JP6005161B2 - 制御されたプロファイルを備えたナノチップの製造方法 - Google Patents

制御されたプロファイルを備えたナノチップの製造方法 Download PDF

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Description

[関連出願の相互参照]
本願は、2011年9月26日出願の米国仮出願第61/539404号の優先権を主張する。
本発明は、ナノテクノロジーの分野、特に、ナノチップ(ナノ先端部)の製造方法、特に、走査型プローブ顕微鏡法(走査型トンネリング顕微鏡法や、原子間力顕微鏡法等)に適したナノチップの製造方法、また、イメージングやナノ機械加工用の電子顕微鏡及びイオン顕微鏡での使用に適したナノチップの製造方法、ナノチップをin situ(その場、インサイチュ)で再構築する方法に関する。
ナノスケールチップの製造及び特性評価は、多様な走査型プローブ顕微鏡から最大限の情報を得ようとする科学者にとって重要な問題である。ナノチップは、金属又は半導体に対する点接触の明確な研究のために、また、原子、分子、小型粒子の操作及び調査のために必要とされる。ナノチップは、プローブとプローブとの間の間隔に対する制限がチップの形状の直接関数であるという将来的な多重プローブ実験のために必要とされ、高分解能電子顕微鏡法用のコヒーレントで高輝度の電子ビーム源として必要とされ、走査型イオン顕微鏡(SIM,scanning ion microscope)用のガスフィールドイオン源(GFIS,gas field ion source)としての使用に必要とされ、また、高分解能のAFM(atomic force microscope,原子間力顕微鏡)イメージング及びSTM(scanning tunneling microscope,走査型トンネル顕微鏡)イメージング、パターン形成用の原子スケール操作等の応用において望まれている。こうした場合の全てにおいて、明確で、容易に形成され、クリーンで且つ超鋭いチップが有利である。本発明者の知見によると、ナノチップを製造するための複数の方法が他の研究者によって開発されていて、(1)堆積法、(2)ビルドアップ法、(3)擬似静止プロファイル法、(4)電界表面溶融法、(5)電界増強拡散成長法が挙げられる。また、(6)頂点ファセット化も、ナノチップを成形するために採用されている。ファセット化は、追加の金属又はガス吸収質の堆積、それに続くアニーリングプロセスを伴い得る。(7)三量体ベースの独自製造プロセスや、(8)電界アシストガスエッチングも挙げられる。
走査型イオン顕微鏡法(SIM,scanning ion microscopy)応用のためのガスフィールドイオン源(GFIS)用ナノチップの開発が近年大きな関心を集めている。GFISは、1960年代に広く用いられ研究されていた電界イオン顕微鏡法(FIM,field ion microscopy)の原理に基づいている(非特許文献1)。FIMでは、鋭いチップが真空チャンバ内に配置されて、高い正バイアス電圧が印加される。イメージングガス(一般的にはHe)をチャンバ内に導入すると、FIMパターンが蛍光スクリーン上に観測される。典型的なFIMの設定の概略図が図1に示されている。蛍光スクリーン上の各スポット(図2を参照)が、単一の表面原子が発生させた個々のイオンビームを表している。SIMでは、単一の表面原子サイトが、顕微鏡のイメージングビームとなるようにアパーチャによって選択される。イメージングガスが少数の原子サイトで共有されるので、高イオン電流及び輝度を達成するために、原子的に画定されたチップが、SIMの動作に望まれる。
GFISは、イメージングに適していて、非染色性イオンHeビーム及びNeビームを用いたナノ機械加工応用にも適していて、イメージングやナノ機械加工を行うためのFIB(focused ion beam,集束イオンビーム)におけるLMIS(liquid metal ion source,液体金属イオン源)の代わりになると考えられている。LMISは、Ga金属コーティングを備えた非常に鋭い金属チップである。高電圧において、Gaイオンが放出される。LMISは、現在、大抵のFIB顕微鏡において見受けられ、幅略5nmのビームを生成することができる。更に、従来のLMISベースのイオン顕微鏡は、主に機械加工用に用いられているが、残留ガリウムで研究中のサンプルを“染色”するという望ましくない性質を有する。結果として、デュアルビーム電子イメージング及びイオンミリング機器が必要とされ、通常用いられている。ヘリウムベースのGFIS顕微鏡は、サンプル上に残留ヘリウムをほとんど又は全く残さない。また、GFISは、鋭い金属チップに基づいているが、周囲の気相から到達した原子がイオン化されて放出される。GFISに基づいた顕微鏡は、幅略1Åのビームを生成することができる。ネオン又はアルゴンのイオンビームを用いて、望ましくない染色効果無く、ナノ機械加工を行うことができる。
また、SIMは従来のSEMに対して多数の利点を提供して、(i)高度にコリメートさせたイオンビームに起因した焦点深さの良さ、(ii)波長の短さ並びに球面収差及び色収差の低さに起因した極限分解能の良さ、(iii)素子感度及び表面感度の良さが挙げられる。しかしながら、走査型イオン顕微鏡の開発は、許容可能なガスフィールドイオン源(GFIS)が存在しないことによって、阻まれている。SIMの可能性を実現するためには、SIM用のGFISの理想的な特性をいくつか達成する必要があり、1)イオン源が容易に製造できなければならないこと、2)イオン源を顕微鏡から取り外さずに容易に再構築できること、3)理想的には、再構築毎に、放出特性(放出軸等)が変化しないままであり、実質的な銃整列の必要を排除するように機能的に同一の頂点構造がもたらされること、4)イオン源が大イオン電流をサポートして長時間にわたって安定でなければならないこと、5)顕微鏡の性能を改善するため、イオンビームの角度電流強度を可能な限り大きくして、プローブ電流を最大化することも望まれていることが挙げられる。
電界アシスト化学エッチング法が報告されていて、これは、表面(例えばタングステン)上へのガス種(典型的には窒素)の吸着を伴う。タングステン表面上への分子状窒素の吸着は完全に調べられている(非特許文献2)。複数の吸着状態が形成されることがわかっていて、そうした状態の中に、“強結合”状態が存在する。この状態は、タングステン表面上のNの解離、これに続くWの頂部原子層内への拡散によって生じる。これは、W原子の突出を生じさせて、弱い表面構造をもたらす。タングステンチップ上の窒素ガスの初期のFIMの研究によると、窒素がイオン化障壁に浸透することができる低電界領域のみにおいて、窒素の反応が生じることがわかっている。また、非特許文献3によると、Wチップが窒素ガスに晒されると、(111)面及び(001)面上にホールが発達して、W原子が除去されることが示されている。この窒素の腐食反応は以下のように説明されている:Nの吸着によって生じた金属表面からのW原子の突出は、電界を増強して、その電界が、突出したW原子をイオン化及び蒸発されるのに適したものになる(非特許文献4)。
特許文献1には、単一原子チップを形成するために電界アシストエッチングプロセスを用いたナノチップの製造法が開示されている。このプロセスが公開された後、他のガスを用いても、化学アシスト電界誘起エッチングメカニズムを介してナノチップを生成することが行われている。酸素は、ナノチップを生成することができるエッチングガスであることがわかっていて、ナノ突起の形成のための一定電圧エッチング法が開示されている(非特許文献5)。水もタングステンチップを積極的にエッチングすることがわかっていて、電界放出の研究のためのチップを作製するための一定電圧エッチング法で用いられている(非特許文献6)。
