JP2009173648A - フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート - Google Patents

フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート Download PDF

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Abstract

【課題】9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有していても、ハンドリング性に優れた新規なフルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートを提供する。
【解決手段】前記(メタ)アクリレートを、下記式で表される化合物とする。
Figure 2009173648

(式中、環Zはナフタレン環などの縮合多環式芳香族炭化水素環、Rはアルキル基などの置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭化水素基、アルコキシ基などの置換基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0又は1以上の整数、pは1以上の整数である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、フルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格)を有する新規な多官能性(メタ)アクリレートに関する。
光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどの光学材料用途などとして、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)又はそのエチレンオキシド付加体のジアクリレートなどの多官能性アクリレートが使用されている。このような多官能性アクリレートには、耐湿性、耐熱性、高屈折率などの特性の向上が求められている。
一方、ビスフェノールフルオレン(BPF)などの9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物は、耐熱性などにおいて優れた機能を有することが知られており、このような化合物を多官能性アクリレート原料として用いることも知られている。
例えば、特開平4−325508号公報(特許文献1)には、下記式(1)で示される化合物を主成分とするラジカル重合可能な組成物の共重合体であって、屈折率が1.60以上であるプラスチックレンズ材料が開示されている。
Figure 2009173648
(式中、R、Rは水素又はメチル基を、m、nは0〜5の整数を示す)
この文献には、前記式(1)で示される化合物として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンに(メタ)アクリル酸クロリドを反応させた化合物、又は9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加させたのち、(メタ)アクリル酸を反応させた化合物が記載されている。
また、特開2005−162785号公報(特許文献2)には、フルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成された樹脂組成物が開示されており、前記フルオレン骨格を有する化合物として、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの二官能性(メタ)アクリレートを使用できると記載されている。
さらに、特開2007−99741号公報(特許文献3)には、フルオレン骨格を有する特定の多官能性(メタ)アクリレート、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物、および光酸発生剤とで構成された重合性組成物が開示されており、前記多官能性(メタ)アクリレートとして、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類の(メタ)アクリレートの他、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートも使用できると記載されている。
これらの文献に記載の(メタ)アクリレートでは、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有しているため、ビスフェノール類又はそのエチレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレートなどの従来の(メタ)アクリレートに比べて、ある程度、耐熱性などの特性を向上できる。しかし、近年の急速な技術革新に伴い、高屈折率、高耐熱化などの様々な特性の向上がより一層急速に求められつつある。また、これらの文献に記載の(メタ)アクリレートでは、粘度が高すぎるなど、ハンドリング性の点で十分でないものがあり、より一層、実用性に優れた(メタ)アクリレートの開発も期待されている。
そこで、耐熱性などの点で、このようなフルオレン骨格を有する化合物をさらに改良した化合物も検討されている。特開2007−99741号公報(特許文献3)には、下記式で表されるフルオレン骨格を有する化合物が開示されている。
Figure 2009173648
(式中、環ZおよびZは縮合多環式炭化水素環、R1a、R1bおよびRは同一又は異なって置換基を示す。k1およびk2は同一又は異なって0〜4の整数を示し、mは0又は1以上の整数、nは1以上の整数を示す。)
そして、この文献には、上記フルオレン骨格を有する化合物[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ)ナフチルフルオレン類]を熱硬化性又は光硬化性アクリル系樹脂原料として用いることができると記載されており、このようなアクリル系樹脂としては、前記式で表される化合物と、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸低級エステルなど)との反応生成物(多官能性(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート)などが挙げられると記載されている。
なお、この文献には、アクリル系樹脂の詳細については記載されておらず、アクリル系樹脂についての具体的な検討もなされていない。
特開平4−325508号公報(請求項1、段落番号[0011]) 特開2005−162785号公報(請求項1、段落番号[0047]、[0048]) 特開2007−99741号公報(請求項1、段落番号[0064]〜[0065])
従って、本発明の目的は、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格(9,9−ビス(ナフチル)フルオレン骨格など)を有していても、ハンドリング性に優れた新規なフルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートおよびその樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有し、高耐熱性や低線膨張性などの優れた特性を有する新規なフルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートおよびその樹脂組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、硬化後においても光透過性を維持できる新規なフルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートおよびその樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、上記の新規な多官能性(メタ)アクリレートで形成され、高屈折率、高硬度、高耐熱性などの優れた特性を有する硬化物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格(9,9−ビス(ナフチル)フルオレン骨格など)を有する多官能性(メタ)アクリレートについて、鋭意検討した結果、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格とオキシアルキレン基(オキシエチレン基、オキシプロピレン基など)とを組み合わせた新規なフルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートは、9,9−ビス(ヒドロキシ)ナフチルフルオレン類と(メタ)アクリル酸との反応生成物のような(メタ)アクリレートに比べて、ハンドリング性に優れており、実用性の高い多官能性(メタ)アクリレートであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2009173648
