本発明のコーティング組成物は、主剤と硬化剤とを含んでいる。
主剤は、ポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
ポリウレタンディスパージョンは、好ましくは、ポリウレタン樹脂(水性ポリウレタン樹脂)を、水分散させることにより得られる。ポリウレタンディスパージョンに含有されるポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分(例えば、後述する炭素数2〜6のジオール(後述)などのポリオール成分、例えば、アミノ基含有成分(後述)など)とを反応させることにより、反応生成物(重付加物)として得ることができる。
また、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応では重付加物の分子量が高くなり難い場合、ポリウレタン樹脂を得るには、好ましくは、まず、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを調製し、次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる。
より具体的には、まず、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させる。
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含んでいる。
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−XDI)が、構造異性体として挙げられる。
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
また、水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(H6XDI)としては、1,2−水添キシリレンジイソシアネート(1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、o−H6XDI)、1,3−水添キシリレンジイソシアネート(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−H6XDI)、1,4−水添キシリレンジイソシアネート(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、p−H6XDI)が、構造異性体として挙げられる。
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、それらの誘導体が含まれる。
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート成分において、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートは単独使用または併用できる。キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートが併用される場合、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの割合(キシリレンジイソシアネート/水添キシリレンジイソシアネート(質量比))が、例えば、90/10〜10/90、好ましくは、45/55〜25/75である。
また、ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネートを含有することもできる。
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)などのポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。好ましくは、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
その他のポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)が配合される場合には、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネート(併用される場合にはそれらの総量)の含有割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上であり、例えば、99質量%以下である。
また、その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)が配合される場合には、ポリイソシアネート成分として、好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の併用が挙げられる。
キシリレンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を併用することにより、ガスバリア性を損なわずに、水分散性に優れた、平均粒子径の小さいポリウレタンディスパージョンが得られる。
キシリレンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を併用する場合、キシリレンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の総量100質量部に対して、キシリレンジイソシアネートが、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。また、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が、例えば、5質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
ポリオール成分は、必須成分として、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含んでいる。
炭素数2〜6のジオールは、数平均分子量40以上400未満であり、水酸基を2つ有する炭素数2〜6の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜6のアルカンジオール(炭素数2〜6のアルキレングリコール)、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のエーテルジオール、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどの炭素数2〜6のアルケンジオールなどが挙げられる。
これら炭素数2〜6のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
炭素数2〜6のジオールとして、ガスバリア性向上の観点から、好ましくは、炭素数2〜6のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
炭素数2〜6のジオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、55質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を含有する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、親水性基(ノニオン性基)としてのポリアルキレンオキシド基(ポリオキシアルキレン基)を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。より具体的には、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1〜4のアルキル基で片末端封鎖したアルコキシポリオキシエチレンモノオールであって、数平均分子量200〜6000、好ましくは300〜3000)、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の水酸基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