特許文献1(その内容は参照として本願に組み込まれる)には、電界アシストイオンエッチングを用いたSAT(single atom tip,単一原子チップ)の製造方法が開示されている。しかしながら、未解決の問題がいくつか存在している。特に、多様な球形形状を備えたSATを作製する方法を開発することが望まれている。球形形状は、荷電粒子ビームのビーム発散角を制御し、また、走査型プローブの応用においてチップとサンプルとの相互作用を変更するものであるので、重要なパラメータである。例えば、(i)SIMの応用及びイオンビームの発生において、理想的には広範なベース上でSATを用いて、角度電流強度(輝度)を増大させる能力は、顕微鏡の性能を改善するために重要である。(ii)点投影電子ホログラフィにおいて、発散電子ビーム(テール(細いチップ)から得られるもの等)が分解能を改善するために望まれている。(iii)走査型プローブ顕微鏡法(例えば、AFM)において、多様な形状のチップは、その形状に依存したチップとサンプルとの相互作用を通じて多様な利点を提供する。
SIMの動作において、SATのイオン源は時間と共に機能しなくなる。そこで、一貫したチップの位置/ビームの向きを備えてin situ(その場、インサイチュ)でSATを作製及び再構築して、それまでの整列状態を維持することができるようにすることも望まれる。これは、ピーク角度放出に対して同一の放出特性を保証する。こうしたイオン源の放出角度の一貫性は、銃再整列の必要性をなくす。ヘリウム以外のガス源(ネオン等)で動作する許容可能なSATの開発も有用である。
三量体チップが市販で応用されていて、合理的な構造安定性及びロバスト性を提供している。しかしながら、W(111)三量体ベースのGFISは、三つのイオンビームの内の一つを選択するのに複雑な整列プロセスを必要とし得る。更に、チップ頂点の三つ全ての原子サイトが、ヘリウムガス供給を共有しなければならず、可能な電流が制限される。また、ナノメートルスケールでのイオンミリング(機械加工)を行うのに致命的となるネオンイオンビーム生成中の安定性の悪さが観測されている。一方、単一原子チップ(SAT)は、利用可能な全てのイメージングガス原子を単一の頂点原子においてイオン化することを可能にして、原子毎に最大のイオン電流を提供する。また、窒素アシストエッチング及び蒸発プロセスでは、その後のチップの再構築プロセスが、全く同一の頂点原子の横方向の配置及び向きを備えたSATをもたらし、イメージング及びナノ機械加工用の安定したネオンビームを生成することができる。
米国特許第7431856号明細書
E.W.Muller、T.T.Tsong、"Field Ion Microscopy"、Elsevier、ニューヨーク、1969年 T.Tamura、T.Hamamura、Surf.Sci.、第95巻、p.L293、1980年 K.D.Rendulic、Z.Knor、Surf.Sci.、第7巻、p.205、1967年 G.Cranstoun、J.Anderson、Surface Science、第35巻、p.319、1973年 Y.Sugiura et al.、e‐J.Surf.Sci.Nanotech.、第9巻、2011年、p.344‐347 Jo Onoda、Seigi Mizuno、Applied Surface Science、第257巻、2011年、p.8427 M.Scheinfein、W.Qian、J.Spence、J.Appl.Phys.、第73巻、p.2057、1993年
本発明の一側面によると、ナノチップを製造する方法が提供され、本方法は、電界アシストエッチングを行うように反応ガスの存在下において電界を印加することによって頂点及び胴部を有する前駆体ナノチップを修正するステップ(反応ガスとの化学的相互作用によって原子が胴部から優先的に除去される)と、ナノチップの製造中における頂点原子の電界蒸発を促進するように電界を変更するために、反応ガスの圧力及び/又はチップ電圧を制御することによって、結果物のナノチップの全体的なプロファイルを制御するステップとを備える。一実施形態では、プロセスは、FIM内で行われ、製造中のチップの実時間イメージングを可能にする。エッチングが進むにつれて、チップ電圧を、制御された変化率で低下させることができる。
本発明に実施形態に係る鋭いチップの製造中における原子の除去には、電界蒸発と電界アシストエッチングという二つの異なるメカニズムが存在する。本発明者は、両方のメカニズムを用いることによって、最終的なチップの全体的な形状を制御することができることを見出した。純粋な電界アシストエッチングは鋭くて長いチップをもたらすが、或る程度の電界蒸発と組み合わせた電界アシストエッチングはより平坦な肩部を備えた短いチップをもたらす。従って、両方のパラメータの使用が追加的な自由度をもたらして、ナノチップの最終的な形状に対する更なる制御を与える。
従って、新規プロセスでは、チップ頂点を成形するガスアシストエッチングを、(同時の、逐次的な)電界蒸発と共に用いて、追加的な成形自由度を得ている。結果として、大きな半球状のベースの上に、高アスペクト比のものから低アスペクトのものまで多様なSATを作製することができる。
一実施形態では、電気化学的にエッチングされたチップを真空チャンバ内に置いて、脱ガスを行い、表面汚染物質を除去することによって、前駆体ナノチップが作製される。続いて、所定のチップ電圧で、チップ頂点を電界蒸発させる。エッチングガスを導入して、電界蒸発モードとエッチングモードとの間で印加電圧を循環させることによって、頂点を更に成形する。この方法は、欠陥がなくて一貫した半径を有して幅広な円形チップを生じさせて、SATを製造するための再現可能な開始点が得られる。
上記新規方法を用いて作製されたSATは、三量体チップと比較して、改善した安定性を有し、ネオンイオンビームを生成することが確かめられている。特許文献1に記載されているような電界イオン顕微鏡法によってその製造プロセスを監視することができる。
上述のように、ナノチップは、FIM内で製造可能であり、この場合、製造プロセス中にチップをイメージングすることができる。チップ形成プロセス中の所望の構造情報を得るために、異なる複数のイメージングガス(イオン化エネルギーが異なる)を用いる。この新規構造監視モードによって与えられる情報は、以前では不可能であったチップ形状全体の評価を可能にするものであり、新規製造プロセスの重要な要素である。また、これによって、例えば、パターン認識法を用いることによって、チップ製造プロセスを自動化することもできる。
エッチングパラメータ及び電界蒸発パラメータの両方を制御することで、全体的な形状及びチップの鋭さを制御する能力が改善される。
上記方法によって製造及び再構築されるSATは、放出されるイオンビームと顕微鏡軸との一貫した整列性を有する。この事は、イオン源を再構築された各チップと再整列させる必要性をなくす。更に重要な点として、この事は、イオン銃設計の複雑性を顕著に低下させて、性能の改善及びコストの削減をもたらす。また、この事は、再整列中に生じる顕著な待ち時間をなくすことができる。
本発明の一実施形態は、好ましくは高速自動プロセスで、SIM又はFIM内においてin situでチップを生成及び修復する方法を提供する。従って、本発明の第二側面は、SIM又はFIM内でナノチップを再構築する方法を提供し、本方法は、in situでナノチップを備えた前記走査型イオン顕微鏡又は電界イオン顕微鏡の真空チャンバ内にエッチングガスを導入するステップと、顕微鏡内のチップの整列を維持しながら、電界の存在下において反応ガスで頂点及び胴部を有するナノチップを、胴部が優先的にエッチングされるようにエッチングするステップと、最終的なナノチップの全体的なプロファイルを制御するために、頂点原子の電界蒸発を促進又は抑制するようにチップ電圧を変更するステップとを備える。
自動化はコンピュータ制御されて、多様な形状のチップを作製するようにカスタマイズ可能である。自動化は、全ての印加電圧及びガス送達システムに対する制御を行い、自動化ではないプロセスよりもエッチング及び成形プロセスが急速に行えるようにして、熟練の作業者の必要性を減らして、動作コストを減らして、新規な源及び構築法を組み込んだ機器の利用性を上昇させる。
