JP7230356B2 - 表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法 - Google Patents

表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法 Download PDF

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本発明は、表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法に関する。
亜鉛めっき鋼板は、従来から、6価クロム酸塩等を用いたクロメートによる防錆処理が広く行われ、必要に応じて、更に高度の耐食性、耐指紋性、耐傷つき性、潤滑性等を付与すべく有機樹脂による被覆が行われたり、更にその後各種塗料が上塗りされたりしていた。
近年、環境問題の高まりを背景に、クロメート処理を避ける動きがある。クロメート処理層は、それ自身で高度の耐食性及び塗装密着性を有するものであるから、このクロメート処理を行わない場合には、これらの性能が著しく低下することが予想される。そのため、クロメート処理による下地処理を行わずに、有機樹脂による一段処理のみで良好な耐食性及び塗装密着性を有する防錆層を形成することが要求されることとなってきた。
特許文献1には、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリオレフィン樹脂、水分散性シリカ、並びに、シランカップリング剤及び/又はその加水分解縮合物を含む組成物を反応させて得られた水性樹脂組成物と、チオカルボニル基含有化合物と、リン酸イオンとを含有する防錆コーティング剤、それをコーティングする防錆処理方法、それがコーティングされている防錆処理金属材が開示されている。しかし、上記方法では、シランカップリング剤と各樹脂との反応が不十分であるため、得られた皮膜中の各成分間の複合度が低くなり、耐溶剤性や耐アルカリ性が劣るという問題がある。
特許文献2には、溶解度パラメータが相違する2種の樹脂及び無機成分を含有する複合被膜を有する被覆鋼板が記載されている。しかし、架橋が不十分な皮膜が形成されるため、例えば、溶剤ラビング試験では大きな損傷を受けてしまうという問題がある。
特許文献3には、亜鉛系めっき鋼板の表面に、金属化合物、水溶性有機樹脂及び酸を含有する水性組成物を塗布して形成された皮膜層を有する表面処理亜鉛系めっき鋼板が開示されている。しかし、水溶性樹脂中のカルボキシル基の量が比較的多いため、耐アルカリ性に乏しいという問題がある。
特許文献4には、金属板の少なくとも片面に、エポキシ樹脂及びグリコールウリル樹脂により形成した有機皮膜を有する被覆鋼板が開示されている。しかし、形成されている有機皮膜が防錆剤を含有しないものであり、加工部耐食性が不十分であるという問題がある。
特許文献5には、亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、(a)水分散性樹脂及び/又は水溶性樹脂と、(b)シランカップリング剤と、(c)リン酸及び/又はヘキサフルオロ金属酸とを含有する表面処理組成物により形成された表面処理皮膜を有する表面処理鋼板が開示されている。しかし、処理剤の安定性や得られた皮膜の耐溶剤性が不十分であるという問題がある。
特許文献6には、架橋樹脂マトリックス及び無機防錆剤を含む皮膜が形成されている被覆鋼板が記載されている。しかし、加工部耐食性、耐テープ剥離性、耐溶剤性、耐アルカリ性等において、必ずしも全てに満足できる性能が得られていないため、これらの性能が改善された被覆鋼板が要求されている。
特許文献7には、水性樹脂、コロイダルシリカ、潤滑剤を含有する水性有機複合塗料によって処理された表面処理金属板が記載されている。しかし、実質的に下地処理としてクロメート処理を前提としたものであるため、有機複合塗料によって形成される皮膜だけでは、加工部耐食性や基材密着性においては不十分であり、更に性能を向上させた被覆鋼板が要求されている。
また、レギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げがされている溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき層中にSbが濃化し、更にはめっき表面にSbが露出する場合があるが、SbはZnに比べて標準電極電位が高いため、局部セル形成により亜鉛の溶出反応が促進され、十分な耐食性が得られないことがある。
また、レギュラスパングルまたはミニマイズドスパングル(以下、レギュラスパングル等という場合がある)の表面仕上げがされた溶融亜鉛めっき鋼板には、更に、耐黒変性に優れることが求められる場合がある。更に、レギュラスパングル等の表面仕上げがされた溶融亜鉛めっき鋼板には、塗装後の塗膜密着性に優れることが求められる場合がある。
特開2001-164182号公報 特開2001-199003号公報 特開2001-214283号公報 特開2003-49281号公報 特開2003-105555号公報 特開2005-281863号公報 特開2001-288582号公報
本発明は、上記現状に鑑み、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性、加工部耐食性、耐黒変性、耐溶剤性、耐アルカリ性が改善された表面処理鋼板及びその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層と、前記溶融亜鉛めっき層上に形成された皮膜とを有し、
前記溶融亜鉛めっき層は、レギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされており、
前記皮膜が、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子及びSiを含む樹脂成分と、Pとを含み、
更に、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含み、
前記皮膜中におけるSiは、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子であり、
平均粒子径が5~20nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して5~100質量%であり、
更に、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子が含まれ、
平均粒子径が70~200nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して1~30質量%であり、
前記皮膜中におけるPの含有率が燐酸換算で0.01~0.5質量%であり、
前記皮膜中におけるTiの含有率がTi換算で0.10~1.5質量%であり、
前記皮膜中におけるNbの含有率がNb換算で1.0~2.0質量%であり、
前記皮膜中におけるTaの含有率がTa換算で1.0~2.0質量%であることを特徴とする表面処理鋼板。
[2] 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層と、前記溶融亜鉛めっき層上に形成された皮膜とを有し、
前記溶融亜鉛めっき層は、レギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされており、
前記皮膜が、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子及びSiを含む樹脂成分と、Pとを含み、
更に、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含む皮膜であり(ただし、水溶性バナジウムイオンが存在する皮膜を除く)、
前記皮膜中におけるSiは、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子であり、
