JP2009140909A - 非水電解質二次電池用正極の製造方法及び非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極の製造方法及び非水電解質二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低コストで高性能な非水電解質二次電池を歩留まり高く提供する。
【解決手段】リチウム源と、ニッケル源とを含む正極活物質前駆体を焼成してリチウムニッケル複合酸化物となす焼成工程と、リチウムニッケル複合酸化物を不活性ガス雰囲気中で200〜1500℃に加熱したとき、発生する炭酸ガス量を測定する測定工程と、測定工程における加熱温度をx(℃)、測定工程で測定されたリチウムニッケル複合酸化物1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とするとき、以下の数式を満たすリチウムニッケル複合酸化物を選別する選別工程と、選別工程で選別されたリチウムニッケル複合酸化物を主体とする正極活物質を用いて正極を完成させる正極完成工程と、を備える非水電解質二次電池用正極の製造方法。
(数1)
y<(0.27x-51)/1000000(200≦x<400)
(数2)
y<57/1000000(400≦x≦1500)
【選択図】図5

Description

本発明は、非水電解質二次電池の製造方法の改良に関し、特にリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質とする非水電解質二次電池の製造方法の改良に関する。
非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるため、携帯機器の駆動電源として広く利用されている。従来、非水電解質二次電池に用いる正極活物質としては、放電特性に優れるリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)が用いられてきた。
しかし、電池のさらなる高容量化に対する要望の高まりや、コバルトの価格上昇による電池コストの増大から、非水電解質二次電池用の正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物LiaNix1-x2(MはCo、Al、Zr、Ti、Mg、Mnの少なくとも一種、0.9≦a≦1.1、0.5≦x≦1)が注目されている。
しかしながら、リチウムニッケル複合酸化物には、未だ解決すべき課題を抱えており、その一に電池容量の低下と電池膨化という問題がある。例えば下記非特許文献1には、大気中に曝されたリチウムニッケル複合酸化物を用いて非水電解質二次電池を構成した場合、高温保存により電池膨化を起こすことが報告されている。
第47回電池討論会講演要旨集326−327頁
このような電池膨化の原因としては、上記非特許文献1では次のように考えられている。リチウムニッケル複合酸化物が大気に曝されると、リチウムニッケル複合酸化物中のリチウムイオンと大気中の水分とが反応し、反応性の高い水酸化リチウムが生じ、さらにこの水酸化リチウムが大気中の二酸化炭素と反応して炭酸リチウム(Li2CO3)となる。また大気に曝されたリチウムニッケル複合酸化物に含まれた水分は電池内で電解質塩であるLiPF6を分解し、フッ酸(HF)を生成し、これが炭酸リチウム(Li2CO3)を分解して電池内で炭酸ガスを発生させる。
電池内で発生したガスは、正負極間に留まって正負極の対向状態を悪くする。よって電池容量が低下する。また、水酸化リチウムの生成により、充放電に寄与するリチウムニッケル複合酸化物量が減少するので、この面からも電池容量の低下を招く。
ところで、正極活物質のこのような問題を解消する方法として、電池作製の全工程を大気に曝されない条件、例えばドライエアー雰囲気中や不活性ガス雰囲気中で行う方法が考えられる。しかしながら、この方法は製造コストの大幅な増加を招く。よって実用的な方法ではない。
このため、従来は、電池完成後に電池の膨れや電池容量の低下等に関する試験を行い、不適合であると判定された場合に同一製造ロットの電池を全て廃棄する方法が採られている。しかし、この方法によると、製造歩留まりが極端に低下することがあり、製造歩留まりの低下により、完成電池の価格上昇を招くという問題がある。
よって、電池の膨れや電池容量の低下等の発生を製造段階で簡便に予測できる評価法が必要であるが、未だこのような方法が確立されていない。本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
本発明は、リチウムニッケル複合酸化物を用いてなる非水電解質二次電池について、適正なリチウムニッケル複合酸化物を簡便に選別できるリチウムニッケル複合酸化物の品質判定法を案出し、また電池組み立て前に適正な正極のみを簡便に選別することのできる正極品質判定法を案出し、もって電池膨化や電池容量の低下のない高品質な非水電解質二次電池を製造歩留まりよく製造することのできる製造方法を確立することにある。
上記課題を解決するための第1の本発明は、次のように構成されている。
リチウム源と、ニッケル源とを含む正極活物質前駆体を焼成してリチウムニッケル複合酸化物となす焼成工程と、前記リチウムニッケル複合酸化物を、不活性ガス雰囲気中で200〜1500℃に加熱したとき、発生する炭酸ガス量を測定する測定工程と、前記測定工程における加熱温度をx(℃)、前記測定工程で測定されたリチウムニッケル複合酸化物1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とするとき、以下の数式を満たすリチウムニッケル複合酸化物を選別する選別工程と、前記選別工程で選別された前記リチウムニッケル複合酸化物を主体とする正極活物質を用いて正極を完成させる正極完成工程と、を備えることを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
(数1)
y<(0.27x-51)/1000000(200≦x<400)
(数2)
y<57/1000000(400≦x≦1500)
大気に曝されたリチウムニッケル複合酸化物を不活性ガス雰囲気中で200〜1500℃に加熱すると、炭酸ガスが発生する。この原因としては、リチウムニッケル複合酸化物中のリチウムイオンが大気中の水分と反応して水酸化リチウムとなり、この水酸化リチウムが大気中の炭酸ガスと反応して後に述べる熱分解性炭酸化合物を生成するためであることを見出した。
熱分解性炭酸化合物を生成する一連の反応は、充放電に寄与するリチウムニッケル複合酸化物量を減少させる反応であるので、これらの反応が起きると放電容量が低下する。また、これらの反応が起きたリチウムニッケル複合酸化物を用いた電池は、特に充電状態にて60℃以上で高温保存されると、熱分解性炭酸化合物が分解し炭酸ガスを発生するため、電池が大きく膨化する。それゆえ、熱分解性炭酸化合物の含有量が少ないことは、良質の電池を得る必要条件となり、熱分解性炭酸化合物の含有量の大小は、正極活物質の品質を判定する指標となり得る。
すなわち、リチウムニッケル複合酸化物を不活性ガス雰囲気中で200〜1500℃に加熱し、当該加熱により発生する二酸化炭素ガス量(以下、炭酸ガス量という)と、電池性能との間には相関関係がある。よって、同一製造ロット(同一条件で製造されたもの)のリチウムニッケル複合酸化物の一部をサンプリングし、これを上記温度で加熱し、発生する炭酸ガス量を測定し、この炭酸ガス発生量を上記数式1,2に挿入することにより、そのロットのリチウムニッケル複合酸化物が適合品であるか否かが判定できる。このリチウムニッケル複合酸化物品質判定法を用いて、正極活物質として適合するリチウムニッケル複合酸化物を選別使用することにより、高品質な正極を作製することができる。これにより歩留まりを格段に向上させることができる。
