以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の移動ロボットを含む監視システムの全体構成を示しており、図2は、監視システムの監視対象である監視区域を示している。監視区域Aは、本発明の監視領域に相当し、図2の例では、監視区域Aは建物及びその周囲の土地を含む施設である。
監視システム1は、監視区域Aに設けられた警備装置3及び移動ロボット5と、監視区域Aから遠隔の場所に設けられた監視センタ7とを含む。警備装置3は、監視区域Aに設けられた信号中継装置11を介して移動ロボット5と無線通信可能であり、また、通信網13を介して監視センタ7と通信可能である。また、移動ロボット5は、信号中継装置11、通信網13を介して監視センタ7と通信可能である。こうして、警備装置3、移動ロボット5及び監視センタ7は通信可能に接続される。
警備装置3は、上記のように監視区域A内に設置され、異常検知する警備用センサ9と接続されて監視区域A内における異常有無の監視を行う。警備用センサ9は、各固有のID番号が設定されて、図2に示すように監視区域A内の各所に設置され、検知状態になると警備装置3にID番号を含む検知信号を送信する。警備用センサ9としては、侵入、火災、設備の異常を検知するように複数種類のセンサが設けられている。侵入を検知するセンサとしては、赤外線ビームが遮られたことを検知するセンサや、熱線や画像処理により移動体を検知するセンサ、窓や扉が開いたことを検知するセンサがあり、火災センサとしては、高熱や煙により火災を検知するセンサがあり、また、設備異常センサとしては、例えば、貯水タンクT(図2)の水位高低を検知するセンサなどがある。
警備装置3は、警備用センサ9から入力される検知信号に基づいて異常が有ると判定すると、この警備用センサ9のID番号を含む異常情報を警備異常信号として監視センタ7および移動ロボット5に送信する。
移動ロボット5は、上述のように監視区域Aに設置された信号中継装置11と無線接続され、この信号中継装置11を介して監視センタ7および警備装置3に接続される。
移動ロボット5は、図2に示される監視区域A内の基準位置Sに停止しており、自己の記憶したスケジュールにより、又は監視センタ7から受信する制御指示の信号により、監視区域A内の巡回を開始する。巡回時は、移動ロボット5は、監視区域A内の移動経路に設置された磁気ガイドGを検出しながら、この磁気ガイドGに沿って走行する。そして、移動ロボット5は、周囲の画像及び現在位置を監視センタ7に送信する。また移動ロボット5は、自己が備える異常検知手段にて異常を検知すると停止して、検知した異常の情報をロボット異常信号として監視センタ7に送信する。
また、移動ロボット5は、警備装置3から警備異常信号が入力されると、警備異常信号から判断される異常発生場所へと移動する。このとき、移動ロボット5は、異常発生場所までの距離を定期的に算出し、この距離がしきい値距離以上であれば、異常検知手段で異常が検知されても停止することなく移動を継続する。検知した異常の情報はロボット異常信号として監視センタ7に送信される。また、異常発生場所までの距離がしきい値距離未満であれば、巡回時と同様、異常検知手段で異常が検知されたときに移動を停止して、検知した異常の情報をロボット異常信号として監視センタ7に送信する。
なお、上記では、警備装置3が、異常情報である警備異常信号を移動ロボット5に送っており、したがって警備装置3が本発明の監視端末として機能している。別の態様では、警備異常信号を受信した監視センタ7から異常情報が移動ロボット5に送られてもよく、この場合は監視センタ7が本発明の監視端末として機能する。
監視センタ7は、警備会社が運営するセンタ装置71を備えた施設であり、移動ロボット5や警備装置3から受信する各種情報を表示して監視員が監視区域Aを常時監視している。また、監視員は、必要に応じて移動ロボット5に制御指示(制御コマンド)を送信して遠隔制御する。警備装置3が異常を検知して移動ロボット5が異常発生場所へ移動した場合も、移動ロボット5からセンタ装置7へと、移動ロボット5の異常検知手段で検知した情報や、移動ロボット5が撮影した異常発生場所の画像が送られる。
以上に本実施の形態の監視システム1の概要を説明した。次に、監視システム1の各部の構成を詳細に説明する。
