JP2009138147A - 耐火被覆材、該耐火被覆材の製造方法、及び前記耐火被覆材を用いた耐火被覆方法 - Google Patents

耐火被覆材、該耐火被覆材の製造方法、及び前記耐火被覆材を用いた耐火被覆方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炎熱に曝された場合にも、発泡体が十分な難燃性と形状安定性を保持する耐火ゴム組成物であって、これを成形して得た耐火被覆材に対して優れた作業効率を付与し得る耐火ゴム組成物の提供すること。
【解決手段】液状ゴム30〜60質量部とブチルゴム40〜70からなるベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部を少なくとも含有し、未加硫の耐火ゴム組成物を提供する。また、該耐火ゴム組成物から成形した耐火被覆材、及び該耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法などを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉄骨の耐火被覆材や区画体貫通部の目地材等に使用される耐火ゴム組成物、該耐火ゴム組成物からなる耐火被覆材、耐火被覆材の製造方法、及び前記耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法などに関する。より詳しくは、炎熱に曝された場合にも、発泡体が優れた難燃性と十分な形状安定性を保持し、かつ、施工作業性に優れる耐火ゴム組成物、該耐火ゴム組成物からなる耐火被覆材、耐火被覆材の製造方法、及び前記耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法などに関する。
鉄骨は通常その温度が約550℃以上になると強度が急激に低下するため、集合住宅や立体駐車場等の鉄骨構造の建築物で火災が発生すると倒壊の危険が生じる。そのため、火災時には鉄骨の表面を保護して、温度を上記550℃より低く保つ必要があり、これを目的として種々の耐火被覆処理方法が考案されている。
従来用いられてきた耐火被覆処理法としては、鉄骨表面をケイ酸カルシウム板や石膏ボード等の無機系耐火材料で被覆する方法や、ロックウールなどの無機系繊維を鉄骨に吹き付ける方法がある。しかし、ケイ酸カルシウム板や石膏ボード等による被覆では、被覆部分の厚みが大きくなるため、被覆された鉄骨全体の体積が大きくなってしまい、施工上効率的でない。また、ロックウール等を吹き付ける方法では厚みにムラが生じやすく、鉄骨各所の耐火性にバラつきが生じ易い。さらに、施工時にミストが飛散したり、養生に長時間必要であったりと、効率の良い方法ではなかった。
また、近年の耐火被覆処理においては、単に材料自体が燃えにくいという耐火性能ばかりでなく、火炎の延焼を防ぐ機能、すなわち防火性能も要求されるようになっている。そこで、防火用膨張材料を用いた耐火被覆処理方法が採用されるようになっている。防火用膨張材料とは、火災が発生した時に炎熱に曝されると瞬時に膨張(熱膨張)し、発泡断熱層(発泡体)を形成する材料である。この発泡体により、防火壁と電源ケーブル等の隙間を閉塞させて延焼しようとする火炎を遮断したり、鉄骨等の表面を高温から保護する断熱効果を発揮したりする。
このような防火用膨張材料として、従来、ゴム成分に熱膨張性黒鉛や無機物等を配合した耐火性組成物が用いられている。しかし、ゴム成分や熱膨張性黒鉛は、本質的にそれ自体が燃焼したり熱溶融したりする性質を有するので、いかに長時間、熱膨張した発泡体の熱溶解を防止できるか、あるいは、無機成分を脱落させずに保持させることができるか、が耐火性組成物の性能を決定する上で重要な要素となる。
そこで、出願人は特許文献1に、熱膨張した後も熱溶融を起こさずに所定の形状を長時間保持することができる防火用膨張材料として、ゴム成分に熱可塑性エラストマーを配合し、膨張性黒鉛、ホウ酸及び無機充填材を添加した防火用目地材を開示している。
一方、耐火被覆材として鉄骨や壁に貼り付ける際に、仮止め固定を容易に行うために、粘着性を有する様々な耐火性樹脂組成物等が開発されている。例えば、特許文献2には、粘着性を有するゴム組成物、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、含水無機物及び金属炭酸塩を混成した耐火性樹脂組成物が、特許文献3には、加熱によって膨張して耐火断熱層を形成し、常温で粘着性を有する熱膨張性シートの片面に基材層が積層され、該基材層の被積層面に離型処理が施されている粘着性耐火シートが、特許文献4には、非架橋ゴム及び/又は部分架橋ゴムからなるゴム成分に、熱膨張性無機物、無機充填材、及び平均分子量2000〜4000の液状樹脂を配合してなることを特徴とする粘着耐火性ゴム組成物が、開示されている。
なお、上記のような、従来の粘着性を有する耐火性樹脂組成物等は、予め架橋されたゴム組成物と他の成分を配合しても、他の成分を配合する際同時にゴム組成物を架橋しても、他の成分を配合した後にゴム組成物を架橋してもよいが、耐火性樹脂組成物として製造する段階で架橋処理を完結させるものである。
特開2006−87819号公報 特開2000−34365号公報 特開2000−38785号公報 特開2003−192840号公報
粘着性を有する従来の耐火性樹脂組成物等は、耐火被覆材として鉄骨や壁に貼り付ける際に仮止め固定が容易にできる。しかし、耐火性樹脂組成物の有する粘着力だけでは、耐火被覆処理後に炎熱に曝された場合の耐火被覆材の剥離、脱落を防止するには接着性が不十分である。そのため、耐火被覆材を鉄骨や壁に貼り付けた後に、外側から不織布、金網、セラミック材料等の面材を釘やピン、ネジ等によって固定し、補強される場合が多かった。(例えば、特許文献2段落0051参照)。
従って、耐火被覆処理における初期の作業性は向上するものの、耐火被覆材として鉄骨や壁に仮止め固定後に、前記のような本止め固定作業を行う必要があり、耐火被覆処理作業の全体としては、作業効率を低下させる要因ともなっていた。
そこで、本発明は、耐火被覆処理における初期の作業性を維持しつつ、耐火被覆処理工程全体の作業効率も向上させ、更に、炎熱に曝された際、ゴム成分の燃焼による被覆された鉄骨等の内容物の温度上昇を防止し得る耐火ゴム組成物を提供することを主目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、十分な形状安定性と難燃性を保持する耐火ゴム組成物であって、これを成形して得られる耐火被覆材の被覆処理工程全体の作業効率が大幅に向上し得る耐火ゴム組成物として、以下の耐火ゴム組成物を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、まず、液状ゴム30〜60質量部、ブチルゴム40〜70質量部からなるベースゴム成分と、該ベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部を少なくとも含有する、未加硫の耐火ゴム組成物を提供するものである。
本発明に係る耐火ゴム組成物には、前記の各構成成分に加え、亜リン酸アルミニウムを1〜50質量部、更に含有させると好適である。
本発明に係る耐火ゴム組成物は、未加硫であることが必須であるが、具体的には、ツーローター式混練装置を用い80℃にて40回転/分の回転速度で5分間混練し、前記加硫剤及び前記加硫促進剤を添加し、さらに100℃にて前記回転数で5分間混練する混練処理工程ののちにも、針入度が30〜65度であり、かつ、加硫度が5%以下であれば好ましい。
また、前記混練処理後、50℃雰囲気下で120日ののち、加硫度が70%以上であるとより好ましい。