ここで、リチウムニッケル複合酸化物の加熱を、酸素ガスを含む活性ガス雰囲気中で行うと、リチウムニッケル複合酸化物や試験容器に微量に残存する有機物が燃焼(酸素と反応)して炭酸ガスが発生する。よって、熱分解性炭酸化合物に起因する炭酸ガス量を正確に測定できなくなるので、リチウムニッケル複合酸化物の加熱は、不活性ガス雰囲気で行う必要があり、不活性ガスとしては、アルゴンガスや窒素ガスが好ましく、特にアルゴンガスが好ましい。
また、加熱温度が200℃未満であると、炭酸ガス発生量が小さすぎるため、リチウムニッケル複合酸化物の品質を判定し難くなる。よって、加熱温度は200℃以上とする。他方、加熱温度が1500℃を超えると、焼成工程で未反応であった、リチウム源に起因する炭酸リチウムが熱分解して炭酸ガスを発生するので、この場合もリチウムニッケル複合酸化物の品質を判定し難くなる。よって、加熱温度は1500℃以下とする。ただし、判定の信頼性をより高めるためには、炭酸ガスの発生が概ね終了する400℃以上に加熱することが好ましく、他方、加熱コストの面から加熱温度の上限を800℃とすることが好ましい。また、より好ましくは、加熱温度を450±50℃とする。
また、炭酸ガス量の測定方法としては、ガス発生量分析を簡便かつ短時間で正確に測定できることから、好ましくはガスクロマトグラフィーを用いる。なお、炭酸ガス量の測定を、加熱前後の質量変化を測定する熱重量分析法(TGA)により行うこともできる。
なお、本発明にかかる正極には、正極活物質として本発明にかかるリチウムニッケル複合酸化物品質判定法を用いて選別した良品としてのリチウムニッケル複合酸化物の他に、リチウムニッケル複合酸化物以外の公知の正極活物質材料、例えばリチウムコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物などが含まれていてもよい。この場合、正極活物質としてリチウムニッケル複合酸化物を用いるメリット(低コスト化、高容量化)を十分に得るために、正極活物質全質量に占めるリチウムニッケル複合酸化物の質量割合を50〜100質量%とし、より好ましくは75〜100質量%とする。
上記課題を解決するための第2の発明は、次のように構成されている。
リチウムニッケル複合酸化物を主体とする正極活物質と、ポリフッ化ビニリデンを有する結着剤と、を含む正極合剤を用いて正極を作製する正極作製工程と、前記正極から前記正極合剤層を取り出し、前記正極合剤層を不活性ガス雰囲気中で200〜400℃に加熱したとき、発生する炭酸ガス量を測定する測定工程と、前記測定工程における加熱温度をx(℃)、前記測定工程で測定された正極活物質1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とするとき、以下の数3及び数4に記載の数式を満たす正極のみを選別する選別工程と、前記選別工程により選別された正極を用いて非水電解質二次電池を作製する電池作製工程と、を備えることを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
(数3)
y<(1.31x-258)/1000000(200≦x<300)
(数4)
y<(1.20x−225)/1000000(300≦x≦400)
上記第1の発明を用いて選別したリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合であっても、リチウムニッケル複合酸化物に結着剤やその他の添加剤を混合して正極合剤を作製しこれを正極板に塗布し圧延して正極を完成させる一連の工程中に、大気に触れる等してリチウムニッケル複合酸化物及び含有不純物が水分や二酸化炭素と反応することがある。それゆえ、正極構成前に正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物の品質を判定することに加えて、完成正極の適合性を評価できる判定法が必要である。第2の発明は、完成正極が適合品か否かを判定することのできる正極品質判定法を用いて、簡便に正極品質を判定し、良品と判定された正極のみを選別して用いることにより、高品質な完成電池を得る非水電解質二次電池の製造方法に関する。
正極活物質を正極芯体に塗着するためには結着剤を必要とするが、この結着剤としては、通常、ポリフッ化ビニリデンが使用されている。本発明者らは、ポリフッ化ビニリデンを結着剤として用いたリチウムニッケル複合酸化物正極から正極合剤層(活物質層)を取り出し加熱したところ、リチウムニッケル複合酸化物単独を加熱した場合よりも多量の炭酸ガスが発生するという事実を知った。そして、この多量の炭酸ガス発生は、結着剤や溶剤などに含まれた水分や大気に含まれる水分に原因するものでなく、ポリフッ化ビニリデンの存在自体に原因するものであることを見出した。
すなわち、ポリフッ化ビニリデンは、加熱により分解してフッ化水素(HF)を発生する。このフッ化水素が、熱分解性炭酸化合物や、リチウムニッケル複合酸化物を合成するときに副反応生成物として生成されリチウムニッケル複合酸化物中に残留している炭酸リチウムと反応して炭酸ガスを発生させる。これにより、炭酸ガス量が増大する、という事実を見出した。
また、ポリフッ化ビニリデンを含む正極合剤層を高温で加熱した場合、ポリフッ化ビニリデン由来のフッ化水素の影響が大きくなるため、炭酸ガス量の大小による正極品質の判定が困難になることを知った。
以上の事実に基づいて、第2発明における正極合剤層の熱分解温度として、200〜400℃の範囲を定めた。200〜400℃の範囲内の加熱であれば、フッ化水素に起因する炭酸ガス発生量が小さく、熱分解性炭酸化合物由来の炭酸ガス量が十分に大きい。そして、この温度範囲であれば、加熱により発生する炭酸ガス量と、電池性能との間に十分な相関性が認められる。
よって、同一条件で作製された正極の一部、または必要なサイズに切断するときに生じる余剰部分から正極合剤層(正極活物質と結着剤と必要に応じて添加される導電剤などからなる層)を取り出し、上記温度範囲の温度で加熱して、発生する炭酸ガス量を測定し、加熱温度と炭酸ガス発生量を上記数式3,4に挿入することにより、作製された正極が適合品であるか否かを判定することができる。よってこの判定で良品と判定された正極のみを選別して使用することにより、製造歩留まりよく、高品質な非水電解質二次電池を製造することができる。
ここで、上記炭酸ガス量の測定は、第1の発明の場合と同様、ガスクロマトグラフィーにより行うことが好ましい。また、加熱は不活性ガス雰囲気中で行い、不活性ガスとしては好ましくはアルゴンガスや窒素ガスを用い、より好ましくはアルゴンガスを用いる。
更にまた、加熱温度としては、好ましくは300±50℃とし、更に好ましくは300±10℃とする。300℃前後の加熱温度であると、フッ化水素に起因する炭酸ガス発生量が無視しうる程度に相対的に小さくなるので、判定の信頼性が高まるからである。
また、正極活物質には、リチウムニッケル複合酸化物に加えて、他の公知の正極活物質材料(リチウムコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物等)が含まれていてもよいが、リチウムニッケル複合酸化物を用いることによる効果(低コスト化、高容量化)を十分に達成するためには、正極活物質全質量に占めるリチウムニッケル複合酸化物の質量割合を50〜100質量%とし、より好ましくは75〜100質量%とする。