本発明の他の実施形態は、ガス原子の熱的適応性を改善するためにチップの胴部のコーティングを含む。到達してくるガス原子は過度の運動エネルギーを有し、跳ね返りを繰り返して、チップ表面に着地する。本方法は、到達してくる原子が、イオン化プロセスに対するフィード原子として機能することを抑制する。チップ表面を構築する原子の元素的な同一性は、飛来してくるガス原子の冷却速度に影響を与え得る。ガス分子を可能な限り高速で冷却すること(熱的適応性)によって、イオンビームの全体的な輝度が、未処理のチップと比較して改善されると考えられる。
本発明の他の実施形態は、ガス汚染物質からの反応に対する放出チップのロバスト性を改善するために、チップの胴部のコーティングを含む。動作中の一貫した形状を維持するために、反応からチップを保護することは重要である。これは、チップの動作寿命を延ばす。
コーティングは窒素であり得るが、酸素等の他のコーティングも使用可能である。
カスタムチップ作製装置において、初期チップ製造を行うことができる。大気条件に曝された際の顕著な劣化から頂点を保護する窒素パッシベーション層のおかげで、このことが可能となる。真空チャンバ及び/又は動作機器内への再挿入の後に、チップを脱ガスするように設定された適切な加熱プロセスが必要とされる。チップが設置される動作機器(例えば、SIM)内でチップの再構築を行うことができる。後の再構築が必要になった際に、チップを動作顕微鏡から取り外す必要はない。
本発明の最後の実施形態は、チップの全体的な形状の更に変更するために、前駆体ナノチップ又はSATのいずれかの追加的な加熱ステップを含む。このステップでは、数分間(一般的には60〜120秒間)にわたって、脱ガスプロセスよりも高温にチップを加熱して(典型的には1400℃)、表面拡散を促進する。このプロセスはファセット化と称されることもある。この製造ステップは、主に、ベースチップの曲率を増大させて、引出電圧を増大させて、角度電流密度及び輝度を改善するように設定される。
まとめると、本発明の側面は、SATを製造しその性能を改善する四つの主な方法を提供する:
(i)一貫したビーム整列を維持するために、また、各チップの再構築後にイオン源を再整列させる必要性をなくすために、SATの全体的なチップ形状を制御して、ビーム開口角度及び/又は角度電流密度(源の輝度)を制御するガスエッチング及び電界蒸発を組み合わせた方法。
(ii)高速自動チップエッチング方法。
(iii)追加的な反応を経ることからチップを保護することによって、全体的なイオン電流を改善し、チップの角度電流強度、安定性及び寿命を増強するチップ表面加工。窒素等の多様なチップコーティングを用いて、飛来してくるイメージングガスの原子/分子の高速熱的適応性を促進する。高速熱的適応性はイオンビームの発散を低下させて、イオン電流密度を増大させる。また、ガス捕獲率も改善されて、頂点原子へのヘリウムの供給が増え、裸の金属(タングステン)チップと比較して、全イオン電流が増大する。
(iv)チップの全体的な形状を更に変更して、ビーム開口角及び/又は角度電流密度(源の輝度)を制御するために、前駆体ナノチップ又はSATのいずれかを熱処理(アニーリング)してナノチップをファセット化させることによる頂点の成形。
以下、添付図面を参照して、単に例示目的で本発明をより詳細に説明する。
FIMの概略図である。 完全に電界蒸発したW(111)チップのFIM画像である。 a〜eは多様なFIMパターンを示し、fは電界プロファイルの概略図である。 aはHe‐FIM画像を示し、bは同じチップのNe‐FIMパターンである。 ヘリウム画像の拡大図である。 チップ=6.5kVで記録したSATのヘリウム画像及びネオン画像を示す。 予測形状と実際にエッチングされた形状との比較を示す。 時間ゼロと、100時間のHeを用いた連続動作後のSATを示す。 ネオンガスを用いた際の三量体チップの電流不安定性を示す。 SATからの安定なヘリウム及びネオンの放出を示す。 a及びbは、異なる条件下で作製されたSATの特性を示す。 異なる加速電圧で作製された多様なチップの六量体の寸法を示す。 エッチングプロセスを続けた際のチップの大きさの変化を示す。 規則的なエッチングされたナノチップを用いたSi(111)7×7のAFM画像を示す。 LEEPS顕微鏡の概略図を示す。 ナノチップを用いたLEEPS実験の干渉パターンを示す。 a(初期のチップ)及びb(クリーニング後)は、鋸歯状電圧プロファイルを用いたチップクリーニングの効果を示す。 チップが単一軸に沿って再構築される流れを示す。 二つのW(111)三量体構成を示す。 FIMイメージングプロセスの概略図である。 チップ上にコーティングが有る場合及び無い場合の電子放出電流の時間経過を示す。 大気曝露及びSATの回復を示す。 パッシベーション及び加熱を用いたベースの成形を示す。
本発明をFIMに関して説明するが、これは、走査型イオン顕微鏡において用いられるガスフィールドイオン源の開発用のテストシステムとして機能する。FIMでは、鋭いチップが、超真空チャンバ内の電界中に置かれ、そのチャンバは、ヘリウムやネオン等のイメージングガスを用いて再充填される。チップ付近の表面の曲率が、表面に略垂直な方向にイオン化したガス原子を反発させる。こうした反発イオンが、検出表面に当たり、収集されたイオンから形成された拡大画像が、個々の原子をイメージングするのに十分な分解能のものになることができる。FIMは、プロセスの進行と共にチップの形状を監視することを可能にする。
走査型電子顕微鏡(SEM)は、以前から知られている。SEMでは、サンプルが、電子ビームによってラスタ方式で走査される。SIMでは、電子ビームが、ヘリウムイオン等のイオンビームに置換されて、画像を生成するのに用いられる。本実験において用いられるFIMは、イオン源としてのナノチップの振る舞いを観察するための便利な手段として機能し、実験データ/結果は、SIMにおけるチップの振る舞いにとって有効であると考えられる。本発明の利点の一つは、SIM内でイオン源をin situで再構築する能力である。
典型的なFIMの設定が図1に示されている。チップ1は、イメージングスクリーン4に向き合う軸3に沿って真空チャンバ2内に取り付けられる。高電圧がチップに印加されて電界を発生させる。チップは、典型的には、20〜100Kの温度に維持される。略10×10−4Torrの圧力のヘリウムがチャンバ内に維持される。
FIMの動作中に、ヘリウム原子がチップに当たり、原子がイオン化される箇所から頂点に向けて移動して、スクリーン4に向けて細いビームで流れ出す。実験は、<1×10−10Torrの基準圧の超高真空システム内で行われた。タングステンチップは、一般的に、略900℃で数分間にわたって脱ガスされる。この比較的低温の処理は、鋭いチップの頂点を維持しながら、エミッタを脱ガスする。FIMの観察及び窒素エッチング中において、チップは、冷却窒素ガスを用いた流動式クライオスタットで冷却された。ガスマニホールドがクライオスタットに取り付けられて、チップ温度を制御するために、冷たい(LN温度付近)及び温かい(室温)窒素ガスを混合することが可能とされた。チップ電圧及び引出器電圧をコンピュータで制御及び監視した。実験では、引出器電圧を−2kVに固定した。FIMパターンをMCP(micro channel plate,マイクロチャネルプレート)によって増幅して、Pixelfly高感度カメラを用いて記録した。ここに示される画像は、信号対ノイズ比を改善するために平均化されて撮られたものである。図2は、完全に蒸発したW(111)チップの典型的なヘリウム発生FIMパターンを示す。全引出電圧は+20kVである(+18kVがチップに印加され、−2kVが引出器に印加される)。チップ半径を、FIM画像における二つの結晶学的方向の間のリングの数nによって求めることができ、
R=ns/(1−cosγ) (式1)
ここで、sは、ステップ高さであり、γは、結晶方向間の角度である。格子定数a=3.16Åのbccタングステンは、W(111)に対するs=0.912Åに対応する。チップ頂点の半径を求めるために、[111]方向及び[211]方向を選択した。これらの方向は、1/(1−cosγ)=17.5Åに対応する。全ての数を組み合わせると、チップ半径に対する単純な表現が得られる
