JP2009218125A - リチウム電池 - Google Patents

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良子 神田
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Abstract

【課題】負極層と固体電解質層との界面における内部抵抗を低減し、もって、放電特性を向上させたリチウム電池を提供する。
【解決手段】正極層13と、負極層14と、これらの層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質層(SE層15)とを備える。負極層14は、気相堆積法によりSE層15上に形成された、少なくともリチウムを含む薄膜である。また、負極層14の厚みをTn、SE層15の厚みをTsとした場合、0.01<Tn/Ts<0.5の関係式を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解質層を備えるリチウム電池に関する。
携帯機器といった比較的小型の電気機器の電源に、リチウム電池が利用されている。近年、このリチウム電池として、正極層と負極層との間のリチウムイオンの伝導に固体電解質層を利用した全固体型リチウム電池が提案されている。
例えば、特許文献1に記載のリチウム電池は、LiS−Pを使用した固体電解質部材(固体電解質層)の一方の面に正極を貼り合わせ、その後、固体電解質層の他方の面にリチウム金属箔(負極層)、銅箔(負極集電体)の順に貼り合わせてリチウム電池を作製している。
特開2007−311084号公報
しかし、上記特許文献1のリチウム電池では、リチウム電池の負極層としてリチウム金属箔を固体電解質層に貼り合わせて製造しているため、リチウム金属箔と固体電解質層との接触が十分でなく(接触面積が小さく)、電池の内部抵抗を十分に低減することができなかった。換言すれば、リチウム電池の内部抵抗を低減することで、電池の放電特性を向上させる余地があり、この点を改善することが望まれている。
また、近年では、携帯機器の小型化に伴い、リチウム電池のさらなる薄型化が求められているが、リチウム金属箔を用いたリチウム電池では、この金属箔の製造上の問題からその要請に応えることができなかった。具体的には、リチウム金属箔は、現在の製造技術では30μm程度までしか薄くすることができず、しかも、このように薄い金属箔は強度に乏しいため扱いが難しかった。そのため、リチウム電池を製造する際のリチウム金属箔としては、薄くても100μm程度のものを使用しており、負極層がリチウム電池の薄型化の妨げとなっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主目的は、負極層と固体電解質層との界面における内部抵抗を低減し、もって、放電特性を向上させたリチウム電池を提供することにある。また、本発明の別の目的は、薄型化の要請に応えたリチウム電池を提供することにある。
本発明リチウム電池は、正極層と、負極層と、これらの層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質層とを備える。そして、本発明リチウム電池は、電池に備わる負極層が、気相堆積法により固体電解質層上に形成された、少なくともリチウムを含む薄膜であり、かつ、負極層厚さTnと固体電解質層厚さTsの比であるTn/Tsが0.01超0.5未満の範囲にあることを特徴とする。
リチウム自身を負極層の主要な構成要素とすることにより、負極層が薄くても容量の大きなリチウム電池とすることができる。また、この負極層は、気相堆積法により固体電解質層上に形成されているので、負極層と固体電解質層との接触を十分に確保することができ、両層の界面近傍における電気抵抗を小さくすることができる。特に、負極層の厚さTnと固体電解質層の厚さTsの比であるTn/Tsを0.01超0.5未満とすることにより、内部抵抗が低く、放電容量に優れた電池とすることができ、その結果、放電特性に優れたリチウム電池とできる。さらに、気相堆積法によれば、負極層の厚さを容易に薄くできるので、リチウム電池を薄型化できる。
上記Tn/Tsが0.01以下であると、Tnが薄すぎるため固体電解質層に対する負極層の被覆が不十分で、両層の接触面積を十分に確保することが難しい。そのため、リチウム電池の内部抵抗が高くなる傾向にある。一方、Tn/Tsが0.5以上であると、気相堆積法で負極層を形成する際に、固体電解質層に生じたピンホールに負極層が入り込んで、正・負極間の短絡を生じる可能性がある。このTn/Tsのより好ましい範囲は、0.02〜0.4である。
