JP2010033833A - 電界放出型電子銃装置及びその駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】陰極先端の周囲の真空度を高真空度にて正確に管理することができる電界放出型電子銃及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】初期減衰期間を測定することによって、陰極先端の周囲の真空度が十分に高いか否かを判定する。陰極先端の周囲の真空度が十分に高い場合には、電界放出を行い、安定期間に電子ビームを使用する。陰極先端の周囲の真空度が十分に高くない場合には、ベーキングを実施し、陰極先端の周囲の真空度を更に高くする。
【選択図】図4
【解決手段】初期減衰期間を測定することによって、陰極先端の周囲の真空度が十分に高いか否かを判定する。陰極先端の周囲の真空度が十分に高い場合には、電界放出を行い、安定期間に電子ビームを使用する。陰極先端の周囲の真空度が十分に高くない場合には、ベーキングを実施し、陰極先端の周囲の真空度を更に高くする。
【選択図】図4
Description
本発明は、電界放出型電子銃装置に関し、特に、その駆動方法に関する。
電界放出型電子銃では、放出電流は時間と共に変化する。初期減衰期間では、放出電流は減少し、次の安定期間では、放出電流が安定する。通常、この安定期間にて、電子ビームを使用する。安定期間が経過すると、不安定期間となり、放出電流は次第に増加し、変動する。
特許文献1には、放出電流が一定となるように引き出し電圧を制御する例が記載されている。特許文献2には、真空度の変化と電界放出電流の比が所定値を超えたときに、保護回路によって陽極及び陰極に印加する電圧を遮断することが記載されている。特許文献2の例では、ポンプの動作電流の変化を用いて真空度の変化を測定する。特許文献3には、真空室の真空度が設定値より悪化すると、荷電粒子線発生手段への通電を停止することが記載されている。特許文献3の例では、イオンポンプの駆動電流をモニタリングすることにより、真空度を検出する。特許文献4には、引き出し電圧の変化に基づいて電界放射エミッタの状態を判断し、フラッシングを自動的に実施することが記載されている。
電界放出型電子銃では、安定期間を長時間確保することが好ましい。長時間の安定期間を確保するためには、陰極先端付近の真空度を高真空に維持する必要があることが知られている。通常の電子銃では、構造上の理由から、陰極先端の周囲に真空計を設けることができない。従って、陰極先端の周囲の真空度を正確に管理することができない。
電界放出型電子銃では、イオンポンプが用いられる。イオンポンプでは、イオン電流を検出することによって、真空度、即ち、圧力を測定する。現在用いられているイオンポンプの検出限界は、1*10E-7Paである。これ以下の圧力の検出は、外乱などの影響のため、正確性に欠ける。安定期間を長時間確保するためには、1*10E-7Pa以下の圧力が要求される。即ち、エミッション電流を安定的に使用するためには、電界放出型陰極先端の周囲の圧力を1*10E-7Pa以下に保持することが必要不可欠である。
従って、従来の電界放出型電子銃では、電界放出型陰極先端の周囲が高真空になるように管理することができなかった。
本発明の目的は、陰極先端の周囲の真空度を高真空度にて正確に管理することができる電界放出型電子銃及びその駆動方法を提供することにある。
本発明によると、初期減衰期間は、陰極先端の周囲の真空度に依存することを利用する。初期減衰期間を測定することによって、陰極先端の周囲の真空度が十分に高いか否かを判定する。陰極先端の周囲の真空度が十分に高い場合には、電界放出を行い、安定期間に電子ビームを使用する。陰極先端の周囲の真空度が十分に高くない場合には、ベーキングを実施し、陰極先端の周囲の真空度を更に高くする。
本発明によると、陰極先端の周囲の真空度を正確に管理することができる電界放出型電子銃及びその駆動方法を提供することができる。
