JP2010043168A - 表面処理金属材及び金属表面処理剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】クロメート処理に代替可能な表面処理剤として、ポリウレタン樹脂の特性を最大限に発揮するポリウレタン樹脂構造と、添加剤を見出すことで、耐食性と加工後耐食性、上塗り塗装密着性、耐アルカリ性、耐溶剤性の諸課題を解決する金属表面処理剤及び表面処理金属材を提供する。
【解決手段】分子内に一般式[1](式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す)で表される官能基(a)を含有するポリウレタン樹脂と酸化珪素を含み、前記ポリウレタン樹脂が分子内に特定の官能基(b)及びウレア結合をさらに含有し、かつ前記官能基(a)、(b)及び酸化珪素の総量が特定の範囲内にあり、また、特定の架橋剤を添加している金属表面処理剤、及び前記処理剤を金属材の表面に塗布し焼付け乾燥することによって得られる表面処理金属材である。
Figure 2010043168

【選択図】なし

Description

本発明は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、かつ極めて高い耐食性と加工後耐食性、及び良好な上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性を有する表面処理金属材及び金属表面処理剤に関するものである。
家庭電化製品、自動車、建築材料等の各分野において、防錆性あるいは上層との塗料密着性の付与を目的として、鋼板や表面処理鋼板にクロメート処理を施すのが一般的である。しかし、通常、クロムメート処理皮膜は環境負荷性の高い6価クロムを含有することから、近年、この6価クロムフリー(以後、クロメートフリーと呼ぶ)化に対する要望が高まっており、一部では既に全廃に向けて動き出している業界もある。
これらの流れに対し、クロムを含まない表面処理方法が各種考案されている。
無機化合物を主体とした皮膜に関して、例えば、特許文献1には、正燐酸、アルミ系ゾル、金属系ヒドロゾルを含む処理液で処理する方法が、特許文献2には、水ガラスや珪酸ソーダとピラゾールで処理する方法が、特許文献3には、シリケートコーティングを行う方法がそれぞれ開示されている。
しかし、このような無機系の皮膜は、加工成型時に疵が発生し易く、かつ上塗り塗料との密着性に劣り、その用途が限定されるという問題がある。また、例えば、塩化ナトリウムに対する耐食性についても、未だクロメート処理に対し十分満足する性能は得られていない。
これに対し、有機皮膜を主体としたクロメート皮膜に代替可能な皮膜も幾つか検討されている。有機化合物を主体とする皮膜は、皮膜による腐食環境の遮断効果に加え、成形性に優れる特徴を有し、クロメートフリー皮膜として有望である。中でも、皮膜としての強靭な性質を有し、また密着性も良好なポリウレタン樹脂を主体とした皮膜は、クロメートフリー皮膜として特に有望である。
これまで、ポリウレタン樹脂をベースにした技術がいくつか開示されている。例えば、特許文献4には、加工後の皮膜密着性に優れる例として、ポリウレタン樹脂及び二酸化珪素の複合物質又は混合物質を主成分とする皮膜層を設ける技術が開示されている。また、特許文献5には、電着性及び溶接性に優れた皮膜の例として、ポリウレタン樹脂にコロイダルシリカ又はシランカップリング剤、及び特定の金属燐酸塩を含有する樹脂皮膜を設ける技術が、特許文献6には、金属燐酸塩に水性ポリウレタン樹脂及びオキシカルボン酸化合物を混合した処理液の技術がそれぞれ開示されている。
しかし、このようなポリウレタン樹脂をベースにした皮膜の使用が、さまざまな用途へ広がるにつれ、要求特性も厳格化しつつあり、特許文献4〜6に記載された技術の場合、記載してあるポリウレタン樹脂の内容では、樹脂構造に対する検討が十分になされておらず、特に加工後耐食性、耐溶剤性、耐アルカリ性等、厳格化した性能を確保することは困難となる懸念があり、かつ皮膜形成能が十分に得られず耐溶剤性が低下する懸念がある。
また、防錆性付与を目的とした例として、特許文献7では、親水性成分を導入したポリウレタン樹脂にシランカップリング剤を添加した皮膜の技術、特許文献8では、水性ポリウレタン樹脂と水性ポリオレフィン樹脂の混合物に水性シリカ、シランカップリング剤、チオカルボニル基含有化合物、燐酸イオンを混合した防錆コーティング剤の技術、特許文献9に、1種類以上のシランカップリング又はその部分加水分解縮合物と、加水分解性シリル基又はシラノール基を含有したポリウレタン樹脂を含む有機無機複合樹脂水分散液を主成分とする水性塗料組成物の技術、特許文献10に、水性ポリウレタン樹脂とシランカップリング剤との反応により形成された架橋樹脂マトリックス及び無機防錆剤を含む皮膜の技術が開示されている。
しかしながら、特許文献7〜10に記載された技術も、特許文献4と同様に、樹脂の構造に関する検討が十分でないため、厳格化した性能を確保することが困難となる懸念がある。また、特許文献7〜10の技術ではシランカップリング剤を前記処理剤中に混合しているため、処理剤の反応性が不安定で、製造条件や製造後の経時、環境の影響によっては性能がばらつく懸念があった。また、いずれも安定して十分な架橋反応が望めないため、汚れを溶剤で拭き取る場合に必要な耐溶剤性が劣る懸念がある、といった問題点を有していた。
特許文献11〜13に、分子内にシラノール基及び/又はシロキサン結合を含有したポリウレタン樹脂に架橋剤を添加した皮膜の技術が開示されている。しかしながら、その技術は、処理剤の反応性は安定であるが、耐食性、耐溶剤性、耐アルカリ性やその他特性に配慮した前記シラノール基及び/又はシロキサン結合の構造設計、ポリウレタン樹脂構造の設計、架橋剤や防錆剤を始めとする添加剤の設計がなされていないため、防錆皮膜として性能を十分に発揮しない懸念がある。
特公昭53−47774号公報 特公昭58−31390号公報 特開平4−293789号公報 特公平6−7950号公報 特公平6−71579号公報 特開2001−181855号公報 特開2001−59184号公報 特開2001−164182号公報 特開2003−147266号公報 特開2005−281863号公報 特開2007−075777号公報 特開2007−038652号公報 特開2008−025023号公報
そこで、本発明は、クロメート処理に代替可能な表面処理剤の成分としてポリウレタン樹脂に着目し、その特性を最大限に発揮するポリウレタン樹脂構造と添加剤を見出すことで、環境負荷の高い6価クロムを含まず、前記耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性等の諸課題を解決し、実環境での使用に十分耐えうる金属表面処理剤を提供し、さらにその処理剤を塗布し、乾燥することによって得られる表面処理金属材を提供することを目的とする。
このような問題に鑑み、本発明者らは、ポリウレタン樹脂構造と添加剤が金属表面処理剤の上記耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性に及ぼす影響を詳細に検討した。
その結果、分子内に下記一般式[1]で表される官能基(a)を含有したポリウレタン樹脂と、酸化珪素とを混合して金属表面処理剤を構成することで、実用的な環境においてゲル化のない安定な金属表面処理剤となり、その処理剤を焼付け乾燥することで良好な架橋反応が得られ、強靭な皮膜を形成することができ、優れた耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性を発揮する表面処理金属材が得られることを見出した。
Figure 2010043168
(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
