JP2023146317A - 鋼板及び自動車部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性と共に、優れた電着塗装性を有する鋼板、及びそれを利用した自動車部品を提供すること。【解決手段】亜鉛系めっき層が少なくとも片面に設けられためっき母鋼板と、前記亜鉛系めっき層上に設けられた有機皮膜と、を有する鋼板であって、前記めっき母鋼板の、算術平均粗さRaが0.5~2.3μmであり、1インチ当りの山数PPI(peak per inch)が30~150であり、前記有機皮膜の厚みが、0.3~2.1μmであり、かつ前記めっき母鋼板の算術平均粗さRaよりも小さい、鋼板及びそれを利用した自動車部品。【選択図】なし

Description

本発明は、鋼板及び自動車部品に関する。
例えば、自動車部品の耐食性は、めっき母鋼材に化成処理後の電着塗装によって確保される。
特許文献1には、「鋼板表面に形成された亜鉛めっき層と、該めっき層表面に形成された結晶サイズが3μm以下のリン酸亜鉛被膜を有し、JIS B 0601-1994 で規定される算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、JIS B 0601-1994で規定される最大高さRyが12μm以下である表面粗さ特性を有する亜鉛めっき鋼板。」が提案されている。
特許文献1によれば、「プレス成形等により金型と接触して摺動を受けた表面の塗装仕上がりを良好にすることができる電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板」が提供できるとされている。
しかし、袋状部品の内面合わせ部や折り曲げ部等の電着塗装の付きが悪い箇所に関して、電着塗装の膜厚を十分に確保できない、すなわち耐食性が確保できない場合があり、シーラー、ワックス等の防錆副資材の適用で、それら耐食性を補う必要がある。
その点、自動車部品に、有機皮膜付き母鋼板に電着塗装した電着塗装鋼板を用いることで、耐食性を向上し、防錆副資材の省略または削減を目的とした開発が行われている。
例えば、特許文献2には「複合皮膜によって被覆された被覆鋼板であって、前記複合皮膜は、それぞれ、平均粒子径が20~100nmであり、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する、ポリウレタン樹脂粒子(A-1)及びエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子(A-2)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む複合化樹脂(A)、及びバナジウム化合物(B)が複合化した皮膜で、皮膜量が0.5~3g/mであることを特徴とする耐汗性に優れた被覆鋼板。」が提案されている。
特開2004-060020号公報 特開2009-144208号公報
しかし、耐食性を高めるために、有機皮膜の膜厚を厚くすると、膜抵抗が増大して導電性が悪くなり、電着塗装性が低下する。
そこで、本開示の課題は、耐食性と共に、優れた電着塗装性を有する鋼板、及びそれを利用した自動車部品を提供することである。
課題を解決するための手段は、次の態様を含む。
<1>
亜鉛系めっき層が少なくとも片面に設けられためっき母鋼板と、前記亜鉛系めっき層上に設けられた有機皮膜と、を有する鋼板であって、
前記めっき母鋼板の、算術平均粗さRaが0.5~2.3μmであり、1インチ当りの山数PPI(peak per inch)が30~150であり、
前記有機皮膜の厚みが、0.3~2.1μmであり、かつ前記めっき母鋼板の算術平均粗さRaよりも小さい、鋼板。
<2>
前記有機皮膜が、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する、ポリウレタン樹脂並びにエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂からなる群から少なくとも1種の樹脂を含む<1>に記載の鋼板。
<3>
前記有機皮膜が、バナジウム化合物、酸化ケイ素、有機チタン化合物、ポリオレフィンワックス、リン酸化合物、チオカルボニル化合物、酸化ニオブ、及びグアニジン化合物からなる群から少なくとも1種の添加剤を含む<1>又は<2>に記載の鋼板。
<4>
<1>~<3>のいずれか1項に記載の鋼板の成形体と、
前記鋼板の成形体における前記有機皮膜から突き出た前記亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に設けられた、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜と、
前記鋼板の成形体における前記有機皮膜と前記リン酸塩皮膜又は前記金属塩皮膜との上に設けられた、電着塗装皮膜と、
を有する自動車部品。
<5>
前記リン酸塩皮膜は、針状結晶のリン酸塩皮膜である<4>に記載の自動車部品。
<6>
前記針状結晶のリン酸塩皮膜の結晶径が、0.1~5μmである<5>に記載の自動車部品。
<7>
前記金属塩皮膜は、鉄、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、スズ、ビスマス、バナジウム、ニッケル、セリウム、モリブデン及びタングステンから選ばれる少なくとも1種と、酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、フッ素イオン、錯フッ素イオンまたは炭酸イオンとの塩を含み、結晶性又は非晶性の金属塩皮膜である<4>に記載の自動車部品。
<8>
前記結晶性又は非晶性の金属塩皮膜の厚みが、0.01~3μmである<7>に記載の自動車部品。
本開示によれば、耐食性と共に、優れた電着塗装性を有する鋼板、及びそれを利用した自動車部品が提供できる。
以下、本開示の塗装鋼板の一例について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
「好ましい態様の組み合わせ」は、より好ましい態様である。
本明細書において、「平均粒径」は、動的光散乱法により求めた個数基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径である。
本開示の鋼板は、
亜鉛系めっき層が少なくとも片面に設けられためっき母鋼板と、亜鉛系めっき層上に設けられた有機皮膜と、を有する鋼板であって、
前記母鋼板の、算術平均粗さRaが0.5~2.3μmであり、1インチ当りの山数PPI(peak per inch)が30~150であり、
