この種の発振回路としては、従来、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この文献に記載の技術を含め、従来一般に知られた発振回路について、図11を参照しつつ説明する。なお、図11は、そうした発振回路の全体構成の等価回路図である。
この図11に示すように、従来の発振回路100は、基本的に、閾値電圧レベル以上の電圧レベルにて信号が入力されると論理Hレベルに対応する電圧レベルにて信号を出力するとともに、閾値電圧レベルを下回る電圧レベルにて信号が入力されると論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号を出力するバッファ回路部M10と、入力される信号の電圧レベルに対応する論理レベルを反転した論理レベルに対応する電圧レベルにて信号を出力する反転回路部M20と、バッファ回路部M10に入力される信号の電圧レベルを高電位側及び低電位側の双方でクランプするクランプ回路部として使用されるツェナーダイオードDz1と、当該発振回路の時定数を決定する抵抗器R1及びコンデンサCと、バッファ回路部M10や反転回路部M20の駆動電圧を供給するための高電位側電源端子VDD及び接地端子GNDと、当該発振回路100としての出力信号を出力するための出力端子OUTとを備える。
詳しくは、バッファ回路部M10は、図11に示すように、高電位側電源端子VDD及び接地端子GNDにそれぞれ接続されて駆動電圧が供給されている。また、バッファ回路部M10は、その出力端子が反転回路部M20の入力端子に接続されているとともに、コンデンサCを介して当該バッファ回路部M10の入力端子に接続されている。
反転回路部M20は、図11に示すように、高電位側電源端子VDD及び接地端子GNDにそれぞれ接続されて高電位側電源端子VDDによって駆動電圧が供給されている。また、反転回路部M20は、その出力端子が上記出力端子OUTに接続されているとともに、抵抗器R1及びコンデンサCを介して当該反転回路部M20の入力端子に接続されている。
ツェナーダイオードDz1は、そのカソード及びアノードがバッファ回路部M10の入力端子及び接地端子GNDにそれぞれ接続されており、逆方向接続されている。そのため、ツェナーダイオードDz1は、バッファ回路部M10の入力端子と高電位側電源端子との間の電圧をツェナー電圧Vzでクランプし、バッファ回路部M10の入力端子と接地端子GNDとの間の電圧を順方向電圧Vfでクランプすることとなる。
以上のように構成された発振回路100の動作例を図12(a)及び(b)を参照しつつ説明する。なお、図12(a)は、発振回路100の接続点J1における電圧レベルの推移を示すタイミングチャートであり、図12(b)は、発振回路100の出力端子OUTから出力される出力信号の電圧レベルの推移を示すタイミングチャートである。
図12(a)に示されるように、発振回路100は、例えば時刻t100において電源が投入されて発振動作を開始したものとし、この電源投入時においては、接続点J1における電圧レベルが接地電位(すなわち、「0.0[V]」)とされているものとする。そのため、バッファ回路部M10の入力端子における電圧レベルがその閾値電圧レベル(例えば2.5[V])を下回るため、バッファ回路部M10は、反転回路部M20に対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。また、反転回路部M20は、そうした論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号が入力されるため、出力端子OUTに対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。すなわち、図12(b)に示すように、発振回路100は、当該発振回路100が電源投入された時刻t100において、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力することになる。
発振回路100の電源投入(時刻t100)直後においては、反転回路部M20の出力端子における電圧レベルの方が入力端子における電圧レベルよりも高いため、先の図11に矢印で示すように、「(高電位側電源端子VDD→反転回路部M20→)反転回路部M20の出力端子→抵抗器R1→コンデンサC」といった経路をたどって充電電流I1が流れ、コンデンサCが充電される。そのため、こうしたコンデンサCの充電に伴って、接続点J1における電圧レベル、すなわち、バッファ回路部M10の入力端子における電圧レベルは、図12(a)に示すように、上記時刻t100以降、上昇する。
そして、接続点J1における電圧レベルが上昇し、例えば時刻t101において、バッファ回路部M10の閾値電圧レベル以上になると、バッファ回路部M10は、論理Lレベルに対応する電圧レベルから論理Hレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換える。すると、当該発振回路100がツェナーダイオードDz1を備えていなければ、高電位側電源端子VDD及び接地端子GND間の電位差分だけ接続点J1における電圧レベルが上記閾値電圧レベルから引き上げられるところ、ツェナーダイオードDz1によって接続点J1における電圧レベルがクランプされているため、接続点J1における電圧レベルは、図12(a)に示すように、ツェナー電圧Vzだけ接地電位GNDから引き上げられた電圧レベル(例えば「7.5[V]」)となる。
なお、バッファ回路部M10は、反転回路部M20に対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。そして、反転回路部M20は、そうした論理Hレベルに対応する電圧レベルにて信号が入力されるため、出力端子OUTに対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。したがって、図12(b)に示すように、発振回路100は、上記時刻101において、出力端子OUTに対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力することになる。
このように、バッファ回路部M10が論理Lレベルに対応する電圧レベルから論理Hレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換えると、反転回路部M20の入力端子(接続点J2)における電圧レベルの方が出力端子(接続点J3)における電圧レベルよりも高くなるため、先の図11に矢印にて示すように、「コンデンサC→抵抗器R1→接続点J3」といった経路をたどって放電電流I2が流れ、コンデンサCが放電される。そのため、こうしたコンデンサCの放電に伴って、接続点J1における電圧レベル、すなわち、バッファ回路部M10の入力端子における電圧レベルは、図12(a)に示すように、上記時刻t101以降、低下する。
そして、接続点J1における電圧レベルが低下し、例えば時刻t112において、バッファ回路部M10の閾値電圧レベルを下回ると、バッファ回路部M10は、論理Hレベルに対応する電圧レベルから論理Lレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換える。すると、当該発振回路100がツェナーダイオードDz1を備えていなければ、接続点J1における電圧レベルが上記閾値電圧レベルから上記電位差分だけ引き下げられるところ、ツェナーダイオードDz1によって接続点J1における電圧レベルがクランプされているため、接続点J1における電圧レベルは、図12(a)に示すように、順方向電圧Vfだけ接地電位GNDから引き下げられた電圧レベル(例えば「−2.5[V]」)となる。