すなわち、まず、上記したジイソシアネートと、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
なお、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600〜6000である。
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールを得るためのジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基、または、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物、より好ましくは、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
これら親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができ、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物、より好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
ポリヒドロキシアルカン酸を配合することにより、水分散性とともに、ガスバリア性、基材との密着性や、透明性のさらなる向上を図ることができる。
親水性基を含有する活性水素基含有化合物を用いる場合、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、例えば、45質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオール(炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)や、高分子量ポリオールを含有することもできる。
その他の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満であり、1分子中に水酸基を2つ以上有する有機化合物(炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く。)であって、例えば、炭素数7以上のジオール(2価アルコール)、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
炭素数7以上のジオール(2価アルコール)は、数平均分子量40以上400未満であり、1分子中に水酸基を2つ有する炭素数7以上の有機化合物であって、例えば、炭素数7〜20のアルカン−1,2−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどのなども挙げられる。
また、炭素数7以上のジオール(2価アルコール)としては、例えば、数平均分子量400未満の、2価のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した2価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレングリコール(ポリオキシエチレンエーテルグリコール)、ポリプロピレングリコール(ポリオキシプロピレンエーテルグリコール)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られる数平均分子量400未満のポリテトラメチレンエーテルグリコールなども挙げられる。
3価以上の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する有機化合物であって、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
また、3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、数平均分子量40以上400未満の、3価以上のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した3価以上の低分子量ポリオール、または、公知のポリアミンを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリエチレンポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
3価以上の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)、4価アルコールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)が挙げられ、さらに好ましくは、トリメチロールプロパン、グリセリンが挙げられる。
これらその他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
その他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)が配合される場合には、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
また、その他の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
3価以上の低分子量ポリオールが配合される場合、炭素数2〜6のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの併用割合は、炭素数2〜6のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、3価以上の低分子量ポリオールが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、数平均分子量400以上の有機化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
高分子量ポリオールが配合される場合、その配合割合は、ガスバリア性の観点から、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、30質量%以下である。
ポリオール成分は、ガスバリア性の観点から、好ましくは、高分子量ポリオールを含有せず、より好ましくは、上記した炭素数2〜6のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物と、3価以上の低分子量ポリオールとからなるか、または、上記した炭素数2〜6のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物とからなる。
そして、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応では、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
この反応において、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20〜80℃で、1〜20時間程度反応させる。
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含む)を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
また、イソシアネート基末端プレポリマーに、イオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、イオン性基の塩を形成させる。