図1を参照して本発明による電界放出型電子銃の例を説明する。本例の電界放出型電子銃は、陰極11、及び、引き出し電極12を有し、真空容器1内に配置されている。真空容器1内は、1*10E-7Pa以下の超高真空に保持されている。真空容器1の外側には、引き出し電極用の電圧電源101、フラッシング電源102、及び、放出電流検出回路103が設けられている。
陰極11は、0.1μmの先端曲率を有する、タングステン<310>単結晶を有する。陰極11の先端に強い電界を印加すると、トンネル効果により、電子線11aが引き出され、引き出し電極12によって引き出される。
フラッシング電源102は、陰極にフラッシング用の電圧を供給する。フラッシングは、陰極の先端を加熱することにより、陰極の先端をクリーニングする処理であり、電子銃の使用前と、所定の期間が経過した後に、実行する。放出電流検出回路103は、陰極11から放出される電界放出電流、即ち、エミッション電流を検出する。
図2を参照して、図1の電界放出型電子銃の構成の詳細を説明する。電界放出型電子銃は、電界放出陰極(CFE陰極)11、引き出し電極12、加速電極13、コンデンサレンズ14、第1及び第2のイオンポンプ25、26を有する。
加速電極13の上側には、第1の真空室21が形成され、加速電極13の下側には、第2の真空室22が形成されている。第1及び第2の真空室21、22の間は、加速電極13の孔13aによって接続されている。第1及び第2のイオンポンプ25、26は、それぞれ第1及び第2の真空室21、22に接続されている。電界放出陰極11及び引き出し電極12は、第1の真空室21内に配置され、コンデンサレンズ14は、第2の真空室22内に配置されている。
尚、図示していないが、第2の真空室22の下には更に第3の真空室が設けられている。第2の真空室22と第3の真空室の間は、小さな絞り22aによって接続されている。この絞り22aには、開閉可能なバルブ23が設けられている。
電界放出陰極11に強い電界を印加すると、トンネル効果により電子線が真空中に放出される。電子線は、加速電極13によって加速され、引き出し電極12によって引き出され、コンデンサレンズ14によって収束される。
プローブ電流を測定する場合には、ファラディカップ17に到達した電子線を、微少電流検出計18によって検出する。
ここで、電界放出型電子銃の真空度について説明する。第1及び第2の真空室21、22は、それぞれ、第1及び第2のイオンポンプ25、26によって真空排気される。イオンポンプでは、イオン電流を検出することによって、真空度、即ち、圧力を測定する。現在用いられているイオンポンプの検出限界は、1*10E-7Paである。これ以下の圧力の検出は、外乱などの影響のため、正確性に欠ける。第1及び第2のイオンポンプ25、26は、1*10E-7Paが目標値であり、それより高い真空度(低圧力)を管理することができない。通常、第1の真空室21の圧力は、第1のイオンポンプ25によって、1*10E-7Pa以下に保持され、第2の真空室22の圧力は、第2のイオンポンプ26によって1*10E-6Pa以下に保持され、第3の真空室の圧力は、1*10E-3Pa以下に保持される。
しかしながら、エミッション電流の安定性のためには、1*10E-7Pa以下の圧力が要求される。即ち、エミッション電流を安定的に使用するためには、電界放出陰極11の周囲の圧力を1*10E-7Pa以下に保持することが必要不可欠である。
図示のように、第1のイオンポンプ25は、電界放出陰極11より離れており、その間に、多くの壁が存在する。例えば、第1の真空室21において、電界放出陰極11は、引き出し電極12によって囲まれている。このような構造は、電界放出陰極11の周囲の真空排気に対してコンダクタンスを減少させるように作用する。
