JP2009144210A - Snめっき銅基板、Snめっき銅基板の製造方法、およびこれを用いたリードフレームおよびコネクタ端子 - Google Patents

Snめっき銅基板、Snめっき銅基板の製造方法、およびこれを用いたリードフレームおよびコネクタ端子 Download PDF

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Abstract

【課題】外部応力が加わった場合でもウイスカが発生しにくいめっき層を安定して形成することが可能であり、半田付け性に優れる、Pbを含まないSnめっき銅基板を提供する。
【解決手段】本発明のSnめっき銅基板1は、純銅板、銅合金板、又は銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板2上に、中間Snめっき層3ILとCuめっき層4とを、この順に積層してなるめっき膜層5を1.5μm以上の層厚で少なくとも1膜層以上備えるとともに、このめっき膜層5上に、0.2〜1.5μmの層厚の最外Snめっき層3OLをめっき膜層5との総厚が3μm以上で備え、少なくとも中間Snめっき層3IL及び最外Snめっき層3OLの粒界3g及び粒内3cのいずれかに、Cuめっき層4及び金属基板2の少なくとも一方に由来するCuを拡散させてなるSn−Cu合金相6を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体のリードフレームや電子部品のコネクタ端子に使用されるSnめっき銅基板、Snめっき銅基板の製造方法、およびこれを用いたリードフレームおよびコネクタ端子に関する。
通常、半導体のリードフレームや電子機器のコネクタ端子は、半田付け性を良くするためにSn−Pb合金めっきが施されているが、近年、環境問題からPbを用いないSnめっきが求められている。
しかしながら、Snめっき表面からは、めっき後にSnの単結晶でなるウイスカが針状に自発的に発生する。ウイスカは、直径数μm、長さは数μmから長いものは数mmにもなるため、短絡の原因になることもある。かかるウイスカは、速いものはめっき後数日以内で発生し、遅いものはめっき後数ヶ月で発生するなど様々である。
ウイスカの成長機構は完全には理解されていないが、Snめっき層に圧縮応力が加わると、これが駆動力となってSn原子の移動と集中が誘発され、ウイスカが成長するといわれている。
ここで、Snめっき層に加わる圧縮応力としては、めっきによって生じるめっき残留圧縮応力や、めっき後に基板のCuと反応してめっきとCu基板の界面にSnとCuの合金相(CuSnやCuSn)が形成されることによる圧縮応力、めっき後の曲げ加工等によって発生する圧縮応力などが考えられる。
従って、Snのウイスカの発生を防止する対策の一つとして、Snめっき層に圧縮応力がかからないようにすることが挙げられる。
圧縮応力を低減してウイスカ発生を防止する方法として、(1)めっき条件やめっき方法の検討によるめっき残留応力の低減を図る、(2)SnとCuの合金相が基板とめっきとの界面にできないように、銅や銅合金基板上に下地めっきを行う、(3)Snめっき後に熱処理を行うことで残留応力の緩和を図る、などが考えられる。
(1)の方法としては、例えば、特許文献1に示されるように、パルスめっきを行うことによりSnめっきの内部応力を緩和する方法がある。
(2)の方法としては、例えば、非特許文献1に報告されているように、Cu基板上にNiやAgで下地めっきを行うことによりCuとSnの合金相形成によって圧縮応力の発生が抑制され、これにより、ウイスカの発生を抑制できることが記載されている。
(3)の方法としては、例えば、特許文献2に示されるように、Snめっき材を180℃から融点温度の範囲で熱処理する方法や、特許文献3に示されるように、Sn−Cu合金めっきを227℃以上270℃以下で15分以内の熱処理を行う方法等がある。これらの方法は、熱処理により、急速に基板とめっきとの界面に合金相が形成されるが加熱状態にあるため、発生する圧縮応力が急速に緩和されるとともに、一旦、合金相ができると合金相中のSnやCuの拡散速度は非常に遅くなるため、常温に戻したときには、合金相の成長が抑制されることになり、新たな圧縮応力の発生が抑制される。また、加熱により圧縮応力の緩和が起こった後に、加熱後の冷却によりSnとCuの熱膨張係数差により引っ張り応力が発生するため、ウイスカの発生が抑制される。
なお、圧縮応力の低減以外にも、Sn合金めっきによってウイスカの発生を防止する方法が報告されている。例えば、特許文献4には、Sn−Bi合金めっき、特許文献5には、Sn−Zn合金めっき、特許文献6には、Sn-Cu合金めっき、特許文献7には、Sn−Ag合金めっきについて記載されている。
Sn−Cu合金めっきについては、ウイスカの抑制理由については明記されていないが、Sn−Bi合金めっきやSn−Zn合金めっきは、BiやZnがSnの拡散を抑制することが記載されている。また、Sn−Ag合金めっきについては、Snめっき層にAgの合金相が形成されるためにウイスカの発生が抑制されることが記載されている。
特開2003−129276号公報 特開昭57―126992号公報 特開2003−193289号公報 特開2004―169073号公報 特開2003−253470号公報 特開2000−87204号公報 特開2002−220682号公報 Tin Whisker Formation - Results,Test Methods and Countermeasures, IEEE (2003), pp822-826
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、初期のめっき残留応力を低減しても、めっき後に徐々にSnと基板の銅が反応して界面にSnと銅の合金相が形成されることによる圧縮応力が発生するために、結局ウイスカが発生するという問題がある。
また、非特許文献1に記載されている方法では、めっき後の残留圧縮応力が存在すればウイスカが発生する。従って、例えば特許文献1などとの組合せが必要となるが、めっき後に加工がなされると圧縮応力が発生するためにウイスカが発生するという問題がある。
また、特許文献2に記載されている方法では、加工による外部圧縮応力が発生するとウイスカが発生するという問題がある。
そして、特許文献4〜7に記載の合金めっきでは、めっき浴組成の管理が難しいため、ウイスカの発生の抑制に適しためっき層を安定して形成することが困難であるという問題がある。また、これらの合金めっきでも、外部から圧縮応力を加えられるとウイスカが発生するという問題もある。従って、これらの方法でも完全にウイスカの発生を抑制することは困難である。
本発明は、前記した問題に鑑みてなされたものであり、曲げ加工などの外部応力が加わった場合でもウイスカが発生しにくいめっき層を安定して形成することが可能であり、リードフレームやコネクタ端子に用いた場合に必要とされる半田付け性に優れる、Pbを含まないSnめっき銅基板、Snめっき銅基板の製造方法、およびこれを用いたリードフレームおよびコネクタ端子を提供することを課題とする。
ウイスカは、ウイスカの発生場所付近以外に、そこから遠く離れたところからもSn原子が拡散してウイスカの発生場所に集まり、成長するといわれている。また、本発明者らは、発生したウイスカの根元の断面を観察したところ、ウイスカは、Snめっき表面から1μm程度の深さまでのところに存在するSnめっき表層部分のSnめっき結晶粒が核となって成長していることを突き止めた。そこで、本発明者らは、ウイスカの成長を抑制するには、少なくともSnめっき表面から1μm程度の深さまでのSnめっき表層部分について、Snが拡散しにくいSn−Cu合金相やCuめっき層によってSnの結晶粒をSn原子が拡散してくる距離よりも小さなサイズに分断すれば、ウイスカの発生を抑制できると考えた。
このような考えの下、本発明者らはSn原子の拡散に着目し、鋭意研究を行なった結果、Snめっき中にSn原子の拡散速度が遅くなる合金相または金属層を形成してSnの結晶粒を分断することによりウイスカの発生を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
〔1〕 本発明に係るSnめっき銅基板は、純銅板、銅合金板、または銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板上に、中間層となるSnめっき層と、Cuめっき層とを、この順に積層してなるめっき膜層を1.5μm以上の層厚で少なくとも1膜層以上備えるとともに、このめっき膜層上に、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外層となるSnめっき層を前記めっき膜層との総厚が3μm以上で備え、少なくとも、前記中間層および前記最外層となる各Snめっき層の粒界、前記最外層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、前記中間層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、および、前記中間層となるSnめっき層と前記金属基板との界面、のいずれかに前記Cuめっき層および前記金属基板の少なくとも一方に由来するCuを拡散させてなるSn−Cu合金相を有することを特徴としている。
