JP2009245477A - 垂直磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、上方磁気記録層の結晶粒子の間隔を工夫することで、オーバーライト特性を向上させた連続層を備える垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明にかかる垂直磁気記録媒体100は、ディスク基体110上に少なくとも上方磁気記録層122b、連続層124をこの順に備える垂直磁気記録媒体であり、上方磁気記録層122bは柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、上方磁気記録層122bの粒界部は、複数の種類の酸化物を含有し、連続層124は、ディスク基体110主表面の面内方向に磁気的に連続した薄膜からなる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明にかかる垂直磁気記録媒体100は、ディスク基体110上に少なくとも上方磁気記録層122b、連続層124をこの順に備える垂直磁気記録媒体であり、上方磁気記録層122bは柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、上方磁気記録層122bの粒界部は、複数の種類の酸化物を含有し、連続層124は、ディスク基体110主表面の面内方向に磁気的に連続した薄膜からなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される垂直磁気記録媒体に関する。
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスクにして、1枚あたり160GBを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような要請にこたえるためには1平方インチあたり250GBitを超える情報記録密度を実現することが求められる。
HDD等に用いられる磁気ディスクにおいて高記録密度を達成するために、近年、垂直磁気記録方式の磁気ディスク(垂直磁気記録ディスク)が提案されている。従来の面内磁気記録方式は磁気記録層の磁化容易軸が基体面の面内方向に配向されていたが、垂直磁気記録方式は磁化容易軸が基体面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は面内記録方式に比べて、高密度記録時に、より熱揺らぎ現象を抑制することができるので、高記録密度化に対して好適である。
従来、磁気記録層としては、CoCrPt−SiO2やCoCrPt−TiO2が広く用いられている。Coはhcp構造(六方最密結晶格子)の結晶が柱状に成長し、CrおよびSiO2(またはTiO2)が偏析して非磁性の粒界を形成する。かかるグラニュラー構造を用いることにより、物理的に独立した微細な磁性粒子を形成しやすく、高記録密度を達成しやすい。
記録密度をより高める従来技術として、例えば特許文献1に記載の垂直磁気記録媒体は、磁気記録層を2層備え、これによって保磁力を向上させて記録密度を高めている。ただし、各層とも、含有する酸化物は1種類(SiO2)であり、組成比が各層で異なる。
また、例えば特許文献2〜4に記載の垂直磁気記録媒体では、磁気記録層は単層であるものの、複数種類の酸化物(以下、「複合酸化物」という)を含有している。磁気記録層に複合酸化物を含有させることにより、単一の酸化物を含有させる場合と比較して、保磁力Hcは格段に向上し、記録密度が高まる。
とりわけ、特許文献3では、磁気記録層に用いられる複数の酸化物として、酸化物生成標準自由エネルギーの差が大きなものを選択している。これにより、酸化物間に酸化還元反応が起こりやすくなり、その発生したエネルギーによって拡散が促進され、結晶粒界部がさらに成長して、磁性粒子間の磁気的相互作用を低減することができるとしている。
特開2006−155861号公報
特開2007−257762号公報
特開2005−100537号公報
特開2005−116025号公報
しかし、特許文献2〜4の磁気記録層のように、磁気記録層に複合酸化物を含有させれば、保磁力Hcは向上するが、SNRが低下する。
また複合酸化物の作用によって、磁気記録層の保磁力Hcを向上させると、高記録密度化が達成できる反面、磁気ヘッドによる書き込みが困難になる(オーバーライト特性が劣化する)傾向にある。
