JP2010044334A - 電子機器及び光接続方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子機器の両筐体間を、摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない状態で光通信可能に接続できる電子機器を実現することを目的とする。
【解決手段】第一の筐体8と第二の筐体9とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器21であって、第一の筐体8の第一の光モジュール12と第二の筐体9の第二の光モジュール13とを光通信可能に接続するプラスチック光ファイバケーブル7を備え、プラスチック光ファイバケーブル7は、多芯プラスチック光ファイバ素線5と、該素線5を取り囲む被覆樹脂からなる被覆層6とからなり、被覆樹脂は、曲げ弾性率が10MPa以上200MPa以下の熱可塑性樹脂からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、第一の筐体と第二の筐体とを備えた電子機器に関するものであり、特に携帯電話、PDA、モバイルパソコンなどであって、第一の筐体と第二の筐体とが互いにスライドして開閉する電子機器及び電子機器の第一の筐体に内蔵された第一の光モジュールと第二の筐体に内蔵された第2の光モジュールとをプラスチック光ファイバケーブルを用いて光通信可能に接続する光接続方法に関する。
プラスチック光ファイバケーブルは、石英系光ファイバケーブルに比べ、可撓性に富み、且つ大口径で高開口数のものを製造することによって端面処理や接続が容易であることなどから、主に短距離の光信号伝送やセンサといった分野に使用されている。実用化されているプラスチック光ファイバケーブルとしては、芯を構成する芯樹脂としてポリメタクリル酸メチルを主体とした共重合体(ポリメチルメタクリレート系樹脂)、又はポリカーボネート樹脂等の透明度の高い樹脂を用い、鞘層を構成する鞘樹脂としてフッ化ビニリデン系共重合体、又はフッ化メタクリレート系共重合体を用いたプラスチック光ファイバ素線が広く使用されている。通常これらのプラスチック光ファイバ素線は、傷等による光学特性の劣化を防ぐために鞘層の外側にポリエチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリアミド等の被覆樹脂からなる被覆層を被覆したプラスチック光ファイバケーブルとして使用される。
近年、第一の筐体と第二の筐体とを備えた携帯電話などの電子機器において、両筐体をヒンジ構造部で接続し、さらに、第一の筐体と第二の筐体とをプラスチック光ファイバケーブルを用いて接続して両筐体の開閉動作や回転動作を伴う筐体間の信号接続用途に使用することが試みられている(特許文献1参照)。この種の電子機器、すなわち、ヒンジ構造部を有する電子機器では、芯の周囲に鞘層と海部とを順次形成した多芯構造であって軟らかい鞘樹脂または軟らかい海樹脂を使用したプラスチック光ファイバ素線と、被覆層として曲げ弾性率が比較的大きい熱可塑性樹脂からなるプラスチック光ファイバケーブルを使用することが既に提案されている(特許文献2参照)。一方で、上述のヒンジ構造部を有する電子機器とは別に、互いにスライドする第一の筐体と第二の筐体からなる電子機器が従来から知られている(例えば特許文献3参照)。
特開2003−244295号公報 特開2007−249111号公報 特開2002−300243号公報
特許文献2の実施例に記載のプラスチック光ファイバケーブルを用いて電子機器の筐体間を光通信可能に接続した場合、該ケーブルは、ヒンジ構造部を有する電子機器の開閉動作の繰り返しにはすぐれた耐久性を有する。しかしながら、開閉のために互いにスライド、すなわち摺りあわせ動作(摺動)する筐体間を該ケーブルで接続した場合、スライド動作の繰り返しに対する該ケーブルの耐久性については、改良の余地があることが判明した。
本発明は、第一の筐体と第二の筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において、摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない電子機器及び電子機器の両筐体間を、摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない状態で光通信可能に接続できる光接続方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を検討した結果、プラスチック光ファイバ素線として多芯構造であって、柔らかい樹脂で鞘層を構成した素線に、被覆層として曲げ弾性率の小さい熱可塑性樹脂を使用したプラスチック光ファイバケーブルによりスライド構造部を有する電子機器の筐体間を接続することで解決できることを見出し、本発明に至った。