JP2009255167A - 面取りダイを用いた打ち抜き加工方法及び装置 - Google Patents

面取りダイを用いた打ち抜き加工方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】打ち抜き加工端面の伸びフランジ性を向上させる打ち抜き方法及び装置を提供する。
【解決手段】パンチ2とダイ3を用いて金属板(被加工材)Pに穴をあける打ち抜き加工をした後、打ち抜き方向と同一方向に伸びフランジ加工をする金属板の打ち抜き加工方法、およびそれに用いられる加工装置において、打ち抜き加工に使用するダイ3の刃先8は、ダイ上面の平坦部10から打ち抜き方向に金属板の板厚の0.1〜3倍の寸法aだけ下がった位置にあり、かつ、空洞部30を挟んで両側に位置するダイ3の上面が、空洞部30を含む水平方向寸法bがパンチ2の径の1〜10倍の領域において面取りされている。
【選択図】図3

Description

本発明は自動車、家電製品、建築構造物、船舶、橋梁、建設機械、各種プラント、ペンストック等で用いられる鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウムおよびこれら合金等の金属板の打抜き装置及び打抜き方法に関するものであり、特に打ち抜き加工によって生じる打ち抜き端面の伸びフランジ性向上に関するものである。
自動車、家電製品、建築構造物等の金属板には、図1(a)のようにパンチ2とダイ3による穴打ち抜き加工や、図1(b)のようにパンチ2とダイ3により被加工材Pを前後に切断する切断打ち抜き加工が施されることが多い。
図2に示すように打ち抜き端面は、被加工材Pがパンチ2により全体的に押し込まれて形成されるダレ4、パンチ2とダイ3のクリアランス内(以下特に記載がなく“クリアランス”と表記した場合は、パンチとダイのクリアランスを指すこととする)に被加工材Pが引き込まれ局所的に引き伸ばされて形成されるせん断面5、パンチ2とダイ3のクリアランス内に引き込まれた被加工材Pが破断して形成される破断面6、および被加工材P裏面に生じるバリ7によって構成される。
伸びフランジ加工で割れがしばしば問題となるが、このような割れは打ち抜き端面より発生し、打ち抜き時に、打ち抜き端面の加工硬化や割れを少なくすることが対策として有効である。
このような観点から、従来技術として、突起付きパンチによる打ち抜きやシェービング、パンチ衝撃の緩衝部付きダイ等の対策技術が用いられる場合がある。また、これら以外には面取りが施されたパンチにより打ち抜き面の微小割れの発生を防止して伸びフランジ性を向上させる技術が特許文献1に記載されている。
また、直接打ち抜き端面の伸びフランジ性を狙ったものではないが、打ち抜き時のカス上がりを防止する技術として、ダイの刃先(ダイ刃先とも言う)に面取りを施す方法も特許文献2に記載されている。また、同様に刃先に面取りを施したダイを用いて既に半抜き状態である製品を切断し、板厚方向のバリを抑止する方法が特許文献3に記載されている。
さらに、テーパー付きパンチにより破断面量の少ない意匠性の優れた打ち抜き面を得ることが可能である(特許文献4)。
特開平8−57557号公報 特開平10−230329号公報 特開2006−43757号公報 特開平11−333530号公報
しかしながら、これらの開示技術にはいくつかの課題がある。
特許文献1に記載の方法は、打ち抜き端面の加工硬化は却って増すため、用いる素材によっては伸びフランジ性に対して逆効果となる場合もある。
特許文献2に記載のダイ刃先の面取り量は、垂直方向の寸法が0.5mm程度であるが、このようなダイでの打ち抜き端面は、垂直方向の面取り量0.5mmが転写された細かなバリが生じることがあり、伸びフランジ性向上の効果は期待できない。
特許文献3記載の方法は、面取り量が大きくバリ発生が抑止できて伸びフランジ性向上の効果が期待できるものの、製品が半抜き状態であることが前提であり、工程数が増えるためにコスト増となる。
特許文献4記載のテーパーパンチは、通常のダイと組み合わせて用いた場合、このような打ち抜き面はパンチによるバニシ加工により加工硬化が大きく、伸びフランジ性は通常のパンチによる打ち抜き面よりも劣る。
本発明は、打ち抜き加工端面の伸びフランジ性を向上させる打ち抜き方法及び装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)パンチとダイを用いて金属板に穴をあける打ち抜き加工をした後、打ち抜き方向と同一方向に伸びフランジ加工をする金属板の打ち抜き加工方法において、前記打ち抜き加工に使用するダイの刃先は、ダイ上面の平坦部から打ち抜き方向に前記金属板の板厚の0.1〜3倍の寸法だけ下がった位置にあり、かつ、空洞部を挟んで両側に位置する前記ダイの上面が、前記空洞部を含む水平方向寸法が前記パンチの径の1〜10倍の領域において面取りされていることを特徴とする面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