前記有機皮膜の厚みが、0.3~2.1μmであり、かつ前記母鋼板の算術平均粗さRaよりも小さい。
また、本開示の自動車部品は、
上記本開示の鋼板の成形体と、
鋼板の成形体における前記有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に設けられた、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜と、
鋼板の成形体における有機皮膜とリン酸塩皮膜又は金属塩皮膜との上に設けられた、電着塗装皮膜と、
を有する。
本実施形態に係る鋼板は、母鋼板(つまり亜鉛系めっき層)が、算術平均粗さRa0.5~2.3μm、1インチ当りの山数PPI(peak per inch)30~150の所定の表面性状を有する。そして、この表面性状を有する母鋼板の表面に、厚み0.3~2.1μmで、かつ板の算術平均粗さRaよりも小さい有機皮膜が形成されている。
すると、鋼板の表面では、亜鉛系めっき層の突起部が有機皮膜から突き出るように存在する。つまり、亜鉛系めっき層の突起部が有機皮膜から露出して存在する。
そして、鋼板の成形加工後、亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全面に、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜を形成した上で、有機皮膜とリン酸塩皮膜又は金属塩皮膜との上に、電着塗装膜を形成し、自動車部品とする。
本実施形態に係る鋼板では、亜鉛系めっき層の突起部以外の亜鉛系めっき層の表面は、有機皮膜で被覆されるため、膜抵抗を抑えつつ、耐食性を高めることができる。
有機皮膜の膜抵抗が抑えられているため、電着塗装性も高めることができる。
加えて、亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全面に、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜を形成した上で、電着塗装膜を形成するため、電着塗装膜の密着性も向上し、耐食性も高めることができる。
以下から、本実施形態に係る鋼板及び自動車部品は、耐食性と共に、優れた電着塗装性を有する。
以下、本実施形態に係る鋼板及び自動車部品の詳細について説明する。
<鋼板>
(めっき母鋼板)
-めっき母鋼板の表面性状-
めっき母鋼板(つまり亜鉛系めっき層)の、算術平均粗さRaは、0.5~2.3μmであるが、0.8~2.2μmが好ましく、1.0~2.0μmがより好ましい。
めっき母鋼板(つまり亜鉛系めっき層)の、1インチ当りの山数PPI(peak per inch)は、30~150であるが、50~140が好ましく、70~130がより好ましい。
めっき母鋼板(つまり亜鉛系めっき層)が、上記表面性状を有することで、めっき母鋼板の算術平均粗さRaよりも小さい有機皮膜を形成しても、有機皮膜により十分な耐食性が付与される。
めっき母鋼板(つまり亜鉛系めっき層)の上記表面性状は、例えば、表面性状を付与するためのスキンパス(調質圧延)を実施することで得られる。スキンパス実施時のロール面の表面性状や圧力を適宜調整して、亜鉛系めっき層表面に転写することで本実施形態の上記表面性状を得られる。
めっき母鋼板の算術平均粗さRaは、JIS B 0601:1994に準じて測定される値である。ただし、測定条件は、カットオフ0.8mm、評価長さ8mmとする。
一方、めっき母鋼板の1インチ当りの山数PPI(peak per inch)は、米国のSAE規格のSAE J911に準じて評価長さを1インチ(25.4mm)とし、ピークカウントレベルを±0.654μmとして測定する。
-めっき母鋼板の構成-
めっき母鋼板は、亜鉛系めっき層が少なくとも片面に設けられている。つまり、めっき母鋼板は、母鋼板と母鋼板の少なくとも片面に設けられた亜鉛系めっき層とを有する。
母鋼板は、亜鉛系めっき層が形成される対象の鋼板である。
母鋼板は、特に限定されるものではない。鋼板としては、例えば、極低C型(フェライト主体組織)、Al-k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等のいずれの型の鋼板を用いてもよい。
亜鉛系めっき層は、亜鉛を含有するめっき層である。具体的には、亜鉛系めっき層としては、亜鉛めっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウムめっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム-シリコンめっき層、亜鉛-アルミニウムめっき層、亜鉛-アルミニウム-シリコンめっき層等の周知の亜鉛系めっき層が挙げられる。
亜鉛系めっき層は、異種金属元素または不純物として、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を少量含有しためっき層も挙げられる。
特に、亜鉛系めっき層は、耐食性の観点から、亜鉛に加え、アルミニウムを含むめっき層、アルミニウムおよびマグネシウムを含有するめっき層であることが好ましい。つまり、亜鉛合金めっき鋼板をめっき母鋼板に用いると、亜鉛めっき鋼板よりも優れた耐食性が得られるので好ましい。
具体的には、亜鉛系めっき層は、アルミニウムを0.5質量%以上60質量%以下で含有し、残部が亜鉛及び不純物からなるめっき層が好ましく、アルミニウムを0.5質量%以上60質量%以下、更にマグネシウムを0.5質量%以上15質量%以下で含有し、残部が亜鉛及び不純物からなるめっき層がより好ましい。
亜鉛、アルミニウム、マグネシウムのいずれも含む亜鉛合金めっき層としては、亜鉛-アルミニウム-マグネシウムめっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム-シリコンめっき層が例示され、各成分の割合によって、Zn-6%Al-3%Mgめっき層、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Siめっき層、Zn-55%Al-2%Mg-1.6%Siめっき層、これらめっき層に微量のNi、Cr、Ti等を含有するめっき層等が種々存在する。
亜鉛系めっき層の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
亜鉛系めっき層の鋼板片面あたりの付着量は、特に限定されないが、15g/m以上140g/m以下であることが好ましい。より好ましくは30g/m以上90g/m以下である。
亜鉛系めっき層の付着量が、15g/m未満であると、付着量が小さすぎて不めっき部分が発生し、めっきによる防食効果が発揮されないことがある。また、亜鉛系めっき層の付着量が140g/m超であると、耐食性は高いが、めっきが黒く変色する現象は発生し易い。