なお、バッファ回路部M10は、反転回路部M20に対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。そして、反転回路部M20は、そうした論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号が入力されるため、出力端子OUTに対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。したがって、図12(b)に示すように、発振回路100は、時刻112において、出力端子OUTに対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力することになる。この時刻t112以降においては、図12(b)から分かるように、コンデンサCの充放電が同様に繰り返されるため、重複する説明を割愛する。
ところで、ツェナーダイオードDz1は、ツェナー電圧Vzの大きさが温度上昇に伴って大きくなる、いわゆる正の温度特性を有することが知られている。また、ツェナーダイオードDz1は、順方向電圧Vfの大きさが温度上昇に伴って小さくなる、いわゆる負の温度特性を有することが知られている。
上記従来の発振回路100では、正の温度特性を有するツェナー電圧Vzが高電位側のクランプ電圧として用いられるとともに、負の温度特性を有する順方向電圧Vfが低電位側のクランプ電圧として用いられている。これにより、ツェナー電圧Vzの正の温度特性及び順方向電圧Vfの負の温度特性を互いにキャンセルし、接続点J1における電圧レベルの振幅を温度によらず一定とすることができるようになる。そしてひいては、クランプ回路部の温度特性に依存しない一定の発振周期が確保されるようになっている。
特開2007−214645号公報
ところで、発振回路100の構成要素のうち、クランプ回路部(ツェナーダイオードDz1)のみが温度特性を有するわけではなく、反転回路部M20も温度特性を有する。詳しくは、反転回路部M20は、直列接続されたP型MOSトランジスタ素子及びN型MOSトランジスタ素子を含んで構成されており、これらMOSトランジスタ素子は、その温度が上昇するとオン抵抗値が大きくなる、いわゆる正の温度特性を有する。そして、これらMOSトランジスタ素子は、コンデンサCを充放電する上記充電電流I1及び放電電流I2の電流流路上にあるため、発振回路100の発振周波数(すなわち時定数τ=(C×R1))にMOSトランジスタ素子の温度特性が大きく影響する。したがって、当該発振回路の構成要素の温度特性に依存しない一定の発振周期を確保するにあたっては、クランプ回路部(ツェナーダイオードDz1)の温度特性を考慮するだけでは不十分であり、反転回路部M20(MOSトランジスタ素子)の温度特性を考慮する必要がある。
具体的には、発振回路100(正確には上記MOSトランジスタ素子)の温度が上昇したときの接続点J1における電圧レベルの推移を先の図12(a)に一点鎖線及び二点鎖線にて示す。図12(a)中に実線にて示すような、例えば時刻t101から時刻t112までの期間であったコンデンサCの放電期間は、発振回路100の温度が上昇すると、図12(a)中に一点鎖線にて示すような、例えば時刻t101から時刻t122までの期間に長期化されてしまう。また、発振回路100の温度がさらに上昇すると、そうした放電期間は、図12(a)中に二点鎖線にて示すような、例えば時刻t101から時刻t132までの期間にさらに長期化されてしまう。その結果、発振回路100の温度が上昇したときの出力端子OUTから出力される出力信号の電圧レベルの推移を図12(c)及び図12(d)にそれぞれ示すように、パルス自体及びパルス間隔が長くなり、発振周波数が低下してしまう。すなわち、発振回路100の温度上昇に伴ってMOSトランジスタ素子のオン抵抗値が増大すると、上記時定数τが大きくなり、発振周波数が低下してしまうことも起こり得る。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、当該発振回路の温度が発振周波数に与える影響をより低減することのできる発振回路を提供することにある。
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、入力される信号の電圧レベルを閾値電圧レベルと比較しつつ、その比較結果に応じて異なる一定の電圧レベルにて信号を出力する比較回路部と、前記比較回路部の出力端子に接続されてこの比較回路部から出力される信号を取り込み、取り込んだ信号の電圧レベルを反転した電圧レベルにて信号を出力する反転回路部と、前記反転回路部の出力端子に一端が接続されるとともに前記比較回路部の入力端子に他端が接続される第1抵抗器と、前記比較回路部の入力端子及び出力端子間に接続されて充放電されるコンデンサと、前記比較回路部及び前記反転回路部にそれぞれ駆動電源を供給するための高電位側電源端子及び低電位側電源端子と、前記比較回路部の入力端子と前記高電位側電源端子との間に接続されて、前記比較回路部の入力端子における電圧レベルを高電位側にてクランプする高電位側クランプ回路部と、前記比較回路部の入力端子と前記低電位側電源端子との間に接続されて、前記比較回路部の入力端子における電圧レベルを低電位側にてクランプする低電位側クランプ回路部とを備え、前記比較回路部及び前記反転回路部による前記コンデンサの充放電に基づいて、前記反転回路部の出力端子における電圧レベルを所定の電圧レベル間で所定周波数にて発振させる発振回路として、前記高電位側クランプ回路部が有する温度特性及び前記低電位側クランプ回路部が有する温度特性並びに前記反転回路部が有する温度特性を相殺する温度特性を有する第2抵抗器が、前記反転回路部の出力端子及び前記コンデンサ間に介在されていることとした。
課題の欄にも記載したように、発振回路の構成要素のうち、高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部だけが温度特性を有するのではなく、反転回路部も温度特性を有しており、この反転回路部はコンデンサを充電する電流の流路上にあるため、その温度特性は当該発振回路の発振周波数に大きく影響する。その点、発振回路としての上記構成では、そうした高電位側クランプ回路部の温度特性及び低電位側クランプ回路部の温度特性並びに反転回路部の温度特性を相殺する温度特性を有する第2抵抗器を、コンデンサを充放電する電流の流路である、反転回路部の出力端子及びコンデンサ間に介在させている。したがって、当該発振回路の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。ちなみに、時定数が小さいときほど、すなわち、発振周波数が高いときほど、反転回路部の温度特性が発振周波数に与える影響が大きくなるが、上記構成によれば、低周波数帯においてはもちろんのこと、そうした高周波数帯においても、すなわち、幅広い発振周波数帯において、当該発振回路の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
上記請求項1に記載の構成において、例えば請求項2に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部は、負の温度特性を有しており、第2抵抗器は、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部が有する負の温度特性並びに前記反転回路部が有する正の温度特性を相殺する温度特性を有するとよい。