本発明は、垂直磁気記録媒体の、複合酸化物を含有する磁気記録層に生じる上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複合酸化物を含有することによって向上した磁気記録層の保磁力Hcをある程度抑制することで、オーバーライト特性を向上させ、SNRを高めた垂直磁気記録媒体を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の発明者らが鋭意検討したところ、複合酸化物を含有する非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の上方磁気記録層の上に、高い垂直磁気異方性を示す連続層を設けることで、オーバーライト特性が向上し、SNRが高まることを見出し、本発明を完成するに到った。つまり、本発明者らは、磁気記録層に複合酸化物を用い、この磁気記録層中の磁性粒子間の磁気的交換結合を目的とした連続層を設けることで、トレードオフの関係にある保磁力HcとSNRとを両立させられることを見出し、本発明を完成するに至った。なお連続層は補助記録層またはキャップ層とも呼ばれるが、本願では、特に断らない限り、連続層と呼ぶこととする。
すなわち上記課題を解決するために、本発明にかかる垂直磁気記録媒体の代表的な構成は、基体上に少なくとも上方磁気記録層、連続層をこの順に備える垂直磁気記録媒体において、上方磁気記録層は柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、上方磁気記録層の粒界部は、複数の種類の酸化物を含有し、連続層は、基体主表面の面内方向に磁気的に連続した薄膜からなることを特徴とする。
このように、複合酸化物を含有する上方磁気記録層の上に、高い垂直磁気異方性を示す連続層が形成されることにより、SNRが向上する。
すなわち、磁気記録層が複合酸化物を含有しているだけでは、例えば2.5インチディスクで160GB以上などの、将来の高記録密度化された磁気記録媒体を製造するうえで、SNRが悪化し、実用に耐えるものにはならない。しかし、連続層を設ければ、磁気記録層に含有される複合酸化物によって向上した保磁力Hcを、連続層が少々抑制することとなっても、SNRが向上するため、実用に十分耐えられる磁気記録媒体を製造できる。
また連続層を設ければ、飽和磁化Msが向上し、記録媒体への書き込みやすさ、すなわちオーバーライト特性も向上する。
さらに連続層によって、いわゆるWATE(Wide Area Track Erasure)、すなわち、書込みの対象となるトラックを中心に数μmにわたって記録情報が消失する現象を低減できる。WATEは、磁気記録層に強い磁界を印加したときに、隣接トラックへの漏れ磁場が大きくなって生じていた問題であるが、連続層によって、磁気記録層の逆磁区核形成磁界Hnは絶対値の大きな負の値となるため、WATEは低減する傾向にある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる垂直磁気記録媒体の他の代表的な構成は、基体上に少なくとも上方磁気記録層、連続層をこの順に備える垂直磁気記録媒体において、上方磁気記録層は柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、上方磁気記録層の粒界部は、複数の種類の酸化物を含有し、連続層は、上方磁気記録層の磁性を有する結晶粒子間の磁気的交換結合を行うよう構成された強磁性層であることを特徴とする。
上記の構成によれば、磁気記録層に複合酸化物を用い、この磁気記録層中の磁性粒子間の磁気的交換結合を目的とした連続層を設けることで、トレードオフの関係にある保磁力HcとSNRとを両立させられるからである。
上記の連続層は、上方磁気記録層と接していて、Coを主成分とし、Crを含み、酸化物を含まない層からなる強磁性層としてよい。
上述の上方磁気記録層が含有する複数の種類の酸化物は、SiO2とTiO2、Cr2O3とTiO2、Y2O3とSiO2、のいずれかの組合せとしてよい。これらの複合酸化物を含有させたときに、とりわけ、SNRを向上させることができるからである。
なお、複数の種類の酸化物は、Cr2O3とSiO2、Ta2O5とSiO2、Ta2O5とTiO2、のいずれかの組合せとしてもよい。
上述の連続層の組成は、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtBCuのいずれかとしてよい。いずれの組成の連続層を用いても、オーバーライト特性が向上してSNRが高まからである。
上述の垂直磁気記録媒体は、上方磁気記録層の下に下方磁気記録層をさらに備え、下方磁気記録層は柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、下方磁気記録層の粒界部は、1つ以上の種類の酸化物を含有してよい。
下方磁気記録層をさらに備えることによって、オーバーライト特性が向上してSNRが高まるからである。
上述の上方磁気記録層の膜厚は、連続層の膜厚の約0.7〜2倍としてよい。上述の下方磁気記録層の膜厚は、連続層の膜厚の約0.2〜2倍としてよい。
これにより、高いオーバーライト特性を得て、好適なSNRを維持することができる。
本発明にかかる垂直磁気記録媒体によれば、複合酸化物を含有することによって向上した磁気記録層の保磁力Hcをある程度抑制することで、オーバーライト特性を向上させ、SNRを高めた垂直磁気記録媒体を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(実施形態)