(有機皮膜)
-有機皮膜の厚み-
有機皮膜の厚みは、0.3~2.1μmで、めっき母鋼板の算術平均粗さRaよりも小さい。
有機皮膜が薄すぎると、耐食性が低下する。有機皮膜が厚すぎると、膜抵抗が高くなり、電着塗装性が低下する。そして、めっき母鋼板の算術平均粗さRa以上であると、電着塗装膜の密着性を高めるためのリン酸塩皮膜又は金属塩皮膜を形成する、亜鉛系めっき層の突起部が有機皮膜から突き出なくなる。それにより、耐食性が低下する。
そのため、有機皮膜の厚みは、上記範囲とする。
有機皮膜の厚みは、0.5~1.9μmが好ましく、0.7~1.7μmがより好ましい。
有機皮膜の厚みと、めっき母鋼板の算術平均粗さRaとの差(めっき母鋼板の算術平均粗さRa-有機皮膜の厚み)は、0.2~1.8μmが好ましく、0.5~1.4μmがより好ましい。
有機皮膜の厚みは、次の通り測定する。
測定対象の鋼板(又は自動車部品)から、板厚方向に沿って切断した切断面を有する試料を切り出す。試料の切り出しは、測定対象の鋼板(又は自動車部品)の中央部で行う。試験片を樹脂包埋した後、切断面を研磨し、観察面とする。
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)にて500倍で観察し、水平方向10mmの長さ分を観察し、任意の連続した亜鉛系めっき層の凹部10箇所を選択する。
選択した亜鉛系めっき層の凹部10箇所を3000倍で観察して、亜鉛系めっき層の凹部に存在する有機皮膜の最大膜厚を実測し、算出平均する。
-樹脂-
有機皮膜は、樹脂を含む。
樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂が挙げられる。樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、耐食性向上の観点から、樹脂としては、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する、ポリウレタン樹脂並びにエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂からなる群から少なくとも1種の樹脂が好ましい。
これら樹脂は、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有することによって、例えば、互いに反応が生じ、又は他の成分の反応(例えば、酸化ケイ素のSi-OH基、有機チタン化合物のTi-OH又はTi-OR基と反応)が生じ、複合的な有機皮膜を形成でき、耐食性が向上する。
シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、次の通り得ることができる。まず、イソシアネート基含有化合物と、ポリカーボネートポリオールと、低分子量ポリオールと、活性水素基及び親水性基を含有する化合物と、を反応させてポリウレタンプレポリマーを製造する。次いで、ポリウレタンプレポリマーを水中に良好に分散させるために、ポリウレタンプレポリマーの親水性基(カルボキシル基又はスルホン酸基)を中和剤により中和した後、中和ポリウレタンプレポリマーを、活性水素基含有アルコキシシラン類及び鎖延長剤としてのポリアミンを含んだ水中に分散させ、鎖延長させる。それにより、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が得られる。
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート(1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等)、芳香族ジイソシアネート(m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-若しくは2,6-トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート等)等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコールと、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等とを反応させることにより得られるポリオール等が挙げられる。
なお、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール-A及び水添ビスフェノール-Aからなる群から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等)、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
活性水素基及び親水性基を含有する化合物としては、スルホン酸含有化合物(2-ヒドロキシエタンスルホン酸等)又はこれらの誘導体、カルボキシル基含有化合物(2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸等)又はこれらの誘導体が挙げられる。
中和剤としては、アンモニア又はトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
活性水素基含有アルコキシシラン類としては、例えば、アミノ基含有シラン類(γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等)、メルカプト基含有シラン類(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等)が挙げられる。
鎖延長剤としてのポリアミンは、ポリアミン類(エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等)、ヒドラジン類等が挙げられる。
ここで、ポリオール等の活性水素化合物とイソシアネート基含有化合物からポリウレタンプレポリマーを得る反応は、有機溶剤の存在下又は非存在下で、反応温度30~100℃で行われるのが好ましい。
有機溶剤を使用する場合は、比較的水への溶解度の高いものが好ましく、上記有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
上記ポリウレタンプレポリマーの水中への分散の方法としては、例えばホモジナイザー、ミキサー等を用いる方法が挙げられる。この際の温度は室温~70℃程度が好ましい。
溶剤中で上記反応を行った場合には、必要に応じて溶剤を減圧下に蒸留して除くことができる。
シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有するエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂は、例えば、チレン-メタクリル酸共重合樹脂を、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、及びアミンの少なくとも1で中和、水分散化させた水性分散樹脂の液に、エポキシ基含有アルコキシシラン類を反応させて得られる樹脂が挙げられる。
エポキシ基含有アルコキシシラン類としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
エポキシ基含有アルコキシシラン類は、水性分散樹脂の固形分に対して、0.1~20質量%の割合で反応させることが好ましい。さらに好ましくは1~10質量%の範囲である。
エポキシ基含有アルコキシシランとの反応に際しては、多官能エポキシ化合物を併用してもよい。多官能エポキシ化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グルセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を挙げられる。
エポキシ基含有アルコキシシラン類及び多官能エポキシ化合物と水性分散樹脂との反応は、50~100℃で0.5~12時間行うことが好ましい。
ポリウレタン樹脂とエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂とは、いずれか一方を単独で用いることができるが、耐食性向上の観点から、質量比(ポリウレタン樹脂/エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂)20/80~90/10の割合で併用するのが好ましい。
ポリウレタン樹脂とエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂は、樹脂粒子として使用することがよい。樹脂粒子の平均粒径は、20~100nmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒径を上記範囲にすると、有機皮膜の形成性、亜鉛系めっき層に対する密着性が向上する。それにより耐食性が向上する。
樹脂の含有量は、有機皮膜に対して、20~100質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましい。
-防錆成分-
有機皮膜は、樹脂に加え、バナジウム化合物、酸化ケイ素、有機チタン化合物、ポリオレフィンワックス、リン酸化合物、チオカルボニル化合物、酸化ニオブ、及びグアニジン化合物からなる群から少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。
バナジウム化合物、酸化ケイ素、有機チタン化合物、リン酸化合物、チオカルボニル化合物、酸化ニオブ、及びグアニジン化合物は、防錆成分であり、耐食性向上に寄与し、有機皮膜に含有することがよい。
また、ポリオレフィンワックスは、潤滑成分であり、有機皮膜の損傷を抑制するため、有機皮膜に含有することがよい。
バナジウム化合物は、有機皮膜中に水溶性バナジウムイオンとして存在し、有機皮膜の損傷を抑制する。それにより耐食性が向上する。
バナジウム化合物としては、バナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム、バナジウム酸カリウム、バナジウムオキシアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
バナジウム化合物の含有量は、樹脂に対して、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
酸化ケイ素は、樹脂として、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する、ポリウレタン樹脂又はエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂を適用した場合、酸化ケイ素のSi-OH基がシラノール基及び/又はアルコキシシリル基が反応することで、有機皮膜が複合化し、耐食性が向上する。
酸化ケイ素としては、燃焼法シリカ、爆燃法シリカ、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、コロイダルシリカ、ゾルゲル法シリカ等の周知の酸化ケイ素が挙げられる。酸化ケイ素の市販品としては、ST-YL、ST-ZL、MP-1040(日産化学工業社製)、PL-7(扶桑化学工業社製)、SI-80P(触媒化成工業社製)等が挙げられる。
酸化ケイ素の平均粒径は、5~200nmが好ましい。酸化ケイ素の平均粒径を上記範囲にすると、耐食性が向上する。
酸化ケイ素の含有量は、樹脂に対して、5~100質量%であることが好ましく、20~50質量%がより好ましい。
有機チタン化合物は、樹脂として、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する、ポリウレタン樹脂又はエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂を適用した場合、有機チタン化合物のTi-OH又はTi-OR´基がシラノール基及び/又はアルコキシシリル基が反応することで、有機皮膜が複合化し、耐食性が向上する。
有機チタン化合物としては、例えば、ジプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジブトキシビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタンモノアンモニウム塩、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタンジアンモニウム塩、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)等が挙げられる。
有機チタン化合物の含有量は、樹脂に対して、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~2%がより好ましい。
ポリオレフィンワックスは、有機皮膜の潤滑性を高め、プレス成型等の加工を実施した際の金型との接触による有機皮膜の損傷を抑制する。有機皮膜は損傷すると耐食性が低下するため、損傷を抑制することで耐食性が最大限発揮される。
