JP2009298079A - インクジェット記録ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インナーリード部を封止でき、封止剤が剥がれにくく、封止工程も簡略化できることから生産性向上へもつながるインクジェット記録ヘッドの製造方法、および信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】インクを吐出する吐出手段を有する記録素子基板と、前記記録素子基板の電気接続部に接続されるインナーリード接続部を有する電気配線基板とを有するインクジェット記録ヘッドを製造するにあたり、チクソトロピー性を有する封止剤に剪断力を付与しながら該封止剤を前記インナーリード接続部に塗布して、前記インナーリード接続部を封止する。
【選択図】図5

Description

本発明は、インクを記録媒体へ吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドおよびその製造方法に関する。
インクジェット記録ヘッドは、吐出口と連通するノズル内に、インクを吐出する吐出手段を有する記録素子基板を有している。吐出手段としては、ピエゾ素子等の電気機械変換素子、発熱抵抗体等の電気熱変換素子、あるいは電波やレーザーの電磁波機械変換素子、電磁波熱変換素子などが知られている。
代表的な例として、吐出手段として電気熱変換素子を用いたインクジェット記録ヘッドが挙げられる。このインクジェット記録ヘッドは、電気熱変換素子をノズル内に設け、これに記録信号となる電気パルスを印加することによりインクに熱エネルギーを付与し、そのときのインクの発泡(沸騰)により生じる気泡圧力を吐出エネルギーとして利用したものである。
この方式を利用したインクジェット記録ヘッドの構成の一例を図1に示した。このインクジェット記録ヘッドには、フレキシブル配線基板1、記録素子基板3、マクラ4およびチッププレート5から構成されているチップユニット6が設置されている。フレキシブル配線基板1は、インクを吐出するための電気信号を記録素子基板3に印加する経路を形成したものであり、ポリイミドフィルム上に銅配線を形成したものなどが用いられる。記録素子基板3には、異方性エッチング等によりインク供給口が形成され、さらにフォトリソグラフィー工程によってインク流路および吐出口が設けられている。記録素子基板3は、補材であるマクラ4とともにチッププレート5上に設置され、さらにフレキシブル配線基板1に形成されているインナーリード2により電気的に接続される。この電気接続部分は、外部からのインク等による腐食およびショート等を防ぐために封止が必須であり、封止部分の材質や形状、用途によって封止剤を使い分ける必要がある。
記録素子基板とフレキシブル配線基板の接続部分に用いられる封止技術としては、インナーリードを境にして、上下に性質の異なる2つの封止剤を用いる技術が知られている(特許文献1)。
特開2001−130001号公報
封止剤には、電気接続部分を封止できるだけでなく、プリンタに設置され、ヘッド基板の最上面にあるインク吐出口設置面を清掃するブレードやワイパー等によるこすりや、紙ジャムによる紙等との接触により剥がれない性能を有することが要求される。そのため、高弾性率の封止剤が求められている。
さらに、インナーリードの下封止を行う際に要求される特性は、粘度が低いことである。封止剤は、インナーリードの隙間を通ってインナーリードの裏側を封止しなければいけないが、インナーリードの隙間は非常に小さいため、粘度が低いことが要求される。一方、インナーリードの上封止を行う際に要求される特性は、粘度が高いことである。封止剤は、インナーリードの上部に残るように塗布される必要があり、粘度が低いと不必要な部分に流れてしまったり、インナーリードの上部を十分に封止できない可能性がある。
このような理由から、上封止と下封止には、各々の要求特性を満たす2種類の封止剤を用いているが、その封止工程は複雑になってしまう。具体的には、下封止用の封止剤を塗布後に熱キュアをかけて硬化させ、その後、上封止用の封止剤を塗布後に再度熱キュアをかけて硬化させることになる。
本発明の目的は、インナーリード部を封止でき、封止剤が剥がれにくく、封止工程も簡略化できることから生産性向上へもつながるインクジェット記録ヘッドの製造方法、および信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法は、インクを吐出する吐出手段を有する記録素子基板と、前記記録素子基板の電気接続部に接続されるインナーリード接続部を有する電気配線基板とを有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、チクソトロピー性を有する封止剤に剪断力を付与しながら前記封止剤を前記インナーリード接続部に塗布し、前記インナーリード接続部を封止することを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、上記の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、インナーリード部を封止でき、封止剤が剥がれにくく、封止工程も簡略化できることから生産性向上へもつながるインクジェット記録ヘッドの製造方法、および信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを提供できる。