平均粒子径が5~20nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して5~100質量%であり、
更に、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子が含まれ、
平均粒子径が70~200nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して1~30質量%であり、
前記皮膜中におけるPの含有率が燐酸換算で0.01~0.5質量%であり、
前記皮膜中におけるTiの含有率がTi換算で0.10~1.5質量%であり、
前記皮膜中におけるNbの含有率がNb換算で1.0~2.0質量%であり、
前記皮膜中におけるTaの含有率がTa換算で1.0~2.0質量%であることを特徴とする表面処理鋼板。
[3] 前記皮膜の厚みが0.5~2.0μmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の表面処理鋼板。
[4] 前記溶融亜鉛めっき層におけるアンチモンの含有量が、0.05~0.20質量%の範囲である、[1]乃至[3]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[5] 前記樹脂成分に、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子が含まれることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[6] 前記皮膜に更に、ポリオレフィンワックス粒子が含まれることを特徴とする[1]乃至[5]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[7] 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層とを備え、前記溶融亜鉛めっき層がレギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされている溶融亜鉛めっき鋼板に、水系表面処理剤を塗布して焼き付ける工程と、
前記水系表面処理剤を焼き付けた溶融亜鉛めっき鋼板を水冷する工程と、を備え、
前記水系表面処理剤は、少なくとも、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分原料と、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子と、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子と、リン酸化合物と、が水に配合され、更に、有機チタン化合物、ニオブ酸化物またはタンタル酸化物の1種または2種以上が水に配合されてなり、
前記水系表面処理剤の配合比が、前記樹脂成分原料100質量部に対して、前記リン酸化合物がりん酸換算で0.6~2.4質量部、前記有機チタン化合物が0.10質量部超2.1質量部以下、前記酸化ニオブが1.0質量部超2.5質量部以下、前記酸化タンタルが1.0質量部超2.5質量部以下であることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
[8] 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層とを備え、前記溶融亜鉛めっき層がレギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされている溶融亜鉛めっき鋼板に、水系表面処理剤を塗布して焼き付ける工程と、
前記水系表面処理剤を焼き付けた溶融亜鉛めっき鋼板を水冷する工程と、を備え、
前記水系表面処理剤は、少なくとも、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分原料と、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子と、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子と、リン酸化合物と、が水に配合され、更に、有機チタン化合物、ニオブ酸化物またはタンタル酸化物の1種または2種以上が水に配合されてなり(ただし、皮膜中に水溶性バナジウムイオンを形成するものを除く)、
前記水系表面処理剤の配合比が、前記樹脂成分原料100質量部に対して、前記リン酸化合物がりん酸換算で0.6~2.4質量部、前記有機チタン化合物が0.10質量部超2.1質量部以下、前記酸化ニオブが1.0質量部超2.5質量部以下、前記酸化タンタルが1.0質量部超2.5質量部以下であることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
本発明によれば、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性、加工部耐食性、耐黒変性、耐溶剤性、耐アルカリ性が改善された表面処理鋼板及びその製造方法を提供できる。また、本発明の表面処理鋼板は、耐アブレージョン性にも優れたものとなる。
本発明の実施形態に係る表面処理鋼板は、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性、加工部耐食性、耐黒変性、耐溶剤性、耐アルカリ性が改善された表面処理鋼板であり、家電製品、事務機器、建材、自動車等の用途に好適に用いることができるものである。また、本実施形態の表面処理鋼板は、耐アブレージョン性にも優れたものになる。
ここで、基材密着性は、表面処理鋼板の溶融亜鉛めっき層に対する皮膜の密着性を示す。
また、耐テープ剥離性は、表面処理鋼板に粘着性の高いテープを貼付し任意の期間放置した後にテープを剥がした際の表面処理鋼板に被覆された皮膜の耐剥離性を示す。
更に、塗装密着性は、表面処理鋼板に塗装を施した場合の塗装の密着性を示す。
また、加工部耐食性は、表面処理鋼板に加工部を形成し、加工部に対して塩水噴霧試験を行った場合の耐腐食性を示す。
更に、耐黒変性は、表面処理鋼板を高温高湿環境下に放置した場合に黒変しにくさを示す。
耐溶剤性は、皮膜に対して各種の溶剤を接触させた後に塩水噴霧試験を行った場合の耐食性を示す。
耐アルカリ性は、皮膜に対してアルカリ脱脂剤を接触させた後に塩水噴霧試験を行った場合の耐食性を示す。
耐アブレージョン性は、鋼板のコイルや加工品を輸送する際の擦れにより発生し得る摩耗傷に対する耐性を示す。
本実施形態の表面処理鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層と、溶融亜鉛めっき層上に形成された皮膜とを有する。
皮膜は、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子及びSiを含む樹脂成分と、Pとを含み、更に、Nb、Ta、Tiから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含む。
また、皮膜の動摩擦係数は、0.20以下となっている。
以下、本実施形態の表面処理鋼板について詳細に説明する。
(鋼板)
本実施形態において、表面に溶融亜鉛めっき層の形成される鋼板としては、特に限定されるものではない。例えば、鋼板として、極低C型(フェライト主体組織)、Al-k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等、いずれの型の鋼板を用いてもよい。
(溶融亜鉛めっき層)
溶融亜鉛めっき層は、亜鉛を含み、更に、微量のSbを含むものであり、鋼板の片面または両面の表面に形成されている。Sbは、例えば0.05~0.20質量%の範囲で溶融亜鉛めっき層中に含有されているとよい。Sb以外の残部は亜鉛及び不純物である。Sbを含む溶融亜鉛めっき層では、Sbを含まない場合と比較して、表面処理鋼板の耐食性が低くなる傾向がある。Sbを含みスパングル模様が形成された溶融亜鉛めっき層では、スパングル模様を構成する亜鉛の結晶粒の粒界にSbが濃化し、更にはめっき表面にSbが露出する場合がある。SbはZnに比べて標準電極電位が高いため、局部セル形成により亜鉛の溶出反応が促進され、十分な耐食性が得られない。本実施形態では、溶融亜鉛めっき層がSbを含むものであっても、溶融亜鉛めっき層上に形成された皮膜によって、優れた耐食性及び塗膜密着性が得られる。