上記で説明したように、本発明では、正極活物質として適正なリチウムニッケル複合酸化物か否かを判定し、適正なリチウムニッケル複合酸化物を選別して用いて正極を作製し、また非水電解質二次電池用正極として適正な正極か否かを電池組み立て前に判定し、適正な非水電解質二次電池用正極のみを選別して用いて非水電解質電池を作製する。よって、本発明によると、歩留まりよく、所期の性能を備えた非水電解質二次電池用正極や非水電解質二次電池を製造することができる。
本発明を実施するための最良の形態を、各種実験をとおして説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
[実験1]
各種の実験例電池を試作し、その特性を調べ、電池作製条件と、電池性能との関係を明らかにした。
(実験例1)
〈正極の作製〉
ニッケルと、コバルトと、アルミニウムの硫酸塩を用いて、これらを共沈させることによりニッケルコバルトアルミニウム水酸化物を得た。これに水酸化リチウムを添加し、700℃で焼成して、コバルト、アルミニウム含有リチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.052)を合成した。
上記リチウムニッケル複合酸化物の各元素量を、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析)により分析し、LiNi0.8Co0.15Al0.052であることを確認した。
次に、露点が−40℃以下であるドライエアー雰囲気を用い、リチウムニッケル複合酸化物95質量部と、導電剤としての炭素粉末2.5質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.5質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、を混合して正極活物質スラリーとした。この正極活物質スラリーを、相対湿度43%・温度25℃の大気雰囲気中で、アルミニウム製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥した。この後、露点が−40℃以下であるドライエアー雰囲気にて、圧縮ローラーを用いて圧延して、正極を完成させた。
〈負極の作製〉
負極活物質としての黒鉛97.5質量部と、結着剤としてのスチレン・ブタジエンゴム(SBR)1.5質量部と、増粘剤としてのカルボキシルメチルセルロース(CMC)1質量部と純水とを混合して負極活物質スラリーとした。この負極活物質スラリーを銅製の負極集電体の両面に塗布し、これを乾燥した。この後、圧縮ローラーを用いて圧延して、負極を完成させた。
〈電極体の作製〉
上記正極及び負極を、同上大気雰囲気中で、ポリプロピレン製微多孔膜からなるセパレータを介して巻回し、その後プレスすることにより、扁平電極体を作製した。
〈非水電解質の調整〉
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートを体積比2:5:3(25℃)で混合し、電解質塩としてのLiPF6を1.2M(モル/リットル)となるように溶解して、非水電解質となした。
〈電池の組み立て〉
市販のアルミラミネート材を用意し、このアルミラミネート材を折り返し、両側辺を熱融着して、電極体収納空間を有する袋状の外装体を形成した。その後、上記扁平電極体を、上記収容空間に挿入し、105℃、2.5時間真空乾燥を行った。
次いでアルゴン雰囲気のドライボックス内にて、上記扁平電極体と上記非水電解質とを、上記収容空間に収容した。この後、外装体内部を減圧してセパレータ内部に非水電解質を含浸させ、外装体の開口部を封止して、高さ62mm、幅35mm、厚み3.6mmの、理論容量が800mAhである実験例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
(実験例2)
正極完成後に更に、露点が−40℃以下であるドライボックス内に25℃条件で10日間放置(ドライ暴露)し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例2に係る非水電解質二次電池を作製した。なお、実験例1ではリチウムニッケル複合酸化物を作製後、これを用いて速やかに正極を完成させるとともに、この完成正極を用いて速やかに電池を完成させた。
(実験例3)
正極完成後に更に、露点が−40℃以下であるドライボックス内に25℃条件で30日間放置し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例3に係る非水電解質二次電池を作製した。
(実験例4)
正極完成後に更に、温度25℃で湿度43%である大気雰囲気中に3時間放置(大気暴露)し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例4に係る非水電解質二次電池を作製した。
(実験例5)
正極完成後に更に、同上条件の大気雰囲気中に1日間放置(大気暴露)し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例5に係る非水電解質二次電池を作製した。
(実験例6)
正極完成後に更に、同上条件の大気雰囲気中に3日間放置(大気暴露)し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例6に係る非水電解質二次電池を作製した。
(実験例7)
正極完成後に更に、同上条件の大気雰囲気中に10日間放置(大気暴露)し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例7に係る非水電解質二次電池を作製した。
(実験例8)
正極完成後に更に、同上条件の大気雰囲気中に10日間放置(大気暴露)し、その後露点が−40℃以下であるドライボックス内に25℃条件で10日間放置(ドライ暴露)し、これを正極として用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして、実験例8に係る非水電解質二次電池を作製した。
〔電池膨化量測定試験〕
上記各実験例と同一の条件で作製した電池2つを用いて、定電流1.0It(800mA)で電圧が4.2Vとなるまで充電し、その後定電圧4.2Vで電流が0.05It(40mA)となるまで充電し、電池厚みを測定した。この後、充電状態の電池を85℃の恒温槽に3時間放置し、取り出し直後の電池厚みを測定した(直後厚み)。この後、この電池を25℃で1時間放置し、冷却後の電池厚みを測定した(冷却後厚み)。そして、保存直後の電池膨化量及び冷却後の電池膨化量を算出した。この結果(平均値)を下記表1に示した。
〔充放電特性試験〕
上記各実験例と同一の条件で作製した電池2つを用いて、定電流1.0It(800mA)で電圧が4.2Vとなるまで充電し、その後定電圧4.2Vで電流が0.05It(40mA)となるまで充電し、充電容量を測定した。この後、定電流1.0It(800mA)で電圧が2.5Vとなるまで放電し、放電容量を測定した。また、以下の式により、初期効率を算出した。これらの結果(平均値)を、下記表1に示した。
初期効率(%)=放電容量÷充電容量×100
なお、充電容量、放電容量は、実験例1の結果を100とした相対値で示している。
〔放電負荷特性試験〕