本発明リチウム電池に備わる負極層の厚みTnは、0.06μm〜2.4μmの範囲とすることが好ましい。このような負極層厚さTnを有することにより、種々の用途に使用可能な放電容量を備えるリチウム電池とすることができる。負極層の厚さTnのより好ましい範囲は、0.1μm〜2μmである。
また、本発明のリチウム電池に備わる固体電解質層の厚みTsは、0.1μm〜30μmの範囲とすることが好ましい。このような固体電解質層厚さTsを有することにより、正・負極層間の絶縁を確実に防止しつつ、両極層間でのリチウムイオンの伝導を阻害することがないリチウム電池とすることができる。固体電解質層の厚さTsのより好ましい範囲は、0.5μm〜20μmである。
本発明の一形態として、固体電解質層は、少なくともLiS−Pを含むことが好ましい。LiS−Pを含有する固体電解質層は、リチウム伝導性に優れるので、リチウム電池の内部抵抗を低減することに寄与する。
本発明の一形態として、正極層は、Mn,Fe,Co,Niから選択される少なくとも一種以上の元素とリチウムとの酸化物であることが好ましい。上記元素を含む正極層は、リチウム電池の正極活物質を構成する元素として好適であり、リチウム電池の放電特性を向上させることができる。
本発明のリチウム電池は、内部抵抗が低く、放電特性に優れるので、種々の携帯機器の電源として広範な利用が可能である。しかも、固体電解質層を十分に被覆するように負極層を形成しても、負極層が厚くなりすぎることがないので、近年、小型化が進んでいる携帯機器の電源として好適に利用可能である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
≪全体構成≫
図1は、本実施の形態におけるリチウム電池の縦断面図である。このリチウム電池1は、正極集電体層11の上に、正極層13、固体電解質層(SE層)15、負極層14、負極集電体層12の順に積層された積層構造を有している。本発明リチウム電池1は、負極層14の厚さをTn、SE層15の厚さをTsとしたときに、Tn/Tsの範囲が規定されている。以下、各構成を詳細に説明すると共に、Tn,TsおよびTn/Tsについても述べる。
≪各構成部材≫
(正極集電体層)
図1に示す正極集電体層11は、所定の厚さを有する金属製の薄板であり、後述する各層を支持する基板の役割を兼ねている。正極集電体層11としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレスから選択される1種が好適に利用できる。その他、絶縁性の基板の上に金属膜を形成して正極集電体層としても良い。金属膜からなる集電体11は、PVD法(物理的気相蒸着法)やCVD法(化学的気相蒸着法)により形成することができる。PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法が、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。
(正極層)
正極層13は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層である。正極活物質としては、Mn,Fe,Co,Niから選択される少なくとも一種以上の元素とリチウムとの酸化物が好適に利用可能である。例えば、LiCoOやLiNiO、LiMnO、LiNi0.5Mn0.5、LiCo0.5Fe0.5などを挙げることができる。
正極層13は、さらに導電助剤を含んでいても良い。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックといったカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン、アルミニウムやニッケルなどの金属繊維からなるものが利用できる。特に、カーボンブラックは、少量で高い導電性を確保できて好ましい。
上述した正極層13の形成方法としては、PVD法やCVD法などの乾式法あるいは塗布法やスクリーン印刷法などの湿式法を使用できる。湿式法を利用するのであれば、正極層に結着剤を含有させて、活物質同士、あるいは、活物質と活物質以外の物質(電解質粒子や導電助剤)などを結着するようにしても良い。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などを使用することができる。
(固体電解質層)