被覆層として曲げ弾性率の小さい熱可塑性樹脂を使用したプラスチック光ファイバケーブルは、前述のヒンジ構造部を有する電子機器の筐体間を接続する用途においては繰り返し耐久性に劣るものであった。そのため、このようなプラスチック光ファイバケーブルを用いてスライド構造部を有する電子機器の筐体間を接続するということは、当業者の一般的な見解としては考え難く、特に、繰り返し耐久性に優れた電子機器を実現できるということは予想外のことであった。
本発明は、第一の光モジュールを内蔵する第一の筐体と第二の光モジュールを内蔵する第二の筐体とを備え、第一の筐体と第二の筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器であって、第一の光モジュールと第二の光モジュールとを光通信可能に接続するプラスチック光ファイバケーブルを備え、プラスチック光ファイバケーブルは、多芯プラスチック光ファイバ素線と、該多芯プラスチック光ファイバ素線を取り囲む被覆樹脂からなる被覆層とからなり、多芯プラスチック光ファイバ素線は、横断面において透明な芯樹脂からなる7以上10000以下の芯、及び該芯それぞれを取り囲み前記芯樹脂よりも屈折率の低い透明な鞘樹脂からなる島部と、該島部を取り囲む海樹脂からなる海部とからなり、芯樹脂はポリメチルメタクリレート系樹脂からなり、鞘樹脂はショアD硬度25以上55以下のテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体からなり、前記海樹脂はビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとの共重合体からなり、被覆樹脂は、曲げ弾性率が10MPa以上200MPa以下の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
本発明によれば、第一の筐体と第二の筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において、摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない電子機器を実現することができる。
さらに、多芯プラスチック光ファイバ素線は、海部に取り囲まれた島部のうち、最も外側の島部と海部の最外周との距離が該多芯プラスチック光ファイバ素線の直径の1%以上4%以下であると好適である。該距離を該直径の4%より大きくすることも可能であるが、光ファイバとして機能する断面積が小さくなる。該距離を該直径の1%以上4%以下にすることにより、レーザ光が入射する部分は芯の充填率が高く、多芯プラスチック光ファイバ素線の周は滑らかになり、亀裂が入りにくくなり、より摺動に強い素線となる。
さらに、被覆樹脂は、ポリエチレンであると製造し易く好適である。
さらに、多芯プラスチック光ファイバ素線の外径は、0.20mm以上0.55mm以下であると好適である。多芯プラスチック光ファイバ素線の外径が0.20mm以上であると、素線に被覆層を形成するのが容易であり、0.55mm以下であると摺動に対する耐久性が良好である。
また、本発明は、第一の光モジュールを内蔵する第一の筐体と第二の光モジュールを内蔵する第ニの筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において、第一の光モジュールと第二の光モジュールとをプラスチック光ファイバケーブルを用いて光通信可能に接続する光接続方法であって、プラスチック光ファイバケーブルは、多芯プラスチック光ファイバ素線と、該多芯プラスチック光ファイバ素線を取り囲む被覆樹脂からなる被覆層とからなり、多芯プラスチック光ファイバ素線は、横断面において透明な芯樹脂からなる7以上10000以下の芯、及び該芯それぞれを取り囲み前記芯樹脂よりも屈折率の低い透明な鞘樹脂からなる島部と、該島部を取り囲む海樹脂からなる海部とからなり、芯樹脂はポリメチルメタクリレート系樹脂からなり、鞘樹脂はショアD硬度25以上55以下のテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体からなり、海樹脂はビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとの共重合体からなり、被覆樹脂は、曲げ弾性率が10MPa以上200MPa以下の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。本発明によれば、第一の筐体と第ニの筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において、両筐体間を、摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない状態で光通信可能に接続できる。