本発明に係るSnめっき銅基板は、このような特定の層厚のSnめっき層とCuめっき層を備え、さらに、Cu原子がSnめっき層の粒界や粒内に拡散してなるSn−Cu合金相を、Cuめっき層や金属基板とSnめっき層との界面、およびSnめっき層の粒界に形成している。特に、最外層となるSnめっき層は、当該最外層となるSnめっき層の粒界や粒内に、下層のCuめっき層から最外層となるSnめっき層の表面まで連続するSn−Cu合金相が形成されるため、当該最外層となるSnめっき層を結晶粒レベルで分断している。つまり、Sn−Cu合金相によって、少なくともウイスカ発生の核となる結晶粒を含む、最外層となるSnめっき層を、当該最外層となるSnめっき層と平行な方向および垂直な方向に、結晶粒レベルで分断しているので、Sn原子を集まりにくくすることができ、これによりウイスカの発生を抑制している。
また、本発明に係るSnめっき銅基板は、Snめっき層とCuめっき層を積層し、Snめっき層を厚く設けているため、曲げ加工などでめっき膜層の表層が削られても、めっき膜層を残留させることができる。したがって、このような場合であっても半田付け性や耐食性を維持することができる。しかも、中間層となるSnめっき層とCuめっき層の層厚を適切に調整しているので、中間層となるSnめっき層もSn−Cu合金相で分断しているため、残存しためっき膜層もCuやSn−Cu合金相でSnめっき層が分断されたままなので、曲げ部からウイスカが発生するおそれもない。また、最外層がSnめっき層なので半田付け性に優れる。
〔2〕 本発明のSnめっき銅基板においては、前記Cuめっき層およびSn−Cu合金相のうち少なくとも一方には、前記Cuが拡散してなるカーケンダルボイドが形成されており、このカーケンダルボイドよりも上方に形成された前記最外層となるSnめっき層の結晶粒の大きさの平均が5μm以下であるのが好ましい。
このように、カーケンダルボイドよりも上方に形成されたSnめっき層の結晶粒の大きさの平均を特定の値以下とすることで、Snめっき層の分断をより確実に行うことが可能となる。したがって、Sn原子を集まりにくくすることができ、ウイスカの発生をより抑制することが可能となる。
〔3〕 本発明のSnめっき銅基板においては、前記最外層となるSnめっき層直下のCuめっき層に形成された前記カーケンダルボイドを結んでなる線よりも上方の縦断面積に占める、前記Sn−Cu合金相および前記Cuめっき層の断面積比率が30%以上90%以下であるのが好ましい。
このように、カーケンダルボイドよりも上方の縦断面積に占めるSn−Cu合金相およびCuめっき層の断面積比率を特定の範囲とすれば、Snめっき層の結晶粒を十分な量確保できるため、良好な半田付け性を確保しつつ、ウイスカの発生を抑制することができる。
また、本発明のSnめっき銅基板においては、前記最外層となるSnめっき層直下のCuめっき層に形成された前記カーケンダルボイドを結んでなる線から下方の中間層となるCuめっき層およびSnめっき層の層厚の合計が2μm以上あり、かつ、中間層となる各Snめっき層の層厚が0.5μm以上3μm以下であり、前記最外層となるSnめっき層直下のCuめっき層に形成された前記カーケンダルボイドを結んでなる線から上方のCuめっき層および最外層となるSnめっき層の層厚の合計が0.2μm以上1.5μm以下であるのが好ましい。
このように、カーケンダルボイドを結んでなる線から下方のCuめっき層およびSnめっき層の層厚の合計を前記した特定の範囲とすれば、Snめっき層の層厚が十分に厚いため、曲げ加工などによってめっき膜層全体が削り取られてしまうおそれをなくすことができる。また、カーケンダルボイドを結んでなる線から下方の中間層となる各Snめっき層の層厚を前記した特定の範囲とすれば、残存したSnめっき層もCuめっき層やSn−Cu合金相によって、Snめっき層と平行な方向および垂直な方向に、結晶粒レベルで分断しているので、ウイスカの発生を防止しつつ、半田付け性を確保することができる。そして、カーケンダルボイドを結んでなる線から上方の中間層となる各Snめっき層の層厚を前記した特定の範囲とすれば、曲げ加工されても金属基板が露出しにくくすることができる。
〔4〕 本発明に係るSnめっき銅基板の製造方法は、純銅板、銅合金板、または銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板上に、中間層となるSnめっき層と、Cuめっき層とを、この順に積層してなるめっき膜層を1.5μm以上の層厚となるように少なくとも1膜層以上積層し、さらにこのめっき膜層上に、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外層となるSnめっき層を前記めっき膜層との総厚が3μm以上となるように積層する積層工程と、少なくとも、前記中間層および前記最外層となる各Snめっき層の粒界、前記最外層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、前記中間層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、および、前記中間層となるSnめっき層と前記金属基板との界面、のいずれかに前記Cuめっき層および前記金属基板の少なくとも一方に由来するCuを拡散させてSn−Cu合金相を形成する合金相形成工程と、を含むことを特徴としている。
本発明に係るSnめっき銅基板の製造方法は、このような特定の層厚をもってSnめっき層と、Cuめっき層とを積層することで、Cu原子がSnめっき層の粒界や粒内に拡散しやすくなる。特に、最外層となるSnめっき層は、当該最外層となるSnめっき層の粒界や粒内に、下層のCuめっき層から最外層となるSnめっき層の表面まで連続するSn−Cu合金相が形成されるため、当該最外層となるSnめっき層を結晶粒レベルで分断している。つまり、Sn−Cu合金相によって少なくともウイスカ発生の核となる結晶粒を含む最外層となるSnめっき層を、Snめっき層と平行な方向および垂直な方向に、結晶粒レベルで分断しているので、Sn原子を集まりにくくすることができ、これによりウイスカの発生を抑制することが可能となる。
また、本発明に係るSnめっき銅基板の製造方法は、Snめっき層とCuめっき層を積層してSnめっき層を厚くしているため、曲げ加工などでめっき膜層の表層が削られてもめっき膜層を残留させることができる。したがって、このような場合であっても半田付け性や耐食性を維持することができる。しかも、中間層となるSnめっき層とCuめっき層の層厚を適切に調整しているので、中間層となるSnめっき層もSn−Cu合金相で分断しているため、残存しためっき膜層もCuやSn−Cu合金相でSnめっき層が分断されたままなので、曲げ部からウイスカが発生するおそれもない。また、最外層がSnめっき層なので半田付け性に優れる。
〔5〕 本発明のSnめっき銅基板の製造方法においては、前記積層工程において、前記最外層となるSnめっき層の直下に形成されるCuめっき層の層厚を0.05μm以上1μm以下に積層するのが好ましい。
最外層となるSnめっき層の直下に形成されるCuめっき層をこのような層厚で設ければ、Sn−Cu合金相によって最外層となるSnめっき層の粒界や粒内を十分に分断することができるので、ウイスカの発生を抑制することが可能となる。
〔6〕 本発明のSnめっき銅基板の製造方法においては、前記積層工程において、前記めっき膜層を2膜層以上積層し、このめっき膜層を構成する前記中間層となる各Snめっき層を0.5μm以上3μm以下の層厚で積層させるのが好ましい。
中間層となるSnめっき層をこのような層厚で積層すれば、Snめっき層の層厚が十分厚いので、曲げ加工を行って最外層となるSnめっき層が削り取られてしまった場合であっても金属基板を露出させにくくすることができる。つまり、このような場合であっても半田付け性を良好に保つことができる。さらに、中間層となるSnめっき層をこの層厚で積層すると、当該中間層となるSnめっき層もSn−Cu合金相および/またはCuめっき層によってSnめっき層と平行な方向および垂直な方向に結晶粒レベルで分断される。そのため、曲げ加工を行って最外層となるSnめっき層が削り取られてしまった場合であっても、残存しためっき膜層もCuめっき層やSn−Cu合金相でSnめっき層が分断されたままなので、曲げ部からウイスカが発生するおそれもない。
〔7〕 本発明のSnめっき銅基板の製造方法においては、積層工程において、前記めっき膜層を2膜層以上積層する場合は、前記中間層となるSnめっき層の間、および、前記中間層となるSnめっき層と前記最外層となるSnめっき層との間に挟まれた各Cuめっき層の層厚を、当該Cuめっき層を挟むSnめっき層のうちいずれか厚い層厚を有するSnめっき層の1/10以上1μm以下の層厚で積層させるのが好ましい。
Cuめっき層をこのような層厚で設けると、かかるCuめっき層からSnめっき層の粒界や粒内に拡散させるCu原子の量が適切となるので、合金相形成工程でSnめっき層の粒界や粒内にSn−Cu合金相を形成させて中間層となるSnめっき層も結晶粒レベルで分断することができ、かつ良好なはんだ付け性を確保することができる。
〔8〕 本発明のSnめっき銅基板の製造方法においては、前記合金相形成工程によって、前記Cuめっき層中には、前記Cuが拡散してなるカーケンダルボイドが形成されるのが好ましい。
