JP2010040217A - 無機el素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い発光効率および耐久性をもつ無機EL素子の提供。
【解決手段】少なくとも1対の電極およびその間に形成される発光層を有する積層構造を有し、前記発光層が第2−16族化合物および第12−16族化合物から選ばれる少なくとも1種、またはそれらの混晶を母体材料とし、発光中心を形成する元素を少なくとも1種含有し、前記発光層がさらにCuを含み、母体材料に対するCu濃度が前記発光層の厚み方向で10倍以上異なる組成勾配を有する無機蛍光体材料層であることを特徴とする無機EL素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機EL素子に関するものである。
蛍光体材料とは、外部から光、電気、圧力、熱、電子線等のエネルギーが与えられることによって発光する材料のことであり、古くから知られている材料である。中でも無機材料から成る蛍光体材料は、その発光特性や安定性などからブラウン管、蛍光ランプ、エレクトロルミネッセンス(EL)素子等に用いられてきた。近年ではLED用の色変換材料として、PDPといった低速電子線励起用としても盛んに研究がなされている。
無機蛍光体材料を用いたエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、駆動方法によって交流駆動型と直流駆動型に大別される。交流駆動型の中には高誘電性バインダーに蛍光体粒子を分散してなる交流分散型EL素子、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる交流薄膜型EL素子の2種類があり、直流駆動型の中には、透明電極と金属電極で蛍光体薄膜を挟んで低電圧直流駆動する直流薄膜型EL素子がある。
直流駆動型無機EL素子は、1970〜80年代に研究が盛んになされていた(非特許文献1)。これはZnSe:MnをGaAs基板上にMBEにより成膜し、Au電極と挟むことで構成される素子である。約4Vを印加することで電極からトンネル効果で電子が注入され、発光中心であるMnを励起し、発光するという機構である。しかしながら、この素子は発光効率が低いこと(〜0.05lm/W)、再現性が低いことから、それ以来、実用化はもとより学術的な研究もなされていない。
近年、新たな直流駆動型無機EL素子が報告された(特許文献1)。発光材料としては、CuやMnといった従来から知られている発光中心を含有するZnS系であり、これを透明電極であるITO電極と背面電極であるAg電極とで挟みこんだ構成である。その発光機構については記載されていないが、想定される機構としては、Cuとともに含有するClとでDAペア対を形成し、そこで注入された電子と正孔の再結合すなわち発光すると考えられる。
また、特許文献2は、付活剤として銅を含み、共付活剤として塩素および臭素から選ばれる少なくとも1種類を含み、かつ、6族から10族までの第2遷移系列または第3遷移系列に属する金属元素の少なくとも1種類を含有する硫化亜鉛粒子からなる無機蛍光体材料を用いたEL素子を開示している。
さらに特許文献3には直流駆動を意図し、金属酸化物である透明半導体/透明絶縁体を導入した面発光型エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。
直流駆動型無機EL素子は、同様な駆動方法で発光する有機EL素子と比較して、発光素子がすべて無機材料で構成されているため、耐久性が高く、照明やディスプレイなど様々な分野での活用が可能となる。さらに同様な駆動であるLEDはすべて無機材料で構成されているという点で類似しているが、LEDは発光面積が極微小すなわち点発光であるため、単位面積あたりの輝度は高いものの、絶対光量(光束)は少ないために、用途が限られる。一方無機ELはもともと面発光であるため、多くの光束を得ることが可能であるという点で有利である。
また、特許文献4には、第12−16族化合物からなるp型半導体を使った発光素子が記載されている。
特許文献5には、CuをドープしたZnSのp型半導体層とドナー準位を有するZnSのn型半導体層による直流駆動型無機EL素子が開示されている。
国際公開第07/043676号パンフレット 特開2006−233147号公報 国際公開第07/139037号パンフレット 特開平10−270733号公報 特開2007−242603号広報 Journal of Applied Physics,52(9),5797,1981.