溶融亜鉛めっき層のめっき付着量は特に制限されず、通常の範囲内でよい。
また、本実施形態の溶融亜鉛めっき層は、合金化処理が行われていないめっき層である。このような溶融亜鉛めっき層には、表面にスパングル模様またはミニマイズドスパングル模様が形成される。スパングル模様またはミニマイズドスパングル模様の作り分けは、例えば、溶融亜鉛めっき工程時にミストスプレー処理等を行うか否かで、作り分けが可能になる。
(皮膜)
皮膜は、溶融亜鉛めっき層上に形成されたものである。
皮膜は、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子(A-1)及びSiを含む樹脂成分と、P(リン)とを含み、更に、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)から選ばれる少なくとも1種または2種以上を含む。
ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子(A-1)を含む樹脂成分には、更に、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)が含まれていてもよい。この場合、ポリウレタン樹脂粒子(A-1)及びエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)は、質量比で20:80~90:10の範囲で含まれるとよい。
ポリウレタン樹脂粒子(A-1)は、ポリカーボネート基を有するものであり、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)は、エチレン-メタクリル酸共重合樹脂のアルカリ金属、アンモニア及び/又はアミンによる中和物からの誘導体であることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂粒子(A-1)及びエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)はそれぞれ、平均粒子径が20~100nmであり、かつ、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有することが好ましい。
また、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子(A-1)を含む樹脂成分には、更に、Si(珪素)として、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子(B)が含まれる。酸化ケイ素粒子(B)は、樹脂粒子(A-1)及び(A-2)の合計量に対して5~100質量%であるとよい。
本実施形態の表面処理鋼板は、皮膜に、上記(A-1)~(B)を含むものであるため、耐テープ剥離性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐アブレージョン性に優れたものになる。
上記樹脂成分は、樹脂粒子(A-1)、(A-2)及び酸化ケイ素粒子(B)の反応により得られるものである。また、この反応には、有機チタン化合物(D-1)が関わる場合もある。上記反応は、金属板の表面上に皮膜を形成する際に行われてもよいし、また、皮膜形成前に反応の一部を行い、皮膜形成時に反応を完結させてもよい。
また、皮膜には、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子(C)が含まれてもよい。これにより、耐アブレージョン性を更に改善できる。
更に、皮膜には、Tiとしての有機チタン化合物(D-1)、Nbとしての酸化ニオブ(D-2)、Taとしての酸化タンタル(D-3)の1種または2種以上が含まれる。皮膜中におけるTiの含有率がTi換算で0.10~1.5質量%であることが好ましく、Nbの含有率はNb換算で1.0~2.0質量%であることが好ましく、Taの含有率はTa換算で1.0~2.0質量%であることが好ましい。皮膜中にTi、Nb、Taの1種または2種以上を含有させることで、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性を大幅に改善できる。また、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性も改善する。
更に、皮膜には、Pとして、リン酸化合物(E)が含まれる。皮膜中におけるPの含有率は、燐酸換算で0.01~0.5質量%であることが好ましい。皮膜中にPを含有させることで、加工部耐食性、耐溶剤性、耐アルカリ性及び耐黒変性を大幅に改善できる。
更に、皮膜には、平均粒子径が0.5~4μmであって、軟化点が100~140℃であるポリオレフィンワックス粒子(F)が含まれていてもよい。これにより、耐アブレージョン性を更に改善することができる。特に、柔らかで潤滑性に優れるポリオレフィンワックス粒子(F)と、比較的粒子径が大きくて、硬度が高い酸化ケイ素粒子(C)を組み合わせることによって、表面の動摩擦係数と静摩擦係数とを調整し、耐アブレージョン性と表面処理鋼板のハンドリング性向上の両立を図ることができる。
皮膜の膜厚は0.5~2.0μmの範囲が好ましい。厚みが0.5μm未満では十分な加工部耐食性、耐溶剤性、耐アルカリ性が得られないため好ましくない。また、膜厚が2.0μmを超えると、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性が低下するおそれがある。
皮膜の動摩擦係数は0.20以下であることが好ましい。これにより、耐アブレージョン性を更に改善できる。
上記樹脂粒子(A-1)としては、平均粒子径が20~100nmであり、かつ、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂であれば特に限定されないが、ポリカーボネート系ポリウレタンが耐溶剤性、耐アルカリ性等に優れる点で好ましい。上記ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂粒子は、イソシアネート基含有化合物とポリカーボネートポリオール、低分子量ポリオール、及び活性水素基と親水性基を含有する化合物とを反応させてポリウレタンプレポリマーを製造し、次いで上記親水性基を中和剤により中和したのち、この中和プレポリマーを、活性水素基を含有するアルコキシシラン類及びポリアミンを含んだ水中に分散させ、鎖延長させることにより得ることができる。
上記イソシアネート基含有化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4-トルイジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール-A及び水添ビスフェノール-Aからなる群から選ばれた1種又は2種以上のグリコールとジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等とを反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
上記低分子量ポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
上記活性水素基と親水性基を含有する化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエタンスルホン酸等のスルホン酸含有化合物もしくはこれらの誘導体、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸等のカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体が挙げられる。上記ポリウレタン樹脂粒子の製造の際には、これらの化合物を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用する。