中和剤としては、イオン性基がアニオン性基の場合には、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1〜4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、少なくとも1つの遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは、2.0以上、さらに好ましくは、2.1以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定したポリウレタンディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
また、その数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
また、イソシアネート基末端プレポリマーの親水性基濃度は、例えば、0.1mmol/g以上、好ましくは、0.2mmol/g以上であり、また、例えば、1.2mmol/g以下、好ましくは、1.0mmol/g以下、より好ましくは、0.8mmol/g以下である。
イソシアネート基末端プレポリマーの親水性基濃度が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができる。
その後、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンを得る。
鎖伸長剤としては、例えば、上記した低分子量ポリオール(2価の低分子量ポリオール、3価の低分子量ポリオールなど)、アミノ基含有成分、チオール基含有成分が挙げられる。
アミノ基含有成分としては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ヒドラジンまたはその誘導体などのアミノ基含有化合物が挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)、2−((2−アミノエチル)アミノ)−1−メチルプロパノール(別名:N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
ヒドラジンまたはその誘導体としては、例えば、ヒドラジン(水和物を含む)、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
これらアミノ基含有成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
チオール基含有成分としては、例えば、脂肪族または脂環族ポリチオール、芳香属ポリチオールなどが挙げられる。
脂肪族または脂環族ポリチオールとしては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,2,3−プロパントリチオールなどが挙げられる。
芳香族ポリチオールとしては、例えば、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンなどが挙げられる。
これらチオール基含有成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
鎖伸長剤として、好ましくは、アミノ基含有成分が挙げられ、より好ましくは、アミノアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)が挙げられる。
そして、上記のイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100〜1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6〜1.2の割合となるように、滴下する。
鎖伸長剤は、例えば、水溶液として滴下することもでき、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
得られるポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、6以上、好ましくは、7以上、より好ましくは、7.5以上、また、例えば、10以下、好ましくは、9以下である。
ポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、例えば、3mPa・s以上、好ましくは、5mPa・s以上であり、また、例えば、2000mPa・s以下、好ましくは、1000mPa・s以下、より好ましくは、100mPa・s以下、さらに好ましくは、50mPa・s以下である。
ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、100nm以下である。
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、33質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、47質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
なお、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、原料成分の仕込み比から算出することができる。
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂の酸価は、例えば、12mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上であり、例えば、40mgKOH/g以下、好ましくは、35mgKOH/g以下である。
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂の数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、1000以上、好ましくは3000以上、また、例えば、1000000以下、好ましくは100000以下である。
また、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、必要に応じて、ポリウレタンディスパージョンには、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
硬化剤は、エポキシシランと、水分散性ポリイソシアネートとを含んでおり、好ましくは、エポキシシランと、水分散性ポリイソシアネートとからなる。
エポキシシランとしては、特に制限されないが、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられ、好ましくは、エポキシ基を含有するトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
より具体的には、エポキシシランとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらエポキシシランは、単独使用または2種類以上併用することができる。
エポキシシランとして、好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
エポキシシランは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、KBM−403(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM−402(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBE−402(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、KBM−303(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)(以上、信越化学社製)などが挙げられる。
水分散性ポリイソシアネートは、水に分散可能なポリイソシアネートであって、例えば、繰り返し単位として炭素数2〜3のアルキレンオキシド基を有するポリイソシアネートなどが挙げられる。