しかしながら、特許文献1及び3の直流駆動無機EL素子は発光効率が低かった。また、特許文献2に記載のEL素子は、使用している蛍光体材料が、付活剤として銅を含んでいることから、DA(ドナーアクセプタ)ペア発光型のものであるが、DAペア発光型の無機蛍光体材料は交流駆動型の発光素子への適用しかできず、用途が限定されるという問題があった。また、特許文献4には、発光効率を高めるために使用する蛍光体材料については詳細な記載がなかった。さらに特許文献3、4、5に共通して言えることとして、それらの素子構成では明確に分離された2層の界面が形成されるため、そこでキャリアが蓄積して界面劣化を誘発させることから、改善を求められていた。
従って、本願発明は、十分な発光効率および耐久性をもつ無機EL素子を提供しようとするものである。
発明者らは、鋭意検討の結果、母体材料に対するCu濃度が厚み方向で10倍以上異なる組成勾配を有する発光層を用いることにより、高効率発光および高耐久性を得ることに成功した。
本発明は以下の要件により達成される。
(1)
少なくとも1対の電極およびその間に形成される発光層を有する積層構造を有し、
前記発光層が第2−16族化合物および第12−16族化合物から選ばれる少なくとも1種、またはそれらの混晶を母体材料とし、発光中心を形成する元素を少なくとも1種含有し、
前記発光層がさらにCuを含み、母体材料に対するCuの濃度が前記発光層の厚み方向で10倍以上異なる組成勾配を有する無機蛍光体材料層であることを特徴とする無機EL素子。
(2)
発光中心を形成する元素として、周期律表の第6族〜第11族の第2遷移系列に属する金属元素および第3遷移系列に属する金属元素のうちの少なくともいずれかを含有することを特徴とする(1)に記載無機EL素子。
(3)
前記発光層が周期律表の第13族および第15族に属する元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含有することを特徴とする上記(2)に記載の無機EL素子。
本発明の無機EL素子は、発光効率に優れ、高輝度長寿命を達成するものである。
以下本発明について詳しく説明する。
本発明の無機EL素子は、少なくとも1対の電極およびその間に形成される発光層を有する積層構造を有し、前記発光層が第2−16族化合物(すなわち周期律表の第2族に属する少なくとも1種の元素と周期律表の第16族に属する少なくとも1種の元素からなる化合物)および、第12−16族化合物(すなわち周期律表の第12族に属する少なくとも1種の元素と周期律表の第16族に属する少なくとも1種の元素からなる化合物)から選ばれる少なくとも1種、またはそれらの混晶を母体材料とし、前記発光層が発光中心を形成する元素を少なくとも1種を含有し、また前記発光層が更にCuを含み、前記発光層中の母体材料に対するCuの濃度が前記発光層の厚み方向で10倍以上異なる組成勾配を有することを特徴とする。
なお、本発明の無機EL素子の発光層を構成する無機蛍光体材料の母体材料として用いられる、第2−16族化合物、第12−16族化合物とは、それぞれ、周期律表の第2族に属する元素と周期律表の第16族に属する元素からなる化合物、周期律表の第12族に属する元素と周期律表の第16族に属する元素からなる化合物を意味するものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有するもの(当業者)が通常使用している標記・表現である。
該母体材料の例として、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、CaS、SrS、BaSなどの第2−16族化合物または第12−16族化合物から選ばれる1種またはそれらの混晶が用いられる。好ましくはZnS、ZnSe、ZnSSe、SrS、CaS、SrSe、SrSSeであり、さらに好ましくは、ZnS、ZnSe、ZnSSeである。
厚み方向の組成勾配とは、素子の断面を切断して観察した際に、一方の電極と発光層が接している界面近傍から、もう一方の電極と発光層が接している界面近傍までの組成が連続的に変化していることを指し、特にCuが高濃度の側と低濃度の側とで、その組成比(母体材料に対する濃度)が10倍以上異なることを特徴とする。組成比の違いは好ましくは100倍以上、より好ましくは300倍以上である。Cu低濃度側ではCu濃度が限りなく0に近くても良く、この場合はCuが高濃度の側と低濃度の側との組成比は限りなく無限大に近づくものとする。