カルボキシル基又はスルホン酸基のような親水性基は、ポリウレタンプレポリマーを水中に良好に分散させるために、あらかじめ中和剤を用いて中和する。
上記中和剤の具体例としては、アンモニア又はトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記活性水素基含有アルコキシシラン類の具体例としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類が挙げられる。
鎖延長に用いる上記ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、ヒドラジン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリオール等の活性水素化合物とイソシアネート基含有化合物からポリウレタンプレポリマーを得る反応は、有機溶剤の存在下又は非存在下で、反応温度30~100℃で行われるのが好ましい。
有機溶剤を使用する場合は、比較的水への溶解度の高いものが好ましく、上記有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
上記ポリウレタンプレポリマーの水中への分散の方法としては、例えばホモジナイザー、ミキサー等を用いる方法が挙げられる。この際の温度は室温~70℃程度が好ましい。
溶剤中で上記反応を行った場合には、必要に応じて溶剤を減圧下に蒸留して除くことができる。
また、皮膜には、上記樹脂粒子(A-2)を含んでもよい。上記樹脂粒子(A-2)としては、平均粒子径が20~100nmであり、かつ、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有するエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂であれば特に限定されないが、なかでも、エチレン-メタクリル酸共重合樹脂を、アルカリ金属の水酸化物及び/又はアンモニア又はアミンで中和、水分散化させた樹脂液に、エポキシ基含有アルコキシシラン類を反応させて得られる樹脂粒子が、微粒子で、高性能皮膜を形成しうるという点で好ましい。
上記エポキシ基含有アルコキシシラン類の具体例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ基含有アルコキシシラン類は、上記水性分散樹脂の固形分に対して、0.1~20質量%の割合で反応させることが好ましい。さらに好ましくは1~10質量%の範囲である。この配合量が0.1質量%未満では、鋼材表面に形成される皮膜の耐アルカリ性や塗料等の硬化性樹脂との密着性が低下し、20質量%を超えると水性被覆剤の浴安定性が低下する場合がある。
上記エポキシ基含有アルコキシシランとの反応に際しては、多官能エポキシ化合物を併用して処理を行うものであってもよい。上記エポキシ化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グルセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ基含有アルコキシシラン類及び多官能エポキシ化合物と上記エチレン-不飽和カルボン酸の水分散液との反応は、50~100℃で0.5~12時間行うことが好ましい。
上記ポリウレタン樹脂粒子(A-1)とエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)を併用する場合は、(A-1):(A-2)の質量比が20:80~90:10の割合で併用される。樹脂粒子(A-1)の比率が20質量%に満たないと、皮膜の疎水性が高くなり、耐テープ剥離性が低下したり、ホワイトガソリン等の高疎水性溶剤に対する耐溶剤性が劣る場合がある。一方、樹脂粒子(A-1)の比率が90質量%を超えると、皮膜の親水性が高くなり、耐アルカリ性やエタノール等の高親水性溶剤に対する耐溶剤性が低下したり、皮膜が脆くなって加工部耐食性の悪化を招いたりする。
上記樹脂粒子(A-1)及び(A-2)は、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有することによって、酸化ケイ素粒子(B)や有機チタン化合物(D-1)との反応を生じ、複合被膜を形成することができ、耐溶剤性や耐アルカリ性等を改善することができる。
上記樹脂粒子(A-1)及び(A-2)は、いずれも平均粒子径が20~100nmであることが好ましい。ここで、平均粒子径は動的光散乱法によって測定することができる。平均粒子径を20nm以上にすることで、粘度が高すぎずに処理剤安定性が高くなり、塗装作業性等が向上する。また、平均粒子径を100nm以下にすることで、皮膜性能面で耐テープ剥離性や耐溶剤性等を向上できるようになる。
上記樹脂粒子(A-1)は、水分散性を得るための親水性官能基、例えば、カルボン酸基やスルホン酸基の導入量及びそれを中和する中和剤の種類や量等の制御により、平均粒子径を上記範囲内に調整することができる。
上記樹脂粒子(A-2)は、中和剤種、水分散条件、アルコキシシラン化合物の種類や量、多官能エポキシ化合物の種類や量等の制御により、平均粒子径を上記範囲内に調整することができる。
次に、上記酸化ケイ素粒子(B)は、平均粒子径が5~20nm程度のものが好適であり、コロイダルシリカやヒュームドシリカ等から適宜選択して用いることができる。具体例としては、スノーテックスN、スノーテックスC(日産化学工業)やアデライトAT-20N、AT-20A(旭電化工業)やカタロイドS-20L、カタロイドSA(触媒化成工業)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記皮膜は、上記酸化ケイ素粒子(B)が上記樹脂粒子(A-1)及び(A-2)の合計量に対して5~100質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、鋼板表面に形成される皮膜の硬度や耐食性の低下が抑制される。また、100質量%以下にすることで、造膜性や耐水性の低下を防止できる。より好ましくは、30~70質量%であり、より好ましくは50~70質量%である。
皮膜には、Tiとしての有機チタン化合物(D-1)、Nbとしての酸化ニオブ(D-2)、Taとしての酸化タンタル(D-3)の1種または2種以上が含まれる。
上記有機チタン化合物(D-1)の具体例としては、ジプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジブトキシビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタンモノアンモニウム塩、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタンジアンモニウム塩、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)等を挙げることができる。これらは、単独でも良く、2種以上を併用してもよい。
上記皮膜は、樹脂粒子(A-1)及び酸化ケイ素粒子(B)が相互に結合した状態、または、樹脂粒子(A-1)及び(A-2)と酸化ケイ素粒子(B)が相互に結合した状態、若しくは、樹脂粒子(A-1)及び(A-2)、酸化ケイ素粒子(B)、及び有機チタン化合物(D-1)が相互に結合した状態のものである。すなわち、樹脂粒子表面の官能基、酸化ケイ素粒子表面の官能基、有機チタン化合物の官能基が結合を形成し、複合化した状態である。
上記結合は、主として樹脂粒子(A-1)及び(A-2)のSi-OH及び/又はSi-OR基、酸化ケイ素粒子(B)表面のSi-OH基、有機チタン化合物(D-1)のTi-OH及び/又はTi-OR´基が反応することによって形成される結合であり、Si-O-Si結合、Si-O-Ti-O-Si結合等であると考えられる。これらの結合によって有機樹脂粒子と無機粒子が化学的に強固な結合を形成するという有利な効果が得られる。なお、有機チタン化合物(D-1)を含有しない場合は、Si-O-Ti-O-Si結合による効果は生じない。
