JP2010218894A - 電界電離型ガスイオン源のエミッタティップ先鋭化方法及び装置 - Google Patents

電界電離型ガスイオン源のエミッタティップ先鋭化方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 電界電離型ガスイオン源において、先端径の増加したエミッタティップを大気中に取り出すこと無く簡単に先鋭化し、数十nmレベルの先端径を再現する。
【解決手段】 イオン源ガスによるエミッションパターンが観察される状態で、
液体窒素供給を停止してエミッタの温度を液体窒素温度から徐々に上昇させながら、イオン源ガスによるエミッションパターンが観察されなくなり残留水分子によるエミッションパターンが観察できるようになるまで前記引き出し電圧を減少させる。エミッタの温度が室温程度に達した状態で、イオン源ガスによるエミッションパターンを観察する。エミッタの先端の表面原子によるマイグレーションが停止するまで引き出し電圧を下げ、イオン源ガスによるエミッションパターンが所望のパターンとなったと判定されたらエミッタを液体窒素で再冷却する。
【選択図】図1

Description

本発明は、集束イオンビーム装置(FIB)、電界イオン顕微鏡(FIM)などに用いられる、指向性と集束性の高いイオンビームを発生させるための電界電離型ガスイオン源に係わり、特にエミッタティップ先端の先鋭化を行なう技術に関する。
FIB、FIM等のイオンビーム装置に用いるイオン源には、液体金属イオン源(LMIS:Liquid-Metal Ion Source)と電界電離型ガスイオン源(GFIS:Gas Field Ion Source)とがある。LMISは、構造が比較的簡単でメンテナンスがし易いとの理由で多く用いられている。しかし、LMISは放出イオンのエネルギー幅が大きいため、数十nm程度の微小プローブ径しか得ることが出来ない。一方のGFISは、放出イオンのエネルギー幅を小さくできるため、10nm以下の微小プローブ径を得ることが可能である。
GFISはエミッタティップの先端径が40nmの場合、引き出し電圧10kVでエミッションパターンを得ることが出来る。図2(a)は、この時タングステン単結晶<111>面の原子数個分から極めて細いイオンビームが放出されていることを示している。すなわち光源のサイズは1nm未満であり、FIMは高輝度のイオン源として用いることが期待される。
ところで、GFISで使用するエミッタを作製するには、先ず電解研磨によりタングステン単結晶を細い針状に加工する。この針状の先端と対向電極の間に高い電圧を印加して、針の先端を電界蒸発させることにより滑らかな先端を持つエミッタを得る。特許文献1の特開平1−130450号には、電解研磨と電界蒸発の間に、エミッタ先端に正イオンを照射して研磨する工程を追加することにより処理時間の短縮と歩留まりを向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2の特開平7−21954号には、電界蒸発を行なうときの引き出し電圧を比較的低くしてエミッタ先端の清浄化を行なうことにより、電界蒸発によるエミッタ先端の曲率半径の増大を抑制し、低い引き出し電圧でのイオンビーム発生を可能にする技術が開示されている。
特開平1−130450号 特開平7−21954号
エミッタティップ先端に残留ガス分子が吸着すると細いイオンビームを得ることが出来なくなる。そのときは先端により高電界を形成して電界蒸発を起こさせ、残留ガス分子を電離させる。そうするとエミッタティップ表面の原子が再配置され、再び図2(a)に示すような原子配列を持つ結晶面を出現させることが可能である。しかし、電界蒸発を過度に行なうと、原子数個のみで構成する原子配列も蒸発し、図2(b)に示すような原子配列になってしまうので原子数個分の細いイオンビームは得られない。また、エミッタティップの先端径が100nm以上に増加してしまうので、イオンビームを得るためには20kV程度の高い引き出し電圧が必要となる。
先端径の増加したエミッタティップを先鋭化する1つの方法として、エミッタを一旦大気中に取り出し先端を再度電解研磨する方法がある。しかし、この方法はエミッタを大気中に取り出すステップと電解研磨を行なうという2つのステップがあり、多大な時間と労力を必要とする。
