JP2009203540A - 密着性に優れた銅合金複合膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板、特にガラス基板、Si基板、シリカ基板などセラミック基板の表面に対する密着性に優れたCaおよび酸素を含む銅合金膜からなる酸素−Ca含有銅合金下地膜とこの酸素−Ca含有銅合金下地膜の上に形成された導電性に優れたCa含有銅合金導電膜とからなる密着性に優れた銅合金複合膜を提供する。
【解決手段】Ca:0.01〜2モル%、酸素:1〜20モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有する酸素−Ca含有銅合金下地膜と前記下地膜の上に形成されたCa:0.01〜2モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCa含有銅合金導電膜からなる銅合金複合膜。
【選択図】なし

Description

この発明は、基板、特にガラス基板、Si基板、シリカ基板などセラミック基板の表面に対する密着性に優れたCaおよび酸素を含む銅合金膜からなる酸素−Ca含有銅合金下地膜とこの酸素−Ca含有銅合金下地膜の上に形成された導電性に優れたCa含有銅合金導電膜とからなる密着性に優れた銅合金複合膜に関するものである。
一般に、薄膜トランジスターのゲート電極膜、ドレイン電極膜、ソース電極膜には導電性に優れた純銅膜が使用されている。さらにアクティブマトリックス方式で駆動する薄膜トランジスターを用いたフラットパネルディスプレイとして、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイなどが知られている。前記薄膜トランジスターのゲート電極膜はガラス基板の上に形成されており、薄膜トランジスターのドレイン電極膜およびソース電極膜はアモルファスSi膜の上に形成されており、さらに薄膜トランジスターを用いたフラットパネルディスプレイにはガラス基板表面に格子状に純銅配線膜が密着形成されている。
これら純銅膜または純銅配線膜は、純銅膜自体がガラス基板またはアモルファスSi膜に対する密着性が悪いので、酸素:1〜6モル%を含有する酸素含有銅下地膜を形成し、この酸素含有銅下地膜の上に導電性に優れた純銅膜を形成して銅複合膜を形成し、密着性を酸素含有銅下地膜で確保し、酸素含有銅下地膜の上に形成された純銅膜により導電性を確保した銅複合膜を電極膜または配線膜として使用しようとしている(特許文献1、2参照)。そして、酸素含有銅下地膜の密着性は酸素が多く含まれているほど向上することも知られている。
さらに、一般に薄膜トランジスターは、ゲート電極膜およびガラス基板の上に形成された窒化珪素(SiNx)膜と、前記窒化珪素(SiNx)膜の上に形成されたnアモルファスSi半導体膜と、このnアモルファスSi半導体膜の上に形成されたnアモルファスSiオーミック膜と、前記nアモルファスSiオーミック膜の上に形成された前記複合銅膜からなるドレイン電極膜およびソース電極膜とで構成されていることが知られている。
かかる積層膜構造を有する薄膜トランジスターを作製するには、まず、ガラス基板の表面にゲート電極膜を形成し、このゲート電極膜およびガラス基板の上に窒化珪素(SiNx)膜を形成し、さらに窒化珪素(SiNx)膜の上にnアモルファスSi半導体膜を形成し、このnアモルファスSi半導体膜の上にnアモルファスSiオーミック膜を形成し、前記nアモルファスSiオーミック膜の全面を被覆するように前記複合銅膜を形成して積層体を作製し、次いで前記積層体のゲート電極の真上の部分の純銅膜およびnアモルファスSiオーミック膜をプラズマエッチングすることにより分離溝を形成してnアモルファスSi半導体膜を露出させ、それによってドレイン電極膜およびソース電極膜を形成することにより従来の薄膜トランジスターを作製する。前記分離溝を形成するために前記積層体における純銅膜およびnアモルファスSiオーミック膜のみをプラズマエッチンしようとしてもnアモルファスSi半導体膜の表面はプラズマエッチングに曝されてその影響を受けることは避けることが出来ない。このため、分離溝を形成して露出されたnアモルファスSi半導体膜の表面は荒れ、未結合手(ダングリングボンド)が増大し、これが表面欠陥となり、この表面欠陥が薄膜トランジスターのオフ電流を増加させ、その結果、LCDのコントラストの低減や視野角を小さくするなどの問題点があった。この問題点を解決するために、分離溝を形成して露出されたnアモルファスSi半導体膜の表面を水素プラズマ処理し、この水素プラズマ処理することによりnアモルファスSi半導体膜の表面の未結合手(ダングリングボンド)を水素原子と結合させて安定化し、リーク電流を低減することができるとされている。そして前記水素プラズマ処理はガス:100%水素ガス、水素ガス流量:10〜1000SCCM、水素ガス圧:10〜500Pa、RF電流密度:0.005〜0.5W/cm2、処理時間:1〜60分の条件で行なうのが良いとされている(特許文献3参照)。
