アクリルポリオールのトリメチルシリル化物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、一般式(((R60SiO)(R61O)Zで表すことができるような化合物、CHO(CHCH(CH)O)Si(CH
CH=CHCH(CHCH(CH)O)Si(CH
(CHSiO(CHCH(CH)O)Si(CH
(CHSiO(CHCH(CH)O)Si(CH
(式中、R60は同一又は異種の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基又は水素原子、R61は炭素数1〜8の2価の炭化水素基、s、tは正の整数で、sは1〜6、s×tは5以上、Zは1〜6価の有機基)
等も好適に使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物の中では、貯蔵安定性、耐候性等に悪影響を及ぼさない点で、加水分解後に生成する活性水素化合物はフェノール類、酸アミド類及びアルコール類が好ましく、活性水素化合物が水酸基であるフェノール類及びアルコール類がさらに好ましい。
上記の化合物の中では、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、トリメチルシリルフェノキシド、n−オクタノールのトリメチルシリル化物、2―エチルヘキサノールのトリメチルシリル化物、グリセリンのトリス(トリメチルシリル)化物、トリメチロールプロパンのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのトリス(トリメチルシリル)化物、ペンタエリスリトールのテトラ(トリメチルシリル)化物等が好ましい。
この水分と反応することにより分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物は、貯蔵時、硬化時あるいは硬化後に水分と反応することにより、分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成する。この様にして生成した分子内に1個のシラノール基を有する化合物は、上述のようにビニル系重合体の架橋性シリル基あるいは架橋により生成したシロキサン結合と反応することにより、架橋点の数を減少させ、硬化物に柔軟性を与えているものと推定される。
このシラノール含有化合物の構造は、本発明のビニル系重合体(I)の架橋性シリル基が一般式(1)である場合、一般式(1)のYの種類とaの数によって選択することが好ましく、目的や用途に応じて本発明の硬化性や機械物性等を制御することが可能である。
シラノール含有化合物は、後述の空気酸化硬化性物質と併用してもよく、併用することにより、硬化物のモジュラスを低いままに保ち、表面へ塗装したアルキッド塗料の硬化性及び埃付着性を改善するので好ましい。
シラノール含有化合物を用いる場合、その添加量は、硬化物の期待物性に応じて適宜調整可能である。シラノール含有化合物は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部添加できる。0.1重量部未満では添加効果が現れにくく、50重量部を越えると架橋が不十分になり、硬化物の強度やゲル分率が低下する傾向がある。
また、シラノール含有化合物を添加する時期は特に限定されず、重合体の製造時に添加してもよく、硬化性組成物の作製時に添加してもよい。
<チクソ性付与剤(垂れ防止剤)>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。
チクソ性付与剤(垂れ防止剤)は揺変性付与剤ともいう。チクソ性付与とはカートリッジからビード状に押出したり、ヘラ等により塗布したり、スプレー等により吹付けたりする時のように強い力を加えられる時には流動性を示し、塗布ないしは施工後に硬化するまでの間、流下しない性質を付与するものである。
また、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)としては特に限定されないが、例えば、ディスパロン(楠本化成製)に代表されるアマイドワックス、水添ヒマシ油、水添ヒマシ油誘導体類、脂肪酸の誘導体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類、1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート等の有機系化合物や、脂肪酸や樹脂酸で表面処理した炭酸カルシウムや微粉末シリカ、カーボンブラック等の無機系化合物が挙げられる。
微粉末シリカとは、二酸化ケイ素を主成分とする天然又は人工の無機充填剤を意味する。具体的には、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト、有機ベントナイト等を例示できる。
なかでも、ケイ素を含む揮発性化合物を気相で反応させることによって作られる超微粒子状無水シリカや有機ベントナイトが好ましい。少なくとも50m/g、さらには50〜400m/gの比表面積を有していることが好ましい。また、親水性シリカ、疎水性シリカの何れをも使用することができる。表面処理はあってもなくても構わないが、ケイ素原子に結合した有機置換基としてメチル基のみを有するシラザン、クロロシラン、アルコキシシランもしくはポリシロキサンによりその表面が疎水処理されている疎水性シリカが好ましい。
上記の表面処理剤を具体的に例示すると、ヘキサメチルジシラザン等のようなシラザン類;トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のようなハロゲン化シラン類;トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン等のようなアルコキシシラン類(ここで、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる);環状あるいは直鎖状のポリジメチルシロキサン等のようなシロキサン類等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でもシロキサン類(ジメチルシリコーンオイル)によって表面処理を施された疎水性微粉末シリカが揺変性付与効果の面から好ましい。
また、微粉末シリカに、ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物、ポリエーテル化合物と官能性シランの反応生成物等やエチレンオキサイド鎖を有する非イオン系界面活性剤を併用するとチクソ性が増す。この非イオン系界面活性剤は1種又は2種以上使用してもよい。
この微粉末シリカの具体例としては、例えば、日本アエロジル製の商品名Aerosil R974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、RY200、RX200、RY200S、#130、#200、#300、R202等や、日本シリカ製の商品名Nipsil SSシリーズ、徳山曹達製の商品名Rheorosil MT−10、MT−30、QS−102、QS−103、Cabot製の商品名Cabosil TS−720、MS−5、MS−7、豊順洋行製のエスベンやオルガナイト等の市販品が挙げられる。
また、有機ベントナイトとは、主にモンモリロナイト鉱石を細かく粉砕した粉末状の物質で、これを各種有機物質で表面処理したものをいう。有機化合物としては脂肪族第1級アミン、脂肪族第4級アミン(これらはいずれも炭素数20以下が好ましい)等が用いられる。この有機ベントナイトの具体例としては、例えば、白石工業製の商品名オルベンD、NewDオルベン、土屋カオリン製の商品名ハードシル、Bergess Pigment製のクレー#30、Southern Clay社#33、米国National Lead製の「ベントン(Bentone)34」(ジメチルオクタデシルアンモニウムベントナイト)等が挙げられる。
また、アマイドワックス、水添ヒマシ油、水添ヒマシ油誘導体類、脂肪酸の誘導体等の化合物も入手し易く、適度に配合物を増粘し、比較的安価にチクソ性を付与出来るので好ましい。
チクソ性指標とは、回転粘度計による粘度測定において、回転速度の低速(例えば、0.5〜12rpm)と高速(例えば、2.5〜60rpm)とにおける見掛け粘度の比を意味する(ただし、高速回転の速度と低速回転の速度の比が少なくとも5、さらには5〜10の範囲内が好ましい。
これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
<光硬化性物質>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて光硬化性物質を添加しても良い。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間に、分子構造が化学変化をおこし、硬化等の物性的変化を生ずるものである。この光硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。この光硬化性物質は、光をあてることにより硬化し得る物質であるが、代表的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近)に1日間、室温で静置することにより硬化させることができる物質である。この種の化合物には、有機単量体、オリゴマー、樹脂あるいはそれらを含む組成物等、多くのものが知られており、その種類は特に限定されないが、例えば、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
不飽和アクリル系化合物としては、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコール等の低分子量アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類(オリゴエステルアクリレート);ビスフェノールA、イソシアヌル酸等の酸あるいは上記低分子量アルコール等をエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドで変性したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;主鎖がポリエーテルで末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、主鎖がポリエーテルであるポリオール中でビニル系モノマーをラジカル重合することにより得られるポリマーポリオール、主鎖がポリエステルで末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、主鎖がビニル系あるいは(メタ)アクリル系重合体であり、主鎖中に水酸基を有するポリオール等の(メタ)アクリル酸エステル類;主鎖がビニル系あるいは(メタ)アクリル系重合体であり、主鎖中に多官能アクリレートを共重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル類;ビスフェノールA型やノボラック型等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られるエポキシアクリレート系オリゴマー類;ポリオール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート等を反応させることにより得られる分子鎖中にウレタン結合及び(メタ)アクリル基を有するウレタンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
ポリケイ皮酸ビニル類とは、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂であり、ポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル系誘導体が挙げられる。
アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液のほか「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、93頁〜、106頁から、117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。
エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物としては、エポキシ基末端又はビニルエーテル基末端ポリイソブチレン等が挙げられる。
上記の光硬化性物質の中では、取り扱い易いという理由で不飽和アクリル系化合物が好ましい。
光硬化性物質を用いる場合、その使用量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して0.01〜20重量部添加するのが好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。なお、ケトン類、ニトロ化合物等の増感剤やアミン類等の促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
<空気酸化硬化性物質>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて空気酸化硬化性物質を添加しても良い。空気酸化硬化性物質とは、空気中の酸素により架橋硬化できる不飽和基を有する化合物である。この空気酸化硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。本発明における空気酸化硬化性物質は、空気と接触させることにより硬化し得る物質であり、より具体的には、空気中の酸素と反応して硬化する性質を有するものである。代表的な空気酸化硬化性物質は、例えば空気中で室内に1日間静置することにより硬化させることができる。
空気酸化硬化性物質としては、例えば、桐油、アマニ油等の乾性油;これら乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂;1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエンの重合体や共重合体、さらには該重合体や共重合体の各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物等)等が具体例として挙げられる。これらのうちでは桐油、ジエン系重合体のうちの液状物(液状ジエン系重合体)やその変性物が特に好ましい。
上記液状ジエン系重合体の具体例としては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させて得られる液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレン等の単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させて得られるNBR,SBR等の重合体やさらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物等)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら液状ジエン系化合物のうちでは液状ポリブタジエンが好ましい。
空気酸化硬化性物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また空気酸化硬化性物質と同時に酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果を高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩やアミン化合物等が例示される。
空気酸化硬化性物質は、前述の光硬化性物質と併用してもよく、さらに前述のシラノール含有化合物を併用することができる。これら2成分の併用又は3成分の併用によりその効果をさらに発揮し、特に長期に渡って曝露される場合や、塵埃や微粉土砂の多い汚染性の過酷な地域においても顕著な汚染防止効果を発揮することがあるので特に好ましい。