(式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、Rはシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0又は1以上の整数、pは1以上の整数である。)
前記式(1)において、Zはナフタレン環などであってもよく、RはC2−4アルキレン基(エチレン基、プロピレン基など)であってもよく、mは1〜4程度であってもよい。
また、前記式(1)において、pは1〜3程度であってもよい。
特に、粘度低減効果を高めるという観点からは、前記式(1)において、Rは分岐C3−4アルキレン基(例えば、プロピレン基)であってもよい。
代表的な前記式(1)で表される化合物には、下記式(1A)で表される化合物が含まれる。
Figure 2009173648
(式中、n1およびn2はそれぞれ0〜3の整数を示し、n1+n2=nであり、R、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
特に、前記式(1)で表される化合物は、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンであってもよい。
また、前記式(1)で表される化合物は、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ分岐C3−4アルコキシナフチル)フルオレンであってもよい。このような前記式(1)において、Rが分岐アルキレン基である化合物は、粘度低減効果が大きく、好ましい。
本発明には、前記化合物と、下記式(3)で表される化合物との混合化合物(混合物)も含まれる。
Figure 2009173648
(式中、Rは、同一又は異なって水素原子又は(メタ)アクリロイル基を示し、2p個のRは、水素原子および(メタ)アクリロイル基をいずれも少なくとも1つ含む。Z、R、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
また、本発明には、前記化合物(前記混合化合物を含む)を含む樹脂組成物(例えば、前記化合物および重合開始剤を含む樹脂組成物、前記化合物、他の多官能性(メタ)アクリレートおよび重合開始剤を含む樹脂組成物など)も含まれる。
さらに、本発明には、前記化合物(又は前記樹脂組成物)の硬化物も含まれる。
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。
本発明の新規なフルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレートおよびその樹脂組成物は、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格とオキシアルキレン基とを組み合わせて有しているので、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有していても、低粘度であり、ハンドリング性に優れている。また、本発明の(メタ)アクリレートおよびその樹脂組成物は、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有し、高耐熱性や低線膨張性などの優れた特性を有している。そのため、本発明の(メタ)アクリレートは、前記のような優れた特性を付与するための熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂として好適であり、実用的価値が高い。さらに、本発明の(メタ)アクリレートは、耐熱性に優れるためか、硬化後においても、光透過性の低下を抑制できる。そのため、本発明の(メタ)アクリレートは、硬化後においても、高い光透過性を維持でき、有用である。また、本発明の硬化物は、上記の新規な多官能性(メタ)アクリレートで形成されているため、高屈折率、高硬度、高耐熱性などの優れた特性を有する。
本発明の化合物(フルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートなどということがある)は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2009173648
(式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0又は1以上の整数、pは1以上の整数である。)
上記式(1)において、環Zで表される縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよく、特に2−ナフチル基であるのが好ましい。
また、前記式(1)において、基Rで表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(又は1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。特に、これらのアルキレン基のなかでも、プロピレン基などの分岐アルキレン基(分岐C3−4アルキレン基など)は、意外にも、エチレン基などに比べて、式(1)で表される化合物の粘度を低減する効果が高い。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの縮合多環式炭化水素環において、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mは、1〜15(例えば、1〜12)程度の範囲から選択でき、例えば、1〜8、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4(例えば、1〜3)、特に1〜2であってもよい。なお、置換数mは、異なる環Zにおいて、同一であっても、異なっていてもよい。また、2つの環Zにおいて、オキシアルキレン基の合計(m×2)は、2〜30(例えば、2〜24)程度の範囲から選択でき、例えば、2〜16(例えば、2〜14)、好ましくは2〜12(例えば、2〜10)、さらに好ましくは2〜8(例えば、2〜6)、特に2〜4(例えば、2〜3)であってもよい。
環Zに置換する置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などのエーテル基(置換ヒドロキシル基);アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などのチオエーテル基(置換メルカプト基);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ヒドロキシル基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
これらのうち、基Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基であるのが好ましく、特に、好ましい基Rは、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などである。
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。なお、2つの環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基Rを含む基((メタ)アクリロイル基含有基などということがある)の置換数pは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数pは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。特に、(メタ)アクリロイル基含有基は、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
前記式(1)で表される代表的な化合物には、下記式(1A)で表される化合物(すなわち、環Zがナフタレン環である化合物)などが含まれる。
Figure 2009173648
(式中、n1およびn2はそれぞれ0〜3の整数を示し、n1+n2=nであり、R、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
なお、上記式(1A)において、n1およびn2は、それぞれ、前記nに対応しており、n1は、0〜3であればよく、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、特に0である。また、n2は、0〜3(例えば、1〜3)であればよく、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、特に0である。なお、n1およびn2は、それぞれのナフタレン環において、同一又は異なる数であってもよく、また、異なるナフタレン環において同一又は異なる数であってもよい。また、置換基Rは、前記と同じであり、同一のナフタレン環及び異なるナフタレン環においてそれぞれ、同一又は異なる置換基であってもよい。