本発明にかかる垂直磁気記録媒体の実施形態について説明する。図1は本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100の構成を説明する図である。図1に示す垂直磁気記録媒体100は、基体としてのディスク基体110、付着層112、第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114c、前下地層116、第1下地層118a、第2下地層118b、上方磁気記録層122b、連続層124、媒体保護層126、潤滑層128で構成されている。なお第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114cは、あわせて軟磁性層114を構成する。第1下地層118aと第2下地層118bはあわせて下地層118を構成する。
本発明にかかる垂直磁気記録媒体の実施形態について説明する。図1は本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100の構成を説明する図である。図1に示す垂直磁気記録媒体100は、基体としてのディスク基体110、付着層112、第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114c、前下地層116、第1下地層118a、第2下地層118b、上方磁気記録層122b、連続層124、媒体保護層126、潤滑層128で構成されている。なお第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114cは、あわせて軟磁性層114を構成する。第1下地層118aと第2下地層118bはあわせて下地層118を構成する。
以下に説明するように、本実施形態に示す垂直磁気記録媒体100は、上方磁気記録層122bに複数の種類の酸化物(複合酸化物)を含有させることにより、非磁性の粒界に複合酸化物を偏析させている。
ディスク基体110は、アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円板状に成型したガラスディスクを用いることができる。なおガラスディスクの種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。ガラスディスクの材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性のディスク基体110を得ることができる。
ディスク基体110上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて付着層112から連続層124まで順次成膜を行い、媒体保護層126はCVD法により成膜することができる。この後、潤滑層128をディップコート法により形成することができる。なお、生産性が高いという点で、インライン型成膜方法を用いることも好ましい。以下、各層の構成および製造方法について説明する。
付着層112は非晶質の下地層であって、ディスク基体110に接して形成され、この上に成膜される軟磁性層114とディスク基体110との剥離強度を高める機能と、この上に成膜される各層の結晶グレインを微細化及び均一化させる機能を備えている。付着層112は、ディスク基体110がアモルファスガラスからなる場合、そのアモルファスガラス表面に対応させる為にアモルファスの合金膜とすることが好ましい。
付着層112としては、例えばCrTi系非晶質層、CoW系非晶質層、CrW系非晶質層、CrTa系非晶質層、CrNb系非晶質層から選択することができる。中でもCoW系合金膜は、微結晶を含むアモルファス金属膜を形成するので特に好ましい。付着層112は単一材料からなる単層でも良いが、複数層を積層して形成してもよい。例えばCrTi層の上にCoW層またはCrW層を形成してもよい。またこれらの付着層112は、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、又は酸素を含む材料によってスパッタを行うか、もしくは表面層をこれらのガスで暴露したものであることが好ましい。
軟磁性層114は、垂直磁気記録方式において記録層に垂直方向に磁束を通過させるために、記録時に一時的に磁路を形成する層である。軟磁性層114は第1軟磁性層114aと第2軟磁性層114cの間に非磁性のスペーサ層114bを介在させることによって、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成することができる。これにより軟磁性層114の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、磁化方向の垂直成分が極めて少なくなるため、軟磁性層114から生じるノイズを低減することができる。第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成としては、CoTaZrなどのコバルト系合金、CoCrFeBなどのCo−Fe系合金、[Ni−Fe/Sn]n多層構造のようなNi−Fe系合金などを用いることができる。