空気酸化硬化性物質を用いる場合、その使用量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して0.01〜20重量部添加するのが好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例えば、MARK PEP−36、MARK AO−23等のチオエーテル系(以上いずれも旭電化工業製)、Irgafos38、Irgafos168、IrgafosP−EPQ(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等のようなリン系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。なかでも、以下に示したようなヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には以下のものが例示できる。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(又はジ又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
商品名で言えば、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業製)、MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO−616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−80、MARK AO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれも旭電化工業製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−565、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1035、IRGANOX−1076、IRGANOX−1081、IRGANOX−1098、IRGANOX−1222、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、SumilizerGM、SumilizerGA−80(以上いずれも住友化学製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
酸化防止剤は後述する光安定剤と併用してもよく、併用することによりその効果をさらに発揮し、特に耐熱性が向上することがあるため特に好ましい。予め酸化防止剤と光安定剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等を使用しても良い。
酸化防止剤を用いる場合、その使用量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、10重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
<耐光安定剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて耐光安定剤を添加しても良い。耐光安定剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられる。これらに限定されるわけではないが、耐光安定剤の中では、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤化合物が好ましい。具体的には、チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等のようなベンゾトリアゾール系化合物、チヌビン1577等のようなトリアジン系化合物、CHIMASSORB81等のようなベンゾフェノン系化合物、チヌビン120(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等のようなベンゾエート系化合物等が例示できる。
また、ヒンダードアミン系化合物も好ましく、そのような化合物を以下に記載する。
コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリディニル)エステル等が挙げられる。
商品名で言えば、チヌビン622LD、チヌビン144、CHIMASSORB944LD、CHIMASSORB119FL、Irgafos168、(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、MARK LA−52、MARK LA−57、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−82、MARK LA−87、(以上いずれも旭電化工業製)、サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−292、サノールLS−2626、サノールLS−1114、サノールLS−744、サノールLS−440(以上いずれも三共製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
耐光安定剤は前述した酸化防止剤と併用してもよく、併用することによりその効果をさらに発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。組み合わせは特に限定されないが、前述のヒンダードフェノール系酸化防止剤と例えばベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤との組み合わせや前述のヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤化合物との組合せが好ましい。あるいは、前述のヒンダードフェノール系酸化防止剤と例えばベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤化合物との組合せが好ましい。予め光安定剤と酸化防止剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)等を使用しても良い。
ヒンダードアミン系光安定剤は前述した光硬化性物質と併用してもよく、併用することによりその効果をさらに発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。組み合わせは特に限定されないが、この場合、3級アミン含有のヒンダードアミン系光安定剤が貯蔵中の粘度上昇が少なく貯蔵安定性が良好であるので好ましい。
光安定剤を用いる場合、その使用量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、10重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
<エポキシ樹脂>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じてエポキシ樹脂を添加しても良い。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型(水添ビスフェノールA型)エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の難燃型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンのような多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂等のような不飽和重合体のエポキシ化物等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらエポキシ樹脂は単独で用いても良く2種以上併用しても良い。
これらのエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、硬化に際し、反応性が高く硬化物が3次元的網目を作りやすい等の点から好ましい。
また、本発明のビニル系重合体(I)とエポキシ樹脂との混合物を硬化させた時の硬化物として透明なものを得るためには、該エポキシ樹脂はビニル系重合体と相溶することが好ましく、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は各種ビニル系重合体と相溶し易く、透明な硬化物を得易い。
ビニル系重合体とエポキシ樹脂の相溶性が良好な組合せの硬化性組成物は、それを硬化させた時に変調構造を取り易く、その結果、透明な硬化物を得易い。さらには機械物性も格段に向上することがある。