高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部はそれぞれ負の温度特性を有するため、これらクランプ回路部の温度が上昇すると、比較回路部の入力端子における電圧レベルが高電位側にてクランプされるクランプ電圧の大きさ及び低電位側にてクランプされるクランプ電圧の大きさはそれぞれ小さくなる。すると、クランプ電圧の振幅が小さくなるため、コンデンサの充放電期間は短くなる。一方、反転回路部は正の温度特性を有するため、反転回路部の温度が上昇すると、コンデンサの充放電期間は長くなる。したがって、これらクランプ回路部の温度特性と反転回路部の温度特性は互いに相殺され、第2抵抗器を介在させることは不要とも思われる。
しかしながら、クランプ回路部の負の温度特性が反転回路部の正の温度特性よりも強い(大きい)場合にあっては、当該発振回路の温度が上昇すると、コンデンサの充放電期間は短縮されてしまう。逆に、反転回路部の正の温度特性がクランプ回路部の負の温度特性よりも強い(大きい)場合にあっては、当該発振回路の温度が上昇すると、コンデンサの充放電期間は長期化されてしまう。
その点、上記請求項2に記載の構成では、高電位側及び低電位側クランプ回路部の負の温度特性が反転回路部の正の温度特性よりも大きい場合にあっては、その差分を相殺する正の温度特性を第2抵抗器に持たせることができる。逆に、反転回路部の正の温度特性が高電位側及び低電位側クランプ回路部の負の温度特性よりも大きい場合にあっては、その差分を相殺する負の温度特性を第2抵抗器に負の温度特性を持たせることができる。これにより、発振回路全体としての温度特性を相殺することができるようになり、当該発振回路の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
具体的には、例えば請求項3に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部は、前記高電位側電源端子及び前記比較回路部の入力端子間に逆方向接続された第1ダイオードによって構成されているとともに、前記低電位側クランプ回路部は、前記比較回路部の入力端子及び前記低電位側電源端子間に逆方向接続された第2ダイオードによって構成されているとよい。これにより、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第1ダイオードの順方向電圧によって高電位側においてクランプすることができるようになり、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第2ダイオードの順方向電圧によって低電位側においてクランプすることができるようになる。なお、これら高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部はそれぞれ単一の第1ダイオード及び第2ダイオードによって構成してもよく、複数の第1ダイオード及び第2ダイオードによって構成してもよい。
また、上記請求項1に記載の構成において、例えば請求項4に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部は、正の温度特性を有しており、第2抵抗器は、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部が有する正の温度特性並びに前記反転回路部が有する正の温度特性を相殺する負の温度特性を有するとよい。
高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路は正の温度特性をそれぞれ有するため、これらクランプ回路部の温度が上昇すると、比較回路部の入力端子における電圧レベルが高電位側にてクランプされるクランプ電圧の大きさ及び低電位側にてクランプされるクランプ電圧の大きさはそれぞれ大きくなる。すると、クランプ電圧の振幅が大きくなるため、コンデンサの充放電期間は長くなる。また、反転回路部も正の温度特性を有するため、反転回路部の温度が上昇すると、コンデンサの充放電期間は長くなる。
その点、上記請求項4に記載の構成によれば、高電位側クランプ回路部の正の温度特性及び低電位側クランプ回路部の正の温度特性並びに反転回路部の正の温度特性を相殺する負の温度特性を第2抵抗器に持たせることができるため、発振回路全体としての温度特性を相殺することができるようになる。したがって、当該発振回路の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
具体的には、例えば請求項5に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部は、前記高電位側電源端子及び前記比較回路部の入力端子間に順方向接続された第1ツェナーダイオードによって構成され、前記低電位側クランプ回路部は、前記比較回路部の入力端子及び前記低電位側電源端子間に逆方向接続された第2ツェナーダイオードによって構成されているとよい。これにより、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第1ツェナーダイオードのツェナー電圧によって高電位側においてクランプすることができるようになり、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第2ツェナーダイオードのツェナー電圧によって低電位側においてクランプすることができるようになる。なお、これら高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部はそれぞれ単一の第1ツェナーダイオード及び第2ツェナーダイオードによって構成してもよく、複数の第1ツェナーダイオード及び第2ツェナーダイオードによって構成してもよい。
なお、高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部は、同一の温度特性を有していなくてもよい。すなわち、上記請求項1に記載の構成において、例えば請求項6に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部は、互いに相補的な温度特性を有しており、第2抵抗器は、前記反転回路部が有する正の温度特性を相殺する負の温度特性を有するとよい。
背景技術の欄にも記載したように、高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部はそれぞれ相補的な温度特性を有するため、コンデンサの放電期間は、これらクランプ回路部の温度特性には依存しなくなる。しかしながら、反転回路部が正の温度特性を有するため、反転回路部の温度が上昇すると、コンデンサの充放電期間は長くなってしまう。
その点、上記請求項6に記載の構成では、反転回路部が有する正の温度特性を相殺する負の温度特性を第2抵抗器に持たせることができる。これにより、発振回路全体としての温度特性を相殺することができるようになり、当該発振回路の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