固体電解質層(SE層)15は、硫化物で構成されるリチウムイオン伝導体とすることが好ましい。このSE層15は、リチウムイオン伝導度(20℃)が10-5S/cm以上あり、かつリチウムイオン輸率が0.999以上であることが好ましい。特に、リチウムイオン伝導度が10-4S/cm以上あり、かつリチウムイオン輸率が0.9999以上であれば良い。また、SE層15は、電子伝導率が10-8S/cm以下であることが好ましい。SE層15の材質としては、硫化物、例えば、Li、P、S、OからなるLi−P−S−Oや、LiSとPとからなるLi−P−Sのアモルファス膜あるいは多結晶膜などで構成することが好ましい。特に、LiSとPとからなるLi−P−Sで構成したSE層とすると、このSE層と負極層との間の界面抵抗値を低下させることができ、その結果、電池の性能を向上させることができる。
このSE層15の厚さTsは、0.1μm〜30μmの範囲とすることが好ましい。このようなSE層厚さTsを有することにより、正極層13と負極層14との間の絶縁を確実に防止しつつ、両極層間でのリチウムイオンの伝導を阻害することがないリチウム電池とすることができる。SE層15の厚さTsのより好ましい範囲は、0.5〜20μmである。
SE層15の形成方法としては、固相法や気相堆積法を使用することができる。固相法としては、例えば、メカニカルミリング法を使用して原料粉末を作製し、この原料粉末を焼結して形成することが挙げられる。一方、気相堆積法としては、例えば、PVD法、CVD法が挙げられる。気相堆積法によりSE層15を形成した場合、固相法によりSE層を形成した場合よりも、SE層15の厚さを薄くすることができる。
(負極集電体層)
負極集電体層12は、負極層14の上に形成される金属膜である。負極集電体層12としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びこれらの合金から選択される1種が好適に利用できる。なお、負極集電体層12も、正極集電体層11の場合と同様に、PVD法やCVD法で形成することができる。
(負極層)
負極層14は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。例えば、負極層14として、リチウム金属及びリチウム金属と合金を形成することのできる金属よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物又は合金が好適に使用できる。リチウムと合金を形成することのできる金属としては、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、及びインジウム(In)よりなる群より選ばれる少なくとも一つ(以下、合金化材料という)が良い。このような元素を含有した負極層14は、負極層自体に集電体としての機能を持たせることができ、かつリチウムイオンの吸蔵・放出能力が高く好ましい。
この負極層14の厚さTnは、0.06μm〜2.4μmの範囲とすることが好ましい。このような負極層厚さTnを有することにより、種々の用途に使用可能な放電容量を備えるリチウム電池とすることができる。負極層14の厚さTnのより好ましい範囲は、0.1μm〜2μmである。
また、負極層14の形成方法は、PVD法やCVD法などの気相堆積法を利用する。気相堆積法を利用することで、金属箔で負極層14を形成するよりも、負極層14の厚さを薄くできるし、SE層15に対する接触を十分に確保することができる。
(Tn/Tsの規定)
本発明リチウム電池1では、負極層14の厚さTnと、SE層15の厚さTsとの比であるTn/Tsを以下のように規定する。
0.01<Tn/Ts<0.5
負極層14とSE層15の厚さの比であるTn/Tsを0.01〜0.5とすることにより、SE層15に負極層14を十分に密着させることができるので、内部抵抗が低く、放電容量に優れた電池1とすることができる。特に、Tn/Tsは、0.02〜0.4であることが好ましい。Tn/Tsが0.01以下であると、Tnが薄すぎるため固体電解質層に対する負極層の被覆が不十分で、両層の接触面積を十分に確保することが難しい。そのため、リチウム電池の内部抵抗が高くなる傾向にある。一方、Tn/Tsが0.5以上であると、気相堆積法で負極層を形成する際に、固体電解質層に生じたピンホールに負極層が入り込んで、正・負極間の短絡を生じる可能性がある。
(その他)
図1には示していないが、正極層13とSE層15との間に、これら両層の界面近傍におけるリチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層を設けてもかまわない。リチウムイオンの偏在が生じると、その位置での電気抵抗が増加し、リチウム電池の放電容量が低下する。緩衝層としては、例えば、リチウムイオン伝導性酸化物、具体的には、LiLa(2−x)/3TiO(x=0.1〜0.5)、LiTi12、Li3.6Si0.60.4、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1.8Cr0.8Ti1.2(PO、LiNbO、LiTaO、Li1.4In0.4Ti1.6(POなどを挙げることができる。