例えば、主鎖が、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高いビニル系重合体又はビニル系共重合体と、芳香環を有するエポキシ樹脂との組合せや、ビニル系重合体又はビニル系共重合体と、芳香環を有しないエポキシ樹脂との組合せ等の好ましい組合せが挙げられる。
芳香環を有しないエポキシ樹脂の例としては、特に限定はされないが、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、グリシジル基が脂環に直接ついていないエポキシ樹脂がより好ましい。
主鎖が、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーよりも極性が高いビニル系重合体又はビニル系共重合体としては、これに限定されるものではないが、好ましい例として一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する、重合体又は共重合体が挙げられる。
−[CH−CR(COOR”)]− (2)
(式中、Rは水素、又はメチル基、R”は、同一若しくは異なって、アルコキシアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
具体的にはアクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体とビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の組合せや、アクリル酸ブチルエステルホモポリマーと水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂やヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの組合せ等の好ましい組合せが挙げられるがこれに限定されるものではない。
エポキシ樹脂の添加量
エポキシ樹脂を添加する場合の添加量としては、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体(I)とエポキシ樹脂の混合比にして、重量比で100/1〜1/100の範囲が好ましいが、100/5〜5/100の範囲にあることがより好ましく、100/10〜10/100の範囲にあることがさらに好ましいが、その混合比は限定されるものではなく、各用途、目的に応じて設定できる。この硬化性組成物はその特性から、線膨張係数の異なる材料の接着や、ヒートサイクルにより繰り返し変位を受けるような部材の接着に用いる弾性接着剤として用いたり、透明な硬化物になる場合はその特性を活かして、下地が見える用途でのコーティング剤等に用いたりすることが出来る。例えば、この弾性接着剤用途ではエポキシ樹脂の混合比は多過ぎると硬化物が硬くなって剥離強度が低下する傾向があり、少な過ぎると逆に接着強度や耐水性が低下する傾向があるので、ビニル系重合体(I)100重量部に対し、好ましくは10〜150重量部程度の範囲、より好ましくは20〜100重量部の範囲で使用されるのが良い。
エポキシ樹脂の硬化触媒・硬化剤
さらに必要に応じてエポキシ樹脂用硬化剤を含むことができる。エポキシ樹脂用硬化剤としては、従来公知のものを広く使用することができる。例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、グアニジン、テトラメチルグアニジン、オレイルアミン等の脂肪族アミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、BASF社製ラミロンC−260、CIBA社製Araldit HY−964、ロームアンドハース社製メンセンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリシクロヘキシルポリアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)等の脂環族アミン類;m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン類;(CHN(CHN(CH(式中nは1〜10の整数)で示される直鎖状ジアミン、(CH−N(CH−CH(式中nは0〜10の整数)で示される直鎖第3級アミン、N{(CHCH(式中nは1〜10の整数)で示されるアルキル第3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミン類;3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(ATU)、モルホリン、N−メチルモルホリン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のエーテル結合を有するアミン類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の水酸基含有アミン類;トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、ジアザビシクロウンデセン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸等の酸無水物類;ダイマー酸にジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等のポリアミンを反応させて得られるポリアミドや各種ポリアミド樹脂、ダイマー酸以外のポリカルボン酸を使ったポリアミド等のポリアミドアミン類;2−エチル−4−メチルイミダゾール等の各種イミダゾール類;ジシアンジアミド及びその誘導体;ポリオキシプロピレン系ジアミン、ポリオキシプロピレン系トリアミン等のポリオキシプロピレン系アミン類;フェノール類;上記アミン類にエポキシ化合物を反応させて得られるエポキシ変性アミン、上記アミン類にホルマリン、フェノール類を反応させて得られるマンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミンといった変性アミン類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸塩等のアミン塩;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等の一分子中にアミノ基と加水分解性シリル基を有する化合物等が挙げられる。ケチミン化合物の具体例としては例えば特開平7−242737号公報等が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。特に限定はされないが、これらエポキシ樹脂用硬化剤の中では、硬化性や物性バランスの点から、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールやポリオキシプロピレン系ジアミンが好ましい。
斯かるエポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂の配合量にもよるが、ビニル系重合体(I)100重量部に対し、好ましくは1〜60重量部程度の範囲、より好ましくは2〜50重量部程度の範囲で使用されるのが良い。1重量部未満ではエポキシ樹脂の硬化が不十分となり接着強度が低下する傾向がある。また、60重量部を超えると界面へのブリード等が起こって接着性が低下する傾向がある。
またこの硬化性樹脂組成物に、重合体(I)の架橋性シリル基とエポキシ樹脂のエポキシ基の両方に反応可能な基を有する化合物を添加すると強度がより向上するので好ましい。その具体例としては、例えばγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
<相溶化剤>
本発明の硬化性組成物には、相溶化剤を添加することができる。このような添加物の具体例としては、例えば、特開2001−329025号公報の明細書に記載されている複数のビニル系モノマーの共重合体等が使用できる。
<分子中にα,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物>