これによって、Cu濃度が高い領域では、電極からの正孔注入および正孔移動が容易になり、逆にCu濃度が低い領域では、電極からの電子注入および電子移動が容易になるため、キャリア注入型の直流駆動を想定した場合には、発光層内に均一に分布する発光中心内で電子と正孔の再結合が生じ、高効率な発光が得られる。
本発明の無機EL素子は連続的な組成変化を有しており、従来公知の文献に記載のような、明確な層界面を形成しておらず、深さ方向にのみ連続的な組成変化(構成材料の濃度勾配が連続的に変化する)することが特徴である。連続的な濃度勾配を示すことを確認する為には、たとえば二次質量分析(SIMS)装置を用いて、混合領域の深さ方向のおける標的元素の濃度を分析することにより、全領域にわたる該標的元素の濃度プロファイルを得ることが出来る。すなわち、本発明の無機EL素子においては、SIMSにおける濃度プロファイルが矩形状でなく連続的である。
一般的には、p型半導体とn型半導体の接合界面での電子と正孔の再結合が知られているが、無機ELのような発光中心内での電子と正孔の再結合が発光に寄与する場合は、界面だけでなく、発光層内に分布する発光中心での再結合が重要となるため、このような組成勾配が高効率発光に有効である。
また、p型/n型の接合界面を形成した場合、高効率発光が得られないばかりでなく、電子や正孔が界面で滞留することによるの劣化が起きるため、耐久性にも悪影響があるが、本発明は明確な接合界面がないため、そのような劣化が起きず、長寿命素子を得ることができる。
厚み方向の組成勾配が存在することは、素子断面をダイヤモンドカッターで切り出し、SEM(走査型電子顕微鏡)およびEDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)により組成比を測定することで確認できる。
上記のような組成勾配を形成する方法としては、いかなる方法にも限定するものではないが、例えば母体材料がZnSの場合、(1)熱アニールによる方法、(2)成膜レートのコントロールによる方法、(3)電界印加によるマイグレーションによる方法の3通りが考えられる。
具体的には、(1)としては、例えば、Cu濃度の異なる複数のZnSをターゲットとしてそれぞれを電子ビーム蒸着し、その後熱アニールによりCuを拡散させる方法、もしくはCu2SまたはZnSのどちらか一方を先に電子ビーム蒸着し、その後もう一方を電子ビーム蒸着し、その後熱アニールによりCuを拡散させる方法などが挙げられる。
(2)としては、例えば、ZnSとCu2Sを2源電子ビーム蒸着し、それぞれの電子ビームの出力をコントロールすることで形成する方法などが挙げられる。
(3)としては、例えば、CuをドープしたZnSを電子ビーム蒸着し、その後両電極間に電界を印加しCu+をマイグレーションさせることで、陰極側高Cu濃度、陽極側低Cu濃度という組成傾斜をつける方法などが挙げられる。
特に(3)の場合、電界印加する前は発光層中にCuが均一に分布しているため、それ自身の発光が強くなるため、所望の発光が得られなくなってしまう。また(1)や(2)の場合も、組成傾斜をつける前は、組成の異なる層境界が生じて、劣化の要因の一つとなってしまう。
発光中心を形成する元素としては、特に限定されるものではないが、一般的にはMnや希土類、その他に周期律表の第6族〜第11族の第2遷移系列に属する金属元素および第3遷移系列に属する金属元素(Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、W、Re、Os、Ir、Pt、Au)が用いられる。中でも周期律表の第6族〜第11族の第2遷移系列に属する金属元素および第3遷移系列に属する金属元素が好ましく用いられ、Ru、Pd、Os、Ir、Pt、Auがより好ましく、Os、Ir、Pt、Auがさらに好ましい。これらの金属は単独で含有していてもよいし、複数で含有していてもよい。
上記の発光中心を形成する元素の母体材料への含有のさせ方、すなわちドープ方法は、いかなる方法にも限定するものではないが、たとえば、焼成での粒子形成時の金属塩の形で混入させても良いし、焼成条件で溶融、昇華もしくは反応可能であれば、化合物結晶の形で混入させても良い。これらの金属は母体材料の結晶内に取り込まれた部分以外の結晶表面への析出分や、結晶表面への吸着分は、エッチングや洗浄等で除去することが好ましい。金属塩としては、酸化物、硫化物、硫酸化物、シュウ酸化物、ハロゲン化物、硝酸化物、窒化物等、いかなる化合物でも良いが、中でも酸化物、硫化物、ハロゲン化物が好ましく用いられる。それぞれ単独で用いても良いが、複数種の金属塩を用いても良い。ドープ量としては、母体材料1モルに対して1×10-7〜1×10-1モルが好ましく、さらに好ましくは1×10-5〜1×10-2モルである。