以下、実施形態において説明した構成のコインセル型のリチウム電池(試料1〜7)を実際に作製し、電池の内部抵抗(Ωcm)を測定することで、電池の性能を評価した。
本実施例では、負極層の厚さを変えることで、負極層の厚さTnとSE層の厚さTsとの比率であるTn/Tsが異なる7つの試料を作製した。負極層以外の構成は、全ての試料で共通である。
<試料の作製>
正極集電体層として、厚さ100μmのSUS316Lからなる薄板を用意した。この薄板は、電池の各層を支持する基材の役割も兼ねる。
電子ビーム蒸着法により、正極集電体層の上にLiCoOからなる正極層を形成した。正極層の膜厚は、1μmであった。
エキシマレーザーアブレーション法により、正極層の上に、LiNbOを蒸着することで緩衝層を形成した。緩衝層の厚さは、0.02μm(20nm)であった。
エキシマレーザーアブレーション法により、緩衝層の上に、Li−P−S組成のSE層を形成した。SE層の形成の際は、硫化リチウム(LiS)及び五硫化リン(P)を原料とし、SE層におけるLi/Pのモル比が2.0となるように調整した。SE層の厚さは、5μmであった。
抵抗加熱蒸着法により、SE層の上にLiを蒸着することで負極層を形成した。負極層の形成の際、Liの蒸着量を調節することで負極層厚さの異なる6つの試料を作製した。試料1〜6の負極層厚さTnは、試料番号順に0.05μm、0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、2.5μmであった。また、厚さ100μmのLi金属箔をSE層上に圧着することで試料7を作製した。
<内部抵抗値の測定>
上述した試料1〜7のリチウム電池を使用して、交流インピーダンス法(電圧4Vで測定)により、各電池の内部抵抗(Ωcm)を測定した。これら測定の結果を表1に示す。
Figure 2009218125
表1の結果から明らかなように、Tn/Tsが0.01超0.5未満の試料2〜5は、電池の内部抵抗値が100Ωcmよりも小さいという良好な結果を示した。そのため、試料2〜5のリチウム電池は、放電特性に優れた電池であると言える。
一方、Tn/Tsが0.01である試料1は、電池の内部抵抗値が非常に大きく、1000Ωcmであった。また、Tn/Tsが0.5である試料6は、正・負極間で短絡を生じ、電池を駆動させることができなかった。これは、蒸着によりSE層の上に負極層を形成する際、SE層に生じていたピンホール内に負極層を構成するLiが入り込んだためであると考えられる。さらに、Li金属箔をSE層上に貼り付けた試料7は、正・負極間の短絡は生じないものの、電池の内部抵抗値が3000Ωcmであった。これは、負極層を貼り合わせにより形成したため、負極層とSE層との接触が十分に確保できなかったからである。
以上のことから、リチウム電池における負極層厚さTn、SE層厚さTsの比であるTn/Tsを規定することで、内部抵抗値が低く、放電特性に優れるリチウム電池とすることができることが明らかになった。
なお、本発明の実施形態は、上述したものに限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明のリチウム電池は、携帯機器の電源として好適に利用可能である。
実施形態に示すリチウム電池の概略構成図である。
符号の説明
1 リチウム電池
11 正極集電体層 12 負極集電体層 13 正極層 14 負極層 15 SE層

Claims (3)

  1. 正極層と、負極層と、これらの層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質層とを備えるリチウム電池であって、
    前記負極層は、気相堆積法により固体電解質層上に形成された、少なくともリチウムを含む薄膜であり、
    前記負極層の厚みをTn、前記固体電解質層の厚みをTsとした場合、以下の式を満たすことを特徴とするリチウム電池。
    0.01<Tn/Ts<0.5
  2. 前記固体電解質層は、少なくともLiS−Pを含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池。
  3. 前記正極層は、Mn,Fe,Co,Niから選択される少なくとも一種以上の元素とリチウムとの酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム電池。
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