本発明に係る耐火ゴム組成物に含有される前記難燃剤は、難燃効果を有するものであれば特に限定されないが、一例としては、リン化合物を挙げることができる。
該リン酸化合物の種類も特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム類を含有させることができる。
更に、該ポリリン酸アンモニウム類の種類も特に限定されないが、一例としては、ポリリン酸アンモニウム又はポリリン酸アンモニウムアミドを挙げることができる。
本発明では、また、前記耐火ゴム組成物から成形した耐火被覆材を提供する。
本発明に係る耐火被覆材の形状は特に限定されないが、テープ状又はシート状に成形することも可能である。
本発明では、次に、前記耐火ゴム組成物を、60〜100℃にて混練したのち成形する耐火被覆材の製造方法を提供する。
本発明に係る耐火被覆材の製造方法において、成形温度は特に限定されないが、混練温度よりも低い温度で成形するとより好適である。
本発明では、更に、前記耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法を提供する。
本発明に係る耐火被覆処理方法は、前記耐火被覆材を用いていれば、具体的な処理方法は特に限定されないが、例えば、前記耐火被覆材を、該耐火被覆材の粘着力によって基材表面に粘着させた後、さらに、該耐火被覆材の自然加硫によって基材表面へ固着化させる方法が特に好適である。
ここで、本発明における技術用語の定義付けを行う。
本発明において「未加硫」とは、加硫性を有するものが未だ加硫されていない状態を示し、加硫性を有さない「非加硫」とは異なる概念である。
本発明において「粘着」とは、粘り気を有することにより、基材表面等へ張り付くことをいい、再び、剥離することが可能な状態をいう。
本発明において「固着」とは、硬度を増した状態で、基材表面等へ強固に固定することをいい、再び、剥離することが不可能な状態をいう。
なお、本発明において「接着」とは、上記の「粘着」及び「固着」を包括する概念として用いるものとする。
本発明に係る耐火ゴム組成物は粘着性を有するため、これを成形して得た耐火被覆材等は、耐火被覆処理における初期の作業性の向上が図れる。また、本発明に係る耐火ゴム組成物は未加硫であるため、これを成形して得た耐火被覆材等を用いた耐火被覆処理では、自然加硫による鉄骨や壁等への固着が実現でき、被覆処理工程全体の作業効率を飛躍的に高めることが可能である。更に、難燃剤を含有させることにより、炎熱に曝された際、ゴム成分の燃焼による被覆された鉄骨等の内容物の温度上昇を防止することが可能となる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<耐火ゴム組成物>
本発明に係る耐火ゴム組成物は、液状ゴム30〜60質量部、ブチルゴム40〜70質量部からなるベースゴム成分と、該ベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部を少なくとも含有し、未加硫の状態の組成物である。
このように、ベースゴム成分に、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、難燃剤、無機充填剤を上記の特定質量比で配合することにより、好適な熱膨張倍率と加工性を備え、長時間高温に曝され熱膨張してもその発泡体が脆弱化し難く十分な形状安定性を有する耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等を得ることができる。以下、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、難燃剤、無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤の各成分の含有比率を前記範囲に特定した意義及び、各含有物質の具体例等について、詳細に述べる。なお、本発明に係る耐火ゴム組成物は、少なくとも未加硫の状態であれば、前記の各成分を混練した状態のものも、混練前の状態のものも、どちらも包含する。
ベースゴム成分は、液状ゴム30〜60質量部に、ブチルゴム40〜70質量部を混合してなる。液状ゴムが30質量部未満の場合、ベースゴム成分は硬く(針入度は小さく)なりすぎ、耐火ゴム組成物の加工性は低下し、また該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の粘着性が不十分となる。また、液状ゴムが60質量部を超えると、ベースゴム成分は柔らかく(針入度が大きく)なりすぎ、該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が取り扱いづらくなり、操作性が低下する。従って、液状ゴム及びブチルゴムを上記特定質量比で配合してベースゴム成分とすることにより、好適な加工性を備えた耐火ゴム組成物が得られ、該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等は、操作性と、特に粘着性に優れた特性を得ることができる。
本発明で用いることができる液状ゴムの種類は特に限定されず、公知の液状ゴムを採用することができる。特に、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等に粘着性を付与できるものが望ましい。一例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブテン等を挙げることができる。ベースゴム成分に含有させる液状ゴムは1種類に限定されず、2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
前記ベースゴム成分により、本発明に係る耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等には、粘着性が付与されるが、さらに本発明では、粘着付与剤を配合することにより、粘着性を一層向上させる。
本発明で用いることができる粘着付与剤の種類は特に限定されず、公知の粘着付与剤を採用することができる。例えば、クマロン−インデン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂、石油系炭化水素樹脂等が挙げられる。この中でも特に好ましい粘着付与剤は、ポリテルペン樹脂である。また、本発明に係る耐火ゴム組成物に含有させる粘着付与剤は1種類に限定されず、2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
耐火ゴム組成物における粘着付与剤の含有量は、ベースゴム成分100質量部に対して3〜50質量部であり、好ましくは5〜30質量部である。3質量部未満であると、本発明に係る耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の粘着性が不十分となり、50質量部を超えて使用すると前記耐火被覆材の強度が低くなるためである。
熱膨張性黒鉛は、220℃程度以上の温度に曝されると100倍以上に熱膨張し、火災発生時には鉄骨等の被覆表面に強固な発泡断熱層を形成して鉄骨等の温度上昇を防止し、また、防火壁と電源ケーブル等の隙間を閉塞させて火炎の流入を防止する機能を発揮する。