さらに無機蛍光体材料として性能を上げるために、周期律表の第13族に属する元素及び第15族に属する元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが有効である。
好ましくは、第13族に属する元素から選ばれる少なくとも1種の元素と、第15族に属する元素から選ばれる少なくとも1種の元素とを含有し、さらに好ましくは、第13族に属する元素としてGa、InおよびTlから選ばれる少なくとも1種を含有し、第15族に属する元素としてN、P、Sb、AsおよびBiから選ばれる少なくとも1種を含有し、特に好ましくは、第13族に属する元素としてGaを含有し、第15族に属する元素としてN、P、SbおよびAsから選ばれる少なくとも1種を含有する。
また、これらの元素を蛍光体材料に含有させる場合には、第13族に属する元素と第15族に属する元素とからなる化合物(第13−15族化合物)を添加することが好ましい。
これらの周期律表の第13族に属する元素及び第15族に属する元素から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量は、特に限定されないが、母体材料1モルに対して1×10-7〜1×10-2が好ましい。
次に本発明の無機EL素子の構造について詳細に説明する。
一般に交流駆動の無機EL素子は電圧50〜300V、周波数50〜5000Hzで駆動するが、直流駆動の無機EL素子は0.1〜20Vと低電圧で駆動できることが特徴として挙げられる。
本発明の無機蛍光体材料は、交流分散型無機EL素子、交流薄膜型無機EL素子といった交流駆動型素子、さらには及び直流駆動型の無機EL素子といった無機EL素子に有用であるが、中でも直流駆動型無機EL素子に有用である。
本発明において特に好ましく適用可能な直流駆動型無機EL素子を例に挙げて詳しく説明する。
直流駆動型無機EL素子は、一対の電極およびその間に形成される発光層により成るが、一対の電極のうち少なくとも一方が透明電極(透明導電膜とも称し、もう一方の電極を背面電極と称する)であることが望ましい。発光層の厚みは厚くなりすぎると発光に必要な電界強度を得るために両電極間の電圧が上昇するので、低電圧駆動を実現するためには50μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以下である。また厚みが薄くなりすぎると、蛍光体層の両面にある電極が短絡しやすくなるため、短絡を避けるために厚みは50nm以上が好ましく、さらに好ましくは100nm以上である。
・蛍光体層
蛍光体層の成膜方法としては、電子ビーム蒸着法の他にも物理的蒸着法である抵抗加熱蒸着法、スパッタリングやイオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)など無機材料を一般的に成膜する方法が用いられる。
本発明に用いられる無機蛍光体材料は高温でも安定で高融点であることから、高融点材料を蒸着するのに適した電子ビーム蒸着法や、蒸着源をターゲット化できる場合はスパッタリング法が好適に用いられる。
さらに電子ビーム蒸着の場合、蛍光体材料中に含有する金属の蒸気圧が、母体材料の蒸気圧と大幅に異なる場合には、それぞれ単独の蒸着源として複数の蒸着源を利用した蒸着方法も有用である。
また結晶性を高めるという意味で、基板との格子マッチングを考慮したMBE(Molecular Beam Epitaxiy)法も好適である。
・透明導電膜
本発明に好ましく用いられる透明導電膜の表面抵抗率は、10Ω/□以下であることが好ましく、0.01Ω/□〜10Ω/□が更に好ましい。特に0.01Ω/□〜1Ω/□が好ましい。
透明導電膜の表面抵抗率は、JIS K6911に記載の方法に準じて測定することができる。
透明導電膜は、ガラス又はプラスチック基板上に形成されており、かつ酸化錫を含有していることが好ましい。
すなわち、ガラスとしては無アルカリガラス、ソーダライムガラスなど、一般的なガラスが用いられるが、耐熱性が高く平坦性の高いガラスを用いることが好ましい。プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロースベース等の透明フィルムが好適に用いられる。それらを基板として、インディウム・錫酸化物(ITO)や錫酸化物、酸化亜鉛等の透明導電性物質を蒸着、塗布、印刷等の方法で付着、成膜することができる。
この場合、耐久性を上げる目的で透明導電膜表面を酸化錫を主体の層とすることが、好ましい。
