JP2009262627A - 車体構造体およびドア - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両は、車両の出入り口となるドアを備えている。このドアには、音圧駆動によって吸音を行う板吸音構造体が設けられている。この板吸音体は、車室内にこもる音が音圧透過部を通して振動板に伝達され、この振動板を振動させる。この振動により、車室内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。
【選択図】図3
Description
上記車体構造体において、前記吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記ドアにおける音圧が高い部位に配置されることが望ましい。
上記車体構造体において、前記吸音構造体は、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体であることが望ましい。
前記管吸音体は、複数の前記空洞を有することが好ましい。
前記管吸音体は、長さの異なる複数の前記空洞を有することが好ましい。
上記車体構造体において、前記吸音構造体は、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体と、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体と、閉空間と、この閉空間と外部とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体との、いずれかの吸音体の組み合わせによって構成されることが望ましい。
<第1実施形態>
本発明者達は、車両のドアに吸音構造体を設けることに着目した。一般に、車室の境界面においては、音波の粒子速度が大きな値をとらないのに対し、音圧は高いところと低いところが生じる(所謂、音圧分布)。そこで、音圧駆動による吸音機構を有する吸音構造体は、吸音される音響エネルギーが、吸音効率とそこに入射する音響エネルギーの積で決まるため、高音圧の部位に前記音圧駆動の吸音構造を優先的に配置することで、効率的に車室内の音響エネルギーを消散することが可能となる。また、音圧駆動に基づく吸音構造体では、λ/4の背後空気層を構成することなく実現できるため、壁面近傍での吸音を可能とし、低周波数領域における音に対しても大きな背後空気層を必要としないという利点がある。
(1−1−1)車両
図1は、本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100においては、車体構造体の基台となるシャーシに対して、ボンネット101、車両100の出入り口となる4枚のドア102、トランクドア103が開閉可能に取り付けられる。
図2は、シャーシ及びドア102の内側を模式的に示す図である。シャーシは、ベース111と、このベース111から上側に延びるフロントピラー112、センターピラー113、リアピラー114と、各ピラー112,113,114によって支えられる天井115と、車両100内を車室105とエンジン室106とに分けるエンジン仕切隔壁116と、車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁117とを有する。
本実施形態の特徴は、ドア102に箱型の板吸音体を設けたことにある。4枚のドア102の構成は同様であるため、ここでは、運転席側のドア102の構成を例に挙げて具体的に説明する。
図3は、図2に示した運転席側のドア102において図中のa部を拡大した図である。ドア102の内装であるドアトリム200は、その基台をなす内装材130(ドア基材)に対して、車内の乗員がドア102を開けるときに使用するドアハンドル部201と、乗員によりひじ掛けとして使用されるひじ掛け部202と、雑誌や書類などを収容するドアポケット203と、カーオーディオ機器などから供給された音声信号に応じた音声を放音するスピーカー部204と、板吸音体群1A、1Bとが設けられている。板吸音体群1Aは、ドアポケット203と対応する位置であって、内装材130の内部に設けられている。板吸音体群1Bは、ひじ掛け部202の上方の位置であって、内装材130内部に設けられている。これら板吸音体群1A、1Bは、それぞれ乗員が座る座席よりも上方に配置されている。なお、以下の説明では、板吸音体群1A、1Bを特に区別する必要がない場合には、総称して「板吸音体群1」という。
図4は、板吸音体群1の構造を示す平面図である。同図に示すように、この板吸音体群1は、同様の形状を有する3つの板吸音体10によって構成されている。各板吸音体10の大きさは、次の通りである。
板吸音体10の大きさ:高さ100mm×幅100mm×厚さ10mm