以下、本発明における実施形態の一例について図面を参照して説明する。
図2は、インクジェット記録ヘッドのチップユニットの製造フローの一例を示した斜視図である。
図2(a)は、マクラ貼付工程である。アルミナ製のチッププレート5に対して、接着剤7を塗布した後、同じくアルミナ製のマクラ4を位置決めして貼り付け、接着剤を加熱硬化させて完成する。
図2(b)は、チップマウント工程である。マクラ貼付工程を経たチッププレートに対して、記録素子基板3を複数位置決めして貼り付ける。この場合の接着剤8は、あらかじめチッププレート表面に転写方法で塗布しておく。
図2(c)は、フレキシブル配線基板(TAB)接合工程とボンディング工程である。チップマウント工程を経たチップマウントユニットに対して、接着剤9を塗布した後、電気配線基板としてのフレキシブル配線基板1を位置決めして貼り付け、接着剤9を加熱硬化させる。その後、あらかじめ記録素子基板上に設けられた金バンプに対して、フレキシブル配線基板1のインナーリードを1対1でボンディングを行う。
図2(d)は、電気接続部分の封止工程である。電気接続部分を封止する封止剤としては、チクソトロピー性を有する封止剤を用いる。そして、この封止剤に剪断力を付与しながらインナーリード接続部に塗布して、インナーリード接続部を封止する。こうすることで、1種類の封止剤により電気接続部分の封止を行うことができるようになり、封止工程を簡略化できることから生産性向上へもつながる。
ここで、インクジェット記録ヘッドに用いられるフレキシブル配線基板のインナーリードの隙間は、50〜150μmであることが多い。例えば、インナーリードの隙間が100μmの場合、封止剤の粘度(20rpmで測定した場合、以下同様)は、110Pa・s以上であることが好ましく、150Pa・s以上10000Pa・s以下の範囲であることがより好ましい。これは、後述する剪断力の付与が完了した後に、インナーリード部に堆積して、上下部を十分に封止できるようにするためである。
まず、インナーリード下封止部10に封止剤を注入する。このとき、電気接続部分のインナーリードの下側が封止されなければならない。インナーリードの隙間は非常に小さいので、流れ性の良い低粘度の封止剤が好ましい。したがって、インナーリードの下封止を行う間は、封止剤に剪断力を付与することで、封止剤を低粘度の状態に制御する。例えば、インナーリードの隙間が100μmの場合、封止剤の粘度は、100Pa・s以下であることが好ましく、2Pa・s以上70Pa・s以下の範囲であることがより好ましい。これより粘度が高いと、インナーリード下に流れ込むまでに時間がかかり生産性が低下し、または封止が不完全となってしまう場合がある。これより粘度が低いと、不必要な部分に封止剤が流れてしまうことがあり、封止が不完全なものとなってしまう場合がある。
続いて、インナーリード上封止部11に封止剤を塗布する。このとき、電気接続部分のインナーリードの上側が封止されなければならない。すなわち、封止剤がインナーリードの上側に残るように塗布される必要があり、不必要な部分に流れてしまわないように、高粘度の封止剤が好ましい。したがって、インナーリードの上封止を行う間は、封止剤に付与する剪断力を調整して、封止剤を高粘度の状態に制御する。例えば、インナーリードの隙間が100μmの場合、封止剤の粘度は、110Pa・s以上であることが好ましく、150Pa・s以上10000Pa・s以下の範囲であることがより好ましい。これより粘度が低いと、不必要な部分に封止剤が流れてしまうことがあり、目的とするインナーリード接続部に十分に封止剤が堆積せず、封止が不完全となってしまう場合がある。これより粘度が高いと、塗布が困難となり、生産性が低下してしまう場合がある。
上記の封止工程は連続して行われるが、下封止を行う間に塗布した低粘度状態の封止剤は、粘度をインナーリード部に堆積するのに適した状態に制御することと併せて、時間と共に粘度が回復し、不必要な部分に流れることがなくなる。また、上記の封止工程は、インクジェット記録ヘッドに用いられるフレキシブル配線基板のインナーリードの一般的な隙間である50〜150μmの範囲に対して好適に適応できる。
そして、塗布終了後、加熱硬化により封止剤を硬化させることで、チップユニット6が完成する。
チクソトロピー性とは、粘度に時間依存性または剪断速度依存性があることをいう。具体的には、図3に示したように、剪断力を付与すると粘度が減少し、静置しておくと粘度が回復していくことをいう。また、図4に示したように、剪断力に応じて粘度が変化する特性をいう。すなわち、チクソトロピー性を有する材料の粘度は、剪断力と剪断速度に依存して変化し、その増加と共に減少する。また、その粘度には、ヒステリシスが認められる。