本発明によれば、第一の筐体と第二の筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において、摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない電子機器を実現できる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプラスチック光ファイバケーブルの断面を模式的に示す図である。
図1に示されるように、プラスチック光ファイバケーブル7は、芯1、鞘層2、島部3、海部4及び被覆層6を備えている。
芯1は、透明な芯樹脂からなる。該芯樹脂としては、透明性の観点からポリメチルメタクリレート系樹脂であることが好ましい。芯1の数は7以上10000以下が好ましく、37以上3000以下がより好ましい。芯1の数が7以上であれば、曲げた時の光ロスが少なく、10000以下であれば光結合ロスが少ない。
ここで、ポリメチルメタクリレート系樹脂とは、モノマー成分としてメタクリル酸メチルを80質量%以上含有する透明な重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体の他に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイミドからなる群から選択されるー成分以上とメタクリル酸メチルとの共重合体が好ましい。本実施形態に係るポリメチルメタクリレート系樹脂としては、メルトフローインデックスが、230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で、0.1g/10分〜45g/10分の範囲のものを好ましく使用することができる。
鞘層2は芯1を取り囲み、芯樹脂よりも屈折率の低い透明な鞘樹脂からなる。また、島部3は、芯1及び芯1を囲む鞘層2からなり、海部4は、7個〜10000個の島部3を囲んだ海樹脂からなる。多芯プラスチック光ファイバ素線5は、芯1及び鞘層2からなる島部3と海部4とで構成される。
上述の鞘層2と海部4との組合せにおいては、鞘樹脂がショアD硬度25以上55以下のテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体であり、海樹脂がビニリデンフロライドとテトラフルオロエチレンとの共重合体であることが好ましい。鞘樹脂は、テトラフロロエチレン28〜70モル%、ヘキサフロロプロピレン8〜22モル%、及びビニリデンフロライド20〜62モル%の共重合体であることがより好ましい。また、海樹脂は、ビニリデンフロライド65〜90モル%、及びテトラフルオロエチレン10〜35モル%の共重合体であることがより好ましい。鞘樹脂、及び海樹脂の組成を上述の範囲にすることによって、曲げによる光ロスが少なく、かつ耐熱性を有し、被覆層6との組み合わせで摺動に対する耐性を備えたプラスチック光ファイバケーブル7を実現できる。
多芯プラスチック光ファイバ素線5の横断面、すなわち多芯プラスチック光ファイバ素線5の軸線に直交する断面において、芯1の占める面積の比率は50%〜85%が好ましい。50%以上であれば透過する光量を有効に使用でき、85%を超えてしまうと鞘層2、及び海部4の形成が困難になる。
多芯プラスチック光ファイバ素線5を信号伝送に使用する場合、大切なことは、効率よく光を受光することである。そのためには、レーザ光が入射する部分は芯1の充填率が高くなるように整然と芯1を配置する必要がある。図1で示す例では、中央の1本の芯1の配置が安定するように6本の芯1で取り囲んで7個の芯1の構成(7芯)としている。本発明は、この配置に限定されず、例えば、7個の芯1の構成の外側を12本の芯1で同心円状に囲んだ19個の芯1の構成(19芯)とし、さらに外側を順次同心円状に取り囲んで37芯、61芯、91芯となるように構成し、横断面において最も外側の芯1が六角形を形成するように芯1を配置するのがよい。芯1の配置は芯1の本数が大きくなるほど円状に近づいていく。