また、前記式(1A)において、(メタ)アクリロイル基含有基の置換数pは、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。さらに、前記式(1A)において、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、特に制限されないが、フルオレンに置換するナフチル基(1又は2−ナフチル基)の置換位置などに応じて、5〜8位のいずれか(例えば、5位)であればよく、特に、2−ナフチル基(β−ナフチル基)が置換している場合には、ナフチル基の6位に少なくとも(メタ)アクリロイル基含有基が置換している場合が多く、1−ナフチル基(α−ナフチル基)が置換している場合には、ナフチル基の5位又は8位(特に5位)に少なくとも(メタ)アクリロイル基含有基が置換している場合が多い。
前記式(1)で表される具体的な化合物としては、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などの前記式(1)においてpが1である化合物;9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などの前記式(1)においてpが2以上である化合物などが挙げられる。
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{6−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−1−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ]−1−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジアルコキシナフチル)フルオレン類;これらの化合物に対応し、前記式(1)においてmが3以上である化合物などが挙げられる。
9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類に対応し、pが2以上の化合物、例えば、9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレンが挙げられる。
9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類に対応し、mが2以上およびpが2以上の化合物、例えば、9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシジアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス{ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシジアルコキシナフチル)フルオレン類;これらの化合物に対応し、前記式(1)においてmが3以上である化合物などが挙げられる。
これらのうち、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなどが好ましい。また、特に、粘度の低減の点からは、前記式(1)において基Rが分岐アルキレン基(例えば、プロピレン基)である化合物、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ分岐C3−4アルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}などが好ましい。
(式(1)で表される化合物の製造方法)
前記式(1)で表される化合物は、特に限定されないが、下記式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とを反応させることにより製造できる。
Figure 2009173648
(式中、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
上記式(2)で表される化合物としては、前記式(1)で表される化合物に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9−ビス(ポリヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9−ビス(ポリヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などの前記式(2)において環Zがナフタレン環である化合物などが挙げられる。
9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−{2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ}−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシナフチル)フルオレン類;これらの化合物に対応し、前記式(2)においてmが3以上である化合物などが挙げられる。
9,9−ビス(ポリヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[ジ(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。9,9−ビス(ポリヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシジアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[ジ{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシジアルコキシナフチル)フルオレン類;これらの化合物に対応し、前記式(2)においてmが3以上である化合物などが挙げられる。
前記式(2)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、(1)下記式(2A)で表される化合物と、基Rに対応するアルキレンオキシド又は基Rに対応するアルキレンカーボネートとを反応させる方法、(2)下記式(2B)で表される化合物と、下記式(2C)で表される化合物とを反応させる方法などにより得ることができる。
Figure 2009173648
(式中、Z、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
(方法(1))
方法(1)において、前記式(2A)で表される化合物としては、前記式(2)で表される化合物に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン]、9,9−ビス(ポリヒドロキシナフチル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシナフチル)フルオレン]などが含まれる。
なお、前記式(2A)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法、例えば、酸(例えば、塩酸、硫酸などの無機酸、固体酸など)及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下で、前記式(2B)で表される化合物(フルオレノン類)と、対応するヒドロキシナフタレン類[ナフトール類(1−ナフトール、2−ナフトールなどのナフトール;メチルナフトールなどのアルキルナフトール(例えば、C1−4アルキルナフトールなど)など)、ポリヒドロキシナフタレン類(例えば、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシナフタレンなどのジ又はトリヒドロキシナフタレン類)など]とを反応させる方法などにより製造したものを用いてもよい。
原料として使用する前記式(2A)で表される化合物の純度は特に限定されないが、通常、95重量%以上であり、好ましくは99重量%以上であってもよい。
また、方法(1)において、基Rに対応するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのC2−6アルキレンオキシド、好ましくはC2−4アルキレンオキシドなどが挙げられる。基Rに対応するアルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのC2−6アルキレンカーボネート、好ましくはC2−4アルキレンカーボネートなどが挙げられる。なお、アルキレンオキシド又はアルキレンカーボネートを反応させると、前記式(2A)で表される化合物のヒドロキシル基を介して(ポリ)オキシアルキレン単位を導入できる。アルキレンカーボネートを使用する場合、アルキレンカーボネートが付加したのち、脱炭酸反応が生じることにより、オキシアルキレン単位(分岐アルコキシ単位)が導入される。
方法(1)において、基Rに対応するアルキレンオキシド又は基Rに対応するアルキレンカーボネートの使用量は、付加させるアルキレンオキシド単位の数に応じて調整でき、前記式(2A)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、2〜50モル(例えば、2〜40モル)、好ましくは2〜30モル(例えば、2〜25モル)、さらに好ましくは2〜20モル(例えば、2〜15モル)程度であってもよい。