上記皮膜は、チタン原子の含有率が皮膜に対して0.10~1.5質量%であることが好ましい。Tiが0.10質量%未満であると、形成される皮膜内の各成分の複合化が不十分であり、皮膜の性能が低下し、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が低下するおそれがある。Tiが1.5質量%を超えると、皮膜の親水性が高くなりすぎて皮膜の性能が低下し、基材密着性、耐テープ剥離性及び塗装密着性が低下するおそれがある。また、使用する水系表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。より好ましくは、0.3~1.0質量%である。
上記酸化ニオブ(D-2)及び上記酸化タンタル(D-3)はそれぞれ、酸化ニオブコロイド粒子、酸化タンタルコロイド粒子であることが好ましい。これにより、酸化ニオブコロイド粒子または酸化タンタルコロイド粒子を複合化した皮膜を形成することができ、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性をより向上させることができる。上記酸化ニオブコロイド粒子や酸化タンタルコロイド粒子は、平均粒子径が小さい方がより安定して緻密な酸化ニオブまたは酸化タンタルを含有する皮膜が形成されるため、被処理物に対して安定して加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性を付与することができ、より好ましい。
上記酸化ニオブコロイド粒子及び酸化タンタルコロイド粒子はそれぞれ、ニオブの酸化物またはタンタルの酸化物が水中に微粒子状態で分散しているものをいい、例えば、厳密には酸化ニオブや酸化タンタルが形成されず、水酸化ニオブまたは水酸化タンタルと酸化ニオブまたは酸化タンタルの中間状態でアモルファス状態になっているものであってもよい。
上記複合皮膜の形成に使用される水性被覆剤中に添加する酸化ニオブ粒子または酸化タンタル粒子としては、公知の方法によって製造された酸化ニオブゾルまたは酸化タンタルゾルを使用することができる。上記酸化ニオブゾルとしては特に限定されず、例えば、特開平6-321543号公報、特開平8-143314号公報、特開平8-325018号公報等に記載された公知の方法によって製造されたもの等を挙げることができる。また、多木化学株式会社によって市販されている酸化ニオブゾルを使用することもできる。
上記酸化ニオブコロイド粒子及び上記酸化タンタルコロイド粒子は、平均粒子径が100nm以下であることが好ましい。上記平均粒子径は、2~50nmであることがより好ましく、2~20nmであることが更に好ましい。上記平均粒子径は小さい方が、より安定して緻密な酸化ニオブまたは酸化タンタルを含んでなる皮膜が形成されるため、被処理物に対して安定して防錆性を付与することができ、より好ましい。上記酸化ニオブコロイド粒子及び酸化タンタルコロイド粒子の平均粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
皮膜におけるNbの含有率はNb換算で1.0~2.0質量%であることが好ましく、Taの含有率はTa換算で1.0~2.0質量%であることが好ましい。Nb、Taのそれぞれの含有量が下限値未満では、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性を向上させることができない。また、Nb、Taのそれぞれの含有量が上限値を超えると、基材密着性、耐テープ剥離性及び塗装密着性が低下するおそれがある。
皮膜には、更に、P(リン)としてリン酸化合物(E)が含まれる。
上記リン酸化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記リン酸化合物(E)を含有させると、リン酸イオンが、溶融亜鉛めっき層の金属素地表面にリン酸塩層を形成して不動態化させ、溶融亜鉛めっき層の防錆性を向上させることができる。
皮膜中におけるPの含有率は、燐酸換算で0.01~0.5質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性を向上させることができない。また、0.5質量%を超えると、耐黒変性が大幅に低下するので好ましくない。
また、皮膜には、更に、ポリオレフィンワックス粒子(F)を含有してもよい。ポリオレフィンワックス粒子(F)は、上記皮膜の動摩擦係数を低下させ、表面の潤滑性を高める。
一方、ポリオレフィンワックス粒子(F)は、皮膜の硬度低下や静摩擦係数の低下も招く場合がある。従って、ポリオレフィンワックス粒子(F)に加えて、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子(C)を組み合わせて使用してもよい。すなわち、上記樹脂成分の一部を構成する酸化ケイ素粒子(B)に加えて、粒子径が大きい酸化ケイ素粒子(C)を有してもよい。
酸化ケイ素粒子(C)は、ポリオレフィンワックス粒子(F)によって低下した皮膜の硬度を高め、静摩擦係数を引き上げるために、皮膜の耐アブレージョン性を向上させると同時に、被覆鋼板のコイル潰れや切り板の荷崩れ等を起こさない等、ハンドリング性を向上させる効果がある。上記諸性能を満足させるには、動摩擦係数は0.20以下、静摩擦係数は0.10超が好ましい。なお、上記酸化ケイ素粒子(C)も、酸化ケイ素粒子(B)と同様に、粒子表面のSi-OH基が、上記複合化樹脂(A)を形成する成分と反応し、Si-O-Si結合、Si-O-Ti-O-Si結合等を形成し、複合化されるものと考えられる。
平均粒子径が0.5~4μmであって、軟化点が100~140℃であるポリオレフィンワックス粒子(F)としては特に限定されず、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等の炭化水素系のワックス、これらの誘導体等を挙げることができる。上記誘導体としては特に限定されず、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等を挙げることができる。
上記ポリオレフィンワックス粒子(F)は、粒子径が0.5~4μmである。4μmを超えるものは潤滑剤の分布が不均一となったり、皮膜からの脱落が生じたりする可能性がある。また、0.5μm未満の場合は、潤滑性が不充分である場合がある。なお、ポリオレフィンワックス粒子(F)の粒子径は、動的光散乱法によって測定した値である。
上記ポリオレフィンワックス粒子(F)は軟化点が100~140℃である。100℃未満では加工時に軟化溶融して潤滑剤としての優れた特性が発揮されない場合がある。また、140℃を超える軟化点のものは、硬い粒子が表面に存在することとなり潤滑特性を低下させるので充分な潤滑性が得られない場合がある。
上記被覆鋼板における皮膜中において、上記ポリオレフィンワックス粒子(F)の含有量は、樹脂粒子(A-1)及び(A-2)の合計量を100質量%としたときに、0.1~20質量%にすることが好ましく、1~5質量%にすることがより好ましい。0.1質量%以上であれば、摩擦係数低下効果、耐アブレージョン性向上効果が十分になり、20質量%以下にすることで、表面処理鋼板の静摩擦係数が下がりすぎず、ハンドリング性に支障をきたすおそれがない。
上記平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子(C)は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。市販のものとしては、ST-ZL、MP-1040(日産化学工業社製)、PL-7(扶桑化学工業社製)、SI-80P(触媒化成工業社製)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記酸化ケイ素粒子(C)は、粒子径が70~200nmであるとよい。200nm以下であれば水系表面処理剤中で沈降しにくくなる。また、70nm以上であれば、静摩擦係数や表面硬度の引き上げ効果が十分になる。なお、酸化ケイ素粒子(C)の粒子径は、動的散乱光法によって測定した値である。