チャンバー内からエミッタを取り出すこと無く、簡単にエミッタティップの先端径を50nm程度まで先鋭化することが出来れば、GFISのエミッタティップ再生方法として非常に有効である。
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであって、その目的は、電界電離型ガスイオン源において、先端径の増加したエミッタティップを大気中に取り出すこと無く先鋭化し、数十nmレベルの先端径を簡便に再現することのできる方法及び装置を提供することに有る。
上記の問題を解決するために、
(1)請求項1に記載の発明は、
真空中に配置されるエミッタの周囲にイオン化されるべきガスを供給し、該エミッタと対向配置される引き出し電極との間に印加される引き出し電圧により
該エミッタ先端部に形成される強電界によりガスをイオン化する電界電離型ガスイオン源において、
エミッタから放射されるガスイオンのエミッションパターンを観察する観察手段を用いてエミッタ先端の先鋭化処理を行なうエミッタティップ先鋭化方法であって、
液体窒素温度付近の温度に冷却された前記エミッタ周囲に前記ガスを供給し、引き出し電圧を印加して前記観察手段によりガスイオンのエミッションパターンを観察しガスイオンの発生を確認する第1の工程と、
前記エミッタの温度を上昇させると共に、引き出し電圧を前記ガスはイオン化せず真空中の残留ガス分子はイオン化できる電圧に設定し、残留気体分子イオンにより前記エミッタを衝撃する第2の工程と、
前記エミッタ先端の先鋭化の進行に伴い前記ガスが再びイオン化するときのガスイオンのエミッションパターンを前記観察手段により観察してガスイオンの発生を確認する第3の工程と、
前記観察手段によりガスイオンのエミッションパターンを観察し、前記エミッタ先端の表面原子によるマイグレーションが停止するまで前記引き出し電圧を低下させる第4の工程と、
前記第4の工程で低下させた終了時の引き出し電圧を維持しつつ前記エミッタを再び液体窒素温度付近の温度に冷却する第5の工程と、
を有することを特徴とする。
(2)請求項2に記載の発明は、
前記第2の工程において、前記観察手段により残留気体分子イオンのエミッションパターンを観察して残留気体分子イオンの発生を確認することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、
前記第4の工程において、前記観察手段によるガスイオンのエミッションパターンとその時の引き出し電圧の値に基づいて算出したエミッタの先端径が所望の値になったことを判定して前記第4の工程を終了させることを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、
エミッタと、該エミッタを少なくとも液体窒素温度近傍まで冷却する冷却手段と、
該エミッタにイオン源ガスを供給するガス供給手段と、
該エミッタに対向して配置される引き出し電極に印加する引き出し電圧を可変する電圧可変手段と、
前記エミッタのエミッションパターンを観察する観察手段とを有する電界電離型ガスイオン源であって、
前記観察手段により得られた画像から前記エミッタのエミッションパターンを基準画像との類似度を判断する判断手段と、
前記冷却手段と前記電圧可変手段と前記観察手段と前記判断手段とを制御するガスイオン源制御手段とを備え、
該ガスイオン源制御手段は、
前記エミッタに前記引き出し電圧と前記イオン源ガスが供給されて前記イオン源ガスによるエミッションパターンが観察される状態で、
前記冷却手段による液体窒素供給を停止して前記エミッタの温度を液体窒素温度から徐々に上昇させながら、前記イオン源ガスによるエミッションパターンが観察されなくなり残留気体分子によるエミッションパターンが観察できるようになるまで前記引き出し電圧を減少させ、
前記エミッタの温度が室温程度に達した状態で、前記イオン源ガスによるエミッションパターンを観察し、前記エミッタの先端の表面原子によるマイグレーションが停止するまで前記引き出し電圧を下げ、
前記判断手段により前記イオン源ガスによるエミッションパターンが所望のパターンとなったと判断されたら前記エミッタを液体窒素で再冷却する制御を行なうように構成されていることを特徴とする。
(5)請求項5に記載の発明は、
前記電界電離型ガスイオン源は、前記エミッタを加熱する加熱手段をさらに備え、
前記ガスイオン源制御手段は、