特開平5−25612号公報 特開平8−26889号公報 特開平4−349637号公報
前述のように、純銅膜はガラス基板、Si基板、二酸化珪素基板に対する密着性が低いことから酸素含有銅下地膜と純銅膜からなる複合銅膜が薄膜トランジスターにおけるゲート電極、ドレイン電極膜、ソース電極膜などに使用しようとしているが、前記複合銅膜を前記ゲート電極として使用すると、複合銅膜の上に形成される前記窒化珪素膜(SiNx膜)は、SiH、NHおよびNからなる水素を含む混合ガス中で300℃前後に加熱された雰囲気中で化学蒸着することにより形成されることから、前記窒化珪素膜(SiNx膜)の形成に際して水素(H)が前記複合銅膜を構成する純銅膜を通過して酸素含有銅下地膜に到達し、そこで酸素含有銅下地膜の酸素と結合して水となり酸素含有銅下地膜に大きなボイドを発生させ、さらにガラス基板の表面に対する酸素含有銅下地膜の密着性を低下させることがあるので好ましくない。
さらに、前記複合銅膜を前記ドレイン電極膜およびソース電極膜として使用すると、前記水素プラズマ処理は水素雰囲気中で行われるために、酸素含有銅下地膜の酸素と結合して水となり酸素含有銅下地膜に大きなボイドを発生させ、さらにアモルファスSi半導体膜に対する酸素含有銅下地膜の密着性を低下させることがあるので好ましくない。
そこで、本発明者等は、薄膜トランジスターの製造中に水素または水素含有雰囲気に曝されても大きなボイドが発生することがなく、さらにガラス基板、Si基板、二酸化珪素基板などのセラミック基板に対する密着性が損なわれることのない一層密着性に優れた導電膜を開発すべく研究を行った。その結果、
純銅(特に純度:99.99%以上の無酸素銅)に、酸素を1〜20モル%、Ca:0.01〜2モル%を含有し、残部がCuからなる成分組成を有する酸素−Ca含有銅合金下地膜と前記下地膜の上に形成されたCa:0.01〜2モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCa含有銅合金導電膜からなるからなる銅合金複合膜は、水素または水素含有雰囲気に曝されても大きなボイドが発生することがなく、また優れた密着性を維持することができ、さらに前記Ca含有銅合金導電膜は純銅膜に比べて比抵抗はやや高くなるものの大きな差はなく、導電膜として十分に使用することができる、などの研究結果が得られたのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)Ca:0.01〜2モル%、酸素:1〜20モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有する酸素−Ca含有銅合金下地膜と前記下地膜の上に形成されたCa:0.01〜2モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCa含有銅合金導電膜からなる密着性に優れた銅合金複合膜、に特徴を有するものである。
次に、この発明の銅合金複合膜を作製する方法を説明する。まず、無酸素銅およびCu−Ca母合金を原料として用意し、Arガス雰囲気中、高純度グラファイトモールド内で高周波溶解してCa:0.01〜2モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する溶湯となるように成分調整し、得られた溶湯を冷却されたカーボン鋳型に鋳造し、さらに熱間圧延したのち最終的に歪取り焼鈍し、得られた圧延体の表面を機械加工してターゲットを作製する。このターゲットを用いて酸素または酸素を含む不活性ガス雰囲気中でスパッタすることによりCa:0.01〜2モル%、酸素:1〜20モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有する酸素−Ca含有銅合金下地膜を形成し、引き続いて同じターゲットを用いて不活性ガス雰囲気中でスパッタすることにより前記酸素−Ca含有銅合金下地膜の上にCa:0.1〜2モル%を含有し、残部がCuからなる成分組成を有するCa含有銅合金導電膜を形成し、この発明の銅合金複合膜を作製することができる。
