本発明のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂(水性ポリウレタン樹脂)を水分散させることにより得られる。
ポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応により得られる。つまり、ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との二次反応生成物である。
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との反応により得られる。つまり、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との一次反応生成物である。
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含んでいる。
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が、構造異性体として挙げられる。
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
また、水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(H6XDI)としては、1,2-水添キシリレンジイソシアネート(1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-H6XDI)、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-H6XDI)、1,4-水添キシリレンジイソシアネート(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-H6XDI)が、構造異性体として挙げられる。
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、それらの誘導体が含まれる。
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、公知の1価アルコールおよび/または公知の2価アルコールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと公知の3価以上のアルコールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)を含有することもできる。
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)などのポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)としては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。好ましくは、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
その他のポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネート、さらに好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。
なお、その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)が配合される場合には、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネート(併用される場合にはそれらの総量)の含有割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上であり、例えば、99質量%以下である。
また、ポリイソシアネート成分として、好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの併用、または、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)の単独使用が挙げられる。
キシリレンジイソシアネート(XDI)およびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)を併用する、または、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)を単独使用することにより、ガスバリア性を損なわずに、水分散性に優れた、平均粒子径の小さいポリウレタンディスパージョンが得られる。
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用する場合、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)の総量100質量部に対して、キシリレンジイソシアネート(XDI)が、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、95質量部以下である。また、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)が、例えば、10質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
活性水素基含有成分としては、ポリオール成分が挙げられる。ポリオール成分は、必須成分として、炭素数2~6のジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含んでいる。
炭素数2~6の短鎖ジオールは、分子量(分子量分布を有する場合には、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量)が50以上650以下であり、水酸基を2つ有する炭素数2~6の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールなどの炭素数2~6のアルカンジオール(炭素数2~6のアルキレングリコール)、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2~6のエーテルジオール、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンなどの炭素数2~6のアルケンジオールなどが挙げられる。
これら炭素数2~6の短鎖ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
炭素数2~6の短鎖ジオールとして、ガスバリア性の観点から、好ましくは、炭素数2~6のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
炭素数2~6の短鎖ジオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物である。
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、より具体的には、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
これらアニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられ、さらに好ましくは、ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物の配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオール(炭素数2~6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)や、高分子量ポリオールを含有することもできる。