本発明の硬化性組成物は、分子中にα,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物を添加しても構わない。α,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物としては、一般によく知られたものが利用できる。なお、本明細書中、上記α,βジオール構造は、隣接する炭素原子に2つの水酸基を有する構造を表し、上記α,γジオール構造は、一つおいて隣り合う炭素原子に2つの水酸基を有する構造を表し、また、グリセリン等に代表されるように、α,βジオール構造とα,γジオール構造の両方、ないしは何れかの構造を含むトリオールやテトラオール等のポリオールも含む。
上記分子中にα,βジオール構造又はα,γジオール構造を有する化合物としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類;グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール等のトリオール類;ペンタエリスリトール、D−ソルビトール、D−マンニトール、ジグリセリン、ポリグリセリン等の4価以上のポリオール類;
グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノベヘネート等のグリセリンモノカルボン酸エステル類;ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンジステアレート、テトラグリセリンジオレエート、テトラグリセリンジラウレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリンジオレエート、デカグリセリンジラウレート等のポリグリセリンカルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノイソステアレート、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノラウレート等のペンタエリスリトールモノカルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジオレエート、ペンタエリスリトールジラウレート等のペンタエリスリトールジカルボン酸エステル類;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート等のソルビタンモノカルボン酸エステル類;ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジベヘネート等のソルビタンジカルボン酸エスエル類;
グリセリンモノステアリルエーテル、グリセリンモノオレイルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテル、グリセリンモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のグリセリンモノアルキルエーテル類;ジグリセリンモノステアリルエーテル、ジグリセリンモノオレイルエーテル、ジグリセリンモノラウリルエーテル、テトラグリセリンモノステアリルエーテル、テトラグリセリンモノオレイルエーテル、テトラグリセリンモノラウリルエーテル、テトラグリセリンジステアリルエーテル、テトラグリセリンジオレイルエーテル、テトラグリセリンジラウリルエーテル、デカグリセリンモノステアリルエーテル、デカグリセリンモノオレイルエーテル、デカグリセリンモノラウリルエーテル、デカグリセリンジステアリルエーテル、デカグリセリンジオレイルエーテル、デカグリセリンジラウリルエーテル等のポリグリセリンアルキルエーテル類;ペンタエリスリトールモノステアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノオレイルエーテル、ペンタエリスリトールモノラウリルエーテル等のペンタエリスリトールモノアルキルエーテル類;ペンタエリスリトールジステアリルエーテル、ペンタエリスリトールジオレイルエーテル、ペンタエリスリトールジラウリルエーテル等のペンタエリスリトールジアルキルエーテル類;ソルビタンモノステアリルエーテル、ソルビタンモノオレイルエーテル、ソルビタンモノラウリルエーテル等のソルビタンモノアルキルエーテル類;ソルビタンジステアリルエーテル、ソルビタンジオレイルエーテル、ソルビタンジラウリルエーテル等のソルビタンジアルキルエーテル類等を挙げることができる。
上記化合物の多くは、乳化剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、防曇剤、可溶化剤、増粘剤、滑剤として汎用のものが多く、容易に入手できる。
上記の化合物は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。上記の化合物を用いる場合、その使用量は、ビニル系重合体(I)100重量部に対し、0.01〜100重量部が好ましく、より好ましくは、0.1〜20重量部である。0.01重量部未満であると、目的とする効果が得られにくく、100重量部を超えると、硬化物の機械的強度が不足する傾向がある。
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、例えば、難燃剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
このような添加物の具体例は、例えば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号の各公報の明細書等に記載されている。
また、本発明の硬化性組成物は、実質的に無溶剤で使用できる。作業性の観点等から溶剤を使用しても構わないが、環境への影響から使用しないことが望ましい。
<硬化性組成物の調製>
本発明の硬化性組成物は、全ての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1液型として調製することができる。
本発明の1液型硬化性組成物は、従来の1液型硬化性組成物で問題となっていた貯蔵後の硬化速度の安定性を改善し、かつ、優れた耐熱性、耐油性、耐候性を有する硬化物を与えうる。また、施工の際に混合・混練する手間が不要となり、同時にその際に生じる計量ミス(混合比の間違い)もなくなるため、硬化不良等のミスを防ぐことができる。
本発明の硬化性組成物は、ビニル系重合体(I)とその硬化剤・硬化触媒を別々にして、別途、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材を使用前に混合する2液型として調整することもできる。
例えば、限定はされないが、A剤としてビニル系重合体(I)と接着性付与剤等を調整し、B剤として硬化触媒(II)、場合によって水や充填材、可塑剤等を調整しておき(前述の硬化触媒だけでなく、硬化触媒と他の配合剤とを含んだB剤のことをも硬化剤ということもある。)、施工直前に上記のA剤とB剤を混合して使用することも可能である。
本発明の硬化性組成物を2液型で調製した場合においても、1液型と同様に、得られる硬化物は良好な耐熱性、耐油性、耐候性を奏する。
このように、本発明の硬化性組成物は、湿分を吸収することにより架橋硬化できるように、1液型又は2液型に梱包されることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物を2液型にする場合、2成分の混合時に着色剤を添加することができる。例えば、サイディングボードの色に合わせたシーリング材を提供する際に、限られた在庫で豊富な色揃えをすることが可能となる等、市場から要望されている多色化対応が容易となり、低層建物用等に利用できる。
2液型と同様に1液型硬化性組成物も同様に多色化は可能である。1液型硬化性組成物を使用する時に着色剤を添加してもよく、特に缶容器入り1液型硬化性組成物では多色化対応が容易となる。1液型として調整されたものを使用し施工する際に、容器から取出した後に水を添加して混合等を行なって硬化させても良い。
なお、着色剤としては、特に限定されないが、例えば酸化チタン(チタンホワイト、チタンイエロー、チタンブラック等)、酸化鉄系顔料、複合酸化物系顔料等の無機顔料等が挙げられる。着色剤は、例えば顔料と可塑剤、場合によっては充填材を混合し、ペースト化したものを用いると作業し易い。また、さらに2成分の混合時に遅延剤を添加することにより、硬化速度を作業現場にて微調整することができる。