具体的には、例えば請求項7に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部は、前記比較回路部の入力端子及び前記低電位側電源端子間に逆方向接続された第3ツェナーダイオードによって構成されているとよい。これにより、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第3ツェナーダイオードのツェナー電圧によって高電位側においてクランプすることができるようになるとともに、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第3ツェナーダイオードの順方向電圧によって低電位側においてクランプすることができるようになる。
また、例えば請求項8に記載の発明のように、前記高電位側クランプ回路部及び前記低電位側クランプ回路部は、前記高電位側電源端子及び前記比較回路部の入力端子間に逆方向接続された第4ツェナーダイオードによって構成されているとよい。これにより、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第4ツェナーダイオードの順方向電圧によって高電位側においてクランプすることができるようになるとともに、比較回路部の入力端子における電圧レベルを第4ツェナーダイオードのツェナー電圧によって低電位側においてクランプすることができるようになる。
なお、これら高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部はそれぞれ単一の第3ツェナーダイオード及び第4ツェナーダイオードによって構成してもよく、複数の第3ツェナーダイオード及び第4ツェナーダイオードによって構成してもよい。
上記請求項1〜8のいずれかに記載の構成においては、例えば請求項9に記載の発明のように、第2抵抗器は、複数の拡散抵抗が並列接続されて構成されることが望ましい。これにより、例えばレーザトリムによって複数の拡散抵抗を切断することで、第2抵抗器の抵抗値を容易に調整することができるようになる。
また、例えば請求項10に記載の発明のように、バッファ回路部を比較回路部として採用することができる。これにより、体格の小型化を図ることができるようになる。あるいは、例えば請求項11に記載の発明のように、コンパレータ回路部を比較回路部として採用することができる。これにより、閾値電圧レベルを設定することが容易になる。
以下、本発明に係る発振回路の一実施の形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。なお、図1は、本実施の形態に係る発振回路について、その全体構成を示す等価回路図であり、図2(a)〜(c)は、ダイオード及び反転回路部並びに抵抗器の温度特性をそれぞれ模式的に示すグラフである。また、図3(a)は、反転回路部の入力端子における電圧レベルの推移を示すタイミングチャートであり、図3(b)は、発振回路の出力端子における電圧レベルの推移を示すタイミングチャートである。
これら図1〜図3に示すように、また、以下に詳述するように、本実施の形態の発振回路も、基本的には、従来の発振回路に準じて構成されている。ただし、本実施の形態では、第1ダイオードによって高電位側クランプ回路部を構成するとともに、第2ダイオードによって低電位側クランプ回路部を構成する。そして、これら高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部がそれぞれ有する負の温度特性並びに反転回路部が有する正の温度特性を相殺する温度特性を有する抵抗器を、反転回路部の出力端子及びコンデンサ間に介在させる。これにより、当該発振回路の温度変化が発振周波数に与える受ける影響を低減しようとしている。
図1に示すように、本実施の形態の発振回路1は、閾値電圧レベルVth(例えば「2.5[V]」)以上の電圧レベルにて信号が入力されると論理Hレベルに対応する電圧レベルにて信号を出力するとともに、閾値電圧レベルVthを下回る電圧レベルにて信号が入力されると論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号を出力するバッファ回路部(比較回路部)M1を備える。なお、バッファ回路部M1は、高電位側電源端子VDD及び接地端子(低電位側電源端子)GNDに接続されており、これら端子VDD及びGNDによって駆動電源が供給されている。
また、発振回路1は、図1に示すように、バッファ回路部M1の出力端子に接続されてこのバッファ回路部M1から出力される信号を取り込み、取り込んだ信号の電圧レベルを反転した電圧レベルにて信号を出力する反転回路部M2を備える。この反転回路部M2の出力端子は、当該発振回路1としての出力端子OUTに接続されており、反転回路部M2の出力端子から出力される出力信号が当該発振回路1としての出力信号となっている。
ちなみに、図示を割愛しているが、反転回路部M2は、実際には、P型MOSトランジスタ素子及びN型MOSトランジスタ素子を有する。詳しくは、P型MOSトランジスタ素子は、そのソースが高電位側電源端子VDDに接続されているとともに、そのドレインがN型MOSトランジスタ素子のドレインに接続されている。また、N型MOSトランジスタ素子は、そのドレインがP型MOSトランジスタ素子のドレインに接続されているとともに、そのソースが接地端子GNDに接続されている。また、これら両MOSトランジスタ素子のゲートは、バッファ回路部M1の出力端子に接続されており、これら両MOSトランジスタ素子のドレインの接続点は、出力端子OUTに接続されている。そして、バッファ回路部M1の出力端子から論理Hレベルに対応する電圧レベルにて信号が出力されると、N型MOSトランジスタ素子のみがオンとされ、出力端子OUTの電圧レベルは論理Lレベルに対応する電圧レベルとなる。一方、バッファ回路部M1の出力端子から論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号が出力されると、P型MOSトランジスタ素子のみがオンとされ、出力端子OUTの電圧レベルは論理Hレベルに対応する電圧レベルとなる。なお、こうした反転回路部については公知であるため、ここでのこれ以上の詳しい説明を割愛する。
また、発振回路1は、図1に示すように、当該発振回路1の発振周波数(すなわち時定数τ)を決定する抵抗器R1及びコンデンサCを備える。このうち、抵抗器R1は、後述する抵抗器R2を介して反転回路部M2の出力端子にその一端が接続されており、当該発振回路1の発振動作の安定化を図るための抵抗器R3を介してバッファ回路部M1の入力端子にその他端が接続されている。コンデンサCは、上記抵抗器R3を介してバッファ回路部M1の入力端子に接続されているとともに、バッファ回路部M1の出力端子(換言すれば、反転回路部M2の入力端子)にも接続されている。このようにして、「バッファ回路部M1の出力端子→コンデンサC→抵抗器R3→バッファ回路部M1の入力端子」といった閉ループ、及び、「反転回路部M2の出力端子→抵抗器R2→抵抗器R1→コンデンサC→反転回路部M2の入力端子」といった閉ループが構成されている。ちなみに、当該発振回路1の時定数τは、基本的に、抵抗器R1の抵抗値とコンデンサCの静電容量値との積となる。なお、当該発振回路1の発振動作が安定する場合にあっては、上記抵抗器R3についてはこれを割愛してもよい。