官能基(a)に含まれるアルコキシ基又は水酸基に起因して、複数の官能基(a)同士は焼付け乾燥過程で縮合し(シロキサン結合を形成し)、皮膜中に架橋構造を付与することが可能である。それにより、樹脂の架橋密度を高めるのみならず、皮膜の造膜性をも向上させることが可能であり、皮膜の防錆性(酸素、水等の腐食因子の遮断効果)、耐アルカリ性及び耐溶剤性等の諸性能を向上させることができる。
同様に酸化珪素の表面水酸基と、官能基(a)に含まれるアルコキシ基又は水酸基とがシロキサン結合を形成し、皮膜の架橋構造をさらに効率よく付与させることが可能で、耐食性や密着性を高めることができる。
加えて、酸化珪素を添加することで、皮膜自身の強靭性を高めることも可能であり、皮膜の耐溶剤性や耐アルカリ性を向上させることができる。
さらに、下地金属の表面水酸基と、官能基(a)に含まれるアルコキシ基又は水酸基とが結合を形成し、皮膜と下地金属材との密着性向上効果も得られる。
また、ポリウレタン樹脂の分子内に官能基(a)を含有させることで、水中におけるエマルジョンの水分散性を向上し、実用的な環境においてゲル化のない安定な金属表面処理剤にさせることが可能である。アルコキシ基又は水酸基を3つ含有する官能基(a)は、前記複数の官能基(a)同士のシロキサン結合、酸化珪素の表面水酸基とのシロキサン結合、下地金属の表面水酸基との結合から選ばれるいずれかの結合を最大で3つ形成でき、前記結合の反応速度にも優れ、水分散性にも最良な構造である。
また、上記ポリウレタン樹脂の分子内に下記一般式[2]で表される官能基(b)をさらに含有させることで、諸性能がさらに向上し、特に、高い処理剤の安定性と金属材の加工後耐食性が得られることを見出した。
Figure 2010043168
(式中、R4は水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基、R5及びR6は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
官能基(b)も官能基(a)同様、前記複数の官能基(a)同士のシロキサン結合、酸化珪素の表面水酸基とのシロキサン結合、下地金属の表面水酸基との結合から選ばれるいずれかの結合を形成し、水分散性も向上することで、金属材の耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性をさらに向上する。特に官能基(b)は、含有する一価の有機残基に起因した立体障害を生じて、官能基(a)に比べて前記結合を形成する反応がゆっくりと進行するため、処理剤を経時させても優れた安定性を確保でき、また、架橋反応後も比較的柔軟性に富み、皮膜の加工後耐食性を向上させることができる。
さらに、ポリウレタン樹脂が分子内に含有する官能基(a)の量、官能基(b)の量、酸化珪素の量の総量と、ウレア結合の量、ウレタン結合の量の総量とをそれぞれ適切な量に設計することで、耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性に優れる強靭さと、金属材や上塗り塗料に対する密着力と、加工後でもそれらを備えたバランスの良好な皮膜を得ることが可能である。
また、金属表面処理剤の添加剤として有機チタネートを導入することで、前期官能基(a)、(b)又は酸化珪素に由来した前記架橋反応に加え、さらに架橋反応を生じさせることや、前記架橋反応の速度を速めるができ、より低い焼付け温度で皮膜形成を行うことができ、耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性のすべてにおいて良好な皮膜を得ることが可能である。
また、ポリウレタン樹脂を水中に分散させるために、分子内にさらにカルボキシル基を適当量含有させ、水分散時にある特定の中和剤を用いて自己乳化させると共に、添加剤として、さらに特定の架橋剤やある比率でポリオレフィン樹脂を含有させることで得られる金属表面処理剤を特定の鋼板に塗布し、乾燥することで形成される皮膜を有する表面処理金属材が、極めて高い耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐アルカリ性、耐溶剤性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の主旨するところは、以下の通りである。
(1) 分子内に下記一般式[1]で表される官能基(a)を含有するポリウレタン樹脂と、酸化珪素を含むことを特徴とする金属表面処理剤。
Figure 2010043168
(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
(2) 前記ポリウレタン樹脂が、分子内に下記一般式[2]で表される官能基(b)をさらに含むことを特徴とする(1)に記載の金属表面処理剤。
Figure 2010043168
(式中、R4は水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基、R5及びR6は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
(3) 前記官能基(a)に由来する珪素、前記官能基(b)に由来する珪素及び前記酸化珪素に由来する珪素の総量が、不揮発固形分の全質量に対し下記数式で表される範囲にあることを特徴とする、(1)または(2)に記載の金属表面処理剤。
1.6質量%≦((Sa+Sb+Sc)/S)×100≦25質量%
ここで、S :不揮発固形分の全質量
Sa:官能基(a)に由来する珪素の質量
Sb:官能基(b)に由来する珪素の質量
Sc:酸化珪素に由来する珪素の質量
(4) 前記ポリウレタン樹脂が、分子内にウレア結合を含有し、かつ、前記ウレア結合に由来する窒素及びウレタン結合に由来する窒素の総量が、前記ポリウレタン樹脂の不揮発固形分の質量に対し、下記数式で表される範囲にあることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の金属表面処理剤。
0.1質量%≦(Ta+Tb)/T)×100≦10質量%
ここで、T :ポリウレタン樹脂の不揮発固形分の質量
Ta:ウレア結合(―NH―CO―NH―)を形成する窒素の質量
Tb:ウレタン結合(―NH−CO−O−)を形成する窒素の質量
(5) 前記ポリウレタン樹脂の架橋剤として、有機チタネート化合物を含有することを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の金属表面処理剤。
(6) 前記ポリウレタン樹脂が水分散性又は水溶解性であり、分子内にカルボキシル基を含有することを特徴とする、(1)から(5)のいずれかに記載の金属表面処理剤。
(7) 前記ポリウレタン樹脂の酸当量が1000〜3000であることを特徴とする、(6)に記載の金属表面処理剤。
(8) 前記ポリウレタン樹脂の水分散時の中和剤の沸点が150℃以下であることを特徴とする、(6)または(7)に記載の金属表面処理剤。
(9) 前記ポリウレタン樹脂の水分散時の中和剤は、アルキルアミン、アルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、(6)から(8)のいずれかに記載の金属表面処理剤。
(10) 前記ポリウレタン樹脂の架橋剤として、さらにカルボジイミド化合物又はオキサゾリン基含有化合物を含むことを特徴とする、(6)から(9)のいずれかに記載の金属表面処理剤。
(11) さらに、ポリオレフィン樹脂を、不揮発固形分の総量に対し5質量%以上50質量%以下含有することを特徴とする、(1)から(10)のいずれかに記載の金属表面処理剤。
(12) 金属材の表面に、(1)から(11)のいずれかに記載の金属表面処理剤を塗布し、乾燥することによって皮膜を形成することを特徴とする金属材の表面処理方法。
(13) 請求項(12)に記載の表面処理方法を用いて形成された皮膜を有することを特徴とする表面処理金属材。
(14) 金属材が亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニウム系めっき鋼板であることを特徴とする、(13)に記載の表面処理金属材。