上記各実験例と同一の条件で作製した電池2つを用いて、定電流1.0It(800mA)で電圧が4.2Vとなるまで充電し、その後定電圧4.2Vで電流が0.05It(40mA)となるまで充電した。この後、定電流1.0It(800mA)で電圧が2.5Vとなるまで放電し、放電容量(1.0It放電容量)を測定した。この後、再度上記条件で充電を行い、この後、定電流0.2It(160mA)で電圧が2.5Vとなるまで放電し、放電容量(0.2It放電容量)を測定した。そして下記式により放電負荷特性を算出した。この結果(平均値)を下記表1に示した。

放電負荷(%)=0.2It放電容量÷1.0It放電容量×100
上記表1から明らかなように、暴露なしの実験例1は、ドライ暴露を行った実験例2,3、大気暴露を行った実験例4〜7、大気暴露後にドライ暴露を行った実験例8と比較し、電池膨化量が小さかった。また、ドライ暴露時間が長くなるに伴い、電池膨化量が大きくなる傾向にあり(実験例2,3参照)、大気暴露時間が長くなるに伴い、電池膨化量が大きくなる傾向にあった(実験例4〜7参照)。また、同一の暴露時間では、大気暴露を行ったほうが、ドライ暴露を行ったものよりも電池膨化量が大きかった(実験例2,3,6,7参照)。
また、実験例7、8においては、充電容量が実験例1の96.0%、95.9%、放電容量が実験例1の90.0%、89.2%であり、初期効率は実験例1が88.8%であるのに対し85.9%、85.5%、放電負荷特性は実験例1が106.7%であるのに対し110.2%、110.5%と、大きく劣っていた。
これらの結果は、暴露による大気中の水分と二酸化炭素が悪影響を与えたものと考えられる。完成正極を大気に暴露すると、大気中の水分や二酸化炭素と正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物中のリチウムイオンとが反応し、電池膨れの原因となる複数の反応生成物が生じると考えられ、ドライ暴露によっても膨化が起きることからして、この反応は、露点が−40℃以下であるドライエアー雰囲気でもわずかながらに生じるものと考えられる。
また、大気暴露によって生成した反応生成物は充放電に寄与しない物質であるため、反応生成物の生成により活物質量が減少し、その結果として充電容量及び放電容量が低下する。更に、反応生成物の生成により正極の導電性が悪くなり、その結果として放電負荷特性が低下する、と考えられる。
[実験2]
表1に示す結果からして、正極活物質や正極に混入する水分は電池性能を低下させる原因であることは明らかである。よって、正極活物質や正極に含まれる水分量を測定することにより、正極活物質や正極の品質の良否を判定することができる可能性がある。実験2では、この点について検討する。
〔水分量の測定〕
上記実験例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)を作製し、この正極活物質を下記表2に示す条件で暴露し、カールフィッシャー法により暴露後の正極活物質に含まれる水分量を測定した。また、上記実験例1と同様にして正極を作製し、この正極を下記表2に示す条件で暴露した。この後これら正極から正極合剤層(正極活物質と結着剤と導電剤からなる層)を剥がしとり、カールフィッシャー法により正極合剤層に含まれる水分量を測定した。これらの結果を下記表2に示した。
上記表2から、正極活物質、正極合剤層ともに、大気暴露の時間が長くなるに従い水分量が増加する傾向が認められた。その一方、大気暴露10日後にドライ暴露10日を行った場合には、正極活物質、正極合剤層ともに、大気暴露10日のみの場合よりも水分量が少なくなっていた。しかし、表1において、大気暴露10日後にドライ暴露10日を行った実験例8は、大気暴露10日のみを行った実験例7よりも電池の諸特性が劣っている。また、実験例1に比較し、ドライ10日の実験例2やドライ30日の実験例3の電池膨化量が大きい。
これらの結果から、含有水分量の大小により正極活物質や正極の品質を判定することは好ましくないことが判る。なお、表2No.9の結果は、ドライ雰囲気によって、大気暴露時に正極活物質や正極が吸着した水分の一部が脱離したためと考えられる。
[実験3]
下記実験3においては、含有水分量以外の指標を用いて、正極活物質や正極の品質を判定する方法について検討することとした。
〈考え方〉
水酸化リチウムと雰囲気ガス中の炭酸ガスとが反応すると、リチウム炭酸化合物が生じ、このリチウム炭酸化合物が、高温保存時に分解して炭酸ガスを発生し電池膨化量を大きくし、また正極の導電性を低下させる原因となっている可能性がある。本発明者らは、リチウムニッケル複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物正極に含まれるリチウム炭酸化合物に着目し、正極活物質を加熱することにより発生する、リチウム炭酸化合物由来の炭酸ガス量を測定することにより、正極活物質や正極の品質を判定することができるのではないかと考えた。
水酸化リチウムと炭酸ガスとの反応生成物(リチウム炭酸化合物)には、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸水素リチウム(LiHCO3)が考えられる。そこで、実験3では、これらの化合物の加熱分解パターンを調べた。ただし、炭酸リチウムについては、市販品が存在するのでこれを用いたが、炭酸水素リチウムは現在のところ市販されておらず、その入手が困難であるので、炭酸水素リチウムに代えて、炭酸水素リチウム(LiHCO3)と構造が似ている炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を用いた。なお、炭酸水素リチウムが市販されていないのは、炭酸水素リチウムが不安定な物質であるためと推察される。
実験方法としては、アルゴンガスを満たしたSUS(Stainless Used Steel:ステンレス鋼)製反応管を2つ用意し、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウムのそれぞれをそれぞれの管に入れ、電気炉にて熱処理し、発生する炭酸ガス量をガスクロマトグラフィーにて測定した。ガスクロマトグラフィー装置としては、島津製作所社製GC−14Bを用いた。なお、この方法を以後、熱分解―ガスクロマトグラフィー法と称する。
熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を図1に示した。図1から判るように、200℃以上の加熱によって、炭酸水素ナトリウムは1モルあたり約0.45モルの炭酸ガスを発生している。
炭酸水素ナトリウムは、以下の反応式によって分解して、炭酸ガスを発生すると考えられるので、炭酸水素ナトリウム1モルから、0.5モルの炭酸ガスが発生する。
2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2
よって、200℃以上の加熱によって炭酸水素リチウムの約90%が分解されたものと考えられる。
他方、図1から判るように、炭酸リチウムは、100〜500℃の加熱では殆ど分解しなかった。この実験結果から、大気に暴露したリチウムニッケル複合酸化物を500℃以下の条件で加熱したときに発生する炭酸ガスは、炭酸リチウム以外の物質に由来するものである断定することができる。他方、この温度条件での加熱において、炭酸ガスが殆ど発生しない場合には、このリチウムニッケル複合酸化物中に含まれるリチウム炭酸化合物は炭酸リチウムであると推定できる。この推定の是非を下記実験4で更に検証した。
[実験4]