図3を参照して、陰極から放出される電流、即ち、エミッション電流を説明する。真空容器内を真空排気し、フラッシングを行い、陰極先端を清浄化する。図3は、フラッシングの後のエミッション電流の変化を示す。エミッション電流は、初期減衰期間、安定期間及び不安定期間の3つの期間を経過しながら、変化する。初期減衰期間では、陰極先端の表面にて、真空中の残留ガスの化学吸着が起きる。それによって、タングステンの<310>結晶の放出面の仕事関数が増大し放出電流が減衰する。モノレイヤ(単分子層)の吸着が完了すると、仕事関数は変化しなくなる。そこで、初期減衰期間から安定期間になる。安定期間では、安定度の良い放出電流が得られる。即ち、エミッション電流は、変動が少ない略一定の値を維持する。通常、安定期間にて、電子ビームを使用する。更に時間が経過すると、放出電流は少しずつ増加し、変動が大きくなる。これは、真空中の残留ガスの物理吸着が起きることによる。こうして安定期間から不安定期間に変わる。不安定期間では、最後は真空放電が起き、陰極が損傷される。
そこで、通常、不安定期間に入る前に再度フラッシングを実施する。それによって、陰極先端を清浄化する。再度、初期減衰期間が経過し、安定期間になると、電子ビームを用いる。このように、フラッシングを繰り返すことにより、安定期間を繰返し生成することができる。
電子ビームを使用する装置では、安定期間が長いほうがよい。安定期間の長さは、真空度、残留ガス分子の種類、真空容器内の構造、その他の様々の条件によって変化する。そこで、本願発明者は、陰極先端付近の真空度に着目した。即ち、陰極先端の周囲又は付近が高真空であれば、安定期間は比較的長く続く。従って、本願発明者は、陰極先端の周囲又は付近が高真空になってから、電界放出型電子銃の電流放出を行えば、安定期間が長くなると考えた。
図1及び図2に示したように、通常の電界放出型電子銃では、陰極先端の周囲に真空計を設けることは困難である。従って、通常の電界放出型電子銃では、陰極先端の周囲の真空度を測定することはできない。そこで本願の発明者は、真空計を設けることなく、陰極先端の周囲の真空度を測定する方法を考え出した。本願の発明者は、初期減衰期間に着目した。それを以下に説明する。
図4を参照して本発明による電界放出型電子銃の例を説明する。本例の電界放出型電子銃は、陰極11と、それに対して対向して設けられた引き出し電極12と、を有し、これらは超高真空容器1内に配置されている。陰極11は、先端の曲率が0.1μmのタングステン<310>単結晶からなる。陰極11と引き出し電極12は真空室21内に配置されている。
超高真空容器1には、イオンポンプ25が設けられている。また、バルブ27を介して、ターボ分子ポンプ28が設けられている。ターボ分子ポンプ28には、ドライポンプ29が接続されている。超高真空容器1及びイオンポンプ25の外側にはベーキングヒータ31が巻かれている。ドライポンプ29及びターボ分子ポンプ28は、真空容器1の粗引き排気を行うために用いる。イオンポンプ25は、真空容器1の超高真空排気を行うために用いる。ベーキングヒータ31を用いて長時間の高温ベーキングを実施することにより、真空容器1内の真空度を1*10E-7Pa以下の超高真空度にすることができる。
本例の電界放出型電子銃には、制御部104が接続されている。制御部104は、陰極11及び引き出し電極12に印加する電圧を制御し、フラッシングを行い、電界放出電流、即ち、エミッション電流を検出する機能を有する。更に、制御部104には、初期減衰期間と陰極11付近の真空度の関係を記憶する。
更に、本例の電界放出型電子銃では、陰極11の近傍に真空ゲージ33を設け、陰極11の近傍の真空度を測定することができるよう構成されている。また、本例の電界放出型電子銃では、超高真空容器1にバリアブルリークバルブ34を介して高純度水素ガスタンク35が接続されている。通常の電界放出型電子銃には、このような真空ゲージ33、バリアブルリークバルブ34及び高純度水素ガスタンク35は設けられていない。本例の電界放出型電子銃では、以下に説明するように、初期減衰期間と陰極11付近の真空度の関係を求めるために、このような設備を特別に設けたものである。
圧力が1*10E-7Paの超高真空雰囲気における残留ガス分子の数は約2600万個/cm3である。残留ガス分子の殆どが水素であることが知られている。初期減衰期間では、水素ガス分子が、陰極表面に吸着し、仕事関数を増大させる。それにより、放出電流が減衰する。吸着確率は、残留ガスの分子量に比例する。従って、初期減衰期間は、残留ガスの分子量に依存する。残留ガスの分子量が大きければ、吸着確率が高く、仕事関数は迅速に増加する。従って初期減衰期間は短い。残留ガスの分子量が小さければ、吸着確率が低く、仕事関数はゆっくりと増加する。従って初期減衰期間は長い。