図3は、移動ロボット5の構成を示している。移動ロボット5において、制御部51はコンピュータで構成され、移動ロボット5の全体を制御している。移動手段52は、前輪及び後輪それぞれの左右の車輪と、前輪又は後輪(あるいはその両方)を駆動するモータを有している。移動ロボット5は、モータを駆動して磁気ガイドG(図2)に沿って走行しつつ、本体の正面側に装備したレーザセンサ53により、移動方向前方を走査し障害物の位置と障害物との距離を確認する。本体の上部には全周囲を撮像できる撮像ユニット54が装備されており、周囲の画像を撮像する。本体の底面にはガイド検出部55が備えられている。ガイド検出部55は磁気センサを含み、この磁気センサの出力に基づき磁気ガイドGを検出する。ガイド検出部55は検出した情報を制御部51に送り、制御部51の移動制御手段51aは、このガイド検出部55の出力に基づき磁気ガイドGに追従するように移動手段52を駆動させる。また、移動制御手段51aは、後述する異常検知手段にて異常の存在が判定されると移動手段52の駆動を停止して移動ロボット5を停止させる。
また、移動ロボット5において、自己位置検出部56は、移動手段52における左右両輪のモータ回転軸の回転量を検出し、この左右輪の回転量から移動ロボット5の走行距離や旋回角を算出し、現在位置と向きを算出する。さらに、移動ロボット5は、監視センタ7及び警備装置3と信号を送受信する無線通信手段である通信部57と、他者に移動ロボット5の存在を報知するための照明部58(図1)とを有している。
また、移動ロボット5は、異常検知手段(本発明の検知手段に相当)として防犯異常検知手段59と防災異常検知手段60とを備える。防犯異常検知手段59は、検知対象として人体などの侵入物体を検知する手段であり、防災異常検知手段60は、検知対象として火災を検知する手段である。防犯異常検知手段59は、侵入物体の特性である時間的な位置変化や人体の熱線を検出するものであり、防災異常検知手段60は、炎の特性である紫外線や煙濃度を検出するものである。
防犯異常検知手段59は、防犯センサ59a及び防犯異常判定手段59bを備える。防犯センサ59aは、移動ロボット5の周囲に侵入した人体を検知するための検知手段であり、人体が放射する熱線を検知する人体センサである。
防犯異常判定手段59bは、防犯センサ59aの出力が人体の存在を判定するしきい値を超えているか否か判別し、しきい値を超えていれば侵入者による異常事態が発生したと判定する。
また、防犯異常判定手段59bは、後述の記憶部61に記憶した監視区域内における既設物の位置を示す既設物情報61cとレーザセンサ53の出力とを比較して侵入物体による異常事態の有無を判定する。即ち、防犯異常判定手段59bは、既設物体が存在しない位置においてレーザセンサ53により物体が検出されると侵入物体が存在しており異常が発生したと判定する。このようにレーザセンサ53は、障害物検知センサとして機能する他に、侵入異常を検知するセンサとしても用いられる。
更に、防犯異常判定手段59bは、撮像ユニット54から入力される撮像画像を画像処理して移動物体を抽出し、所定サイズ以上の大きさの移動物体が抽出されると侵入物体による異常事態が発生したと判定する。このように、撮像ユニット54は、ロボット周囲の画像を監視センタ7に送るためだけでなく、侵入異常を検知するセンサとしても用いられる。
他方、防災異常検知手段60は、防災センサ60a及び防災異常判定手段60bを備える。防災センサ60aは、火災を検知するための検知手段であり、例えば火災が発生したときに生じる紫外線を検知する炎センサである。防災異常判定手段60bは、防災センサ60aの出力が火災発生と判定するためのしきい値を超えているか否かを判別し、しきい値を超えていれば火災による異常事態が発生したと判定する。
上記の防犯異常判定手段59bおよび防災異常判定手段60bは、制御部51を構成するコンピュータで実現されてもよい。
また、移動ロボット5は、各種情報を記憶する記憶部61を備えている。記憶部61は、自己位置検出部56にて検出された現在位置61aと、監視区域A内に敷設された磁気ガイドGで示される移動経路の位置座標及び距離の情報である地図情報61bと、監視区域A内において既設物体の位置を示した既設物情報61cと、監視区域Aを巡回する時刻と巡回の経路を記憶した巡回情報61dと、巡回時と急行時の移動速度を記憶した速度情報61eと、警備装置3に接続される各警備用センサ9のID番号に対応して経路上において各警備用センサ9の近傍となる位置座標を示した急行位置情報61fと、急行する場合における移動制御のしきい値となる距離を示したしきい値距離61gとを記憶する。これらの情報については、下記の制御部51での処理と関連して更に詳細に説明する。