前記冷却手段による液体窒素供給が停止しているとき、前記エミッタを加熱して前記マイグレーションを促進させるように制御を行なうことを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、
前記エミッタは、結晶面<111>を軸方向に有するタングステン単結晶からなることを特徴とする。
(7)請求項7に記載の発明は、
前記イオン源ガスはヘリウムであることを特徴とする。
本発明によれば、電界電離型ガスイオン源において、電解研磨後のエミッタティップ先端の整形を行なう場合、又は過度の電界蒸発などにより先端径が増加したエミッタティップの再生を行なう場合、残留気体分子によるエッチング作用とエミッタの温度上昇による表面原子のマイグレーション現象を利用して、エミッタを大気中に取り出すことなく、エミッタティップの先端を先鋭化できる。そのため、原子数個分から放出される極めて細いイオンビームを低い引き出し電圧で発生させることが可能なエミッタを簡単に得ることができる。
本発明を実施するGFISを組み込んだFIMの概略構成例を示す図である。 FIMによるエミッタティップ先端のエミッションパターンを示す図である。 先端径が増大した状態のエミッタティップ先端のHe−FIM像を示す図である。 引き出し電圧を下げた状態のエミッタティップ先端のHO−FIM像を示す図である。 マイグレーションが起きている状態のエミッタティップ先端のHe−FIM像を示す図である。 先鋭化された状態のエミッタティップ先端のHe−FIM像を示す図である。 本発明の手順を自動的に実施するためのGFISを組み込んだFIMの概略構成例を示す図である。 本発明の実施手順例を説明するためのフロー図である。
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。但し、この例示によって本発明の技術範囲が制限されるものでは無い。
(実施例1)
本発明を実施するGFISを組み込んだFIM100の概略構成例を図1に示す。
図1において、チャンバー1の内部には、エミッタ2、引き出し電極3マイクロチャンネルプレート(MCP:Micro-Channel-Plate)13、及び蛍光板14が置かれている。チャンバー1内部は、図示しない真空排気装置により10−8〜10−7Paの超高真空に保持されている。4は引き出し電極3に電圧を印加するための引き出し電極電源、5はエミッタ2の先端のエミッタティップ2aに高電圧を印加するための加速電圧電源、6はエミッタに電流を流してエミッタティップ2aを加熱する加熱電源、2bはエミッタティップ2aの温度を測定するための熱電対である。7は引き出し電極3内にイオン源となるヘリウム(He)を供給するためのイオン源ガス導入管、8はイオン源ガスの導入を制御するための開閉弁である。
エミッタ2の上部は液体窒素で満たされた冷媒槽9があり、エミッタティップ2aと引き出し電極3は液体窒素温度付近まで冷却される。冷媒槽9には冷媒導入管10を通して液体窒素が供給される。11は液体窒素の導入を制御するための開閉弁、12は冷媒排出管である。15は観察窓、16はCCDカメラ、17はチャンバー1内のイオン源ガス及び残留気体分子の圧力を測定するための四重極型質量分析計(Q-mass)である。
エミッタティップ2aには<111>方向のタングステン単結晶が用いられている。CCDカメラは、エミッションパターンの経時変化を観察し記録するために使用される。
FIM100の動作は次のとおりである。
エミッタティップ2aの先端径は通常50nm程度であり、引き出し電極3との間に引き出し電圧を印加して、先端に正の高電界を形成させる。エミッタティップ2a及び引き出し電極3は、イオン源ガスの吸着確率を高めるために液体窒素温度付近まで冷却されている。高電界のかかったエミッタティップ2aの近傍にイオン源ガスが導入されると、電界電離現象によりイオン源ガスがイオン化し、イオンビームとしてエミッタティップ2aの先端から放出される。イオンビームはMCP13により検出され、蛍光板14に投影されたエミッションパターンはCCDカメラ16により観察、記録される。
次に、図8に例示するフロー図を参照しながら、本発明の実施手順を説明する。