(2)前記ダイの面取りされた領域は、凸な曲面状であることを特徴とする(1)記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
(3)前記打ち抜き加工に使用するパンチの刃先は、曲率半径が0.5〜2mmであることを特徴とする(1)または(2)記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
(4)前記パンチは、更にパンチ先端方向に細くなるテーパー形状であることを特徴とする(3)記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
(5)前記ダイの刃先は、曲率半径が0.5〜1mmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
(6)パンチとダイを有し、金属板に穴をあける打ち抜き加工装置であって、打ち抜き加工後、打ち抜き方向と同一方向の伸びフランジ加工に用いられ、前記打ち抜き加工に使用するダイの刃先は、ダイ上面の平坦部から打ち抜き方向に前記金属板の板厚の0.1〜3倍の寸法だけ下がった位置にあり、かつ、空洞部を挟んで両側に位置する前記ダイの上面が、前記空洞部を含む水平方向寸法が前記パンチの径の1〜10倍の領域において面取りされていることを特徴とする面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
(7)前記ダイの面取りされた領域は、凸な曲面状であることを特徴とする(6)記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
(8)前記パンチの刃先は、曲率半径が0.5〜2mmであることを特徴とする(6)または(7)記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
(9)前記パンチは、更にパンチ先端方向に細くなるテーパー形状であることを特徴とする(8)記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
(10)前記ダイの刃先は、曲率半径が0.5〜1mmであることを特徴とする(6)〜(9)のいずれか1つに記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
本発明により、コストや金型試作数、工程数を増やすことなく、容易に打ち抜き加工端面の伸びフランジ性を向上させることができる。
一般的な穴打ち抜き加工を模式的に示した図であり、(a)は穴打ち抜き加工、(b)は切断打ち抜き加工を示す図である。 打ち抜き加工された被加工材の打ち抜き端面を模式的に示す図である。 本発明に係る傾斜部を有するダイを模式的に示す図である。 傾斜部が凸な形状であるダイを模式的に示す図であり、(a)は傾斜部と平坦部の境目付近のみ曲面状となっているダイ、(b)は傾斜部の全てが曲面状となっているダイを示す図である。 刃先が丸められたパンチ断面を模式的に示す図である。 図5のパンチと傾斜部を有するダイを用いた打ち抜きにおける被加工材の破断形態を模式的に示す図である。 刃先が丸められ、かつ、テーパー部を有するパンチ断面を模式的に示す図である。 図7のパンチと傾斜部を有するダイを用いた打ち抜きにおける被加工材の破断形態を模式的に示す図である。 実施例1に用いた打ち抜きパンチとダイを模式的に示した図である。 実施例1における穴広げ試験結果を示したグラフである。 穴広げ試験片のフランジ部に転写されたダイの傾斜部と平坦部の境目による窪みを模式的に示す図である。 実施例2に用いた打ち抜きダイを模式的に示した図である。 実施例2おける穴広げ試験結果を示したグラフである。 実施例3に用いた打ち抜きパンチを模式的に示した図である。 実施例3における穴広げ試験結果を示したグラフである。 実施例4に用いた打ち抜きパンチを模式的に示した図である。 実施例4における穴広げ試験結果を示したグラフである。 実施例5に用いた打ち抜きダイを模式的に示した図である。 実施例5における穴広げ試験結果を示したグラフである。 実施例6に用いた打ち抜きパンチとダイを模式的に示した図である。 実施例6における穴広げ試験結果を示したグラフである。
以下に本発明を詳細に説明する。
図3は、本発明に係る打ち抜き加工用ダイ3の実施の形態を示す。このダイ3は、例えば図1(a)に示すような打ち抜き加工に用いられる。ダイ3の刃先8は、上面の平坦部10から打ち抜き方向に寸法aだけ下がった位置にあり、刃先8から平坦部10に向けて、水平方向の寸法cの領域において面取りされている。寸法aは、打ち抜き加工される金属板の板圧の0.1〜3倍の範囲である。また、寸法cは、空洞部30を挟んで両側に位置するダイ3の、それぞれ面取りされた寸法cの和に空洞部30の幅寸法dを合わせた水平寸法b、即ちb=2×c+dが、パンチ2の径の1〜10倍の範囲である。