制御部51は移動ロボット5の全体を制御するコンピュータであり、既に説明した移動制御手段51aに加えて、モード管理手段51b、目標位置判別手段51c、距離算出手段51d、計時手段51e及びしきい値設定手段51fを有する。これら構成は、コンピュータでのプログラムの実行によって実現されるものであり、記憶部61に記憶された情報を処理して以下のような機能を実現する。
モード管理手段51bは、各種情報に基づき移動ロボットの動作モードを制御する。モード管理手段51bは、コンピュータ内蔵時計等から得られる時刻を参照し、記憶部61に巡回情報61dとして記憶された巡回時刻になると動作モードを巡回モードに設定する。あるいは、モード管理手段51bは、監視センタ7から受信される制御指示に応答して巡回モードを設定する。記憶部61の現在位置61aは、自己位置検出部56が検出する最新の現在位置へと逐次更新される。現在位置61aの情報により、移動ロボット5が基準位置Sに帰着し巡回が終了したと判断されると、モード管理手段51bは動作モードを待機モードに設定する。
また、モード管理手段51bは、通信部57にて警備装置3の警備異常信号が受信されると、動作モードを急行モードに設定する。急行モードに設定されると、モード管理手段51bは、監視センタ7から制御指示を受信するまで動作モードの変更を禁止する。
目標位置判別手段51cは、本発明の位置判別手段として機能し、警備装置3の警備異常信号を受信したときに、記憶部61の急行位置情報61fを参照して、警備異常信号に含まれる警備用センサ9のID番号から経路上において異常検知した警備用センサ9近傍となる位置座標を判別し、当該位置座標を移動目標位置に設定し、地図情報61bを参照して磁気ガイドGに沿って現在位置から移動目標位置までの最短距離となる移動経路を算出する。
図4は、記憶部61に記憶された急行位置情報61fの例を示している。図示のように、急行位置情報61fは、各警備用センサ9のID番号と、各警備用センサ9に対して経路上で近傍の位置座標とのテーブルである。各警備用センサ9ごとに、経路上で適当な位置が予め定められており、より詳細には、警備用センサ9に極力近い位置であって、警備用センサ9の検知対象を移動ロボット5の異常検知手段で検知したり、同検知対象を移動ロボット5の撮像ユニット54で撮影しやすい位置が定められている。警備用センサ9の設置位置まで移動可能であれば、当該警備用センサ9の設置位置座標を記憶しておいてもよい。目標位置判別手段51cは、警備異常信号に含まれる警備用センサ9のID番号に対応する位置座標を図4のテーブルから読み取る。
なお、上記のように、本実施の形態では、急行位置情報61fが移動ロボット5に記憶されていた。別の態様では、急行位置情報61fは監視センタ7に記憶され、監視センタ7から移動ロボット5が受信してもよい。この場合には、急行すべき位置を監視センタ7から取得する手段が、監視領域で発生した異常に対応する位置を判別する位置判別手段として機能する。
また、目標位置判別手段51cは、警備装置3から警備異常信号が複数回受信されたときは、時間の優先順位に応じて移動目標位置を決定する。時間の優先順位は新しい>古いの順である。この優先順位は記憶部61に予め記憶されている。具体的処理としては、警備異常信号が新しく受信されるたびに、新しく受信された警備異常信号に含まれる警備用センサ9のID番号に対応する位置座標によって移動目標位置を更新する。なお、警備装置が検知した異常の種別(火災や侵入、設備異常など)が警備異常信号から判別可能であれば、警備装置が検知した異常種別によって優先順位を異ならせてよい。例えば、現在の移動目標位置に対応する異常種別よりも新しく受信した警備異常信号に含まれる異常種別の優先順位が低い場合には移動目標位置を変更せず、新しく受信した警備異常信号に含まれる異常種別の優先順位が高い場合、又は同等の場合には新しい警備異常信号に応じて移動目標位置を更新してよい。
距離算出手段51dは、目標位置判別手段51cにて移動目標位置と移動目標位置までの移動経路が設定されると、所定時間毎に記憶部61の現在位置61aと地図情報61bとから移動目標位置までの移動経路に沿った距離を算出する。なお、別の態様では、現在位置61aと移動目標位置の直線距離が計算されてもよい。計時手段51eは、コンピュータ内蔵時計等を利用して、警備異常信号が受信されてからの経過時間を計時する。
しきい値設定手段51fは、警備異常信号が受信されて急行モードが設定されているときの移動ロボット5の制御に使用するしきい値距離を設定する。本実施の形態では、しきい値設定手段51fが、計時手段51eにより計時される警備異常信号の受信からの経過時間に応じてしきい値距離を更新するように構成されている。