前下地層116は非磁性の合金層であり、軟磁性層114を防護する作用と、この上に成膜される下地層118に含まれる六方細密充填構造(hcp構造)の磁化容易軸をディスク垂直方向に配向させる機能を備える。前下地層116は面心立方構造(fcc構造)の(111)面、または体心立方構造(bcc構造)の(110)面がディスク基体110の主表面と平行となっていることが好ましい。また前下地層116は、これらの結晶構造とアモルファスとが混在した構成としてもよい。前下地層の材質としては、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nb、Taから選択することができる。さらにこれらの金属を主成分とし、Ti、V、Ta、Cr、Mo、Wのいずれか1つ以上の添加元素を含む合金としてもよい。例えばfcc構造としてはNiW、CuW、CuCr、bcc構造としてはTaを好適に選択することができる。
下地層118はhcp構造であって、上方磁気記録層122bのCoのhcp構造の結晶をグラニュラー構造として成長させる作用を有している。したがって、下地層118の結晶配向性が高いほど、すなわち下地層118の結晶の(0001)面がディスク基体110の主表面と平行になっているほど、磁気記録層22の配向性を向上させることができる。下地層の材質としてはRuが代表的であるが、その他に、RuCr、RuCoから選択することができる。Ruはhcp構造をとり、また結晶の格子間隔がCoと近いため、Coを主成分とする磁気記録層を良好に配向させることができる。
下地層118をRuとした場合において、スパッタ時のガス圧を変更することによりRuからなる2層構造とすることができる。具体的には、上層側の第2下地層118bを形成する際に、下層側の第1下地層118aを形成するときよりもArのガス圧を高くする。ガス圧を高くするとスパッタリングされるプラズマイオンの自由移動距離が短くなるため、成膜速度が遅くなり、結晶配向性を改善することができる。また高圧にすることにより、結晶格子の大きさが小さくなる。Ruの結晶格子の大きさはCoの結晶格子よりも大きいため、Ruの結晶格子を小さくすればCoのそれに近づき、Coのグラニュラー層の結晶配向性をさらに向上させることができる。
上方磁気記録層122bは、Co系合金、Fe系合金、Ni系合金から選択される硬磁性体の磁性粒の周囲に非磁性物質を偏析させて粒界を形成した柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造を有した強磁性層である。
さらに本実施形態では、上方磁気記録層122bの粒界部は、非磁性物質として、複数の種類の酸化物を含有する。このとき含有する非磁性物質の種類には限定がないが、特に、SiO2とTiO2、Cr2O3とTiO2、Y2O3とSiO2、のいずれかの組合せとしてよい。上方磁気記録層122bは、粒界部に複合酸化物(複数の種類の酸化物)の例としてCr2O3とTiO2を含有し、CoCrPt−Cr2O3−TiO2のhcp結晶構造を形成することができる。
連続層124は、上方磁気記録層122bの非磁性物質で分離された磁性粒子間の磁気的交換結合を行うよう構成された層である。連続層124はグラニュラー構造を有する上方磁気記録層122bの上に、ディスク基体110主表面の面内方向に磁気的に連続した薄膜からなる。連続層124を設けることにより上方磁気記録層122bの高密度記録性と低ノイズ性に加えて、逆磁区核形成磁界Hnの向上、耐熱揺らぎ特性の改善、オーバーライト特性の改善を図ることができる。
連続層124の組成は、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtBCuのいずれかとしてよい。いずれの組成の連続層を用いても、オーバーライト特性が向上し、SNRが高まるからである。また、連続層124は、上方磁気記録層122bと比べて、保磁力Hcが小さい。また、連続層124は、上方磁気記録層122bと磁気ヘッドとの距離をより小さくするために薄膜であることがより好ましい。そして、連続層124は、磁性粒子間の磁気的交換結合を行わせるために、上方磁気記録層122bと接していることがより好ましい。
なお連続層124として、単一の層ではなく、高い垂直磁気異方性かつ高い飽和磁化MSを示す薄膜(連続層)を形成するCGC構造(Coupled Granular Continuous)としてもよい。なおCGC構造は、グラニュラー構造を有する磁気記録層と、PdやPtなどの非磁性物質からなる薄膜のカップリング制御層と、CoBとPdとの薄膜を積層した交互積層膜からなる交換エネルギー制御層とから構成することができる。