<<用途>>
本発明の硬化性組成物は、限定はされないが、建築用弾性シーリング剤、サイディングボード用シーリング剤、複層ガラス用シーリング剤、車両用シーリング剤等の建築用及び工業用のシーリング剤、太陽電池裏面封止剤等の電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材等の電気絶縁材料、粘着剤、接着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、反応性ホットメルト接着剤、塗料、粉体塗料、コーティング材、発泡体、缶蓋等のシール材、放熱シート、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、マリンデッキコーキング、注型材料、各種成形材料、人工大理石、及び、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車や船舶、家電等に使用される防振・制振・防音・免震材料、自動車部品、電機部品、各種機械部品等において使用される液状シール剤、防水剤等の様々な用途に利用可能である。
さらに、本発明の硬化性組成物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心に広く使用することができる。例えば自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジン及びサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用等のホース類、エンジンオイル用シール材等に使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。家電分野では、パッキン、Oリング、ベルト等に使用できる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シール等燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管等、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等が挙げられる。建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。スポ―ツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体等、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナ等、工事補助材料としてゴムシート類、エアホース等、安全対策商品としてゴムブイ、消波材等、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマー等に使用できる。その他、板ゴム、マット、フォーム板等にも使用できる。
なかでも、本発明の硬化性組成物は、シーリング材や接着剤として特に有用であり、特に耐候性や耐熱性が要求される用途や透明性が必要な用途にも有用である。また、本発明の硬化性組成物は耐候性と接着性に優れるので、目地埋めなしでの外壁タイル接着用工法に使用できる。さらには、線膨張係数の異なる材料の接着や、ヒートサイクルにより繰り返し変位を受けるような部材の接着に用いる弾性接着剤の用途や、透明性を活かした下地が見える用途でのコーティング剤等の用途、ガラスやポリカ、メタクリル樹脂等の透明材料の貼り合わせに用いる接着剤用途等にも有用である。また、その良好な耐熱性や耐油性を活かして現場成形ガスケット、FIPG:Formed In Place Gasketともいわれる用途、いわゆる自動車部品、電機部品、各種機械部品等において使用される液状シール材に好適に用いることも可能である。
本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物を硬化させた時の硬化物が、耐熱性、耐候性に優れ、かつ、充分な硬化速度が得られるという効果を有する。
以下に、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
なお、下記合成例、実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
また、下記合成例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
(合成例1)架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)重合体の合成例
窒素雰囲気下、250L反応機に、CuBr(1.09kg)、アセトニトリル(11.4kg)、アクリル酸n−ブチル(26.0kg)及び2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(2.28kg)を加え、70〜80℃で30分程度撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミンを加え、反応を開始した。反応開始30分後から2時間かけて、アクリル酸n−ブチル(104kg)を連続的に追加した。反応途中、ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜添加し、内温70℃〜90℃となるようにした。ここまでで使用したペンタメチルジエチレントリアミン総量は220gであった。反応開始から4時間後、80℃で減圧下、加熱攪拌することにより揮発分を除去した。これにアセトニトリル(45.7kg)、1,7−オクタジエン(14.0kg)、ペンタメチルジエチレントリアミン(439g)を添加して、8時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、ろ過助剤として珪藻土、吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温100℃で加熱攪拌した。混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を内温100℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
さらにこの濃縮物に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイト、熱劣化防止剤を加え、減圧下、加熱攪拌した(平均温度約175℃、減圧度10Torr以下)。
さらに吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを追加し、酸化防止剤を加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温150℃で加熱攪拌した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を減圧下で加熱攪拌して揮発分を除去し、アルケニル基を有する重合体を得た。
このアルケニル基を有する重合体、ジメトキシメチルシラン(アルケニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1.0モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のキシレン溶液:以下、白金触媒という](白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、窒素雰囲気下、100℃で加熱攪拌した。アルケニル基が消失したことを確認し、反応混合物を濃縮して、末端にジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)重合体[P1]を得た。得られた重合体[P1]の数平均分子量は約26000、分子量分布は1.3であった。重合体1分子当たりに導入された平均のシリル基の数をH−NMR分析により求めたところ、約1.8個であった。
(実施例1〜7、比較例1〜2)