しきい値距離は、後述にて詳細に説明するように、移動ロボット5が異常検知した警備用センサ9の近傍まで急行するときに警戒を始める移動目標位置(警備用センサ9に対応する位置)からの距離を意味している。通常、侵入者は侵入後に時間とともに周辺へと移動する可能性があり、火災も周辺へと広がる可能性がある。そこで、しきい値設定手段51fは、警備異常信号を受信してからの時間が経過するに従って、しきい値距離、すなわち移動ロボット5が警戒を始める移動目標位置までの距離を大きい値に更新する。
図5は、しきい値設定手段51fのしきい値設定処理によって記憶部61に記憶されるしきい値距離61gを示している。図示のように、しきい値距離61gとしては、基準値と設定値が記憶されており、図の例では基準値が5m、設定値が10mである。
図5において、基準値は固定の値であるのに対して、設定値は可変の値である。設定値は、通常時、すなわち、警備異常信号が受信されて急行モードが設定される前は、基準値と同じ値に設定されている。急行モードが設定されると、しきい値設定手段51fが、計時手段51eにより計時される警備異常信号の受信からの経過時間に応じて設定値を更新し、経過時間が長くなるほど設定値を大きくする。設定値は、例えば、下記の式によって算出される。この設定値が、しきい値距離として制御部51により参照されて、各部の処理に使用される。
設定値(しきい値距離)= 基準値×(1+係数×経過時間(分))
図6は、上記の式による設定値の変化を示している。図示のように、警備異常信号が受信された直後は、設定値が基準値と等しい。そして、警備異常信号の受信から時間が経過するに従って、設定値が大きくなる。基準値は5mであり、図5の例に合わせてある。係数は適当に設定されてよく、係数が大きいと設定値が速く増大し、係数が小さいほど設定値がゆっくりと増大する。そこで、想定される検知対象の位置的変化の速さを考慮して係数が設定される。係数は例えば1でもよい。
設定値は、上述の例のように計算によって求められてもよく、また、テーブル等を使って求められてもよい。この場合、経過時間と設定値のテーブルが予め記憶されており、このテーブルから設定値が読み取られてよい。
図7は、設定値の更新処理の別の例を示している。図7の例では、警備異常信号を受信してから所定期間は設定値が基準値と等しく、一定である。その後、時間経過に伴って設定値が増大し、その後、再び設定値が一定になる。この例に見られるように、設定値は、警備異常信号の受信時よりも時間が経過したときに設定値(しきい値距離)が大きくなっていればよく、時間経過とともに直線的に増大しなくてもよい。
既に警備異常信号が受信されて急行モードが設定されている状態で、新たに警備異常信号が受信され移動目標位置が設定されたとする。この場合、しきい値距離は初期値に戻される。すなわち、図5の設定値が、基準値と同じ値に更新される。そして、再び、時間経過に伴って設定値が更新される。
移動制御手段51aは、モード管理手段51bにより巡回モードが設定されると、速度情報61eとして記憶された巡回時の移動速度(以下、巡回速度という)で巡回経路を移動するよう移動手段52を制御する。また、警備異常信号が受信されて急行モードが設定されると、移動制御手段51aは、記憶部61に速度情報61eとして記憶された急行時の移動速度(以下、異常確認用速度という)で、目標位置判別手段51cが設定する移動目標位置までの移動経路を移動するよう移動手段52を制御する。
図8は、記憶部61に記憶された速度情報61eの例を示している。図示のように、巡回速度及び異常確認用速度は、移動経路上の区間によって異なって設定されている。また、異常確認用速度としては、近距離と遠距離の2種類の速度が設定されている。近距離の異常確認用速度とは、移動目標位置までの距離がしきい値距離未満であるときの速度であり、遠距離の異常確認用速度は、移動目標位置までの距離がしきい値距離以上のときの速度である。なお、区間によって速度を異ならせているのは、カーブ等での減速のためや、重要区間での減速のためである。
近距離及び遠距離の異常確認用速度が異なって設定されるのは、下記の理由による。急行モードでは、周囲の異常確認よりも移動目標位置に短時間で到着することを優先すべきである。これに対して、移動目標位置に近づいたときには、異常発生地点の周囲まで異常原因が移動している可能性もあるので、十分な検出精度を得られる速度で走行することが求められる。そこで、図8に示すように、移動目標位置までの距離がしきい値距離以上の場合(目標位置まで遠いとき)のための遠距離の異常確認用速度は巡回速度より大きく定められており、移動目標位置までの距離がしきい値距離未満の場合(目標位置から近いとき)のための近距離の異常確認用速度は巡回速度と等しい通常速度に定められており、結果として遠距離の異常確認用速度が近距離の異常確認用速度より大きく定められている。