R[A]=15.96n (式2)
この具体的な場合(図2を参照)において、[111]方向と[211]方向との間に9個のリングを数えることができて、144Åのチップ半径を示している。これは、電気化学的にエッチングされたタングステンチップに対する典型的な値である。
初期チップ半径の評価は非常に重要である。また、チップ全体の形状も、引出電圧を求めるのに重要な役割を果たす。従って、頂点の曲率を注意深く測定して、一貫した開始点を保証することが重要である。電界蒸発、エッチング(上述の鋸歯状法)、及び/又は加熱処理の組み合わせが、所望のチップ半径を達成するために必要となり得る。
本発明の実施形態は、窒素の導入で同じ設定を用いることができるFIM又はSIMでの使用に適したSATを製造するための方法、顕微鏡内で使い古されたチップをin situで再構築するための方法、及び、顕微鏡のイメージング性能を改善するための方法を提供する。
[ネオンイメージングガスを用いたチップ形状の決定]
チップを作製する一つの方法は、特許文献1に記載されているガスアシストエッチングプロセスを用いることである。印加電界は、前駆体チップの胴部(シャンク)を優先的にエッチングするように制御される。特許文献1に記載されているプロセスでは、前駆体チップの初期半径が、最終的な製品の球形形状の唯一の決定要因である。
特許文献1に記載されている手順を変更して、電界蒸発的要素を導入することによって、SATの支持構造の制御された成形を可能にした。この段階において、電界の制御された印加の結果として、チップのタングステン原子が選択的に除去される。
窒素アシストエッチング中におけるW(111)チップの形状評価を、ネオンイメージングガスを用いたFIMで行った。
チップの成形を、窒素アシストエッチングによって行った。N分圧を、残留ガス分析器(RGA,residual gas analyzer)によって監視して、5×10−6Torrで一定に保った。2×10−5Torrでヘリウムイメージングガスを用いて、FIMパターンを形成した。コンピュータ制御の下で、チップ電圧を、−3V/sの変化率で+18kVからゆっくりと低下させた。エッチング現象が、FIMパターンの外縁で見られた。これは、このエッチングプロセスと矛盾しない。つまり、Nエッチングガスは、イオン化及び投影されずに印加電界障壁に入り込むことができる場合に、タングステン表面のみにアクセスすることができる。印加電界が適切に制御されると、チップ頂点における電界は、窒素のアタック及びエッチングからチップ頂点を保護する。エッチングが進むと、FIMパターンが変化する(図3bを参照)。窒素エッチングは鋭い円形の縁を形成するが、中心チップ領域は平坦なままである。平坦なチップ頂点における結果としての電界は、ヘリウムイメージングガスをイオン化するのに十分ではなく、暗い領域をもたらす。チップ頂点に原子が存在する兆候は非常に弱い。エッチングが進むと、原子のリングが縮まり(図3b〜c)、エッチングが更に進んでいることを示す。図3dではリングが完全に消滅して、チップ頂点の原子が顕著になっている。引き続きのエッチングが、単一の頂点原子が残るまで、更にチップを鋭くする(図3e)。そして、SATが形成される。
エッチングプロセス中に、チップ頂点が暗くなり、これは、ヘリウムイメージングガスをイオン化するのに不十分な電界の低下を示唆している。しかしながら、チップ頂点は変化していないので、電界は、窒素及び他の不純物がタングステン表面に到達する前にこれらをイオン化するのに十分な強さにある。電界の存在下において、窒素は、頂点から遠いタングステン表面に吸収されるよりもむしろ、チップの胴部に沿って頂点に向けて移動する。窒素分子は、図3bに見られるリング構造の外周の高電界領域に到達すると、タングステン原子と反応して、タングステン原子をエッチング除去し得る。このプロセスにおいて、窒素分子が消費されて、更なる反応には利用できない。この窒素送達のメカニズムは、図3b、cに観測されるリングの内縁がエッチングされていないという事実にサポートされている。電界強度が等しいにもかかわらず、外縁の原子のみが除去され、これは、利用可能な窒素が存在しないことを示している(図3f)。
図4bに見て取れるように、イメージングガスとしてネオンを用いて(ヘリウムの代わりに)、平坦な中央領域を更に調査した。以下の二つの顕著な点が観測された:(i)ヘリウムでは黒くて特徴の無かった領域が、クリーンなW(111)結晶構造を解明した点、(ii)ヘリウム画像では見えていたリングが不明瞭になった点。ヘリウムの代わりにネオンイメージングガスを導入することによって、平坦なチップ頂点のヘリウムではアクセス不能であった構造の解明は、その低いイオン化エネルギーに関係している(表1を参照)。
これによって、ヘリウムではイメージングされなかった中央のチップ領域にわたるネオンのイオン化が可能となるのと同時に、ヘリウム発生画像において見えていたリング等の高電界の領域が、チップ表面から遠くでの過度のイオン化のために不明瞭になり、画像分解能を損なう。画像の歪み及び大きなリング間隔は、高いチップ曲率に対応していて、平坦なチップ頂点がエッチングされたチップの胴部へと繋がっている。{110}面付近での原子的な特徴は、両方の画像において同じである(図4a及び4bを参照)。{110}面は、むしろ平坦であり、低電界に対応していて、高電圧においてもネオンを用いて良好なイメージングが行われる。チップ電圧を低下させて、ネオンイメージングガスの低いイオン化エネルギーを考慮することによって、チップ頂点構造がネオン画像から消え、その時点において、ヘリウム画像及びネオン画像の両方は、ほぼ同じ見た目となる。ネオンのイオン化エネルギーは、それでも一般的な真空汚染物質のものよりも顕著に高く、クリーンなチップ頂点を保証している点に留意されたい。
図5は、図4に示される部分的にエッチングされた構造を、図3aに示されるエッチングされていない元々のチップと比較している。頂点原子のみを強調するために、画像がトリミングされている。顕著なエッチングが二枚の画像の間で生じているが、実際には原子が頂点から除去されていないと結論付けられる。これは、上述のように窒素がタングステンエッチングサイトに送達されるというメカニズムと矛盾しない。
ネオン等の低イオン化エネルギーガスを用いたFIMイメージングは、SATの構造の価値のある情報も提供する(図6を参照)。ヘリウム発生画像では、頂点原子のみが、非常に少数のサテライト原子と共に目に見える。エッチング又は電界蒸発のいずれかによって頂点原子を除去しない限りは、他のチップ構造情報を得ることができない。この点について、チップ構造は再構築可能であるが、チップ自体が破壊される。イメージングガスとしてネオンを用いることによって、ヘリウムの最良イメージング電圧を維持しながら、低電界領域を観測することができる。図6は、ヘリウム画像(左)及びネオン画像(右)を比較する。この具体的な場合において、非対称な支持構造が解明されている。ネオン画像は、頂点原子の下の二つの層を解明していて、頂点周辺での電界分布が、少数の原子層のみにわたって劇的に減少していることを示している。
ヘリウムイメージングガス及びネオンイメージングガスを用いた観測に基づき、チップのエッチング中に生じる成形プロセスを理解することができる。その概略図が図7aに示されている。エッチングは、エッチング用の電界条件が満たされているチップ頂点の下において生じる。これは、エッチングが進むにつれて細くなるエッチングバンドを生じさせて(図7a矢印で示されている)、単一原子チップを支持する広がった構造をもたらす。この構造モデルは、図7bの走査型電子顕微鏡像によって確かめられている。
この方法で作製されたSATの長期間ヘリウムイオン放出安定性を評価した。測定中の未修正のヘリウム分圧は1×10-5Torrであった。全イオン電流は求めなかった。図8は、安定性テストの多様な段階におけるSATの二枚のFIM画像を示す。画像は、時間ゼロ及び100時間の連続動作後に記録した。これは、このようにして作製されたSATが安定で回復力のある構造をもたらすことができることを示している。