なお、ポリオール成分は、ガスバリア性の観点から、好ましくは、高分子量ポリオールを含有しない。
高分子量ポリオールは、分子量(数平均分子量)が650を超過し、水酸基を2つ以上有する化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどの、分子量が650を超過する高分子量マクロポリオールが挙げられる。
このような高分子量ポリオールは、ガスバリア性の低下を惹起する場合がある。
そのため、ポリオール成分は、高分子量ポリオールを含有しない。これにより、ポリウレタン樹脂(後述)のガスバリア性を向上させることができる。
一方、ポリオール成分は、任意成分として、分子量50以上650以下の低分子量ポリオール(上記した炭素数2~6の短鎖ジオールを除く。)(以下、その他の低分子量ポリオールと称する。)を含有することができる。
その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数7以上のジオール、3価以上の低分子量ポリオールなどが挙げられる。
炭素数7以上のジオールとしては、例えば、炭素数7~20のアルカン-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどの炭素数7以上の2価アルコール(ジオール)などが挙げられる。
これら炭素数7以上のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
3価以上の低分子量ポリオールは、分子量が650以下であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する有機化合物であって、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
さらに、数平均分子量が650以下であれば、上記したマクロポリオール(具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどの、分子量650以下の低分子量マクロポリオール)を、その他の低分子量ポリオールとして用いることができる。
その他の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
その他の低分子量ポリオールとして、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、および、ポリウレタンディスパージョンの水分散安定性の観点から、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコール、4価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、3価アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
その他の低分子量ポリオールが配合される場合、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下である。
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの併用割合は、それらの総量100質量部に対して、その他の低分子量ポリオールが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
その他の低分子量ポリオールの含有割合が上記範囲であれば、優れた分散性を確保することができる。そのため、ガスバリア性および密着性に優れるポリウレタン層を良好に形成することができる。
ポリオール成分は、好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなるか、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、上記各成分を、活性水素基(水酸基)に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1~10の割合で配合する。そして、バルク重合または溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が、下記イソシアネート基濃度になるまで反応させる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基濃度(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含有量)が、比較的高い。より具体的には、イソシアネート基濃度が、例えば、4質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、6質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上であり、また、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、17質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
また、その数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーに中和剤を添加して、アニオン性基を中和剤により中和し、塩を形成させる。
なお、以下において、イソシアネート基末端プレポリマーに対して添加される中和剤を、一次中和剤とする。
一次中和剤としては、慣用の塩基が挙げられ、例えば、有機塩基、無機塩基が挙げられる。
有機塩基としては、例えば、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1~4のトリアルキルアミンなど)、アルカノールアミン(例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などの3級アミン、例えば、複素環式アミン(モルホリンなど)などの2級アミンなどが挙げられる。
無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)などが挙げられる。
これらの一次中和剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
一次中和剤として、好ましくは、有機塩基が挙げられ、より好ましくは、3級アミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリアルキルアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。すなわち、一次中和剤は、好ましくは、有機塩基からなり、より好ましくは、3級アミンからなり、さらに好ましくは、トリアルキルアミンからなり、とりわけ好ましくは、トリエチルアミンからなる。
一次中和剤の添加量は、アニオン性基1当量あたり、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上であり、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下である。
次いで、この方法では、上記の一次中和剤により中和されたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンを得る。
鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長反応するために複数の活性水素基を有する有機化合物であり、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどのポリアミン化合物、例えば、アミノアルコールなどが挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR-148、XTJ-512などが挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