媒体保護層126は、真空を保ったままカーボンをCVD法により成膜して形成することができる。媒体保護層126は、磁気ヘッドの衝撃から垂直磁気記録層を防護するための保護層である。一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタ法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に垂直磁気記録層を防護することができる。
潤滑層128は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜することができる。PFPEは長い鎖状の分子構造を有し、媒体保護層126表面のN原子と高い親和性をもって結合する。この潤滑層128の作用により、垂直磁気記録媒体100の表面に磁気ヘッドが接触しても、媒体保護層126の損傷や欠損を防止することができる。
図2は本実施形態にかかる他の垂直磁気記録媒体200の構成を説明する図である。図1と異なる点は、上方磁気記録層122bの下に、下方磁気記録層122aをさらに備えることである。下方磁気記録層122aは柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、下方磁気記録層122aの粒界部は、1つ以上の種類の酸化物を含有する。
下方磁気記録層122aをさらに備えることによって、オーバーライト特性がより向上し、SNRが高まる。
上述の下方磁気記録層122aが含有する1つ以上の種類の酸化物は、酸化珪素(SiOx)、クロム(Cr)、酸化クロム(CrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコン(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)から選択された酸化物としてよい。
酸化物としては、磁性粒(磁性グレイン)間の交換相互作用が抑制、または、遮断されるように、磁性粒の周囲に粒界部を形成しうる物質であればよい。特に、SiO2およびTiO2のいずれをも含んでいることが好ましい。SiO2は磁性粒子の微細化および孤立化を促進し、TiO2は電磁変換特性(特にSNR)を向上させる特性がある。そしてこれらの酸化物を複合させて磁気記録層の粒界に偏析させることにより、双方の利益を享受することができる。
図3は、図2の垂直磁気記録媒体200を説明するための説明図である。図3に示すように、本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体200では、下方磁気記録層122a中の粒界は、複合酸化物を含有する。上方磁気記録層122bの粒界は、複合酸化物を含有してもよいし、単一の酸化物を含有してもよい。
上述の上方磁気記録層122bの膜厚は、連続層124の膜厚の約0.7〜2倍としてよい。上述の下方磁気記録層122aの膜厚は、連続層の膜厚の約0.2〜2倍としてよい。これにより、高いオーバーライト特性を得て好適なSNRを維持することができる。
以上の製造工程により、垂直磁気記録媒体200を得ることができる。以下に、実施例と比較例を用いて本発明の有効性について説明する。
(実施例と評価)
以下、図2の垂直磁気記録媒体200を用いて、製造工程について説明する。ディスク基体110上に、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、付着層112から連続層124まで順次成膜を行った。付着層112は、CrTiとした。軟磁性層114は、第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成はCoCrFeBとし、スペーサ層114bの組成はRuとした。前下地層116の組成はfcc構造のNiW合金とした。下地層118は、第1下地層118aは高圧Ar下でRuを成膜し、第2下地層118bは低圧Ar下でRuを成膜した。下方磁気記録層122aおよび上方磁気記録層122bは下記の実施例および比較例の構成で形成した。連続層124の組成はCoCrPtBとした。媒体保護層126はCVD法によりC2H4およびCNを用いて成膜し、潤滑層128はディップコート法によりPFPEを用いて形成した。
以下、図2の垂直磁気記録媒体200を用いて、製造工程について説明する。ディスク基体110上に、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、付着層112から連続層124まで順次成膜を行った。付着層112は、CrTiとした。軟磁性層114は、第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成はCoCrFeBとし、スペーサ層114bの組成はRuとした。前下地層116の組成はfcc構造のNiW合金とした。下地層118は、第1下地層118aは高圧Ar下でRuを成膜し、第2下地層118bは低圧Ar下でRuを成膜した。下方磁気記録層122aおよび上方磁気記録層122bは下記の実施例および比較例の構成で形成した。連続層124の組成はCoCrPtBとした。媒体保護層126はCVD法によりC2H4およびCNを用いて成膜し、潤滑層128はディップコート法によりPFPEを用いて形成した。