次に、この発明の密着性に優れた銅合金複合膜を構成する酸素−Ca含有銅合金下地膜およびCa含有銅合金導電膜の成分組成の範囲を前述のごとく限定した理由を説明する。
Ca含有銅合金導電膜:
Ca含有銅合金導電膜に含まれるCaはボイドの発生を阻止する作用を有すると共にCa含有銅合金導電膜を形成するに際してターゲットの組織を微細化できるのでスパッタに際してパーティクルの発生を少なくする作用を有するので添加するが、その含有量が0.01モル%未満では所望の効果が得られず、一方、2モル%を越えて含有すると比抵抗が大きくなりすぎてゲート電極膜、ドレイン電極膜、ソース電極膜などの電極膜、その他配線膜としては好ましくない。したがって、カルシウム含有銅合金膜に含まれるCaの量を0.01〜2モル%に定めた。
酸素−Ca含有銅合金下地膜:
酸素−Ca含有銅合金下地膜に含まれるCaの作用は前記Ca含有銅合金導電膜の作用と同じであり、その限定理由も同じである。また酸素−Ca含有銅合金下地膜に含まれる酸素は、Caと共に共存させることによりガラス基板、アルミナまたは酸化ケイ素などを主成分とするセラミックス基板に対する密着性が格段に向上するので添加されるが、酸素含有量が1モル%未満では十分な密着性が得られず、一方、20モル%を越えて含有すると比抵抗が大きくなりすぎ、ゲート電極、ドレイン電極膜、ソース電極膜などの電極膜の下地層やその他配線膜の下地層としては好ましくない。したがって、酸素−Ca含有銅合金下地膜に含まれる酸素の量を1〜20モル%に定めた。
この発明の銅合金複合膜は、銅合金複合膜を構成するCa含有銅合金導電膜の比抵抗が純銅膜に比べて大きく上昇することがなく、またこの発明の銅合金複合膜を構成する酸素−Ca含有銅合金下地膜はガラス基板、アモルファスSi基板などに対する密着性を一層優れており、さらに、薄膜トランジスター製造工程において、窒化珪素膜(SiNx膜)の成膜に際して水素の拡散浸透によるボイドの発生がなく、さらに水素プラズマ処理中においても下地膜が酸素と結合して水となり大きなボイドを発生させることがなく、密着性を低下させることがないことから、酸素−Ca含有銅合金下地膜の上に導電性に優れたCa含有銅合金導電膜を形成して作製したこの発明の銅合金複合膜は、これを薄膜トランジスターの電極、薄膜トランジスターを用いたフラットパネルディスプレイにおける配線膜などに用いると、薄膜トランジスターを用いたフラットパネルディスプレイが激しい振動を受けるなど過酷な環境下で長期間おかれても電極および配線が剥離することがなく、したがって、故障することがない薄膜トランジスターおよび薄膜トランジスターを用いたフラットパネルディスプレイを提供することができるという優れた効果を奏するものである。
純度:99.99質量%の無酸素銅を用意し、この無酸素銅をArガス雰囲気中、高純度グラファイトモールド内で高周波溶解し、得られた溶湯にCaを添加し溶解して表1に示される成分組成を有する溶湯となるように成分調整し、得られた溶湯を冷却されたカーボン鋳型に鋳造し、さらに熱間圧延したのち最終的に歪取り焼鈍し、得られた圧延体の表面を旋盤加工して外径:152mm、厚さ:5mmの寸法を有し、表1に示される成分組成を有するターゲットA〜Qを作製した。さらに、純度:99.99質量%の無酸素銅から純銅ターゲットRを作製した。
Figure 2009203540
ガラス板(縦:50mm、横:50mm、厚さ:0.7mmの寸法を有するコーニング社製1737のガラス板)からなる基板をスパッタ装置に設置し、さらにターゲットA〜Rを基板とターゲットの距離が70mmとなるようにスパッタ装置に設置し、スパッタ装置の電源として直流方式を採用し、スパッタ装置の真空容器を到達真空度4×10−5Paになるまで真空引きした。次に酸素を表2〜3に示される割合で含む酸素−Ar混合ガスをスパッタガスとして真空容器内に流し、スパッタ雰囲気圧力を0.67Paとした後、出力:600Wで3分間放電することにより表2〜3に示される成分組成を有し、幅:20mm、長さ:40mm、厚さ:50nmの寸法を有する酸素−Ca含有銅合金下地膜および酸素含有銅下地膜を成膜した。
引き続いて酸素の供給を停止し、Arガスのみで0.67Paの圧力でスパッタすることにより表2〜3に示される成分組成を有し、幅:20mm、長さ:40mm、厚さ:250nmの寸法を有するCa含有銅合金膜および純銅膜を前記酸素−Ca含有銅合金下地膜および酸素含有銅下地膜の上にそれぞれ成膜することにより本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜を成膜した。