ステップS1:エミッタ2を液体窒素で冷却し、引き出し電極3に印加する引き出し電圧を高く(本実施例では29kV)に設定し、イオン源ガスとしてヘリウムを供給する。エミッタ2の温度は凡そ90K程度まで低下している。エミッタティップ2aの先端が130nm程度まで太くなった状態を、ヘリウムが電界イオン化することにより得られるFIM像(以下、「He−FIM像」と略称する)で確認する。図3(b)はこの状態で得られるHe−FIM像を示している。図3(b)では、エミッタティップ表面の比較的広い領域からイオンビームが放出されるため、図2(a)に見られるような原子数個のみからイオンビームが放出されるパターンは観察できない。なお、四重極型質量分析計(以下、「Q−mass」と略称する)を用いて残留気体分子とイオン源ガス(He)との分圧比を測定すると、残留気体分子中で水分子(HO)が最大の分圧比を占めることが分かる。このときの水分子の分圧比は、HO/He=0.22%である。
ステップS2:開閉弁11を閉じて液体窒素の供給を停止し、冷媒排出管12をとおして冷媒層9から液体窒素を抜き取る。冷媒槽9が空になった時点からエミッタ2の温度上昇が始まる。
ステップS3:引き出し電圧を29kVから徐々に低下させていく。エミッタティップ2a先端にかかる電界強度は引き出し電圧とエミッタティップの先端径で決まる。エミッタティップ2a先端の電界強度がHeの電離電界強度(4.4×1010V/m)よりも低下すると、Heがイオン化できなくなるのでHe−FIM像は観察できなくなる。代わりに、Heの電離電界強度より低い電界強度で電離する残留気体分子が電界イオン化することにより得られるFIM像が観察されるようになる。残留気体分子中で水分子(HO)が最大の分圧比を占めることから、この条件で観察されるFIM像は、主に水分子の電界イオン化することにより得られるFIM像(以下、「HO−FIM像」と略称する)であると考えてよい。何故なら、HOの電離電界強度が1.2×1010V/mと低いため、He−FIM像が観察できない電圧まで引き出し電圧を下げてもHO−FIM像なら十分に観察できるためである。
引き出し電圧を18kVまで低下させたときに観察されるHO−FIM像を図4(b)に示す。エミッタティップ2aの先端部近傍は図4(b)の模式図に示ように水分子の衝撃によるエッチングを受け、先鋭化が進行していると考えられる。液体窒素の供給停止後10分程度でエミッタ2の温度は120K程度まで上昇する。このときの水分子の分圧比は、HO/He=0.74%に増加している。
ステップS4:エミッタの温度上昇とともにエミッタ2の付近に吸着していた残留水分子が真空中に放出されるため、水分子の分圧比は一層高くなり、HOによるエミッタティップ2aの先端部近傍のエッチングがさらに促進される。
ステップS5:HOによるエッチングでエミッタティップ2aの先端径が細くなるため、引き出し電圧が同じでも先端にかかる表面電界強度が上昇する表面電界強度がHeの電界電離強度(4.4×1010V/m)を上回るようになると再びHe−FIM像が観察される。
ステップS6:液体窒素による冷却を停止した状態なのでエミッタ2の温度は上昇し、冷却停止後40分程度でエミッタ2は200K程度に達する。このとき、チャンバー1内のHOの分圧比は2.0%程度まで上昇している。エミッタティップ2aの温度が200K程度まで上昇すると、表面のタングステン単結晶表面上の原子が熱エネルギーを得て激しく移動(マイグレーション)する。マイグレーションにより、エミッタティップ2aの表面原子は、最先端に移動していく。図5(a)はマイグレーションの様子を説明するための模式図である。エミッタティップ2aの温度上昇が十分でなく、未だHe-FIM像によりマイグレーションが観察されなければステップS3に戻る。なお、マイグレーション現象を促進するためフィラメント加熱電源6に電圧を印加し、エミッタティップ2aを適当に加熱しても良い。
ステップS7:エミッタティップ2aの温度が上昇すると共に、HOによるエッチングでエミッタティップ2aの先端径が細くなり表面電界強度が増加するので、表面のマイグレーションが激しくなる。エミッタティップ2a先端の表面でマイグレーションはするが、電界蒸発は起きない程度まで引き出し電圧を引き下げる。
ステップS8:He−FIM像によりエミッタティップ2a先端のエミッションパターンを観察し、表面原子数個(例えば3個)のパターンが得られるときの引き出し電圧から、下式(1)を用いて先端径を計算する。電界強度をE,引き出し電圧をV,先端径の曲率半径をrとすると、
E=V/5r …(1)
である。