より具体的には、水分散性ポリイソシアネートとしては、例えば、水分散性ブロックポリイソシアネート、水分散性ノンブロックポリイソシアネートなどが挙げられ、好ましくは、水分散性ノンブロックポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、ポリアルキレンオキシド基を有する水分散性ノンブロックポリイソシアネートが挙げられる。
水分散性ノンブロックポリイソシアネートは、例えば、ポリエチレンオキシド基などの親水性基を含有するポリイソシアネートを、公知の分散剤(イオン性分散剤、ノニオン性分散剤など)によって、水に分散させることにより得ることができる。
水分散性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとしては、例えば、上記したポリイソシアネート成分として例示されたポリイソシアネートなどが挙げられ、具体的には、上記した芳香族ポリイソシアネート、上記した芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを含む)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを含む)、および、これらの誘導体が挙げられる。
これら水分散性ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
水分散性ポリイソシアネートは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−220、タケネートXWD−HS7、タケネートXWD−HS30など(以上、三井化学社製)、例えば、アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210など(日本ポリウレタン工業社製)、デュラネートWB40−100、デュラネートWT20−100(以上、旭化成ケミカルズ社製)、Bayhydur3100、BayhydurXP2487/1(以上、バイエルマテリアルサイエンス社製)、BasonatHW100、BasonatHA100(以上、BASF社製)などが挙げられる。
硬化剤において、エポキシシランおよび水分散性ポリイソシアネートの含有割合は、ガスバリア性、密着性および耐熱水性の観点から、設定される。
例えば、質量基準では、エポキシシランおよび水分散性ポリイソシアネートの総量100質量部に対して、エポキシシランが、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
また、エポキシシランおよび水分散性ポリイソシアネートの総量100質量部に対して、水分散性ポリイソシアネートが、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
そして、ポリウレタンディスパージョンを含む上記の主剤と、エポキシシランおよび水分散性ポリイソシアネートを含む上記の硬化剤とを混合することにより、コーティング組成物が得られる。
コーティング組成物において、主剤と硬化剤との配合割合は、主剤中の樹脂成分(固形分)と、硬化剤中の樹脂成分(固形分)との総量(すなわち、コーティング組成物の固形分の総量(以下同様))100質量部に対して、硬化剤の樹脂成分(固形分)が、7質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上であり、30質量部以下、好ましくは、25質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。また、主剤の樹脂成分(固形分)が、例えば、70質量部以上、好ましくは、75質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、93質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、85質量部以下である。
なお、固形分とは、不揮発成分と同義であり、溶媒(有機溶剤など)および分散媒(水など)を除いた成分であり、配合割合などから算出することができる。
主剤と硬化剤との配合割合が上記範囲であれば、密着性およびガスバリア性の向上を図ることができ、さらに、耐熱水性の向上を図ることもできる。
また、コーティング組成物の固形分の総量100質量部に対して、エポキシシラン(固形分)が、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であり、例えば、25質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
また、コーティング組成物の固形分の総量100質量部に対して、水分散性ポリイソシアネート(固形分)が、例えば、2質量部以上、好ましくは、2.5質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であり、例えば、25質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下、さらに好ましくは、13質量部以下である。
また、上記の残部が主剤の固形分である。
エポキシシランおよび水分散性ポリイソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、密着性およびガスバリア性の向上を図ることができ、さらに、耐熱水性の向上を図ることもできる。
とりわけ、コーティング組成物の固形分の総量100質量部に対して、エポキシシランが10質量部以上、かつ、水分散性ポリイソシアネートが10質量部以下であれば、耐熱水性の向上を図ることができる。
また、必要に応じて、コーティング組成物から水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
また、コーティング組成物には、基材に対する濡れ性を付与するためや、希釈するために、例えば、水溶性有機溶剤を添加することができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類などが挙げられる。
アルコール類としては、例えば、モノオール、グリコールが挙げられる。
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5〜38)および脂肪族不飽和アルコール(C9〜24)、アルケニルアルコール、2−プロペン−1−オール、アルカジエノール(C6〜8)、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オールなどが挙げられる。
これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
これらグリコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
これらケトン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
水溶性有機溶剤として、好ましくは、モノオールが挙げられ、より好ましくは、2−プロパノールが挙げられる。
水溶性有機溶剤の配合割合は、コーティング組成物100質量部中に、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
また、コーティング組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
なお、添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、コーティング組成物の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