上記被覆鋼板における皮膜中において、上記酸化ケイ素粒子(C)の含有量は、樹脂粒子(A-1)及び(A-2)の合計量を100質量%としたときに、1~30質量%にすることが好ましく、3~20質量%にすることがより好ましく、5~10質量%にすることが更に好ましい。1質量%以上であれば、静摩擦係数の引き上げ及び表面硬度の向上の効果が十分になり、30質量%を超えると、加工部耐食性の低下を抑制できる。
上記表面処理鋼板において、皮膜は、上記(A)~(F)以外に、その他の成分を含有するものであってもよい。その他の成分として、例えば、顔料を配合してもよい。上記顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、アルミナ(Al)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe、Fe)等の無機顔料や、有機顔料等の各種着色顔料等を用いることができる。
次に、本実施形態の表面処理鋼板の製造方法を説明する。
本実施形態の表面処理鋼板は、アンチモンを含む溶融亜鉛めっき層を備えた溶融亜鉛めっき鋼板に、水系表面処理剤を塗布して焼き付ける工程と、水系表面処理剤を焼き付けた溶融亜鉛めっき鋼板を水冷する工程とを順次行うことにより製造される。
水系表面処理剤は、少なくとも、上記のポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子(A-1)を含む樹脂成分原料と、上記の酸化珪素粒子(B)と、上記のリン酸化化合物(E)と、が水に配合され、更に、上記の有機チタン化合物(D-1)、上記のニオブ酸化物(D-2)または上記のタンタル酸化物(D-3)の1種または2種以上が水に配合されてなるものである。
水系表面処理剤には、更に、樹脂成分原料として上記のエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)が含まれていてもよく、平均粒子径が70~200nmである上記の酸化ケイ素粒子(C)が含まれてもよく、上記のポリオレフィンワックス粒子(F)が含まれていてもよい。
水系表面処理剤の配合比は、樹脂成分原料100質量部に対して、リン酸化合物(E)がりん酸換算で0.6~2.4質量部、有機チタン化合物(D-1)が0.10質量部超2.1質量部以下、酸化ニオブ(D-2)が1.0質量部超2.5質量部以下、酸化タンタル(D-3)が1.0質量部超2.5質量部以下、であることが好ましい。このような配合比とすることにより、本実施形態に係る皮膜を形成できる。
なお、上記以外の成分の配合比は、皮膜の説明において述べた配合比でよい。
また、水系表面処理剤には、より均一で平滑な皮膜を形成するために、消泡剤、有機溶剤、レベリング剤を用いてもよい。有機溶剤としては、塗料に一般的に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の親水性溶剤やシリコーン系、フッ素系等のレベリング剤を挙げることができる。
水系表面処理薬剤は、上記の成分を上記の配合比で水に溶解又は分散させることにより調製できる。
本実施形態では、このようにして得られた水系表面処理剤を、溶融亜鉛めっき層上に塗布することにより塗膜を形成する。溶融亜鉛めっき層上に水系表面処理剤を塗布する方法としては、特に限定されず、一般に使用されるロールコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を適宜採用することができ、特にロールコータを用いることが好ましい。ロールコータを用いて塗布する場合、周速比を調節することで膜厚を容易に制御できるとともに、優れた生産性が得られる。
次に、所定の時間保持した塗膜を乾燥させて焼き付ける。塗膜を焼き付ける際の加熱温度は、50~250℃、好ましくは70~220℃、より好ましくは80~160℃である。加熱温度が50℃未満では、水分の蒸発速度が遅く充分な成膜性が得られないため、耐溶剤性や耐アルカリ性が低下する。一方、250℃を超えると樹脂の熱分解が生じ、皮膜物性が低下して各種性能の低下を招き、また黄変等外観が悪くなる。加熱温度の保持時間は1秒~5分が好ましい。
塗膜を焼き付ける手段としては、例えば、熱風乾燥や高周波誘導加熱が挙げられる。
焼き付け後に、鋼板を水冷する。水冷によって、皮膜の形状を安定させるとともに、焼き付け時に遊離した成分を冷却水によって洗い流す。これにより、遊離成分が除去され、平面耐食性及び耐黒変性に優れた表面処理鋼板が得られるようになる。水冷以外の冷却手段として、空冷が挙げられるが、空冷工程を経て製造された表面処理鋼板は、耐黒変性が十分でなかった。原因は明確ではないが、遊離したりん酸が水によって除去されなかったため、耐黒変性が低下した可能性がある。
以上の工程により、本実施形態の表面処理鋼板が得られる。
また、本実施形態の表面処理鋼板は、上記皮膜の上に上塗り塗料を塗布して塗膜を形成して使用することもできる。上塗り塗料としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フタル酸樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等からなる塗料などが挙げられる。
上塗り塗料の塗膜の膜厚は、防錆金属製品の用途、使用する上塗り塗料の種類等によって適宜決定され、特に制限されない。通常、5~300μm程度、より好ましくは10~200μm程度である。上塗り塗料の塗膜の形成は、上記水性被覆剤により形成された皮膜の上に上塗り塗料を塗布し、加熱して乾燥、硬化させて行うことができる。乾燥温度及び時間は、塗布される上塗り塗料の種類、塗膜の膜厚等に応じて適宜調整されることになるが、通常、乾燥温度としては、50~250℃が好ましく、乾燥時間としては、5分~1時間が好ましい。上塗り塗料の塗布方法としては、塗料形態に応じて、従来公知の方法により行うことができる。
表面処理鋼板に更に上塗り塗料を塗布して塗膜を形成するものは、鋼板に形成された皮膜と上塗り塗膜とが良好な塗装密着性を有するものとなる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
ポリウレタン樹脂粒子(A-1)の水分散液の製造
製造例1
反応容器に4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、分子量2000のポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールプロピオン酸、及び溶剤としてN-メチルピロリドンを仕込み、80℃において6時間撹拌後、ジメチルエタノールアミンで中和してポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、ヒドラジン及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシランを含有する水中に、上記反応により得られたポリウレタンプレポリマー溶液をホモディスパーを用いて分散させることにより、シラノール基及び/又はエトキシシリル基を含有するポリカーボネート系ポリウレタン樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は30質量%、動的光散乱法によって測定した平均粒子径は39nmであった。
エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)の水分散液の製造
製造例2
反応容器にエチレン-メタクリル酸共重合樹脂(メタクリル酸の含有量が20質量%)、樹脂に対して5.6質量%相当の水酸化ナトリウム及び脱イオン水を加え、95℃で6時間攪拌することにより固形分20質量%の水分散樹脂液を得た。この水分散樹脂液に対して、さらにγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.8質量%、グリセロールポリグリシジルエーテルを0.8質量%を加えて、85℃で2時間反応させることによって、シラノール基及び/又はメトキシシリル基を有するエチレン-メタクリル酸共重合樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は21質量%、平均粒子径は76nmであった。