熱膨張性黒鉛は、天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末を、硫酸や硝酸等の無機酸と、濃硝酸や過マンガン酸塩等の強酸化剤とで処理されたもので、グラファイト層状構造を維持した結晶化合物が用いられる。なお、天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末には、脱酸処理や中和処理を行った各種品種があるが、いずれを使用してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜400メッシュ程度が好ましい。400メッシュより粒度が小さくなると熱膨張性黒鉛の膨張度が小さく、得られた耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が火災時に充分熱膨張しない場合があり、また20メッシュより粒度が大きくなると分散性が悪くなり、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の弾性が低下する場合がある。
耐火ゴム組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、ベースゴム成分100質量部に対して10〜100質量部であり、好ましくは20〜70質量部である。熱膨張性黒鉛の含有量が10質量部未満であると、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が充分熱膨張しない(膨張倍率が小さい)場合があり、100質量部を超えると、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の熱膨張倍率は大きくなるものの、熱膨張後の発泡体の形状安定性が低下する場合がある。
難燃剤は、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が、火炎に曝され熱膨張性黒鉛が熱膨張を開始する際に、成形体内部から熱分解ガスが発生しそれに火炎が引火し燃焼するのを防止するため用いる。熱膨張性黒鉛が耐火ゴム組成物を発泡させて断熱層を形成し、被覆された鉄骨等の基材表面の温度上昇を抑制する効果があるが、この熱分解ガスの燃焼による被覆材の発火により、内部の鉄骨温度が上昇してしまう問題がある。そこで、前記のように特定質量比で配合した各構成成分と、特定質量比の難燃剤を配合することにより、燃焼を抑制し鉄骨温度の上昇を防止することに成功した。
本発明で用いることができる難燃剤の種類は特に限定されず、公知の難燃剤を採用することができる。特に環境面を考慮すると、非ハロゲン系の難燃剤が好ましい。非ハロゲン系の難燃剤の種類も特に限定されないが、例えば、リン化合物が好適である。リン化合物としては、例えば、赤リン、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等の非ハロゲン系リン酸エステル、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド等のポリリン酸アンモニウム類、リン酸アルミニウム、リン酸メラミン等が挙げられる。
このなかでも特に、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド等のポリリン酸アンモニウム類が、発泡性・形状安定性の面から好ましい。これらのリン化合物は、有機物の脱水炭化作用を有するとともに、不燃性の無機系リン酸被膜を形成するため、難燃効果を優れるものである。
耐火ゴム組成物における難燃剤の含有量は、ベースゴム成分100質量部に対して30〜180質量部であり、好ましくは50〜150質量部である。30質量部未満であると、燃焼を抑制する効果が小さく、耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の燃焼が継続することによって鉄骨等の基材温度の上昇を促進してしまい、逆に、180質量部を超えると耐火ゴム組成物の加工性、粘着性が低下するためである。
無機充填剤は、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の中で骨材的な働きをし、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が火災で熱膨張した後は、その発泡体の強度を向上させたり、熱容量の増大に寄与し耐熱性を増強させたりするために用いる。
本発明で用いることができる無機充填剤の種類は特に限定されず、公知の無機充填剤を採用することができる。一例としては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、ベントナイト、活性白土、セピオライト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、フライアッシュ、フライアッシュバルーン等が挙げられる。この中でも特に好ましい無機充填剤は、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレーである。これらは、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
耐火ゴム組成物における無機充填剤の含有量は、ベースゴム成分100質量部に対して30〜210質量部であり、好ましくは50〜180質量部である。30質量部未満であると、耐火ゴム組成物の発泡体の強度が不足し、耐熱性、難燃性が発揮されず、210質量部を超えると耐火ゴム組成物の加工性が低下するためである。
加硫剤及び加硫促進剤は、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等に自然加硫性を付与するため配合される。ここで、本発明における「自然加硫」とは、混練処理等で発生する熱や人工的な加熱による加硫ではなく、太陽光の輻射熱等による環境下での加硫をいう。
本発明に係る耐火ゴム組成物は、加硫剤及び加硫促進剤を配合するにも関わらず、耐火ゴム組成物又はこれを成形した得た耐火被覆材の製造段階では加硫を行わず、未加硫のまま製造する。このように、本願発明者らは、未加硫のままの耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等を、その優れた柔軟性と粘着性を活かして基材表面に粘着させ、そして、特定質量比の加硫剤及び加硫促進剤を配合させることにより、太陽光の輻射熱等による環境下での自然加硫によって基材表面へ固着化させることを見出した。
すなわち、本発明に係る耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等は、当初は優れた柔軟性と粘着性を有し、耐火被覆処理の初期工程には優れた粘着性を発揮して基材等に粘着し、そして、太陽光の輻射熱等により自然加硫して次第に強度を増し、基材等に強固に固着化するという特性を備えている。
このような自然加硫性に基づく特性を最適化するため、加硫剤及び加硫促進剤の含有比率を、それぞれベースゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲に特定した。これらの含有量は、さらに好ましくは1〜5質量部範囲である。加硫剤及び加硫促進剤がそれぞれベースゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、自然加硫性が発揮されなかったり、自然加硫の進行(自然加硫速度)が遅すぎたりして、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の固着化強度が不十分となり、10質量部を超えて使用すると、自然加硫速度が速くなりすぎて粘着性が低下し、また保管時の安定性も劣るためである。