反応は、触媒の非存在下で行ってもよいが、通常、触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、塩基触媒、酸触媒が例示でき、通常、塩基触媒を使用できる。塩基触媒としては、金属水酸化物(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)などの無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、1−メチルイミダゾールなどの複素環式第3級アミン)など]、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)などの有機塩基などが例示できる。触媒(塩基触媒)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒の使用量は、触媒の種類に応じて調整でき、前記式(2A)で表される化合物1重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部(例えば、0.003〜0.5重量部)、好ましくは0.005〜0.3重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部程度であってもよい。
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、特に限定されず、使用する原料に応じて選択でき、例えば、アルキレンオキシドを使用する場合には、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類)、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)などが挙げられる。また、アルキレンカーボネートを使用する場合には、前記例示の溶媒の他、アルコール類(メタノール、エタノールなどのC1−4アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)C2−3アルキレングリコールなど)などを使用してもよい。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。溶媒の使用量は、前記式(2A)で表される化合物1重量部に対して、例えば、1〜30重量部、好ましくは1.5〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。
反応は、付加させる化合物(アルキレンオキシド、アルキレンカーボネート)などの種類に応じて、例えば、0〜170℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは20〜130℃程度で行う場合が多い。特に、アルキレンカーボネートを使用する場合、脱炭酸反応を効率よく行うため、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜120℃程度で反応させる場合が多い。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜24時間、好ましくは2〜10時間程度である。
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、必要に応じて、発生するガス(二酸化炭素など)を除去しながら反応を行ってもよい。
目的生成物(式(2)で表される化合物)は、反応終了後の反応混合物から、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して精製してもよい。
(方法(2))
方法(2)において、前記式(2B)で表される化合物としては、9−フルオレノンなどのフルオレノン類が挙げられる。なお、反応に使用する式(2B)で表される化合物(フルオレノン類)の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは99重量%以上であってもよい。
また、方法(2)において、前記式(2C)で表される化合物としては、例えば、アルキレングリコールモノ(ナフチル)エーテル類{例えば、C2−4アルキレングリコールモノナフチルエーテル[エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル、プロピレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテルなど]など}などの前記式(2C)においてmが1であるアルコール類;ジアルキレングリコールモノ(ナフチル)エーテル類[例えば、ジC2−4アルキレングリコールモノ(ナフチル)エーテル(ジエチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテルなど)など]などの前記式(2C)においてmが2以上であるアルコール類などが挙げられる。
なお、前記式(2C)で表される化合物(アルコール類)の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であってもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、通常、酸触媒が使用できる。酸触媒としては、無機酸[硫酸、塩化水素、塩酸(5〜36重量%、好ましくは20〜36重量%程度の塩化水素の水溶液など)、リン酸など]、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸など)など]などが挙げられる。前記硫酸には、希硫酸(例えば、30〜90重量%程度の硫酸)、濃硫酸(例えば、濃度90重量%以上の硫酸)、発煙硫酸などが含まれ、反応系において硫酸に転化可能であれば、硫酸前駆体として、三酸化硫黄を使用してもよい。また、固体酸(陽イオン交換樹脂など)を使用してもよい。酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、酸触媒に加えて、助触媒としてのチオール類を併用してもよい。チオール類としては、助触媒として機能する慣用のチオール類、例えば、メルカプトカルボン酸(メルカプト酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸など)、チオカルボン酸(チオ酢酸、チオシュウ酸など)、アルキルメルカプタン(メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのC1−16アルキルメルカプタン(特にC1−4アルキルメルカプタン)など)、アラルキルメルカプタン(ベンジルメルカプタンなど)又はこれらの塩などが挙げられる。塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)が例示できる。これらのチオール類のうち、メルカプトC2−6カルボン酸(例えば、β−メルカプトプロピオン酸)が好ましい。チオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、反応(液相反応)は、反応溶媒、例えば、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アニソールなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類など)などの反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。
反応温度は、特に限定されないが、例えば、20〜200℃、好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは50〜150℃程度であってもよい。また、反応時間は、原料の種類、反応温度や溶媒中の濃度などに応じて調整でき、例えば、30分〜48時間、通常、1〜24時間、好ましくは1〜10時間程度であってもよい。
また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
目的生成物(式(2)で表される化合物)は、反応終了後の反応混合物から、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して精製してもよい。
以上のようにして、前記式(2)で表される化合物が得られる。なお、反応により得られる前記式(2)で表される化合物(又は(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応に供する化合物)は、単一の化合物であってもよいが、前記式(2)で表される化合物を複数含む混合物であってもよい。例えば、前記式(2)で表される化合物は、前記式(2)においてmが1である化合物と、前記式(2)においてmが2以上(例えば、2)である化合物との混合物であってもよい。このような混合物において、単一化合物の割合は、例えば、70重量%以上(例えば、75〜99.9重量%)、好ましくは80重量%以上(例えば、85〜99.7重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、95〜99.5重量%)程度であってもよい。