ステップS9:ステップS8で求められたエミッタティップ2aの先端径rが所望の(40nm程度)になっているかを判定する。未だなっていなければステップS7に戻り、さらに引き出し電圧を引き下げた条件で表面原子数個(例えば3個)のパターンが得られるまでHe−FIM像の観察を続ける。
図5(b)は引き出し電圧が13kVのときに観察されたHe−FIM像である。表面でマイグレーションが起きているとき、表面原子が動きまわり表面原子の配置が変化する様子をHe−FIM像(動画)により観察できる。引き出し電圧が低くなると、マイグレーションによる表面変化が穏やかになり、時々表面原子数個のパターンが現れては短時間で消えるという現象が繰り返されるようになる。
ステップS10:ステップS9で所望の先端径が得られた(例えば引き出し電圧9kVで表面原子3個のパターンが得られたとき)と判定されたら、直ちに開閉弁11を開いて冷媒槽9に液体窒素を供給する。エミッタティップ2a先端のマイグレーションは停止し、表面原子数個(例えば3個)のパターンが保持される。
ステップS11:再冷却を開始してから8分程度でエミッタ2の温度は凡そ90K程度まで低下する。9kV程度の引き出し電圧で図6(b)に示すようなHe-FIM像を安定して観察することができる。
(実施例2)
図7は、実施例1で説明した本発明の手順を自動的に実施するためのGFISを組み込んだFIM200の概略構成例を示す図である。図7において、図1と同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付し、役割及び動作に関する詳しい説明の重複を避ける。
図7において、20はFIM200全体を制御する制御装置、21は引き出し電圧電源4と加速電圧電源5とフィラメント加熱電源6を制御するための電源制御装置、22は開閉弁8と開閉弁11を制御するための弁制御装置、23はCCDカメラ16から取得したエミッションパターンの画像処理装置である。制御装置20は、少なくとも図2(a)及び図2(b)に示すようなエミッタティップ2a先端の典型的状態を示すエミッションパターンを予めCCDカメラ16から画像処理装置に取り込み、基準画像として記憶している。
本発明の手順を自動的に実施するときのFIM200の動作は次のとおりである。
エミッタティップ2aの先端径が増加してエミッタ2からイオンビームを発生させるために高い引き出し電圧(例えば29kV)が必要となったとき、制御装置20はエミッタティップ先鋭化処理を開始する。なお、先鋭化処理の開始は操作者が判断して、図示しないユーザーインタフェースなどを用いて制御装置20に指示するようにしても良い。
制御装置20は、弁制御装置22を介して開閉弁11を開けて冷媒槽9に液体窒素を供給し、開閉弁8を開けてHeガスをエミッタ2近傍に供給する。また制御装置20は、電源制御装置21を介して引き出し電極3にイオンビームが発生可能な引き出し電圧を印加する。
液体窒素冷却によりエミッタ2の温度は凡そ90K程度まで低下している。制御装置20は、エミッタティップ2aの先端が130nm程度まで太くなった状態のエミッションパターンのHe−FIM像をCCDカメラ16から取り込む。図3(b)のようなHe−FIM像が得られれば、基準画像と比較してイオンビームが正常にエミッタ2から放出されていることが確認できる。
エミッタ2からの正常なイオンビーム放出が確認されたら、制御装置20は
開閉弁11を閉じて液体窒素の供給を停止する。液体窒素は冷媒排出管12をとおして冷媒層9から徐々に排出される。冷媒槽9が空になった時点からエミッタ2の温度上昇が始まる。
制御装置20は引き出し電圧を例えば29kVから徐々に低下させる。冷媒槽9が空になった時点から10分程度経過したとき、引き出し電圧を18kV程度までに低下させる。引き出し電圧が18kV程度に低下すると、エミッタティップ2a先端の電界強度がHeの電離電界強度(4.4×1010V/m)よりも低くなる。そのためHeがイオン化しなくなりHe−FIM像は観察できなくなる。代わりに、Heの電離電界強度より低い電界強度で電離するHO−FIM像(図4(b))が観察できるようになる。
冷媒槽9が空になった時点から10分程度でエミッタ2の温度は120K程度まで上昇する。温度上昇とともにエミッタ2の付近に吸着していた残留水分子が真空中に放出されるため、水分子の分圧比は一層高くなり、エミッタティップ2aの先端部近傍のHOによるエッチングがさらに促進される。