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、炭化水素系のワックス(パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等)、これらの誘導体等が挙げられる。誘導体としては、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスの軟化点は、80~130℃が好ましい。ポリオレフィンワックスの軟化点が上記範囲であると、潤滑性を十分に有機皮膜に付与できる。
軟化点は、ASTM D3954「ワックスの滴点の標準試験法」に準じて測定される。
ポリオレフィンワックスの平均粒径は、0.5~4μmが好ましい。ポリオレフィンワックスの平均粒径が上記範囲であると、ポリオレフィンワックスの軟化点が上記範囲であると、潤滑性を十分に有機皮膜に付与できる。
ポリオレフィンワックスの含有量は、樹脂に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
リン酸化合物は、リン酸イオンが、亜鉛系めっき層表面にリン酸塩層を形成して不動態化させ、耐食性を向上させることができる。
リン酸化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩類等が挙げられる。
リン酸化合物の含有量は、樹脂に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
チオカルボニル化合物は、白錆を防止し、耐食性を向上させる。
チオカルボニル化合物としては、下記式(1)で表されるチオカルボニル化合物が挙げられる。
式(1):X-C(=S)-Y
式中、X、Yは、同一又は異なって、H、OH、SH若しくはNHを表すか、又は、置換基としてOH、SH若しくはNHを有していてもよく、かつ、-O-、-NH-、-S-、-CO-若しくは-CS-を含んでもいてもよい炭素数1~15の炭化水素基を表し、XとYとが結合して環を形成してもよい。
一般式(1)で表されるチオカルボニル化合物は、下記式(I)に示すチオカルボニル基を有する化合物を指し、その中でも下記式(II)に示す、窒素原子又は酸素原子を有するチオカルボニル基が好ましい。
式(I):-C(=S)-
式(II):N-C(=S)-、又はO-C(=S)-
チオカルボニル化合物としては、水溶液中、又は、酸若しくはアルカリの存在下の条件において、チオカルボニル基含有化合物を形成することのできる化合物も使用することができる。
チオカルボニル化合物として、具体的には、式:N-C(S)-Nで表されるチオ尿素及びその誘導体(例えば、メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、エチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、1,3-ジブチルチオ尿素、フェニルチオ尿素、ジフェニルチオ尿素、1,3-ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-チオ尿素、エチレンチオ尿素、プロピレンチオ尿素等)が挙げられる。
チオカルボニル化合物として、具体的には、式:R-C(=S)-OH、又は式:R-C(=S)-SHで表されるカルボチオ酸類及びその塩類(例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸、ジチオ酢酸、メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸トリエチルアミン塩、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリン塩、o-エチルキサントゲン酸カリウム等)も挙げられる。
チオカルボニル化合物の含有量は、樹脂に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
酸化ニオブは、白錆を防止し、耐食性を向上させる。
酸化ニオブは、公知の方法によって製造された酸化ニオブゾルを使用することができる。上記酸化ニオブゾルとしては特に限定されず、例えば、特開平6-321543号公報、特開平8-143314号公報、特開平8-325018号公報等に記載された公知の方法によって製造されたもの等が挙げられる。また、多木化学株式会社によって市販されている酸化ニオブゾルを使用してもよい。
酸化ニオブの平均粒径は、100nm以下が好ましく、2~50nmがより好ましく、2~20nmであることが更に好ましい。
酸化ニオブの含有量は、樹脂に対して、Nb換算で、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~3質量%がより好ましい。
グアニジン化合物は、白錆を防止し、耐食性を向上させる。
グアニジン化合物としては、下記式(2)で表されるグアニジン化合物が挙げられる。
式(2):X’-NH-C(=NH)-NH-Y’
式中、X’及びY’は、同一又は異なって、H、NH、フェニル基若しくはメチルフェニル基(トリル基)を表すか、又は、置換基としてH、NH、フェニル基若しくはメチルフェニル基(トリル基)を有していてもよく、かつ、-C(=NH)-、-CO-若しくは-CS-を含む基を表す。
グアニジン化合物として、具体的には、グアニジン、アミノグアニジン、グアニルチオ尿素、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、1,3-ジフェニルグアニジン等を挙げることができる。
グアニジン化合物の含有量は、樹脂に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~3質量%がより好ましい。
-その他成分-
有機皮膜には、周知のその他成分を含んでもよい。
その他成分としては、例えば無機顔料(酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、アルミナ(Al)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe、Fe)、有機顔料等が挙げられる。
-有機皮膜の形成-
有機皮膜は、上記成分に加え、有機溶剤を含む塗料を用いて形成する。塗料には、消泡剤、レベリング剤等を添加してもよい。
有機皮膜の形成は、一般に使用される、バーコート法、ロールコート法、エアスプレー法、エアレススプレー法、浸漬法等を適宜採用して、塗料を塗布し、塗膜を加熱する。加熱温度は、50~250℃が好ましく、70~220℃である。
<自動車部品>
(鋼板の成形体)
鋼板の成形体は、上記本開示の鋼板を成形した成形体である。鋼板の成形は、プレス成形、曲げ加工等、周知の成形法が採用できる。