本発明で用いることができる加硫剤の種類は特に限定されず、公知の加硫剤を採用することができる。一例としては、硫黄、ポリスルフィド等の硫黄系化合物、p−キノンジオキシム、p−p−ジベンゾイルキノンオキシム等のオキシム系化合物、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系化合物等を挙げることができる。この中でも特に好ましい加硫剤は、硫黄、ポリスルフィド等の硫黄系化合物である。これらは、単独で用いてもよいが、例えば、硫黄系化合物と、それ以外の加硫剤とを組み合わせる等、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明で用いることができる加硫促進剤の種類も特に限定されず、公知の加硫促進剤を採用することができる。一例としては、テトラメチルチウラムジスルフィドやテトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物、2−メルカプトベンゾチアゾールやジベンゾチアゾールジスルフィド等のチアゾール系化合物、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系化合物、n−ブチルアルデヒドアニリン等のアルデヒドアミン系化合物、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物、ジオルソトリルグアニジンやジオルソニトリルグアニジン等のグアニジン系化合物、チオカルバニリドやジエチルチオユリア、トリメチルチオユリア等のチオユリア系化合物、亜鉛華などの化合物が挙げられる。この中でも特に好ましい加硫促進剤は、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系化合物である。これらは、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明に係る耐火ゴム組成物には、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等の熱膨張後の型崩れ防止のために、形状安定化剤として亜リン酸アルミニウムを用いることができる。本発明においては、亜リン酸アルミニウムは必須ではなく、含有されない場合でも他の成分の組み合わせ及びその配合量を前記のように特定質量比で配合することにより、良好な形状安定性および加工性が得られるが、さらに形状安定性の向上を図るために含有させることが望ましい。
亜リン酸アルミニウムを含有させる場合、その平均粒径は、分散性の観点から、1〜100μmが好ましい。なお、この平均粒径は、レーザー回析法による粒子分布測定に基づく値である。粒子分布測定に用いる粒子分布測定機の種類は特に限定されないが、例えば、ベックマンコールター社製商品名「モデルLS−230」を用いて粒子分布測定を行うことができる。
また、亜リン酸アルミニウムを含有させる場合、耐火ゴム組成物における亜リン酸アルミニウムの含有量は、ベースゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは1〜30質量部である。50質量部を超えると、本発明に係る耐火ゴム組成物においては、加工性が低下するとともに、熱膨張性が抑制され、膨張倍率が低下する場合がある。
以上説明した液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤の各成分と、加硫剤、加硫促進剤を上記の特定比率で含有させ、未加硫のままの耐火ゴム組成物とすることで、これを用いた耐火被覆材等は好適な柔軟性と粘着性を有し、更に、好適な自然加硫性を備え、適切な加硫速度と十分な加硫後の強度を発揮するとともに良好な難燃性を有するものとなる。
なお、本発明に係る耐火ゴム組成物には、その効果を阻害しない範囲で、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤等を併用して用いてもよい。加工性の調整に有効な軟化剤や可塑剤の例としては、パラフィン系やナフテン系等のプロセスオイル、流動パラフィンやその他のパラフィン類、ワックス類、フタル酸やアジピン酸系、セバシン酸系やリン酸系等のエステル系可塑剤類、ステアリン酸やそのエステル類などがあげられる。
本発明に係る耐火ゴム組成物は、少なくとも未加硫の状態であれば、前記の各成分を混練した状態のものも、混練前の状態のものも、どちらも包含する。前記各成分を混練する場合、その混練方法は、耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が、混練後に自然加硫可能な状態であれば、特に限定されないが、例えば、60〜100℃にて前記各成分を混練すれば、混練中の加硫反応を確実に抑制することができる。仮に、100℃を超えた温度で混練処理を行った場合には、混練中に加硫反応が進行してしまう場合が生じ、得られる耐火ゴム組成物の柔軟性に支障をきたしたり、適切な自然加硫性が発揮されない可能性も生じる場合がある。
より具体的には、例えば、ツーローター式混練装置を用いて80℃にて40回転/分の回転速度で5分間混練し、加硫剤及び加硫促進剤を添加し、更に100℃にて前記回転数で5分間混練する混練処理工程を行った場合、耐火ゴム組成物の加硫度が5%以下となるものが望ましい。また、同様の条件で混練処理を行った後の耐火ゴム組成物の針入度が30〜65度となれば、好適な柔軟性を具備するものとなる。なお、この針入度は、JIS K2207に準拠し、荷重100g、温度25℃において、規定の針を試験片に垂直に貫入させ、その深さを0.1mm単位で測定した値である。
本発明に係る耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等が有する自然加硫性は、太陽光の輻射熱等により自然加硫して次第に強度を増し、固着化できることを示すが、例えば、上記混練処理ののち、50℃雰囲気下120日後において70%以上まで加硫するように形成できれば、特に好適である。なお、この自然加硫速度は、異なる温度及び期間において評価することも当然に可能である。
なお、上記混練処理工程に用いることができるツーローター式混練装置は、例えば、80℃ないしは100℃において回転速度40回転/分での混練を可能とする装置であれば特に限定されず、公知の装置を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー等を用いることができる。本発明においては、現在広く普及している加圧ニーダー(株式会社モリヤマ製の混合容量3リットル:DS3−10MWB−S型)を用いた。
<耐火被覆材・耐火被覆材の製造方法>
本発明に係る耐火ゴム組成物は、好適な柔軟性と粘着性を有し、更に、好適な自然加硫性を備え、適切な加硫速度と十分な加硫後の強度を発揮するとともに良好な難燃性を有するため、耐火被覆材に好適に用いることができる。
本発明に係る耐火被覆材の形状は、特に限定されず、被覆する基材に合わせ、適宜設計することができる。例えば、テープ状あるいはシート状に成形すれば、鉄骨や壁等により簡便に貼り付けることができ、さらに作業効率を高めることが可能となる。
本発明に係る耐火被覆材は、前記耐火ゴム組成物を混練処理したのち、成形処理を行うことにより製造する。この際、混練処理温度を60〜100℃に保つと、上記混練処理後の耐火ゴム組成物の加硫度を5%以下に維持できるため、好適である。混練処理温度が100℃を超えると、耐火ゴム組成物の加硫反応が進行してしまい、得られる耐火被覆材の粘着性及び柔軟性が低下したり、適切な自然加硫性が発揮されない可能性が生じるためである。
また、成形処理温度も100℃以下に保つことが望ましい。同様に、成形処理温度が100℃を超えると、耐火ゴム組成物の加硫反応が進行してしまい、得られる耐火被覆材の粘着性及び柔軟性が低下したり、適切な自然加硫性が発揮されない可能性が生じるためである。さらに、成形処理温度は、混練処理の温度よりも低く保つことがより望ましい。