また、発振回路1は、バッファ回路部M1の入力端子(正確には接続点J1)と高電位側電源端子VDDとの間に接続されて、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルを高電位側にてクランプする単一の第1ダイオードD1(高電位側クランプ回路部)を備える。なお、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルは、接続点J1における電圧レベルと略同一であるため、以後、接続点J1として記載する。詳しくは、第1ダイオードD1は、高電位側電源端子VDD及び接続点J1間に逆方向接続されているため、接続点J1における電圧レベルは、第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1によって高電位側においてクランプされる。
同様に、発振回路1は、バッファ回路部M1の入力端子と接地端子GNDとの間に接続されて、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルを低電位側にてクランプする単一の第2ダイオードD2(低電位側クランプ回路部)を備える。詳しくは、第2ダイオードD2は、接続点J1及び接地端子GND間に逆方向接続されているため、接続点J1における電圧レベルは、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2によって低電位側においてクランプされる。
なお、本実施の形態では、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルは、第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1によって高電位側にてクランプされているとともに、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2によって低電位側にてクランプされている。そのため、バッファ回路部M1を構成するトランジスタ素子のゲート(図示略)に過大な電圧レベルが印加されることを防止することができるようになる。
以上のように構成された発振回路1は、次のようにして発振動作を行う。まず、接続点J2における電圧レベルが論理Lレベルに対応する電圧レベルであるとき、反転回路部M2は、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて入力端子に信号が入力されるため、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力端子から信号を出力する。すなわち、接続点J3における電圧レベルは論理Hレベルに対応する電圧レベルとなる。このとき、図1に矢印で示すように、「(高電位側電源端子VDD→P型MOSトランジスタのチャネル→)接続点J3→抵抗器R2→抵抗器R1→コンデンサC」といった経路をたどって充電電流I1が流れ、コンデンサCは充電される。こうしたコンデンサCの充電に伴い、接続点J1における電圧レベルは上昇する。
接続点J1における電圧レベルが上昇し、バッファ回路部M1の閾値電圧レベルVth以上になると、バッファ回路部M1は、論理Lレベルに対応する電圧レベルから論理Hレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換える。すると、当該発振回路1が第1ダイオードD1を備えていなければ、高電位側電源端子VDD及び接地端子GND間の電位差分(例えば「5.0[V]」)だけ接続点J1における電圧レベルが上記閾値電圧レベルVthから引き上げられるところ、第1ダイオードD1によって接続点J1における電圧レベルがクランプされているため、接続点J1における電圧レベルは、第1ダイオードD1の順方向電圧だけ接地電位GNDから引き上げられた電圧レベル(例えば「7.5[V]」)となる。
接続点J1における電圧レベルが引き上げられると、バッファ回路部M1は、反転回路部M2に対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。すなわち、接続点J2における電圧レベルは論理Hレベルに対応する電圧レベルとなる。反転回路部M2は、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて入力端子に信号が入力されるため、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力端子から信号を出力する。すなわち、接続点J3における電圧レベルは論理Lレベルに対応する電圧レベルとなる。このとき、図1に矢印で示すように、「コンデンサC→抵抗器R1→抵抗器R2→接続点J3(→N型MOSトランジスタのチャネル→接地電位GND)」といった経路をたどって放電電流I2が流れ、コンデンサCは放電される。こうしたコンデンサCの放電に伴い、接続点J1における電圧レベルは下降する。
接続点J1における電圧レベルが低下し、バッファ回路部M1の閾値電圧レベルVthを下回ると、バッファ回路部M1は、論理Hレベルに対応する電圧レベルから論理Lレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換える。すると、当該発振回路100が第2ダイオードD2を備えていなければ、接続点J1における電圧レベルが上記閾値電圧レベルVthから上記電位差分だけ引き下げられるところ、第2ダイオードD2によって接続点J1における電圧レベルがクランプされているため、接続点J1における電圧レベルは、第2ダイオードD2の順方向電圧だけ接地電位GNDから引き下げられた電圧レベル(例えば「−2.5[V]」)となる。
接続点J1における電圧レベルが引き下げられると、バッファ回路部M1は、反転回路部M2に対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。すなわち、接続点J2における電圧レベルは論理Lレベルに対応する電圧レベルとなる。反転回路部M2は、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて入力端子に信号が入力されるため、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力端子から信号を出力する。すなわち、接続点J3における電圧レベルは論理Hレベルに対応する電圧レベルとなる。
こうした接続点J3における電圧レベルの方が接続点J2における電圧レベルよりも高い状態は、既述したように、コンデンサCが充電される状態である。したがって、これ以降、コンデンサCの充放電が繰り返されることになる。そして、抵抗器R1及びコンデンサCによって決定される所定の周波数にて所定の電圧レベル間で発振した出力信号が出力端子OUTから出力されることになる。
ところで、当該発振回路1の構成要素のうち第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2は、いわゆる負の温度特性を有する。詳しくは、図2(a)に示すように、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2は、双方ともに、温度上昇に伴ってその順方向電圧が小さくなる一方、温度下降に伴ってその順方向電圧が大きくなる温度特性を有する。