上記合成例1で得られた重合体〔重合体P1〕、可塑剤:DIDP(フタル酸ジイソデシル)、充填材:白艶華CCR(膠質炭酸カルシウム、白石工業製)、ナノックス25A(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム製)、着色剤:タイペークR−820(酸化チタン、石原産業製)、タレ防止剤:ディスパロン6500(脂肪酸アマイドワックス、楠本化成製)、酸化防止剤:イルガノックス1010(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、紫外線吸収剤:チヌビン−213(メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、光安定剤:サノールLS−765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、三共製)、脱水剤:A−171(ビニルトリメトキシシラン、日本ユニカー製)、接着性付与剤:A−1120(γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカー製)、硬化触媒:ジブチル錫オキサイドとフタル酸ジオクチルとの反応生成物(#918、三共有機合成製)、ジブチル錫ジアセチルアセトナート(ネオスタンU−220、日東化成製)、各種カルボン酸化合物を、表1の配合に従い、脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒以外を手混ぜで充分撹拌混合した後に、3本ペイントロールに3回通して、各種混合物を得た。これらの混合物に、表1に記載された脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒を添加して、硬化性組成物を調製した。
次いで、上記硬化性組成物を用い、以下のようにしてその硬化物の機械物性を測定した。
上記硬化性組成物を約2mm厚のシート状に塗工し、このシート状施工物を室温(23℃×55%R.H.)にて3日間静置し、さらに50℃にて4日間硬化養生させた。硬化養生後の硬化物から、JIS K 7113に示された2(1/3)号形ダンベル型試験片を打抜き、引張試験(島津製オートグラフ使用、測定温度:23℃、引張速度:200mm/sec)にて機械物性を測定した(この時点を0hrsとする)。
さらに、この試験片を100℃にて加熱養生し、経時(170hrs、340hrs)で機械物性を測定し、耐熱性の評価をした。それぞれの結果(経時変化)を表2に示す。
なお、表中において、M50は伸び50%時の引張強度(モジュラス)を、Ebは破断時の伸びを示す。また、M50及びEbにおいて、耐熱性試験前の値に対する耐熱性試験後の値の変化が少ないほど、耐熱性が良いことを示している。
Figure 0005048386
Figure 0005048386
各種カルボン酸化合物を添加した硬化性組成物を、ジアルキル錫オキサイドとエステル化合物を反応させて得られる錫化合物を用いて硬化させた実施例の硬化物は、カルボン酸化合物を添加しないものに比べて、100℃の条件下で、いずれも良好な耐熱性を示した。
(実施例8〜10、比較例3〜4)
実施例1〜7、比較例1〜2と同様にして、表3の配合表に従い、硬化性組成物を調製した。また、当該硬化性組成物を用い、実施例1〜7、比較例1〜2と同様にして、機械物性を測定し、耐熱性の評価をした。それぞれの結果(経時変化)を表4に示す。
なお、使用配合剤中、前記と異なる配合剤であるカルボン酸金属塩は以下のとおり。
ステアリン酸ナトリウム(堺化学製)
ステアリン酸カリウム(堺化学製)
ステアリン酸リチウム(堺化学製)
Figure 0005048386
Figure 0005048386
各種カルボン酸金属塩を添加した硬化性組成物を、ジアルキル錫オキサイドとエステル化合物を反応させて得られる錫化合物を用いて硬化させた実施例の硬化物は、カルボン酸化合物を添加しないものに比べて、100℃の条件下で、いずれも良好な耐熱性を示した。
(実施例11〜13、比較例5)
上記合成例1で得られた重合体〔重合体P1〕、可塑剤:DIDP(フタル酸ジイソデシル)、ジメチルアジペート、充填材:白艶華CCR(膠質炭酸カルシウム、白石工業製)、ナノックス25A(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム製)、着色剤:タイペークR−820(酸化チタン、石原産業製)、タレ防止剤:ディスパロン6500(脂肪酸アマイドワックス、楠本化成製)、酸化防止剤:イルガノックス1010(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、紫外線吸収剤:チヌビン−213(メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、光安定剤:サノールLS−765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、三共製)、脱水剤:A−171(ビニルトリメトキシシラン、日本ユニカー製)、接着性付与剤:A−1120(γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカー製)、硬化触媒:ジブチル錫オキサイドとフタル酸ジオクチルとの反応生成物(#918、三共有機合成製)、各種カルボン酸化合物を表5の配合表に従い、脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒以外を充分撹拌混合した後に、3本ペイントロールに3回通して分散させた。この後、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、表5に記載された脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒を添加して混練し、実質的に水分の存在しない状態で混練した後、防湿性の容器に密閉し、1液型硬化性組成物を得た。
次いで、得られた硬化性組成物を用い、実施例1〜7、比較例1〜2と同様にして、その硬化物の初期(0hrs)の機械物性を測定した。さらに、この試験片を50℃×4週間養生し、その機械物性(50℃×4週間貯蔵後)を測定した。
また、調製直後の上記硬化性組成物(初期)と、硬化性組成物を調製後50℃で4週間貯蔵したもの(50℃×4週間貯蔵後)を、それぞれ室温(23℃×55%R.H.)にて硬化させ、皮張り時間を測定した。当該皮張り時間は、該硬化性組成物がゴム弾性を発現し、金属スパーテルに着かなくなるまでの時間で評価した。
それぞれの結果を表6に示す。なお、表中、Tbは破断強度を示す。
Figure 0005048386
Figure 0005048386
各種カルボン酸化合物を添加した実施例の硬化性組成物はいずれも、50℃で4週間貯蔵しても、カルボン酸化合物添加による皮張り時間及び機械物性の低下は見られなかった。
(実施例14、比較例6)
上記合成例1で得られた重合体〔重合体P1〕、可塑剤:DIDP(フタル酸ジイソデシル)、ジメチルアジペート、充填材:白艶華CCR(膠質炭酸カルシウム、白石工業製)、ナノックス25A(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム製)、着色剤:タイペークR−820(酸化チタン、石原産業製)、タレ防止剤:ディスパロン6500(脂肪酸アマイドワックス、楠本化成製)、酸化防止剤:イルガノックス1010(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、紫外線吸収剤:チヌビン−213(メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、光安定剤:サノールLS−765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、三共製)、脱水剤:A−171(ビニルトリメトキシシラン、日本ユニカー製)、接着性付与剤:A−1120(γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカー製)、硬化触媒:ジブチル錫オキサイドとフタル酸ジオクチルとの反応生成物(#918、三共有機合成製)、各種カルボン酸化合物を表7の配合表に従い、脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒以外を充分撹拌混合した後に、3本ペイントロールに3回通して分散させた。この後、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、表7に記載された脱水剤、接着性付与剤、硬化触媒を添加して混練し、実質的に水分の存在しない状態で混練した後、防湿性の容器に密閉し、1液型硬化性組成物を得た。