制御装置20は、CCDカメラ16によるFIM像の観察を続ける。
エミッタティップ2aの先鋭化により、同じ引き出し電圧でも再びHe−FIM像が観察される。制御装置20は、エミッタティップ2a先端の表面原子の状態をHe−FIM像で観察する。さらに引き出し電圧をHe−FIM像は観察できなくなるが代わりにHO−FIM像が観察できるまで引き下げる。
液体窒素による冷却が停止されたままなのでエミッタ2の温度は上昇し、冷媒槽9が空になった時点から40分程度でエミッタ2は200Kまでに達する。エミッタティップ2aの温度が室温程度まで上昇すると、表面のタングステン単結晶表面上の原子が熱エネルギーを得て激しく移動(マイグレーション)する。このとき、エミッタティップ2aの表面原子は、最先端に移動していく。図5(a)はマイグレーション現象を模式的に説明するための図である。水分子の分圧比が高いので、HOによるエミッタティップ2aの先端部近傍のエッチングがさらに促進される。なお、マイグレーション現象を促進するためフィラメント加熱電源6に電圧を印加し、エミッタティップ2aを適当に加熱しても良い。
エミッタティップ2aの温度が上昇すると共に、HOによるエッチングでエミッタティップ2aの先端径が細くなり表面電界強度が増加するので、表面のマイグレーションが激しくなる。制御装置20は、エミッタティップ2a先端の表面でマイグレーションはするが、電界蒸発は起きない程度まで引き出し電圧を引き下げる。
He−FIM像によりエミッタティップ2a先端のエミッションパターンをCCDカメラ16から取り込む。マイグレーションが起きていれば、エミッションパターンは図5(b)に示すように不鮮明(動画で観察すればパターンが刻々変化する)ように観察される。パターンの中央部に図6(b)に示すような表面原子数個(例えば3個)のパターンが表れたら、制御装置20は(CCDカメラ16で取り込んだ画像を図2(b)のような基準画像と比較する。
基準画像に類似していると判断されたら、式(1)を用いて現在の先端径を計算し、エミッタティップ2aの先端径rが所望の(40nm程度)になっているかを判定する。さらに引き出し電圧を引き下げた条件で表面原子数個(例えば3個)のパターンが得られるまでHe−FIM像の観察を続ける。図5(b)は引き出し電圧が13kVのときに観察されるHe−FIM像である。
所望の先端径が得られたと判定されたら、制御装置20はさらに引き出し電圧を9kV程度まで下げ、直ちに開閉弁11を開いて冷媒槽9に液体窒素を供給する。エミッタティップ2a先端のマイグレーションは停止し、表面原子数個(例えば3個)のパターンが保持される。
再冷却を開始してから8分程度でエミッタ2の温度は凡そ90K程度まで低下する。9kV程度の引き出し電圧で安定にHe-FIM像を観察することができる。
以上述べたように、本発明によれば、エミッタを大気中に取り出すことなく、エミッタティップの先端を先鋭化できる。そのため、原子数個分から放出される極めて細いイオンビームを低い引き出し電圧で発生させることが可能なエミッタを簡単に再生することができる。
(同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付す。)
1…チャンバー
2…エミッタ
2a…エミッタティップ
3…引き出し電極
4…引き出し電圧電源
5…加速電圧電源
6…フィラメント加熱電源
7…ガス導入管
8…開閉弁
9…冷媒槽
10…冷媒導入管
11…開閉弁
12…冷媒排出管
13…マイクロチャンネルプレート(MCP)
14…蛍光板
15…観察窓
16…CCDカメラ
17…四重極型質量分析計(Q−mass)
20…制御装置
21…電源制御装置
22…開閉弁制御装置
23…画像処理装置

Claims (7)

  1. 真空中に配置されるエミッタの周囲にイオン化されるべきガスを供給し、該エミッタと対向配置される引き出し電極との間に印加される引き出し電圧により
    該エミッタ先端部に形成される強電界によりガスをイオン化する電界電離型ガスイオン源において、
    エミッタから放射されるガスイオンのエミッションパターンを観察する観察手段を用いてエミッタ先端の先鋭化処理を行なうエミッタティップ先鋭化方法であって、
    液体窒素温度付近の温度に冷却された前記エミッタ周囲に前記ガスを供給し、引き出し電圧を印加して前記観察手段によりガスイオンのエミッションパターンを観察しガスイオンの発生を確認する第1の工程と、