本実施形態では、多芯プラスチック光ファイバ素線5の島部3の最外周と海部4の最外周との距離L2、すなわち海部4に取り囲まれた島部3のうち、最も外側の島部3と海部4の最外周となる外周面との距離L2が、多芯プラスチック光ファイバ素線5の直径L1の1%以上4%以下の範囲に含まれている。この距離L2は、多芯プラスチック光ファイバ素線5の横断面において最外周にある島部3のそれぞれ(図1においては6個)について芯1の重心を通る直線を鞘層2及び海部4の境界と海部4及び被覆層6の境界で切り取った線分のうち最も短いものの長さで定義するものとする。
多芯プラスチック光ファイバ素線5を紡糸するための複合紡糸ダイは、芯樹脂供給部、鞘樹脂供給部、及び海樹脂供給部からなる樹脂供給部が、それぞれ芯1と同一の数だけ存在している。すべての海樹脂供給部の断面積を同じに設定したダイで、芯1、鞘層2、海部4の3層を同時に紡糸した場合、島部3は海部4にほぼ均一な分布となる。
多芯プラスチック光ファイバ素線5の横断面における島部3の最外周と海部の最外周との距離L2を長くした多芯プラスチック光ファイバ素線5を紡糸するには、一例として、最外周の海樹脂供給部の断面積をそれより内側の海樹脂供給部の断面積の2〜4倍とした複合紡糸ダイとし、押し出し圧力を制御しながら紡糸することで、最も外側の島部3と海部4の最外周との距離L2を多芯プラスチック光ファイバ素線5の直径L1の1%以上4%以下に制御することができる。
距離L2を多芯プラスチック光ファイバ素線5の直径L1の4%より大きくすることも可能であるが、光ファイバとして機能する断面積が小さくなる。該距離L2を多芯プラスチック光ファイバ素線5の直径L1の1%以上、4%以下にすることにより、レーザ光が入射する部分は芯1の充填率が高く、多芯プラスチック光ファイバ素線5の周は滑らかになり、亀裂が入りにくくなり、より摺動に強い素線となる。
被覆層6に用いられる被覆樹脂としては、曲げ弾性率が10MPa以上200MPa以下の熱可塑性樹脂が好ましい。ここに言う曲げ弾性率はASTM D−790に従って測定した値である。10MPaは通常使用される熱可塑性樹脂の曲げ弾性率のほぼ下限である。また、曲げ弾性率が200MPaより小さいと、小さい曲げ半径で摺動させることが可能となる。具体的な被覆樹脂としては、フッ化ビニリデン共重合体の一部、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が好ましい例としてあげられる。特に、低密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体において、曲げ弾性率が10MPa〜200MPaのものが多く実施化し易い。なお、被覆層6に用いる樹脂組成物には、必要に応じてワックスなどの添加物を微量添加しても良い。被覆層6の厚みは、50μm以上、300μm以下が好ましい。50μm以上であると被覆層6による保護効果が十分に期待でき、300μm以下であると摺動に対する耐久性が良好である。
多芯プラスチック光ファイバ素線5の外径は、0.20mm以上0.55mm以下であることが好ましい。多芯プラスチック光ファイバ素線5の外径が0.20mm以上であると、多芯プラスチック光ファイバ素線5に被覆層6を形成するのが容易であり、0.55mm以下であると摺動に対する耐久性が良好である。
プラスチック光ファイバケーブル7の製造にあたって、多芯プラスチック光ファイバ素線5の外側に被覆層6を被覆する方法としては、クロスヘッドダイにより熱溶融した被覆樹脂を多芯プラスチック光ファイバ素線5に被覆して形成する方法を好ましく使用することができる。
次に、図2〜図4を参照して、本実施形態に係る電子機器について説明する。図2は、スライド可能な第一の筐体と第二の筐体とを備えた携帯電子機器において、閉じた状態の断面を模式的に示す図であり、図3は、スライド可能な第一の筐体と第二の筐体とを備えた携帯電子機器において、開いた状態の断面を模式的に示す図である。また、図4は、完全に開いた状態の携帯電子機器の斜視図である。
本実施形態に係る電子機器は、例えば、携帯電話、PDA、モバイルパソコンなどである。以下、携帯電話などの携帯電子機器21を例にして説明する。携帯電子機器21は、第一の筐体8及び第二の筐体9を備えている。第一の筐体8及び第二の筐体9の一方には、レールや縦溝などのガイド部が設けられ、他方には、ガイド部に係り合った状態で直線移動可能なスライダ部が設けられている。ガイド部及びスライダ部によってスライド構造部が構成される。
第一の筐体8と第二の筐体9とは、スライド構造部を介して互いにスライド移動可能に接続されており、第一の筐体8及び第二の筐体9を互いにスライドさせることで両筐体8,9の重なる部分は変化する。重なる部分が最も多い状態、すなわち第一の筐体8と第二の筐体9との略全部が重なった状態において携帯電子機器21は閉じた状態となる。また、重なる部分が最も少ない状態において携帯電子機器21は開いた状態となる。