そして、このようなコーティング組成物は、硬化剤が、エポキシシランと水分散性ポリイソシアネートとの2成分を含有し、また、その硬化剤の含有割合が所定量であるため、密着性およびガスバリア性に優れ、さらには、耐熱水性にも優れるポリウレタン層を得ることができる。
そのため、コーティング組成物は、ポリウレタン層を有する積層体の製造において、好適に用いられる。
図1において、本発明の積層体の一実施形態としての積層フィルム1は、プラスチックフィルムからなる基材2と、基材2の表面に配置される金属蒸着層3と、金属蒸着層3の表面に配置されるポリウレタン層4とを備えている。
基材2としては、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、プロピレン−エチレン共重合体フィルムなど)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、ポリアミドフィルム(例えば、ナイロン6フィルム、ナイロン66フィルムなど)、ビニルフィルム(例えば、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムなど)、セロファンなどの樹脂フィルムが挙げられる。
基材2は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
また、これら基材2には、表面処理(コロナ放電処理など)などがなされていてもよい。
基材2として、ガスバリア性および密着性の観点から、好ましくは、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられ、より好ましくは、ポリエステルフィルムが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
金属蒸着層3は、基材2の一方面に、金属を蒸着させることにより積層される。
金属としては、例えば、例えば、周期表2族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、4族であるチタン、ジルコニウム、13族であるアルミニウム、インジウム、14族のケイ素、ゲルマニウム、スズなどが挙げられ、さらには、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化スズ、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物などが挙げられる。
これら金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。
金属として、ガスバリア性および製造容易性の観点から、好ましくは、アルミニウム、ケイ素およびそれらの酸化物が挙げられ、より好ましくは、アルミニウムおよびその酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、アルミニウムが挙げられる。換言すれば、金属蒸着層3として、好ましくは、アルミニウム層が挙げられる。なお、金属蒸着層3は、条件により、経時的に酸化物に変化する場合がある。
金属蒸着層3の形成方法としては、例えば、真空プロセスが挙げられる。
真空プロセスとしては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD法)などが挙げられ、好ましくは、真空蒸着法では、真空蒸着装置の加熱方式として、好ましくは、電子ビーム加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式などが挙げられる。
金属蒸着層3の厚みは、金属の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば、1〜500nm、好ましくは、5〜200nm、より好ましくは、10〜100nmである。
ポリウレタン層4は、上記のポリウレタン樹脂を含む樹脂層である。
より具体的には、ポリウレタン層4は、上記したコーティング組成物を、金属蒸着層3の一方面に塗布および乾燥させることにより、塗布乾燥物(成膜層)として金属蒸着層3に積層される。
コーティング組成物の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、35℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
これにより、金属蒸着層3の上に、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層4を積層することができる。
また、ポリウレタン層4を、必要に応じて、加熱養生することもできる。
好ましくは、ポリウレタン層4を、以下の条件で養生する。
養生条件は、養生温度が、例えば、23℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、80℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、養生時間が、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、7日(168時間)以下、好ましくは、4日(96時間)以下、より好ましくは、2日(48時間)以下、さらに好ましくは、1日(24時間)以下である。
また、養生においては、養生温度が高いほど、養生時間が短くてよく、また、養生時間が長いほど、養生温度が低くてよい。具体的には、好ましくは、23℃で4日以上、より好ましくは、50℃以上で2日以上であり、また、好ましくは、110℃で2時間以下である。
また、養生は、1段階であってもよく、2段階以上(多段階)であってもよい。
好ましくは、2段階以上(多段階)養生し、より好ましくは、2段階養生する。
2段階養生する場合、好ましくは、1段階目において、比較的低温で比較的長時間養生し、2段階目において、比較的高温で比較的短時間養生する。
1段階目の養生条件としては、養生温度が、例えば、23℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、養生時間が、例えば、1日(24時間)以上、好ましくは、2日(48時間以上)であり、例えば、4日(96時間)以下である。
また、2段階目の養生条件としては、養生温度が、1段階目の養生温度よりも高く、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、養生時間が、1段階目の養生時間よりも短く、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、1日(24時間)以下である。
養生条件が上記範囲であれば、ポリウレタン層4の密着性およびガスバリア性の向上を図ることができ、さらには、耐熱水性の向上を図ることができる。
また、ガスバリア性の向上を図るため、コーティング組成物に層状無機化合物を配合し、ポリウレタン層4に層状無機化合物を分散させることもできる。
具体的には、例えば、上記のポリウレタンディスパージョンと、層状無機化合物との混合物を、金属蒸着層3に塗布および乾燥させることにより、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層4を形成することができる。
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
層状無機化合物の平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、100μm以下であり、例えば、75μm以下、好ましくは、50μm以下である。また、層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは、100以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下である。