本発明は、図3に示すように、従来用いられていたダイとは異なり、ダイ3の刃先部分が広く面取りされているので、ダイ3の上面になだらかな傾斜部9が形成され、被加工材Pを設置した時点では打ち抜き部周辺がダイ3と接触しないことを特徴としている(前記(1)に係る発明)。
打ち抜きだけを考えた場合、このように大きく面取りを施したダイ3では、打ち抜きが終了した時点で打ち抜き方向に被加工材Pが曲がってしまい製品が不良となるが、打ち抜き後に打ち抜き方向と同一方向にフランジ加工をすることによって、打ち抜き方向にフランジアップされるような製品では、このような打ち抜き加工方法が有効である。これは、ダイ3上面の平坦部10から打ち抜き方向の寸法aが金属板(被加工材P)の板厚の0.1倍以上であれば、打ち抜き端面がフランジアップ加工初期の時点で既にある程度フランジアップされた形状となっており、伸びフランジ変形による端面の塑性歪量が少なくて済むこと、および、打ち抜き時にダイ肩部周辺の被加工材Pに引張の応力が加わり、少ない塑性歪量で亀裂が発生するためにダイ近傍の打ち抜き端面の加工硬化量が少なくなるためである。また、上記寸法aが金属板の板厚の0.1倍より小さいと、応力集中部となる小さなバリが発生するために、伸びフランジ加工性は悪化してしまう。
ただし、闇雲にダイに傾斜部9を設ければ伸びフランジ加工時の割れを防げるわけではない。ダイ上面の平坦部10から打ち抜き方向の寸法aが金属板の板厚の3倍よりも大きくなると、打ち抜き時点でのダイ3の傾斜量が大きくなりすぎるので、ダイ3と被加工材Pが接触する前にパンチ2が被加工材Pを突き破る形で打ち抜きが施されるために、却って打ち抜き端面の荒れと加工硬化が大きくなる。
また、前述の水平寸法bがパンチ2の径の1倍以下であれば、寸法aが小さい場合と同様に、応力集中部となる小さなバリが発生して伸びフランジ加工性を悪化させてしまう場合がある。一方、水平寸法bがパンチ2の径の10倍を超えると、被加工材Pの設置状態が不安定となり、製品に撓みが発生してしまう。
以上のように、本発明者らは、伸びフランジ性に効果があるダイ3の刃先8部分の傾斜部9を、ダイ上面の平坦部10から打ち抜き方向の寸法aが金属板の板厚の0.1〜3倍で、かつ空洞部30を挟んで両側に位置するダイ3の上面は、空洞部30を含む水平方向寸法bがパンチ2の径の1〜10倍の領域において面取りされていれば、安定して伸びフランジ性に効果があることを見出した。
図4は異なる実施形態であり、前記(2)の発明に係るダイ3を示す。図4のごとくダイの傾斜部12、13を凸な曲面状とすれば、ダイ3の平坦部10と傾斜部12、13との境目11が被加工材Pに転写されるという問題を避けることができる。この際、図4(a)のように境目11を丸める程度でもよいし、図4(b)のように傾斜部13の全体を凸状に丸めてもよい。
また、本発明による打ち抜き加工はダイ側からの亀裂発生が支配的であるため、図5のごとくパンチ14の刃先15を曲率半径0.5〜2mmに丸めることが、金型寿命向上のために有効である(前記(3)に係る発明)。パンチの刃先を丸めた場合、通常のダイを使用すれば打ち抜き部が破断しにくくなるために打ち抜き端面の加工硬化量が増し、伸びフランジ加工性は大きく悪化する。しかし、本発明による面取りされたダイ3と組み合わせて用いる場合は、パンチ14の刃先15の曲率半径を0.5mm以上とすれば、図6のような破断形態となり、加工硬化が大きい部分16は打ち抜きカス17の一部となる。打ち抜きカス17は、打ち抜き加工後の伸びフランジ加工に供さないので、加工硬化が大きい部分16が除かれた被加工材(図6の被加工材Pの紙面右側の部分)は、打ち抜き加工端面の加工硬化量が減少し、伸びフランジ加工性は向上する。一方、このパンチ14の刃先の曲率半径が2mmを超えるとカス上がり(パンチ刃先に打ち抜きカス17が付着してしまうことであり、製品を次々と打ち抜き加工するような場合の支障となる。)やパンチの焼き付きに繋がるので好ましくない。従って、パンチ14の刃先15の曲率半径は、0.5〜2mmとすることが好ましい。
さらに、図7に示すように、打ち抜きパンチ19の刃先15に図6と同様の丸みをつけ、かつ先端方向に細くなるテーパー形状とすれば、図8に示すようにダイ刃先からの亀裂20がパンチ19と被加工材Pとの接触部より遠ざかる方向に伝播し、より多くの加工硬化が大きい部分16が打ち抜きカス17となって除去される。従って、打ち抜き加工後に伸びフランジ加工に供される被加工材Pの打ち抜き端面の加工硬化が減るために、伸びフランジ加工性を向上させることができる(前記(4)に係る発明)。この際、テーパー角度21が過大となればカス上がりやパンチの焼き付きが起こるため、このテーパー角度は、鉛直線に対し5〜30度程度に抑えることが推奨される。