なお、上記混練処理工程に用いることができるツーローター式混練装置は、特に限定されず、公知の装置を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー等を用いることができる。また、耐火ゴム組成物から耐火被覆材を成形する際の方法も特に限定されず、従来のプレス成形、押出成形、カレンダー成形等の方法を自由に採用することができる。
このようにして成形された耐火被覆材は、優れた粘着性を有するので、基材表面に耐火被覆材を施工する際に、耐火被覆材は自身の有する粘着力に基づいて基材表面へ接着し、保持される。従って、従来の防火用膨張材料と異なり、鉄骨や壁等へ貼り付ける際に、不織布、金網、セラミック材料等の面材を釘やピン、ネジ等によって補強固定する必要がない。また、粘着状態の耐火被覆材は、柔軟性を維持しているので、一旦基材表面へ貼り付けて位置決めを行った後にも、再度、剥離して貼りかえることが可能である。
さらに、鉄骨や壁等へ貼り付けられた耐火被覆材は、自然加硫により次第に硬度を増して、貼り付け当初の粘着状態から、次第に固着状態へと変化し、鉄骨や壁等の表面に強固な被覆を形成する。このように強固な被覆を形成するに至った耐火被覆材は、もはや容易に剥離、脱落することがないので、従来の防火用膨張材料のように、鉄骨や壁等へ貼り付けた後、外側から不織布、金網、セラミック材料等の面材を釘やピン、ネジ等によって補強固定する必要がなく、炎熱に曝された場合にも剥離、脱落しにくい。
加えて、本発明に係る耐火被覆材には、前記の粘着性や自然加硫性を損なわない程度の特定質量比の難燃剤を含有するため、火炎に曝され、含有する熱膨張性黒鉛が熱膨張を開始する際に、成形体内部から熱分解ガスが発生しそれに火炎が引火し燃焼するのを防止することができる。そのため、耐火被覆材自身の発火による、内部の鉄骨温度の上昇を防止する効果も発揮する。
<耐火被覆処理方法>
本発明に係る耐火被覆処理方法は、前記耐火被覆材の特性を利用したものである。まず、前記耐火被覆材の有する粘着力に基づいて基材表面へ粘着させる。前記耐火被覆材は粘着性を有するため、従来の防火用膨張材料と異なり、鉄骨や壁等へ貼り付ける際に、接着剤、釘、ピン、ネジ等を用いる必要がない。また、粘着状態の耐火被覆材は、柔軟性を維持しているので、一旦基材表面へ貼り付けて位置決めを行った後にも、再度、剥離して貼りかえることが可能である。
次に、基材表面へ粘着された耐火被覆材を、自然加硫により基材表面へ固着化させる。前記耐火被覆材は、自然加硫性を有するため、太陽光の輻射熱等により自然加硫して次第に強度を増し、基材表面へ固着化させることができる。このように本発明に係る耐火被覆処理では、貼り付け当初の粘着状態から、次第に固着状態へと変化し、鉄骨や壁等の表面に強固な被覆を形成する。
自然加硫が進行した後の耐火被覆材は、強固な被覆を形成するため、もはや容易に剥離、脱落することがないので、従来の防火用膨張材料のように、鉄骨や壁等へ貼り付けた後、外側から不織布、金網、セラミック材料等の面材を釘やピン、ネジ等によって補強固定する必要がなく、炎熱に曝された場合にも剥離、脱落しにくい。
また、本発明に係る耐火被覆処理では、耐火被覆材の基材表面への固定を、自然加硫で行うため、前記のような、固定作業を省略でき、耐火被覆処理に要するコストや時間の軽減も実現できる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
なお、以下の説明における部及び%は質量基準に基づく。実施例において使用した材料は、それぞれ以下に示したものである。
(1)液状ゴム:ポリブテン;BP Japan(株)製、「H−300」
(2)ブチルゴム:JSR(株)製、「ブチル268」
(3)粘着付与剤:テルペン系樹脂;ヤスハラケミカル(株)製、「YSレジンPX−100」
(4)熱膨張性黒鉛:エア・ウオーター・ケミカル(株)製、「SS−3」(熱膨張開始温度220℃)
(5)亜リン酸アルミニウム:太平化学産業(株)、「APA―100」
(6)難燃剤:ポリリン酸アンモニウムアミド;太平化学産業(株)、「タイエンS」、ポリリン酸アンモニウム;クラリアント社製、「AP−422」
(7)無機充填剤:クレー;(株)群馬長石御座入鉱山製、「FA−80」、炭酸カルシウム;備北粉化工業(株)、「ホワイトンSB」、カーボンブラック;旭カーボン(株)製、「#80」、水酸化アルミニウム;昭和電工(株)製、「ハイジライトH31」、フライアッシュバルーン;巴工業(株)製「セノライトSA」
(8)加硫剤:粉末硫黄(細井化学工業(株)製)
(9)加硫促進剤:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛;大内新興(株)製、「ノクセラーPZ」、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛;大内新興(株)製、「ノクセラーBZ」
実施例1〜7及び比較例1〜9において、下記の各特性を評価した。各特性の測定方法を以下に示す。なお、試験片には耐火ゴム組成物を縦25mm×横100mm×厚み2mmのテープ状に加工した耐火被覆材を用いた。
(1)熱膨張倍率:試験片を300℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の膨張倍率を測定した。
(2)加工性:カレンダー成形機で試験片を成形する際に、問題なく成形できたものを「良」、外観不良発生あるいは安定した成形が出来なかったものを「不可」と評価した。
(3)形状安定性:熱膨張倍率測定後の試験片の形状を目視と指触で評価した。型崩れせず指で触っても崩れないものを「良」、指触ですぐ崩れるか、あるいは既に崩れてしまったものを「不可」と評価した。
(4)燃焼抑制効果:電気炉((株)デンケン製、KDF−S90)を600℃に昇温し、上記試験片を炉内に入れた後扉を閉め5分間放置。その後開閉し内部の試験片の燃焼状態を目視で観察した。試験片の燃焼が30秒間以内に収まった場合を「良」、30秒間以上継続した場合を「不可」と評価した。
(5)針入度:JIS K2207に準拠し荷重100g、温度25℃において測定を行った。規定の針を試験片に垂直に貫入させ、その深さを0.1mm単位で測定した。
(6)加硫度:JIS K6300記載の方法で、キュラストメーターIII型(JSRトレーディング社製)でトルクを測定した。加硫度(%)=(MX−ML)/(MM−ML)×100(MXはある期間を経た材料のトルク値、MLは測定曲線におけるトルクの最小値、MMは測定曲線におけるトルクの最大値)
(7)T型剥離接着強さ:JIS K6854の剥離接着強さ試験方法に準拠して接着強度を測定した。大きさが縦25mm×横150mm×厚み2mmのSUS板に試験片を挟んでハンドローラーで圧着した。貼り付け直後及び50℃オーブン中に4ヶ月放置後において剥離速度を50mm/minとし、T型剥離接着強さ試験を行った。
表1及び表2は、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤の配合比率を変化させて成形した試験片の各特性を示す。試験片は、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤を、株式会社モリヤマ製の混合容量3リットルの加圧ニーダー(機器名:DS3−10MWB−S型)を用いて80℃にて40回転/分の回転速度で5分間混練し、加硫剤および加硫促進剤を添加し更に100℃にて同じ回転数で5分間混練した後、カレンダー成形機を用い80℃にて試験片を成形した。
