JP7456429B2 - プレス部品の製造方法、プレス部品、及びブランク材の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献2では、伸びフランジ割れの発生し難いブランク形状を用いることが提案されている。しかし、特許文献2の方法は、ブランク形状が制約されることから、製品形状の自由度が制約される。
ここで、上記のような特定の課題を克服した本開示のプレス部品は、途中の2度切断処理(特定加工工程条件)を経ないと成り立たないものであり、出願時において物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能、若しくは、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることを鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく経済的支出や時間を要する発明である。
本実施形態のプレス品製造方法は、1又は2以上のプレス成形を経て目的のプレス品を製造するプレス部品の製造方法である。各プレス成形は、例えばフォーム成形(フランジ部を拘束しない状態でのプレス成形)、若しくはドロー成形で行われる。そして本実施形態のプレス部品の製造方法は、少なくとも1つのプレス成形で、板端縁にそって伸び変形する伸びフランジ変形が発生する場合の技術である。
図1(d)に例示したプレス部品10の部品形状は、天板部11と、天板部11に連続する縦壁部12と当該縦壁部12に連続するフランジ部13とを有する。
また、実際にプレス成形を実施して各プレス成形後の部品を観察して、伸びフランジ変形による割れ懸念部3の有無の確認、及びその割れ懸念部3の位置を特定しても良い。
プレス成形を行う前処理として、被プレス材を例示するブランク材1の外周を、プレス部品10の部品形状に応じた輪郭形状にせん断するトリム工程を有する。
但し、本実施形態では、このトリム工程において、伸びフランジ変形による端部割れが懸念されるフランジ部13に相当するフランジ対応部の端部(少なくとも割れ懸念部3の位置)に対し、図1の(b)及び(c)に示すような、本発明に基づく2度の切断を実行する2度切断処理を施す。
なお、本発明に基づく2度切断処理は、トリム工程と独立して実行されても良い。例えば、図1の(c)~(d)の間に複数の工程(不図示)を設け、その複数の工程中に、本発明に基づく2度切断処理を実行しても良い。
本実施形態の梁状の張出部2は、図1(b)に示すように、当該張出部の根元から先端に向かうにつれて、1段又は2段以上の段部(段差)を形成して、幅が階段状に徐々に狭くなる形状となっている。図1(b)では、段部が1段の場合を例示し、段部の1段までの部分2Aと、段部の1段までの部分2Aよりも幅が狭い1段目以降の部分2Bとからなる場合である。張出部2の形状は、2段以上の段部(段差)を有して段階的に幅が狭くなる形状であっても良い。
張出部2の形状をこのような形状とすることで、段部の1段までの形状2Aを、特許文献4に記載の張出部相当の寸法としつつ、更に、1段以降の部分2Bの部分だけ張出量を大きくすることが可能となる。
また例えば、段部の1段目までの部分2Aの張出量Hを、被プレス材の板厚の20倍以下とし、1段目以降の部分2Bの張出量H1を、被プレス材の板厚の30倍以下とする。
また、段部の1段目以降の部分2Bの張出量H1を、段部の1段目までの部分2Aの張出量Hよりも長く設定してもよい。張出部2の張出量を稼ぐことが可能となる。
ここで、張出部2の根元の幅W(材料の端縁に沿った長さ)は、フランジ部13の縁に沿った長さL以下であればよい。好ましくは、フランジ部13の端縁に沿った長さLの1/2以下、若しくはブランク材1の板厚の300倍以下とする。
また、段部の1段目以降の部分2Bの幅W1は、被プレス材の板厚の150倍以下が好ましい。
1度目の切断(せん断)で、上記の幅Wからなる一時的な梁状の張出部2を形成することで、梁状の張出部2を一時的に形成しない場合(図2参照)に比べて、2度目の切断(せん断)の切断量(抜き代)を稼ぎつつ、割れ懸念部3へのせん断による歪入力を、より確実に抑制することができる(後述の実施例を参照)。