次いで、得られた硬化性組成物を用い、実施例1〜7、比較例1〜2と同様にして、その硬化物の機械物性を測定した(0hrs)。
さらに、この試験片を、サンシャインウェザロメーター(スガ試験機製WEL−SUN−DC型、ブラックパネル温度63℃、照射2時間中、降雨時間18分)に設置し、経時(120hrs、240hrs、480hrs)で試験片の機械物性を上記と同様にして測定し、耐候性評価を行った。それぞれの結果(経時変化)を表8に示す。
なお、M50及びEbにおいて、耐候性試験前の値に対する耐候性試験後の値の変化が少ないほど、耐候性が良いことを示している。
Figure 0005048386
Figure 0005048386
カルボン酸化合物を添加した硬化性組成物を、ジアルキル錫オキサイドとエステル化合物を反応させて得られる錫化合物を用いて硬化させた実施例の硬化物は、カルボン酸化合物を添加しないものに比べて、良好な耐候性を示した。
参考例1、実施例16〜21、比較例7〜13)
実施例1〜7、比較例1〜2と同様にして、表9及び表10の配合表に従い、硬化性組成物を調製した。また、当該硬化性組成物を用い、実施例1〜7、比較例1〜2と同様にして、機械物性を測定し、耐熱性の評価をした。それぞれの結果(経時変化)を表11に示す。
なお、使用配合剤中、前記と異なる錫系硬化触媒は以下のとおり。
OT/LA:オクチル酸錫とラウリルアミンの混合物(OT(U−28)、日東化成工業株式会社製)
DTL:ジブチル錫ジラウレート(DTL(STANN BL)、三共有機合成製)
SCAT−1:ビス(ジブチル錫ラウレート)オキサイド(SCAT−1、三共有機合成製)
SCAT−8:ジブチル錫ジアセテート(SCAT−8、三共有機合成製)
SCAT−27:ジブチル錫ジメトキシド(SCAT−27、三共有機合成製)
SCAT−32A:ジブチル錫オキサイドとアジピン酸ジメチルとの反応生成物(SCAT−32A、三共有機合成製)
U−700:ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド(U−700、日東化成工業株式会社製)
Figure 0005048386
Figure 0005048386
Figure 0005048386
カルボン酸化合物を添加した硬化性組成物を、ジアルキル錫オキサイド及びエステル化合物を反応させて得られる錫化合物、ジアルキル錫ジカルボキシレート化合物、ビス(ジアルキル錫カルボキシレート)オキサイド化合物、ジアルキル錫ジアルコキシド化合物、ジアルキル錫オキサイド及びシリケート化合物を反応させて得られる錫化合物及びこれらのオキシ誘導体、及び、2価の錫化合物とアミン系化合物との混合物を用いて硬化させた実施例の硬化物は、カルボン酸化合物を添加しないものに比べて、いずれも良好な耐熱性を示した。
本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物を硬化させた時の硬化物が、耐熱性、耐候性に優れ、かつ、充分な硬化速度が得られるという効果を有する。

Claims (20)

  1. 架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体(I)、4価の錫系硬化触媒(II)、及び、カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)を含有してなる硬化性組成物。
  2. 錫系硬化触媒(II)が、ジアルキル錫オキサイド及びエステル化合物を反応させて得られる錫化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 錫系硬化触媒(II)がジアルキル錫ジカルボキシレート化合物又はビス(ジアルキル錫カルボキシレート)オキサイド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  4. 錫系硬化触媒(II)がジアルキル錫ジアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  5. 錫系硬化触媒(II)が、ジアルキル錫オキサイド及びシリケート化合物を反応させて得られる錫化合物、又は、これらのオキシ誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  6. カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)が、炭素数10〜20の飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の硬化性組成物。
  7. カルボキシル基を少なくとも1個有するカルボン酸化合物(III)が、カルボン酸とアルカリ金属からなる金属塩であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の硬化性組成物。
  8. (メタ)アクリル系重合体(I)の分子量分布が1.8未満であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の硬化性組成物。
  9. 架橋性シリル基が一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の硬化性組成物。
    −[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y)(1)
    (式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で表されるトリオルガノシロキシ基を示す。R 又はR がそれぞれ2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3を示す。bは0、1又は2を示す。mは0〜19の整数を示す。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
  10. (メタ)アクリル系重合体(I)の主鎖が、アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
  11. (メタ)アクリル系重合体(I)の主鎖が、アクリル酸エステル系重合体であることを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
  12. (メタ)アクリル系重合体(I)の主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の硬化性組成物。
  13. (メタ)アクリル系重合体(I)の主鎖が原子移動ラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする請求項12に記載の硬化性組成物。
  14. (メタ)アクリル系重合体(I)の架橋性シリル基が分子鎖末端にあることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の硬化性組成物。
  15. さらに、ポリエーテル系重合体(IV)を含有することを特徴とする請求項1〜14の何れかに記載の硬化性組成物。
  16. ポリエーテル系重合体(IV)の主鎖が、本質的にポリプロピレンオキサイドであることを特徴とする請求項15に記載の硬化性組成物。
  17. ポリエーテル系重合体(IV)が架橋性シリル基を平均して少なくとも1個有する重合体であることを特徴とする請求項15又は16に記載の硬化性組成物。
  18. さらに、炭酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1〜17の何れかに記載の硬化性組成物。
  19. 湿分を吸収することにより架橋硬化できるように一液型に梱包された請求項1〜18の何れかに記載の硬化性組成物。
  20. 湿分を吸収することにより架橋硬化できるように二液型に梱包された請求項1〜18の何れかに記載の硬化性組成物。
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