また、鎖伸長剤としては、さらに、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物なども挙げられる。
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
鎖伸長剤として、好ましくは、アミノアルコールが挙げられ、より好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールが挙げられる。
そして、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100~1000質量部の割合において、水を撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2の割合となるように、滴下する。
鎖伸長剤は、滴下および撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
これにより、ポリウレタン樹脂が水分散されてなり、ポリウレタン樹脂中のアニオン性基が一次中和剤により中和されているディスパージョン(一次ポリウレタンディスパージョン)が得られる。
一次ポリウレタンディスパージョンにおいて、ポリウレタン樹脂の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
その後、この方法では、一次ポリウレタンディスパージョン中のポリウレタン樹脂とアンモニアとを接触させる。これにより、ポリウレタン樹脂において、一次中和剤(好ましくは、トリアルキルアミン)の少なくとも一部をアンモニア(置換用中和剤)で置換する。
ポリウレタン樹脂とアンモニアとを接触させる方法としては、特に制限されないが、例えば、一次ポリウレタンディスパージョンとアンモニア水とを混合する方法(液体法)、例えば、一次ポリウレタンディスパージョンにアンモニアガスを供給する方法(気体法)などが挙げられる。
好ましくは、一次ポリウレタンディスパージョンとアンモニア水とを混合する方法(液体法)により、ポリウレタン樹脂とアンモニアとを接触させる。
この方法において、アンモニア水およびアンモニアガスのアンモニア濃度、供給量などは、所望とするアンモニア置換量に応じて、適宜設定される。
例えば、液体法では、アンモニア水中のアンモニア濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
また、一次ポリウレタンディスパージョン中のポリウレタン樹脂のアニオン性基1当量あたり、アンモニアが、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上であり、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下である。
また、アンモニアの供給方法は、特に制限されず、一括添加でもよく、分割添加でもよい。好ましくは、分割添加する。
そして、この方法では、必要に応じて、一次ポリウレタンディスパージョンとアンモニアとの混合液を、常温または加熱環境下で撹拌し、アンモニアによる置換を促進する。
撹拌時における条件は、特に制限されないが、温度条件が、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、60℃以下、好ましくは、50℃以下である。また、撹拌時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
また、この方法では、必要に応じて、公知の方法で脱溶剤して、固形分濃度を調整することもできる。
また、上記のアンモニアによる置換は、1回であってもよく、また、複数回であってもよい。好ましくは、中和剤におけるアンモニア含有割合が後述の範囲となるように、複数回、一次中和剤をアンモニアにより置換する。
なお、置換回数が多いほど、中和剤におけるアンモニア含有割合は増加する。また、置換前の中和剤におけるアンモニア含有割合が高いほど、1回の操作で置換されるアンモニアの量は少なくなる。置換回数は、好ましくは、1~3回である。
これにより、ポリウレタン樹脂中の一次中和剤(好ましくは、3級アミン)の少なくとも一部を、置換用中和剤としてのアンモニアで置換することができ、中和剤にアンモニアを含有させることができる。
換言すれば、アンモニアを含有する中和剤によって、ポリウレタン樹脂中のアニオン性基を中和することができる。
なお、以下において、アンモニアで置換された中和剤を、二次中和剤とする。
すなわち、上記の操作によって、ポリウレタン樹脂が水分散されてなり、ポリウレタン樹脂中のアニオン性基が二次中和剤により中和されているディスパージョン(二次ポリウレタンディスパージョン)が得られる。
二次中和剤におけるアンモニアの含有割合は、二次中和剤の総量(総モル)に対して、30モル%以上であり、通常、100モル%以下であり、好ましくは、100モル%未満である。
換言すれば、二次中和剤は、アンモニアのみを含有していてもよいが、好ましくは、二次中和剤は、アンモニアと、その他の中和剤とを含有する。その他の中和剤は、好ましくは、一次中和剤として使用された中和剤であり、より好ましくは、3級アミンが挙げられる。つまり、二次中和剤は、さらに好ましくは、アンモニアと3級アミンとを含み、とりわけ好ましくは、アンモニアと3級アミンとからなる。
このような場合、二次中和剤の総量に対して、アンモニアの含有割合が、30モル%以上、好ましくは、40モル%以上、より好ましくは、50モル%以上、さらに好ましくは、60モル%以上、とりわけ好ましくは、65モル%以上であり、例えば、100モル%未満、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下、さらに好ましくは、85モル%以下、さらに好ましくは、80モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以下である。
また、その他の中和剤(好ましくは、3級アミン)が、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上、さらに好ましくは、15モル%以上、さらに好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、30モル%以上であり、例えば、70モル%以下、好ましくは、60モル%以下、より好ましくは、50モル%以下、さらに好ましくは、40モル%以下、とりわけ好ましくは、35モル%以下である。
なお、二次中和剤において、アンモニアの含有割合は、後述する実施例に準拠して、電気泳動システムを用いた定量分析(1点検量線法)により、測定することができる。
また、二次中和剤において、その他の中和剤(好ましくは、3級アミン)の含有割合も、電気泳動システムを用いた定量分析(1点検量線法)により、測定することができる。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
得られるポリウレタン樹脂の二次ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
二次ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上、また、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
二次ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、50nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200nm以下である。