図5は、ドアトリム200を図3中の切断線b−bで切断したときの断面図である。なお、図では、板吸音体10が1個しか示されていないが、実際には、紙面奥方向又は紙面手前方向に向かって3つの板吸音体10が並べて配置されている。内装材130は、合成樹脂などで形成されるドアトリム基材120と、音圧透過性がある不織布状の布材によって形成され、ドアトリム基材120の表面を覆う表面材135とによって構成されている。この表面材135のうち、板吸音体10に対応する部分が、車室105側の音圧を板吸音体10に伝達する音圧透過部136となる。
次に、板吸音体10の構造について説明する。各々の板吸音体10は、同様の構成を備えているため、ここでは、図5に示した板吸音体10の構造を例に挙げて説明する。図5に示すように、板吸音体10は、開口部12を有する矩形状の筐体11と、開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する。筐体11は合成樹脂材料(例えば、ABS樹脂)によって形成され、振動板13は高分子化合物(例えば、無機充填材入りオレフィン系共重合体)によってシート状に形成される。本発明においては、振動板13は、弾性を有する素材を膜状に形成してもよい。
ここで、板吸音体10の設定条件について説明する。
一般に、板状または膜状の振動体と空気層により音を吸収する吸音構造について、減衰させる周波数は、振動体の質量成分(マス成分)と空気層のバネ成分とによるバネマス系の共振周波数によって設定される。空気の密度をρ0[kg/m3]、音速をc0[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さをL[m]とすると、バネマス系の共振周波数は数1の式で表される。
空気の密度ρ0 ;1.225[kg/m3]
音速c0 ;340[m/s]
振動体の密度ρ ;940[kg/m3]
振動体の厚さt ;0.0017[m]
空気層の厚さをL ;0.01[m]
筐体の長さa ;0.1[m]
筐体の長さb ;0.1[m]
振動体のヤング率E ;1.0[GPa]
ポアソン比をσ ;0.4
モード次数 ;p=q=1
そこで、発明者達は鋭意実験を行った結果、屈曲系の基本振動周波数の値をfa、バネマス系の共振周波数の値をfbとした場合、以下の数3の関係を満足するように、上記パラメータを設定すればよいことがわかった。これにより、屈曲系の基本振動が背後の空気層のバネ成分と連成して、バネマス系の共振周波数と屈曲系の基本周波数との間の帯域に振幅の大きな振動が励振されて(屈曲系共振周波数fa<吸音ピーク周波数f<バネマス系基本周波数fb)、吸音率が高くなる。
本実施例による板吸音体10においては、車室105内にこもる音が音圧透過部136を通して振動板13に伝達され、この振動板13を振動させる。この振動により、車室105内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。例えば、板吸音体10の設定を上記パラメータの数値に設定することにより、ロードノイズのような低周波数の音(車室105内の固有振動に対応した音圧が局所的に高くなる音の周波数(500Hz以下))を効率良く吸音することができる。
ここで、比較的低い周波数とは、車室内の固有振動のうちその振動数が最も低い周波数である基本振動の周波数(通常の車室では約80Hz)と、当該車室が拡散音場とみなせる周波数帯域(通常の車室では約500Hz以上の帯域)との間の周波数帯域であって、当該車室において離散的にモードがあるとみなせる周波数をいう。
本発明は、前述した第1実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(1−3−1)
前述した第1実施形態では、図3に示したように、板吸音体群1Aがドアポケット203と対応する位置に設けられており、板吸音体10Bがひじ掛け部202の上方の位置に設けられていたが、板吸音体郡1が設けられる位置はこれに限らない。要は、板吸音体10がドア102に設けられていればよい。
また、前述した第1実施形態では、各々のドア102に板吸音体群1が2つずつ設けられていたが、板吸音体群1の個数はこれに限らない。例えば、運転席側のドア102や助手席側のドア102には、第1実施形態と同様に板吸音体群1A、1Bを設け、後部座席のドア102には、板吸音体群1A又は1Bのいずれか1つだけを設けてもよい。
前述した第1実施形態では、図5に示したように、ドアトリム基材120のピン穴124に板吸音体10のピン15が嵌めこまれることによって板吸音体10が取り付けられていたが、板吸音体10の取り付け方法はこれに限らない。例えば、接着剤などで板吸音体10をドアトリム基材120に固着させてもよい。
前述した第1実施形態では、図5に示したように、板吸音体10において振動板13の設けられた面が表面材135で覆われていたが、これに限らない。図7に示すように、板吸音体10と表面材135との間に、複数の挿通孔120Aが設けられた平板部121Aが設けられてもよい。この場合、車室105の空気は挿通孔120Aを通って板吸音体群1に伝達するため、この複数の挿通孔120Aが音圧透過部となる。