本発明によれば、環境負荷の高い6価クロムを全く使用せず、かつ性能的にも従来クロメート代替可能な性能を兼備した皮膜を得るための金属表面処理剤を提供することができる。従って、本発明は今後の環境対応の処理剤として、非常に有望であり、各産業分野への寄与も大きい。
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の金属表面処理剤は、ポリウレタン樹脂と酸化珪素とを含み、ポリウレタン樹脂は、分子内に下記一般式[1]で表される官能基(a)を含有することを特徴とする。
Figure 2010043168
(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
上記ポリウレタン樹脂は、分子内に少なくとも1個以上の官能基(a)を有する活性水素基含有化合物(A)とポリウレタンプレポリマーとを反応させ、その後、水に分散もしくは溶解し、加水分解することにより形成することができる。ポリウレタンプレポリマーは、1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物(C)と、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物(D)とを反応させることにより得ることができる。
あるいは、分子内に少なくとも1個以上の官能基(a)を有する活性水素基含有化合物(A)と、1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物(C)と、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物(D)とを同時に反応させても良い。
上記分子内に少なくとも1個以上の官能基(a)を有する活性水素基含有化合物(A)としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、皮膜形成に効果的に寄与するという点で、ポリウレタン樹脂を構成する分子の間にシラノール基を導入するのが望ましく、2個以上の活性水素基を含有する化合物が好ましい。
また、上記ポリウレタン樹脂は、分子内に下記一般式[2]で表される官能基(b)をさらに含有させることで、処理剤の安定性をより高め、焼付け乾燥時に架橋反応をさらに形成することで架橋密度を高くして、耐食性や加工後耐食性、耐溶剤性、耐アルカリ性を向上させることができる。
Figure 2010043168
(式中、R4は水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基、R5及びR6は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
官能基(b)を含有させるには、分子内に1個以上の官能基(b)を有する活性水素基含有化合物(B)を、上記分子内に少なくとも1個以上の官能基(a)を有する活性水素基含有化合物(A)と上記ポリウレタンプレポリマーとの反応時に共重合させることにより得ることができる。あるいは、上記分子内に少なくとも1個以上の官能基(b)を有する活性水素基含有化合物(B)と、上記分子内に少なくとも1個以上の官能基(a)を有する活性水素基含有化合物(A)と、1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物(C)と、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物(D)とを同時に反応させても良い。
上記分子内に少なくとも1個以上の官能基(b)を有する活性水素基含有化合物(B)としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシシラン等が挙げられるが、皮膜形成に効果的に寄与するという点で、ポリウレタン樹脂を構成する分子の間にシラノール基を導入するのが望ましく、2個以上の活性水素基を含有する化合物が好ましい。
上記ポリウレタン樹脂の分子内に含有させる官能基(a)および(b)の1種または2種の総量は、ポリウレタン樹脂に優れた架橋反応性と性能を与えるため、ポリウレタン樹脂の全不揮発固形分に対し、珪素換算で0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
すなわち、官能基(a)に由来する珪素の質量Sa、前記官能基(b)に由来する珪素の質量Sbの総量が、不揮発固形分の全質量Sに対し下記数式で表される範囲にあるようにするのが好ましい。
0.1質量%≦((Sa+Sb)/S)×100≦5質量%
この式の値が、0.1質量%未満だと適切に架橋反応に寄与しないため効果が低く、5質量%超では効果が飽和すると共に表面処理剤の安定性が低下することがある。さらに好ましい範囲は0.5質量%以上3質量%以下である。
上記1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物(C)としては、例えば、活性水素基を有する化合物として、アミノ基、水酸基、メルカプト基を有する化合物が挙げられるが、イソシアネート基との反応速度、及び塗布後の機械的物性を考慮すると、水酸基を有する化合物が、反応速度が速く好ましい。
また、上記活性水素基を有する化合物の官能基の数は、塗膜の機械的物性を良好に保つと言う点から2〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。
また、上記活性水素基を有する化合物の分子量は、最終的な塗膜性能に与えるウレタン結合の含有量、及び製造上の作業性の点から200〜10000が好ましく、300〜5000が特に好ましい。
上記活性水素基を有する化合物(C)としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物が挙げられる。
また、上記1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物(D)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネートや、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネートや、例えば、m−キシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1、4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートや、例えば、トリフェニルメタン−4,4’−4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネートや、例えば、4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等のテトライソシアネートを含むポリイソシアネート単量体や、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビュウレット、アロファネート、カルボジイミドと、上記ポリイソシアネート単量体とから得られるポリイソシアネート誘導体や、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等、分子量200未満の低分子量ポリオールの上記ポリイソシアネート単量体への付加体や、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等の上記ポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。
また、本発明では、上記ポリウレタン樹脂に鎖延長剤を所定量反応させることで高分子化を図り、耐食性と加工後耐食性、上塗り塗料密着性、耐溶剤性、耐アルカリ性をさらに高めることができる。