2度目の切断部分を片持ち梁状の張出部2とすることで、2度目の切断(せん断)の切断量(抜き代)を稼ぎつつ、割れ懸念部3へのせん断による歪入力をより確実に抑制することができる。更に、本実施形態では、張出部に1段目以降の張出し部分2Bがあるため、切断後の屑(スクラップ)の寸法が、その分大きくなり詰まりにくくなる。
そして、以上の2度切断処理の後に、プレス成形(図1の(c)→(d))で目的とするプレス部品10を製造する。
なお、上記説明では、割れ懸念部3が一カ所の場合を例示しているが、本発明は、割れ懸念部3が2カ所以上あっても適用可能である。各割れ懸念部3毎に、端部割れが懸念されるプレス成形の前処理として、上述のような2度切断処理を行えば良い。但し、隣り合う割れ懸念部3が近接している場合には、隣り合う割れ懸念部3を含む一つの張出部2を1度目の切断で形成するようにしても良い。
一般に、せん断加工を行うと、被プレス材の端縁に対し若干の曲げと共に歪が入力される。このため、その後のプレス成形として、フランジ部13の端縁に沿ったフランジ部13の端部13aに対し伸びフランジ変形が発生するようなプレス成形を実行すると、端部割れが発生する可能性が高くなる傾向にある。
ここで、従来処理の例である図2に示すように、1度のせん断による切断でフランジとなる位置の端部を形成する場合、図2(a)で示す一点鎖線で示す切断位置(右側の切断位置)で切断されることから、切断部の幅W0と切断位置からの張出量H0からなる切断面積が大きい。
これに対し、本実施形態では、図1(b)のように、張出部2を、階段状に先端に向けて幅が狭くなるような形状として、張出部2の形状を、段部の1段目以降の張出し部分2Bを有する形状として、張出量(H+H1)を稼いだ形状とした。
この形状の場合、片持ち梁状の張出部のうち、段部の1段以降の張出し部分2Bのたわみが、もともとの張出しである段部の1段までの張出部分2Aのたわみを誘発する。これにより、切断進行方向への鋼板のたわみが、段部の1段以降の張出し部分2Bが無い張出部(矩形形状の張出部)と同等以上に進行する。そのため、切断時の歪入力が緩和されることで切断時の大変形領域が緩和されると共に、特許文献4に記載のような略矩形の張出部に比べて、張出部2の張出量及び寸法(切断面積)を大きくできる。この結果、より屑の詰まりを防止できるようになる。
例えば、5段階のプレス成形を経て目的のプレス部品を製造する際に、CAEなどのシミュレーションで、4段階目のプレス成形で伸びフランジ割れの懸念があると推定した場合には、上述の2度切断処理を4段階目のプレス成形よりも前に実施すればよい。
その後、2度目のプレス成形を行う(図3(e)参照)。これによって、割れ懸念部3での端部割れが抑えられる。
このとき、穴16の端部のうち端部割れが懸念される箇所を含む位置に、上記形状からなる梁状且つ段差を有する張出部2を形成するように1度目の切断を行う(図4(b)、図5(b))。その後、2度目の切断を行って、梁状の張出部2を切断する(図4(c)、図5(c))。
処理を実行する構成としても良い。
クリアランスCが5.0%より小さい場合、せん断加工時に2次せん断面が発生し、せん断端面の状態として好ましくない。その上、引張残留応力が大きくなるおそれがある。
より好ましいクリアランスCは10.0%以上かつ20.0%未満である。
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
<切断条件>
以下の例では、本発明の効果を確認するために穴広げ試験を実行した。
このとき、本発明に基づき、1度目の切断で部分的且つ段部が形成された張出部を設け、その張出部を2度目の切断で切断する2度切断処理を実行した場合(実施例)と、本発明に基づく部分的な張出部を設けないでフランジ端部全体を2度切断する処理を実行した場合(比較例1)と、1度目の切断で部分的且つ略矩形の張出部を設けその張出部を2度目の切断で切断する2度切断処理を実行した場合(比較例2)とで、それぞれ穴広げ率を求めてみた。
この比較例1の試験では、試験片20として引張強度が590MPaの材料で厚さ3.6mmの板材を使用した。そして、上記のように穴全周を2度切断し、2度目の切断後の抜き穴20Bを直径50mmの穴(目標の輪郭形状)とした(図6(b)参照)。そして、1度目の切断で形成する抜き穴20Aの直径を0~49mmの範囲において0.5mmピッチで変更して、2度目の切断量(抜き代)を調整した。例えば、1度目の切断で形成する抜き穴20Aの直径が48mmであれば、2度目の切断量(抜き代)は、2mmとした。なお、1度目の抜き穴20Aの直径が0mmとは、一度の切断で直径50mmの穴(目標の輪郭形状)を形成した場合に対応する。