第一の筐体8には、第一の光モジュール12が内蔵されており、第二の筐体9には、第二の光モジュール13が内蔵されている。第一の光モジュール12及び第二の光モジュール13のうち、一方は、レーザ光またはLED等の光発光素子を含む発光モジュールであり、他方は、フォトダイオード等の光受光素子を含む受光モジュールからなる。本実施形態では、第一の光モジュール12は受光モジュールであり、第二の光モジュール13は発光モジュールである。
本実施形態に係る光接続方法では、上述のプラスチック光ファイバケーブル7を用いて第一の光モジュール12と第二の光モジュール13とを光通信可能に接続している。具体的には、第一の筐体8と第二の筐体9とには、摺動面を形成する双方の壁に連通孔8a,9aが形成されている。プラスチック光ファイバケーブル7は、連通孔8a,9aを通って一端が第一の光モジュール12に接続され、他端が第二の光モジュール13に接続されている。
プラスチック光ファイバケーブル7を用いることで、携帯電子機器21の筐体8,9間がスライド構造部によって開閉自在に接続されている場合であっても、携帯電子機器21の光伝送を好適に実現できる。本実施形態に係る携帯電子機器21や、その他のPDA、モバイルパソコンなどでは、電気信号を伝送する場合はノイズ防止のために電線の周囲をシールドで被覆する必要がある。しかしながら、これらの電子機器において、プラスチック光ファイバケーブル7を用いた光接続方法を採用することで、光信号を伝送する場合に高速信号であってもシールド不要となり、細線にすることができる。
携帯電子機器21について、より具体的に説明する。第一の筐体8は上部筐体であり、液晶ディスプレイなどの表示部23が設けられている。第一の筐体8の内部には、表示部23の駆動回路などが実装された第一基板10が固定されている。第二の筐体9は下部筐体であり、操作パネルなどの操作部25が設けられている。第二の筐体9の内部には操作部25の制御回路などが実装された第二基板11が固定されている。第一基板10上には、第一の光モジュール12が実装されており、第二基板11上には、第二の光モジュール13が実装されている。
第一の筐体(上部筐体)8と第二の筐体(下部筐体)9とは、スライド構造部によってスライド可能に接続されている。該スライド構造部によって、第一の筐体8と第二の筐体9とは、互いの相対位置が可変となるように動作をする。第一の筐体8の表示部23に接続された第一の光モジュール(受光モジュール)12と、第二の筐体9の第二基板(制御基板)11上の第二の光モジュール(発光モジュール)13とは、プラスチック光ファイバケーブル7によって光通信可能に接続されており、その結果として筐体8,9間の摺動に強く、しかも曲げによる光ロスが少ない携帯電子機器21を実現することができる。
[実施例1]
芯樹脂としてポリメチルメタクリレート、鞘樹脂としてテトラフロロエチレン32モル%とヘキサフロロプロピレン11モル%とビニリデンフロライド57モル%の共重合体(ショアD硬度41)、海樹脂としてビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%の共重合体(ショアD硬度59)を使用し、1本のファイバ中の芯数は37であるプラスチック光ファイバ素線を製造した。
すべての海樹脂供給部の断面積を同じに設定した複合紡糸ダイにより3層同時に240℃で紡糸し、2.0倍に延伸熱処理して、プラスチック光ファイバ素線の外径(海径)300μm(断面における芯の占める面積の比率65%、鞘層の厚み2μm、最も外側の島部と海部の最外周との距離が多芯プラスチック光ファイバ素線の直径の0.7%)の素線にした。
次いで、被覆層として、曲げ弾性率30MPaの低密度ポリエチレンでクロスヘッドダイにより、被覆温度130℃で上記素線に被覆し、外径が0.6mmのプラスチック光ファイバケーブルを形成した。
上記光プラスチック光ファイバケーブルについて、摺動試験を実施した。摺動試験は該光ファイバケーブルの長さを2mとって、摺動箇所を中間点にした。プラスチック光ファイバケーブルに、光パワーメーターHAKTRONICS社のphotom205を用いて、片側から657nmの赤色LED光源を入射し、逆側より出射された光パワーをモニターしながら、該光ファイバケーブルを信越エンジニアリング社製FPC屈曲試験機SEK−31C4Sを使用し、屈曲半径2mm、ストローク15mm、サイクルタイム120回/分で摺動試験を実施した。10万回摺動試験での光量変化は0.1dBであった。また、屈曲半径を2mmに設定した時の出射光量は、曲率半径100mmの場合と差異はなく、曲げによる光ロスは少ないものであった。