上記実験例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を作製し、これを大気に一定時間暴露させた後、暴露後のリチウムニッケル複合酸化物に対して熱分解−ガスクロマトグラフィー法を行い、発生する炭酸ガス量を測定した。この結果を図2、図3に示した。
図2は、ドライ暴露0時間(暴露なし)、大気暴露3時間、大気暴露3日、大気暴露5日、大気暴露30日の各条件における結果であり、図3は大気暴露10日における結果である。図2及び図3から、大気に暴露したリチウムニッケル複合酸化物を200℃以上に加熱すると、炭酸ガスが発生することが判る。また、炭酸ガス発生量は、400℃加熱と500℃加熱との間に大きな差がないことが判る。
これらの結果から、リチウムニッケル複合酸化物を大気に暴露することによって生じる化合物は、200〜500℃加熱によって熱分解して炭酸ガスを発生させる化合物であると言える。また、この化合物の発生量は、400℃においてはほぼ上限に達することが判る。なお、炭酸ガスを発生させるこの化合物を「熱分解性炭酸化合物」と称する。
また、図2及び図3から、大気暴露の時間が長くなるに伴い、400℃加熱時に発生する炭酸ガス量が増加する傾向にあることが判る。これは、暴露時間が長くなるに伴い、生成する熱分解性炭酸化合物量が増加するためと考えられる。
この結果から、リチウムニッケル複合酸化物を大気に暴露することによって生じる化合物は、炭酸リチウムではないと結論できる。
ここで、正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物の合成に際しては、リチウム源として水酸化リチウムが用いられる。水酸化リチウムは大気に触れると、大気に含まれる二酸化炭素と反応して炭酸水素リチウムを生成すると考えられる。リチウムニッケル複合酸化物の全製造過程を大気との接触を完全に遮断して行うことは困難であることから、炭酸水素リチウムが不可避的に存在するものと考えられる。水酸化リチウムの反応によって生成された炭酸水素リチウムは、焼成時の熱により分解され、炭酸リチウムとなり、この炭酸リチウムがリチウムニッケル複合酸化物中に残存している可能性がある。実験5では、炭酸水素リチウムとこれに由来する炭酸ガスとの関係について検討する。
[実験5]
炭酸リチウム(Li2CO3)及び炭酸水素リチウム(LiHCO3)は、塩酸と反応させると、式2、3に従い炭酸ガスを発生する。
Li2CO3+2HCl→2LiCl+H2O+CO2↑ ・・・(式1)
LiHCO3+HCl→LiCl+H2O+CO2↑ ・・・(式2)
また、炭酸水素リチウムを熱分解すると、式(3)に従い炭酸ガスを発生する。
2LiHCO3→Li2CO3+H2O+CO2↑ ・・・(式3)
上記式1〜3から、熱分解性炭酸化合物が炭酸水素リチウムであるとした場合、500℃加熱により生じる炭酸ガス量(モル)は、熱分解性炭酸化合物量(モル)の1/2となる。また、炭酸水素リチウムは、リチウムニッケル複合酸化物の合成時における焼成熱(700℃)によって分解され、炭酸リチウムと水と二酸化炭素に分解されるので、熱分解性炭酸化合物が炭酸水素リチウムである場合には、塩酸処理により発生した炭酸ガス量と500℃加熱により生じる炭酸ガス量(モル)とから下記式4により、炭酸リチウム量を算出できる。
〔炭酸リチウム量(モル数)〕
=〔塩酸処理で発生した炭酸ガス量(モル数)〕−〔500℃加熱処理で発生した炭 酸ガス量(モル数)〕×2 ・・・(式4)
なお、500℃加熱処理で発生した炭酸ガス量は、熱分解性炭酸化合物量を意味する。上記仮説に基づいて、以下の実験5を行った。
上記実験例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を作製し、これを各種条件で暴露し、この後塩酸と反応させて、炭酸ガス発生量を測定した。ここで、熱分解性炭酸化合物を炭酸水素リチウムと仮定し、上記式に従い、熱分解性炭酸化合物量と炭酸リチウム量を算出した。この結果を図4に示した。
図4に示すように、炭酸リチウム量は、暴露条件にかかわらずほぼ一定であるのに対し、熱分解性炭酸化合物は暴露0日では僅かであるが、暴露の程度が大きくなるに従い顕著に増加した。
上記実験3〜5の結果から、200℃以上に加熱して発生する炭酸ガス量を測定することにより、リチウムニッケル複合酸化物に含まれる熱分解性炭酸化合物量を測定できることが判り、更に図2,3から、400℃で炭酸ガス発生量が上限に達していることから、400℃以上の加熱により、正確に炭酸ガス発生量を知ることができることが判る。
[実験6]
そこで、上記実験例1と同様にして作製したリチウムニッケル複合酸化物を、400℃以上の温度である「500℃」で加熱し、発生炭酸ガス量を調べると共に、このリチウムニッケル複合酸化物を用いた電池の膨化量(冷却後)を調べた。その結果を図5に示した。
図5から、炭酸ガス発生量と、電池膨化量との間に、一次関数的な関係があることが判る。この結果からして、正極活物質中に含まれる熱分解性炭酸化合物が、高温保存時に分解して炭酸ガスを発生させ、このガスにより電池膨化量が増大しているものと考えられる。この結果と上記実験5(図4)及び実験1〜4の結果を、上記した仮説に照らし総合的に判断すると、リチウムニッケル複合酸化物に含まれている炭酸リチウムは、リチウム源としての水酸化リチウムが大気中の炭酸ガスと反応して生成された炭酸水素リチウム由来のものであると言える。炭酸水素リチウムは、リチウムニッケル複合酸化物の焼成合成時に熱分解され、炭酸ガスと水と炭酸リチウムになり(上記式3参照)、このとき生成された炭酸リチウムがリチウムニッケル複合酸化物に残留することになる。
よって、熱分解性炭酸化合物の本体は炭酸水素リチウムであると考えられ、それゆえ、リチウムニッケル複合酸化物を加熱したときに発生する炭酸ガス量の大小を知ることにより、大気に暴露されて品質劣化したリチウムニッケル複合酸化物であるか否かを判定できることになる。すなわち、リチウムニッケル複合酸化物を加熱したときの炭酸ガス発生量は、適正な正極活物質であるか否かを選別する指標とすることができる。
上記結論は下記表3により裏付けられる。表3は、上記実験1の結果を示す表1に、リチウムニッケル複合酸化物を500℃に加熱した場合における炭酸ガス発生量(図4)を盛り込んだ表である。
表3から、電池膨化量、充電容量、放電容量、初期効率の各特性の良否と、炭酸ガス発生量の大小とが良く相関していることが判る。そして、暴露条件が大気10日以上である実験例7及び8は、暴露条件が大気3日以下である実験例1〜6に比較し、電池膨化量、充電容量、放電容量、初期効率の各特性が大きく劣ることが判る。よって、炭酸ガス発生量を品質管理用の判断基準(指標)として利用できる。例えば、実験例7、8を不良品とする場合、炭酸ガス発生量が57.0以上のリチウムニッケル複合酸化物を、正極活物質として不適合品(不良品)とし、57.0未満のものを適合品(良品)と判定する。
図3を用いて、品質を判定する基準を一般化すると、数5、数6の式であらわすことができる。
(数5)
y<(0.27x-51)/1000000(200≦x<400)
(数6)
y<57/1000000(400≦x≦1500)
ただし、加熱温度をx(℃)、リチウムニッケル複合酸化物1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とする。