    前記エミッタの温度を上昇させると共に、引き出し電圧を前記ガスはイオン化せず真空中の残留ガス分子はイオン化できる電圧に設定し、残留気体分子イオンにより前記エミッタを衝撃する第2の工程と、
    前記エミッタ先端の先鋭化の進行に伴い前記ガスが再びイオン化するときのガスイオンのエミッションパターンを前記観察手段により観察してガスイオンの発生を確認する第3の工程と、
    前記観察手段によりガスイオンのエミッションパターンを観察し、前記エミッタ先端の表面原子によるマイグレーションが停止するまで前記引き出し電圧を低下させる第4の工程と、
    前記第4の工程で低下させた終了時の引き出し電圧を維持しつつ前記エミッタを再び液体窒素温度付近の温度に冷却する第5の工程と、
    を有することを特徴とする電界電離型ガスイオン源のエミッタティップ先鋭化方法。
  2. 前記第2の工程において、前記観察手段により残留気体分子イオンのエミッションパターンを観察して残留気体分子イオンの発生を確認することを特徴とする請求項1に記載の電界電離型ガスイオン源のエミッタティップ先鋭化方法。
  3. 前記第4の工程において、前記観察手段によるガスイオンのエミッションパターンとその時の引き出し電圧の値に基づいて算出したエミッタの先端径が所望の値になったことを判定して前記第4の工程を終了させることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の電界電離型ガスイオン源のエミッタティップ先鋭化方法。
  4. エミッタと、該エミッタを少なくとも液体窒素温度近傍まで冷却する冷却手段と、
    該エミッタにイオン源ガスを供給するガス供給手段と、
    該エミッタに対向して配置される引き出し電極に印加する引き出し電圧を可変する電圧可変手段と、
    前記エミッタのエミッションパターンを観察する観察手段とを有する電界電離型ガスイオン源であって、
    前記観察手段により得られた画像から前記エミッタのエミッションパターンを基準画像との類似度を判断する判断手段と、
    前記冷却手段と前記電圧可変手段と前記観察手段と前記判断手段とを制御するガスイオン源制御手段とを備え、
    該ガスイオン源制御手段は、
    前記エミッタに前記引き出し電圧と前記イオン源ガスが供給されて前記イオン源ガスによるエミッションパターンが観察される状態で、
    前記冷却手段による液体窒素供給を停止して前記エミッタの温度を液体窒素温度から徐々に上昇させながら、前記イオン源ガスによるエミッションパターンが観察されなくなり残留気体分子によるエミッションパターンが観察できるようになるまで前記引き出し電圧を減少させ、
    前記エミッタの温度が室温程度に達した状態で、前記イオン源ガスによるエミッションパターンを観察し、前記エミッタの先端の表面原子によるマイグレーションが停止するまで前記引き出し電圧を下げ、
    前記判断手段により前記イオン源ガスによるエミッションパターンが所望のパターンとなったと判断されたら前記エミッタを液体窒素で再冷却する制御を行なうように構成されている
    ことを特徴とする電界電離型ガスイオン源。
  5. 前記電界電離型ガスイオン源は、前記エミッタを加熱する加熱手段をさらに備え、
    前記ガスイオン源制御手段は、
    前記冷却手段による液体窒素供給が停止しているとき、前記エミッタを加熱して前記マイグレーションを促進させるように制御を行なうことを特徴とする請求項4に記載の電界電離型ガスイオン源。
  6. 前記エミッタは、結晶面<111>を軸方向に有するタングステン単結晶からなることを特徴とする請求項4乃至5に記載の電界電離型ガスイオン源。
  7. 前記イオン源ガスはヘリウムであることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の電界電離型ガスイオン源。
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KR101413287B1 (ko) * 2013-07-09 2014-07-01 한국표준과학연구원 입자빔의 방출 이미지 획득 장치 및 방법

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