製造例3
反応容器にエチレン-メタクリル酸共重合樹脂(メタクリル酸の含有量が20質量%)、樹脂に対して3.7質量%の水酸化ナトリウム、6.3質量%のアンモニア水(25質量%)、及び脱イオン水を加え、95℃で6時間攪拌することにより固形分20質量%の水分散樹脂液を得た。この水分散樹脂液に対して、さらにγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1.2質量%、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルを0.6質量%を加えて、85℃で2時間反応させることによって、シラノール基及び/又はメトキシシリル基を有するエチレン-メタクリル酸共重合樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は21質量%、平均粒子径は84nmであった。
実施例1~34、比較例1~10の 表面処理鋼板の作成
試験板の作製
下記に記載の2種類の溶融亜鉛めっき鋼板(「GI(Sb)レギュラー」、「GI(Sb)ミニマイズド」)を60℃のアルカリ脱脂剤(サーフクリーナー155、日本ペイント社製)2質量%水溶液を用いて30秒間スプレー処理して脱脂した。
次に、上記製造例で得られた樹脂粒子を含む処理液を用いて、表1に示す配合比を有する水系表面処理剤を調製した。調製した水系表面処理剤をロールコーターで、乾燥皮膜量1g/mになるように溶融亜鉛めっき鋼板に塗布し、雰囲気温度500℃の熱風乾燥炉を用いて到達板温150℃まで焼き付けた後、冷却することで試験板を作製した。冷却方法としては、空冷または水冷とした。
このようにして、各種の表面処理鋼板を製造した。
「GI(Sb)レギュラー」
NSシルバージンク(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、アンチモン含有溶融亜鉛めっき鋼板、鋼板の板厚0.8mm、片面のめっき付着量60g/m、表面仕上げ:レギュラースパングル
「GI(Sb)ミニマイズド」
NSシルバージンク(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、アンチモン含有溶融亜鉛めっき鋼板、鋼板の板厚0.8mm、片面のめっき付着量60g/m、表面仕上げ:ミニマイズドスパングル
評価方法
皮膜中の各成分含有率、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性、加工部耐食性、耐溶剤性(エタノール、メチルエチルケトン、ホワイトガソリンの3種)、耐アルカリ性、動摩擦係数、静摩擦係数、及び耐アブレージョン性を評価した。評価は下記の方法で行った。
皮膜中の各成分含有率
表面処理鋼板の皮膜中のTi、Nb(Nb換算),Ta(Ta換算)及びP(りん酸換算)の含有率は、Ti、Nb、Ta、Pについて各種含有量の皮膜を形成し、その化学分析結果と蛍光X線強度から検量線を作成した上で、これら成分の皮膜含有率を算出した。
基材密着性
試験板をエリクセンテスターにて8mm押し出し加工したのち、押し出し部にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、強制剥離した。試験板をメチルバイオレット染色液に浸漬し、皮膜状態を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:剥離なし
2:剥離面積10%未満
1:剥離面積10%以上
耐テープ剥離性
試験板にフィラメンテープ(スリオンテック社製)を貼り、40℃、湿度80%の条件で1週間放置したのち、テープを強制剥離した。皮膜状態を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:剥離ほとんどなし
2:剥離面積50%未満
1:剥離面積50%以上
塗装密着性
試験板表面にメラミンアルキッド塗料(スーパーラック100、日本ペイント社製)をバーコーターで乾燥膜厚20μmとなるように塗布し、120℃で25分間焼き付けて塗板を作製した。一昼夜放置後沸騰水中に30分間浸漬し、取り出して1日放置してから、1mm間隔の碁盤目カット疵を100個入れ、その部分にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り、強制剥離した後の皮膜状態を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:剥離個数0
2:剥離個数49以下
1:剥離個数50以上
加工部耐食性
試験板をエリクセンテスターにて7mm押し出し加工し、試験板のエッジと裏面をテープシールし、塩水噴霧試験SST(JIS-Z-2371)を行った。120時間後の白錆発生状況を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:白錆ほとんどなし
2:白錆面積30%未満
1:白錆面積30%以上
耐黒変性
試験板を70℃、相対湿度80%の湿潤箱内に6日間保持した後、取り出して試験板の黒変状況を目視判定した。評価基準2または3を合格とした。
3:黒変した箇所の面積率が10%未満
2:黒変した箇所の面積率が10%以上、50%未満
1:黒変した箇所の面積率が50%以上
耐溶剤性
試験板をラビングテスターに設置後、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)又はホワイトガソリンを含浸させた脱脂綿を0.5kgf/cm2の荷重で5回(往復)、擦った後、試験板のエッジと裏面をテープシールし、塩水噴霧試験(JIS-Z-2371)を行った。72時間後の白錆発生状況を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:白錆ほとんどなし
2:白錆面積30%未満
1:白錆面積30%以上
耐アルカリ性
試験板を55℃のアルカリ脱脂剤(サーフクリーナー53、日本ペイント社製)2質量%水溶液(pH12.5)に攪拌しながら2分間浸漬した後、試験板のエッジと裏面をテープシールし、塩水噴霧試験(JIS-Z-2371)を行った。72時間後の白錆発生状況を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:白錆ほとんどなし
2:白錆面積30%未満
1:白錆面積30%以上
動摩擦係数
試験板をHEIDON動摩擦係数測定装置にかけ、10mmφステンレス球摺動、荷重100g、摺動速度150mm/min条件で動摩擦係数を測定した。評価基準としては0.20以下を合格とした。
耐アブレージョン性
試験板に、段ボール紙を介して10g/cmの荷重をかけ、360回/minの楕円運動を加えて摺動部にアブレージョン(摩耗傷)を発生させた。10分間試験を行った後の試験板表面の状態を観察し下記基準で評価した。評価基準2または3を合格とした。
3:黒化ほとんどなし
2:摺動部の50%未満の面積が黒化
1:摺動部の50%以上の面積が黒化
上記試験によって評価及び測定を行った結果を表2に示す。
表2の結果から、実施例1~34の表面処理鋼板は、基材密着性、耐テープ剥離性、塗装密着性、加工部耐食性、耐黒変性、耐溶剤性、耐アルカリ性に加えて、耐アブレージョン性等においても優れた性質を有することが明らかである。
比較例1は、皮膜中にPが含まれなかったため、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が不十分になった。
比較例2は、皮膜中のTi量が少ないため、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が不十分になった。
比較例3は、皮膜中のTi量が過剰なため、基材密着性、耐テープ剥離性及び塗装密着性が不十分になった。
比較例4は、皮膜中のNb量が少ないため、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が不十分になった。