表1に示すとおり、本発明の実施例1〜6は、十分な熱膨張倍率と良好な加工性を保持しながら、亜リン酸アルミニウムの有無に関わらず優れた形状安定性をも具備するものとなっていた。また、針入度が30〜65度、貼り付け直後のT型剥離接着強さが4.5N/25mm以上であって、好適な柔軟性と十分な粘着性を備えるものとなっていた。
さらに、自然加硫性の評価においては、実施例1〜6とも、50℃雰囲気下4ヶ月後における加硫度が70%以上となり、T剥離接着強さは、貼り付け直後の5N/25mm程度から35〜49N/25mmへ7倍以上増加していた。これらの数値より実施例1〜6にかかる耐火被覆材が、好適な加硫速度と加硫後の固着性を具備することを示すものである。
加えて、燃焼抑制効果の評価においても、実施例1〜6とも、難燃剤を特定質量比配合することにより、前記の加工性、形状安定性、柔軟性、粘着性、自然加硫性などの機能に影響を与えることなく、燃焼抑制効果をも著しく改善されていた。
次に表2に掲げる比較例について説明する。
比較例1は、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、難燃剤、無機充填剤が配合されていないため、接着性が不十分で、熱膨張性を欠き、燃焼抑制効果も劣り、各構成成分のバランスも欠いているために形状安定性も劣っていた。また、針入度が160度と高すぎることから、柔軟性が高すぎて、貼り付け時の操作性が低下すると考えられる。
比較例2は、難燃剤が配合されないため、燃焼抑制効果を欠き、また、粘着付与剤も配合されないため、接着性も不十分で、各構成成分のバランスも欠いているために形状安定性も劣っていた。さらに、針入度が105度と高すぎることから、柔軟性が高すぎて、貼り付け時の操作性が低下すると考えられる。
比較例3は、熱膨張性黒鉛及び難燃剤が配合されないため、熱膨張性及び燃焼抑制効果を欠き、また、各構成成分のバランスも欠いているために形状安定性も劣っていた。
比較例4は、難燃剤が配合されないため、燃焼抑制効果を欠き、各構成成分のバランスも欠いているために形状安定性も劣っていた。
比較例5は、難燃剤が配合されないため、燃焼抑制効果を欠き、また、加硫剤及び加硫促進剤が配合されないため、自然加硫性を欠いていた。
比較例6は、熱膨張性黒鉛を110質量部にまで配合したため、熱膨張倍率は向上するものの、形状安定性が不良となっていた。また、難燃剤が配合されないため、燃焼抑制効果も欠いていた。
比較例7は、液状ゴム40質量部、ブチルゴムを60質量部としたベースゴム成分100質量部に対して、無機充填剤を250質量部まで配合したため、加工性不良となった。
比較例8は、ベースゴム成分100質量部に対して、加硫剤を11質量部配合し、更に加硫促進剤を11質量部(ノクセラーPZ:5.5質量部、BZ:5.5質量部の合計)配合した。この場合、加工性が不良となることが分かった。これは自然加硫速度が速くなりすぎて、混練・成形工程中に加硫反応が進み、柔軟性が失われたためと考えられる。
比較例9は、ベースゴム成分100質量部に対して、亜リン酸アルミニウムを130質量部配合したため、熱膨張倍率が低下し、加工性も不良であった。
表3は加硫剤および加硫促進剤を添加した後の混練工程(5分間)及びカレンダー成形機にて成形する際の温度を変化させて得た試験片の各特性を示す。実施例7及び比較例10は、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤の配合比率は同じであるが、実施例7においては混練工程及び成形工程の温度がそれぞれ100℃、80℃であるのに対して、比較例10においてはともに130℃に設定した。
実施例7では、混練・成形工程の温度を100℃以下に維持することで、試験片の加硫度は3%に抑制されるのに対して、比較例10では混練・成形工程の温度を130℃と高く設定したことにより、試験片の加硫が15%にまで進んでいた。比較例10では、このように加硫が進行してしまうことにより、接着性の低下が引き起こされていた。
本発明に係る耐火ゴム組成物、該耐火ゴム組成物からなる耐火被覆材、及び
該耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法は、鉄骨等の耐火被覆処理に用いることができる。さらに、防火壁と電源ケーブル間等の防火用目地材として電源ケーブルに巻きつけて開口部に挿入することで、火災時の延焼防止や建造物の倒壊防止にも有用である。
実施例1〜及び比較例1〜9において、下記の各特性を評価した。各特性の測定方法を以下に示す。なお、試験片には耐火ゴム組成物を縦25mm×横100mm×厚み2mmのテープ状に加工した耐火被覆材を用いた。
(1)熱膨張倍率:試験片を300℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の膨張倍率を測定した。
(2)加工性:カレンダー成形機で試験片を成形する際に、問題なく成形できたものを「良」、外観不良発生あるいは安定した成形が出来なかったものを「不可」と評価した。
(3)形状安定性:熱膨張倍率測定後の試験片の形状を目視と指触で評価した。型崩れせず指で触っても崩れないものを「良」、指触ですぐ崩れるか、あるいは既に崩れてしまったものを「不可」と評価した。
(4)燃焼抑制効果:電気炉((株)デンケン製、KDF−S90)を600℃に昇温し、上記試験片を炉内に入れた後扉を閉め5分間放置。その後開閉し内部の試験片の燃焼状態を目視で観察した。試験片の燃焼が30秒間以内に収まった場合を「良」、30秒間以上継続した場合を「不可」と評価した。
(5)針入度:JIS K2207に準拠し荷重100g、温度25℃において測定を行った。規定の針を試験片に垂直に貫入させ、その深さを0.1mm単位で測定した。
(6)加硫度:JIS K6300記載の方法で、キュラストメーターIII型(JSRトレーディング社製)でトルクを測定した。加硫度(%)=(MX−ML)/(MM−ML)×100(MXはある期間を経た材料のトルク値、MLは測定曲線におけるトルクの最小値、MMは測定曲線におけるトルクの最大値)
(7)T型剥離接着強さ:JIS K6854の剥離接着強さ試験方法に準拠して接着強度を測定した。大きさが縦25mm×横150mm×厚み2mmのSUS板に試験片を挟んでハンドローラーで圧着した。貼り付け直後及び50℃オーブン中に4ヶ月放置後において剥離速度を50mm/minとし、T型剥離接着強さ試験を行った。
表1に示すとおり、本発明の実施例1〜は、十分な熱膨張倍率と良好な加工性を保持しながら、亜リン酸アルミニウムの有無に関わらず優れた形状安定性をも具備するものとなっていた。また、針入度が30〜65度、貼り付け直後のT型剥離接着強さが4.5N/25mm以上であって、好適な柔軟性と十分な粘着性を備えるものとなっていた。
さらに、自然加硫性の評価においては、実施例1〜とも、50℃雰囲気下4ヶ月後における加硫度が70%以上となり、T剥離接着強さは、貼り付け直後の5N/25mm程度から35〜49N/25mmへ7倍以上増加していた。これらの数値より実施例1〜にかかる耐火被覆材が、好適な加硫速度と加硫後の固着性を具備することを示すものである。
加えて、燃焼抑制効果の評価においても、実施例1〜とも、難燃剤を特定質量比配合することにより、前記の加工性、形状安定性、柔軟性、粘着性、自然加硫性などの機能に影響を与えることなく、燃焼抑制効果をも著しく改善されていた。
表3は加硫剤および加硫促進剤を添加した後の混練工程(5分間)及びカレンダー成形機にて成形する際の温度を変化させて得た試験片の各特性を示す。実施例及び比較例10は、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤の配合比率は同じであるが、実施例においては混練工程及び成形工程の温度がそれぞれ100℃、80℃であるのに対して、比較例10においてはともに130℃に設定した。