上記実験は、W(111)単結晶ワイヤを用いてSATを作製するための窒素アシストエッチングの手順を例示している。ネオンをイメージングガスとして用いて、ヘリウムでは見ることのできなかったチップ構造を解明した。この観測に基づいて、エッチングプロセス中のチップ形状を求めた。チップベース上の頂点高さを適切なエッチングパラメータによって制御することができることは周知である。
実験結果は、窒素アシストエッチングがチップ頂点では生じないことを明らかにしている。これは、気相を介してではなく、チップ胴部に沿った窒素の送達メカニズムと矛盾しない。平坦なチップ頂点を取り囲む鋭い縁は、窒素からの保護体として機能する。これは、COや水等の低イオン化エネルギーを有する他の汚染物質に拡張可能である。上部の平坦なチップ頂点を、吸着や拡散等の多様な研究用の保護されたクリーンなタングステン基板として用いることができる。
[三量体チップと比較したSATのネオン安定性]
本方法で作製したSATの長期間ネオンイオン放出安定性を評価して、三量体チップのものと比較した。三量体終端W(111)チップで用いた際には、ヘリウムイメージングガスとネオンイメージングガスとの間に顕著な差異がある。三量体チップのヘリウム画像が安定に見える一方で、ネオン画像は、三つの個々の原子サイトからのイオン電流の顕著で急な変化を示す(図9)。ビームの揺らめきは画像の輝度の変動や、ナノ製造中の異なるスパッタリング速度をもたらすので、これは、SIMの動作にとって望ましくなく、特に、単一の原子からの電流を選択する場合には望ましくない。窒素及び電界アシストエッチングされたSATはこうした望ましくない振る舞いを示さなかった(図10)。SATは、ネオンイメージングガス(図10の下方)及びヘリウムイメージングガス(図10の上方)の両方から常に安定なイオンビームを発生させた。更に、ネオンイオン電流は、1/4から1/10のガス圧におけるヘリウムイオン電流に相当するものであり、大きなネオン電流を発生させることができることを示唆している。従って、窒素及び電界アシストエッチングプロセスによって形成したSATは、安定なネオンビーム発生に適している。更に、SATは、非染色ナノ機械加工及び高分解能イメージングに対して、三量体ベースのチップよりも、原子毎に高いイオン電流を提供する。
[エッチングプロセス中の電圧変化率を変更することによるチップ形状の制御]
上述のように、本発明の実施形態に係る鋭いチップの製造中における原子の除去には二つの異なるメカニズムが存在し、即ち、電界蒸発と、電界アシストエッチングである。
電界蒸発はその名の通り、高電界、例えばタングステンに対して5.5V/Å程度の存在下でのチップからの原子の剥ぎ取りの結果として生じる。電界蒸発は、通常、電界が最も強い頂点において生じる。これは、チップの鈍化を生じさせる。
電界アシストエッチングは主に化学的なプロセスであり、エッチングガス、典型的には窒素の化学的作用により原子がチップから除去される。この場合、電界は頂点において最も高く(イメージング/エッチング中に略4.5V/Å)、窒素原子を反発させることによって、頂点を保護する。結果として、電界の低い(例えば2から3V/Å程度)胴部が優先的にエッチングされて、図11aの黒線によって示されるように、単一原子チップを含む鋭いチップが得られる。特許文献1では、単一原子チップを形成するために電界アシストエッチングを採用している。電界アシストエッチングでは、電界が頂点自体を保護するように機能して、点ではない低電界の胴部に対するエッチングガスの化学的作用によって原子の除去が主にもたらされるようにする。
特許文献1に記載されているように、電界アシストエッチングでは、頂点が鋭くなるにつれて、頂点における電気力線が互いに近づいて、電界強度が上昇するので、頂点における電界を一定に保つため、エッチングプロセス中に印加電圧を低下させる。電圧を低下させないと、チップにおける電界蒸発が生じる点に電界が上昇してしまい、これは上記特許文献において回避したいものである。
本発明は、チップ形状全体の制御の追加的な自由度を与えるために、この現象の利点を活かす。応用によっては、図11aの黒線で示されるように更に尖ったチップが必要とされ、これは特許文献1の教示に従って達成可能である一方、他の応用では、図11bの黒線で示されるように幾分平坦なチップが必要とされる。本発明の教示に従って両方のメカニズムを制御することによって、図11aに示されるような極めて鋭いものから、図11bに示されるような比較的平坦なものまで多様なプロファイルを有するチップ形状を形成することができる。図11bにおいて、いくつかの原子がチップ頂点から除去される点、つまり、灰色線によって示されるような前駆体チップの頂部にまで点が延伸していない点に留意されたい。
二つのメカニズムを同時に発生させることができ、又は、例えば二つのメカイズムを循環させることによって別々の段階において逐次的に発生させることができる。上述のように、電界アシストエッチングが進むと、チップにおける電界が強力になるが、本発明に従うと、この点を利用して、チップにおけるある程度の電界蒸発を開始させて、平坦なプロファイルを生じさせる。
また、所望のプロファイルを有する単一原子チップを生成するために、電界蒸発を抑制する電界アシストエッチングの最終段階を行い得る。
他の実施形態では、チップの最終的な形状に対する更なる制御を達成するために、電界蒸発段階と電界アシストエッチング蒸発とを循環させることが望ましいものとなり得る。
一例として、FIMにおいて、特許文献1に記載されているような窒素エッチング電界アシストプロセスを用いて、W(111)チップをエッチングした。エッチング開始時に、チップ電界(電圧)を最良イメージング電圧付近になるように選択した。タングステン表面の窒素エッチングは、臨界値Vcritよりも小さく且つ閾値電圧Vminよりも大きな印加チップ電界において生じる。イメージングガスとしてヘリウムを使う場合には、
fe>Vimg>Vcrit>Vmin (式3)
であり、Vimgは最良イメージング電圧であり、Vfeは電界蒸発が生じる電圧である。Vcritは窒素分子のイオン化確率に関係していて、Vminは、“エッチングされた”タングステン原子を除去(電界蒸発)する最低電界に対応している。エッチング開始時に、は、最良イメージング電圧付近のチップ電界(電圧)が選択される。これが、印加電圧がVcrit>V>Vminという条件を満たす“エッチングバンド”を定める。エッチングが進むと、チップ頂点が突出してきて、局所電界が上昇し、結果として、頂点原子の電界蒸発を防止するためにチップ電圧を低下させなければならない(Vfe>V)。Vを連続的に低下させることで、頂点における“一定電界”が維持され、最後の原子を維持することができる。エッチング/蒸発が、鋭いキンクで続き、結果として、チップ頂点が細くなり、頂点に単一のタングステン原子を残す。これが、大幅には変更されないベースチップ半径の上に高アスペクト比のナノチップをもたらす。“一定電界”法で作製されたチップが図11aに示されている。
代替方法では、初期窒素エッチングが一旦確立されると、チップ電圧をゆっくりと低下させて、チップが鋭くなるにつれて、頂点原子が電界蒸発できるようにする。この“強制蒸発”は、チップがエッチングされるについてVがVfeに近づくことによって生じる。蒸発は、チップ形状の全体的な平坦化をもたらす。結果として、連続的なエッチング及び電界蒸発は、比較的小さなアスペクト比、つまりは高いチップ動作電圧を有するナノチップをもたらす。窒素圧力を介した窒素エッチング速度の変更、及び電圧を低下させる変化率の変更によって、チップの全体的な形状を制御することができる。電圧をより急速に低下させると、窒素エッチングが、頂点の電界蒸発よりも速くなり、より背の高いナノチップが形成される。電圧をより低速で低下させるか、一時停止させるか、又は、カスタム変化率プロファイルで調整すると、頂点原子が制御可能に除去され、エッチングと電界蒸発との間のバランスを通じて、チップ形状が制御される。“強制蒸発”法を用いて作製されたチップが図11bに示されている。