そして、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層4を形成するには、例えば、まず、上記の主剤および上記の硬化剤と、上記の層状無機化合物とを混合し、混合物として、ハイブリッドコーティング組成物を調製する。そして、得られたハイブリッドコーティング組成物を金属蒸着層3の上に塗布し、乾燥させる。
混合物(ハイブリッドコーティング組成物)を調製するには、まず、水に層状無機化合物を分散させ、次いで、その分散液に、上記の主剤と、上記の硬化剤とを添加する。
層状無機化合物の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
なお、混合物(ハイブリッドコーティング組成物)において、層状無機化合物は、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、層状無機化合物を溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
また、ハイブリッドコーティング組成物の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、35℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
これにより、金属蒸着層3の上に、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物からなるポリウレタン層4を形成することができる。また、ポリウレタン層4を、必要に応じて、上記した条件で加熱養生することもできる。
ポリウレタン層4の厚みは、ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.05g/m2以上、好ましくは、0.1g/m2以上、より好ましくは、0.2g/m2以上、さらに好ましくは、0.5g/m2以上、とりわけ好ましくは、1.0g/m2以上であり、また、例えば、10.0g/m2以下、好ましくは、7.0g/m2以下、より好ましくは、5.0g/m2以下、さらに好ましくは、2.5g/m2以下、とりわけ好ましくは,2.0g/m2以下である。
ポリウレタン層4の厚みが上記の範囲であれば、その厚みによって優れたガスバリア性を得ることができ、また、過度な厚みによるクラックの発生を抑制して、優れた耐久性(耐熱水性)を得ることができる。
また、このようにして得られる積層フィルム1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
そして、上記の積層フィルム1の製造方法によれば、密着性およびガスバリア性に優れ、さらには、耐熱水性にも優れる積層フィルム1を効率よく得ることができる。
また、このようにして得られる積層フィルム1においては、基材2/金属蒸着層3/ポリウレタン層4がこの順に積層されており、そのポリウレタン層4が、上記のコーティング組成物により得られる。そのため、上記の積層フィルム1は、密着性およびガスバリア性に優れ、さらには、耐熱水性にも優れる。
とりわけ、上記のコーティング組成物において、主剤中のポリウレタンディスパージョンが、カルボキシ基含有ポリオールを使用して得られる場合には、そのカルボキシ基含有ポリオールに由来するカルボキシ基に応じて、エポキシシランおよび水分散性ポリイソシアネートの含有割合が、適宜の範囲に調整される。
すなわち、ポリウレタンディスパージョン中のカルボキシ基に対するエポキシシラン(エポキシ基)の割合と、カルボキシ基およびエポキシシランの反応により生じる水酸基に対する水分散性ポリイソシアネートの割合と、ポリウレタンディスパージョン中の水酸基に対する水分散性ポリイソシアネートの割合とが適宜調整され、さらに、金属蒸着層に対するエポキシシラン中のシラノール基の割合が、適宜調整される。これらの割合をバランスよく調整することにより、とりわけ優れた密着性、ガスバリア性および耐熱水性を得ることができる。
そのため、積層フィルム1は、ガスバリア性が要求される包装材料、具体的には、医薬品などの包装材料、食品包装材料、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用され、とりわけ、食品包装材料として、好適に使用される。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
合成例1(ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)143.2g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI、エボニック社製)25.0g、エチレングリコール29.2g、トリメチロールプロパン2.7g、ジメチロールプロピオン酸14.8gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.6gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.11%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン11.0gにて中和させた。
次いで、反応液を838.0gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、48.4gのイオン交換水に24.2gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)を得た。
得られたPUD1は、pH8.6、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は60nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.6質量%であった。
合成例2(ポリウレタンディスパージョン2(PUD2)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)54.2g、タケネート600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)111.9g、エチレングリコール28.7g、グリセリン1.9g、ジメチロールプロピオン酸16.6gおよび溶剤としてメチルエチルケトン96.7gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.70%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン12.4gにて中和させた。
次いで、反応液を837.5gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、48.9gのイオン交換水に24.4gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン2(PUD2)を得た。
得られたPUD2は、pH8.8、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は42nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は40.0質量%であった。
合成例3(ポリウレタンディスパージョン3(PUD3)の合成
VestanatIPDI(3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、IPDI、エボニック社製)67.7g、タケラックU−5620(数平均分子量2000のポリエステルポリオール、三井化学社製)146.6g、トリエチレングリコール5.5g、ジメチロールプロピオン酸10.8gおよび溶剤としてアセトニトリル79.6gを混合し、触媒としてオクチル酸錫(スタノクト、エーピーアイコーポレーション社製)0.03g添加し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が3.10%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン8.1gにて中和させた。