実施例では、混練・成形工程の温度を100℃以下に維持することで、試験片の加硫度は3%に抑制されるのに対して、比較例10では混練・成形工程の温度を130℃と高く設定したことにより、試験片の加硫が15%にまで進んでいた。比較例10では、このように加硫が進行してしまうことにより、接着性の低下が引き起こされていた。
そこで、本発明は、耐火被覆処理における初期の作業性を維持しつつ、耐火被覆処理工程全体の作業効率も向上させ、更に、炎熱に曝された際、ゴム成分の燃焼による被覆された鉄骨等の内容物の温度上昇を防止し得る耐火被覆材を提供することを主目的とする
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、十分な形状安定性と難燃性を保持する耐火被覆材であって、耐火被覆材の被覆処理工程全体の作業効率が大幅に向上し得る耐火被覆材として、以下の耐火被覆材を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、まず、液状ゴム30〜60質量部、ブチルゴム40〜70質量部からなるベースゴム成分と、該ベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部を少なくとも含有する耐火ゴム組成物を用いて、
未加硫のまま成形された耐火被覆材を提供するものである。
前記耐火ゴム組成物には、前記の各構成成分に加え、亜リン酸アルミニウムを1〜50質量部、更に含有させると好適である。
前記耐火ゴム組成物に含有される前記難燃剤は、難燃効果を有するものであれば特に限定されないが、一例としては、リン化合物を挙げることができる。
該リン酸化合物の種類も特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム類を含有させることができる。
更に、該ポリリン酸アンモニウム類の種類も特に限定されないが、一例としては、ポリリン酸アンモニウム又はポリリン酸アンモニウムアミドを挙げることができる。
本発明に係る耐火被覆材の形状は特に限定されないが、テープ状又はシート状に成形することも可能である。
本発明では、次に、前記耐火ゴム組成物を、60〜100℃にて混練したのち成形する耐火被覆材の製造方法を提供する。
本発明に係る耐火被覆材の製造方法において、成形温度は特に限定されないが、混練温度よりも低い温度で成形するとより好適である。
本発明では、更に、前記耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法を提供する。
本発明に係る耐火被覆処理方法は、前記耐火被覆材を用いていれば、具体的な処理方法は特に限定されないが、例えば、前記耐火被覆材を、該耐火被覆材の粘着力によって基材表面に粘着させた後、さらに、該耐火被覆材の自然加硫によって基材表面へ固着化させる方法が特に好適である。
本発明に係る耐火ゴム組成物は、加硫剤及び加硫促進剤を配合するにも関わらず、耐火ゴム組成物又はこれを成形し得た耐火被覆材の製造段階では加硫を行わず、未加硫のまま製造する。このように、本願発明者らは、未加硫のままの耐火ゴム組成物及び該耐火ゴム組成物を用いた耐火被覆材等を、その優れた柔軟性と粘着性を活かして基材表面に粘着させ、そして、特定質量比の加硫剤及び加硫促進剤を配合させることにより、太陽光の輻射熱等による環境下での自然加硫によって基材表面へ固着化させることを見出した。
実施例1〜7及び比較例1〜9において、下記の各特性を評価した。各特性の測定方法を以下に示す。なお、試験片には耐火ゴム組成物を縦25mm×横100mm×厚み2mmのテープ状に加工した耐火被覆材を用いた。
(1)熱膨張倍率:試験片を300℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の膨張倍率を測定した。
(2)加工性:カレンダー成形機で試験片を成形する際に、問題なく成形できたものを「良」、外観不良発生あるいは安定した成形が出来なかったものを「不可」と評価した。
(3)形状安定性:熱膨張倍率測定後の試験片の形状を目視と指触で評価した。型崩れせず指で触っても崩れないものを「良」、指触ですぐ崩れるか、あるいは既に崩れてしまったものを「不可」と評価した。
(4)燃焼抑制効果:電気炉((株)デンケン製、KDF−S90)を600℃に昇温し、上記試験片を炉内に入れた後扉を閉め5分間放置。その後開閉し内部の試験片の燃焼状態を目視で観察した。試験片の燃焼が30秒間以内に収まった場合を「良」、30秒間以上継続した場合を「不可」と評価した。
(5)針入度:JIS K2207に準拠し荷重100g、温度25℃において測定を行った。規定の針を試験片に垂直に貫入させ、その深さを0.1mm単位で測定した。
(6)加硫度:JIS K6300記載の方法で、キュラストメーターIII型(JSRトレーディング社製)でトルクを測定した。加硫度(%)=(MX−ML)/(MM−ML)×100(MXはある期間を経た材料のトルク値、MLは測定曲線におけるトルクの最小値、MMは測定曲線におけるトルクの最大値)
(7)T型剥離接着強さ:JIS K6854の剥離接着強さ試験方法に準拠して接着強度を測定した。大きさが縦25mm×横150mm×厚み2mmのSUS板に試験片を挟んでハンドローラーで圧着した。貼り付け直後及び50℃オーブン中に4ヶ月放置後において剥離速度を50mm/minとし、T型剥離接着強さ試験を行った。
表1に示すとおり、本発明の実施例1〜6は、十分な熱膨張倍率と良好な加工性を保持しながら、亜リン酸アルミニウムの有無に関わらず優れた形状安定性をも具備するものとなっていた。また、針入度が30〜65度、貼り付け直後のT型剥離接着強さが4.5N/25mm以上であって、好適な柔軟性と十分な粘着性を備えるものとなっていた。
さらに、自然加硫性の評価においては、実施例1〜6とも、50℃雰囲気下4ヶ月後における加硫度が70%以上となり、T剥離接着強さは、貼り付け直後の5N/25mm程度から35〜49N/25mmへ7倍以上増加していた。これらの数値より実施例1〜6にかかる耐火被覆材が、好適な加硫速度と加硫後の固着性を具備することを示すものである。
加えて、燃焼抑制効果の評価においても、実施例1〜6とも、難燃剤を特定質量比配合することにより、前記の加工性、形状安定性、柔軟性、粘着性、自然加硫性などの機能に影響を与えることなく、燃焼抑制効果をも著しく改善されていた。
表3は加硫剤および加硫促進剤を添加した後の混練工程(5分間)及びカレンダー成形機にて成形する際の温度を変化させて得た試験片の各特性を示す。実施例7及び比較例10は、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤の配合比率は同じであるが、実施例7においては混練工程及び成形工程の温度がそれぞれ100℃、80℃であるのに対して、比較例10においてはともに130℃に設定した。
実施例7では、混練・成形工程の温度を100℃以下に維持することで、試験片の加硫度は3%に抑制されるのに対して、比較例10では混練・成形工程の温度を130℃と高く設定したことにより、試験片の加硫が15%にまで進んでいた。比較例10では、このように加硫が進行してしまうことにより、接着性の低下が引き起こされていた。
すなわち、本発明は、まず、液状ゴム30〜60質量部、ブチルゴム40〜70質量部からなるベースゴム成分と、該ベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部、亜リン酸アルミニウムを1〜50質量部、を少なくとも含有する耐火ゴム組成物を用いて、
60〜100℃にて混練されることにより未加硫のまま成形され自然加硫性を備えた耐火被覆材を提供するものである。