そして、この温度特性は当該発振回路1の発振周波数に次のように影響を与える。すなわち、当該発振回路1の温度が上昇すると、第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1が小さくなるため、第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1によってクランプされる、接続点J1における電圧レベルは、温度上昇前に比べて小さくなってしまう。同様に、当該発振回路1の温度が上昇すると、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2が小さくなるため、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2によってクランプされる、接続点J1における電圧レベルは、温度上昇前よりも大きくなってしまう。換言すれば、当該発振回路1の温度上昇に伴い、接続点J1における電圧レベルの振れ幅が小さくなってしまう。このように振れ幅が小さくなると、コンデンサCの充放電期間が短くなり、ひいては、当該発振回路1の発振周波数が高くなってしまう(高周波数となる)。
また、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2だけでなく、反転回路部M2を構成する上記P型MOSトランジスタ素子及びN型MOSトランジスタ素子も、いわゆる正の温度特性を有する。詳しくは、図2(b)に示すように、上記P型MOSトランジスタ素子及びN型MOSトランジスタ素子は、双方ともに、温度上昇に伴ってそのオン抵抗値が大きくなる一方、温度下降に伴ってそのオン抵抗値が小さくなる温度特性を有する。
そして、この温度特性は当該発振回路1の発振周波数に次のように影響を与える。すなわち、当該発振回路1の温度が上昇すると、反転回路部M2のオン抵抗が大きくなる。この反転回路部M2は、そもそも、コンデンサCを充放電する上記充電電流I1及び放電電流I2の電流流路上にあるため、反転回路部M2のオン抵抗値が大きくなると、当該発振回路1の時定数τに与える影響が大きくなってしまう。具体的には、反転回路部M2のオン抵抗値が大きくなると、コンデンサCを充電する速度や逆にコンデンサCを放電する速度が遅くなってしまう。そしてひいては、コンデンサCの充放電期間が長くなり、当該発振回路1の発振周波数が低くなってしまう(低周波数となる)。
なお、これら第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性と、反転回路部M2の正の温度特性が互いに相殺されるため、当該発振回路1の構成要素の温度特性に依存しない一定の発振周期を確保することができるようにも思われる。しかしながら、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性と反転回路部M2の正の温度特性と完全に一致することはほとんどなく、互いに完全に相殺することはほとんどない。したがって、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性が、反転回路部M2の正の温度特性よりも強い(大きい)場合にあっては、当該発振回路1の温度が上昇すると、コンデンサCの充放電期間は短縮されてしまい、逆に、反転回路部M2の正の温度特性が第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性よりも強い(大きい)場合にあっては、当該発振回路1の温度が上昇すると、コンデンサCの充放電期間は長期化されてしまう。
そのため、当該発振回路1の構成要素の温度特性に依存しない一定の発振周期を確保するにあたっては、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性を考慮するだけでは不十分であり、反転回路部M2(正確には上記MOSトランジスタ素子)の正の温度特性を考慮する必要がある。すなわち、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性が反転回路部M2の正の温度特性よりも大きい場合にあっては、その差分を相殺する正の温度特性を抵抗器R2に持たせればよく、逆に、反転回路部M2の正の温度特性が第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性よりも大きい場合にあっては、その差分を相殺する負の温度特性を抵抗器R2に持たせればよい。
その点、本実施の形態では、先の図2(a)及び(b)に示すように、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性は、反転回路部M2の正の温度特性よりも大きいため、抵抗器R2は、図2(c)に示すように、これら温度特性の差分を相殺する正の温度特性を有するように拡散抵抗にて形成されている。これにより、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性並びに反転回路部M2の正の温度特性は、抵抗器R2の正の温度特性によって相殺されるようになる。したがって、発振回路1全体としての温度特性を相殺することができ、ひいては、当該発振回路1の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
次に、本実施の形態の発振回路1の動作例を図3(a)及び(b)を参照しつつ説明する。
図3(a)に実線にて示されるように、発振回路1は、例えば時刻t10において電源が投入されて発振動作を開始したものとする。また、この電源投入時においては、接続点J1における電圧レベルが接地電位(すなわち、「0.0[V]」)とされているものとする。そのため、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルがその閾値電圧レベルVth(例えば2.5[V])を下回るため、バッファ回路部M1は、反転回路部M2に対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。また、反転回路部M2は、そうした論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号が入力されるため、出力端子OUTに対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。すなわち、図3(b)に示すように、発振回路10は、当該発振回路10が電源投入された時刻t10において、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力することになる。
発振回路10の電源投入(時刻t10)直後においては、反転回路部M2の出力端子における電圧レベルの方が入力端子における電圧レベルよりも高いため、「(高電位側電源端子VDD→反転回路部M2→)反転回路部M2の出力端子→抵抗器R2→抵抗器R1→コンデンサC(図1参照)」といった経路をたどって充電電流I1が流れ、コンデンサCが充電される。そのため、こうしたコンデンサCの充電に伴って、接続点J1における電圧レベル、すなわち、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルは、図3(a)に示すように、上記時刻t10以降、上昇する。
そして、接続点J1における電圧レベルが上昇し、例えば時刻t11において、バッファ回路部M1の閾値電圧レベルVth以上になると、バッファ回路部M1は、論理Lレベルに対応する電圧レベルから論理Hレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換える。すると、当該発振回路10が第1ダイオードD1を備えていなければ、高電位側電源端子VDD及び接地端子GND間の電位差分だけ接続点J1における電圧レベルが上記閾値電圧レベルVthから引き上げられるところ、第1ダイオードD1によって接続点J1における電圧レベルがクランプされているため、接続点J1における電圧レベルは、図3(a)に示すように、順方向電圧Vf1だけ接地電位GNDから引き上げられた電圧レベル(例えば「7.5[V]」)となる。