即ち、陰極11の近傍の真空度が高いほど、初期減衰期間は長く、陰極11の近傍の真空度が低いほど、初期減衰期間は短い。従って、初期減衰期間、又は、電界放出電流の初期減衰率を測定することによって、陰極11の近傍の真空度が判る。即ち、初期減衰期間、又は、電界放出電流の初期減衰率を測定することによって、陰極11の近傍の真空度を間接的に測定することができる。
初期減衰期間は、フラッシング直後に電界放出を開始し、それから安定期間が開始するまでの時間である。ここでは、電界放出電流の値が、フラッシング直後の値の30%まで減衰するまで時間を測定する。以下に、放出電流が、電界放出の開始時の電流値の30%まで減衰するまでの時間を初期減衰期間と呼ぶこととする。フラッシング直後の放出電流が10μAであったとする。それを真空度の基準値とする。そこから、放出電流が3μA(30%まで減衰)になるまでの時間を測定する。それがt1秒であったとする。フラッシング直後の放出電流が30%まで減衰するまでの時間が、t1秒より大きい場合には、真空度が基準値より高い、即ち、圧力は低いと判定する。フラッシング直後の放出電流が30%まで減衰するまでの経過時間が、t1秒小さい場合には、真空度が基準値より低い、即ち、圧力が高い判定する。
以下に、本発明によると、初期減衰期間と、陰極11の近傍の真空度の関係を予め求める。こうして、初期減衰期間と、陰極11の近傍の真空度の関係が既知であれば、初期減衰期間を測定することにより、陰極11の近傍の真空度が正確に求められる。
以下に、本例の電界放出型電子銃では初期減衰期間と、陰極11の近傍の真空度の関係を測定する方法を説明する。
先ず、ドライポンプ29及びターボ分子ポンプ28によって、真空容器1の粗引き排気を行う。次に、ベーキングヒータ31によって、長時間の高温ベーキングを実施し、イオンポンプ25によって、真空容器1を超高真空排気する。真空容器1内の真空度は、真空ゲージ33によって測定する。真空容器内の圧力が1*10E-7Pa以下になったら、陰極11のフラッシングを実施する。フラッシングの後、直ちに、引き出し電圧12に引き出し電圧を印加し、電界放出電流を経過時間と共に記録する。電界放出電流は、図2に示したように、ファラディカップ17と微少電流検出計18によって検出する。
図5は、図4の装置を用いて電界放出電流を測定した結果を示す図である。縦軸は、電界放出電流、横軸は、時間である。このグラフは、図3のグラフの初期減衰期間の部分に相当する。測定結果によると、引き出し電圧3.5kVのとき、最初は、11.3μAのエミッション電流が得られた。エミッション電流は、時間経過と共に、減衰した。エミッション電流が、当初の11.3μAの30%、即ち、約3.4μAまで減衰する時間(τ30)は42分(2520秒)であった。
次に、バリアブルリークバルブ34を開き水素ガスを導入する。圧力が1*10E-7Paとなって安定したら、フラッシングを行い、その直後に、引き出し電圧3.5kVを印加し、放出電流を記憶する。図5と同様の減衰曲線を得る。同様に、エミッション電流が、当初の30%まで減衰する時間、即ち、初期減衰期間を測定する。更に、バリアブルリークバルブ34を開き水素ガスのリーク量を増加させて、真空度を低下させて、減衰期間を測定する。こうして、圧力が2*10E-7Pa、5*10E-7Pa、及び、10*10E-7Paにおいて、図5と同様の減衰曲線を得る。これらの減衰曲線より、減衰期間を測定した。その結果を図6に示す。