上記鎖延長剤としては、例えば、公知のポリアミン化合物等が使用される。このようなポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンシクロヘキサンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類、ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアミノ基と水酸基を持つ化合物、ヒドラジン類、酸ヒドラジド類等が挙げられる。これらのポリアミン化合物は、単独で、又は2種類以上の混合物で使用される。
これら鎖延長剤を、分子内に少なくとも1個の官能基(a)を有する活性水素基含有化合物(A)と、分子内に1個以上の官能基(b)を有する活性水素基含有化合物(B)と共に、ポリウレタンプレポリマーに所定量混合する。
その際、ウレタン樹脂のウレア基量とウレタン基量の合計量の樹脂成分総量に占める組成比を、窒素換算で0.1質量%以上10質量%以下に制御するのが望ましい。
すなわち、ウレア結合(―NH―CO―NH―)を形成する窒素の質量Taとウレタン結合(―NH−CO−O−)を形成する窒素の質量Tbの総量を、前記ポリウレタン樹脂の不揮発固形分の質量Tに対して下記数式で表される範囲にする。
0.1質量%≦(Ta+Tb)/T)×100≦10質量%
また、鎖延長剤は、ポリウレタンプレポリマーの総量に対し、窒素原子換算で、0.1質量%以上10質量%以下の比率で混合させるのが望ましい。0.1質量%未満の混合量では、目的とするウレア量が得られず、耐溶剤性、下地金属材や上塗り塗料との密着性、耐食性、耐傷付き性が低下することがあり、10質量%超の混合量では、皮膜が硬くなり過ぎて加工性が低下する。
また、上記ポリウレタン樹脂中に、環状化合物、すなわち脂肪族環もしくは芳香族環を有する化合物を含有することで、皮膜の強度や耐溶剤性を高めることができる。このような環状化合物は、ウレタン樹脂の主鎖に置換基として結合している場合と、側鎖として結合している場合の両方がある。
脂肪族環を有する化合物としては、例えば、シクロヘキサノール基含有化合物、シクロペンタノール基含有化合物、イソホロン基含有化合物、ジシクロヘキシル基含有化合物等が挙げられる。芳香族環を有する化合物としては、ビスフェノール基含有化合物、クレゾール基含有化合物、ジフェニル基含有化合物等が挙げられる。
このような脂肪族環もしくは芳香族環を有する化合物の含有量は、ポリウレタン樹脂の全固形分に対する化合物総量の質量%が、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満では効果が乏しく、30質量%超では皮膜の造膜性が低下し、加工性及び皮膜自身の密着性が低下することがある。
また、上記ポリウレタン樹脂を構成するポリオール分子中に、分岐構造を有するモノマーを含有することで、皮膜形成時の架橋反応性をより高め、架橋密度を高くして耐食性、耐溶剤性、耐アルカリ性を向上させることができる。
分岐構造を有するモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヒマシ油等が挙げられる。配合する量としては、ポリウレタン樹脂の全固形分に対する上記モノマーの質量%が、0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。0.1質量%未満では効果が乏しく、30質量%超では皮膜の硬度が高くなり過ぎ、加工性及び皮膜自身の密着性が低下することがある。
また、ポリウレタン樹脂を水中に分散させるために、ポリウレタンプレポリマー中に親水性基を導入することができる。親水性基を導入するには、例えば、分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有し、かつ、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基、エポキシ基、ポリオキシエチレン基等の親水性基含有化合物(E)を、少なくとも1種以上、上記ポリウレタンプレポリマー製造時に共重合させればよい。
親水性基としては、カルボキシル基を選定することで特に優れた水分散性、処理剤中におけるエマルジョンの安定性を示す。さらに、カルボキシル基の含有量は酸当量で1000〜3000であることが好ましい。1000未満ではエマルジョンの安定性が十分ではなく、処理剤の安定性が低下することがあり、3000超では耐アルカリ性や耐溶剤性が低下することがある。
上記親水性基含有化合物(E)としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体、又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等無水基を有する化合物と活性水素基を有する化合物とを反応させてなるカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体、又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、エチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも3質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素基を含有する分子量300〜10000のポリエチレン−ポリアルキレン共重合体等のノニオン基含有化合物、又はこれらを共重合して得られるポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。共重合の際にはこれら親水性基含有化合物を単独で、又は2種以上組み合わせて使用する。
上記ポリウレタン樹脂において、水中に良好に溶解又は分散させるために、中和剤が使用される。
使用できる中和剤としては、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等の塩基性物質が挙げられるが、造膜性、表面処理剤の安定性の観点から、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、又はトリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
更に、中和剤は沸点150℃以下であることが好ましい。沸点150℃超では、焼付け乾燥後に中和剤が皮膜に多く残存し、皮膜の造膜性を低下させ、耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性を低下させることがある。これらの中和剤は、単独で、又は2種以上の混合物で使用してもよい。中和剤の添加方法としては、上記ポリウレタンプレポリマーに直接添加してもよいし、水中に溶解、又は分散させる時に水中に添加しても良い。中和剤の添加量は、カルボキシル基等の親水性基に対して0.1〜2.0当量、より好ましくは0.3〜1.3当量である。
また、上記カルボキシル基等の親水性基を含有するポリウレタンプレポリマーの水溶解又は分散性を更に良くするため、界面活性剤を使用してもよい。このような界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体のようなノニオン系界面活性剤、又は、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン系界面活性剤が用いられる。しかし、耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の性能から、界面活性剤を含まないソープフリー型が好ましい。
前記ポリウレタン樹脂にカルボキシル基を含有し、酸当量が1000〜3000であり、水分散時の中和剤として沸点150℃以下のアルカノールアミンを選定することで、界面活性剤を使用することなく自己乳化での水分散が可能となり、焼付け乾燥後の皮膜の造膜性が最も向上する。すなわち、特に耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の諸性能を最も向上させることが可能である。
また、上記ポリウレタンプレポリマーを合成する際には、有機溶剤を使用することも可能である。有機溶剤を使用する場合、比較的水への溶解度の高いものが好ましく、このような有機溶剤の具体例としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