カーケンダルボイドが形成されていれば、Snめっき層の粒内や粒界にCu原子が十分かつ適度に拡散してSn−Cu合金相を形成していることになる。したがって、Snめっき層をSn−Cu合金相によって面内方向および肉厚方向に確実に分断できたSnめっき銅基板を得ることができる。
〔9〕 本発明のリードフレームは、前記した本発明に係るSnめっき銅基板を用いたリードフレームであって、前記Snめっき銅基板を帯状に形成して、かつ、複数のリード部分およびこれと連続するボンディングパッドを、打ち抜きまたはエッチング処理により形成したことを特徴としている。
このようにすれば、前記したSnめっき銅基板を用いているので、良好な半田付け性を確保しつつ、ウイスカを発生しにくいリードフレームとすることができる。
〔10〕 本発明のリードフレームは、前記した本発明に係るSnめっき銅基板を用いて、複数のリード部分およびこれと連続するボンディングパッドを形成したリードフレームであって、前記Snめっき銅基板に用いる前記金属基板は、予め前記複数のリード部分および前記ボンディングパッドが形成されていることを特徴としている。
このようにすれば、リードフレームの打ち抜き端面にもSnめっきがなされるため、金属基板の露出がなく、耐食性や半田付け性を確保できる。また、リードフレームの表面と打ち抜き端面とのエッジ部やコーナー部は、めっき圧縮応力が高くなるが、本発明のリードフレームは、めっき層膜と、この上に積層する最外層となるSnめっき層を積層し、これらが有する界面や粒界にSn−Cu合金相を形成させ、これにより当該最外層となるSnめっき層と平行な方向および垂直な方向に、結晶粒レベルで分断しているので、ウイスカを発生しにくくすることができる。
〔11〕 本発明のリードフレームは、前記リード部分がプレス曲げ加工されていることを特徴としている。
このようにすれば、めっき層膜と最外層となるSnめっき層とを有しているので、良好な半田付け性を確保しつつ、ウイスカを発生しにくいリードフレームとすることができる。
〔12〕 本発明のコネクタ端子は、前記した本発明に係るSnめっき銅基板を用いたコネクタ端子であって、前記Snめっき銅基板を薄板に形成して、かつ、所定形状にプレス加工したことを特徴としている。
このようにすれば、前記したSnめっき銅基板を用いているので、良好な半田付け性を確保しつつ、ウイスカを発生しにくいコネクタ端子とすることができる。
本発明のSnめっき銅基板によれば、Snめっき層と、Cuめっき層を含み得るSn−Cu合金相と、を形成することによって、曲げ加工などの外部応力が加わった場合でもウイスカの発生を抑制することができ、リードフレームやコネクタ端子に用いた場合に必要とされる半田付け性に優れる。また、かかるめっき膜層は、Pbを含まないので環境負荷が少ない。
本発明のSnめっき銅基板の製造方法によれば、曲げ加工などの外部応力が加わった場合でもウイスカが発生しにくいめっき膜層を安定して形成することが可能であり、リードフレームやコネクタ端子に用いた場合に必要とされる半田付け性に優れる、Pbを含まないSnめっき銅基板を製造することができる。
そして、本発明のリードフレームやコネクタ端子によれば、曲げ加工などの外部応力が加わった場合でもウイスカが発生しにくいので、短絡するおそれを低減させることができ、かつ半田付け性に優れる。
次に、本発明に係るSnめっき銅基板、Snめっき銅基板の製造方法、およびこれを用いたリードフレームおよびコネクタ端子について詳細に説明する。
まず、本発明に係るSnめっき銅基板1について、図1および図2を参照して説明する。なお、図1は、本発明のSnめっき銅基板の一構成例を例示する断面図であり、図2は、本発明のSnめっき銅基板の他の構成を例示する断面図である。
図1および図2に示すように、本発明に係るSnめっき銅基板1は、純銅板、銅合金板、または銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板2上に、中間層となるSnめっき層3(以下、説明の便宜上これを「中間Snめっき層3IL」という。)と、Cuめっき層4とを、この順に積層してなるめっき膜層5を1.5μm以上の層厚で少なくとも1膜層(つまり、中間Snめっき層3ILとCuめっき層4との一組でなる層をいう)以上備えるとともに、このめっき膜層5上に、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外層となるSnめっき層3(以下、説明の便宜上これを「最外Snめっき層3OL」という。)をめっき膜層5との総厚(これらを合計した層厚をいう)が3μm以上となるように備えられている。
そして、かかるSnめっき銅基板1は、少なくとも、中間Snめっき層3ILおよび最外Snめっき層3OLの粒界3g、最外Snめっき層3OLとCuめっき層4との界面34o、中間Snめっき層3ILとCuめっき層4との界面34i、および、中間Snめっき層3ILと金属基板2との界面32のいずれかに、前記したCuめっき層4および金属基板2の少なくとも一方に由来するCu原子を拡散させてなるSn−Cu合金相6を有している。
かかるSn−Cu合金相6により、ウイスカ発生に効く最外Snめっき層3OLは結晶粒レベルで分断され、Sn原子の移動と集中を抑制することができる。
ここで、中間Snめっき層3ILと、Cuめっき層4とを、この順に積層してなるめっき膜層5を、1.5μm以上の層厚で少なくとも1膜層以上備えるのは、最外Snめっき層3OLとの関係もあるが、曲げ加工などした際に削れて金属基板2が露出してしまい、半田付け性が悪くなるのを防ぐためである。めっき膜層5は、2μm以上であるとより好ましい。
一方、中間Snめっき層3ILを厚くすると、Cuめっき層4の層厚にもよるが、中間Snめっき層3ILを挟む金属基板2からCuめっき層4、または、中間Snめっき層3ILを挟む一方のCuめっき層4から他方のCuめっき層4まで連続するSn−Cu合金相6で中間Snめっき層3ILの粒界3gを分断することができなくなる。Snめっき後に曲げ加工が行われない場合や、曲げ加工が行われても最外Snめっき層3OLが削り取られない弱い曲げ加工の場合、あるいは、曲げ加工で最外Snめっき層3OLが削りとられても半田付けによって削りとられた箇所が半田で表面を完全に覆われる場合、最外Snめっき層3OLのみ結晶粒レベルで分断されていれば、ウイスカの発生を抑制することができる。しかしながら、曲げ加工で最外Snめっき層3OLが削り取られて、中間Snめっき層3ILが露出する場合は、中間Snめっき層3ILも結晶粒レベルでSn−Cu合金相で分断されていないとウイスカが発生する可能性がある。中間Snめっき層3ILを結晶粒レベルで分断するためには、中間Snめっき層3ILの厚さが0.5μm以上3μm以下の厚さとする必要がある。また、このときのCuめっき層4の厚さは、そのCuめっき層4を挟むSnめっき層4,4(図2参照)のうち、いずれか厚い層厚を有するSnめっき層4の1/10以上1μm以下とするとよい。
最外Snめっき層3OLは、前記しためっき膜層5との総厚が3μm以上となるように、その層厚を0.2μm以上1.5μm以下の範囲で設けるのは、良好な半田付け性を得るとともに、当該最外Snめっき層3OLの粒界3gおよび粒内3cに向けて、本発明の所望する効果を得るために十分なCu原子の拡散を行わせるためである。これにより、最外Snめっき層3OLの粒界3gおよび界面34oでSnと合金化させてSn−Cu合金相6を形成し、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで分断することができる。その結果、Sn原子の移動と集中を抑制してウイスカの発生を防止することが可能となる。
最外Snめっき層3OLが0.2μm未満であると、最外Snめっき層3OLの表面までCu原子が過剰に拡散しすぎるため、表層のSn−Cu合金相6の形成割合が過剰に高くなってしまう。そのため、半田付け性が悪くなる。最外Snめっき層3OLは、0.3μm以上とするのがより好ましく、0.4μm以上とするのがさらに好ましい。
一方、最外Snめっき層3OLが1.5μmを超えると、最外Snめっき層3OLの表面までCu原子が拡散しにくくなるため、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで十分に分断することができなくなり、ウイスカが発生しやすくなる。つまり、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで十分に分断することができないと、Sn−Cu合金相6が形成される際に誘起される圧縮応力によって、Sn原子の拡散が活発化するため、却ってウイスカが発生しやすくなる。最外Snめっき層3OLは、1.2μm以下とするのがより好ましく、1μm以下とするのがさらに好ましい。
なお、図2に示すように、中間Snめっき層3ILの層厚は、めっき膜層5を2膜層以上積層した場合においても、前記したのと同様の理由により、各中間Snめっき層3ILの層厚がそれぞれ0.5μm以上3μm以下の層厚で積層させるのが好ましい。
中間Snめっき層3ILの層厚、Cuめっき層4の層厚、および最外Snめっき層3OLの層厚の合計を3μm以上とするのは、曲げ加工などによって全てのめっき(中間Snめっき層3IL、Cuめっき層4、および最外Snめっき層3OL)が削り取られるのを防ぐためである。なお、中間Snめっき層3ILの層厚、Cuめっき層4の層厚、および最外Snめっき層3OLの層厚の合計は、5μm以上とするのがより好ましい。