本実施例において、連続層124の膜厚を8、6、4、3、2、0nmと変化させ、下方磁気記録層122aと上方磁気記録層122bとの膜厚の合計は14nmとした。
図4は、図1のように磁気記録層が1層のみ(上方磁気記録層122b)の場合に、上方磁気記録層122bの組成、連続層124の有無および膜厚に応じて、垂直磁気記録媒体のオーバーライト特性および保磁力Hcがどのように変化するかを定性的に示すグラフである。
単一の酸化物を含有する上方磁気記録層122bの上に連続層124がある場合を「△」で示す。複合酸化物を含有する上方磁気記録層122bの上に連続層124がある場合を「□」で示す。複合酸化物を含有する上方磁気記録層122bの上に連続層124がない場合を、「*」で示す。
単一酸化物+連続層(△)と複合酸化物+連続層(□)とを比較すれば分かるように、複合酸化物を用いる事により、保磁力Hcが向上し、ヘッドの書き込みが困難になる(オーバーライト特性は劣化。オーバーライト特性は負の値で絶対値が大きいほど優れている)。
複合酸化物(*)と複合酸化物+連続層(□)とを比較すれば分かるように、連続層124を設けると、保磁力Hcは向上し、しかもオーバーライト特性もほとんどの場合、向上し、書き込みやすくなる。その理由として考えられるのは、飽和磁化Msが高くなるから、ということである。
しかも、後述の図5に示すように、連続層124を設ける場合、さらに逆磁区核形成磁界Hnも向上する。したがって、垂直磁気記録媒体を高記録密度化するうえで、連続層124は非常に好ましいものと言える。
図5は、本発明の実施例1〜5と比較例1〜5との特性を比較する図である。実施例1〜3では、上方磁気記録層122bだけを有する図1に示すような垂直磁気記録媒体100において、上方磁気記録層122bが含有する複合酸化物を様々に変更したものである。実施例4〜5は、さらに下方磁気記録層122aを有する図2に示すような垂直磁気記録媒体200において、下方磁気記録層122aが含有する酸化物を、単一の酸化物とした場合(実施例4)および複合酸化物とした場合(実施例5)をそれぞれ示す。
比較例1〜2では、連続層124が設けられているが、上方磁気記録層122bは単一の酸化物しか含有していない。比較例3〜5では、上方磁気記録層122bは複合酸化物または単一の酸化物を含有しているが、連続層124が設けられていない。
なお、連続層124が設けられている実施例1〜5および比較例1〜2では、同一の組成および膜厚の連続層124を用いている。
実施例1〜5、比較例1〜2に示すように、連続層124が存在する場合には、SNRが良好であり、逆磁区核形成磁界Hnも絶対値の高い負の値となり、高記録密度化を図ることが可能である。これに対し、比較例3〜5に示すように、連続層124が存在しない場合には、SNRは低く、逆磁区核形成磁界Hn正の値になってしまっている。
熱揺らぎ安定性の観点からは、逆磁区核形成磁界(−Hn)は1500(Oe)以上が好ましい。(−Hn)が1500(Oe)以上にならない場合、熱揺らぎ耐性が著しく悪化する。
実施例1〜3に示すように、上方磁気記録層122bが複合酸化物を含有し、しかも連続層124が設けられている場合、SNRが高く、逆磁区核形成磁界Hnも絶対値の高い負の値となり、高記録密度化を図ることが可能である。このように、複合酸化物を含有する上方磁気記録層122bの上に、高い垂直磁気異方性を示す連続層124が形成されることにより、SNRが向上する。
実施例4〜5のように、下方磁気記録層122aを設ければ、さらにSNRおよび逆磁区核形成磁界Hnが改善される。
一方、比較例1〜2のように、連続層124が設けられていても、上方磁気記録層122bが単一の酸化物しか含有していない場合、実用に耐えられないほどではないが、複合酸化物を含有する場合に比較して、SNRが劣る。
比較例3〜5のように、連続層が設けられていない場合は、いずれも、逆磁区核形成磁界Hnが実用に耐えられないほど劣化してしまう。例えば、比較例3のように磁気記録層が複合酸化物を含有しているだけでは、例えば2.5インチディスクで160GB以上などの、将来の高記録密度化された磁気記録媒体を製造するうえで、実用に耐えるものにはならない。