前記式(2)で表される化合物との反応に使用する(メタ)アクリル酸又はその誘導体において、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのC1−4アルキル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸ハライド(例えば、(メタ)アクリル酸クロライドなど)、(メタ)アクリル酸無水物などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸又はその誘導体の割合は、下記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2〜20モル、好ましくは2.2〜10モル、さらに好ましくは2.5〜5モル程度であってもよい。
反応では、適宜、触媒(酸触媒、塩基触媒など)を使用してもよい。酸触媒としては、エステル化酸触媒であれば特に限定されず、例えば、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸など)、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)など]などが例示でき、固体化酸[担体に酸(硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸などの無機酸、有機酸)を担持させた固体化酸(固体リン酸など)]、陽イオン交換樹脂、金属酸化物(ZnOなど)、金属ハロゲン化物(CuClなど)、金属塩系触媒[金属硫酸塩(NiSOなど)、金属リン酸塩(Zr、Tiなどの遷移金属のリン酸塩など)、金属硝酸塩(Zn(NO・6HOなど)など]、天然鉱物(酸性白土、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイトなど)などの固体酸触媒も含まれる。酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
塩基としては、例えば、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、金属水酸化物(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)などの無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミン)など]などの有機塩基などが例示できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒(酸触媒、塩基)の使用量は、触媒の種類にもよるが、例えば、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モル、さらに好ましくは0.1〜3モル程度であってもよい。
また、反応は、必要に応じて、重合禁止剤(熱重合禁止剤)の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、ヒドロキノン類(例えば、ヒドロキノン;ヒドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)などのヒドロキノンモノアルキルエーテルなど)、カテコール類(例えば、t−ブチルカテコールなどのアルキルカテコールなど)、アミン類(例えば、ジフェニルアミンなど)、2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−1−オキシルなどが例示できる。重合禁止剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
重合禁止剤の使用量は、例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜8重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒(有機溶媒)としては、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン類など)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、前記触媒が液体である場合、前記触媒を溶媒として使用してもよい。
反応温度や反応時間は、使用する(メタ)アクリル酸又はその誘導体の種類に応じて適宜選択できる。反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度である。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生する水やアルコール類を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。特に、減圧下で反応させると、着色を低減したり、反応時間を短縮できる。
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、反応により得られる化合物は、前記式(1)で表される化合物の単一化合物であってもよく、前記式(1)で表される化合物を複数含む混合物であってもよい。例えば、前記式(1)で表される化合物は、前記式(1)においてmが1である化合物と、前記式(1)においてmが2以上(例えば、2)である化合物との混合物であってもよい。このような混合物において、前記式(1)で表される化合物のうち、単一化合物の割合は、固形分換算で、例えば、60重量%以上(例えば、65〜99.9重量%)、好ましくは70重量%以上(例えば、75〜99.5重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、85〜99重量%)であってもよい。
また、反応により生成した化合物には、生成物としての特性を害しない範囲であれば、前記式(1)で表される化合物の範疇に属さない化合物[例えば、前記式(1)において、2つのmが0である化合物;前記式(1)において、一方のmが0で、他方のmが1以上である化合物;前記式(2)で表される化合物1モルに対して1モルの(メタ)アクリル酸又はその誘導体が付加(反応)した化合物など]を含んでいてもよい。
なお、特に、反応により生成した化合物には、前記式(1)で表される化合物のヒドロキシル基の一部が(メタ)アクリル酸又はその誘導体と反応することなく残存している化合物(化合物Aという)を含んでいてもよい。このような化合物Aは、下記式(3)で表される。
Figure 2009173648
(式中、Rは、同一又は異なって水素原子又は(メタ)アクリロイル基を示し、2p個のRは、水素原子および(メタ)アクリロイル基をいずれも少なくとも1つ含む。Z、R、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
上記式において、2p個のRのうち、水素原子と(メタ)アクリロイル基との個数割合は、例えば、1/0.3〜0.5/1、好ましくは1/0.5〜0.8/1、さらに好ましくは1/0.7〜1/1程度であってもよい。代表的な前記式(3)で表される化合物には、pが1であり、2つのRの一方が(メタ)アクリロイル基、他方が水素原子である化合物などが含まれる。
このような混合物において、混合物全体に対する前記式(1)で表される化合物の割合は、固形分換算で、例えば、50重量%以上(例えば、53〜99.9重量%)、好ましくは55重量%以上(例えば、57〜99.5重量%)、さらに好ましくは60重量%以上(例えば、62〜99重量%)程度であってもよい。
また、前記混合物において、前記式(1)で表される化合物と前記化合物Aとの割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1〜50/50、好ましくは97/3〜55/45、さらに好ましくは95/5〜60/40程度であってもよい。特に、前記式(1)(および前記式(3))において、Rが分岐アルキレン基である場合、前記式(1)で表される化合物と前記化合物Aとの割合は、前者/後者(モル比)=97/3〜50/50、好ましくは95/5〜55/45、さらに好ましくは90/10〜60/40程度であってもよい。前記式(1)で表される化合物は、単独でも低粘度でありハンドリング性に優れているが、化合物Aと混合物を構成することにより、より一層ハンドリング性を向上できる。そのため、本発明には、前記式(1)で表される化合物を含む混合物(特に、前記式(1)で表される化合物と前記化合物Aとの混合化合物)も含まれる。
このような混合物(混合化合物)は、前記式(1)で表される化合物と化合物Aとを混合してもよいが、通常、前記のように、前記式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とを反応させることにより製造できる。なお、化合物Aは、前記式(1)においてRが直分岐鎖状アルキレン基である化合物などを製造する場合において、生成しやすいようである。
[式(1)で表される化合物の用途]