本発明のSnめっき銅基板1においては、Cuめっき層4およびSn−Cu合金相6のうち少なくとも一方には、Cu原子が拡散してなるカーケンダルボイドKが形成されており、このカーケンダルボイドKよりも上方に形成された最外Snめっき層3OLの結晶粒の大きさの平均が5μm以下であるのが好ましい。
ここで、カーケンダルボイドKとは、拡散係数の異なる種類の金属層同士が接している拡散対が形成されたとき、拡散の速い金属層に生じる空洞をいう。なお、このカーケンダルボイドKは、後述するように、Snめっき層3(中間Snめっき層3ILおよび最外Snめっき層3OL)およびCuめっき層4の層厚を適切に制御することによって形成される。なお、カーケンダルボイドKが形成されているということは、Cuめっき層4のCu原子が十分にSnめっき層3(特に、最外Snめっき層3OL)の粒界3gおよび粒内3cに拡散してSn−Cu合金相6を形成していることを意味しており、ウイスカの発生をより確実に抑制することができると考えられるためである。なお、カーケンダルボイドKは、Cuめっき層4を2層以上積層した場合は、すべてのCuめっき層4に形成されると好ましい。各Snめっき層3が結晶粒レベルで分断され得るからである。
また、カーケンダルボイドKが形成されていると、このカーケンダルボイドKの位置から元のCuめっき層4の位置がわかり、これよりも上方の最外Snめっき層3OLや中間Snめっき層3IL、およびこれよりも下方の中間Snめっき層3ILのおおよその層厚もわかる。すなわち、カーケンダルボイドKを連ねる線を引くと、その上の部分が大よそその上方の最外Snめっき層3OLまたは中間Snめっき層3ILであり、下の部分が大よそその下方の中間Snめっき層3ILであるといえる。Cu原子がCuめっき層4を上下で挟むSnめっき層3に均等に拡散しているとすれば、カーケンダルボイドKは元のCuめっき層4の中央にできると考えられるため、例えば、カーケンダルボイドKより上方の最外Snめっき層3OLの層厚からCuめっき層4の層厚の半分の層厚を引けば元のSnめっき層3の層厚がわかる。これは、カーケンダルボイドKより下方のSnめっき層3の層厚も同様である。
最外Snめっき層3OLの結晶粒の大きさの平均は、例えば、FIB(Focused Ion Beam)装置によって撮影した画像を用いて、Sn−Cu合金相6によって分断されている最外Snめっき層3OLの複数(例えば、7つなど)の結晶粒について、Sn−Cu合金相6と最外Snめっき層3OLの境界とめっき表面の線が交わる点と点の間の長さを測定し、その平均値を結晶粒の大きさとして算出することで求めることができる。
このようにして求められた最外Snめっき層3OLの結晶粒の大きさの平均が5μmよりも大きいと、最外Snめっき層3OLが結晶粒レベルで十分分断されていないために、ウイスカが発生しやすくなる。最外Snめっき層3OLの結晶粒の大きさの平均は、3μm以下であるのがより好ましい。
また、本発明のSnめっき銅基板1においては、最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線よりも上方の縦断面積に占める、Sn−Cu合金相6およびCuめっき層4の断面積比率が30%以上90%以下であるのが好ましい。ここで、カーケンダルボイドKを結んでなる線とは、Snめっき銅基板1の板厚方向の断面において、同じCuめっき層4中に形成されるカーケンダルボイドK全体を、板幅方向に連続的に繋げて想定される線をいう。
かかるカーケンダルボイドKよりも上方の縦断面積に占めるSn−Cu合金相6およびCuめっき層4の断面積比率が90%を超えると、最外Snめっき層3OLの表層に存在するSn−Cu合金相6の形成割合が多くなるので、半田付け性が悪くなる。
一方、カーケンダルボイドKよりも上方の縦断面積に占めるSn−Cu合金相6およびCuめっき層4の断面積比率が30%未満であると、最外Snめっき層3OLが結晶粒レベルで十分分断されていないために、ウイスカが発生しやすくなる。
なお、カーケンダルボイドKよりも上方の縦断面積に占めるSn−Cu合金相6およびCuめっき層4の断面積比率の上限は、80%以下であるのがより好ましく、70%以下であるのがさらに好ましい。また、カーケンダルボイドKよりも上方の縦断面積に占めるSn−Cu合金相6およびCuめっき層4の断面積比率の下限は、35%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのがさらに好ましい。
また、本発明においては、最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線から下方のCuめっき層4および中間Snめっき層3ILの層厚の合計が2μm以上あり、かつ、中間層となる各Snめっき層(各中間Snめっき層3IL)の層厚が0.5μm以上3μm以下であり、最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線から上方のCuめっき層4および最外Snめっき層3OLの層厚の合計が0.2μm以上1.5μm以下であるのが好ましい。
最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線から下方のCuめっき層4および中間Snめっき層3ILの層厚の合計が2μm未満であると、曲げ加工などした場合に、最外Snめっき層3OLやCuめっき層4などが削り取られて金属基板2が露出し、半田付け性や耐食性を損なうおそれがある。最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線から下方のCuめっき層4およびSnめっき層3の層厚の合計は、3μm以上とするのがより好ましく、5μm以上とするのがさらに好ましい。
また、最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線から上方のCuめっき層4および最外Snめっき層3OLの層厚の合計が0.2μm未満であると、特に、最外Snめっき層3OLが殆ど全てSn−Cu合金になってしまうため、ウイスカは発生しないものの、半田付け性が悪くなる。カーケンダルボイドKを結んでなる線から上方のCuめっき層4および最外Snめっき層3OLの層厚の合計は、0.3μm以上とするのがより好ましく、0.4μm以上とするのがさらに好ましい。
一方、最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線から上方のCuめっき層4および最外Snめっき層3OLの層厚の合計が1.5μmを超えると、Cu原子が最外Snめっき層3OLの粒界3gや粒内3cに拡散しても表面まで到達する割合が減り、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで十分に分断できなくなるため、ウイスカが発生しやすくなる。また、最外Snめっき層3OLの結晶粒レベルでの分断が不十分であると、Sn−Cu合金相6が形成されることにより誘起される圧縮応力によって、Sn原子の拡散が活発化するため、却ってウイスカが発生しやすくなるおそれがある。最外Snめっき層3OL直下のCuめっき層4に形成されたカーケンダルボイドKを結んでなる線より上方のCuめっき層4および最外Snめっき層3OLの層厚の合計は、1.2μm以下とするのがより好ましく、1μm以下とするのがさらに好ましい。
次に、図3を参照して、本発明に係るSnめっき銅基板の製造方法について説明する。なお、図3は、本発明のSnめっき銅基板の製造方法のフローを示す図である。
図3に示すように、本発明に係るSnめっき銅基板の製造方法は、積層工程S1と、合金相形成工程S2と、を含んでなる。
なお、めっき膜層5の層厚を1.5μm以上とする臨界的意義、最外Snめっき層3OLの層厚を0.2μm以上1.5μm以下とする臨界的意義、および、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外Snめっき層3OLをめっき膜層5との総厚が3μm以上とする臨界的意義など、各層厚を特定の範囲に規定した理由については、本発明のSnめっき銅基板の説明で述べたとおりであるので、その説明を省略する。
また、少なくとも、中間Snめっき層3ILおよび最外Snめっき層3OLの粒界3gおよび界面34i、34oのいずれかにSn−Cu合金相6を有することの意義、Cuめっき層4およびSn−Cu合金相6のうち少なくとも一方にカーケンダルボイドKを形成させると好適である点など、本発明のSnめっき銅基板の好適な実施態様やそのようにする理由等についても、本発明のSnめっき銅基板の説明で述べたとおりであるので、その説明を省略する。
リードフレームやコネクタ端子にSnめっき銅基板1を使用する場合、これらの部品は合金相形成工程S2後に曲げ加工等されることが多いため、めっき膜層5が薄すぎると加工治具と擦れた箇所のめっきの表層が削り取られて金属基板2が露出し、その部分の半田付け性や耐食性が著しく低下する。これを防止するため、本発明では、Snめっき層3の粒界3g、および当該Snめっき層3の粒内3cにCuを拡散させて合金化し、Snめっき層3の粒界3g、およびCuめっき層4や金属基板2とSnめっき層3との界面34o、34i、32で、Snめっき層3を結晶粒レベルで分断することにより、Sn原子の移動と集中を抑制してウイスカの発生の防止を図っている。ただし、Cu原子の粒界3gへの拡散距離は1〜2μm程度であるため、このような方法でSnめっき層3を分断するためには、前記したように、少なくとも最外Snめっき層3OLについては、その層厚を1〜2μm以下にしなければ、その表面までCu原子が拡散できないため、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで分断することができない。つまり、最外Snめっき層3OLの層厚を厚くしすぎるとCu原子の拡散が十分に行われないのでウイスカの発生を防止することができない。