上記式において、加熱温度を1500℃より高くすると、熱分解性炭酸化合物以外に、炭酸リチウムが分解する恐れがある。よって、加熱温度の上限は1500℃とする。また、加熱温度の下限は、炭酸ガス発生量がほぼ平衡に達する400℃以上とし、加熱コスト面から加熱温度の上限を好ましくは500℃とする。
〈完成正極の品質判定法〉
リチウムニッケル複合酸化物の品質劣化は、リチウムニッケル複合酸化物の合成過程のみならず、正極製造工程や正極完成後においても生じる。このため、正極活物質として適正なリチウムニッケル複合酸化物を選定して用いたにも拘らず、完成正極が所期の性能を発揮しない場合もあり得る。よって、リチウムニッケル複合酸化物自体の品質を判定する判定法に加え、完成正極の良否を判定する簡便な判定法も必要である。そこで、完成正極の良否判別法について検討を行った。
[実験7]
上記実験例1と同様にして正極を作製した後、所定時間・所定の条件に大気暴露等し、この後正極から正極合剤層(正極活物質と結着剤と導電剤からなる活物質層)を剥がしとり、このサンプルについて熱分解−ガスクロマトグラフィー法を行った。この結果を、図6に示す。
図2と図6との比較から明らかなように、同一暴露条件において、リチウムニッケル複合酸化物単独よりも正極合剤層の方が、炭酸ガス発生量が顕著に多くなった。
この原因として、正極活物質と結着剤と溶剤とを混合し、正極を完成させる工程において、リチウムニッケル複合酸化物中のリチウム(またはリチウムイオン)がドライエアー中の水分、炭酸ガスと反応して、より多くの熱分解性炭酸化合物が生成されたことが考えられる。しかしながら、この原因のみでは炭酸ガス発生量の顕著な増加を説明できない。よって、炭酸ガス発生量の顕著な増加は、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンに起因しているものと考えられる。
すなわち、ポリフッ化ビニリデンは分子中にフッ素を有するので、加熱分解されたときフッ化水素を生成する。炭酸リチウム単独では、500℃まで加熱しても炭酸ガスに分解されない。しかし、上記正極合剤層には、ポリフッ化ビニリデンが含まれるので、加熱時にフッ化水素を生成され、このフッ化水素が、リチウムニッケル複合酸化物中に残存している熱分解性炭酸化合物(LiHCO3)のみならず、炭酸リチウム(Li2CO3)をも分解する。これにより、炭酸ガス発生量が顕著に増加したと考えられる。
暴露条件が異なる正極合剤層相互間における炭酸ガス発生量の差に注目して、図6の400℃と500℃における炭酸ガス発生量を見ると、400℃よりも高い温度にまで加熱しても、その差が拡大しないことが判る。その差が拡大しない理由は、フッ化水素の作用により、400℃までの加熱により、熱分解性炭酸化合物由来の炭酸ガスが出尽くしたためであろうと考えられる。
[実験8]
上記実験7の結果を受け、実験8では、正極活物質として、加熱分解し難く、炭酸ガスの発生が殆どないリチウムコバルト複合酸化物と炭酸リチウム、及び大気にまったく暴露されていないリチウムニッケル複合酸化物を用いて。ポリフッ化ビニリデンが炭酸ガスの発生に及ぼす影響を更に検証した。
〈正極aの作製〉
炭酸リチウムと、酸化コバルトとを混合し、700℃で焼成して、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。
上記リチウムコバルト複合酸化物95質量部と、導電剤としての炭素粉末2.5質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.5質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、を混合して正極活物質スラリーとした。この正極活物質スラリーをアルミニウム製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥した。この後、圧縮ローラーを用いて圧延して、正極aを作製した。この各作製工程は、温度25℃・相対湿度43%の大気雰囲気中で行った。
〈正極bの作製〉
炭酸リチウム90質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、を混合してスラリーとした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥した。この後、圧縮ローラーを用いて圧延して、正極bを作製した。この各作製工程は、温度25℃・相対湿度43%の大気雰囲気中で行った。なお、炭酸リチウムは活物質としては機能しない。
〈正極cの作製〉
アルミニウム含有リチウムニッケル複合酸化物を含む正極活物質スラリーの作製、スラリーの塗布、スラリーの乾燥、圧延の各工程を露点が-40℃以下のドライエアー雰囲気中で行い、その他は上記実験例1と同様にして、正極cを作製した。なお、正極cは理想的な環境下(最も良好な雰囲気中)で製造したものであり、実験例1の正極は、これよりもやや劣る環境下、すなわちスラリーの作製工程と圧延工程とをドライエアー雰囲気中で行い、スラリーの塗布工程とスラリーの乾燥工程とを湿度43%の大気雰囲気中で行っている。
上記正極a,bから正極合剤層を剥がしとり、熱分解―ガスクロマトグラフィーにより炭酸ガス発生量を測定した。測定は各々2例について行った。この結果を図7に示す。なお、正極aの正極合剤層は、リチウムコバルト複合酸化物と導電剤と結着剤からなり、正極bの正極合剤層は、炭酸リチウムと結着剤からなる。
また、リチウムコバルト複合酸化物と導電剤と結着剤とからなる正極合剤を用いた上記正極aと、アルミニウム含有リチウムニッケル複合酸化物と導電剤と結着剤とからなる正極合剤を用いた上記正極cと、正極cとは製造条件のみが異なる前記実験例1にかかる正極につてそれぞれから正極合剤層を剥がしとり、これらの正極合剤層について熱分解―ガスクロマトグラフィー法により炭酸ガス発生量を測定した。この結果を図7、8に示した。
図7から明らかなように、熱分解性炭酸化合物が含まれないか、又は含まれたとしてもその量が極微量であるリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として用いた正極a、及び炭酸リチウムを用い、かつ導電剤を含まない正極bの何れもが、300℃以上の加熱により炭酸ガスを発生した。
更に、図8から、熱分解性炭酸化合物が含まれないか、又は含まれとしてもその量が極微量であるドライエアー雰囲気下で作製した正極cについても、300℃以上の加熱により炭酸ガスが発生した。
また、正極a〜cの何れについても、加熱温度が高まるに従い、炭酸ガス発生量が増加する傾向が認められた。また、図8から、200〜400℃の温度範囲においては、実験例1正極が、正極a,cよりも炭酸ガス発生量が多かった。
以上の結果から、導電剤(炭素粉末)が炭酸ガスの発生原因ではないこと、及び正極a〜cで発生した炭酸ガスの多くは、ポリフッ化ビニリデンの存在に起因した炭酸ガスであると結論できる。
なお、各正極における炭酸ガスの発生原因は次のように考察することができる。先ず炭酸リチウムについて説明する。炭酸リチウムは、図1に示すように、単品では500℃まで加熱しても炭酸ガスを発生しない。よって、炭酸リチウムを主とする正極bにおける炭酸ガスの発生は、ポリフッ化ビニリデンから生成されたフッ化水素が炭酸リチウムの熱分解反応を促したことによる。