また、二次ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、比較的高く、例えば、30質量%以上、好ましくは、34質量%以上、より好ましくは、38質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、46質量%以下、より好ましくは、42質量%以下である。ウレタン基濃度およびウレア基濃度を高くすることにより、ガスバリア性の向上を図ることができる。
なお、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、原料成分の仕込み比から算出することができる。
また、二次ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、必要に応じて、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
なお、熱可塑性樹脂の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
そして、このようなポリウレタンディスパージョンは、水分散を可能とする原料成分として、アニオン性基を含有する活性水素化合物が使用されており、かつ、そのアニオン性基が、アンモニアを30モル%以上含有する中和剤により中和されている。
そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、保存安定性および機械安定性に優れ、ガスバリア性および耐水性に優れたポリウレタン層を得ることができ、また、ガスバリア性および耐水性に優れたポリウレタン層を得ることができる。
また、上記のポリウレタンディスパージョンの製造方法では、アニオン性基を含有する活性水素化合物のアニオン性基を、トリアルキルアミンからなる中和剤により中和した後、そのトリアルキルアミンの少なくとも一部をアンモニアで置換することによって、アンモニアを30モル%以上含有する中和剤によりアニオン性基を中和させる。
このようなポリウレタンディスパージョンの製造方法によれば、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度が高い場合にも、中和によるゲル化を抑制することができ、上記のポリウレタンディスパージョンを生産性よく得ることができる。
すなわち、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度が比較的高い場合(例えば、4質量%以上)、そのイソシアネート基末端プレポリマー中に、アンモニアを添加すると、イソシアネート基末端プレポリマーがゲル化し、ポリウレタンディスパージョンが得られないという不具合がある。
これに対して、上記のポリウレタンディスパージョンの製造方法では、まず、イソシアネート基末端プレポリマー中のアニオン性基を、トリアルキルアミンからなる一次中和剤により中和した後、一次中和剤の少なくとも一部を、アンモニアで置換している。
その結果、上記のポリウレタンディスパージョンの製造方法では、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度が高い場合であっても、イソシアネート基末端プレポリマーのゲル化を抑制しながら、アニオン性基がアンモニアを含有する中和剤により中和されたポリウレタンディスパージョンを、得ることができる。
そのため、上記のポリウレタンディスパージョン(二次ポリウレタンディスパージョン)は、ガスバリア層としてポリウレタン層を備えるポリウレタン積層体の製造において、好適に用いることができる。
図1において、ポリウレタン積層体1は、基材2と、基材2の上に積層されるポリウレタン層3とを備えている。
基材2は、特に制限されず、例えば、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)、紙、布、木、金属、セラミックスなどから形成され、好ましくは、プラスチック、より好ましくは、熱可塑性樹脂から形成される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)、ポリメタキシリレンアジパミドなど)、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルなど)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、セルロース系樹脂(例えば、セロファン、酢酸セルロースなど)などが挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6(登録商標)が挙げられる。
基材2は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
なお、基材2の形状は、特に制限されないが、例えば、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状などが挙げられる。好ましくは、フィルム状が挙げられる。
基材2は、無延伸基材、一軸または二軸延伸基材のいずれでもよく、また、基材2には、表面処理(コロナ放電処理など)、アンカーコートまたはアンダーコート処理がなされていてもよく、さらに、アルミニウムなどの金属、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナとの混合物などの金属酸化物の蒸着処理がなされていてもよい。
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
ポリウレタン層3は、上記のポリウレタン樹脂から形成されている。このようなポリウレタン層3は、製造効率の観点から、好ましくは、上記のポリウレタンディスパージョン(二次ポリウレタンディスパージョン)を、基材2に塗布および乾燥させることにより、形成されている。
より具体的には、ポリウレタン層3を形成するには、上記方法により得られた二次ポリウレタンディスパージョンの濃度を調整してコート剤を調製する。そして、得られたコート剤を、基材2の上に塗布し、乾燥させる。
二次ポリウレタンディスパージョンの濃度を調整では、例えば、水や公知の有機溶媒などを添加、または、脱離させるなど、公知の方法を採用することができる。
コート剤の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
また、コート剤には、必要に応じて、硬化剤を配合することができる。
硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤などが挙げられる。この中で、イソシアネート硬化剤については、より具体的には、水分散性のイソシアネート硬化剤(例えば、ブロックイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネートなど)、親水性基を含有する非ブロックポリイソシアネートなど)が挙げられる。
硬化剤を配合する場合には、その配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、硬化剤が、固形分として、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
また、コート剤の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
また、基材2を作製するときに、インラインで塗布してもよい。
具体的には、基材2がフィルム状の場合、フィルム製膜時の縦方向の一軸延伸処理後にグラビアコート法などにより、コート剤を塗布および乾燥した後、二軸延伸処理してポリウレタン層3を基材2上に設けることができる。