図11は、上述の方法によって作製された単一原子チップを二つ示し、また、チップ成形の概略図を示す。両方のチップは、略12nmの測定半径([111]方向と[211]方向との間の正味のリング数から評価される)から始まって、単一原子にエッチングされている。しかしながら、全体的なチップ形状は顕著に異なっていて、最終的な電圧は8kVから13kVと大きく異なっている。8kVの単一原子チップが、エッチング(急速な電圧降下)中に頂点原子を維持することによって作製された一方で、13kVの単一原子チップは、エッチングプロセス中の電界蒸発を可能にする遅い電圧降下によって作製された。動作電圧は各単一原子チップに対して大きく異なるものであるが、電界蒸発の無い場合から明らかなように、頂点原子における電界は同様のものでなければならない。
図11a及びbの初期チップ半径は両方とも12nmであった。図11aにおいて、SATを、12nmの電界蒸発チップから作製した。エッチングプロセス(一定電界)中に最後の原子を維持するような電圧降下でエッチングを行った。そのSATは8kVで放出を行った。
図11bにおいても、SATを、12nmの電界蒸発チップから作製した。エッチングプロセス(強制蒸発)中に頂点原子の電界蒸発を可能にする遅い電圧降下でエッチングを行った。これによって、突出の小さな幅広のチップが得られた。そのSATは13kVで放出を行った。
スポットサイズも、図11に示される二つの単一原子チップに対して大きく異なる。多数のチップを比較して、各画像の大きさを注意深く測定することによって、ナノチップのパターンサイズを調べた。画像の露出不足又は露出過多によるスポットサイズの不正確性を避けるために、SAPスポットのサイズ/プロファイルではなくて、七個の原子のパタン(中心原子を備えた六量体)の原子間隔の寸法を用いて、大きさを求めた。中心原子が結局はSATになるので、六量体の構造は単一原子チップに密接に関係している。非対称性の可能性を考慮するために、六量体の対向するスポット間の平均距離としてサイズを求めた。データが図12にプロットされていて、各正方形が別々のチップ測定を表している。また、三つの別々の六量体画像も、各画像に関連したビームエネルギーと共に、比較用に示されている。この図面は、パターンサイズとビームエネルギーとの間に関係性が存在することを示していて、画像において、高電圧パターンは、より小型の原子集合を有している。ビーム電圧の測定値を、チップとMCPのフロントプレートとの間の電位差によって求めた。これらの代表的な画像はこの影響を直に示していて、13kVの画像が六個の原子の小型の集合を示している一方で、6.45kVの画像は、六量体におけるより広がった原子配置を示している。データのフィッティングは、略V−0.9によるフィッティング関係を示している。この大きさの変化は、ナノチップを形成するように制御されたエッチングプロセスが、制御された方法でエミッタのベースの形状を変更することができることを示している。また、エッチングプロセス中のチップの大きさの変化も評価した。図13は、二つの別々のチップエッチング実験の大きさの減少を、図12からの大きさの傾向と共に示している(太線は、六量体の寸法の範囲を示す)。この場合、チップ形状の影響を評価するために、パターンサイズを正規化して、共通の加速(ビーム)電圧における拡大画像の直接的な比較を可能にした。
この実験では、より大きなチップベース上の六量体構造を識別及び測定した(図13の挿入図1)。そして、エッチングプロセスを用いて、六量体の周辺から残りの原子を除去した。大きさがエッチングプロセスと共に変化することがわかった。つまり、挿入図1において測定された減少パターンサイズは、挿入図2のものの58%であり、データの勾配は、図12からの実験データのもの(太線)をはるかに超えている。これにより、ナノチップの局所的原子構造がナノチップの大きさに対して大きな影響を有していると結論付けられる。
[エッチングされたナノチップを用いた原子間力顕微鏡法(AFM)の分解能の改善]
チップを、非接触原子間力顕微鏡のカンチレバーに取り付けた。振動が得られるように、カンチレバーを石英音叉から形成した。AFMの測定モードは、Qプラス法を用いた。チップ形成の一定電界法を用いて、チップをエッチングして、高アスペクト比のチップを作製した。真空のままで、チップ/カンチレバー組み立て体を走査型プローブ顕微鏡内に設置した。非接触測定モードで画像を得た(図14を参照)。その画像を、エッチング前の同じチップで得られた画像と比較した。イメージング設定パラメータは、上方の画像に対して−9Hzであり、下方の画像に対して−1.7Hzであった。画像を同一縮尺にした。より大きな力を用いて表面を感知しているにもかかわらず、上方の画像の分解能は悪く、これは幅広のチップに原因がある。
[低エネルギー電子点源(LEEPS,low−energy electron point source)顕微鏡法のコヒーレンス性の改善]
LEEPS顕微鏡が、図15に概略的に示されていて、源と、サンプルと、検出器とのみから成っている。コヒーレント電子波はサンプルから散乱して、検出器において参照波と干渉して、ホログラムを形成する。干渉パターンの幅は、チップが放出するコヒーレント波面の幅の尺度である。どの顕微鏡でも同じ様に、開口数が分解能を決定する。LEEPS顕微鏡では、コヒーレンス角度(α)が、源の特性によって決定される。LEEPS顕微鏡の回折限界分解能Rは、
R≧λ/2sinα (式4)
によって与えられ、ここで、λは、入射電子の波長である。
本研究のナノチップは、幅広なベースの上に鋭い突出部を構築するのではなくて、チップの胴部から物質を除去することによって、作製される。これは、高アスペクト比のチップをもたらす。曲率半径の大きなエミッタは放出を細いビームに集束させるので、高アスペクト比のチップに対して、電子放出は幅広になると予測される。最後に、チップ表面の性質自体が或る役割を果たし得る。チップがエッチングされると、保護のための窒素リッチなコーティングが残り、チップの仕事関数を変更して、これが、近接効果を通じて、チップの放出特性の微調整における微妙な役割を果たし得る。一定電界法によって作製されたSATは、LEEPSにおいて用いられると、優れたコヒーレンス性及び大きな開口数を示す。コヒーレンス角度(図15に示されるα)を、
tan−1(w/2L) (式5)
の計算(非特許文献7)によって簡単に測定した。ここで、wは、MCP上のパターンの幅であり、Lは、チップとMCPの距離である。これらの干渉パターンに対する最大コヒーレンス角度(図16に示される)は14.3±0.5°であった。
R≒λ/παを用いると、これらの測定で、1.7±0.6Åの実際の源のサイズが得られる。また、式4を用いて、LEEPS顕微鏡の分解能に対する上限を見積もることができる。これによると、2.6±0.6Åの分解能が予測される。
[エッチング法を用いたナノチップ製造の自動化]
本発明の他の実施形態では、コンピュータ制御及びパターン認識アルゴリズムを採用することによって、SAT製造プロセスが自動で行われる。自動化システムの一例では、以下の手順に従う:
チップを、FIM内において液体窒素の温度に冷却する。
所定の電圧変化率及び所定の分圧を設定して、エッチングプロセスを開始する。この電圧変化率は、所望の最終的なチップ形状に依存する。
15kVの開始電圧で、1×10−6Torrの窒素分圧において、電圧を1V/sで低下させる。パターン認識アルゴリズムを用いて、FIMパターンを連続的に監視及び分析して、特定の特徴を検出する。所定の特徴が検出されると、電圧変化率/エッチングガス圧を変更する。
最初に、二つの結晶学的方向、例えば[111]と[110]との間の距離を測定することによって、チップの半径を監視する。チップの半径が縮まると、チップ形状が小さくなり過ぎて、これらの間の距離の測定は信頼できなくなる。