次に、活物質としてリチウムコバルト複合酸化物を用いた正極aについて説明する。リチウムコバルト複合酸化物は、リチウム源として炭酸リチウムを用いて合成されるが、炭酸リチウムは環境雰囲気中に存在する水分と反応することはない。また、リチウムコバルト複合酸化物は、リチウムニッケル複合酸化物に比較し、環境雰囲気中に存在する水分の影響を受けにくい。また、リチウムニッケル複合酸化物自体は200℃〜500℃の温度では分解しない。このことから、正極aの炭酸ガスは、その合成段階において、未反応のまま残留した炭酸リチウムに原因する。すなわち、残留炭酸リチウムがポリフッ化ビニリデン由来のフッ化水素の影響を受け熱分解したものである。
正極cについて説明する。実験例1正極と正極cとの炭酸ガスの発生パターンの違いは、前者がスラリー塗布工程とスラリーの乾燥工程とを湿度43%の大気雰囲気中で行ったのに対し、後者がこれらの工程をも水分を遮断された理想的な雰囲気中で行ったことの差である。両者のこの差は200℃〜400℃の加熱において明確に認められる。しかし、500℃まで加熱した場合には差が認められなくなってしまう。それゆえ、この差を検出するためには、加熱温度条件を200℃以上、400℃以下にする必要があると言える。
更に、図8において、理想的な雰囲気中で製造された正極cと、雰囲気中の水分に影響されにくいリチウムコバルト複合酸化物を用いた正極aの400℃以下における炭酸ガス発生量及び発生パターンが殆ど同一であること、及び図2の−□−(暴露0時間)及び−○−(暴露3時間)における炭酸ガス発生量は極めて少ないことから、図8の実験例1正極と正極cにおける炭酸ガスの発生はポリフッ化ビニリデン由来のフッ化水素の影響によるものであると言える。
以上、正極活物質以外の組成を同一としたリチウムコバルト複合酸化物正極(正極a)の200℃〜400℃までの加熱における炭酸ガス発生量をコントロールとして評価することにより、リチウムニッケル複合酸化物正極の正極合剤層を200℃〜400℃まで加熱したときにおける炭酸ガス発生量が、リチウムニッケル複合酸化物正極の品質を判定する指標として利用できることが判る。このことを図9で更に検討する。
図3に示すリチウムニッケル複合酸化物正極活物質の加熱分解実験結果において、500℃までの加熱における炭酸ガス発生量は、300℃までの発生量の約2倍である。そこで、図2からリチウムニッケル複合酸化物の500℃までの炭酸ガス発生量を拾い、図6からそれぞれ対応する正極合剤層の300℃までの炭酸ガス発生量
を拾い、正極合剤層を300℃にまで加熱したときの炭酸ガス発生量の2倍値と、リチウムニッケル複合酸化物を500℃にまで加熱したときの炭酸ガス発生量をそれぞれ対応させて図9に示した。また、図9には、正極aと正極cについても同様に示した。
図9から、暴露条件と正極合剤層を300℃に加熱して発生した炭酸ガス量の2倍値との関係は、暴露条件と正極活物質を500℃に加熱して発生した炭酸ガス量との関係とほぼ同様の傾向にあることが判る。よって、正極合剤層中の熱分解性炭酸化合物量(これが高温保存時に分解して炭酸ガスを発生させて電池膨化量を大きくし、また正極の導電性を低下させる原因物質となる)は、200〜400℃までの加熱した場合における炭酸ガス発生量によって、その量を推定できる。
図10に、正極合剤層を300℃まで加熱したときの炭酸ガス発生量(図6参照)と、電池膨化量との関係を示した。図10から明らかなように、300℃加熱による炭酸ガス発生量と、電池膨化量との間に、一次関数的な関係がある。よって、正極合剤層を300℃まで加熱したときの炭酸ガス発生量を指標として、正極品質の良否を判定することができる。なお、電池膨化量は電池を室温(25℃)まで放冷したのちに測定した値である。
下記表4に、正極合剤層を300℃に加熱した場合の炭酸ガス発生量(正極活物質1g当たり)と、上記実験1の結果とを一覧表示した。

表4において、仮に実験例7,8を不良品とし、実験例1〜6を良品とすると、実験例7における炭酸ガス発生量135μmol/gを基準にし、これ以上を不良品、これ未満を良品と判定することができる。
そこで、図6に基づいて、判定基準を一般化する。加熱温度をx(℃)、正極活物質1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とするとき、数7及び数8に示す数式を充足する場合を良品(適合品)とし、充足しない場合を不良品(不適合品)と判定する。
(数7)
y<(1.31x-258)/1000000(200≦x<300)
(数8)
y<(1.20x−225)/1000000(300≦x≦400)
[実験9]
実験9では、加熱雰囲気条件について検討した。上記実験例1における場合と同様にして、リチウムニッケル複合酸化物を作製した。またこのリチウムニッケル複合酸化物を用いて正極合剤を作製し、正極合剤を芯体に塗着し乾燥した後圧延して完成正極を作製した。そして、上記リチウムニッケル複合酸化物と完成正極から採取した正極合剤層のそれぞれを、アルゴンガスを満たしたSUS(Stainless Used Steel:ステンレス鋼)製反応管製反応管及びドライエアーを満たしたSUS製反応管にそれぞれ入れ、これらのSUS製反応管を加熱して、発生する炭酸ガス量を測定した。
この結果を図11、図12に示した。なお、リチウムニッケル複合酸化物における加熱温度500℃条件での測定は、ドライエアー、アルゴンガスともそれぞれ3通りのサンプルを用いて行った(図11;●、■、▲)。他方、正極合剤層については加熱温度500℃のアルゴンガスについてのみ、2通りのサンプルを用いて測定を行った(図12;○、△)。
図11において、加熱温度500℃・ドライエアー条件では、3通りの測定値が大幅にばらついた(●、■、▲参照)。これに対し、加熱温度500℃・アルゴンガス条件におけるバラツキは小さかった(○、□、△参照)。また、炭酸ガスの発生量は、ドライエアー条件で大きく、アルゴンガス条件で小さかった。この傾向は正極合剤層における図12においても同様であった。
図11,12から、リチウムニッケル複合酸化物、正極合剤層ともに、ドライエアー雰囲気での炭酸ガス発生量は、アルゴン雰囲気よりもはるかに大きくなることが判るが、ドライエアー雰囲気とアルゴンガス雰囲気との最大の違いは、活性ガスの有無のみである。酸素等の活性ガスが存在しないアルゴンガス雰囲気での測定においては、測定値のバラツキが小さく、また炭酸ガス発生量の増加も少ない。他方、ドライエアー雰囲気には、大気由来の酸素が含まれている。したがって、ドライエアー雰囲気中の加熱においては、測定試料であるリチウムニッケル複合酸化物や正極合剤層、試験容器(SUS製反応管)等に微量に残存する有機物がこの酸素と反応(燃焼)して炭酸ガスを発生したと考えられる。この炭酸ガスが本来的対象としての炭酸ガス量に加算されたため、炭酸ガス量の増大化を招くと共に、測定値をバラつかせたものと考えられる。
図11,12の結果からして、リチウムニッケル複合酸化物や正極合剤層やSUS製反応管に微量に残存する有機物は、本発明が把握しようとしている本来的な炭酸ガス発生量に比較して大きい。したがって、本発明にかかる品質判定法には、試料を不活性ガス(アルゴンガスや窒素ガスなど)を用いた雰囲気中で加熱分解する必要がある。そして、特に
アルゴンガスは、化学的には全く不活性で、反応性がない点で好ましい。よって、加熱分解はアルゴンガス雰囲気中で行うのが好ましい。
(追加事項)
本発明が対象とするリチウムニッケル複合酸化物は、上記LiNi0.8Co0.15Al0.052に限定されるものではない。例えば、LiaNix1-x2(MはCo、Al、Zr、Ti、Mg、Mnの少なくとも一種、0.9≦a≦1.1、0.5≦x≦1)をも対象とすることができる。