本発明では、これを加味して、以下のような条件で積層工程S1を行う。
〔積層工程〕
積層工程S1は、純銅板、銅合金板、または銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板2上に、中間Snめっき層3ILと、Cuめっき層4とを、この順に積層してなるめっき膜層5を1.5μm以上の層厚となるように少なくとも1膜層以上積層し、さらにこのめっき膜層5上に、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外Snめっき層3OLを、前記しためっき膜層5との総厚が3μm以上となるように積層する。
これにより、最外Snめっき層3OLがSn−Cu合金相6によって、後記するように結晶粒レベルで分断される前の状態のSnめっき銅基板1’(図1および図2参照)を得ることができる。
なお、Snめっき層3(中間Snめっき層3ILおよび最外Snめっき層3OL)の層厚は、予め金属基板に対して種々の時間でSnめっきを行い、金属基板に形成したSnめっき層の付着量とめっき面積から単位面積当たりのめっき付着量を求め、この値でSnの理論密度を除することによって、Snめっき層の形成速度を求め、この形成速度を基に所定の層厚をめっきするのに必要なめっき時間を割り出すことで、Snめっき層3の層厚の制御を行うことができる。これは、Cuめっき層4の層厚の制御も同様である。
なお、この積層工程S1において、最外Snめっき層3OLの直下に形成されるCuめっき層4の層厚は0.05μm以上1μm以下に積層するのが好ましい。最外Snめっき層3OLの直下のCuめっき層4をこのような範囲で積層すると、最外Snめっき層3OLの粒界3gおよび粒内3cにCu原子を適度に拡散させることができる。そのため、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで分断することが可能となる。
最外Snめっき層3OLの直下に形成されるCuめっき層4の層厚が0.05μm未満であると、その層厚が薄すぎるため、最外Snめっき層3OLの粒界3gおよび粒内3cに拡散するCu原子が不足し、最外Snめっき層3OLを結晶粒レベルで分断することができない。したがって、ウイスカが発生しやすくなる。最外Snめっき層3OLの直下に形成されるCuめっき層4の層厚は、0.1μm以上とするのがより好ましい。
他方、最外Snめっき層3OLの直下に形成されるCuめっき層4の層厚が1μmを超えると、その層厚が厚すぎるため、最外Snめっき層3OLの粒界3gおよび粒内3cにCu原子が拡散しすぎてしまう。そのため、最外Snめっき層3OLの表層にSn−Cu合金相6が多く形成されることとなり、半田付け性が悪くなる。最外Snめっき層3OLの直下に形成されるCuめっき層4の層厚は、0.6μm以下とするのがより好ましい。
この積層工程S1において、めっき膜層5を構成する各中間Snめっき層3ILの層厚を0.5μm以上3μm以下で積層するのが好ましい。各中間Snめっき層3ILの層厚をこの範囲とするのは、その界面34iおよび粒界3gにSn−Cu合金相6を形成させることによって中間Snめっき層3ILを結晶粒レベルで分断させて、Sn原子の移動と集中を抑制できるからである。これによって、曲げ加工などによって表面のSnめっき層3が削り取られて中間Snめっき層3ILが表面に露出しても、露出した中間Snめっき層3ILはCu−Sn合金相6で当該中間Snめっき層3ILが分断されているために、曲げ部からウイスカが発生するおそれがない。
中間Snめっき層3ILの層厚が0.5μm未満であると、Cuめっき層4の層厚にもよるが、Cu原子の拡散により、中間Snめっき層3IL全体がSn−Cu合金相6となってしまうおそれがある。このような状態で、曲げ加工時に表面から中間Snめっき層3ILの中間の位置まで削り取られてしまうと、Sn−Cu合金相6のみが表面に露出することになり、半田付け性が悪くなることがある。中間Snめっき層3ILの層厚は、1μm以上とするのがより好ましい。
一方、中間Snめっき層3ILの層厚が3μmよりも厚いと、Cu原子の拡散によって中間Snめっき層3ILを結晶粒レベルで十分に分断することができなくなるおそれがある。つまり、曲げ加工時に表面から中間Snめっき層3ILの中間の位置まで削り取られて、かかる中間Snめっき層3ILが露出するとウイスカが発生しやすくなる場合がある。中間Snめっき層3ILの層厚は、2.5μm以下とするのがより好ましい。
また、積層工程S1において、各中間Snめっき層3ILの層厚を0.5μm以上3μm以下で積層する場合は、中間Snめっき層3ILの間、および、中間Snめっき層3ILと最外Snめっき層3OLとの間に挟まれた各Cuめっき層4の層厚を、それぞれのCuめっき層4を挟む中間Snめっき層3ILのうちいずれか厚い層厚を有する中間Snめっき層3ILの1/10以上1μm以下の層厚で積層させるのが好ましい。
Cuめっき層4の層厚が、当該Cuめっき層4を挟む中間Snめっき層3ILのうちいずれか厚い方の層厚の1/10未満であると、拡散するCu原子の量が少ないために、Cu原子が中間Snめっき層3ILの粒界3gおよび粒内3cに十分に拡散できず、中間Snめっき層3ILを結晶粒レベルで分断することができない。Cuめっき層4の層厚は、当該Cuめっき層4を挟む中間Snめっき層3ILのうちいずれか厚い方の層厚を有する中間Snめっき層3ILの層厚の1/5以上とするのがより好ましい。
一方、この場合において、中間Snめっき層3ILに挟まれたCuめっき層4の層厚が1μmを超えると、Sn−Cu合金相6が形成されすぎるために、曲げ加工された部分の半田付け性が低下する。Cuめっき層4の層厚は、0.8μm以下とするのがより好ましい。
〔合金相形成工程〕
次に、合金相形成工程S2は、少なくとも中間Snめっき層3ILおよび最外Snめっき層3OLの粒界3g、最外Snめっき層3OLとCuめっき層4との界面34o、中間Snめっき層3ILとCuめっき層4との界面34i、および、中間Snめっき層3ILと金属基板2との界面32、のいずれかにCuめっき層4および金属基板2の少なくとも一方に由来するCu原子を拡散させてSn−Cu合金相6を形成させる。これにより、少なくとも最外Snめっき層3OLはSn−Cu合金相6によって結晶粒レベルで分断され、本発明に係るSnめっき銅基板1を製造することができる。
Cu原子は、室温でSnめっき層3、特にその粒界3gを高速で拡散する。Snめっき層3の層厚にもよるが、Cu原子は、例えば、Snめっき層3の層厚が0.5μm程度であれば1日で粒界3gを拡散する。合金相形成工程S2の温度条件を高くすれば粒界3gへの拡散が促進され、Sn−Cu合金相6が早期に形成される。
しかし、合金相形成工程S2の温度条件を高くしすぎると、Snめっき層3中の粒界拡散と粒内拡散の速度が等しくなるため、Snめっき層3の粒界3gが先行して合金化することができず、Snめっき層3の粒内3cも粒界3gと同程度の速度で合金化することになる。そのため、Snめっき層3の粒界3gと、Snめっき層3の粒内3cとが、一様の厚さでSn−Cu合金相6となってしまい、Snめっき層3を結晶粒レベルで分断することができない。
つまり、Cu原子の粒内3cへの拡散が必要以上に促進される結果、拡散に寄与するCu原子の量が比較的少ない場合は、Cu原子がSnめっき層3の表面まで拡散することができず、ウイスカの発生を抑制することができない。他方、拡散に寄与するCu原子の量が比較的多い場合は、Snめっき層3すべてがSn−Cu合金相6となってしまい、半田付け性が悪くなる。
したがって、合金相形成工程S2の温度条件は、Snめっき層3の粒界3gと粒内3cにおけるCu原子の拡散速度に差が出る温度に制御するのが好ましい。例えば、合金相形成工程S2の温度条件は、160℃以下とするのが好ましく、140℃以下とするのがより好ましく、130℃以下とするのがさらに好ましい。
なお、拡散に寄与するCu原子の量はCuめっき層4の層厚で決まるため、Cuめっき層4の層厚は、前記した特定の範囲で制御するのが好ましい。
また、合金相形成工程S2によって、Cuめっき層4およびSn−Cu合金相6の少なくとも一方には、Cu原子が拡散してなるカーケンダルボイドKが形成されるのが好ましい。なお、カーケンダルボイドKは、合金相形成工程S1を実施したCuめっき層4中に形成される。なお、Cuめっき層4の層厚が薄い場合や合金相形成温度条件によっては、Cuめっき層4全体がSn−Cu合金相6となることがある。この場合は、結果としてカーケンダルボイドKは当然Sn−Cu合金相中に形成される。Cuめっき層4を2層以上積層した場合は、すべてのCuめっき層4にこれが形成され得る。