透明導電膜を構成する透明導電性物質の好ましい付着量は、透明導電膜に対して、100質量%〜1質量%、より好ましくは、70質量%〜5質量%、さらに好ましくは、40質量%〜10質量%である。
透明導電膜の調製法はスパッター、真空蒸着等の気相法であっても良い。ペースト状のITOや酸化錫を塗布やスクリーン印刷で作成したり、膜全体を加熱したりレーザーにて加熱して成膜しても良い。
本発明のEL素子において、透明導電膜には一般的に用いられる任意の透明電極材料が用いられる。例えば錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛などの酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などが挙げられる。
更に低抵抗化するには、例えば櫛型あるいはグリッド型等の網目状ないしストライプ状金属細線を配置して通電性を改善することが、好ましい。金属や合金の細線としては、銅や銀、アルミニウム、ニッケル等が好ましく用いられる。この金属細線の太さは、任意であるが、0.5μm程度から20μmの間が好ましい。金属細線は、50μm〜400μmの間隔のピッチで配置されていることが、好ましく、特に100μm〜300μmピッチが、好ましい。金属細線を配置することで、光の透過率が減少するが、この減少は出来るだけ小さいことが重要で、好ましくは、80%以上100未満の透過率を確保することが、好ましい。
金属細線は、メッシュを透明導電性フィルムに張り合わせてもよいし、予めマスク蒸着ないしエッチングによりフィルム上に形成した金属細線上に金属酸化物等を塗布、蒸着しても良い。また、予め形成した金属酸化物薄膜上に上記の金属細線を形成してもよい。
これとは、異なる方法となるが、金属細線の代わりに、100nm以下の平均厚みを有する金属薄膜を金属酸化物と積層して本発明に適した透明導電膜とすることができる。金属薄膜に用いられる金属としては、AuやIn、Sn、Cu、Niなど耐腐食性が高く、展延性等に優れたものが好ましいが、特にこの限りではない。
これらの複層膜は、高い光透過率を実現することが好ましく、具体的には70%以上の光透過率を有することが好ましく、80%以上の光透過率を有することが特に好ましい。光透過率を規定する波長は、550nmである。
光の透過率に関しては、干渉フィルターを用いて550nmの単色光を取り出し、一般に用いられる白色光源を用いた積分型光量測定やスペクトル測定装置を用いて測定することが出来る。
・背面電極
光を取り出さない側の背面電極は、導電性の有る任意の材料が使用出来る。金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなどの中から、作成する素子の形態、作成工程の温度等により適時選択されるが、その中でも熱伝導率が高いことが重要で、2.0W/cm・deg以上であることが好ましい。中でも銀またはアルミニウムが好適である。
また、EL素子の周辺部に高い放熱性と通電性を確保するために、金属シートや金属メッシュを用いることも好ましい。
・無機蛍光体材料
本発明に利用可能な無機蛍光体材料は、当業界で広く用いられる焼成法(固相法)で成型することができる。例えば、硫化亜鉛の場合、液相法で粒子径10nm〜50nmの微粒子粉末(生粉と呼ぶ)を作成し、これを一次粒子として用い、これに付活剤と呼ばれる不純物を混入させて融剤とともに坩堝にて900℃〜1300℃の高温で30分〜10時間、第1の焼成をおこない、粒子を得る。
第1の焼成によって得られる中間蛍光体粉末をイオン交換水で繰り返し洗浄してアルカリ金属ないしアルカリ土類金属及び過剰の付活剤、共付活剤を除去する。
次いで、得られた中間体蛍光体粉末に第2の焼成をほどこす。第2の焼成は、第1の焼成より低温の500〜800℃で、また短時間の30分〜3時間の加熱(アニーリング)をする。
上記製法により無機蛍光体材料を得ることができるが、直流型無機ELに用いる場合には上記製法により得られた蛍光体材料を加圧成型し、電子ビーム蒸着等の物理蒸着によってEL素子を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<無機蛍光体材料(サンプルA)>
Zn 1モルに対して、Mnが4×10-2mol、Cuが6×10-3molとなるように、ZnS、MnCl2およびCuSO4を秤量した。乳鉢中で20分以上混合したのち、真空中で1100℃3hr焼成した。焼成後、粉砕、水洗、乾燥を行うことで、無機蛍光体材料ZnS:Mn,Cu(サンプルA)を得た。
<無機EL素子A>