本発明の化合物(前記式(1)で表される化合物又は前記方法により得られる化合物)(前記混合物(又は混合化合物)を含む。以下同じ)は、フルオレン骨格(詳細には9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格)を有しており、高耐熱性、高屈折率、低線膨張性などのフルオレン骨格特有の特性を有している。しかも、このようなフルオレン骨格を有しているにもかかわらず、低粘度でありハンドリング性に優れている。
本発明の化合物は、前記のように、高耐熱性などの特性を有し、ハンドリング性にも優れており、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂として好適に使用できる。熱又は光硬化性樹脂は、通常、重合開始剤などを含む樹脂組成物を構成してもよい。本発明には、このような前記化合物を含む樹脂組成物も含む。
熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂(熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂成分)は、前記化合物のみで構成してもよく、他の多官能性(メタ)アクリレートと組み合わせてもよい。熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂を本発明の化合物のみで構成すると、硬化物にフルオレン骨格を高濃度で導入することができる。他の多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート{アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ジ乃至テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ乃至テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノールA(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレートなど}、三官能以上の多官能性(メタ)アクリレート[例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレートなどのトリ又はテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど]、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、前記式(1)で表される化合物の範疇に属さないフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート{9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)エトキシフェニル]フルオレン類など}などが挙げられる。これらの他の多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他の多官能性(メタ)アクリレートの割合は、前記式(1)で表される化合物100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは2〜60重量部、さらに好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
なお、前記樹脂組成物は、必要に応じて、重合開始剤、希釈剤などを含んでいてもよい。
重合開始剤には、熱重合開始剤や光重合開始剤が含まれる。熱重合開始剤と光重合開始剤とを組み合わせてもよい。熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイドなど)など]、過酸エステル類(過酢酸t−ブチルなど)、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)など]、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物などのアゾ化合物などが含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)などのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
重合開始剤(および光増感剤の総量)の使用量は、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、1〜30重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、5〜15重量部)、さらに好ましくは1.5〜10重量部程度であってもよい。また、光増感剤の使用量は、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは20〜100重量部程度であってもよい。
希釈剤としては、反応性希釈剤、非反応性希釈剤(溶媒)が含まれる。反応性希釈剤としては、特に限定されず、重合性単量体、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキル、好ましくは(メタ)アクリル酸C1−10アルキルなど]、メタアクリル酸シクロアルキル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−8シクロアルキルなど]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシアルキルなど]、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、アミノアルキル(メタ)アクリレート(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマー、非(メタ)アクリル系モノマー(例えば、芳香族ビニル系単量体(スチレンなど)など)などを好適に使用できる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
反応性希釈剤の割合は、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;カルボン酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステルなど)、炭酸エステル(炭酸プロピレンなど)などのエステル類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などが例示できる。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の割合は、例えば、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、1〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
また、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明には、前記式(1)で表される化合物(前記混合物を含む。以下同じ)又は前記樹脂組成物の硬化物も含まれる。このような硬化物は、前記式(1)で表される化合物又はその樹脂組成物を硬化処理することにより製造できる。例えば、フィルム状の硬化物は、基材に対して、前記式(1)で表される化合物又はその樹脂組成物を塗布して塗膜(又は薄膜)を形成した後、硬化処理を施すことにより製造してもよい。なお、フィルム状の塗膜(又は薄膜)の厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜300μm程度であってもよい。また、三次元的形状(例えば、レンズ状など)の硬化物は、注型成形などを利用して製造できる。
このような方法では、優れたハンドリング性を有する前記式(1)で表される化合物を使用するため、多量の希釈剤(溶媒、重合性希釈剤など)による希釈や、低粘度化のための加熱などを要しなくても、硬化物を製造できる。そのため、硬化物に高濃度でフルオレン骨格を導入させやすく、優れた特性(高屈折率、高耐熱性など)を有する硬化物を容易に製造できる。
なお、硬化処理としては、加熱処理、光照射処理などが挙げられる。加熱処理と光照射処理を組み合わせてもよい。加熱処理において、加熱温度は、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃程度であってもよい。
また、光照射処理(露光処理)において、光照射エネルギー量は、用途、塗膜の膜厚などによって異なるが、通常、0.1〜10000mJ/cm、好ましくは1〜8000mJ/cm、さらに好ましくは10〜5000mJ/cm程度であってもよい。
本発明の化合物は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有しつつ、ハンドリング性においても優れており、種々の熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂用途として使用できる。