なお、バッファ回路部M1は、反転回路部M2に対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。そして、反転回路部M2は、そうした論理Hレベルに対応する電圧レベルにて信号が入力されるため、出力端子OUTに対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。したがって、図3(b)に示すように、発振回路10は、上記時刻11において、出力端子OUTに対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力することになる。
このように、バッファ回路部M1が論理Lレベルに対応する電圧レベルから論理Hレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換えると、接続点J2における電圧レベルの方が接続点J3における電圧レベルよりも高くなるため、「コンデンサC→抵抗器R1→抵抗器R2→接続点J3(図1参照)」といった経路をたどって放電電流I2が流れ、コンデンサCが放電される。そのため、こうしたコンデンサCの放電に伴って、接続点J1における電圧レベル、すなわち、バッファ回路部M1の入力端子における電圧レベルは、図3(a)に示すように、上記時刻t11以降、低下する。
そして、接続点J1における電圧レベルが低下し、例えば時刻t12において、バッファ回路部M1の閾値電圧レベルVthを下回ると、バッファ回路部M1は、論理Hレベルに対応する電圧レベルから論理Lレベルに対応する電圧レベルへ出力信号の電圧レベルを切り換える。すると、当該発振回路10が第2ダイオードD2を備えていなければ、接続点J1における電圧レベルが上記閾値電圧レベルから上記電位差分だけ引き下げられるところ、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2によって接続点J1における電圧レベルがクランプされているため、接続点J1における電圧レベルは、図3(a)に示すように、順方向電圧Vf2だけ接地電位GNDから引き下げられた電圧レベル(例えば「−2.5[V]」)となる。
なお、バッファ回路部M1は、反転回路部M2に対し、論理Lレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。そして、反転回路部M2は、そうした論理Lレベルに対応する電圧レベルにて信号が入力されるため、出力端子OUTに対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力する。したがって、図3(b)に示すように、発振回路1は、時刻12において、出力端子OUTに対し、論理Hレベルに対応する電圧レベルにて出力信号を出力することになる。この時刻t12以降においては、図3(b)から分かるように、コンデンサCの充放電が同様に繰り返されるため、重複する説明を割愛する。
図3(a)に、当該発振回路1の温度が上昇したときの接続点J1における電圧レベルの推移を一点鎖線及び二点鎖線にて示す。
既述したように、本実施の形態では、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性の方が反転回路部M2の正の温度特性より大きいため、これら第1及び第2ダイオードD1及びD2並びに反転回路部M2の温度特性を考慮しなければ、コンデンサCの充放電期間が短縮され、発振回路の発振周波数が高くなってしまうところ、本実施の形態では、発振回路1は、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性並びに反転回路部M2の正の温度特性を相殺するような正の温度特性を有する抵抗器R2を備えている。
そのため、図3(a)に示すように、当該発振回路1の温度が上昇すると、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性に起因して、接続点J1における電圧レベルの最大値は「実線→一点鎖線→二点鎖線」の順に小さくなっているとともに、接続点J1における電圧レベルの最小値も「実線→一点鎖線→二点鎖線」の順に大きくなっているとしても、反転回路部M2のオン抵抗の正の温度特性及び抵抗器R2の正の温度特性に起因して、コンデンサCの充放電速度は「実線→一点鎖線→二点鎖線」の順に遅くなっている。すなわち、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性並びに反転回路部M2の正の温度特性は、抵抗器R2の正の温度特性によって確かに相殺されており、図3(a)に実線及び一点鎖線並びに二点鎖線にて示した、接続点J1における温度別の電圧レベルの推移が図3(b)では全てほぼ一致していることから、当該発振回路1の温度が発振周波数に与える影響が低減されている。
以上説明した本実施の形態の発振回路1では、第1ダイオードD1によって高電位側クランプ回路部を構成するとともに、第2ダイオードD2によって低電位側クランプ回路部を構成する。そして、これら高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部がそれぞれ有する負の温度特性並びに反転回路部M2が有する正の温度特性を相殺する温度特性を有する抵抗器R2を拡散抵抗にて形成するとともに、反転回路部M2の出力端子及びコンデンサC間に介在させた。これにより、第1及び第2ダイオードD1及びD2の負の温度特性並びに反転回路部M2の正の温度特性は、抵抗器R2の正の温度特性によって相殺され、発振回路1全体としての温度特性を相殺することができ、ひいては、当該発振回路1の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
また、反転回路部M2の正の温度特性が発振周波数に与える影響は、発振回路の時定数τが小さいときほど、すなわち、発振周波数が高いときほど大きくなるが、本実施の形態の発振回路1によれば、低周波数帯においてはもちろんのこと、そうした高周波数帯においても、すなわち、幅広い発振周波数帯において、当該発振回路1の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
また、反転回路部M2の体格を大型化することで、MOSトランジスタ素子のオン抵抗の低減を図り、反転回路部M2の正の温度特性が当該発振回路1の発振周波数に与える影響を低減することが可能ではある。しかしながら、本実施の形態の発振回路1では、上記抵抗器R2を備えることで、そうした反転回路部M2の体格の大型化を招くことなく、反転回路部M2の正の温度特性が当該発振回路1の発振周波数に与える影響を低減している。
なお、本発明に係る発振回路は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
上記実施の形態では、先の図1に示すように、発振回路1は、単一の第1ダイオードD1及び単一の第2ダイオードD2によって高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部がそれぞれ構成されていたが、ダイオードの数についてはこれに限らない。他に例えば、図1に対応する図として図4に示すように、直列接続された第1ダイオードD11及びD12並びに第2ダイオードD21及びD22によって高電位側クランプ回路部並びに低電位側クランプ回路部がそれぞれ構成された発振回路1aとしてもよい。これによっても、上記実施の形態に準じた効果を得ることができるようになる。