また、本発明のポリウレタン樹脂が有する官能基(a)又は(b)に由来する反応を促進させるために、硬化触媒を添加しても良い。本発明に係るポリウレタン樹脂においては、強塩基性第3級アミンが、このポリウレタン樹脂を塗膜化した際に、耐水性、耐溶剤性を悪化させることなく特異的にシロキサン結合の形成触媒として働くことにより、効率よく架橋構造を導入することが可能となる。
この強塩基性第3級アミンは、pKaが11以上であることを特徴とし、特に、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又は1、6−ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン−5が好適に用いられる。この硬化触媒である強塩基性第3級アミンは、ポリウレタンプレポリマー合成時、ポリウレタンプレポリマー合成後、あるいはポリウレタンプレポリマーを水に分散、又は溶解した後、添加してもよい。
また、本発明に係るポリウレタンエマルションには、塗膜形成性を改善することを目的として、必要に応じて造膜助剤を添加してもよい。このような造膜助剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等のアルコール類、セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のエーテル類、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類等が挙げられる。これら造膜助剤も、必要に応じて単独又は2種以上の混合物で用いられる。
また、本発明における表面処理剤においては、ポリウレタン樹脂の他に、他の樹脂を混合することも可能である。その場合、官能基(a)に由来する珪素の質量Sa、官能基(b)に由来する珪素の質量Sb及び酸化珪素に由来する珪素Scの質量の総量が、不揮発固形分の全質量Sに対し下記数式で表される範囲であり、
1.6質量%≦((Sa+Sb+Sc)/S)×100≦25質量%
かつ、前記のように、ウレア結合を形成する窒素及びウレタン結合を形成する窒素の総量が、皮膜固形分中の樹脂成分の総量に対し0.1質量%以上10質量%以下の条件を満たす量であれば適当量配合することができる。
ここで、上記「樹脂成分の総量」とは、皮膜中にポリウレタン樹脂のみを含む場合はポリウレタン樹脂の総量、ポリウレタン樹脂以外の他の樹脂を含む場合はポリウレタン樹脂および他の樹脂の合計量を意味する。また、上記他の樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が例示される。複合させる樹脂としてはポリオレフィン樹脂が好ましい。このように、皮膜中にポリウレタン樹脂とポリオレフィン樹脂を含む場合には、皮膜として強靭な性質を有し、かつ密着性にも優れるポリウレタン樹脂に、腐食因子のバリア性及び柔軟性に優れるポリオレフィン樹脂を含めることにより、皮膜の強度や密着性に加えて、皮膜の耐食性や加工性をさらに向上させることができるという複合効果を有する。ポリオレフィン樹脂の含有量は5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。5質量%未満では上記複合効果が乏しく、50質量%超ではポリウレタン樹脂の特性が十分に発揮できなくなることがある。
次に、酸化珪素について説明する。酸化珪素は、例えば、二酸化珪素等が挙げられる。酸化珪素は、水中に安定に分散し沈降が生じない化合物であれば良く、中でも、コロイダルシリカを使用した場合に、耐溶剤性、耐食性向上効果が顕著に現れるため好ましい。例えば、「スノーテックスO」「スノーテックスOS」「スノーテックスOXS」「スノーテックスN」「スノーテックスNS」「スノーテックスNXS」(いずれも日産化学工業社製)等の市販のコロイダルシリカ粒子、「スノーテックスUP」「スノーテックスPS」(日産化学工業社製)のような繊維状コロイダルシリカ等を、表面処理剤のpHに応じて用いることができる。
酸化珪素の含有量は、皮膜の固形分に対し、珪素換算で1.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。1.5質量%未満では効果が乏しく、20質量%超では効果が飽和して不経済であると共に、加工性、耐食性が低下することがある。表面処理金属材の場合には、皮膜の全固形分に対し、酸化珪素、官能基(a)と官能基(b)に由来する珪素の総量で、1.6質量%以上25質量%以下が好ましい皮膜中のケイ素含有量となる。
また、本発明における表面処理剤においては、ポリウレタン樹脂の他に、架橋剤や防錆剤等の添加剤を混合することができる。
架橋剤は、水溶性あるいは水分散性であればいずれも使用可能であるが、その中でも主にカルボキシル基、水酸基等の活性水素基と架橋構造を形成する有機チタネート化合物を混合することにより、上記官能基(a)、官能基(b)、酸化珪素に由来する架橋反応を、より低い焼付け温度で効率よく行うことが可能となる。さらに、ポリウレタン樹脂の分子内に含有している親水性基と、他の親水性基とを架橋することも可能となり、皮膜の耐食性、加工後耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。
有機チタネート化合物としては、例えば、オルガチックスTC−300(ジヒドロキスビス(アンモニウムラクテート)チタニウム;松本製薬工業社製)、TC−400(ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート);松本製薬工業社製)等が例示される。
また、上記架橋剤として、さらにカルボジイミド基含有化合物又はオキサゾリン基含有化合物を表面処理剤に混合することで、上記官能基(a)、官能基(b)、酸化珪素に由来する架橋反応をさらに低い焼付け温度で効率よく行え、またポリウレタン樹脂が分子内に含有する親水性基と、他の親水性基とを架橋することもさらに可能となる。
カルボジイミド基含有化合物としては、芳香族カルボジイミド化合物、脂肪族カルボジイミド化合物等が挙げられ、主にカルボキシル基、水酸基等の活性水素基と架橋構造を形成する。例えば、カルボジライトV−02、同V−02−L2、同E−01、同E−02、同E−03A、同E−04(以上日清紡社製)が例示される。
オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、エポクロスK−2010E、同K−2020E、同K−2030E、同WS−500、同WS−700(以上、日本触媒社製)が例示される。オキサゾリン基含有化合物は、主にカルボキシル基と反応して架橋構造を形成する。
これらの架橋剤の好ましい添加量は、樹脂の酸当量の値にもよるが、皮膜の硬化性と伸び、硬さ等物性上のバランスから、主樹脂(本発明の場合は、ポリウレタン樹脂)に対する架橋剤全量の固形分比で5質量%以上50質量%以下が好ましい。
以上説明した本発明の表面処理剤を金属材の表面に塗布し、乾燥することによって皮膜を形成する。用いられる金属材としては、特に限定されないが、例えば、Alキルド鋼板、Ti、Nb等を添加した極低炭素鋼板、及びこれらにP、Si、Mn等の強化元素を添加した高強度鋼板、及びそれらに各種めっきを施した材料、ステンレス鋼に代表されるCr含有鋼等種々のものが適用できる。
また、その他の金属Al及びAl系合金材料、金属Ti及びTi系合金材料、Mg系合金材料等、Fe系以外の金属材料に適用することが可能である。
これらの中には、防錆コーティングとしての必要性が少ないものもあるが、傷つき防止や意匠性コーティングとして適用することも可能である。それらの中で、Zn系めっき鋼板に適用する場合が特に好ましい。