具体的には、本発明の化合物(又は本発明の化合物を用いて得られる硬化物)は、インク材料、発光材料(例えば、有機EL用発光材料など)、有機半導体、黒鉛化前駆体、ガス分離膜(例えば、COガス分離膜など)、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ[ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、反射防止フィルム(又は反射防止膜、例えば、表示デバイス用反射防止フィルムなど)、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム[例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ(特に薄型ディスプレイ)用フィルム(フィルタ、保護フィルムなど)など]、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに好適に使用できる。特に、本発明の化合物は、光学材料用途に好適に利用でき、このような光学材料の形状としては、例えば、フィルム又はシート状、板状、レンズ状、管状などが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のようにして行った。
(HPLC純度)
東ソー(株)製、逆相カラム(ODS−80TM)を使用し、254nmにて、水/アセトニトリル(重量比)=30/70で30分、その後、水/アセトニトリル(重量比)=0/100で30分で純度を測定した。
(NMR)
H−NMRスペクトルは、内標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒としてCDClを用いて、JEOL GTX−400分光計によって記録した。
(FD−MS)
電界脱離式マススペクトル(日本電子製JMS−700)にて、加速電圧8kV、対抗電圧2kV、エミッタ電流0−40mAにて測定した。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計(アタゴ製、DR−M2<循環式恒温水槽 60−C3使用>)を用い、25度を保持し、589nmでの屈折率を測定した。
(粘度)
TV−22形粘度計(コーンプレートタイプ、東機産業製、TVE−22L)を用い、低粘度用の標準ロータ(01:1゜34’×R24)にて、1.0〜20rpm(粘度によって変える)にて、25℃での粘度を測定した。
(HAZE)
色差濁度測定器(日本電色工業製、COH−300A)を用い、試験管(マルエム製、A−24(24×200)、直口)又は10×10mm石英セルにアクリレートを入れて測定した。
(色相)
色差濁度測定器(日本電色工業製、COH−300A)を用い、試験管(マルエム製、A−24(24×200)、直口)又は10×10mm石英セルにアクリレートを入れて測定した。
(L*,a*,b*)
色差濁度測定器(日本電色工業製、COH−300A)を用い、試験管(マルエム製、A−24(24×200)、直口)又は10×10mm石英セルにアクリレートを入れて測定した。
(鉛筆硬度)
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に作製した硬化膜を鉛筆硬度計(HEIDON−14:新東科学(株)製)に設置し、各種鉛筆を1kgの加重をかけつつ45度の角度で押しつけ、25mm/分の速度で硬化膜上を移動させ、硬化膜に生じた傷の有無を目視にて確認することにより、鉛筆硬度を測定した。
(合成例1)
10Lのセパラブルフラスコに、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNF、大阪ガスケミカル(株)製)450g(1.0mol)、エチレンカーボネート881g(10mol)および溶媒としてのジエチレングリコール1500g(17mol)を入れ、触媒として1−メチルイミダゾール(和光純薬工業(株)製)10gを添加した後に、100℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、イソプロピルアルコール5000mlを加えて10℃まで冷却することにより、白色粉末61gを得た。得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度95.7%で原料として用いたBNF1モルに対して2モルのオキシエチレン基(エトキシ基)が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、FD−MSにより測定された分子量=530(ピーク)、BNF−EOという)が得られた。
Figure 2009173648
H−NMR(CDCl,δ):3.8ppm(t,4H),4.0−4.2ppm(t,6H),7.0−7.7ppm(m,18H)、7.9ppm(d、2H)。
(合成例2)
合成例1において、エチレンカーボネート881gに代えて、プロピレンカーボネート1029gを用いた以外は合成例1と同様に合成した結果、白色粉末420gを得た。得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度86.3%で原料として用いたBNF1モルに対して2モルのオキシプロピレン基(プロポキシ基)が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、BNF−POという)が得られた(BNF1モルに対して3モルのオキシプロピレン基が付加した化合物が8.7%、BNF1モルに対して1モルのオキシプロピレン基が付加した化合物が4.3%)。
Figure 2009173648
H−NMR(CDCl,δ):1.2ppm(d、6H)、3.8−4.2ppm(t,7H),7.1−7.7ppm(m,18H)、7.9ppm(d、2H)。
(実施例1)
合成例1で得られた化合物74.4g(0.138mol)、アクリル酸(東京化成工業(株)製)25.9g(0.359mol)、p−トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)3.28g(0.017mol)、トルエン135g(1.463mol)、及びメトキノン(キシダ化学(株)製)0.3g(0.002mol)を仕込み、100℃〜115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去し、粘稠物を得た。さらに、得られた粘稠物のH−NMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式)であることを確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl,δ)ppm:
4.3ppm(t,4H)、4.5ppm(t,4H)、5.8ppm(d,2H)、6.2ppm(t,2H)、6.4ppm(d,2H)、7.1−7.7ppm(m,18H)、7.9ppm(d,2H)。
得られた粘稠物のHPLC純度は、BNF−EOにアクリル酸が1つ付加した化合物(モノアクリレート体)が5.3%、2個付加した目的物(下記式)が85.6%、複数の分子にアクリル酸が1つ又は2つ付加した不純物の多量体が2.7%であった。そして、得られた粘稠物の屈折率は1.6483、粘度は230.2mPa・sであり、加熱残分は65.0%であり、ヘーズ(HAZE)が50.9であった。
Figure 2009173648
(実施例2)
合成例2で得られた化合物78.2g(0.138mol)、アクリル酸(東京化成工業(株)製)25.9g(0.359mol)、p−トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)3.28g(0.017mol)、トルエン135g(1.463mol)、及びメトキノン(キシダ化学(株)製)0.3g(0.002mol)を仕込み、100℃〜115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去し、粘稠物を得た。さらに、得られた粘稠物のH−NMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式)であることを確認した。
H−NMR(CDCl,δ)ppm:
4.1〜4.5ppm(m,4H)、4.8〜5.3ppm(m,1.5H)、5.8ppm(d,1.6H)、6.2ppm(m、1.6H)、6.4ppm(d、1.4H)、7.1−7.7ppm(m,19H)、7.9ppm(d,2H)。
得られた粘稠物のHPLC純度は、BNF−POにアクリル酸が1つ付加した化合物(モノアクリレート体)が15.5%、2個付加した目的物(下記式)が57.9%であった。そして、得られた粘稠物の屈折率は1.6427、粘度は60.2mPa・sであり、加熱残分は55.34%であり、ヘーズ(HAZE)が55.38であった。
Figure 2009173648
(実施例3)