移動制御手段51aは、現在の動作モード、現在位置、移動目標位置までの距離、しきい値距離を用いて、図8のテーブルを参照して現在位置に対応する速度を決定する。現在の動作モードが巡回モードであれば、現在位置が含まれる区間の巡回速度が求められる。現在の動作モードが急行モードであれば、移動目標位置までの距離としきい値距離が比較され、移動目標位置までの距離がしきい値距離以上であれば、現在位置が含まれる区間の遠距離の異常確認用速度が求められる。移動目標位置までの距離がしきい値距離未満であれば、現在位置が含まれる区間の近距離の異常確認用速度(=巡回速度)が求められる。そして、移動制御手段51aは、決定した速度で移動ロボット5が走行するように移動手段52を制御する。
また、移動制御手段51aは、急行モードでの自己の異常検知に応答して下記の処理を行うように構成されている。急行モードが設定されているときに防犯異常検知手段59又は防災異常検知手段60が異常を検知したとする。このとき、移動制御手段51aは、移動目標位置までの距離としきい値距離を比較し、移動目標位置までの距離がしきい値距離以上であれば、異常検知手段59、60にて異常の存在が判定されても停止処理を禁止する。移動目標位置までの距離がしきい値距離未満であれば、移動制御手段51aは、巡回時に異常を検知した場合と同様に、移動手段52を制御して移動ロボット5を停止させる。
以上に移動ロボット5の構成を説明した。次に、警備装置3の構成を説明する。図1に示すように、警備装置3は、監視区域Aの利用者が操作して警備装置3の警備状態を入力する操作部31と、操作部31で入力された警備状態を警備装置3に設定する制御部32と、警備用センサ9のID番号等の警備装置3の制御に必要な情報を記憶する記憶部33と、通信網13を介して監視センタ7と接続されるセンタ通信部34と、信号中継装置11を介して移動ロボット5と接続される移報部35とで構成される。
制御部32にて設定される警備状態としては、警備セットの状態と警備解除の状態とがある。警備セットの状態では、警備用センサ9が検知状態となり、警備装置3に検知信号が入力されると、警備装置3は異常を検知したと判定し異常出力を行う。警備解除は、異常出力が行われない状態である。利用者は、例えば監視区域Aが無人となる場合に操作部31を操作して警備状態を警備セットに設定し、同監視区域Aに入る場合に操作部31を操作して警備状態を警備解除に設定する。
また、制御部32は、警備セット中に検知信号の入力があると、この警備用センサ9のID番号を含む異常情報を警備異常信号としてセンタ通信部34および移報部35から送出する。
次に、監視センタ7の構成を説明する。監視センタ7はセンタ装置71を備えており、センタ装置71は、監視員が遠隔から警備装置3及び移動ロボット5を利用して監視区域Aを監視するために用いられる。センタ装置71は、装置全体を制御する制御部72と、通信部73、表示部74、操作部75及び記憶部76を有する。通信部73は、通信網13を介して警備装置3及び移動ロボット5と通信する。表示部74はディスプレイ装置であり、移動ロボット5や警備装置3から受信する各種情報を表示し、これにより監視員が監視区域Aを常時監視している。また、監視員は、必要に応じて操作部75を操作し、移動ロボット5に制御指示を送信して遠隔制御する。また、記憶部76は、監視区域Aの住所、電話番号、警備装置3の識別番号、移動ロボット5の識別番号、利用者の氏名、過去の対処履歴などを対応付けて記憶管理するデータベースを記憶している。
センタ装置71の表示部74には、移動ロボット5から受信したロボット異常信号や警備装置3から受信した警備異常信号に基づいて対処すべき監視区域Aの情報及び異常の情報が表示される。また、表示部74には、移動ロボット5から受信する現在位置や画像が表示される。監視員は、かかる表示部74の表示を見て監視区域Aに異常が発生していると判断すると、監視区域Aへの警備員の対処指示や、利用者に対する確認処理などの必要な措置をとる。
以上に本発明の移動ロボット5が設けられた監視システム1の構成について説明した。次に、上記監視システム1の動作について説明する。