比較例1と比較例2との評価結果を、図9に示す。
ここで、図9中、比較例1の切断量(抜き代)を、横軸の張出量として図示した。
また、図9中、○が比較例2であり、クリアランスCを12.5%に設定したものである。また、△及び□が比較例1であり、△は、クリアランスCを12.5%に設定したもので、□はクリアランスCを5.0%に設定したものである。また、図9中、張出量=0でのプロットは、従来の1度切切断方法の場合に対応する。
一方、図9から分かるように、比較例2では、張出部2の張出量Hに関係なく、ほぼ同じ穴広げ率となっていた。図9に、比較例2における穴広げ率の平均値位置を横線で示す。
これに対し、比較例2の2度切断処理の場合、1度目の切断で、部分的な片持ち梁状の張出部20Cが形成されるように開口を形成した後に、2度目の切断でその張出部20Cを切断すると広範囲の張出量において穴広げ率(λ)が向上することが分かった。すなわち、本実施例では、図9中、Yで示す範囲に穴広げ率が収まった。そして、比較例2では、伸びフランジ変形による端部割れを簡易に抑制できることが分かった。
ここで、図10~図12中、張出部20Cの先端に設けた張出部20Dの張出量である第2の張出量(抜き代)を、横軸として図示した。
また、図10~図12中、●が実施例であり、クリアランスCを12.5%に設定したものである。また、〇及び△が比較例2及び比較例1であり、図10中の□は、従来の1度切切断方法の場合に対応する。
図10~図12から分かるように、比較例2の張出部20Cに対し、段差を付けて第2の張出部20Dを設けても、比較例2と同等の効果があることが分かった。
すなわち、実施例は、比較例2と同等の効果(伸びフランジ変形による端部割れを簡易に抑制する効果)を有しつつ、張出部2の長さを大幅に長くすることが出来ることが分かった。
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)1又は2以上のプレス成形を経てプレス部品を製造するプレス部品の製造方法において、
上記1又は2以上のプレス成形のうちの少なくとも1つのプレス成形で、被プレス材の端部に伸びフランジ変形による端部割れが懸念されると推定される場合、上記端部割れが懸念されるプレス成形の前処理として、上記端部割れが懸念される箇所を少なくとも含む端部の切断処理を2度行う2度切断処理を有し、
上記2度切断処理は、1度目の切断の際に、上記端部割れが懸念される箇所を含む位置に部分的な梁状の張出部を形成する切断を行い、2度目の切断で上記張出部を切断し、
上記梁状の張出部を、当該張出部の根元から先端に向かうにつれて、1段又は2段以上の段部(段差)を有して幅が階段状に徐々に狭くなる形状とする。
(3)上記張出部の根元での幅を、上記被プレス材の板厚の300倍以下とし、
上記張出部における、根元の幅より狭い、上記段部の1段目以降の幅を、上記被プレス材の板厚の150倍以下とした。
(4)上記張出部の張出量は、上記段部の1段目までの張出量が、上記被プレス材の板厚の20倍以下であり、上記1段目以降の張出量が、上記被プレス材の板厚の30倍以下である。
(6)上記張出部の張出量は、上記段部の1段目以降の張出量が、上記段部の1段目までの張出量よりも長い。
(7)上記梁状の張出部は、2段以上の段部を有する。
(8)上記プレス成形は、フォーム成形又はドロー成形である。
(9)本開示のプレス部品の製造方法で製造され、
上記端部割れが懸念される箇所を少なくとも含む端部の切断処理を2度行う上記2度切断処理が施されて製造されたプレス部品。
上記1又は2以上のプレス成形のうちの少なくとも1つのプレス成形で、被プレス材の端部に伸びフランジ変形による端部割れが懸念されると推定される場合、上記端部割れが懸念される箇所を少なくとも含む端部の切断処理を2度行う2度切断処理を有し、
上記2度切断処理は、1度目の切断の際に、上記端部割れが懸念される箇所を含む位置に部分的な梁状の張出部を形成する切断を行い、2度目の切断で上記張出部を切断し、