なお、カーケンダルボイドKは、前記した積層工程S1において、Snめっき層3(中間Snめっき層3ILおよび最外Snめっき層3OL)およびCuめっき層4の各層厚を、それぞれ前記した範囲で積層すると好適に形成させることができる。すなわち、Snめっき層3およびCuめっき層4の各層厚を適切に制御することにより、Cuめっき層4のCu原子をSnめっき層3の粒界3gおよび粒内3cに適切に拡散させることが可能となるため、カーケンダルボイドKを形成させることができる。
次に、本発明のリードフレームおよびコネクタ端子について図4および図5を参照して説明する。なお、図4は、本発明のリードフレームの一例を示す構成図である。図5は、本発明のコネクタ端子の一例を示す一部断面図であって、(a)は、雄端子と雌端子を嵌合する前の状態を示す図であり、(b)は、雄端子と雌端子を嵌合した後の状態を示す図である。
図4に示すように、本発明のリードフレーム100は、例えば、1つ以上のボンディングパッド101と、これと連続する複数のリード部分102と、を有する一般的なリードフレームとして形成することができる。
かかるリードフレーム100は、例えば、前記したSnめっき銅基板1を帯状に形成して、かつ、複数のリード部分102およびボンディングパッド101を所定の形状の精密金型などを使用して打ち抜き処理(スタンピング処理)やエッチング処理により形成することで製造することができる。また、前記した本発明のSnめっき銅基板1に用いる金属基板2は、予め前記した複数のリード部分102および前記したボンディングパッド101を形成しておき、これにめっき層膜5、最外Snめっき層3OL、Sn−Cu合金相6を形成してもよい。この場合は、打ち抜きやエッチングによって形成される金属基板2の端面もめっき層膜5、最外Snめっき層3OL、Sn−Cu合金相6で覆われるため、金属基板2の耐食性や端面での半田付け性が良好となる。さらに、金属基板2表面と端面が成すエッジ部やコーナー部では、めっきの残留圧縮応力が発生しやすく、従来のようにSnめっきのみであるとウイスカが発生し易いが、本発明のように中間Snめっき層3ILと、Cuめっき層4と、最外Snめっき層3OLと、を有し、さらにSn−Cu合金相6を形成したリードフレーム100においては、そのような心配がない。したがって、本発明のリードフレーム100は、必要によりプレス曲げ加工等を行い、リード部分102を折り曲げたりしてもよい。
なお、前記した打ち抜き処理やエッチング処理、プレス曲げ加工等は、一般的に用いられる手法によって行うことができる。
また、図5(a)に示すように、本発明のコネクタ端子200は、前記したSnめっき銅基板1を用いて圧延等して製造した適宜の板厚の薄板を、例えば、所定の形状の金型を使用したプレス曲げ加工等することにより、雌端子210および/または雄端子220として製造することができる。
例えば、雌端子210は、図5(a)に示すように、プレス曲げ加工等によって、少なくとも一部が対向する壁部211との距離を狭くした曲折部212を有する保持部213を備えるように製造されている。
また、例えば、雄端子220は、図5(a)に示すように、プレス曲げ加工等によって、コードが接続される基端部221から延び、前記した雌端子210の保持部213に嵌合される先端部222を備えるように製造されている。
なお、前記したように、雌端子210や雄端子220を製造する際にプレス曲げ加工等によりめっき膜層5の表層が削り取られたとしても、既に詳述しているように、本発明のSnめっき銅基板1を用いているので、ウイスカの発生を抑制することができる。
そして、雌端子210と雄端子220とは、例えば、図5(b)に示すように、雌端子210の保持部213に、雄端子220の先端部222を挿入して嵌合させることにより接続することができる。
このとき、保持部213と先端部222が接触してめっき膜層5の表層が削り取られたとしても、本発明のSnめっき銅基板1を用いているので、ウイスカの発生を抑制することができる。
このようにして製造されたリードフレームやコネクタ端子は、金属基板2の表面に形成された最外Snめっき層3OLがSn−Cu合金相6によって平面方向および層厚方向に、結晶粒レベルで分断されているので、Sn原子が特定の箇所に集まりにくく、ウイスカの発生が防止される。したがって、短絡しにくいので、半導体などに好適に使用することができる。また、金属基板2の表面にSnめっき層3(最外Snめっき層3OL)が形成されているので、良好な半田付け性を有する。
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
[実施例A]
実施例1〜9、比較例1〜5に係る銅板(以下、単に「実施例1〜9、比較例1〜5」などという。)をカソードとして、ユケン工業株式会社製の電解脱脂剤パクナF−1550を50g/Lで溶解した水溶液に浸漬して、以下の条件で電解脱脂を行った。
〔電解脱脂条件〕
アノード:ステンレス鋼
脱脂温度:50℃
電流密度:2A/dm
電解時間:30秒
実施例1〜9、比較例1〜5を電解脱脂して水洗した後、10質量%の硫酸水溶液に15秒間浸漬し、再度水洗し、石原薬品株式会社製の下記の組成のSnめっき液を用いて、下記の条件で銅板の表面に5μmの層厚の中間層となるSnめっき層(以下、「中間Snめっき層」という。)を形成した。
〔Snめっき液の組成〕
PF−TIN:200mL/L
PF−ACID:125mL/L
PF−05M:30mL
〔Snめっき条件〕
電流密度:10A/dm
めっき液温度:35℃
なお、Snめっき層の層厚は、予め銅板に対して種々の時間でSnめっきを行い、銅板に形成したSnめっき層の付着量とめっき面積から単位面積当たりのめっき付着量を求め、この値でSnの理論密度を除することによって、Snめっき層の形成速度を求め、この形成速度を基に所定の層厚をめっきするのに必要なめっき時間を割り出すことで、Snめっき層の層厚の制御を行った。
次に、中間Snめっき層を形成した実施例1〜9、比較例1〜4を水洗した後、下記の組成のCuめっき液(関東化学株式会社製鹿1級試薬)を用いて、下記の条件にて表1に示す層厚のCuめっき層を形成した。なお、Cuめっき層の層厚は、Snめっき層の層厚の制御と同様にして制御した。なお、比較例5に係る銅板については、比較のためにCuめっき層と、後記する最外層となるSnめっき層(以下、「最外Snめっき層」という。)の形成を行わなかった。
〔Cuめっき液の組成〕
CuCN:47.5g/L
KCN:10.5g/L
CO:54.2g/L
〔Cuめっき条件〕
電流密度:2A/dm
めっき温度:55℃
最後に、Cuめっき層を形成した実施例1〜9、比較例1〜4について、Cuめっき層の上に前記と同じ組成のSnめっき液を用いて、前記と同じ条件でSnめっきを行い、表1に示す層厚の最外Snめっき層を形成した。その後、室温(25℃)で24時間放置することにより、Sn−Cu合金相を形成させた。
そして、Cuめっき層の層厚と最外Snめっき層の層厚の組み合わせを種々変更した実施例1〜9、比較例1〜4、および中間Snめっき層のみを形成した比較例5を用いて、それらの縦断面をFIB(Focused Ion Beam)装置で観察した。
FIB装置での観察は、まず、最外Snめっき層の表面を保護するために、その表面にカーボン保護膜を層厚約2μmで成膜し、その後、FIB装置のチャンバー内にサンプル(実施例1〜9、比較例1〜5)を設置して真空引きした後、加速電圧30kV、ビーム径320nm、ビーム電流約3700pAのガリウムイオンをサンプルの表面(カーボン保護膜面)に垂直に照射して、サンプルの層厚方向に切断してめっきの断面を出し、さらに、この断面に平行に加速電圧30kV、ビーム径92nm、ビーム電流約1400pAのガリウムイオンを照射することによって断面の仕上げ加工を行った後に、加速電圧30kV、ビーム径7nm、ビーム電流約2pAのガリウムイオンをその断面に照射するときに当該断面から放出される二次電子による二次電子像(SIM像)を得、これを観察することで行った。
FIB装置によって撮影を行った、本発明の要件を満たす実施例1〜9のうち、実施例3のSIM像を図6に示す。なお、図6中のスケールバーは、1μmであることを示す。
図6に示すように、実施例3のSIM像では、金属基板である銅板の上に中間Snめっき層が積層され、その上にCuめっき層が積層され、さらにその上に最外Snめっき層が形成されていることが分かる。
そして、中間Snめっき層および最外Snめっき層には、その粒界および粒内(つまり、中間Snめっき層および最外Snめっき層の粒界、最外Snめっき層とCuめっき層との界面、中間Snめっき層とCuめっき層との界面、および、中間Snめっき層と銅板との界面)にSn−Cu合金相が形成され、Cuめっき層にはカーケンダルボイドが形成されていることも分かる。
さらに、図6のSIM像から、最外Snめっき層の結晶粒の大きさやその平均も分かる。例えば、図6中の(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)で示す最外Snめっき層の結晶粒の大きさは、(a)が1μm、(b)が1.3μm、(c)が0.4μm、(d)が3μm、(e)が0.5μm、(f)が0.9μm、(g)が3μmであり、その平均は1.4μmであった。
また、最外Snめっき層直下のCuめっき層に形成されたカーケンダルボイドを結んでなる線から下方のCuめっき層および中間Snめっき層の層厚の合計は、5〜7μmであり、かつ、中間Snめっき層の層厚は、0.5〜3μmであった。