また、ダイ3の刃先8の曲率半径を0.5〜1mmにすることも、伸びフランジ加工性向上に効果がある(前記(5)に係る発明)。これは、ダイ3の刃先8の曲率半径を0.5mm以上に丸みをつけた場合に、亀裂発生部以外の被加工材Pにおけるダイ肩近傍部はダイ3の刃先8の丸み部との接触圧により圧縮場となって変形しにくくなる作用による。この作用によりダイ肩部の加工硬化領域は狭まるため、伸びフランジ加工時に発生する端面割れの伝播が抑止されて伸びフランジ性が向上されるのである。一方、ダイ3の刃先8の曲率半径が1mmを超えると、大きなバリが発生することがあり、伸びフランジ加工性の悪化の原因となるので、ダイ3の刃先8の曲率半径は1mm以下とすることが好ましい。
ただし、ダイ3の刃先8に丸みをつけた際の効果は打ち抜き時のクリアランスに大きく影響される。本発明者らの調査によれば、クリアランスが被加工材Pの板厚の5〜10%で効果的であり、これより大きなクリアランスであればあまり効果が得られなかった。
本発明の効果を実証するため、打ち抜き後に円錐穴広げを行う実験を実施した。本発明例として、打ち抜き加工には図9に示す形状のパンチ24とダイ25を用い、打ち抜き形状は直径10mmの丸孔とした。ダイ25の刃先31の、平坦部33から打ち抜き方向の寸法a=1mm、空洞部を挟んで両側に位置するダイ25の上面において空洞部の幅を含む面取り領域の水平方向寸法b=2×5+2×5.16=20.32mmである。
比較例として、ダイの刃先を面取りしていない点を除いて本発明例と同じ寸法のパンチとダイを使用した。
円錐穴広げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFST1001に遵守し、先端の角度が60度である円錐パンチにより打ち抜き孔を拡径し、打ち抜き端面に発生した亀裂が板厚を貫通した際の拡径率を穴広げ限界値とした。被加工材Pには、最大引張強度が590MPaである板厚1.6mmの鋼材を使用した。
図10に、本発明例の打ち抜きによる穴広げ限界値と比較例のパンチ・ダイを用いた穴広げ限界値を示す。本発明による打ち抜き加工は、穴広げ限界値が平均して20%ほど比較例の打ち抜き加工と比べて向上しており、本発明が打ち抜き端面の伸びフランジ加工性の向上に効果的であることを確認できる。なお、図11に示すように、被加工材Pのフランジ部には、ダイ25の傾斜部32と平坦部33の境目34が転写された窪み23が生じた。
本発明例として、図12に示すように、傾斜部35が曲面状に面取りされたダイ26の面取り領域の曲率半径を13mmの凸状にし、これ以外の条件は全て実施例1と同じである実験を行った。
図13に本発明例の打ち抜きによる穴広げ限界値と比較例のパンチ・ダイを用いた穴広げ限界値を示す。本発明による打ち抜き加工は、穴広げ限界値が平均して19%ほど比較例の打ち抜き加工と比べて向上しており、本発明の有効性を確認することができる。この際、実施例1で見られたようなフランジ部の窪みは発生しなかった。
本発明例として、図14に示すように、パンチ27の刃先の曲率半径を1.5mmとし、これ以外の条件は全て実施例2と同じである実験を行った。
図15に本発明例の打ち抜きによる穴広げ限界値と比較例のパンチ・ダイを用いた穴広げ限界値を示す。本発明例による打ち抜き加工は、穴広げ限界値が平均して15%ほど比較例の打ち抜き加工と比べて向上しており、本発明の有効性を確認することができる。この際、実施例1で見られたようなフランジ部の窪みは発生しなかった。
本発明例として、図16に示すように、パンチ28の先端形状を、鉛直線に対し10度の角度で先端方向に細くなるテーパー形状とし、これ以外の条件は全て実施例3と同じである実験を行った。
図17に本発明例の打ち抜きによる穴広げ限界値と比較例のパンチ・ダイを用いた穴広げ限界値を示す。本発明例による打ち抜き加工は、穴広げ限界値が平均して20%ほど比較例の打ち抜き加工と比べて向上しており、本発明の有効性を確認することができる。この際、実施例1で見られたようなフランジ部の窪みは発生しなかった。
本発明例として、図18に示すように、ダイ29の刃先36の曲率半径を1mmとし、これ以外の条件は全て実施例1と同じである実験を行った。
図19に本発明例の打ち抜きによる穴広げ限界値と比較例のパンチ・ダイを用いた穴広げ限界値を示す。本発明例による打ち抜き加工は、穴広げ限界値が平均して23%ほど従来の打ち抜き加工と比べて向上しており、本発明の有効性を確認することができる。この際、実施例1で見られたようなフランジ部の窪みは発生した。