比較例5は、皮膜中のNb量が過剰なため、基材密着性、耐テープ剥離性及び塗装密着性が不十分になった。
比較例6は、皮膜中のTa量が少ないため、加工部耐食性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が不十分になった。
比較例7は、皮膜中のTa量が過剰なため、基材密着性、耐テープ剥離性及び塗装密着性が不十分になった。
比較例8~10は、塗膜の焼き付け後の冷却を空冷で行ったため、皮膜中のP量が過剰になり、耐黒変性が大幅に低下した。
Figure 0007230356000001
Figure 0007230356000002
Figure 0007230356000003

Claims (8)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層と、前記溶融亜鉛めっき層上に形成された皮膜とを有し、
    前記溶融亜鉛めっき層は、レギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされており、
    前記皮膜が、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子及びSiを含む樹脂成分と、Pとを含み、
    更に、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含み、
    前記皮膜中におけるSiは、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子であり、
    平均粒子径が5~20nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して5~100質量%であり、
    更に、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子が含まれ、
    平均粒子径が70~200nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して1~30質量%であり、
    前記皮膜中におけるPの含有率が燐酸換算で0.01~0.5質量%であり、
    前記皮膜中におけるTiの含有率がTi換算で0.10~1.5質量%であり、
    前記皮膜中におけるNbの含有率がNb換算で1.0~2.0質量%であり、
    前記皮膜中におけるTaの含有率がTa換算で1.0~2.0質量%であることを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層と、前記溶融亜鉛めっき層上に形成された皮膜とを有し、
    前記溶融亜鉛めっき層は、レギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされており、
    前記皮膜が、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子及びSiを含む樹脂成分と、Pとを含み、
    更に、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含む皮膜であり(ただし、水溶性バナジウムイオンが存在する皮膜を除く)、
    前記皮膜中におけるSiは、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子であり、
    平均粒子径が5~20nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して5~100質量%であり、
    更に、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子が含まれ、
    平均粒子径が70~200nmの酸化ケイ素粒子は、樹脂成分に対して1~30質量%であり、
    前記皮膜中におけるPの含有率が燐酸換算で0.01~0.5質量%であり、
    前記皮膜中におけるTiの含有率がTi換算で0.10~1.5質量%であり、
    前記皮膜中におけるNbの含有率がNb換算で1.0~2.0質量%であり、
    前記皮膜中におけるTaの含有率がTa換算で1.0~2.0質量%であることを特徴とする表面処理鋼板。
  3. 前記皮膜の厚みが0.5~2.0μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理鋼板。
  4. 前記溶融亜鉛めっき層におけるアンチモンの含有量が、0.05~0.20質量%の範囲である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
  5. 前記樹脂成分に、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
  6. 前記皮膜に更に、ポリオレフィンワックス粒子が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
  7. 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層とを備え、前記溶融亜鉛めっき層がレギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされている溶融亜鉛めっき鋼板に、水系表面処理剤を塗布して焼き付ける工程と、
    前記水系表面処理剤を焼き付けた溶融亜鉛めっき鋼板を水冷する工程と、を備え、
    前記水系表面処理剤は、少なくとも、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分原料と、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子と、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子と、リン酸化合物と、が水に配合され、更に、有機チタン化合物、ニオブ酸化物またはタンタル酸化物の1種または2種以上が水に配合されてなり、
    前記水系表面処理剤の配合比が、前記樹脂成分原料100質量部に対して、前記リン酸化合物がりん酸換算で0.6~2.4質量部、前記有機チタン化合物が0.10質量部超2.1質量部以下、前記酸化ニオブが1.0質量部超2.5質量部以下、前記酸化タンタルが1.0質量部超2.5質量部以下であることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
  8. 鋼板と、前記鋼板の表面に配置されたアンチモンを含む溶融亜鉛めっき層とを備え、前記溶融亜鉛めっき層がレギュラスパングルまたはミニマイズドスパングルの表面仕上げとされている溶融亜鉛めっき鋼板に、水系表面処理剤を塗布して焼き付ける工程と、
    前記水系表面処理剤を焼き付けた溶融亜鉛めっき鋼板を水冷する工程と、を備え、
    前記水系表面処理剤は、少なくとも、ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分原料と、平均粒子径が5~20nmである酸化ケイ素粒子と、平均粒子径が70~200nmである酸化ケイ素粒子と、リン酸化合物と、が水に配合され、更に、有機チタン化合物、ニオブ酸化物またはタンタル酸化物の1種または2種以上が水に配合されてなり(ただし、皮膜中に水溶性バナジウムイオンを形成するものを除く)、
    前記水系表面処理剤の配合比が、前記樹脂成分原料100質量部に対して、前記リン酸化合物がりん酸換算で0.6~2.4質量部、前記有機チタン化合物が0.10質量部超2.1質量部以下、前記酸化ニオブが1.0質量部超2.5質量部以下、前記酸化タンタルが1.0質量部超2.5質量部以下であることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
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