実施例1、2、4〜9についても実施例3と同様にSIM像を観察した結果、最外Snめっき層の分断された結晶粒の大きさと、最外Snめっき層直下のCuめっき層に形成されたカーケンダルボイドを結んでなる線よりも上方の縦断面積に占める、Sn−Cu合金相およびCuめっき層の断面積比率を求めた。中間Snめっき層の層厚、Cuめっき層の層厚、および最外Snめっき層の層厚とともに、最外Snめっき層の結晶粒の大きさ、およびSn−Cu合金相の縦断面積比率を表1に示す。なお、表1中、「−」は該当するめっき層を形成していないことを表わす。
ここで、表1に示す、最外Snめっき層直下のCuめっき層に形成されたカーケンダルボイドを結んでなる線より上方のSnめっき層の層厚は、めっき付着量から予め予想したSnめっき層の層厚とほぼ一致していた。
次いで、この実施例1〜9、比較例1〜5について、半田付け性の評価を行うとともに、恒温恒湿試験および外部応力試験を行って、ウイスカの発生の有無を調べた。
半田付け性は、メニスコグラフ法による半田濡れ性評価により評価した。メニスコグラフ法は、245℃で溶融したSn−3質量%Ag−0.5質量%Cuの半田液の液面に垂直に、実施例1〜9、比較例1〜5を10mm/秒の速度で挿入し、実施例1〜9、比較例1〜5の先端が液面から深さ8mmまで挿入したときに挿入速度を0にし、5秒後に実施例1〜9、比較例1〜5を半田液から引き上げて、その間に実施例1〜9、比較例1〜5に加わる半田液からの力の経時変化を測定することで、実施例1〜9、比較例1〜5を半田液に挿入してから初めて力が0になるまでの時間(ゼロクロスタイム(図7参照))で半田付け性の良否を評価するものである。本発明においては、ゼロクロスタイムが2秒以内の場合、半田付け性に問題はない(合格)と判断し、ゼロクロスタイムが2秒を超えた場合、半田付け性に問題あり(不合格)と判断した。なお、図7は、メニスコグラフ法による半田液への浸漬時間と濡れの力の関係を模式的に説明する説明図である。
恒温恒湿試験は、温度80℃、相対湿度85RH%の条件で200時間暴露した後、最外Snめっき層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で500倍に拡大して0.04mmの領域を任意に5箇所観察した。そして、発生しているウイスカの本数を数えて合計し、この値を5倍することにより、1mm当たりのウイスカ発生本数とした。
外部応力試験は、直径2mmのアルミナボールを荷重60N(600g)でめっき表面に240時間押し付けた後、圧痕周辺を観察してウイスカの発生本数を調べた。
実施例1〜9、比較例1〜5の半田付け性(ゼロクロスタイム(秒))、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数(本/mm)および外部応力試験後のウイスカの発生本数(本)を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜9は、半田付け性(ゼロクロスタイム)は全て2秒以内であり、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数も比較例5と比較してすこぶる低減されていることがわかる。
一方、比較例1は、Cuめっき層が薄すぎて最外Snめっき層を十分分断できなかったため、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数が多い結果となった。
また、比較例2は、Cuめっき層が厚すぎて最外Snめっき層の大半(Snめっき層の92%)がSn−Cu合金相となってしまったために、ゼロクロスタイムが2秒を超え、半田付け性が劣る結果となった。
比較例3は、最外Snめっき層が厚すぎたために、CuがSnめっき層の表面まで拡散できなかった。そのため、最外Snめっき層を結晶粒レベルで分断できず、Sn−Cu合金相が形成されることによって誘起される圧縮応力によりSn原子の拡散が活発化し、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数が多い結果となった。
比較例4は、最外Snめっき層が薄すぎたため、最外Snめっき層が全て(100%)Sn−Cu合金相化してしまったため、ゼロクロスタイムが2秒を超え、半田付け性が劣る結果となった。
比較例5は、Snめっき層のみであったので、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数が多い結果となった。
次いで、この実施例3および比較例5について、前記した恒温恒湿試験を行った後、その表面を500倍の倍率で走査型顕微鏡(SEM)によって撮影し、SEM像を得た。図8(a)に、恒温恒湿試験後の実施例3の表面のSEM像を示す。また、図8(b)に、恒温恒湿試験後の比較例5の表面のSEM像を示す。図8(a)(b)中の右下に表すドット1区間は10μm(ドット10区間で100μm)を示す。
また、実施例3および比較例5について、前記した外部応力試験を行った後、その表面を500倍の倍率でSEMによって撮影し、SEM像を得た。図9(a)に、外部応力試験後の実施例3の表面のSEM像を示す。また、図9(b)に、外部応力試験後の比較例5の表面のSEM像を示す。図9(a)(b)中の右下に表すドット1区間は5μm(ドット10区間で50μm)を示す。
図8(a)および図9(a)に示すように、恒温恒湿試験後および外部応力試験後の実施例3の表面にはウイスカの発生は認められなかったが、図8(b)および図9(b)に示すように、恒温恒湿試験後および外部応力試験後の比較例5の表面にはウイスカが複数発生していることが分かる。
[実施例B]
次に、実施例10〜17、比較例5〜9に係る銅板(以下、単に「実施例10〜17、比較例5〜9」などという。)を、[実施例A]と同じ条件で電解脱脂した後、[実施例A]で記載したSnめっき液およびSnめっき条件と、Cuめっき液およびCuめっき条件によって、下記表3に示すように、銅板側から第1層(中間Snめっき層)、第2層(Cuめっき層)、第3層(中間Snめっき層、または最外Snめっき層)、第4層(Cuめっき層)、第5層(最外Snめっき層)の順で、第3層まで、または第5層までを形成した実施例10〜17、比較例6〜9を作製した。なお、[実施例B]の比較例5は、[実施例A]の比較例5と同一のものである。
ここで、それぞれのめっき層の層厚は、[実施例A]と同様、Snめっき層やCuめっき層の形成速度を求め、その形成速度を基に所定の層厚を形成するのに必要なめっき時間を割り出し、それぞれのめっき層の層厚の制御を行った。
そして、実施例10〜17、比較例5〜9の縦断面のSIM像をFIB装置によって撮影して観察した。FIB装置による撮影条件は、[実施例A]と同様である。
SIM像を観察して、それぞれのめっき層の層厚(μm)を測定し、実施例10〜17、比較例5〜9のそれぞれについて、その合計層厚(μm)を測定した。表3に、実施例10〜17、比較例5〜9のそれぞれのめっき層の層厚、および合計層厚(μm)を示す。なお、表3中、「−」は、該当するめっき層を形成していないことを表わす。
次に、この実施例10〜17、比較例5〜9について、半田付け性の評価を行うとともに、恒温恒湿試験および外部応力試験を行って、ウイスカの発生の有無を調べた。なお、半田付け性の評価、恒温恒湿試験、および外部応力試験は、[実施例A]と同じ条件で行った。また、これと併せて、実施例10〜17、比較例5〜9のSIM像を用いてその断面を観察し、Snめっき層の状況を確認した。
半田付け性の評価(ゼロクロスタイム(秒))、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数(本/mm)、および外部応力試験後のウイスカの発生本数(本)を、SIM像を用いて観察したSnめっき層の状況とともに、表4に示す。
表4に示すように、実施例10〜17は、半田付け性(ゼロクロスタイム)は全て2秒以内であり、恒温恒湿試験後のウイスカ発生本数および外部応力試験後のウイスカ発生本数も比較例5と比較してすこぶる低減され、Snめっき層も結晶粒レベルで十分に分断されていることがわかった。
一方、比較例5は、[実施例A]でも述べたように、Cuめっき層を形成していない単層構造であったので、Snめっき層の結晶粒レベルでの分断が不十分となり、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数が多い結果となった。
比較例6は、第3層(最外Snめっき層)が厚すぎるため、第3層(最外Snめっき層)は結晶粒レベルでの分断が不十分であった。そのため、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数が多い結果となった。
また、比較例7は、第3層(最外Snめっき層)が薄すぎたため、第3層(最外Snめっき層)の全てがSn−Cu合金相化してしまった。そのため、ゼロクロスタイムが2秒を超え、半田付け性が劣る結果となった。
比較例8は、第2層(Cuめっき層)が厚すぎたために、第3層(最外Snめっき層)も大半がSn−Cu合金相化してしまった。そのため、ゼロクロスタイムが2秒を超え、半田付け性が劣る結果となった。なお、第1層(Snめっき層)が全て合金化しているため、曲げ加工等した後の半田付け性も劣ることが予想される。