図6は、初期減衰期間と陰極先端付近の真空度の関係を示す。横軸は圧力、縦軸は初期減衰期間である。横軸と縦軸は、目盛りは対数である。上述のように初期減数期間は、エミッション電流が、当初の30%まで減衰する時間(τ30)である。図示の対数表示グラフにて示すように、真空度(圧力)と初期減衰期間は、対数グラフ上にて、直線的に変化する。即ち、対数グラフ上にて、真空度を高くすると、即ち、圧力を低くすると、初期減衰期間が長くなる。これは、上述のように、真空度を高くすると、残留ガス分子に起因した化学吸着が起きにくくなることによる。図示のグラフで、破線は、イオンポンプのイオン電流の検出限界1*10E-7Pa以下の圧力範囲を示す。このグラフから、初期減衰期間を測定することにより、陰極先端付近の圧力、即ち、真空度を検出することができる。即ち、初期減衰期間を測定することにより、陰極先端付近の真空度を直接測定することなく、間接的に測定することができる。ちなみに、超高真空容器の到達真空度(水素ガスをリークする前)は減衰時間が2520秒であった。これは、約0.11*10E-7Paの真空度であることが分かる(黒丸で図示する)。
本発明によると、初期減衰期間を測定することによって、陰極先端付近の真空度を検出し、圧力が1*10E-7Paより大きかったら、フラッシングと電流放出を繰り返す。圧力が1*10E-7Pa以下になったら、安定期間にて電子ビームを使用する。
図7A及び図7Bは、走査型電子顕微鏡装置A、Bにおける安定期間のプローブ電流(電界放出電流)をそれぞれ示す。横軸は経過時間、縦軸がプローブ電流である。図7A及び図7Bは、安定期間におけるプローブ電流の拡大図である。図7Aの走査型電子顕微鏡装置Aの場合、初期減衰期間はτ30=10分であった。これは、図6の初期減衰期間と真空度の関係から真空度を読むと、圧力0.4*10E-7Paとなる。図7Bの走査型電子顕微鏡装置Bの場合、τ30=25分であった。これは、図6の初期減衰期間と真空度の関係から真空度を読むと、圧力0.2*10E-7Paとなる。また、図7Aの走査型電子顕微鏡装置Aの場合、プローブ電流の変動量(ノイズ)は17%であった。図7Bの走査型電子顕微鏡装置Bの場合、プローブ電流の変動量(ノイズ)は3%であった。従って、装置Bの真空度のほうが装置Aの真空度より高く、且つ、装置Aに比べ、装置Bではプローブ電流が極めてよい安定度が得られていることが分かる。
本願発明者は、他の様々装置について、初期減衰期間とプローブ電流(電界放出電流)の関係を調べた結果、初期減衰期間が20分以上のとき、プローブ電流は極めて安定的であることが判明した。また、初期減衰期間が20分以下の場合、プローブ電流の安定度が悪く、電界放出のノイズは多くなることが判明した。このことから、初期減衰期間τ30が、20分以下の場合、真空度の不十分であり、更なる真空度の向上策が必要となる。
一般的に、真空度を向上するには、電子銃のベーキングを繰り返すか、又は、ベーキングを長時間実施すればよい。即ち、初期減衰期間が20分以下の場合、電子銃に巻かれたベーキングヒータを自動的に作動させると、電子銃の真空容器の真空度を向上させることができる。
図7Aの走査型電子顕微鏡装置Aの場合、初期減衰期間τ30が、20分より短い。従って、図7Aの走査型電子顕微鏡装置Aの場合、更なるベーキングによって、初期減衰期間を向上させることが必要である。図7Bの走査型電子顕微鏡装置Bの場合、初期減衰期間τ30が、20分より長い。従って、必要な真空度を有すると判断できる。
図8を参照して、電子銃において、CFE陰極を交換作業の例を説明する。電子銃では、CFE陰極が破損し、又は、寿命となると、新しいCFE陰極に交換する。この交換作業を以下に説明する。ここでは、電子銃の構造は特に限定しないが、図4に示したように、ベーキング用のヒータが真空容器及びイオンポンプに巻かれているものとする。
ステップS101にて、電子銃の真空容器を大気圧に開放し、新しいCFE陰極に交換する。ステップS102にて、真空容器を真空排気する。先ず、真空容器の粗引き排気を行い、次に、イオンポンプによって真空容器の超高真空排気を行う。真空容器の真空度が所定の高さになったら、ステップS103にて、ベーキングを行う。即ち、超高真空排気を行いながら、電子銃に巻かれたベーキングヒータを動作させベーキングを実施する。ベーキング温度及び時間は任意である。即ち、予め設定された値を用いてもよいが、可変であってよい。ベーキングが終了すると、電子銃が常温になるのを待つ。ステップS104にて、イオンポンプのイオン電流から、圧力が1*10E-7Pa以下となっているか否かを判定する。上述のように、イオンポンプの検出限界は、1*10E-7Paである。従って、圧力が1*10E-7Pa以下であるか否かは判定可能である。