上記梁状の張出部を、当該張出部の根元から先端に向かうにつれて、1段又は2段以上の段部を形成して、幅が階段状に徐々に狭くなる形状とする。
1A フランジ対応部
2 張出部
2A 段部の1段目までの部分
2B 段部の1段目以降の部分
3、3A 割れ懸念部
10 プレス部品
13 フランジ部
H 張出量(段部の1段目までの部分)
H1 張出量(段部の1段目以降の部分、第2の張出量)
W 幅(段部の1段目までの部分)
W1 幅(段部の1段目以降の部分、第2の幅)
Claims (10)
- 1又は2以上のプレス成形を経てプレス部品を製造するプレス部品の製造方法において、
上記1又は2以上のプレス成形のうちの少なくとも1つのプレス成形で、被プレス材の端部に伸びフランジ変形による端部割れが懸念されると推定される場合、上記端部割れが懸念されるプレス成形の前処理として、上記端部割れが懸念される箇所を少なくとも含む端部の切断処理を2度行う2度切断処理を有し、
上記2度切断処理は、1度目の切断の際に、上記端部割れが懸念される箇所を含む位置に部分的な梁状の張出部を形成する切断を行い、2度目の切断で上記張出部を切断し、
上記梁状の張出部を、当該張出部の根元から先端に向かうにつれて、1段又は2段以上の段部を有して幅が階段状に徐々に狭くなる形状とする、
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。 - 上記張出部の根元での幅を、上記端部割れが懸念されるフランジ部の端縁の長さの1/2以下の長さとする、ことを特徴とする請求項1に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記張出部の根元での幅を、上記被プレス材の板厚の300倍以下とし、
上記張出部における、根元の幅より狭い、上記段部の1段目以降の幅を、上記被プレス材の板厚の150倍以下とした、ことを特徴とする請求項1に記載したプレス部品の製造方法。 - 上記張出部の張出量は、上記段部の1段目までの張出量が、上記被プレス材の板厚の20倍以下であり、上記1段目以降の張出量が、上記被プレス材の板厚の30倍以下である、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記張出部の張出量は、上記段部の1段目以降の張出量が15.0mm以下である、ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記張出部の張出量は、上記段部の1段目以降の張出量が、上記段部の1段目までの張出量よりも長い、ことを請求項1~請求項5のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記梁状の張出部は、2段以上の段部を有する、ことを請求項1~請求項6のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記プレス成形は、フォーム成形又はドロー成形であることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
- 請求項1~請求項8のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法で製造され、
上記端部割れが懸念される箇所を少なくとも含む端部の切断処理を2度行う上記2度切断処理が施されて製造されたプレス部品。 - 1又は2以上のプレス成形を経てプレス部品となるブランク材の製造方法において、
上記1又は2以上のプレス成形のうちの少なくとも1つのプレス成形で、被プレス材の端部に伸びフランジ変形による端部割れが懸念されると推定される場合、上記端部割れが懸念される箇所を少なくとも含む端部の切断処理を2度行う2度切断処理を有し、
上記2度切断処理は、1度目の切断の際に、上記端部割れが懸念される箇所を含む位置に部分的な梁状の張出部を形成する切断を行い、2度目の切断で上記張出部を切断し、
上記梁状の張出部を、当該張出部の根元から先端に向かうにつれて、1段又は2段以上の段部を有して幅が階段状に徐々に狭くなる形状とする、ことを特徴とするブランク材の製造方法。
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