また、前述した第1実施形態では、ドアトリム基材120と板吸音体10とが別体で設けられていたが、これに限らない。図8に示すように、ドアトリム基材120の一部を板吸音体10Aの筐体としてもよい。具体的には、ドアトリム基材120に車室105側に開口する矩形状の凹部122Aを形成し、この凹部122Aの開口部12に直接振動板13を固着し、凹部122Aと、振動板13と、凹部122Aおよび振動板13によって画成される空気層14とによって板吸音体10Aを構成する。この場合、表面材135のうちこの振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
前述した第1実施形態では、各板吸音体群1が備える3つの板吸音体10が、いずれも同様の形状を有していたが、これらの板吸音体10がそれぞれ異なった形状を有していてもよい。板吸音体10の筐体11の寸法によって板吸音体10の共振周波数が異なるため、吸音される周波数の範囲を広げることができ、より確実に吸音を行うことができる。
また、各々の板吸音体群1が、設けられた位置の音圧に応じて適した共振周波数を有する板吸音体10を備えていてもよい。この場合、音圧が高くなる部位(車室内の固有振動姿態(モード)に対応して音圧が高くなる(音圧の腹となる)部位。具体的にはガラスなどの反射性の部材で構成された、凹んだ空間など。)に配置される板吸音体群1は、板吸音体群1が寸法の大きい板吸音体10を備え、音圧が低くなる部位に配置される板吸音体群1は、寸法の小さい板吸音体10を備えるとよい。
前述した第1実施形態では、図5に示したように、板吸音体10の振動板13が、板吸音体10の車室105側の面に設けられていたが、これに限らない。例えば、振動板13が、板吸音体10の車室105側の対面である車外側の面に設けられていてもよい。この構成によれば、車外から侵入してくる音を吸収することができる。或いは、振動板13が、板吸音体10の車室105側の面と車外側の面とにそれぞれ設けられていてもよい。この構成によれば、車室105内にこもる音と、車外から侵入してくる音とを両方とも吸収することができる。要するに、板吸音体10の音圧駆動によって駆動される部位である振動板13が、ドア102における音圧が高い部位に配置されていればよい。
板吸音体10の設置位置は、図3に示した位置の他に次のようなものが考えられる。例えば、板吸音体10をひじ掛け部202の内部に設けてもよい。図9は、図3に示したドアトリム200を切断線c−cで切断した断面図である。この場合、板吸音体10の振動板13に対応するドアトリム基材120には、上述した変形例1−3−3と同様に、複数の挿通孔120Aが設けられるとよい。
また、図10は、図3に示したドアトリム200を切断線d−dで切断した断面図である。板吸音体10を図のような位置に設けてもよい。また、この場合、各板吸音体10の振動板13に対応するドアトリム基材120には、上述した変形例1−3−3と同様に、複数の挿通孔120Aが設けられるとよい。また、図に示すように、ドアポケット203の前面パネルを板吸音体10で構成してもよい。このドアポケット203を構成する板吸音体10の振動板13は、車室105側とドアポケット203内側の両面に設けられるとよい。
また、ドアトリム基材120において車両100のサイドシル側の面に振動板13が配置されるように板吸音体10が設けられてもよい。この場合、車室105内の音は、ドア102とサイドシルとの間の隙間を通って、板吸音体10へと到達することになる。あるいは、ドアトリム基材120において車両100のインストルメントパネル側の面に振動板13が配置されるように板吸音体10が設けられてもよい。この場合、車室105内の音は、ドア102とインストルメントパネルとの間の隙間を通って、板吸音体10へと到達することになる。
前述した第1実施形態では、板吸音体10の筐体11内に空気層14が形成されていたが、振動板13の剛性を高めるために、発泡ポリウレタンなどの連続気泡の発泡樹脂、あいは、フェルトやポリエステルウールなどの綿状繊維を筐体11内に充填させてもよい。
また、前述した第1実施形態では、板吸音体10の構成を、矩形状の筐体11と、筐体11の開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に限らず、円形状や多角形状であってよい。また、いずれの形状の筐体であっても、振動板13に対して振動条件を変更するための集中質量を、振動板13の中央部に設けることが望ましい。
図11は、空気層14の縦と横の大きさが100mm×100mmで厚さが10mmの筐体11に振動板13(大きさが100mm×100mm、厚さ0.85mm)を固着し、中央部(大きさが20mm×20mm、厚さ0.85mm)の面密度を変化させた際の板吸音体10の垂直入射吸音率のシミュレート結果を示した図である。なお、シミュレート手法は、JIS A 1405−2(音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第2部:伝達関数法)に従って、上記板吸音体10を配置した音響室の音場を有限要素法により求め、その伝達関数より吸音特性を算出した。
シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
700[Hz]付近で吸音率が高くなっているのは、振動板13のマスと空気層14のバネ成分によって形成されるバネマス系の共振によるものである。板吸音体10においては上記バネマス系の共振周波数での吸音率をピークとして音が吸音されており、中央部の面密度大きくしても、振動板13全体のマスは大きく変わらないので、バネマス系の共振周波数も大きく変わらないことが分かる。
また、300〜500[Hz]の間で吸音率が高くなっているのは、振動板13の屈曲振動によって形成される屈曲系の共振によるものである。板吸音体10においては、屈曲系の共振周波数での吸音率が低音域側のピークとして表れており、中央部の面密度を大きくしてゆくと屈曲系の共振周波数だけが低くなっていることが分かる。
このように、シミュレーション結果は、中央部の面密度を周縁部の面密度より大きくすると、吸音のピークとなる周波数のうち、低音域側の吸音率のピークがさらに低音域側へ移動することを表している。従って、中央部の面密度を変更することにより吸音のピークとなる周波数の一部をさらに低音域側または高音域側に移動(シフト)させることができることを表している。
上述した板吸音体10においては、中央部の面密度を変えるだけで、吸音される音のピークの周波数を変える(シフトさせる)ことができるため、振動板13を板吸音体10全体と同じ素材で板状に形成し、板吸音体10全体の質量を重くして吸音する音を変更する場合と比較して、板吸音体10全体の質量を大きく変えることなく吸音させる音を低くできる。
このように、車室内や荷室内の吸音力の変更(人や荷物の数量、形状の変化等)や発生騒音の変更(タイヤの変更、路面状況の変化等)により車室内の騒音特性の変化に対応できる。
さらに、板吸音体10の空気層14内には、多孔質吸音材(例えば、発泡樹脂、フェルト,ポリエステルウール等の綿状繊維)を充填することにより、吸音率ピーク値を増加させてもよい。
次に、本発明による第2実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、ドア102に設けられる吸音構造体に管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
(2−1)構成
図12は、第2実施形態に係るドアトリム200の構成を示す図である。このドアトリム200において、ドアトリム基材120の凹部122内には、管吸音体30が設けられている。
図13は、管吸音体30の構造を示す図である。この管吸音体30は、ドアトリム基材120の凹部122内に収容される。管吸音体30は、長さの異なる複数本のパイプ31(31−1〜31−9)を縦一列に並べて、相互に連結、或いは別途専用の部材で相互に連結させて一体に構成されている。各パイプ31は、所定の肉厚(例えば、約2mm)および所定の内径(例えば、直径60mm)を有する合成樹脂製等の断面円形の直線状剛性パイプで構成される。各パイプ31の一端部は閉じられて閉塞部32となり、他端部は開かれて開口部33となる。開口部33の位置は各パイプ31で一列に揃えられることにより、開口部33同士が隣接して配置される。各パイプ31の開口部33は、ドア102を閉めたときにも、ドア102と車体との隙間にある空間により車室105側と連通されている。これにより、ドアトリム基材120に音圧透過部136が形成される。
ここでは、空洞の長さL(=パイプの長さ)が0.85m,0.68m,0.53mの3種類のパイプが用いられており、これらはそれぞれ100Hz,125Hz,160Hz(つまり1/3オクターブバンドピッチ)を中心に吸音する(音速=340m/s)。
各パイプ31の開口部33のネック部分(開口部33またはその近傍)は、グラスウール、クロス、ガーゼ等の音圧透過性を有する流れ抵抗材(流れ抵抗を有する材料)34で塞がれている。
次に、管吸音体30による吸音原理について説明する。
図14は、図13に示す管吸音体30のうち隣接する2本のパイプ31−j,31−kを示したものである。各パイプ31−j,31−kの空洞の長さをL1,L2とする。車室105内の音波は、開口部33−j,33−kから空洞内に入射され、他端の閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから再び室内に放出される。このとき、空洞の長さL1,L2の4倍に相当する波長λ1,λ2(L1=λ1/4,L2=λ2/4)の音波が定在波S1,S2を作り、振動を繰り返すうちに空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、この波長λ1,λ2を中心に吸音が行なわれる。例えば、L1=1.35m、L2=0.53mとすると、λ1=5.4m、λ2=2.12mとなり、それぞれで吸音される音波の中心の周波数f1,f2は、f1=63Hz、f2=160Hzとなる。