[実施例2]
実施例1と同じプラスチック光ファイバ素線に、被覆層として、曲げ弾性率140MPaの低密度ポリエチレンをクロスヘッドダイにより、被覆温度130℃で上記素線に被覆し、外径が0.6mmのプラスチック光ファイバケーブルを形成した。
上記プラスチック光ファイバケーブルについて、摺動試験を実施した。摺動試験は該光ファイバケーブルの長さを2mとって、摺動箇所を中間点にした。プラスチック光ファイバケーブルに、光パワーメーターHAKTRONICS社のphotom205を用いて、片側から657nmの赤色LED光源を入射し、逆側より出射された光パワーをモニターしながら、該プラスチック光ファイバケーブルを信越エンジニアリング社製FPC屈曲試験機SEK−31C4Sを使用し、屈曲半径2mm、ストローク15mm、サイクルタイム120回/分で摺動試験を実施した。10万回摺動試験での光量変化は0.2dBであった。また、屈曲半径を2mmに設定した時の出射光量は、曲率半径100mmの場合と差異はなく、曲げによる光ロスは少ないものであった。
[実施例3]
芯樹脂、鞘樹脂、海樹脂に実施例1と同じ樹脂を使用し、1本のプラスチック光ファイバ中の芯数は37であるプラスチック光ファイバ素線を製造した。最外周の海樹脂供給部の断面積をそれより内側の海樹脂供給部の断面積の3倍とした複合紡糸ダイによって3層同時に240℃で紡糸し、2.0倍に延伸熱処理して、プラスチック光ファイバ素線の外径(海径)300μm(横断面における芯の占める面積の比率65%、鞘層の厚み2μm、最も外側の島部と海部の最外周との距離が多芯プラスチック光ファイバ素線の直径の2.3%)の素線にした。
次いで、被覆層として、曲げ弾性率30MPaの低密度ポリエチレンでクロスヘッドダイにより、被覆温度130℃で上記素線に被覆し、外径が0.6mmのプラスチック光ファイバケーブルを形成した。
上記プラスチック光ファイバケーブルについて、摺動試験を実施した。摺動試験は該プラスチック光ファイバケーブルの長さを2mとって、摺動箇所を中間点にした。プラスチック光ファイバケーブルに、光パワーメーターHAKTRONICS社のphotom205を用いて、片側から657nmの赤色LED光源を入射し、逆側より出射された光パワーをモニターしながら、該プラスチック光ファイバケーブルを信越エンジニアリング社製FPC屈曲試験機SEK−31C4Sを使用し、屈曲半径2mm、ストローク15mm、サイクルタイム120回/分で摺動試験を実施した。10万回摺動試験での光量変化はなかった。また、屈曲半径を2mmに設定した時の出射光量は、曲率半径100mmの場合と差異はなく、曲げによる光ロスは少ないものであった。
[比較例1]
実施例1と同じプラスチック光ファイバ素線に、被覆層として、曲げ弾性率1000MPaのナイロン12をクロスヘッドダイにより、被覆温度210℃で上記素線に被覆し、外径が0.6mmのプラスチック光ファイバケーブルを形成した。
上記光プラスチック光ファイバケーブルについて、摺動試験を実施した。摺動試験は該プラスチック光ファイバケーブルの長さを2mとって、摺動箇所を中間点にした。プラスチック光ファイバケーブルに、光パワーメーターHAKTRONICS社のphotom205を用いて、片側から657nmの赤色LED光源を入射し、逆側より出射された光パワーをモニターしながら、該プラスチック光ファイバケーブルを信越エンジニアリング社製FPC屈曲試験機SEK−31C4Sを使用し、屈曲半径2mm、ストローク15mm、サイクルタイム120回/分で摺動試験を実施した。試験直後から徐々に光量が低下しはじめ、2万7千回で0.5dB低下した。
[比較例2]
実施例1と同じプラスチック光ファイバ素線に、被覆層として、曲げ弾性率600MPaのナイロン12をクロスヘッドダイにより、被覆温度210℃で上記素線に被覆し、外径が0.6mmのプラスチック光ファイバケーブルを形成した。
上記光プラスチック光ファイバケーブルについて、摺動試験を実施した。摺動試験は該光ファイバケーブルの長さを2mとって、摺動箇所を中間点にした。プラスチック光ファイバケーブルに、光パワーメーターHAKTRONICS社のphotom205を用いて、片側から657nmの赤色LED光源を入射し、逆側より出射された光パワーをモニターしながら、該光ファイバケーブルを信越エンジニアリング社製FPC屈曲試験機SEK−31C4Sを使用し、屈曲半径2mm、ストローク15mm、サイクルタイム120回/分で摺動試験を実施した。7万回で0.5dB低下した。
本発明は、スライド構造部を有する第一の筐体と第二の筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において好適に使用できる。