(リン酸塩皮膜)
リン酸塩皮膜を構成するリン酸塩は、りん酸のアンモニウム塩、りん酸のアルカリ金属塩、りん酸のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
電着塗装膜の密着性を向上し、耐食性を高める観点から、リン酸塩皮膜は、針状結晶のリン酸塩皮膜であることが好ましい。そして、針状結晶のリン酸塩皮膜の結晶径は、0.1~5μmが好ましく、0.5~3μmがより好ましい。
ここで、針状結晶のリン酸塩皮膜の結晶径は、次の通り測定する。測定対象の鋼板(又は自動車部品)から、板厚方向に沿って切断した切断面を有する試料を切り出す。試料の切り出しは、測定対象の鋼板(又は自動車部品)の中央部で行う。試験片を樹脂包埋した後、切断面を研磨し、観察面とする。
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)にて500倍で観察し、任意の10個所のリン酸塩結晶の粒径を実測し、算出平均する。
リン酸塩皮膜は、有機皮膜から突き出た前記亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に形成される。リン酸塩皮膜は、処理液中で亜鉛系めっき層が溶解し、溶解によって発生した水素ガスの影響で処理液と亜鉛系めっき層の界面でpHが上昇することで、溶解した亜鉛めっき層成分と処理液中のリン酸塩成分が反応し結晶として析出することにより形成する。
(金属塩皮膜)
金属塩皮膜を構成する金属種は、鉄、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、スズ、ビスマス、バナジウム、ニッケル、セリウム、モリブデン、タングステンが挙げられる。
金属塩皮膜を構成する塩種は、酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、フッ素イオン、錯フッ素イオン、炭酸イオンが挙げられる。具体例には、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、硝酸ジルコニウム、硫化鉄、フッ化ジルコニウム、フッ化チタニウム、フッ化ハフニウム、フッ化インジウム等が挙げられる。
なお、錯フッ素イオンは、錯フッ素イオンは2以上のフッ素原子が中心原子に結合したアニオンである。好適な中心原子は、特に、ホウ素、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。錯フッ素イオンとして、具体的には、ヘキサフルオロケイ酸イオン、ヘキサフルオロチタニウム酸イオン、ヘキサフルオロジルコニウム酸イオン、ヘキサフルオロハフニウム塩イオン等が挙げられる。
電着塗装膜の密着性を向上し、耐食性を高める観点から、金属塩皮膜として、具体的には、鉄、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、スズ、ビスマス、バナジウム、ニッケル、セリウム、モリブデン及びタングステンから選ばれる少なくとも1種と、酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、フッ素イオン、錯フッ素イオンまたは炭酸イオンとの塩を含み、結晶性又は非晶性の金属塩皮膜であることが好ましい。そして、結晶性又は非晶性の金属塩皮膜の厚みは、0.01~3μmが好ましく、0.05~1μmがより好ましい。
これらの中でも、特に、金属塩皮膜は酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウムの皮膜が好ましい。
ここで、金属塩皮膜の厚みは、次の通り測定する。
測定対象の鋼板(又は自動車部品)から、板厚方向に沿って切断した切断面を有する試料を切り出す。試料の切り出しは、測定対象の鋼板(又は自動車部品)の中央部で行う。試験片を樹脂包埋した後、切断面を研磨し、観察面とする。
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)にて500倍で観察し、任意の10個所の金属塩皮膜の厚みを実測し、算出平均する。
金属塩皮膜は、有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に形成される。金属塩皮膜は、処理液中で亜鉛系めっき層が溶解し、溶解によって発生した水素ガスの影響で処理液と亜鉛系めっき層の界面でpHが上昇することで、溶解した亜鉛めっき層成分と処理液中の金属塩成分が反応し、不溶化することにより形成する。
(リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆面積率)
リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜は、有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に形成される。
リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆率は、有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部に対して、30~100%であることが好ましい。それにより、電着塗装膜の密着性が向上し、耐食性も向上する。
リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆率は、次の通り、測定する。
測定対象の自動車部品から、試料を切り出す。試料の切り出しは、測定対象の自動車部品)の中央部で行う。試験片を樹脂包埋した後、切断面を研磨し、観察面とする。
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)にて500倍で観察し、水平方向10mm長さ分を観察し、有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の長さ及びリン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆長さの合計を求める。
そして、式:リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆率=リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆長さ/(有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の長さ及びリン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆長さの合計)×100で、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆率を求める。