なお、表2〜3に示される酸素−Ca含有銅合金下地膜、酸素含有銅下地膜、Ca含有銅合金膜に含まれる酸素およびCaは、精密イオン研磨装置を用い、Arイオンにより透過型電子顕微鏡用のサンプルを作製し、下記の装置を用い、下記の条件で測定した。
透過型電子顕微鏡JEM2010F(EDS付)(JEOL製)による測定条件:
加速電圧:200kV、
測定時のプローブ径:5nm、
測定時間:1測定場所につき20秒、
格子分解能:0.1nm、
点分解能:0.19nm、
STEM分解能:0.2nm、
EDSの検出器(Si(Li)半導体検出器 JEOL製)による測定条件:
エネルギー分解能:148eV、
検出有効直径:30mm、
入射窓:UTW(Ultra Thin Window)
アナライザ:NORAN社製VOYAGERを使用、
このようにして得られた本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜について、下記の条件で碁盤目付着試験を行い、その結果を表2〜3に示すことにより本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜の評価を行った。
碁盤目付着試験:
JIS-K5400に準じ、1mm間隔で縦横11本ずつカッターを用いて1mm間隔の切り込みを入れ、本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜に100個の升目膜を作り、3M社製スコッチテープを密着させたのち一気に引き剥がし、ガラス基板中央部の10mm角内でガラス基板に付着していた升目膜に剥離が生じた升目膜の数を測定し、その結果を剥離した升目の数(個/100)として表2〜3に示すことによりガラス基板に対する本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜の密着性を評価した。
次に、本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜に、
ガス:100%水素ガス、
水素ガス流量:500SCCM、
水素ガス圧:100Pa、
処理温度:300℃、
RF電力流密度:0.1W/cm2、
処理時間:2分、
の条件の水素プラズマ処理を施し、この水素プラズマ処理後の本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜について下記の条件で比抵抗値を測定しさらに先の碁盤目付着試験と同じ条件で碁盤目付着試験を行い、その結果を表2〜3に示すことにより本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜の評価を行った。
抵抗値測定:
前記本発明銅合金複合膜1〜15、比較銅合金複合膜1〜4および従来銅複合膜をそれぞれ四探針法により抵抗値を測定し、その結果を表2〜3に示した。
Figure 2009203540
Figure 2009203540
表1〜3に示される結果から、本発明銅合金複合膜1〜15は従来銅複合膜に比べて比抵抗は同等またはやや劣るものの大差は無く、また、本発明銅合金複合膜1〜15と従来銅複合膜の水素プラズマ処理前後の密着性を比較すると、本発明銅合金複合膜1〜15は従来銅複合膜よりも密着性が格段にすぐれていることから、本発明銅合金複合膜1〜15からなる電極膜を内蔵したこの発明の薄膜トランジスターは電極膜の剥離による故障が極めて少なくなることが分る。しかし、この発明の条件から外れた値を有する比較銅合金複合膜1〜4は比抵抗および密着性の少なくともいずれかが劣るので薄膜トランジスターの電極膜として好ましくないことが分る。

Claims (4)

  1. Ca:0.01〜2モル%、酸素:1〜20モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有する酸素−Ca含有銅合金下地膜と前記下地膜の上に形成されたCa:0.01〜2モル%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCa含有銅合金導電膜からなるからなることを特徴とする密着性に優れた銅合金複合膜。
  2. 請求項1記載の密着性に優れた銅合金複合膜からなることを特徴とする薄膜トランジスターのゲート電極膜。
  3. 請求項1記載の密着性に優れた銅合金複合膜からなることを特徴とする薄膜トランジスターのドレイン電極膜およびソース電極膜。
  4. 請求項1記載の密着性に優れた銅合金複合膜からなることを特徴とする配線膜。
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