まず、警備装置3の警備状態が、警備解除の状態に設定されており、また、移動ロボット5が基準位置Sに位置しており、動作モードが待機モードに設定されているとする。
監視区域Aから最後の利用者が退出するとき、警備装置3では、同利用者に操作部31が操作されて、制御部32により警備装置3の警備状態が警備セットの状態に設定される。
一方、移動ロボット5では、記憶部61に巡回情報61dとして記憶された巡回時刻になると、モード管理手段51bにより動作モードが待機モードから巡回モードに切り替えられる。あるいは、モード管理手段51bは、監視センタ7から受信された制御指示に応答して巡回モードを設定する。巡回モードが設定されると、巡回が開始し、移動制御手段51aが、記憶部61に記憶された地図情報61bを参照しながら、ガイド検出部55の出力に基づき磁気ガイドGに沿って移動するように移動手段52を制御する。移動ロボット5は、レーザセンサ53により障害物の位置及び障害物との距離を確認しながら走行する。
移動ロボット5の走行中、自己位置検出部56により移動ロボット5の現在位置が検知され、記憶部61の現在位置61aが逐次更新される。そして、移動ロボット5は、撮像ユニット54にて撮像される周囲の画像と現在位置を監視センタ7に送信する。また、移動ロボット5は、記憶部61に速度情報61eとして記憶された巡回速度で走行する。速度情報61eは、図8に示したように、区間毎に異なって設定されている。そこで、移動制御手段51aは現在位置61aが含まれる区間の巡回速度で移動ロボット5を走行させる。
巡回モードでは、移動ロボット5は、照明部58を点灯して走行し、そして、防犯異常検知手段59又は防災異常検知手段60により異常が検知されると移動制御手段51aが移動手段52を制御して移動ロボット5を停止させ、制御部51は、防犯異常検知手段59又は防災異常検知手段60により検知された異常の情報をロボット異常信号として監視センタ7に送信する。撮像ユニット54の映像は停止中も監視センタ7に送られる。制御部51は、監視センタ7からの制御指示を待ち、移動を示す制御指示が受信されると、巡回を再開する。
巡回モード中に、警備用センサ9が検知状態になり、警備装置3で異常が検知されたとする。このとき、警備装置3の制御部32は、センタ通信部34から監視センタ7へ警備異常信号を送ると共に、移報部35から信号中継装置11を介して移動ロボット5へも警備異常信号を送る。警備異常信号は、本発明の異常情報に相当し、検知状態になった警備用センサ9のID番号を含む。なお、既に述べたように、警備異常信号は、警備装置3から監視センタ7のみに送信され、監視センタ7から移動ロボット5へと送られてもよい。
移動ロボット5では、警備異常信号が受信されると、モード管理手段51bが動作モードを急行モードに設定し、また、目標判別手段51cが移動目標位置を設定する。
図9は、目標位置判別手段51cによる処理を示している。警備異常信号が受信されると、目標位置判別手段51cは、受信した警備異常信号に対応する位置座標を移動目標位置に設定する(S1)。ここでは、警備異常信号に含まれる警備用センサ9のID番号が特定され、ID番号に対応する位置座標が図4の急行位置情報61fのテーブルから読み取られる。さらに、目標位置判別手段51cは、記憶部61の現在位置61aと地図情報61bを参照し、磁気ガイドGで案内される経路を通り現在位置から移動目標位置に至る最短経路を求め、移動経路に設定する(S3)。
なお、既に急行モードが設定されている場合でも、新しく警備異常信号が受信されると、図9の処理が行われる。したがって、時間の優先順位(新しい>古い)に従って移動目標位置と移動経路が決定される。
目標位置判別手段51cにて移動目標位置とそこまでの移動経路が設定されると、距離算出手段51dが、所定時間毎に記憶部61の現在位置61aと地図情報61bとから移動目標位置までの移動経路に沿った距離を算出する。この距離は、移動制御手段51aへと供給される。
また、警備異常信号が受信されて急行モードが設定されると、計時手段51eが計時を開始し、警備異常信号からの経過時間をしきい値設定手段51fに供給する。しきい値設定手段51fは、経過時間に応じて記憶部61のしきい値距離61gを更新する。図6の例に示されるように、経過時間が長くなるほど、しきい値距離61gの設定値が大きい値に更新される。
移動制御手段51aは、急行モードでは、目標位置判別手段51cにより設定された移動目標位置及び移動経路に従って移動ロボット5を走行させるように移動手段52を制御する。この際、現在位置、しきい値距離、移動目標位置までの距離を処理することにより移動制御が好適に行われる。