また、基材2がボトル状の場合、ブロー成型前のプリフォームにディッピング法などによりコート剤を塗布および乾燥した後、ブロー成型してポリウレタン層3を基材2上に設けることができる。
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、3秒以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層3を形成することができ、これにより、基材2およびポリウレタン層3を備えるポリウレタン積層体1を得ることができる。
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、より好ましくは、0.3g/m2以上であり、また、例えば、10g/m2以下、好ましくは、7g/m2以下、より好ましくは、5g/m2以下である。
また、ポリウレタン積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
また、必要に応じて、得られたポリウレタン積層体1を、例えば、30~50℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
このようなポリウレタン積層体1は、上記の二次ポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備えるため、ガスバリア性および耐水性に優れる。
また、ポリウレタン積層体1では、ガスバリア性の向上を図るため、ポリウレタン層3に、フィラーを分散させることもできる。
より具体的には、例えば、上記の二次ポリウレタンディスパージョンと、フィラーとの混合物を、基材2に塗布および乾燥させることにより、フィラーが分散されたポリウレタン層3を形成することができる。
フィラーとしては、例えば、有機ナノファイバー、層状無機化合物などが挙げられ、ガスバリア性の観点から、好ましくは、層状無機化合物が挙げられる。
有機ナノファイバーとしては、例えば、セルロースナノファイバー、キトサンナノファイバーなどが挙げられる。
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
フィラーの平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、10μm以下であり、例えば、5μm以下、好ましくは、3μm以下である。また、フィラーのアスペクト比は、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、200以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下である。
フィラーのアスペクト比が上記範囲であれば、フィラーの結晶層間(ケイ酸塩層の間隙など)において、ガスの透過経路がつづら折り状になるため、透過経路が比較的長くなり、ガスの透過を抑制することができ、ガスバリア性の向上を図ることができる。
そして、フィラーが分散されたポリウレタン層3を形成するには、例えば、まず、上記の二次ポリウレタンディスパージョンと、フィラーとを混合し、混合物として、ハイブリッドコート剤を調製する。そして、得られたハイブリッドコート剤を基材2の上に塗布し、乾燥させる。
混合物(ハイブリッドコート剤)を調製するには、まず、水にフィラーを分散させ、次いで、その分散液に、二次ポリウレタンディスパージョン(ポリウレタン樹脂を含む)を添加する。
ポリウレタン樹脂とフィラーとの配合割合は、ポリウレタン樹脂とフィラーとの質量の総量100質量部に対して、フィラーが、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
ポリウレタン樹脂とフィラーとの配合割合が上記範囲であれば、ガスバリア性を維持するとともに、基材との密着性、透明性および低コスト性の向上を図ることができる。
得られる混合物(ハイブリッドコート剤)における、ポリウレタン樹脂およびフィラーの総濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下である。
なお、混合物(ハイブリッドコート剤)において、フィラーは、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、フィラーを溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
また、ハイブリッドコート剤の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、3秒以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂およびフィラーからなるポリウレタン層3(複合ポリウレタン層)を形成することができ、これにより、ポリウレタン積層体1を得ることができる。
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂およびフィラー(乾燥後)の積層量として、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、より好ましくは、0.3g/m2以上であり、また、例えば、10g/m2以下、好ましくは、7g/m2以下、より好ましくは、5g/m2以下である。
また、ポリウレタン積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
また、ポリウレタン積層体1において、フィラーの質量割合は、ポリウレタン層3の総量100質量部に対して、フィラーの質量が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
フィラーの質量割合が上記範囲であれば、基材との密着性や、透明性の向上を図るとともに、フィラーの配合割合を少なくできるため、低コスト性の向上も図ることができる。
また、必要に応じて、得られたポリウレタン積層体1を、例えば、30~60℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
このようなポリウレタン積層体1は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備え、また、そのポリウレタン層3にフィラーが分散されているため、とりわけガスバリア性に優れる。
そのため、ポリウレタン積層体1は、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器(ボトルを含む。)、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用され、とりわけ、ボイル殺菌、レトルト殺菌などの高温殺菌処理、加熱調理等の加熱処理が必要とされる内容物の食品包装フィルムとして、好適に使用される。
また、上記したコート剤に、顔料などの着色剤を含ませて印刷用インキとして調製し、これをプラスチックフィルム、紙、各種容器などへ塗装することで印刷フィルムや印刷体としても好適に使用することができる。
なお、上記した説明では、ポリウレタン層3を単層としたが、例えば、図2に示すように、ポリウレタン層3を、基材2に積層される第1ポリウレタン層3aと、その第1ポリウレタン層3aに積層される第2ポリウレタン層3bとの2層とすることができ、さらには、図示しないが、ポリウレタン層3を3層以上の多層とすることもできる。
また、そのようなポリウレタン積層体1において、ポリウレタン層3にフィラーを分散させる場合には、少なくともいずれかの層にフィラーが分散されていればよく、また、全ての層にフィラーが分散されていてもよい。なお、いずれの層にもフィラーが分散されていなくともよい。
例えば、ポリウレタン層3を、基材2に積層される第1ポリウレタン層3aと、その第1ポリウレタン層3aに積層される第2ポリウレタン層3bとの2層とし、第2ポリウレタン層3bにのみ、フィラーを分散させることができる。