比較例9は、第2層(Cuめっき層)が薄すぎたため、Sn−Cu合金相を十分に形成できなかった。そのため、第3層(最外Snめっき層)は結晶粒レベルでの分断が不十分となった。したがって、恒温恒湿試験後のウイスカの発生本数および外部応力試験後のウイスカの発生本数が多い結果となった。
次いで、この実施例10について、前記した恒温恒湿試験を行った後、その表面を500倍の倍率でSEMによって撮影し、SEM像を得た。図10(a)に、恒温恒湿試験後の実施例9の表面のSEM像を示す。また、比較のため、図10(b)に、[実施例A]で説明した恒温恒湿試験後の比較例5の表面のSEM像を示す。図10(a)(b)中の右下に表すドット1区間は10μm(ドット10区間で100μm)を示す。
また、実施例10について、前記した外部応力試験を行った後、その表面を500倍の倍率でSEMによって撮影し、SEM像を得た。図11(a)に、外部応力試験後の実施例9の表面のSEM像を示す。また、比較のため、図11(b)に、[実施例A]で説明した外部応力試験後の比較例5の表面のSEM像を示す。図11(a)(b)中の右下に表すドット1区間は5μm(ドット10区間で50μm)を示す。
図10(a)および図11(a)に示すように、恒温恒湿試験後および外部応力試験後の実施例9の表面にはウイスカの発生は認められなかった。
以上、本発明のSnめっき銅基板、Snめっき銅基板の製造方法、およびこれを用いたリードフレームおよびコネクタ端子について、発明を実施するための最良の形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
本発明のSnめっき銅基板の構成を示す断面図である。 本発明のSnめっき銅基板の他の構成を例示する断面図である。 本発明のSnめっき銅基板の製造方法のフローを示す図である。 本発明のリードフレームの一例を示す構成図である。 本発明のコネクタ端子の一例を示す一部断面図であって、(a)は、雄端子と雌端子を嵌合する前の状態を示す図であり、(b)は、雄端子と雌端子を嵌合した後の状態を示す図である。 実施例3のSIM像である。図6中のスケールバーは、1μmであることを示す。 メニスコグラフ法による半田液への浸漬時間と濡れの力の関係を模式的に説明する説明図である。 (a)は、恒温恒湿試験後の実施例3の表面のSEM像であり、(b)は、恒温恒湿試験後の比較例5の表面のSEM像である。図8(a)(b)中の右下に表すドット1区間は10μm(ドット10区間で100μm)を示す。 (a)は、外部応力試験後の実施例3の表面のSEM像であり、(b)は、外部応力試験後の比較例5の表面のSEM像である。図9(a)(b)中の右下に表すドット1区間は5μm(ドット10区間で50μm)を示す。 (a)は、恒温恒湿試験後の実施例10の表面のSEM像であり、(b)は、[実施例A]で説明した恒温恒湿試験後の比較例5の表面のSEM像である。図10(a)(b)中の右下に表すドット1区間は10μm(ドット10区間で100μm)を示す。 (a)は、外部応力試験後の実施例10の表面のSEM像であり、(b)は、[実施例A]で説明した外部応力試験後の比較例5の表面のSEM像である。図11(a)(b)中の右下に表すドット1区間は5μm(ドット10区間で50μm)を示す。
符号の説明
1 Snめっき銅基板
2 金属基板
3 Snめっき層
3IL 中間Snめっき層(中間層となるSnめっき層)
3OL 最外Snめっき層(最外層となるSnめっき層)
3g 粒界
3c 粒内
32、34i、34o 界面
4 Cuめっき層
5 めっき膜層
6 Sn−Cu合金相
S1 積層工程
S2 合金相形成工程

Claims (12)

  1. 純銅板、銅合金板、または銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板上に、
    中間層となるSnめっき層と、Cuめっき層とを、この順に積層してなるめっき膜層を1.5μm以上の層厚で少なくとも1膜層以上備えるとともに、このめっき膜層上に、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外層となるSnめっき層を前記めっき膜層との総厚が3μm以上で備え、
    少なくとも、前記中間層および前記最外層となる各Snめっき層の粒界、
    前記最外層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、
    前記中間層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、および、
    前記中間層となるSnめっき層と前記金属基板との界面、
    のいずれかに前記Cuめっき層および前記金属基板の少なくとも一方に由来するCuを拡散させてなるSn−Cu合金相を有することを特徴とするSnめっき銅基板。
  2. 前記Cuめっき層および前記Sn−Cu合金相のうち少なくとも一方には、前記Cuが拡散してなるカーケンダルボイドが形成されており、このカーケンダルボイドよりも上方に形成された前記最外層となるSnめっき層の結晶粒の大きさの平均が5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のSnめっき銅基板。
  3. 前記最外層となるSnめっき層直下のCuめっき層に形成された前記カーケンダルボイドを結んでなる線よりも上方の縦断面積に占める、前記Sn−Cu合金相および前記Cuめっき層の断面積比率が30%以上90%以下であることを特徴とする請求項2に記載のSnめっき銅基板。
  4. 純銅板、銅合金板、または銅めっきされた金属板のいずれかの金属基板上に、
    中間層となるSnめっき層と、Cuめっき層とを、この順に積層してなるめっき膜層を1.5μm以上の層厚となるように少なくとも1膜層以上積層し、さらにこのめっき膜層上に、0.2μm以上1.5μm以下の層厚の最外層となるSnめっき層を前記めっき膜層との総厚が3μm以上となるように積層する積層工程と、
    少なくとも、前記中間層および前記最外層となる各Snめっき層の粒界、
    前記最外層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、
    前記中間層となるSnめっき層と前記Cuめっき層との界面、および、
    前記中間層となるSnめっき層と前記金属基板との界面、
    のいずれかに前記Cuめっき層および前記金属基板の少なくとも一方に由来するCuを拡散させてSn−Cu合金相を形成する合金相形成工程と、
    を含むことを特徴とするSnめっき銅基板の製造方法。
  5. 前記積層工程において、
    前記最外層となるSnめっき層の直下に形成されるCuめっき層の層厚を0.05μm以上1μm以下に積層することを特徴とする請求項4に記載のSnめっき銅基板の製造方法。
  6. 前記積層工程において、前記めっき膜層を2膜層以上積層する場合は、
    このめっき膜層を構成する前記中間層となる各Snめっき層を0.5μm以上3μm以下の層厚で積層させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のSnめっき銅基板の製造方法。
  7. 前記積層工程において、前記めっき膜層を2膜層以上積層する場合は、
    前記中間層となるSnめっき層の間、および、前記中間層となるSnめっき層と前記最外層となるSnめっき層との間に挟まれた各Cuめっき層の層厚を、それぞれのCuめっき層を挟むSnめっき層のうちいずれか厚い層厚を有するSnめっき層の1/10以上1μm以下の層厚で積層させることを特徴とする請求項6に記載のSnめっき銅基板の製造方法。
  8. 前記合金相形成工程によって、前記Cuめっき層および前記Sn−Cu合金相の少なくとも一方には、前記Cuが拡散してなるカーケンダルボイドが形成されることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のSnめっき銅基板の製造方法。
  9. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のSnめっき銅基板を用いたリードフレームであって、
    前記Snめっき銅基板を帯状に形成して、かつ、複数のリード部分およびこれと連続するボンディングパッドを、打ち抜きまたはエッチング処理により形成したことを特徴とするリードフレーム。
  10. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のSnめっき銅基板を用いて、複数のリード部分およびこれと連続するボンディングパッドを形成したリードフレームであって、
    前記Snめっき銅基板に用いる前記金属基板は、予め前記複数のリード部分および前記ボンディングパッドが形成されていることを特徴とするリードフレーム。
  11. 前記リード部分がプレス曲げ加工されていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のリードフレーム。
  12. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のSnめっき銅基板を用いたコネクタ端子であって、
    前記Snめっき銅基板を薄板に形成して、かつ、所定形状にプレス加工したことを特徴とするコネクタ端子。
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