中心の六量体が数個の追加的な原子のみを備えるようになるまで、エッチングを続ける。反応ガスの圧力を最小値に設定して、電圧変化を止める。六量体構造を将来的な参照のために記録する。
短電圧パルスを印加して、望ましくない原子を選択的に除去する。
電圧パルスによって駆動される電界蒸発は、六個の原子を除去して、チップの頂点に中心原子を残す。他の例では、低圧ガスアシストエッチングを用いて、六量体から最後の原子を除去する。
パラメータの制御は、ソフトウェアベースのパターン認識に基づいたものとなり得る。
他の例では、以下のパラメータを用いて、湾曲したチップを作製した:
電圧プロファイル: [17kV→16kV(1000秒間)→17kV(10秒間)]を10回繰り返す
He圧力: 1×10−5Torr
N2圧力: 1×10−6Torr
FIMパターンは、狭く限定されたものから、広範なスクリーンを埋め尽くすものへと変化して、ほぼ半球のチップ頂点を表している(図17bを参照)。FIMパターンの縁が、引出器の開口部によって制限されている点に留意されたい。
鋸歯状電圧プロファイルを用いて、交互に、チップ終端の原子をエッチング及び蒸発させた。鋸歯状プロファイルは、電圧が高い際の電界蒸発モード(電界蒸発が支配的)と、電圧が低い際のエッチングモード(化学的エッチングが支配的)との間の循環を生じさせるように働く。電界蒸発モードが、幅広な丸いチップを形成する傾向にある一方で、エッチングモードは、結晶欠陥を除去することによって、チップをクリーンにする。
このモード間の循環、特に鋸歯状電圧プロファイルを用いたものは、明確に定められていない又は欠陥のあるチップに対して一貫した開始点を得ることを可能にする。この方法で作製された幅広でクリーンな前駆体チップは、一貫性のあるものであり、明確に定められた半径を有する。特許文献1に記載されたプロセスを、チップの全体的な最終形状を決めるための本願で説明される追加的な制御と共に用いて、これらのチップを鋭くすることができる。正弦派等の他の電圧プロファイルを用いて、同様の効果を有するこの循環プロセスを達成することもできる点に注意されたい。
また、電界蒸発モードとエッチングモードとの間の交互の循環(例えば、鋸歯状電圧プロファイルを用いる)を用いて、何らかの結晶欠陥や不完全なFIMパターンを有する動作チップをクリーニングすることもできる。これは、アニーリングと同様の効果を有することがわかっているが、チップの鈍化などの熱処理の悪影響を伴わない。
下限電圧は、このプロセスにおける重要なパラメータであり、典型的には、電界蒸発電圧の5〜10%以内に留めなければならない。鋸歯状電圧プロファイルの振幅が大き過ぎると、FIMパターンが縮まり得て、これは、応用によっては望ましくないものとなり得る。
[in situでのナノチップ及びSATの再構築]
チップを製造するのに用いられるのと同様の方法を用いて、in situでチップを再構築することができる。図18は、単一軸に沿ったナノチップの再構築法を示す。(A)SAT。(B)チップを蒸発させて、六量体を露わにしている。(C)SATへのエッチング。このSATは、(A)のものと同じ結晶軸に沿って存在している。(D)チップを六量体へと再び蒸発させた。(E)SATへのエッチング。このSATは、他の二つのSATと同じ結晶軸に沿って存在している。
三量体原子のものとは対照的に、中心軸上に1個の原子を備えたSATを作製することによって、イオンビームの整列をそのままにすることができる。これが、三量体形成に基づいたシステムに対しての利点であり、ここで、三量体形成に基づいたシステムでは、三量体のうちの一つの原子の選択には、整列を達成するために源を傾斜させることが必要とされる。チップの再構築には、再整列も必要とされる。図19は、三量体チップの再構築を比較していて、二つの利用可能な三量体構成を示しており、銃整列に対する多数の配向が生じて、製造の複雑性が増している。
このことは、動作SIM内において新規プロセスを行って、顕微鏡内でのチップ軸の整列を維持しながら、チップを単一原子点に回復させることによって、使用中に劣化及び/又は故障するチップを回復させることができるということを示している。これは、非常に重要な進展である。最終的な原子は、チップの結晶方向に沿って整列し、SATの全ての再構築が同じ方向に沿って整列する。これは、チップの再形成が必要となった際における、走査型電子顕微鏡の軸と源の再整列の必要性を減らし、三量体チップに対しての明確な利点を表している。また、多数の等価な構造を見出され得てチップ頂点における多数のナノ構造体をもたらすW(110)に対するW(111)の明確な利点も存在する。
[SATの全体的な性能を改善するための表面パッシベーション]
ガスアシストエッチングは、その本質固有のものとして、エミッタ表面のパッシベーション(不動態化)を提供する。一部実施形態では、人工的な化学コーティングを取り込むこともできる。これは、自動的に画定されるチップに基づいたGIFSの効率の増強における重要な部分である。
コーティングは、イメージングガスの熱的適応性を改善し、これは、より低温のイメージングガスによるイオンビームの広がり(発散角度)の狭くすることにつながる。これは、イオン化前のガス原子の横方向速度の低下によって説明される。更に、高速熱適応は、捕獲確立を上昇させて、これは全イオン電流を増大させる。これら二点の組み合わせが、角度電流密度、つまりは源の輝度の増強をもたらす。図20はチップの詳細図であり、タングステン原子が10で示されていて、偏極ヘリウム原子が11で示されていて、臨界距離におけるイオン化ヘリウム原子が12で示されている。チップのパッシベーションは、クリーンなタングステンチップと比較して、イメージングガス(ヘリウム)の熱的適応性を増強して、熱的適応性を達成するための跳ね返りの数を減らす。
また、表面パッシベーションは、電流変動、チップの寿命を短くするチップの故障等のエミッタの性能を低下させる更なる化学反応からエミッタ表面を保護する。
コーティング効果の一例は、電界放出実験において観測される。原子的な鋭い(エッチングされていない)チップからの電界放出の性能及び安定性を、コーティングのある場合とない場合でテストすることができる。これは、性能を改善するための電子源の化学変化表面の有用性を示す。
パッシベーションプロセス用の実験の詳細:
(i)最大2×10−6Torrで真空システム内にアンモニアを導入する;
(ii)略1200℃でWチップを光らせて、フレッシュなタングステン表面を露出する;
(iii)2分間で900℃に温度を低下させる;
(iv)アンモニアを抜いて、更に2分間で800℃に温度を低下させる。
電界放出を用いて、窒素パッシベーションをテストした。文献においてよく知られているように、本発明者の実験設定においても、フレッシュなタングステンチップの電界放出が時間(テストチャンバの真空レベルに応じて数分間から数時間)と共に減少することが観測された。この減少は、源の電界放出性を妨げる真空汚染物の吸着層の形成に因るものである。初期減少後、次第に不安定になる前の数時間(最大1日間)にわたって電界放出は安定である。この時点において、チップを熱パルスによってリフレッシュさせることができ、クリーンなタングステン表面を再び回復させて、全サイクルを繰り返す。
上記プロセスによって形成されたパッシベーションチップには、チップクリーニング後の電界放出損失の問題がない。クリーンなタングステン表面に対するタングステン‐窒素コーティングの仕事関数の上昇に従って、全放出電流は低下した。放出電流は、クリーンなタングステンチップの実験と同様に、最終的には不安定になった。チップをリフレッシュさせる熱処理後(略900℃で数秒間)、クリーンなタングステンチップで観測されるような初期低下なしで、放出電流が回復し、これは、タングステン‐窒素コーティングが損なわれていないことを示唆している。