また、上記した説明では、ポリウレタン層3は、基材2の厚み方向一方面全面に積層されているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、基材2の厚み方向両面、さらには、基材2を部分的に積層することができる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
なお、以下において用いられる測定方法を下記する。
<中和剤中の含有割合>
ポリウレタンディスパージョン中の中和剤において、アンモニアおよびトリエチルアミンの含有割合を、電気泳動システムにより定量した。
すなわち、ポリウレタンディスパージョンのサンプルを分取秤量した後、超純水で適宜希釈溶解して、定量試料溶液を調製した。そして、定量試料溶液および標準品溶液を、以下の電気泳動システムにより測定した。また、既知濃度の標準品溶液を添加した試料測定溶液を調整し、添加回収試験を行った。
なお、その他の置換用中和剤としてのトリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムについても、同様に測定した。
(装置および測定条件)
装置:Agilent Technologies社製 7100キャピラリー電気泳動システム
緩衝液:Agilent Technologies社製 有害陰イオン分析緩衝液
そして、1点検量線法によって、アンモニアの含有量、および、トリエチルアミンの含有量を求め、それらの質量比率を算出した。
比較例1
タケネート500(1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、三井化学社製)170.7g、VestanatH12MDI(4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI、エボニック社製)29.8g、エチレングリコール34.4g、トリメチロールプロパン2.6g、ジメチロールプロピオン酸19.6gおよび溶剤としてメチルエチルケトン146.2gを混合し、窒素雰囲気下65~70℃で、イソシアネート基濃度(溶剤を除いた固形分あたりのNCO%)が9.53%に至るまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
イソシアネート基末端プレポリマーのウレタン基濃度(仕込み比)は、33.5質量%であった。
次いで、反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン14.5gにて中和させた。
次いで、反応液を1009.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、85.6gのイオン交換水に28.5gの2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を、添加した。その後、2時間鎖伸長反応させ、ポリウレタン樹脂を得た。
これにより、一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)を得た。
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計(仕込み比)は、39.6質量%であった。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、100:0であった。
比較例2
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水(置換用中和剤)9.7gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン2(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD2)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、90:10であった。
実施例1
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水9.7gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上に至るまで脱溶剤した。
再度、25質量%濃度のアンモニア水9.7gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン3(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD3)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、70:30であった。
実施例2
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン4(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD4)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、50:50であった。
実施例3
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上に至るまで脱溶剤した。
再度、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン5(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD5)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、30:70であった。
実施例4
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上に至るまで脱溶剤した。
再度、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
このアンモニア置換および脱溶剤を、4回繰り返した(合計5回置換)。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン6(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD6)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、15:85であった。
実施例5
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上に至るまで脱溶剤した。
再度、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
このアンモニア置換および脱溶剤を、7回繰り返した(合計8回置換)。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン7(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD7)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、5:95であった。
参考例6
表1に示す処方に従って、比較例1と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上に至るまで脱溶剤した。
再度、25質量%濃度のアンモニア水14.6gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