1*10E-7Pa以下であれば次のステップステップS105に進み、1*10E-7Paより大きければ、ステップS103に戻り、ベーキングを実施する。これを、1*10E-7Pa以下になるまで繰り返す。1*10E-7Pa以下になったらステップS105に進む。
ステップS105にて、陰極のフラッシングを実施する。ステップS106にて、陰極11の先端に電界を印加し、電子線を引き出す。電子ビームが生成されると、電界全放出電流を時間と共に記録する。それによって、図5に示した電界放出電流の減衰曲線を得る。減衰曲線より、初期減衰期間、即ち、フラッシング直後の電界全放出電流の30%まで減衰する時間τ30を測定する。
ステップS107にて、初期減衰期間τ30が20分より大きいか否かを判定する。20分より大きい場合には、陰極先端の周囲の真空度が十分であり、安定的な電界放出電流が得られると判断し、ステップS108に進む。ステップS108にて、電子ビームを使用する。初期減衰期間τ30が20分以下である場合には、陰極先端の周囲の真空度が十分でなく、安定的な電界放出電流が得られないと判断し、ステップS103に戻る。ステップS103にて、再度ベーキングを実施する。こうして、本例では、初期減衰期間τ30が20分以下になるまで、ステップS103のベーキングを繰り返す。従って、電子ビームを使用するときは、初期減衰期間τ30が20分以下となっている。
図8の処理は、コンピュータを用いて容易に自動化することができる。ここでは、CFE陰極を交換する場合を説明したが、電子銃の使用中に、随時、図8のステップS103から108の処理を実施してもよい。それによって、プローブ電流の高安定化を計ることができる。
従来、フラッシングは8時間毎に実施する必要があった。しかしながら、本願発明者の実績によると、初期減衰期間τ30が20分の場合、2日間はフラッシングを行うこと無しに、安定的にプローブ電流を得ることができることが判明した。更に、真空度を高め、初期減衰期間τ30が40分、60分、80分の場合、4日間、6日間、10日間、フラッシングを行うこと無しに、安定的にプローブ電流を得ることができると推定できる。尚、実際には真空度を高くすると、残留ガスの質が変化し、フラッシングを行うこと無しに安定的にプローブ電流を使用できる期間は、もっと延びる。
以上のように、本発明によると、電界放出型電子銃を備えた真空容器の真空度を管理することができる。即ち、本発明によると、電界放出型電子銃を用いて真空容器の真空度を管理することができる。本発明によると、真空容器に電界放出型電子銃を設けることによって、真空容器の真空度を管理することができる。従って、本発明は、電界放出型電子銃を用いた真空容器の真空度を管理する技術を含む。
本発明は、電界放出型電子銃を備えた真空容器を有する電子線装置に適用可能であるが、それに、限定されるものではなく、電界放出型電子銃を備えた真空容器を有する装置であれば、どのような装置にも適用可能である。更に、本発明は、電界放出型電子銃を設けることが可能な他の超高真空装置にも適用可能である。
以上本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者であれば容易に理解されよう。
1…真空容器、2…真空容器内側、3…真空容器外側、11…電界放出陰極(CFE陰極)、11a…電子線、12…引き出し電極、13…加速電極、14…コンデンサレンズ、17…ファラディカップ、18…微少電流検出計、21、22…真空室、22a…絞り、25、26…イオンポンプ、27…メインバルブ、28…ターボ分子ポンプ、29…ドライポンプ、31…ベーキングヒータ、33…超高真空ゲージ、34…バリアブルリークバルブ、35…高純度水素ガス、102…フラッシング電源、103…放出電流検出回路、104…制御部(PCを含む)
Claims (19)