0.85 0.68 111
0.85 0.53 123
0.68 0.53 140
これによれば、各パイプ31−1〜31−9単体での吸音(100,125,160Hzが中心)とあわせて約100〜160Hzの範囲で平均的に吸音力が得られることになる。
このように、ドア102に管吸音体30を設けることにより、タイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズが管吸音体30によって効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。また、ドア102を閉めると管吸音体30の開口部33が見えないので、車両100内部のデザイン性を損なうことがない。
本発明は、前述した第2実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(2−4−1)
前述した第2実施形態では、図12に示したように、開口部33がドアトリム200の図中の右端側から開口するように管吸音体30が設けられていたが、管吸音体30の配置はこれに限らない。例えば、図15に示すように、開口部33がドアトリム200の図中の左端側から開口するように管吸音体30が設けられていてもよい。あるいは、図16に示すように、開口部33がドアトリム200の図中の下端側から開口するように管吸音体30が設けられていてもよい。図16の場合、管吸音体30の各パイプ31は、図中の上下方向に延びているとよい。
また、図の例では、図12に示したドアトリム200の右端側から開口するように空洞部34が形成されていたが、これに限らない。例えば、ドアトリム200の左端側から開口するように空洞部34が形成されてもよいし、ドアトリム200の下端側から開口するように空洞部34が形成されてもよい。
また、図の例では、空洞部34と車両100のサイドシル118とにより、パイプ31が形成されるようになっていたが、これに限らない。例えば、空洞部34と車両100のピラーとによりパイプ31が形成されてもよいし、あるいは空洞部34と車両100のインストルメントパネルとによりパイプ31が形成されてもよい。
また、図の例では、空洞部34がドアトリム200に形成されていたがこれに限らない。例えば、サイドシル118や上述したピラー、インストルメントパネルに空洞部34が形成されていてもよい。あるいは、ドアトリム200と、サイドシル118、ピラー又はインストルメントパネルとの両方に空洞部34が形成されていてもよい。
前述した第2実施形態では、管吸音体30の開口部33が、ドアトリム200の側面に設けられていたが、これに限らない。例えば、図18に示すように、管吸音体30の開口部33が、ドアポケット203の収容空間内に開口するように設けられていてもよい。この場合、管吸音体30のパイプ31Aは、図18(a)中の上下方向に延びているとよい。図18(b)は、図18(a)に示した管吸音体30を矢印II方向から見た断面図である。同図に示すように、パイプ31Aの開口部33側の端部は、開口部33がドアポケット203の収容空間内のドアトリム基材120に沿って配置されるように、曲げられている。同様に、開口部33がひじ掛け部202の下方の位置に開口するように管吸音体30が設けられていてもよいし、あるいは、開口部33がドアハンドル部201のレバーを受ける受け皿部分に開口するように管吸音体30が設けられていてもよい。
この構成によれば、管吸音体30の開口部33を、目立ち難くすることができる。
前述した第2実施形態では、管吸音体30の一方の端部が開口部33となり、他方の端部が閉口部32となる、いわゆる閉管であったが、パイプ31の形状はこれに限らない。例えば、各パイプ31の両端部が開かれて開口部32、開口部33(いわゆる開管)をなす管で構成してもよいし、これら閉管と開管とを混合して配置してもよい。
次に、本発明による第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、ドア102に設けられる吸音構造体にヘルムホルツ吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
本実施形態に用いられるヘルムホルツ吸音体40は、内部に空間が形成された直方体状の筐体41と、この筐体41の車室105側に穿設された挿入孔42に挿入された管状部材43と、を有している。筐体41の内側には密閉空間44が画成され、管状部材43の内側には密閉空間44と車室105とを連通する開口45が形成されている。管状部材43は、ドアトリム基材120に穿設された挿通孔120Gにも挿入されている。
筐体41は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)によって直方体状に形成されている。管状部材43は、例えば塩化ビニール製のパイプを使用でき、空気との摩擦が生じやすいように、内面を粗くしておく。このヘルムホルツ吸音体40は、寸法の小さい空洞である密閉空間44の中の空気がバネとして働くことにより、車室105内に発生した音を減衰するように作用する。