剪断力とは、物体内部でずれを生じさせる力である。平行で逆向きの2つの力によって、物体内のある断面に剪断力が生じる。すなわち、チクソトロピー性を有する材料に剪断力を付与することは、材料の見かけの粘度をその剪断力に応じて低下させることとなる。チクソトロピー性を発現する機構は様々ではあるが、基本的には内部フィラー等の凝集構造が、剪断力によって破壊されることにより生じると考えられている。
したがって、チクソトロピー性を有する封止剤は、付与する剪断力を調整することで、その粘度を調整することができる。
封止剤に剪断力を付与するためには、超音波振動が好適に用いられる。封止剤への剪断力を付与するための超音波振動は、一般的な超音波振動子を用いて発生させることができる。超音波振動子とは、電気エネルギーを超音波機械振動に変換する素子で、そこで発生した超音波振動はホーンを通じて封止剤に剪断力を付与することができる。超音波振動子としては、ニッケルなどの強磁性体物質に交流磁場をかけるとその長さが伸び縮みする性質をもつ磁歪振動子、チタン酸ジルコン酸鉛などの強誘電体に交流電圧をかけるとその長さが伸び縮みするピエゾ素子とも呼ばれる電歪振動子が挙げられる。
超音波振動子で発生した超音波振動は、超音波振動子に接続したホーンに伝達されると、ホーン先端は超音波の周波数で振動する。超音波振動子によって得られる振動振幅は、わずか数μmから数十μmであるため、ホーンによって振動振幅を増幅する。ここで、超音波とは、人間の可聴周波数以上の音域(約20kHz以上)のことである。本発明においては、周波数20kHz〜5MHzの一般的な超音波振動子を、本発明の所定の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で選択することができる。
超音波振動子のような封止剤に剪断力を付与する手段は、封止剤に剪断力を伝達することが可能であれば、任意の場所に設置することができる。また、封止剤に剪断力を伝達することが可能であれば、他の物質を介在させてもよい。
例えば、超音波振動子のような封止剤に剪断力を付与する手段は、封止剤を塗布するためのディスペンサー等の塗布装置に設置することができる。この場合、封止剤は、塗布装置から吐出される時点で超音波振動による剪断力が付与されることで低粘度状態に調整されて、インナーリードの下封止を行うのに適した状態に制御される。また、封止剤がインナーリードの隙間から下側に流れ込んだ後に、封止剤に付与する剪断力を変化させることで、上封止に適した高粘度状態に段階的に調整する。インナーリード下に流れ込んだ封止剤は、粘度が時間と共に増加し、インナーリード下に堆積されることで下封止を十分に行うことができる。また、高粘度状態に調整された封止剤は、インナーリードの隙間に流れ込まずにインナーリードの上側に堆積されることで上封止を十分に行うことができる。
また、超音波振動子のような封止剤に剪断力を付与する手段は、封止剤が塗布される基板に設置することもできる。この場合、封止剤は、塗布装置から吐出される時点では上封止に適した高粘度状態である。しかし、封止剤がインナーリードに接触すると、基板側から超音波振動による剪断力が付与される。そして、接触した封止剤は、下封止を行うのに適した低粘度状態に調整されて、インナーリードの隙間から下側に流れ込む。その後、封止剤に付与する剪断力を変化させることで、上封止に適した高粘度状態に段階的に調整する。インナーリード下に流れ込んだ封止剤は、粘度が時間と共に増加し、インナーリード下に堆積されることで下封止を十分に行うことができる。また、高粘度状態に調整された封止剤は、インナーリードの隙間に流れ込まずにインナーリードの上側に堆積されることで上封止を十分に行うことができる。
基板側からの剪断力は、基板に封止剤を塗布する間に付与されても、塗布した後に付与されても、またはその両方でもよい。
その他にも、封止剤の低粘度状態への調整を促進するために、封止剤が硬化しない程度の温度をかけることもできる。
チクソトロピー性を有する封止剤は、耐インク性、接着性、反応性等の観点からエポキシ樹脂が主成分であることが好ましい。また、封止剤には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、チクソトロピー性を付与するための充填材等が含まれていることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、汎用のビスフェノールAジグリシジルエーテルが好適に利用できる。また、その他のエポキシ化合物を、本発明の所定の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で適宜配合することができる。その他のエポキシ化合物としては、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールF等の二価フェノールとエピクロルヒドリンより得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、長鎖ポリオールのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂等の樹脂成分、比較的低粘度のモノエポキサイドやポリエポキサイド等の反応性希釈剤等が挙げられる。