以上に説明したように、本発明にかかる正極活物質の良否判定法よれば、正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物の品質の良否を簡便に判定でき、本発明にかかる正極の良否判定法よれば、リチウムニッケル複合酸化物を用いてなる正極の品質の良否を簡便に判定することができる。よって、この手法で判定したリチウムニッケル複合酸化物適合品のみを選別して用いることにより、適正な正極を作製することができ、またこの手法で判定した正極のみを選別して用いて非水電解質二次電池を製造することにより、歩留まりよく所期の性能を有する非水電解質二次電池を製造することができる。それゆえ、本発明の産業上の利用可能性は高い。
図1は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸リチウムの熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を示すグラフである。 図2は、正極活物質(リチウムニッケル複合酸化物)の熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を示すグラフである。 図3は、大気中に10日間暴露した正極活物質(リチウムニッケル複合酸化物)の熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を示すグラフである。 図4は、正極活物質に含まれる炭酸化合物量の理論計算値を示すグラフである。 図5は、正極活物質を500℃で加熱して発生した炭酸ガス量と、電池膨化量との関係を示すグラフである。 図6は、完成正極(リチウムニッケル複合酸化物正極)に含まれる正極合剤層の熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を示すグラフである。 図7は、リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として用いた正極に含まれる正極合剤層の熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を示すグラフである。 図8は、暴露条件が異なる正極に含まれる正極合剤層の熱分解―ガスクロマトグラフィー法の結果を示すグラフである。 図9は、正極活物質を加熱した場合の炭酸ガス発生量と、完成正極に含まれる正極合剤層を加熱した場合の炭酸ガス発生量とを比較するグラフである。 図10は、完成正極に含まれる正極合剤層を300℃で加熱して発生した炭酸ガス量と、電池膨化量との関係を示すグラフである。 図11は、リチウムニッケル複合酸化物における、加熱時雰囲気の種類と炭酸ガス発生量との関係を示すグラフである。 図12は、正極合剤層における、加熱時雰囲気の種類と炭酸ガス発生量との関係を示すグラフである。

Claims (10)

  1. リチウム源と、ニッケル源とを含む正極活物質前駆体を焼成してリチウムニッケル複合酸化物となす焼成工程と、
    前記リチウムニッケル複合酸化物を、不活性ガス雰囲気中で200〜1500℃に加熱したとき、発生する炭酸ガス量を測定する測定工程と、
    前記測定工程における加熱温度をx(℃)、前記測定工程で測定されたリチウムニッケル複合酸化物1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とするとき、以下の数式を満たすリチウムニッケル複合酸化物を選別する選別工程と、
    前記選別工程で選別された前記リチウムニッケル複合酸化物を主体とする正極活物質を用いて正極を完成させる正極完成工程と、
    を備えることを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
    (数1)
    y<(0.27x-51)/1000000(200≦x<400)
    (数2)
    y<57/1000000(400≦x≦1500)
  2. 請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
    前記炭酸ガス量の測定を、ガスクロマトグラフィーにより行う、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
    前記測定工程における加熱温度が400〜500℃である、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
  4. 請求項1、2又は3に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
    前記正極活物質全質量に占める前記リチウムニッケル複合酸化物の質量割合が、50〜100質量%である、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
  5. 請求項1ないし4に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
    前記不活性ガスが、アルゴンガスである、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
  6. リチウムニッケル複合酸化物を主体とする正極活物質と、ポリフッ化ビニリデンを有する結着剤と、を含む正極合剤を用いて正極を作製する正極作製工程と、
    前記正極から前記正極合剤層を取り出し、前記正極合剤層を不活性ガス雰囲気中で200〜400℃に加熱したとき、発生する炭酸ガス量を測定する測定工程と、
    前記測定工程における加熱温度をx(℃)、前記測定工程で測定された正極活物質1gあたりの炭酸ガス発生量をy(モル/g)とするとき、以下の数式を満たす正極のみを選別する選別工程と、
    前記選別工程により選別された正極を用いて非水電解質二次電池を作製する電池作製工程と、
    を備えることを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
    (数3)
    y<(1.31x-258)/1000000(200≦x<300)
    (数4)
    y<(1.20x−225)/1000000(300≦x≦400)
  7. 請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
    前記炭酸ガス量の測定を、ガスクロマトグラフィーにより行う、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記測定工程における加熱温度が300±50℃である、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  9. 請求項6、7又は8に記載の非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記正極活物質全質量に占める前記リチウムニッケル複合酸化物の質量割合が、50〜100質量%である、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  10. 請求項6ないし9に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法において、
    前記不活性ガスが、アルゴンガスである、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
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