このとき、密閉空間44に設けられた小さな開口45が車室105に通じているため、開口45内の空気の塊をマスとして1質点系バネ・マスモデルが形成される。そして、この系の共振周波数においては、開口45内の空気の塊が車室105の音圧によって振動し、開口45の周壁と空気の塊との摩擦によって、音のエネルギーが熱エネルギーに変換される。つまり、音が減衰される。
この式から、開口45の横断面積S又は有効長さLe、即ち、管状部材43の内径d又は長さLを変えることによって、共鳴周波数f0を調整でき、これにより、周波数の異なる音を減音できることが分かる。
このように、ドア102にヘルムホルツ吸音体40を設けることにより、タイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズは、ヘルムホルツ吸音体40によって効率良く吸音される。
また、ヘルムホルツ吸音体40の筐体41の形状は、直方体に限らず、円柱状等、他の形状であってもよい。
次に、本発明による第4実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、ドア102に設けられる吸音構造体に板吸音体および管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
このように、ドア102に板吸音体10および管吸音体30を設けることにより、第1実施形態および第2実施形態で述べたように、板吸音体10および管吸音体30によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
しかも、2種類の吸音体10,30を用いることにより、吸音効率を前記各実施形態よりも高めることができる。
なお、吸音体の組み合わせは、この第4実施形態に限らず、板吸音体10、管吸音体30およびヘルムホルツ吸音体40、管吸音体30およびヘルムホルツ吸音体40との組み合わせであってもよい。
なお、前述した第1〜第4実施形態では、4枚のドア102に吸音体を設ける構成について例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ハッチバックタイプの車両ように、ハッチと呼ばれる後部ドアが設けられている場合には、この後部ドアに吸音体が設けられていてもよい。
Claims (9)
- ドアと、
前記ドアに設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1記載の車体構造体において、
前記吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記ドアにおける音圧が高い部位に配置される
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、振動板と、
該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体である
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体である
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項4記載の車体構造体において、
前記管吸音体は、複数の前記空洞を有する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項4記載の車体構造体において、
前記管吸音体は、長さの異なる複数の前記空洞を有する
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、閉空間と、この閉空間と車室の空間とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体である
ことを特徴とする車体構造体。 - 請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、
振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体と、
一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体と、
閉空間と、この閉空間と外部とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体との、
いずれかの吸音体の組み合わせによって構成される
ことを特徴とする車体構造体。 - 車両の出入り口となるドアであって、
前記ドアの基台をなすドア基材と、
前記ドア基材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
ことを特徴とするドア。
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