硬化剤としては、酸無水物硬化剤が好適である。その他にアミン系硬化剤も知られているが、耐インク性、接着性、反応性等の観点から、酸無水物硬化剤の方が好ましい。酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メチルハイミック酸、無水マレイン酸等が挙げられる。複数の酸無水物硬化剤を併用することもできる。
硬化促進剤としては、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DBU等の第三級アミン類;テトラヒドロホスホニウムブロマイド等の第四級ホスホニウム塩;第四級アンモニウム塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エポキシ−アミンアダクト、尿素型アダクト等の潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
充填材としては、シリカ、水酸化アルミニウム、ガラスフリット等が挙げられる。封止剤への充填材の配合量は、エポキシ樹脂、硬化剤を混合した成分100質量部に対し0〜500質量部であることが好ましく、さらには0〜300質量部であることがより好ましい。また、強度等を高めるために、平均粒径が20μm以下の充填材を用いることが好ましい。さらに、チクソトロピー性を付与するために、一次粒子の平均粒経が50nm以下の充填材の配合量は、エポキシ樹脂、硬化剤を混合した成分100質量部に対し0〜10質量部であることが好ましい。充填材は、チクソトロピー性の程度を表すチクソトロピーインデックス(TI値)が1.0<TI値<20の範囲内となるように適宜配合することができる。ここで、TI値とは、任意の回転速度a、bにおける粘度値の比である。
以下に本発明における実施例について図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
図5は、本発明に係る製造方法における封止工程の一例を示す模式図である。図5は、流路形成部材16を有する記録素子基板3と、フレキシブル配線基板1のインナーリード2とがバンプ17により接続された電気接続部分を、チクソトロピー性を有する封止剤13で封止している状態を示している。なお、これらは、マクラ4とともにチッププレート5に設置されている。ディスペンサー12から吐出される封止剤13には、ディスペンサー12に設置されている超音波振動子14からの超音波による剪断力を付与することができ、その剪断力の大きさは、超音波振動子コントローラ15により制御される。
本実施例では、マクラ貼付工程、チップマウント工程、フレキシブル配線基板(TAB)接合工程およびボンディング工程を行った後、図5に示す封止工程を行った。具体的には、以下のとおりである。
以下の成分からなる樹脂組成物をシリンジに充填し、そのシリンジに超音波振動子を設置した。
・ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 20質量部
(商品名:EP−4100、株式会社ADEKA製)
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 20質量部
(商品名:リカシッドMH700、新日本理化株式会社製)
・結晶性シリカ 60質量部
(商品名:F8、株式会社ニッチツ製、平均粒子径:8μm)
・微粒子シリカ 2質量部
(商品名:200、日本アエロジル株式会社製、平均粒子径:12nm)
・硬化促進剤 0.3質量部
(商品名:1B2PZ、四国化成工業株式会社製)
なお、超音波振動子の周波数は1MHzであり、超音波振動コントローラによってその振幅を調整することができる。また、樹脂組成物には超音波振動を付与し、超音波振動子への印加電力を変化させることで樹脂組成物へ付与される剪断力を調整して、樹脂組成物の粘度を30Pa・sから300Pa・sの範囲で制御できるようにした。
そして、樹脂組成物に対して超音波振動子により剪断力を与えることで粘度を調整しながら封止を行った。下封止を行う間は、樹脂組成物の粘度を30Pa・sに調整してインナーリード間を通過させ、その1秒後に樹脂組成物の粘度を120Pa・sに調整することで、樹脂組成物をインナーリード下に徐々に堆積させた。上封止を行う間は、樹脂組成物の粘度を300Pa・sに調整した。こうして、インナーリードの上下部の封止を行った。
上記のようにインナーリード接続部の封止を行ったチップユニットを用いて、図1に示すようなインクジェット記録ヘッドを作製した。