電界放出の低下が観測される時点(その時点においてクリーンなタングステン表面が露出される)まで処理されたチップを高温で光らせることによって、タングステン‐窒素コーティングの安定性をテストした。実験は、略1200℃付近の発光温度でも、チップ上にタングステン‐窒素コーティングが保持されることを示している。タングステン‐窒素コーティングを除去するためには、1500℃を超える発光温度が必要とされた。この温度においても、保護層の消滅は瞬間的なものではなかった。チップ温度を少なくとも60秒間にわたって1500℃に保った後で、クリーンなタングステン表面が観測された。
図21は、電子放出電流の時間経過を示す。線2は、V引出=3.8kVでのクリーンなタングステンチップを表し、線1は、上述の処理後の安定性の改善を示し(V引出=4.1kV)、線3は、コーティング層を除去してクリーンなタングステンの放出の振る舞いを回復させるための熱処理後の様子を示す(V引出=3.8kV)。
[大気曝露を含む実験によって示されたパッシベーションによる表面保護の他の例]
6.3kVで動作する単一原子チップ(図22a)を、一晩ウォーミングアップさせて、大気条件に曝した。大気中ではチップに電圧バイアスを印加しなかった。超高真空条件に戻すために真空システムを焼成した後に、チップを冷却して、イメージングガス(ヘリウム)を1×10−5Torrで導入して、7.5kVで六量体パターンが観測されるまで電圧をゆっくりと上昇させて(図22b)、チップ頂点が単一原子構成へと容易に再びエッチングできるようにした(図22c)。結果物の単一原子チップに対する最良イメージ電圧は7.2kVであり、初期のものより僅かに高いだけであった。これは、単一原子チップが、大気分子の吸着に耐えるのに十分ロバストであること、また、実験者の最低限の介在での大気曝露後に回復が実現できることを証明している。
これによって、SATを電界イオン顕微鏡内に製造して、その後、特定の機器に移送させることができ、その機器において、SATが動作前の調整手順を経る。
[窒素でパッシベーションされたナノチップの熱処理による追加的なチップの成形]
上述の手順でナノチップを作製すると、窒素のパッシベーション層が残る。この層は、ロバストなチップを形成して、大気曝露によるチップの劣化を制限することがわかっている。また、この層を用いて、チップ頂点の形状変化を補助することもできる。以下の実験において、単一原子チップを10kVでイメージングした。1300℃へのアニーリング後に、チップに高電圧を再び印加して、FIMを用いたイメージングを行った。チップが変更されていて、画像を得るためには19kVが必要とされ、これは、チップが幅広になっていることを示している。画像は、対称に放射している三つのリッジを示していて、これは、ファセット化現象を示している。頂点の(111)面及び{011}面を接続する線に沿ったリッジが見えるので(図23b)、<211>方向に対応する結晶面の平坦化(図23a)が生じていることを見て取れる。この変更されたチップは、より高い電圧で動作して、単一原子エミッタを作製するように更にエッチングされ得る。

Claims (20)

  1. ナノチップを製造する方法であって、
    電界アシストエッチングを行うように反応ガスの存在下において電界を印加することによって、頂点及び胴部を有する前駆体ナノチップを、前記反応ガスとの化学的相互作用によって前記胴部から優先的に原子が除去されるように変更するステップと、
    ナノチップの製造中における頂点原子の電界蒸発を促進するように電界を変更するために、前記反応ガスの圧力及び/又はチップ電圧を制御することによって、結果物のナノチップの全体的なプロファイルを制御するステップとを備えた方法。
  2. 前記電界蒸発及び前記電界アシストエッチングが少なくとも部分的に同時に行われる、請求項1に記載の方法。
  3. エッチングが進むにつれて、前記電界蒸発及び前記電界アシストエッチングを同時に行うように或る程度の電界蒸発を生じさせる変化率で前記チップ電圧を低下させる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記電界蒸発及び前記電界アシストエッチングが二つの別々の段階において逐次行われる、請求項1に記載の方法。
  5. 頂点原子の電界蒸発を抑制して前記胴部の電界アシストエッチングを促進する後続ステップを更に備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 電界アシストエッチング段階及び電界蒸発段階を循環させてチップの成形を行うステップを備えた請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記反応ガスが窒素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 表面金属原子の固定、金属原子拡散の抑制、更なる反応からの前記ナノチップの保護、及びイオンガス源の熱的適応性の上昇のうちの少なくとも一つのために、前記ナノチップがコーティングで覆われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記コーティングが、前記ナノチップの電界アシストエッチング固有の結果として生じる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記コーティングが窒素及び酸素から成る群から選択されている、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記ナノチップがタングステン製である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 製造プロセス中のナノチップのイメージングを可能にするために、電界イオン顕微鏡又は走査型イオン顕微鏡内で前記ナノチップが製造される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記製造プロセスがコンピュータで制御され、前記コンピュータが、チップの電界イオンパターンを監視して、所定のパターンが得られるように前記チップ電圧及びエッチングガスの圧力を制御するように構成されている、請求項12に記載の方法。
  14. 前記コンピュータが、パターン認識ソフトウェアを用いてチップの電界イオンパターンを監視するように構成されている、請求項13に記載の方法。
  15. 製造されたチップを熱処理して、チップの全体的な形状を変更するステップを更に備えた請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. チップが120秒間にわたって略1100〜1400℃の温度に保たれる、請求項15に記載の方法。
  17. 走査型イオン顕微鏡又は電界イオン顕微鏡内でナノチップを再構築する方法であって、
    in situでナノチップを備えた前記走査型イオン顕微鏡又は電界イオン顕微鏡の真空チャンバ内にエッチングガスを導入するステップと、
    前記走査型イオン顕微鏡又は電界イオン顕微鏡内のチップの整列を維持しながら、電界の存在下において反応ガスで頂点及び胴部を有するナノチップを、前記胴部が優先的にエッチングされるようにエッチングするステップと、
    最終的なナノチップの全体的なプロファイルを制御するために、前記反応ガスの圧力及び/又はチップ電圧を制御して、頂点原子の電界蒸発を促進するように電界を変更するステップとを備えた方法。
  18. 前記エッチングガスが窒素である、請求項17に記載の方法。
  19. 前駆体ナノチップを製造する又はナノチップをクリーニングする方法であって、
    エッチングガスの存在下において真空チャンバ内に胴部及び頂点を有するサンプルチップを配置するステップと、
    ナノチップに電界を印加するステップとを備え、
    前記電界を発生させるのに用いられる電圧が、電界蒸発が支配的である電界と、化学的エッチングが支配的である電界とが交互になるように循環的に変更される、方法。
  20. 前記電圧が下限と上限との間で変更されて、前記下限が前記上限の5〜10%以内に留まる、請求項19に記載の方法。
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