鋼材の被覆層として、特に限定されないが、特に、Znめっき又はZn−Ni、Zn−Fe、Zn−Mg、Zn−Al、Zn−Cr、Zn−Ti、Zn−Mn、Zn−Al−Mg、Zn−Al−Si、Zn−Al−Mg−Si等のZn系合金めっきを施したものが最も優れた特性を示し、クロメート皮膜に代替可能である。また、Al又はAlとSi、Zn、Mgの少なくとも1種からなる合金、例えばAl−Si系合金、Al−Zn系合金、Al−Si−Mg合金等のAl系めっき、もしくはSnとZnの合金めっき等にも適用可能である。
金属材は、板状以外にも鋼管等の管状のもの、鋼矢板やH型鋼のような矢板状のもの、棒鋼や線材等の線状のもの等、さまざまな形状の金属材に適用することが可能である。
本発明の表面処理剤を用いて形成される皮膜の厚みは、通常の用途では0.1μm以上5μm以下が好ましい。0.1μm未満では耐食性に対する寄与が少ない。5μm以上では効果が飽和し不経済である。
形成した皮膜には、例えば、官能基(a)に由来する珪素、官能基(b)に由来する珪素及び酸化珪素に由来する珪素の総量が、不揮発固形分の全質量に対し1.6質量%以上25質量%以下含有されているが、以上説明したような皮膜を構成する各種成分は、質量分析、蛍光X線分析、核磁気共鳴分光分析、赤外分光分析、X線光電子分光分析、X線マイクロアナライザー等、既知の方法を使用し、あるいは組み合わせることにより、定量分析が可能である。ここで、本発明において、上記「他の官能基」とは、例えば、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、イミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、アルコキシル基等の、シラノール基と反応して脱水縮合結合や架橋結合を形成する官能基の総称を意味している。
金属材への表面処理剤の塗布は、スプレー塗布、ロールコート、バーコート、浸漬、静電塗布等の公知の方法で可能である。
焼付け乾燥は、熱風乾燥炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、直火炉等を用いる公知の方法による焼付け乾燥、又は、これらを組み合わせた方法で行えばよい。また、使用する樹脂の種類によっては、紫外線や電子線等のエネルギー線により硬化させることができる。加熱温度としては、到達板温度で100℃〜250℃が好ましい。100℃未満では、十分に架橋させるためには長時間の乾燥が必要となり、実際的ではない。また、250℃超では、有機樹脂の熱分解が生じ、耐食性に悪影響を及ぼす。工業的には、130〜200℃がより好ましい。
また、加熱乾燥後の冷却は、水冷、空冷等の公知の方法又はその組み合わせで可能である。
本発明においては、皮膜を形成する前に、金属材にリン酸塩処理皮膜等の化成処理皮膜を加えることにより、あるいは同様の皮膜の2段処理により、さらには、それ以上の複層化処理により、必要に応じて、さらに耐食性向上や機能付与を図ることが可能である。また、めっき後の処理として、化成処理以前に、溶融めっき後の外観均一処理であるゼロスパングル処理、めっき層の改質処理である焼鈍処理、表面状態や材質の調整のための調質圧延等があり得るが、本発明においては、特にこれらを限定せず、適用することも可能である。
以下、本発明に係る製造例及び実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例にのみ限定されるものではない。
<製造例1:ポリウレタン樹脂A>
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン145.37g、ジメチロールプロピオン酸20.08g、ネオペンチルグリコール15.62g、分子量1000のポリカーボネートジオール74.93g、溶剤としてアセトニトリル64.00gを加え、窒素雰囲気下、75℃に昇温、3時間攪拌した。この場合、ウレア基とウレタン基の含有量は合わせて窒素原子換算で3.3質量%になる。
所定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃まで降温させた後、トリエチルアミン(沸点89℃)15.16gを加え、さらに硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.25gを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。
このポリウレタンプレポリマー327.82gを、KBM−603(信越化学工業(株)製)25.38g、ヒドラジン一水和物11.43gを水700.00gに溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することにより、溶剤を実質的に含まない、固形分濃度30質量%、粘度30mPa・s(25℃)、酸当量2000のポリウレタン樹脂エマルションAを得た。
<製造例2:ポリウレタン樹脂B>
製造例1と同様にして作製したポリウレタンプレポリマー327.82gを、KBM−602(信越化学工業(株)製)11.78g、KBM−603(信越化学工業(株)製)12.69g、ヒドラジン一水和物11.43gを水700.00gに溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することにより、溶剤を実質的に含まない、固形分濃度30質量%、粘度30mPa・s(25℃)、酸当量2000のポリウレタン樹脂エマルションBを得た。
<製造例3:ポリウレタン樹脂C>
製造例1と同様の4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン143.57g、ジメチロールプロピオン酸21.56g、ネオペンチルグリコール3.35g、ビスフェノールAのPOモル付加物55.34g、分子量1000のポリカーボネートジオール32.18g、溶剤としてアセトニトリル64.00gを加え、窒素雰囲気下、75℃に昇温、3時間攪拌した。この場合、ウレア基とウレタン基濃度は合わせて窒素原子換算で4.5質量%になる。
所定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃まで降温させた後、トリエチルアミン(沸点89℃)16.25gを加え、さらに硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.25gを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。
このポリウレタンプレポリマー331.77gを、KBM−602(信越化学工業(株)製)10.67g、KBM−603(信越化学工業(株)製)11.50g、ヒドラジン一水和物10.34gを水700.00gに溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することにより、溶剤を実質的に含まない、固形分濃度30質量%、粘度30mPa・s(25℃)、酸当量1900のポリウレタン樹脂エマルションCを得た。
<製造例4:ポリウレタン樹脂D>
製造例1と同様の4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン139.35g、ジメチロールプロピオン酸21.39g、ネオペンチルグリコール8.32g、トリメチロールプロパン7.14g、分子量1000のポリカーボネートジオール79.81g、溶剤としてアセトニトリル64.00gを加え、窒素雰囲気下、75℃に昇温、3時間攪拌した。この場合、ウレア基とウレタン基濃度は合わせて窒素原子換算で2.3質量%になる。
所定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃まで降温させた後、トリエチルアミン(沸点89℃)16.12gを加え、さらに硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.25gを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。