(実施例2)
図6は、本発明に係る製造方法における封止工程の一例を示す模式図である。図6は、流路形成部材16を有する記録素子基板3と、フレキシブル配線基板1のインナーリード2とがバンプ17により接続された電気接続部分を、チクソトロピー性を有する封止剤13で封止している状態を示している。なお、これらは、マクラ4とともにチッププレート5に設置されている。ディスペンサー12から吐出される封止剤13には、チッププレート5に設置されている超音波振動子14からの超音波による剪断力を付与することができ、その剪断力の大きさは、超音波振動子コントローラ15により制御される。
本実施例では、マクラ貼付工程、チップマウント工程、フレキシブル配線基板(TAB)接合工程およびボンディング工程を行った後、図6に示す封止工程を行った。具体的には、以下のとおりである。
以下の成分からなる樹脂組成物をシリンジに充填した。
・ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 25質量部
(商品名:EP−4100、株式会社ADEKA製)
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 20質量部
(商品名:リカシッドMH700、新日本理化株式会社製)
・結晶性シリカ 65質量部
(商品名:F8、株式会社ニッチツ製、平均粒子径:8μm)
・微粒子シリカ 3質量部
(商品名:200、日本アエロジル株式会社製、平均粒子径:12nm)
・硬化促進剤 0.2質量部
(1B2PZ、四国化成工業株式会社製)
また、チッププレートに超音波振動子を設置した。なお、超音波振動子の周波数は200kHzであり、超音波振動コントローラによってその振幅を調整することができる。また、樹脂組成物には超音波振動を付与し、超音波振動子への印加電力を変化させることで樹脂組成物へ付与される剪断力を調整して、樹脂組成物の粘度を25Pa・sから290Pa・sの範囲で制御できるようにした。
そして、樹脂組成物の粘度を25Pa・sに調整するための超音波振動をチッププレートに付与した状態で、樹脂組成物をインナーリード接続部に粘度250Pa・sの状態で塗布した。樹脂組成物はインナーリード上部に堆積するが、基板に接触した樹脂組成物の粘度は低下し、インナーリード下に流れ込むことが確認された。その3秒後、樹脂組成物の粘度を110Pa・sに調整することで、樹脂組成物をインナーリード下に徐々に堆積させた。上封止を行う間は、樹脂組成物の粘度を290Pa・sに調整した。こうして、インナーリードの上下部の封止を行った。
上記のようにインナーリード接続部の封止を行ったチップユニットを用いて、図1に示すようなインクジェット記録ヘッドを作製した。
(実施例3)
以下の成分からなる樹脂組成物をシリンジ4本に充填した。
・ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 20質量部
(商品名:EP−4100、株式会社ADEKA製)
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 20質量部
(商品名:リカシッドMH700、新日本理化株式会社製)
・結晶性シリカ 65質量部
(商品名:F8、株式会社ニッチツ製、平均粒子径:8μm)
・微粒子シリカ 1.5質量部
(商品名:200、日本アエロジル株式会社製、平均粒子径:12nm)
・硬化促進剤 0.3質量部
(商品名:1B2PZ、四国化成工業株式会社製)
超音波振動子を取り付けた水槽中に、封止を行うチップユニットを4個設置し、水を介在して全てのチップユニットに超音波振動が同時に伝わるようにした。超音波振動子の周波数は150kHzであり、超音波振動コントローラによってその振幅を調整することができる。また、樹脂組成物には超音波振動を付与し、超音波振動子への印加電力を変化させることで樹脂組成物へ付与される剪断力を調整して、樹脂組成物の粘度を20Pa・sから280Pa・sの範囲で制御できるようにした。
そして、樹脂組成物の粘度を20Pa・sに調整するための超音波振動を水槽中に付与した状態で、樹脂組成物を4個のインナーリード部に粘度240Pa・sの状態で各々同時に塗布した。樹脂組成物はインナーリード上部に堆積するが、基板に接触した樹脂組成物の粘度は低下し、インナーリード下に流れ込むことが確認された。その4秒後、樹脂組成物の粘度を105Pa・sに調整することで、樹脂組成物をインナーリード下に徐々に堆積させた。上封止を行う間は、樹脂組成物の粘度を240Pa・sに調整した。こうして、インナーリードの上下部の封止を行った。
上記のようにインナーリード接続部の封止を行ったチップユニットを用いて、図1に示すようなインクジェット記録ヘッドを作製した。
<比較例1>
以下の成分からなる樹脂組成物をシリンジに充填した。
・ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 30質量部