実施例1で得られた粘稠物100重量部を120℃に加熱して溶媒を除去した後に、常温まで温度を下げ、3重量部の光重合開始剤(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)を加えて均一に溶解させた後、常温でセルローストリアセテートフィルム(TAC100:富士フィルム(株)製)上又はポリエチレンテレフタレートフィルム(テトロン100HL98W:富士フィルム(株)製)上(鉛筆硬度の測定の場合)に塗布し、250μmアプリケーター(太佑機材(株)製)にて均一化した(約100μm)。その後、UV照射機(H015−L31:アイグラフィックス(株)製)を用いて、500mJ/cmでフィルムに光照射し、硬化膜を作製した。
得られた硬化膜(フィルム状硬化物)について、各種物性を測定したところ、屈折率(25℃)は1.655、鉛筆硬度は3Hであった。また、以下のようにして、実施例1で得られた粘稠物の硬化物を作製し、ガラス転移温度(Tg)を測定したところ、300℃を越えていた。
実施例1で得られた粘稠物100重量部に3重量部の光重合開始剤(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)を加え、光重合開始剤を均一に溶解させたのち、DSC測定用アルミパンに約10mg秤量し、120℃に加熱した常圧乾燥機に入れ5分間放置し溶媒を除去した。その後、UV照射機(H015−L31:アイグラフィックス(株)製)を用いて、2,000mJ/cmで光照射し硬化物を作製した。そして、DSC(DSC6220:SII社製)を10℃/minで昇温し、30〜300℃の範囲でのガラス転移温度の測定を行った。
(実施例4)
実施例3において、実施例1で得られた粘稠物に代えて実施例2で得られた粘稠物を使用したこと以外は、実施例3と同様にして硬化膜を作製し、各種物性を測定したところ、屈折率(25℃)は1.642、鉛筆硬度は3H、ガラス転移温度(Tg)は300℃を越えていた。
(合成例3)
10Lのセパラブルフラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン(BOPPF、大阪ガスケミカル(株)製)502g(1mol)、エチレンカーボネート881g(10mol)、溶媒としてのジエチレングリコール1500g(17mol)を入れ、触媒として1−メチルイミダゾール(和光純薬工業(株)製)10gを添加した後に、100℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、イソプロピルアルコール5000mlを加えて10℃まで冷却することにより、白色粉末460gを得た。得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度94.1%で、原料として用いたBOPPF1モルに対して2モルのオキシエチレン基が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、BOPPF−EOという)が得られた。
Figure 2009173648
H−NMR(CDCl,δ)ppm:
3.7−3.8ppm(m,6H)、4.0ppm(t、4H)、6.8−7.6ppm(m,22H)、7.8ppm(d,2H)。
(比較例1)
合成例2で得られた化合物59.1g(0.1mol)、アクリル酸(東京化成工業(株)製)18.7g(0.26mol)、p−トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)2.38g(0.013mol)、トルエン98g(1.1mol)、及びメトキノン(キシダ化学(株)製)0.22g(0.002mol)を仕込み、110℃〜115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去し、固体を得た。さらに、得られた固体のH−NMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式)であることを確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl,δ):
2.3ppm(s、3H)、4.2ppm(t,4H)、4.4ppm(t、4H)、5.8ppm(d、2H)、6.1ppm(t、2H)、6.3ppm(t、2H)、6.8−7.6ppm(m,26H)、7.8ppm(d,2H)。
得られた固体のHPLC純度は、BOPPF−EOにアクリル酸が1つ付加した化合物(モノアクリレート体)が2.6%、2個付加した目的物(下記式)が97.2%、複数の分子にアクリル酸が1つ又は2つ付加した不純物の多量体が0.1%以下であった。
Figure 2009173648
(比較例2)
比較例1で得られた固体を用いて、実施例3と同様の硬化膜の作製を試みたが、120℃まで加熱しても溶融しなかった。そのため、比較例1で得られた固体を、さらに130℃まで加熱したが、結晶性が高いためか、溶融せず、フィルムに塗布することができなかった。
(比較例3)
実施例3において、実施例1で得られた粘稠物に代えて、BPEFA(大阪ガスケミカル(株)製,9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを主成分とするフルオレン骨格含有(メタ)アクリレート、高粘稠物)を使用して、実施例3と同様にして硬化膜を作製しようとしたが、BPEFAは極めて高粘度(25℃で10万mPa・s以上)であり、常温ではフィルムに塗布することができなかった。そのため、BPEFA100重量部を120℃に加熱して溶媒を除去した後に、80℃まで温度を下げて3重量部の光重合開始剤(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)を加えて均一に溶解させた後、塗布したこと以外は、実施例3と同様にして硬化膜を作成した。なお、BPEFAは80℃の加熱においてようやく塗布可能なレベルに達したのに対した。
得られた硬化膜について、各種物性を測定したところ、屈折率(25℃)は1.626、鉛筆硬度は3Hであった。また、実施例2と同様にしてガラス転移温度(Tg)を測定したところ、211℃であった。
これらの結果から明らかなように、実施例で得られたナフタレン骨格を有する化合物は、類似の同様の骨格(ビフェニル骨格)を有する比較例1で得られた化合物に比べて、意外にも著しく低粘度であり、常温でも塗布可能であった。また、実施例で得られた化合物は、比較例3で使用した一般的なフルオレン骨格含有(メタ)アクリレート化合物に比べて、ハンドリング性において優れているだけでなく、その硬化物において、屈折率、硬度、耐熱性のいずれにおいても優れていた。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される化合物。
    Figure 2009173648
    (式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、Rはシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0又は1以上の整数、pは1以上の整数である。)
  2. 式(1)において、Zがナフタレン環であり、RがC2−4アルキレン基であり、mが1〜4である請求項1記載の化合物。
  3. 式(1)において、pが1〜3である請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 式(1)において、Rが分岐C3−4アルキレン基である請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
  5. 下記式(1A)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
    Figure 2009173648
    (式中、n1およびn2はそれぞれ0〜3の整数を示し、n1+n2=nであり、R、R、R、R、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
  6. 9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンである請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
  7. 9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ分岐C3−4アルコキシナフチル)フルオレンである請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の化合物と、下記式(3)で表される化合物との混合化合物。
    Figure 2009173648

    (式中、Rは、同一又は異なって水素原子又は(メタ)アクリロイル基を示し、2p個のRは、水素原子および(メタ)アクリロイル基をいずれも少なくとも1つ含む。Z、R、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の化合物および重合開始剤を含む樹脂組成物。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の硬化物。
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