このポリウレタンプレポリマー314.58gを、KBM−602(信越化学工業(株)製)10.39g、KBM−603(信越化学工業(株)製)11.20g、ヒドラジン一水和物10.08gを水700.00gに溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することにより、溶剤を実質的に含まない、固形分濃度30質量%、粘度30mPa・s(25℃)、酸当量1900のポリウレタン樹脂エマルションDを得た。
<製造例5:ポリウレタン樹脂E>
製造例1と同様の4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン145.37g、ジメチロールプロピオン酸20.08g、ネオペンチルグリコール15.62g、分子量1000のポリカーボネートジオール74.93g、溶剤としてアセトニトリル64.00gを加え、窒素雰囲気下、75℃に昇温、3時間攪拌した。この場合、ウレア基とウレタン基濃度は合わせて窒素原子換算で6.8質量%になる。所定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃まで降温させた後、ジメチルエタノールアミン(沸点135℃)13.37gを加え、さらに硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.25gを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。このポリウレタンプレポリマー327.98gを、KBM−602(信越化学工業(株)製)11.85g、KBM−603(信越化学工業(株)製)12.77g、ヒドラジン一水和物11.49gを水700.00gに溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することにより、溶剤を実質的に含まない、固形分濃度30質量%、粘度30mPa・s(25℃)、酸当量2000のポリウレタン樹脂エマルションEを得た。
<製造例6:ポリウレタン樹脂F>
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)155.87g、ジメチロールプロピオン酸27.36g、ネオペンチルグリコール1.93g、1,6−ヘキサンジオール4.39g、アジピン酸、ネオペンチルグリコール、及び1,6−ヘキサンジオールからなる分子量1000のポリエステルポリオール111.38g、溶剤としてN−メチルピロリドン130gを添加し、窒素雰囲気下、80℃において4時間攪拌した。この場合、ウレア基とウレタン基濃度は合わせて窒素原子換算で15質量%になる。
所定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃まで降温させた後、トリエチルアミン(沸点89℃)20.00gを加えて中和反応を行わせ、ポリウレタンプレポリマーのN−メチルピロリドン溶液を得た。
このポリウレタンプレポリマー436.41gを、ヒドラジン一水和物7.77gを水543.81g中に溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、固形分濃度33質量%、粘度100mPa・s(25℃)、酸当量1500のポリウレタン樹脂エマルションFを得た。
<製造例7:ポリウレタン樹脂G>
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン145.37g、ジメチロールプロピオン酸20.08g、ネオペンチルグリコール15.62g、分子量1000のポリカーボネートジオール74.93g、溶剤としてアセトニトリル64.00gを加え、窒素雰囲気下、75℃に昇温、3時間攪拌した。この場合、ウレア基とウレタン基の含有量は合わせて窒素原子換算で3.3質量%になる。
所定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃まで降温させた後、トリエチルアミン(沸点89℃)15.16gを加え、さらに硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.25gを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。
このポリウレタンプレポリマー327.82gを、KBM−602(信越化学工業(株)製)23.55g、11.78g、ヒドラジン一水和物11.43gを水700.00gに溶解させた水溶液中にホモディスパーを用いて分散させることにより鎖延長反応、エマルション化し、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することにより、溶剤を実質的に含まない、固形分濃度30質量%、粘度30mPa・s(25℃)、酸当量2000のポリウレタン樹脂エマルションGを得た。
製造例1のポリウレタン樹脂Aと全く同じ原料、製造方法で、酸当量を800に調整したものをポリウレタン樹脂Aa、酸当量を3500に調整したものをポリウレタン樹脂Ab、中和剤をトリエチルアミン(沸点89℃)から2−アミノ−2-メチル−1−プロパノール(沸点165℃)に変更したものをポリウレタン樹脂Ac、アンモニアに変更したものをポリウレタン樹脂Adとして製造した。
<金属表面処理材の作製・評価>
上記の各種ウレタン樹脂を使用し、各種添加剤を混合し、表1に示す金属表面処理剤を得た。
Figure 2010043168
表1の中に示した処理剤中のポリオレフィン樹脂、コロイダルシリカ及び架橋剤の内容は以下である。
ポリオレフィン樹脂:HYTEC S−3121(東邦化学工業社製)
コロイダルシリカF:スノーテックスN(日産化学工業社製)
コロイダルシリカG:スノーテックスNS(日産化学工業社製)
架橋剤H:カルボジイミド化合物;カルボジライトE−03A(日清紡社製)
架橋剤J:オキサゾリン化合物;エポクロスWS−700(日本触媒社製)
架橋剤K:有機チタネート化合物;オルガチックスTC−400(松本製薬工業社製)
金属板として、以下の金属材料を使用した。
L:電気亜鉛めっき鋼板;板厚1.0mm、めっき付着量20g/m
M:電気亜鉛−Ni合金めっき鋼板;板厚0.8mm、めっき付着量20g/m
N:溶融亜鉛めっき鋼板;板厚0.9mm、めっき付着量50g/m
P:溶融亜鉛−鉄合金めっき鋼板;板厚0.8mm、めっき付着量45g/m
Q:溶融亜鉛−11%Al−3%Mg−0.2%Si;板厚0.8mm、めっき付着量60g/m
R:溶融亜鉛−55%Al;板厚0.8mm、めっき付着量75g/m
S:ステンレス鋼板;板厚0.5mm、フェライト系ステンレス鋼板、
鋼成分:C;0.008質量%、Si;0.07質量%、Mn;0.15質量%、P;0.011質量%、S;0.009質量%、Al;0.067質量%、Cr;17.3質量%、Mo;1.51質量%、N;0.0051質量%、Ti;0.22質量%、残部Fe及び不可避的不純物
金属板は、使用直前にアルカリ脱脂を行った後水洗、乾燥し使用した。その上に、表1に示す表面処理剤をバーコーターにより塗布し、熱風乾燥炉で焼付け乾燥後、水洗、乾燥し供試材とした。焼付け乾燥時の炉温は300℃、到達温度は到達板温度で150℃とした。このようにして得られた供試材の詳細を表2に示す。
Figure 2010043168
作製した供試材に対して、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
(1) 皮膜密着性
供試材の皮膜面に1mmの碁盤目をカッターナイフで入れ、さらに、塗膜面が凸となるようにエリクセン試験機で7mm押し出した後、テープ剥離試験を行った。碁盤目の入れ方、エリクセンの押し出し方法、テープ剥離の方法については、JIS−K5400.8.2及びJIS−K5400.8.5記載の方法に準じて実施した。テープ剥離後の評価は、JIS−K5400.8.5記載の評価の例図によって、10点満点評価で行った。
(2) 上塗り塗料密着性