(商品名:EP−4100、株式会社ADEKA製)
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 20質量部
(商品名:リカシッドMH700、新日本理化株式会社製)
・硬化促進剤 0.2質量部
(商品名:1B2PZ、四国化成工業株式会社製)
そして、樹脂組成物には剪断力を付与せずにインナーリードの封止を行った。上記のようにインナーリード接続部の封止を行ったチップユニットを用いて、図1に示すようなインクジェット記録ヘッドを作製した。
<比較例2>
以下の成分からなる樹脂組成物をシリンジに充填した。
・ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 15質量部
(商品名:EP−4100、株式会社ADEKA製)
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 20質量部
(商品名:リカシッドMH700、新日本理化株式会社製)
・結晶性シリカ 100質量部
(商品名:F8、株式会社ニッチツ製、平均粒子径:8μm)
・微粒子シリカ 5質量部
(商品名:200、日本アエロジル株式会社製、平均粒子径:12nm)
・硬化促進剤 0.5質量部
(商品名:1B2PZ、四国化成工業株式会社製)
そして、樹脂組成物には剪断力を付与せずにインナーリードの封止を行った。上記のようにインナーリード接続部の封止を行ったチップユニットを用いて、図1に示すようなインクジェット記録ヘッドを作製した。
<評価>
実施例1〜3および比較例1、2で作製したインクジェット記録ヘッドを用いて信頼性評価を行った。具体的には、約10000枚の印字耐久試験を行った。
その結果、実施例1〜3で作製したインクジェット記録ヘッドにおいて封止剤は剥がれておらず、異常は認められなかった。すなわち、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法によれば、十分な信頼性を有するインクジェット記録ヘッドが製造できることが確認された。また、印字耐久試験後のインクジェット記録ヘッドを分解し、インナーリード接続部の封止状態を詳細に観察した。その結果、実施例1〜3で作製したインクジェット記録ヘッドに異常は認められなかった。
一方、比較例1、2で作製したインクジェット記録ヘッドではインナーリードの上部または下部において封止剤の空隙やインナーリードの露出などの封止が不完全な部分が見受けられた。すなわち、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法によれば、インナーリード接続部の上下部が十分に封止できることが確認された。
インクジェット記録ヘッドの構成の一例を示した斜視図である。 インクジェット記録ヘッドのチップユニットの製造フローの一例を示した斜視図である。 チクソトロピー性を有する封止剤の粘度の時間依存性を説明するための図である。 チクソトロピー性を有する封止剤の粘度の剪断力依存性を説明するための図である。 本発明に係る製造方法における封止工程の一例を示す模式図である。 本発明に係る製造方法における封止工程の一例を示す模式図である。
符号の説明
1 フレキシブル配線基板(TAB)
2 インナーリード
3 記録素子基板
4 マクラ
5 チッププレート
6 チップユニット
7 接着剤
8 接着剤
9 接着剤
10 インナーリード下封止部
11 インナーリード上封止部
12 ディスペンサー
13 封止剤
14 超音波振動子
15 超音波振動子コントローラ
16 流路形成部材
17 バンプ

Claims (5)

  1. インクを吐出する吐出手段を有する記録素子基板と、前記記録素子基板の電気接続部に接続されるインナーリード接続部を有する電気配線基板とを有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、チクソトロピー性を有する封止剤に剪断力を付与しながら前記封止剤を前記インナーリード接続部に塗布して、前記インナーリード接続部を封止することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  2. 超音波振動により前記封止剤に剪断力を付与することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  3. 前記封止剤に剪断力を付与する手段が、前記封止剤を塗布する装置に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  4. 前記封止剤に剪断力を付与する手段が、前記封止剤が塗布される基板に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
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