上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1に示すように、抵抗器R2を単一の拡散抵抗にて形成していたが、これに限らない。他に例えば、図1に対応する図として図5に示すように、複数(例えば「3個」)の拡散抵抗R21〜R23が並列接続された第2抵抗器を備える発振回路1bとしてもよい。これにより、例えばレーザトリム等によって複数の拡散抵抗R21〜R23のうちいくつかを切断することで、第2抵抗器の抵抗値を容易に調整することができるようになる。
上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1、図4及び図5に示すように、入力される信号の電圧レベルを閾値電圧レベルVthと比較しつつ、その比較結果に応じて異なる一定の電圧レベルにて信号を出力する比較回路部として、バッファ回路部M1を採用することで、発振回路1の体格の小型化を図っていたが、これに限らない。他に例えば、これら図に対応する図として図6に示すように、上記比較回路部としてコンパレータ回路部M1aを採用した発振回路1cとしてもよい。この場合、コンパレータ回路部M1aの非反転入力端子が比較回路部の入力端子に相当し、高電位側電源端子に直列接続された抵抗器Ra及びRbによる駆動電源の分圧値が上記閾値電圧レベルVthとしてコンパレータ回路部M1aの反転入力端子に入力される。これにより、抵抗器Ra及びRbの抵抗値を調整するだけで、閾値電圧レベルVthを容易に設定することができるようになる。
上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1及び図2に示すように、発振回路1は、負の温度特性を有する第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2によって高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部がそれぞれ構成されていたが、これに限らない。他に例えば、図1及び図2に対応する図として図7及び図8にそれぞれ示すように、高電位側電源端子VDD及び接続点J1に順方向接続され、正の温度特性を有する第1ツェナーダイオードDz1によって高電位側クランプ回路部を構成するとともに、接続点J1及び接地端子GND間に逆方向接続され、正の温度特性を有する第2ツェナーダイオードDz2によって低電位側クランプ回路部を構成する。そして、これら高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部がそれぞれ有する正の温度特性並びに反転回路部M2が有する正の温度特性を相殺する負の温度特性を有する抵抗器R4を、反転回路部M2の出力端子及びコンデンサC間に介在させた発振回路2としてもよい。なお、負の温度特性を有する抵抗器は、例えばポリシリコン等を用いて形成することができる。
この場合、第1及び第2ツェナーダイオードDz1及びDz2は、図8(a)に示すように、各ツェナー電圧Vz1及びVz2が温度上昇に伴って増大する正の温度特性を有する。そのため、発振回路2の温度が上昇すると、接続点J1における電圧レベルが高電位側にてクランプされるツェナー電圧(クランプ電圧)Vz1の大きさ及び低電位側にてクランプされるツェナー電圧(クランプ電圧)Vz2の大きさはそれぞれ大きくなる。すると、ツェナー電圧Vz1及びVz2の振幅が大きくなるため、コンデンサCの充放電期間は長くなってしまう。また、反転回路部M2、正確には、P型MOSトランジスタ素子及びN型MOSトランジスタ素子は、図8(b)に示すように、各オン抵抗が温度上昇に伴って増大する正の温度特性を有する。そのため、反転回路部M2の温度が上昇すると、コンデンサCの充放電期間は長くなってしまう。しかしながら、上記発振回路2では、抵抗器R4は、図8(c)に示すように、第1ツェナーダイオードDz1の正の温度特性及び第2ツェナーダイオードDz2の正の温度特性並びに反転回路部M2の正の温度特性を相殺する負の温度特性を有する。したがって、発振回路2全体としての温度特性を相殺することができるようになり、当該発振回路2の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1〜図8に示したように、発振回路1〜2は、互いに同一の温度特性を有する高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部を有していたが、これに限らない。他に例えば、図9に示すように、接続点J1及び接地端子GND間に逆方向接続されたツェナーダイオードDz3によって高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部を構成する。そして、反転回路部M2が有する正の温度特性を相殺する負の温度特性を有する抵抗器R4を、反転回路部M2の出力端子及びコンデンサC間に介在させた発振回路3としてもよい。なお、負の温度特性を有する抵抗器は、例えばポリシリコン等を用いて形成することができる。
この場合、高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部はそれぞれ相補的な温度特性を有することになるため、コンデンサCの充放電期間は、これらクランプ回路部の温度特性には依存しなくなる。しかしながら、反転回路部M2、正確には、P型MOSトランジスタ素子及びN型MOSトランジスタ素子は正の温度特性を有するため、反転回路部M2の温度が上昇すると、コンデンサCの充放電期間は長くなってしまう。その点、上記発振回路3では、抵抗器R4は、反転回路部M2の正の温度特性を相殺する負の温度特性を有する。これにより、発振回路3全体としての温度特性を相殺することができるようになる。したがって、当該発振回路3の温度が発振周波数に与える影響を低減することができるようになる。
また、こうした回路構成にも限らない。他に例えば、図9に対応する図として図10に示すように、高電位側電源端子VDD及び接続点J1間に逆方向接続されたツェナーダイオードDz4によって高電位側クランプ回路部及び低電位側クランプ回路部を構成する。そして、反転回路部M2が有する正の温度特性を相殺する負の温度特性を有する抵抗器R4を、反転回路部M2の出力端子及びコンデンサC間に介在させた発振回路3aとしてもよい。これによっても、上記発振回路3に準じた作用効果を得ることができるようになる。
以上、様々な変形例を示したが、要は、高電位側クランプ回路部が有する温度特性及び低電位側クランプ回路部が有する温度特性並びに反転回路部M2が有する温度特性を相殺する温度特性を有する抵抗器が、反転回路部M2の出力端子及びコンデンサC間に介在されていれば、所期の目的を達成することはできる。
1、1a〜1c、2、3、3a、100…発振回路、M1、M10…バッファ回路部(比較回路部)、M1a…コンパレータ回路部(比較回路部)、M2、M20…反転回路、D1〜D12…ダイオード(高電位側クランプ回路部)、D2〜D22…ダイオード(低電位側クランプ回路部)、Dz1…ツェナーダイオード(高電位側クランプ回路部)、Dz2…ツェナーダイオード(低電位側クランプ回路部)、Dz3、Dz4…ツェナーダイオード(高電位側クランプ回路部、低電位側クランプ回路部)、C…コンデンサ、J1〜J3…接続点、R1〜R4…抵抗器。