供試材の表面にメラミンアルキッド塗料(スーパーラック100、日本ペイント社製)をバーコーターで乾燥膜厚20μmとなるように塗布し、120℃で25分間焼き付けて塗板を作製した。一昼夜放置後沸騰水中に30分間浸漬し、取り出して1日放置してから、1mm間隔の碁盤目カット疵を100個入れ、その部分にセロハン(登録商標)テープ(ニチバン社製)を貼り、剥離した後の皮膜状態を観察し下記基準で評価した。碁盤目の入れ方、テープ剥離の方法については、JIS−K5400.8.2及びJIS−K5400.8.5記載の方法に準じて実施した。
5 : 剥離個数0
4 : 剥離個数5以下
3 : 剥離個数10以下
2 : 剥離個数50以下
1 : 剥離個数51以上
(3) 耐溶剤性
供試材の皮膜面について、エチルメチルケトンによるラビング試験を実施した。15mmφのシリコンゴム製円柱先端部にガーゼを固定し、エチルメチルケトンを5mL含ませた後、荷重4.9Nの条件で10回摺動した。その試験片のエッジと裏面をテープシールし、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を行った。72時間後の白錆発生状況を観察し下記基準で評価した。
5 : 白錆発生無し
4 : 白錆発生1%未満
3 : 白錆発生1%以上5%未満
2 : 白錆発生5%以上20%未満
1 : 白錆発生20%以上
(4) 耐アルカリ性
供試材を55℃のアルカリ脱脂剤(サーフクリーナー53、日本ペイント社製)2質量%水溶液(pH12.5)に攪拌しながら5分間浸漬した後、試験板のエッジと裏面をテープシールし、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を行った。72時間後の白錆発生状況を観察し下記基準で評価した。
5 : 白錆発生無し
4 : 白錆発生1%未満
3 : 白錆発生1%以上5%未満
2 : 白錆発生5%以上20%未満
1 : 白錆発生20%以上
(5) 耐食性
(i) 平板部:
端面及び裏面をシールした平板試験片について、JIS−Z2371に規定されている塩水噴霧試験(SST)を実施し、240時間後の白錆の発生率で評価した。耐食性評価基準を以下に示す。
5 : 白錆発生無し
4 : 白錆発生1%未満
3 : 白錆発生1%以上5%未満
2 : 白錆発生5%以上20%未満
1 : 白錆発生20%以上
(ii) 加工後:
端面及び裏面をシールした平板試験片について、中央部に7mmエリクセン加工を施した後、JIS−Z2371に規定されている塩水噴霧試験(SST)を実施し、120時間後のエリクセン部の白錆発生率で評価した。耐食性評価基準を以下に示す。
5 : 白錆発生無し
4 : 白錆発生1%未満
3 : 白錆発生1%以上5%未満
2 : 白錆発生5%以上20%未満
1 : 白錆発生20%以上
Figure 2010043168
本発明の比較例であるNo.44は、官能基(a)及び(b)が含まれていないため、耐食性、耐アルカリ性、耐溶剤性が劣ることがわかった。また、No.44は、さらにポリウレタン樹脂のウレア基、ウレタン基量が多過ぎるため、加工後耐食性にも劣ることがわかった。No.45は官能基(b)だけ含まれているが、耐アルカリ性、耐溶剤性に劣ることが判った。No.46は、酸化ケイ素が含まれていないため耐食性に劣ることがわかった。また、No.41は室温7日で処理剤がゲル化した。それ以外のNo.は室温14日経時後も外観上の異常は認められなかった。
No.1〜43の本発明の実施例の皮膜構成を用いることにより、極めて高い耐食性と加工後耐食性及び、良好な上塗り塗料密着性、耐アルカリ性、耐溶剤性を得ることができることがわかった。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、かつ極めて高い耐食性と加工後耐食性能を有し、良好な上塗り塗料密着性、耐アルカリ性、耐溶剤性を有する表面処理金属材及び金属表面処理剤に適用可能である。

Claims (14)

  1. 分子内に下記一般式[1]で表される官能基(a)を含有するポリウレタン樹脂と、酸化珪素を含むことを特徴とする金属表面処理剤。
    Figure 2010043168
    (式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
  2. 前記ポリウレタン樹脂が、分子内に下記一般式[2]で表される官能基(b)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の金属表面処理剤。
    Figure 2010043168
    (式中、R4は水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基、R5及びR6は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表す。)
  3. 前記官能基(a)に由来する珪素、前記官能基(b)に由来する珪素及び前記酸化珪素に由来する珪素の総量が、不揮発固形分の全質量に対し下記数式で表される範囲にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属表面処理剤。
    1.6質量%≦((Sa+Sb+Sc)/S)×100≦25質量%
    ここで、S :不揮発固形分の全質量
    Sa:官能基(a)に由来する珪素の質量
    Sb:官能基(b)に由来する珪素の質量
    Sc:酸化珪素に由来する珪素の質量
  4. 前記ポリウレタン樹脂が、分子内にウレア結合を含有し、かつ、前記ウレア結合に由来する窒素及びウレタン結合に由来する窒素の総量が、前記ポリウレタン樹脂の不揮発固形分の質量に対し、下記数式で表される範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属表面処理剤。
    0.1質量%≦(Ta+Tb)/T)×100≦10質量%
    ここで、T :ポリウレタン樹脂の不揮発固形分の質量
    Ta:ウレア結合(―NH―CO―NH―)を形成する窒素の質量
    Tb:ウレタン結合(―NH−CO−O−)を形成する窒素の質量
  5. 前記ポリウレタン樹脂の架橋剤として、有機チタネート化合物を含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の金属表面処理剤。
  6. 前記ポリウレタン樹脂が水分散性又は水溶解性であり、分子内にカルボキシル基を含有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の金属表面処理剤。
  7. 前記ポリウレタン樹脂の酸当量が1000〜3000であることを特徴とする、請求項6に記載の金属表面処理剤。
  8. 前記ポリウレタン樹脂の水分散時の中和剤の沸点が150℃以下であることを特徴とする、請求項6または7に記載の金属表面処理剤。
  9. 前記ポリウレタン樹脂の水分散時の中和剤は、アルキルアミン、アルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項6から8のいずれかに記載の金属表面処理剤。
  10. 前記ポリウレタン樹脂の架橋剤として、さらにカルボジイミド化合物又はオキサゾリン基含有化合物を含むことを特徴とする、請求項6から9のいずれかに記載の金属表面処理剤。
  11. さらに、ポリオレフィン樹脂を、不揮発固形分の総量に対し5質量%以上50質量%以下含有することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の金属表面処理剤。
  12. 金属材の表面に、請求項1から11のいずれかに記載の金属表面処理剤を塗布し、乾燥することによって皮膜を形成することを特徴とする金属材の表面処理方法。
  13. 請求項12に記載の表面処理方法を用いて形成された皮膜を有することを特徴とする表面処理金属材。
  14. 金属材が亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニウム系めっき鋼板であることを特徴とする請求項13記載の表面処理金属材。
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