しかし、連続層124を設けて実施例1のようにすれば、上方磁気記録層122bに含有される複合酸化物によって向上した保磁力Hcを、連続層124が少々抑制することとなっても、逆磁区核形成磁界Hnが格段に向上し、SNRも向上するため、高記録密度化に十分耐えられる磁気記録媒体を製造できる。また連続層124を設ければ、飽和磁化Msが向上し、記録媒体への書き込みやすさ、すなわちオーバーライト特性も向上する。さらに連続層124の効果として、既に述べたように、WATEの問題も低減できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態および実施例においては、磁気記録層を下方磁気記録層と上方磁気記録層の2層からなると説明した。しかし磁気記録層がさらに3以上の層からなる場合であっても、上記と同様に本発明の利益を得ることができる。
本発明は、垂直磁気記録方式のHDDなどに搭載される垂直磁気記録媒体として利用可能である。
100、200 …垂直磁気記録媒体
110 …ディスク基体
112 …付着層
114 …軟磁性層
114a …第1軟磁性層
114b …スペーサ層
114c …第2軟磁性層
116 …前下地層
118 …下地層
118a …第1下地層
118b …第2下地層
122a …下方磁気記録層
122b …上方磁気記録層
124 …連続層
126 …媒体保護層
128 …潤滑層
110 …ディスク基体
112 …付着層
114 …軟磁性層
114a …第1軟磁性層
114b …スペーサ層
114c …第2軟磁性層
116 …前下地層
118 …下地層
118a …第1下地層
118b …第2下地層
122a …下方磁気記録層
122b …上方磁気記録層
124 …連続層
126 …媒体保護層
128 …潤滑層
Claims (8)
- 基体上に少なくとも上方磁気記録層、連続層をこの順に備える垂直磁気記録媒体において、
前記上方磁気記録層は柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、
前記上方磁気記録層の粒界部は、複数の種類の酸化物を含有し、
前記連続層は、基体主表面の面内方向に磁気的に連続した薄膜からなることを特徴とする垂直磁気記録媒体。 - 基体上に少なくとも上方磁気記録層、連続層をこの順に備える垂直磁気記録媒体において、
前記上方磁気記録層は柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、
前記上方磁気記録層の粒界部は、複数の種類の酸化物を含有し、
前記連続層は、前記上方磁気記録層の磁性を有する結晶粒子間の磁気的交換結合を行うよう構成された強磁性層であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。 - 前記連続層は、前記上方磁気記録層と接していて、Coを主成分とし、Crを含み、酸化物を含まない層からなる強磁性層であることを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記上方磁気記録層が含有する複数の種類の酸化物は、SiO2とTiO2、Cr2O3とTiO2、Y2O3とSiO2、のいずれかの組合せであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記連続層の組成は、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtBCuのいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
- 当該垂直磁気記録媒体は、前記上方磁気記録層の下に下方磁気記録層をさらに備え、
前記下方磁気記録層は柱状に成長した磁性を有する結晶粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の強磁性層であり、
前記下方磁気記録層の粒界部は、1つ以上の種類の酸化物を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。 - 前記上方磁気記録層の膜厚は、前記連続層の膜厚の約0.7〜2倍であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記下方磁気記録層の膜厚は、前記連続層の膜厚の約0.2〜2倍であることを特徴とする請求項6または7に記載の垂直磁気記録媒体。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2012020726A1 (ja) | 2010-08-09 | 2012-02-16 | 株式会社ファルマデザイン | カゼインキナーゼ1δ及びカゼインキナーゼ1ε阻害剤 |
JP2016018579A (ja) * | 2014-07-10 | 2016-02-01 | 株式会社東芝 | 磁気記録再生装置および磁気記録再生方法 |
-
2008
- 2008-03-28 JP JP2008088120A patent/JP2009245477A/ja active Pending
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