上記操作を、測定対象の自動車部品の任意の3か所で実施し、算術平均する。
なお、亜鉛系めっき層の突起部の長さは、有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の輪郭の長さを示す。
また、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜の被覆長さは、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜が亜鉛系めっき層の突起部と接している境界長さを示す。
(電着塗装膜)
電着塗装膜は、周知の電着塗装膜が採用され、アニオン電着塗装膜、カチオン電着塗装膜のいずれでもよいが、耐食性の点から、カチオン電着塗料膜が好ましい。
電着塗装膜は、例えば、樹脂、硬化剤、その他添加剤を含む水性塗料を用いて、電着塗装処理により形成された電着塗装膜が挙げられる。
樹脂としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等の親水性基と硬化剤と反応する水酸基等の官能基とを有する水性樹脂(アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの公知の水性樹脂等)が挙げられる。
硬化剤としては、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。
その他添加剤としては、着色顔料、光干渉性顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、反応促進剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等の公知の添加剤が挙げ
電着塗装膜の厚さは、5~50μmが好ましく、10~40μmがより好ましい。
なお、電着塗装膜上には、必要に応じて、中塗り塗装膜、上塗り塗装膜等の他の塗装膜が形成されていてもよい。
(自動車部品の用途)
本開示の自動車部品は、例えば、センターピラーアウター,ドアアウター,ルーフレールアウター、サイドパネル,フェンダー、サイドシル、サイドメンバ、リアメンバ、フロアクロス等に適用できる。
以下、本開示を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本開示を制限するものではない。
(めっき鋼板の準備)
次の鋼種のめっき母鋼板を準備した。ただし、表面性状を付与するため、ロール面の表面性状又は圧力を調整してスキンパスを実施することで、めっき母鋼板(つまり、亜鉛系めっき層)の、算術平均粗さRa、及び1インチ当りの山数PPI(peak per inch)は、表7に示す通りとした。
GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚=0.8mm、めっき組成=Fe:10質量%、残部Zn、めっき付着量45g/m
GI:溶融亜鉛めっき鋼板(板厚=0.8mm、めっき付着量=60g/m
Zn-11Al-3Mg-0.2Si:Zn-Al-Mg-Si系めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき組成=Al:11質量%、Mg:3質量%、Si:0.2質量%、残部:Zn、めっき付着量=60g/m
Zn-6Al-3Mg:Zn-Al-Mg系めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき組成=Al:6質量%、Mg:3質量%、残部:Zn、めっき付着量=60g/m
(有機皮膜の樹脂)
-ポリウレタン樹脂粒子の水分散液の製造-
--製造例1--
反応容器に4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、分子量2000のポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールプロピオン酸、及び溶剤としてN-メチルピロリドンを仕込み、80℃において6時間撹拌後、ジメチルエタノールアミンで中和してポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、ヒドラジン及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシランを含有する水中に、上記反応により得られたポリウレタンプレポリマー溶液をホモディスパーで分散させることにより、シラノール基及び/又はエトキシシリル基を含有するポリウレタン樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は30質量%、動的光散乱法によって測定した平均粒径は39nmであった。
--製造例2--
上記製造例1と同様にして得られたポリウレタンプレポリマーを、ホモディスパーを用いて、ヒドラジン水溶液中に分散させることによりポリウレタン樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は30質量%、平均粒径は36nmであった。
-エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子の水分散液の製造-
--製造例3--
反応容器にエチレン-メタクリル酸共重合樹脂(メタクリル酸の含有量が20質量%)、樹脂に対して5.6質量%相当の水酸化ナトリウム及び脱イオン水を加え、95℃で6時間攪拌することにより固形分20%の水分散樹脂液を得た。この水分散樹脂液に対して、さらにγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.8質量%、グリセロールポリグリシジルエーテルを0.8質量%加えて、85℃で2時間反応させることによって、シラノール基及び/又はメトキシシリル基を有するエチレン-メタクリル酸共重合樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は21質量%、平均粒子径は76nmであった。
--製造例4--