このアンモニア置換および脱溶剤を、12回繰り返した(合計13回置換)。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン8(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD8)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、0:100であった。
比較例3
置換用中和剤として、25質量%濃度のアンモニア水に代えて、トリイソプロパノールアミン27.3gを水109.3gで希釈した水溶液を使用した以外は、比較例2(1回置換)と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン9(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD9)を得た。
なお、トリエチルアミンとトリイソプロパノールアミンとのモル比率(トリエチルアミン:トリイソプロパノールアミン)は、25:75であった。
比較例4
置換用中和剤として、25質量%濃度のアンモニア水に代えて、トリエタノールアミン21.3gを水85.2gで希釈した水溶液を使用した以外は、比較例2(1回置換)と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン10(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD10)を得た。
なお、トリエチルアミンとトリエタノールアミンとのモル比率(トリエチルアミン:トリエタノールアミン)は、20:80であった。
比較例5
表2に記載の配合で、比較例1と同様にして、タケネート600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-H6XDI、三井化学社製)と、エチレングリコールと、ジメチロールプロピオン酸とを、アセトニトリル存在下、窒素雰囲気化65~70℃で、イソシアネート基濃度(溶剤を除いた固形分あたりのNCO%)が15.73%に至るまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
イソシアネート基末端プレポリマーのウレタン基濃度(仕込み比)は、27.6質量%であった。
次いで、反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン12.3gにて中和させた。
次いで、反応液を961.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、133.7gのイオン交換水に44.6gの2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を、添加した。その後、2時間鎖伸長反応させて、ポリウレタン樹脂を得た。
これにより、一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上至るまで脱溶剤した。その後、固形分25質量%となるようにとなるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン11(PUD11)を得た。
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計(仕込み比)は、39.5質量%であった。
実施例7
表2に示す処方に従って、比較例5と同じ方法で、脱溶剤前の一次ポリウレタンディスパージョンを得た。
次いで、25質量%濃度のアンモニア水12.4gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が30質量%以上に至るまで脱溶剤した。
再度、25質量%濃度のアンモニア水12.4gを、一次ポリウレタンディスパージョン中に徐々に添加し、常温で30分間撹拌し、中和剤をアンモニア置換した。
次いで、エバポレーターにて、水浴温度50℃減圧下で、固形分濃度が25質量%以上に至るまで脱溶剤した。その後、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて濃度調整した。
これにより、ポリウレタンディスパージョン12(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD12)を得た。
なお、トリエチルアミンとアンモニアとのモル比率(トリエチルアミン:アンモニア)は、30:70であった。
比較例6
置換用中和剤として、25質量%濃度のアンモニア水に代えて、水酸化ナトリウム4.9gを水157.0gで希釈した水溶液を使用した以外は、比較例2(1回置換)と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン13(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD13)を得た。
比較例7
置換用中和剤として、25質量%濃度のアンモニア水に代えて、水酸化リチウム2.9gを水94.0gで希釈した水溶液を使用した以外は、比較例2(1回置換)と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン14(二次ポリウレタンディスパージョン、PUD14)を得た。
<<評価>>
<ポリウレタンディスパージョンの評価>
(1)保存安定性(熱安定性)
濃厚系粒子径アナライザーFPAR-1000(大塚電子株式会社製)を用いて、PUDの粒子径D1を測定した。
また、PUDを40℃で7日間保存した後、同様にして、粒子径D2を測定した。
そして、保存前後における粒子径の変化率(D2/D1)を算出した。
その結果を表1および表2に示す。
(2)機械的安定性
PUD 100gを、マロン型試験機(マロン式機械的安定度試験機 AB-802、テスター産業製)にて、荷重15kg、回転数1,000rpmで15分間処理した。
その後、処理液を100メッシュの金網でろ過し、残渣を水洗後、110℃で2時間乾燥することにより凝集物を採取した。そして、得られた凝集物の質量を測定し、凝集物濃度(質量%)を算出した。
そして、PUDの固形分濃度(%)に対する凝集物濃度(%)の割合を求めて、ポリウレタン樹脂の凝集率を、下記式で求めた。これを、評価の指標とした。その結果を表1および表2に示す。
(ポリウレタン樹脂の凝集率(%))=[(凝集物濃度)/(固形分濃度)]×100
なお、数値が小さいほど、機械的安定性が高いことを示す。
<積層体の評価>
(3)ガスバリア性
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(二軸延伸ポリエステルフィルム、商品名:東洋紡エステルフィルムE5102、東洋紡社製、厚み12μm)に、乾燥時の厚みが3g/m2となるように、バーコーターを用いてPUDを塗布した。
次いで、110℃に設定した乾燥オーブンに、塗布したフィルムを1分間入れて乾燥させて、積層体を得た。
酸素透過測定装置(OX-TRAN2/20、MOCON社製)を用いて、JIS K 7126-2(2006)に準拠して、積層体の20℃における、相対湿度80%(80%RH)での1m2、1日および1気圧当たりの酸素透過量(cc)を測定した。その結果を表1および表2に示す。
(4)耐水性
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(二軸延伸ポリエステルフィルム、商品名:東洋紡エステルフィルムE5102、東洋紡社製、厚み12μm)に、乾燥時の厚みが3g/m2となるように、バーコーターを用いてPUDを塗布した。
次いで、110℃に設定した乾燥オーブンに、塗布したフィルムを1分間入れて乾燥させて、積層体を得た。
の後、PUDを塗布した面を、水で濡らした綿棒で擦ることにより、耐水性を評価した。なお、10回擦っても変化しないものを〇、ポリウレタン層が剥がれたものを×とした。その結果を、表1および表2に示す。