本発明の実施形態に係るプラスチック光ファイバの横断面を模式的に示す図である。 スライド可能な第一の筐体と第二の筐体とを備えた携帯電子機器において、閉じた状態の断面を模式的に示す図である。 スライド可能な第一の筐体と第二の筐体とを備えた携帯電子機器において、開いた状態の断面を模式的に示す図である。 開いた状態の携帯電子機器の斜視図である。
符号の説明
1…芯、2…鞘層、3…島部、4…海部、5…多芯プラスチック光ファイバ素線、6…被覆層、7…プラスチック光ファイバケーブル、8…第一の筐体、9…第二の筐体、12…第一の光モジュール、13…第二の光モジュール、21…携帯電子機器(電子機器)、L1…多芯プラスチック光ファイバ素線の直径、L2…最も外側の島部と海部の最外周との距離。

Claims (5)

  1. 第一の光モジュールを内蔵する第一の筐体と第二の光モジュールを内蔵する第二の筐体とを備え、前記第一の筐体と前記第二の筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器であって、
    前記第一の光モジュールと前記第二の光モジュールとを光通信可能に接続するプラスチック光ファイバケーブルを備え、
    前記プラスチック光ファイバケーブルは、多芯プラスチック光ファイバ素線と、該多芯プラスチック光ファイバ素線を取り囲む被覆樹脂からなる被覆層とからなり、
    前記多芯プラスチック光ファイバ素線は、横断面において透明な芯樹脂からなる7以上10000以下の芯、及び該芯それぞれを取り囲み前記芯樹脂よりも屈折率の低い透明な鞘樹脂からなる島部と、該島部を取り囲む海樹脂からなる海部とからなり、
    前記芯樹脂はポリメチルメタクリレート系樹脂からなり、前記鞘樹脂はショアD硬度25以上55以下のテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体からなり、前記海樹脂はビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとの共重合体からなり、
    前記被覆樹脂は、曲げ弾性率が10MPa以上200MPa以下の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする電子機器。
  2. 前記多芯プラスチック光ファイバ素線は、前記海部に取り囲まれた前記島部のうち、最も外側の島部と海部の最外周との距離が該多芯プラスチック光ファイバ素線の直径の1%以上4%以下であることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
  3. 前記被覆樹脂は、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2記載の電子機器。
  4. 前記多芯プラスチック光ファイバ素線の外径は、0.20mm以上0.55mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電子機器。
  5. 第一の光モジュールを内蔵する第一の筐体と第二の光モジュールを内蔵する第ニの筐体とが重なり合った状態でスライド可能な電子機器において、前記第一の光モジュールと前記第二の光モジュールとをプラスチック光ファイバケーブルを用いて光通信可能に接続する光接続方法であって、
    前記プラスチック光ファイバケーブルは、多芯プラスチック光ファイバ素線と、該多芯プラスチック光ファイバ素線を取り囲む被覆樹脂からなる被覆層とからなり、
    前記多芯プラスチック光ファイバ素線は、横断面において透明な芯樹脂からなる7以上10000以下の芯、及び該芯それぞれを取り囲み前記芯樹脂よりも屈折率の低い透明な鞘樹脂からなる島部と、該島部を取り囲む海樹脂からなる海部とからなり、
    前記芯樹脂はポリメチルメタクリレート系樹脂からなり、前記鞘樹脂はショアD硬度25以上55以下のテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体からなり、前記海樹脂はビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとの共重合体からなり、
    前記被覆樹脂は、曲げ弾性率が10MPa以上200MPa以下の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする光接続方法。
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