図10は、警備異常信号が受信されて急行モードが設定されるときの移動制御手段による処理を示している。目標位置判別手段51cにより警備異常信号に応じて移動目標位置と移動経路が設定されると、移動制御手段51aは、移動手段52を制御して、移動目標位置への移動を開始させる(S11)。移動制御手段51aは、移動目標位置までの距離がしきい値距離以上であるか否かを判定し(S13)、しきい値距離以上であれば(S13、Yes)、異常検知時の停止処理を禁止し(S15)、さらに、移動速度が遠距離の異常確認用速度になるように移動手段52を制御する(S17)。ここでは、記憶部61の現在位置61aと速度情報61eのテーブル(図8)が参照され、現在位置が含まれる区間の遠距離の異常確認用速度が求められ、速度制御の目標値に設定される。制御部51は、防犯異常検知手段59又は防災異常検知手段60により異常が検知されたか否かを判定し(S19)、異常が検知されなければステップS13に戻る。また、ステップS19にて異常が検知されれば(S19、Yes)、制御部51は、検知された異常の情報をロボット異常信号として監視センタ7に送信し(S21)、ステップS13に戻る。
このように、移動目標位置までの距離がしきい値距離以上のときは、異常発生地点に急行することを優先するために、移動ロボット5は、通常速度より大きい値に設定された遠距離用の異常確認用速度で走行する。そして、移動ロボット5は、自己の異常検知手段が異常を検知しても、監視センタ7へのロボット異常信号の通知を行うものの、停止せずに走行し続ける。監視センタ7では監視員がロボット異常信号と移動ロボット5から送られた映像を目視で確認する。
一方、ステップS13にて移動目標位置までの距離がしきい値距離未満であると判定された場合(S13、No)、移動制御手段51aは、移動速度が近距離の異常確認用速度になるように移動手段52を制御する(S23)。ここでは、記憶部61の現在位置61aと速度情報61eのテーブル(図8)が参照され、現在位置が含まれる区間の近距離の異常確認用速度が求められ、速度制御の目標値に設定される。また、このとき、異常検知時の停止処理が禁止されていれば、これを解除する。制御部51は、防犯異常検知手段59又は防災異常検知手段60により異常が検知されたか否かを判定し(S25)、異常が検知されれば(S25、Yes)、移動制御手段51aが移動手段52を制御して移動ロボット5の移動を停止する(S27)。制御部51は、検知された異常の情報をロボット異常信号として監視センタ7に送信し(S29)、監視センタ7からの制御指示を待ち受ける(S31)。撮像ユニット54の映像は停止中も監視センタ7に送られる。移動を示す制御指示が受信されると、移動ロボット5は移動目標位置への移動を再開する。
このように、移動目標位置までの距離がしきい値距離未満のときは、異常発生地点に近づいており、異常発生地点の周囲まで異常原因が移動している可能性もあるので、移動ロボット5は、十分な異常検知精度が得られるように、遠距離の異常確認用速度より遅く、通常巡回時と同じに設定された近距離の異常確認用速度で走行し、異常検知手段が異常を検知すると停止してロボット異常信号を監視センタ7へ送信し、確実な異常確認を可能にする。
ステップS25にて異常が検知されなかったと判定された場合(S25、No)、移動制御手段51aは移動ロボット5が移動目標位置に到達したか否かを判定する(S33)。ここでは、記憶部61の現在位置61aが移動目標位置と比較され、両者が一致すると移動目標位置に達したと判定される。まだ移動目標位置に達していなければ(S33、No)、ステップS13に戻る。移動目標位置に達すると(S33、Yes)、移動制御手段51aが移動手段52を制御して移動ロボット5を停止させ(S35)、制御部51が監視センタ7からの制御指示を待ち受ける(S37)。このとき、防犯異常検知手段59又は防災異常検知手段60により異常が検知されれば、制御部51は、検知された異常の情報をロボット異常信号として監視センタ7に送信する。また、撮像ユニット54の映像は停止中も監視センタ7に送られる。監視センタ7では、警備装置3にて検知された異常の状況等を移動ロボット5からの情報によって確認できる。
なお、既に急行モードが設定されて移動目標位置へ移動しているときに、新しく警備異常信号が受信されたとする。この場合は、新しく受信された警備異常信号に基づいて、移動目標位置としきい値距離が再設定される。移動制御手段51aは、これらの再設定値を使って図10の処理を行う。