- 電界放出型陰極と、前記電界放出型陰極から放出された電子を引き出す引き出し電極と、内部が真空に排気された真空容器と、前記真空容器を真空排気するためのイオンポンプと、前記真空容器に巻かれたベーキングヒータと、を有し、
前記真空容器を真空排気した後に前記ベーキングヒータによってベーキングを行い、更に、前記陰極のフラッシングを実施してから、前記陰極より電子線を引き出すように構成された電界放出型電子銃装置において、
電界放出電流の初期減衰時間を測定し、該初期減衰時間が所定の時間より短い場合には、前記ベーキング、及び、前記フラッシングを繰り返すことを特徴とする電界放出型電子銃装置。 - 請求項1記載の電界放出型電子銃装置において、
前記初期減衰時間は、前記陰極からの放出電流の値が、前記電子線の引き出しを開始した時の放出電流の値の所定の%となるまでの時間であることを特徴とする電界放出型電子銃装置。 - 請求項1記載の電界放出型電子銃装置において、
更にファラデーカップと微小電流検出計を設け、
前記初期減衰時間の測定は、前記ファラデーカップと前記微小電流検出計を用いて電界放出電流の経時変化を求めることによって行うことを特徴とする電界放出型電子銃装置。 - 請求項1記載の電界放出型電子銃装置において、
前記初期減衰時間が20分より短い場合には、前記ベーキング、及び、前記フラッシングを繰り返すことを特徴とする電界放出型電子銃装置。 - 請求項1記載の電界放出型電子銃装置において、
前記ベーキングステップの後で且つ前記フラッシングステップの前に、前記イオンポンプのイオン電流を測定することによって、前記真空容器の真空度を測定し、前記真空容器の真空度が所定の真空度より低い場合には、前記ベーキングステップを繰り返すことを特徴とする電界放出型電子銃装置。 - 請求項5記載の電界放出型電子銃装置において、
前記所定の真空度は、圧力が1*10E-7Paの真空度であることを特徴とする電界放出型電子銃装置。 - 電界放出型陰極、引き出し電極、及び、真空容器を有する電界放出型電子銃の駆動方法において、
前記真空容器を真空排気するステップと、
前記真空容器をベーキングするベーキングステップと、
前記陰極のフラッシングを実施するフラッシングステップと、
前記陰極より電子線を引き出す電界放出ステップと、
前記陰極からの電界放出電流を測定し、初期減衰時間を測定する初期減衰時間測定ステップと、
前記初期減衰時間が所定の時間より短い否かを判定する判定ステップと、
前記初期減衰時間が所定の時間より短い場合には、前記ベーキングステップ、前記フラッシングステップ、前記電界放出ステップ、前記初期減衰時間測定ステップ、及び、前記判定ステップを繰り返すことを特徴とする電界放出型電子銃の駆動方法。 - 請求項7記載の電界放出型電子銃の駆動方法において、
前記初期減衰時間は、前記電界放出ステップにて、前記陰極からの放出電流の値が、前記電子線の引き出しを開始した時の放出電流の値の所定の%となるまでの時間であることを特徴とする電界放出型電子銃の駆動方法。 - 請求項7記載の電界放出型電子銃の駆動方法において、
前記判定ステップは、前記初期減衰時間が20分より短いか否かを判定することを特徴とする電界放出型電子銃の駆動方法。 - 請求項7記載の電界放出型電子銃の駆動方法において、
前記初期減衰時間測定ステップにおける前記初期減衰時間の測定は、ファラデーカップと微小電流検出計を用いて電界放出電流の経時変化を求めることによって行うことを特徴とする電界放出型電子銃の駆動方法。 - 請求項7記載の電界放出型電子銃の駆動方法において、
前記ベーキングステップの後に且つ前記フラッシングステップの前に、
前記真空容器の真空度を測定するステップと、
前記真空度測定ステップにて前記真空容器の真空度が所定の真空度より低い場合には、前記ベーキングステップを繰り返すことを特徴とする電界放出型電子銃の駆動方法。 - 請求項11記載の電界放出型電子銃の駆動方法において、
前記所定の真空度は、圧力が1*10E-7Paの真空度であることを特徴とする電界放出型電子銃の駆動方法。 - 電界放出型陰極を備えた電界放出型電子銃を収納し、外側に巻かれたバーキングヒータを有し、イオンポンプに接続された真空容器の真空度を測定する方法において、