前記耐火ゴム組成物に含有される前記難燃剤は、難燃効果を有するものであれば特に限定されないが、一例としては、リン化合物を挙げることができる。
該リン酸化合物の種類も特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム類を含有させることができる。
更に、該ポリリン酸アンモニウム類の種類も特に限定されないが、一例としては、ポリリン酸アンモニウム又はポリリン酸アンモニウムアミドを挙げることができる。
本発明に係る耐火被覆材の形状は特に限定されないが、テープ状又はシート状に成形することも可能である。
本発明では、次に、前記耐火ゴム組成物を、60〜100℃にて混練したのち成形する耐火被覆材の製造方法を提供する。
本発明に係る耐火被覆材の製造方法において、成形温度は特に限定されないが、混練温度よりも低い温度で成形するとより好適である。
本発明では、更に、前記耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法を提供する。
本発明に係る耐火被覆処理方法は、前記耐火被覆材を用いていれば、具体的な処理方法は特に限定されないが、例えば、前記耐火被覆材を、該耐火被覆材の粘着力によって基材表面に粘着させた後、さらに、該耐火被覆材の自然加硫によって基材表面へ固着化させる方法が特に好適である。
実施例1〜及び比較例1〜9において、下記の各特性を評価した。各特性の測定方法を以下に示す。なお、試験片には耐火ゴム組成物を縦25mm×横100mm×厚み2mmのテープ状に加工した耐火被覆材を用いた。
(1)熱膨張倍率:試験片を300℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の膨張倍率を測定した。
(2)加工性:カレンダー成形機で試験片を成形する際に、問題なく成形できたものを「良」、外観不良発生あるいは安定した成形が出来なかったものを「不可」と評価した。
(3)形状安定性:熱膨張倍率測定後の試験片の形状を目視と指触で評価した。型崩れせず指で触っても崩れないものを「良」、指触ですぐ崩れるか、あるいは既に崩れてしまったものを「不可」と評価した。
(4)燃焼抑制効果:電気炉((株)デンケン製、KDF−S90)を600℃に昇温し、上記試験片を炉内に入れた後扉を閉め5分間放置。その後開閉し内部の試験片の燃焼状態を目視で観察した。試験片の燃焼が30秒間以内に収まった場合を「良」、30秒間以上継続した場合を「不可」と評価した。
(5)針入度:JIS K2207に準拠し荷重100g、温度25℃において測定を行った。規定の針を試験片に垂直に貫入させ、その深さを0.1mm単位で測定した。
(6)加硫度:JIS K6300記載の方法で、キュラストメーターIII型(JSRトレーディング社製)でトルクを測定した。加硫度(%)=(MX−ML)/(MM−ML)×100(MXはある期間を経た材料のトルク値、MLは測定曲線におけるトルクの最小値、MMは測定曲線におけるトルクの最大値)
(7)T型剥離接着強さ:JIS K6854の剥離接着強さ試験方法に準拠して接着強度を測定した。大きさが縦25mm×横150mm×厚み2mmのSUS板に試験片を挟んでハンドローラーで圧着した。貼り付け直後及び50℃オーブン中に4ヶ月放置後において剥離速度を50mm/minとし、T型剥離接着強さ試験を行った。
表1に示すとおり、本発明の実施例1〜は、十分な熱膨張倍率と良好な加工性を保持しながら、優れた形状安定性をも具備するものとなっていた。また、針入度が30〜65度、貼り付け直後のT型剥離接着強さが4.5N/25mm以上であって、好適な柔軟性と十分な粘着性を備えるものとなっていた。
さらに、自然加硫性の評価においては、実施例1〜とも、50℃雰囲気下4ヶ月後における加硫度が70%以上となり、T剥離接着強さは、貼り付け直後の5N/25mm程度から35〜49N/25mmへ7倍以上増加していた。これらの数値より実施例1〜にかかる耐火被覆材が、好適な加硫速度と加硫後の固着性を具備することを示すものである。
加えて、燃焼抑制効果の評価においても、実施例1〜とも、難燃剤を特定質量比配合することにより、前記の加工性、形状安定性、柔軟性、粘着性、自然加硫性などの機能に影響を与えることなく、燃焼抑制効果をも著しく改善されていた。
表3は加硫剤および加硫促進剤を添加した後の混練工程(5分間)及びカレンダー成形機にて成形する際の温度を変化させて得た試験片の各特性を示す。実施例及び比較例10は、液状ゴム、ブチルゴム、粘着付与剤、熱膨張性黒鉛、亜リン酸アルミニウム、難燃剤、無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤の配合比率は同じであるが、実施例においては混練工程及び成形工程の温度がそれぞれ100℃、80℃であるのに対して、比較例10においてはともに130℃に設定した。
実施例では、混練・成形工程の温度を100℃以下に維持することで、試験片の加硫度は3%に抑制されるのに対して、比較例10では混練・成形工程の温度を130℃と高く設定したことにより、試験片の加硫が15%にまで進んでいた。比較例10では、このように加硫が進行してしまうことにより、接着性の低下が引き起こされていた。

Claims (13)

  1. 液状ゴム30〜60質量部、ブチルゴム40〜70質量部からなるベースゴム成分と、該ベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部を少なくとも含有する、未加硫の耐火ゴム組成物。
  2. 亜リン酸アルミニウムを1〜50質量部、更に含有することを特徴とする請求項1記載の耐火ゴム組成物。
  3. ツーローター式混練装置を用い80℃にて40回転/分の回転速度で5分間混練し、前記加硫剤及び前記加硫促進剤を添加し、さらに100℃にて前記回転数で5分間混練する混練処理工程ののち、針入度が30〜65度であり、かつ、
    加硫度が5%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐火ゴム組成物。
  4. 前記混練処理後、50℃雰囲気下で120日ののち、加硫度が70%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の耐火ゴム組成物。
  5. 前記難燃剤は、リン化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の耐火ゴム組成物。
  6. 前記リン化合物は、ポリリン酸アンモニウム類であることを特徴とする請求項5記載の耐火ゴム組成物。
  7. 前記ポリリン酸アンモニウム類は、ポリリン酸アンモニウム又はポリリン酸アンモニウムアミドであることを特徴とする請求項6記載の耐火ゴム組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の耐火ゴム組成物から成形した耐火被覆材。
  9. テープ状又はシート状の形状を有することを特徴とする請求項8に記載の耐火被覆材。
  10. 請求項1から7のいずれか一項に記載の耐火ゴム組成物を、60〜100℃にて混練したのち成形する耐火被覆材の製造方法。
  11. 成形温度が混練温度よりも低いことを特徴とする請求項10記載の耐火被覆材の製造方法。
  12. 請求項8又は9記載の耐火被覆材を用いた耐火被覆処理方法。
  13. 前記耐火被覆材を、該耐火被覆材の粘着力によって基材表面に粘着させた後、
    さらに、該耐火被覆材の自然加硫によって基材表面へ固着化させることを特徴とする請求項12記載の耐火被覆処理方法。
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