以上に監視システム1の動作について、移動ロボット5を中心として説明した。なお、上記の説明では、移動ロボット5が巡回中に警備装置3により異常が検知された場合について説明した。これに対して、待機モードが設定され、移動ロボット5が基準位置S(図2)で待機しているときに警備装置3で異常が検知された場合も、急行モードが設定され、移動目標位置が同様に設定され、距離算出処理、計時処理、しきい値設定処理、移動制御処理も同様に行われて、移動ロボット5が異常発生場所へと急行する。
以上に本実施の形態について説明した。本実施の形態によれば、異常情報である警備異常信号が受信されたとき、移動ロボット5は、発生した異常に対応する位置を移動目標として移動する。この際、移動ロボット5は、移動目標までの距離に応じて異常(移動ロボットにとっての検知対象)を検知したときの制御を異ならせ、すなわち、移動目標までの距離がしきい値距離未満であれば、異常を検知すると移動手段を停止させ、移動目標までの距離がしきい値距離以上であれば、異常を検知しても停止を禁止する。したがって、移動目標まで遠い場所で、警備装置で検知した異常と関連性が低いと考えられる異常を検知しても、移動ロボット5は停止せずに走行し、警備装置3が検知した異常への対処を優先する。移動目標に近づいた場所で、警備装置3で検知した異常との関連性が高い可能性がある異常を検知すると、移動ロボット5は停止して、確実に異常の所在を確認する。このようにして、移動ロボット5を有効に使いつつも、警備装置3が検知した異常と無関係に停止することを防止して、異常の発生場所まで短時間で移動ロボット5を急行させることができる。
一般には、固定装置である警備装置3の異常検知の信頼性は、移動しながら検知処理を行う移動ロボット5の異常検知の信頼性よりも高い。その反面、警備装置3では、検知した異常の画像等は一般に得られない。本実施の形態によれば、警備装置3が検知した信頼性が高い異常に関する画像等の追加情報を移動ロボット5に入手させることができる。しかも、警備装置3の検知した異常と関連性が低いと考えれる異常を検知したときの移動停止を制限することにより、追加情報の収集を早急に行わせることができる。こうして、機動性が高いという移動ロボット5の特徴を好適に利用して監視システム1の監視能力を向上できる。
なお、単に警備装置3により検知された異常発生場所へ急行するのであれば、異常発生場所へ到達するまで全く停止しないように移動ロボット5を制御することも考えられる。しかし、この場合、警備装置3による異常検知場所の近くで関係ある重要な異常を移動ロボット5が検知しても、そのような重要な異常の確認が行われる前に移動ロボット5が通り過ぎてしまう可能性がある。これに対して、本実施の形態によれば、警備装置3による異常検知場所の近くでは移動ロボット5が異常を検知すると停止するので、必要な情報を得るように移動ロボット5を有効に使いつつ、異常発生場所への到達時間を低減できる。
また、本実施の形態では、計時手段51eが異常情報を受信してからの時間を計時し、しきい値設定手段51fが、計時手段51eにより計時される時間が長くなるほどしきい値距離を長い距離に変更する。これにより、異常情報を受信してからの経過時間が長くなるほど、移動ロボット5は、異常発生場所から遠いところでも異常を検知すると停止する。侵入者の移動や火災の広がりといった時間経過に伴う異常原因の位置的変化を考慮し、位置変化した異常を移動ロボット5で好適に検出できるように時間経過に伴ってしきい値距離を長くしている。したがって、異常検知直後はしきい値距離を初期の小さい値に設定して移動ロボット5を異常検知場所へ早急に移動させつつも、時間経過に伴う異常原因の位置的変化に好適に対処して、セキュリティ性を向上できる。
また、本実施の形態では、移動目標までの距離がしきい値距離未満のときには、移動目標までの距離がしきい値距離以上のときよりも移動速度が低速となるように移動手段が制御される。これにより、移動ロボット5は、移動目標までの距離がしきい値距離以上であって、警備装置の異常に関係する異常を検知する可能性が低いときは、速い速度で目標位置へ向けて移動できる。移動目標までの距離がしきい値未満になり、警備装置の異常に関係する異常を検知する可能性が高まると、移動ロボット5は速度を低下させて、異常を高い精度で検知しながら走行する。したがって、必要な異常を確実に検知しつつも、より速く異常発生場所へ移動することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。