本発明例として、ダイ形状を図20に示すものとし、ダイ41の鉛直方向の面取り寸法X(mm)を0mm、0.1mm、0.15mm、2mm、2.2mm、3mm、4mmの6通りの水準で実験を行った。ダイ41の水平方向の面取り寸法は、いずれも5mmとした。被加工材Pには、最大引張強度590MPaである板厚1.6mmの2相組織鋼板を使用した。これら以外の条件は全て実施例1と同じとした。
図21に、本発明例の打ち抜きによる穴広げ限界値を面取り量Xごとに表示した実験結果を示す。図10等に示した従来の比較例に対して、本発明例の範囲である、X=2mm、2.2mm、3mm、4mmの条件では、孔広げ性は平均して倍近く向上しており、従来技術である少量の面取り量(X=0.1mm、0.15mm)の範囲では、孔広げ性は却って悪化する傾向であることが図21より分かる。この結果より、本発明の有効性を確認することができる。なお、この際、実施例1で見られたようなフランジ部の窪みは発生した。
本発明は、鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウムおよびこれら合金等の金属板の打抜き装置及び打抜き方法に適用できる。
2、14、19 パンチ
3 ダイ
4 ダレ
5 せん断面
6 破断面
7 バリ
8 刃先
9、12、13 傾斜部
10 平坦部
11 (傾斜部と平坦部の)境目
15 刃先
16 加工硬化が大きい部分
17 打ち抜きカス
20 亀裂
21 テーパー角度
23 窪み
24、27、28 パンチ
25、26、29、41 ダイ
30 空洞部
P 被加工材

Claims (10)

  1. パンチとダイを用いて金属板に穴をあける打ち抜き加工をした後、打ち抜き方向と同一方向に伸びフランジ加工をする金属板の打ち抜き加工方法において、
    前記打ち抜き加工に使用するダイの刃先は、ダイ上面の平坦部から打ち抜き方向に前記金属板の板厚の0.1〜3倍の寸法だけ下がった位置にあり、かつ、空洞部を挟んで両側に位置する前記ダイの上面が、前記空洞部を含む水平方向寸法が前記パンチの径の1〜10倍の領域において面取りされていることを特徴とする面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
  2. 前記ダイの面取りされた領域は、凸な曲面状であることを特徴とする請求項1記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
  3. 前記打ち抜き加工に使用するパンチの刃先は、曲率半径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1または2記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
  4. 前記パンチは、更にパンチ先端方向に細くなるテーパー形状であることを特徴とする請求項3記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
  5. 前記ダイの刃先は、曲率半径が0.5〜1mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工方法。
  6. パンチとダイを有し、金属板に穴をあける打ち抜き加工装置であって、
    打ち抜き加工後、打ち抜き方向と同一方向の伸びフランジ加工に用いられ、前記打ち抜き加工に使用するダイの刃先は、
    ダイ上面の平坦部から打ち抜き方向に前記金属板の板厚の0.1〜3倍の寸法だけ下がった位置にあり、かつ、空洞部を挟んで両側に位置する前記ダイの上面が、前記空洞部を含む水平方向寸法が前記パンチの径の1〜10倍の領域において面取りされていることを特徴とする面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
  7. 前記ダイの面取りされた領域は、凸な曲面状であることを特徴とする請求項6記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
  8. 前記パンチの刃先は、曲率半径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項6または7記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
  9. 前記パンチは、更にパンチ先端方向に細くなるテーパー形状であることを特徴とする請求項8記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
  10. 前記ダイの刃先は、曲率半径が0.5〜1mmであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の面取りダイを用いた打ち抜き加工装置。
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