透明ガラス基板1上に、第1電極であるITOが厚さ200nmでスパッタにより形成した透明電極(第1電極)2を設け、その上にサンプルAの無機蛍光体材料を該基板上にEB蒸着装置にて1000nm成膜して発光層3とした。成膜時の蒸着チャンバー内の真空度は1×10-6Torr、基板温度は200℃に設定した。さらに、結晶性を向上させるために、成膜後に同一チャンバー内で600℃、1hr熱アニールを施した。続いて、抵抗加熱蒸着により第2電極(背面電極)5であるアルミニウムを蒸着することで、直流駆動型無機EL素子Aを得た。
<無機EL素子B>
無機EL素子Aを用いて、第2電極5であるアルミニウム電極をプラスに、第1電極2である透明電極をマイナスにして、5Vの直流電源を接続した。電界印加によって、Cu+がマイナス電極側にマイグレーションし、組成傾斜をつけることができた。これを無機EL素子Bとする。
<無機EL素子C>
80℃に加熱したホットプレート上で電界印加を行うこと以外、無機EL素子Bと同様に作製した。
実施例1
上記無機EL素子A〜Cについて、断面をダイヤモンドカッターで切り出し、SEM−EDXによりZnとCuの比率を測定し、結果を表1に示した。
また、それぞれの素子に透明電極側をプラス、背面電極側をマイナス電極として直流電圧15Vを印加したときのEL発光強度を測定し、素子Aを1としたときの相対強度として表1に示した。
Figure 2010040217
素子AはZnS,Cu,Mnを蒸着しそのまま素子化しただけであるため、組成傾斜がなく、膜内で均一なCu濃度を示しているのに対して、素子Bは電界により組成傾斜をつけ、さらに素子Cではさらに加熱しながら電界により組成傾斜をつけたので、両電極近傍のCu濃度比がそれぞれ11、125となった。
例として素子BにおけるSIMSによる発光層の膜厚方向におけるCu組成分布を図2に示す。Cu濃度プロファイルは連続的に変化しており、連続的な組成傾斜がついていることがわかる。素子Cにおいても同様に連続的な傾斜がついていることを確認した。またEL相対強度についても素子Aに対して素子B、さらには素子Cは大幅に増大し、組成傾斜による高効率発光が得られることが示された。
実施例2
ZnSをZnS0.9Se0.1に変更した以外は、実施例1と同様に行った。その結果、両電極側のCu濃度比やEL相対強度においても、実施例1と同様な結果となり、母体材料によらず組成傾斜による効果が示された。
実施例3
MnCl2をIrCl3に変更した以外は、実施例1を同様に行った。その結果、両電極側のCu濃度比やEL相対強度においても、実施例1と同様な結果となり、発光中心を形成する元素によらず組成傾斜による効果が示された。
実施例4
MnCl2をHAuCl4に変更した以外は、実施例1を同様に行った。その結果、両電極側のCu濃度比やEL相対強度においても、実施例1と同様な結果となり、発光中心を形成する元素によらず組成傾斜による効果が示された。
実施例5
GaAsをZn 1モルに対して2×10-4モル添加した以外は実施例3と同様に行った。その結果、両電極側のCu濃度比やEL相対強度においても、実施例3と同様な結果となり、発光中心を形成する元素によらず組成傾斜による効果が示された。
実施例1の直流駆動型無機EL素子の構造の概略を示す図である。 実施例1の直流駆動型無機EL素子Bにおける発光層の膜厚方向のCu組成分布をSIMSにより観測した結果を示す図である。
符号の説明
1 ガラス基板
2 透明電極
3 発光層(高濃度Cu側)
4 発光層(低濃度Cu側)
5 背面電極

Claims (3)

  1. 少なくとも1対の電極およびその間に形成される発光層を有する積層構造を有し、
    前記発光層が第2−16族化合物および第12−16族化合物から選ばれる少なくとも1種、またはそれらの混晶を母体材料とし、発光中心を形成する元素を少なくとも1種含有し、
    前記発光層がさらにCuを含み、母体材料に対するCuの濃度が前記発光層の厚み方向で10倍以上異なる組成勾配を有する無機蛍光体材料層であることを特徴とする無機EL素子。
  2. 発光中心を形成する元素として、周期律表の第6族〜第11族の第2遷移系列に属する金属元素および第3遷移系列に属する金属元素のうちの少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1に記載無機EL素子。
  3. 前記発光層がさらに周期律表の第13族および第15族に属する元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含有することを特徴とする請求項2に記載の無機EL素子。
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