前記真空容器を真空排気し、所定の真空度に保持する真空排気ステップと、
前記所定の真空度毎に、前記電界放出型陰極から放出される電界放出電流の経時変化を測定する電界放出電流測定ステップと、
前記電界放出電流の経時変化の測定結果より、前記所定の真空度毎に、前記電界放出電流の初期減衰時間を測定する初期減衰時間測定ステップと、
前記所定の真空度毎の前記電界放出電流の初期減衰時間から、初期減衰時間と真空度の関係を求めるステップと、
前記陰極より電子線を引き出す電界放出ステップと、
前記陰極からの電界放出電流を測定し、初期減衰時間を測定する初期減衰時間測定ステップと、
前記初期減衰時間と真空度の関係から、前記初期減衰時間測定ステップにて測定した初期減衰時間に対応する真空度を読み取る真空度読取りステップと、
を有することを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。 - 請求項13記載の真空容器の真空度を測定する方法において、
前記真空度読取りステップにて、前記真空度が所定の真空度より低いと判定されたとき、
前記真空容器をベーキングするベーキングステップと、
を実行することを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。 - 請求項14記載の真空容器の真空度を測定する方法において、
前記所定の真空度は、圧力が1*10E-7Paの真空度であることを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。 - 請求項13記載の真空容器の真空度を測定する方法において、
前記真空排気ステップと前記電界放出電流測定ステップの間に、前記陰極のフラッシングを実施するフラッシングステップを設けることを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。 - 請求項13記載の真空容器の真空度を測定する方法において、
前記初期減衰時間は、前記電界放出ステップにて、前記陰極からの放出電流の値が、前記電子線の引き出しを開始した時の放出電流の値の所定の%となるまでの時間であることを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。 - 請求項13記載の真空容器の真空度を測定する方法において、
前記電界放出電流測定ステップにおける電界放出電流の測定は、前記イオンポンプのイオン電流を検出することにより、行うことを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。 - 請求項13記載の真空容器の真空度を測定する方法において、
前記初期減衰時間測定ステップにおける前記初期減衰時間の測定は、ファラデーカップと微小電流検出計を用いて電界放出電流の経時変化を求めることによって行うことを特徴とする真空容器の真空度を測定する方法。
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JP2008193769A JP2010033833A (ja) | 2008-07-28 | 2008-07-28 | 電界放出型電子銃装置及びその駆動方法 |
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CN106680612A (zh) * | 2015-11-11 | 2017-05-17 | 北京卫星环境工程研究所 | 卫星场致发射电推力器发射体的性能测试装置 |
JP7487383B1 (ja) | 2023-05-26 | 2024-05-20 | 一般財団法人電力中央研究所 | 電子銃による照射電流量の推定方法、推定装置、試料の厚さの算出方法、および析出物の数密度の算出方法 |
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2008
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