反応容器にエチレン-メタクリル酸共重合樹脂(メタクリル酸の含有量が20質量%)、樹脂に対して3.7質量%の水酸化ナトリウム、6.3質量%のアンモニア水(25質量%)、及び脱イオン水を加え、95℃で6時間攪拌することにより固形分20%の水分散樹脂液を得た。この水分散樹脂液に対して、さらにγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1.2質量%、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルを0.6質量%加えて、85℃で2時間反応させることによって、シラノール基及び/又はメトキシシリル基を有するエチレン-メタクリル酸共重合樹脂粒子の水分散液を得た。固形分濃度は21質量%、平均粒子径は84nmであった。
(実施例1~38、比較例1~8)
表7に示す鋼種のめっき母鋼板を、60℃のアルカリ脱脂剤(サーフクリーナー155、日本ペイント社製)2%水溶液を用いて30秒間スプレー処理して脱脂した。
上記製造例で得られた樹脂粒子及び表1~6に示した物質を表7に示した処方で水性塗料を調製した。
得られた水性塗料をバーコーターで、雰囲気温度500℃の熱風乾燥炉を用いて到達板温150℃まで焼き付けて、表7に示す厚さの有機皮膜を形成した。
ただし、比較例4は、有機皮膜を形成しなかった。
次に、次の通り、有機皮膜から突き出た亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜を形成した。ただし、比較例4は、亜鉛系めっき層上に直接リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜を形成した。また、比較例7~8は、有機皮膜が厚く、亜鉛系めっき層が突き出していなかったため、リン酸塩処理を実施したが、リン酸塩皮膜は形成されなかった。
リン酸塩皮膜として、室温の表面調整処理剤(プレパレンX、日本パーカライジング製)に20秒浸漬した。さらに43℃のリン酸塩処理剤(パルボンド3020、日本パーカライジング製)に浸漬することでリン酸塩皮膜を形成した。なお、浸漬時間を調整して、表7に示す結晶径を有する針状結晶のリン酸亜鉛の皮膜を形成した。
金属塩皮膜として、室温の表面調整処理剤(プレパレンX、日本パーカライジング製)に20秒浸漬した。さらに40℃の金属塩処理剤に浸漬することで金属塩皮膜を形成した。なお、浸漬時間を調整して、表7に示す厚さを有する金属塩の皮膜を形成した。
表7に示す各金属塩の詳細は、次の通りである。
Ti塩=非晶性の酸化チタン皮膜(ヘキサフルオロチタン酸、Ti換算0.2/kgとなるように調製した金属塩処理剤)
Zr塩=非晶性の酸化ジルコニウム皮膜(パルシード1500、日本パーカライジング製)
Hf塩=非晶性の酸化ハフニウム皮膜(ヘキサフルオロハフニウム酸、Hf換算0.2/kgとなるように調製した金属塩処理剤)
V塩 =非晶性の酸化バナジウム皮膜(メタバナジン酸アンモニウム、V換算0.2/kgとなるように調製した金属塩処理剤)
次に、有機皮膜とリン酸塩皮膜又は金属塩皮膜との上に、日本ペイント製のカチオン型電着塗料を、電圧160Vで電着塗装し、焼付温度170℃で20分間焼付けて、厚さ10μmの電着塗装膜を形成した。
ただし、一部の例で、電着塗装が不可であった。
以上の操作により、試験鋼板を作製した。
(評価)
-電着塗装性-
各例の試験鋼板の電着塗装膜の密着性により、電着塗装性を評価した。電着塗装性は、電着塗装膜に対し、カッターナイフで1mmマスの碁盤目100マス作製し、ポリエステル製テープを張り付けた。その後、テープを引きはがし、剥離した碁盤目の数を求めることで、電着塗装膜の剥離率(%)を求めた。そして、下記基準で評価した。
5:剥離率1%以下
4:剥離率1%超5%以下
3:剥離率5%超10%以下
2:剥離率10%超
1:電着塗装が不可
-耐食性-
各例の試験鋼板に対して、JASO-M609に準拠した腐食サイクルを90サイクル実施後、赤錆発生面積率(%)を、下記基準で評価した。
5:赤錆発生なし
4:赤錆発生面積率0%超5%以下
3:赤錆発生面積率5%超20%以下
2:赤錆発生面積率20%超30%以下
1:赤錆発生面積率30%超
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、耐食性と共に、優れた電着塗装性を有することがわかる。

Claims (8)

  1. 亜鉛系めっき層が少なくとも片面に設けられためっき母鋼板と、前記亜鉛系めっき層上に設けられた有機皮膜と、を有する鋼板であって、
    前記めっき母鋼板の、算術平均粗さRaが0.5~2.3μmであり、1インチ当りの山数PPI(peak per inch)が30~150であり、
    前記有機皮膜の厚みが、0.3~2.1μmであり、かつ前記めっき母鋼板の算術平均粗さRaよりも小さい、鋼板。
  2. 前記有機皮膜が、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する、ポリウレタン樹脂並びにエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂からなる群から少なくとも1種の樹脂を含む請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記有機皮膜が、バナジウム化合物、酸化ケイ素、有機チタン化合物、ポリオレフィンワックス、リン酸化合物、チオカルボニル化合物、酸化ニオブ、及びグアニジン化合物からなる群から少なくとも1種の添加剤を含む請求項1又は請求項2に記載の鋼板。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の鋼板の成形体と、
    前記鋼板の成形体における前記有機皮膜から突き出た前記亜鉛系めっき層の突起部の一部又は全部に設けられた、リン酸塩皮膜又は金属塩皮膜と、
    前記鋼板の成形体における前記有機皮膜と前記リン酸塩皮膜又は前記金属塩皮膜との上に設けられた、電着塗装皮膜と、
    を有する自動車部品。
  5. 前記リン酸塩皮膜は、針状結晶のリン酸塩皮膜である請求項4に記載の自動車部品。
  6. 前記針状結晶のリン酸塩皮膜の結晶径が、0.1~5μmである請求項5に記載の自動車部品。
  7. 前記金属塩皮膜は、鉄、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、スズ、ビスマス、バナジウム、ニッケル、セリウム、モリブデン及びタングステンから選ばれる少なくとも1種と、酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、フッ素イオン、錯フッ素イオンまたは炭酸イオンとの塩を含み、結晶性又は非晶性の金属塩皮膜である請求項4に記載の自動車部品。
  8. 前記結晶性又は非晶性の金属塩皮膜の厚みが、0.01~3μmである請求項7に記載の自動車部品。
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