次いで、反応液を863.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、22.6gのイオン交換水に11.3gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
その後、1時間熟成反応させ、アセトニトリルとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン3(PUD3)を得た。
得られたPUD3は、pH7.8、粘度18mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は50nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は14.0質量%であった。
各合成例における配合処方を、表1に示す。
なお、表中の略号の詳細を下記する。
m−XDI:タケネート500、1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製
H6XDI:タケネート600、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−H6XDI、三井化学社製
H12MDI:VestanatH12MDI、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、エボニック社製
IPDI:VestanatIPDI、イソホロンジイソシアネート、IPDI、エボニック社製
U−5620:タケラックU−5620、数平均分子量2000のポリエステルポリオール、三井化学社製
MEK:メチルエチルケトン
TEA:トリエチルアミン
実施例1〜16および比較例1〜9
・コーティング組成物の調製
表2〜4に記載の割合で、イオン交換水を撹拌しながら2−プロパノールを添加し、さらに、主剤としてのポリウレタンディスパージョン(上記の合成例で得られたPUD)を添加し、混合した。次いで、得られた混合液に、表2〜4に記載の割合で、硬化剤を添加した。
具体的には、上記で得られた混合液に、商品名KBM−403(エポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製)を添加して5分間混合した。次いで、商品名タケネートWD−725(水分散性ポリイソシアネート、ポリアルキレンオキサイド変性ポリイソシアネート、三井化学社製)を添加して10分間混合した。
これにより、コーティング組成物を得た。各コーティング組成物中の固形分割合を、表2〜4に示す。
・積層体の製造
基材としてのポリエステルフィルム(商品名E5102、厚み12μm、東洋紡社製)の一方面に、連続式真空蒸着機(アルバック社製)を用いて、表2〜4に記載の酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化ケイ素(SiO2)を蒸着(1×10−5Pa真空条件下、IB方式)させ、厚み15nmの金属蒸着層を得た。
次いで、金属蒸着層の一方面に、上記で得られたコーティング組成物を、表2〜4に記載の積層量(g/m2)となるようにバーコーターを用いてコーティングし、110℃で1分間乾燥させ、表2〜4に記載の条件で養生させることにより、ポリウレタン層を形成した。
これにより、積層体を得た。
評価
各実施例および各比較例において得られた積層体を、以下の手順にて評価した。その結果を、表2〜4に併せて示す。
(1)ラミネートフィルムの製造
積層体のポリウレタン層に、接着剤としてタケラックA−310(三井化学社製)とタケネートA−3(三井化学社製)との混合物(タケラックA−310/タケネートA−3=10/1(質量比))を、乾燥厚み3.0g/m2となるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。
次いで、接着剤の塗布面に、未延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロCP RXC−22(CPPフィルム)、#60、三井化学東セロ社製)をラミネートし、40℃で2日間養生した。これにより、ラミネートフィルムを得た。
(2)密着性および耐熱水性(ラミネート強度)
上記で得られたラミネートフィルムのラミネート強度を、JIS K 6854(1999年)に準拠したT字剥離試験(15mm幅)にて測定した。
具体的には、まず、ラミネートフィルムの最下層であるポリエステルフィルムと、ラミネートフィルムの最上層であるCPPフィルムとを互いに反対方向に引っ張り、中間層である金属蒸着層とポリウレタン層とを僅かに剥離させ、その界面を露出させた。
その後、上記のT字剥離試験により、金属蒸着層とポリウレタン層との界面のラミネート強度を、乾燥状態で測定した。
また、上記のように金属蒸着層とポリウレタン層とを僅かに剥離させた後、金属蒸着層とポリウレタン層との界面の界面に水を付着させ、湿潤させた。そして、上記のT字剥離試験により、金属蒸着層とポリウレタン層との界面のラミネート強度を、湿潤状態で測定した。
さらに、ラミネートフィルムを120℃で30分間0.2MPaで加圧し、レトルト処理(熱水処理)した。
その後、レトルト処理(熱水処理)されたラミネートフィルムの、金属蒸着層とポリウレタン層との界面のラミネート強度を、湿潤状態で測定した。
(3)ガスバリア性および耐熱水性(酸素透過度および水蒸気透過度)
・酸素透過度
ラミネートフィルムの酸素透過度を、酸素透過度測定装置(MOCON社、OX−TRAN 2/20)にて、20℃、相対湿度80%(80%RH)の条件下で測定した。
なお、酸素透過量は、1m2、1日および1気圧当たりの透過量として測定した。
さらに、ラミネートフィルムを120℃で30分間0.2MPaで加圧し、レトルト処理(熱水処理)した。
その後、レトルト処理(熱水処理)されたラミネートフィルムの、酸素透過度を、上記の条件で測定した。
・水蒸気透過度
ラミネートフィルムの水蒸気透過度を、JIS Z 0222(1959年)「防湿包装容器の透湿度試験方法」およびJIS Z 0208(1976年)「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の条件に準じ、次の手法で評価した。
すなわち、ラミネートフィルムを2枚用い、CPPフィルムが内面になるように重ねて3方をヒートシールし、袋状にした。その後、内容物としてドライマット(吸湿剤)を入れ、もう1方をヒートシールし、表面積が0.003m2になるように袋を作成した。これを40℃、90%RHの条件で質量増加がほぼ一定になるまで放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
さらに、ラミネートフィルムを120℃で30分間0.2MPaで加圧し、レトルト処理(熱水処理)した。
その後、レトルト処理(熱水処理)されたラミネートフィルムの、酸素透過度を、上記の条件で測定した。
なお、表中の略号の詳細を下記する。
KBM403:エポキシシラン、商品名KBM−403、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製
KBM603:エポキシシラン、商品名KBM−603、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製
WD−725:水分散性ポリイソシアネート、商品名タケネートWD−725、ポリアルキレンオキサイド変性ポリイソシアネート、三井化学社製
XWD−HS7:水分散ポリイソシアネート、商品名タケネートXWD−HS7、三井化学社製
また、表中の「材料破壊」とは、ポリエステルフィルムおよび/または金属蒸着層の材料破壊であり、少なくとも、積層体におけるポリウレタン層と金属蒸着層との密着性に優れることを示す。なお、ラミネート強度の数値は、積層体におけるポリウレタン層と金属蒸着層との界面剥離における強度を示す。