ところで、上記従来技術では、ダイオードを構成するN導電型コラムやP導電型コラムは多結晶シリコンにて形成されている。こうした多結晶シリコンは、単結晶シリコンとは異なり、粒径の異なる無数の結晶粒から構成される。こうした多結晶シリコンに対して例えばリンやボロン等の不純物をイオン注入で打ち込むことにより導電性を設定すると、打ち込まれたリン原子やボロン原子は結晶粒の界面(粒界)に偏って析出してしまう(偏析)。このように不純物原子が偏析すると、ダイオードを一定の特性で作製することは難しくなり、ダイオードの特性に製造上の大きなばらつきが生じてしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、寄生動作の発生を低減することができ、しかも、特性に係る製造上のばらつきを抑制することのできるダイオード及びその製造方法を提供することにある。
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、互いに当接しつつ交互に配置される第1導電型コラム及び第2導電型コラムを有するコラム層と、前記コラム層の表面に少なくとも2つ形成される電極とを備え、これら電極間に所定の電位差が生じるとき、前記コラム層を介して所定方向に電流が流れるダイオードとして、第1導電型コラム及び第2導電型コラムは、単結晶シリコンにて形成されているとともに、前記コラム層以外の導電性を有する拡散層と電気的に絶縁されていることとした。
ダイオードとしてのこのような構成では、背景技術の欄に記載した従来技術とは異なり、ダイオード(正確にはコラム層)を構成する第1導電型コラムや第2導電型コラムは単結晶シリコンにて形成されている。単結晶シリコンは単一の結晶粒から構成されるため、多結晶シリコンとは異なり、そもそも偏析といった概念がなく、ダイオードを一定の特性で作製することができるようになる。すなわち、ダイオードの特性に係る製造上のばらつきを抑制することができるようになる。
また、ダイオードとしての上記構成では、コラム層を、互いに当接しつつ交互に配置される第1導電型コラム及び第2導電型コラムを有する構造としている。こうした構造では、第1導電型コラムは、電極を除き第2導電型コラムとのみ電気的に接続されることになり、同様に、第2導電型コラムは、電極を除き第1導電型コラムとのみ電気的に接続されることになる。このように、コラム層は当該コラム層以外の導電性を有する拡散層と電気的に絶縁されるため、背景技術の欄に記載した従来技術とは異なり、寄生トランジスタが構成されることがなくなる。そのため、寄生トランジスタが動作することに起因して、ダイオードとしての動作に不具合が生じることも、その結果、集積回路全体が破損されることもなくなる。したがって、寄生動作の発生を低減することができるようになる。
このように、トランジスタとしての上記請求項1に記載の構成によれば、寄生動作の発生を低減することができ、しかも、特性に係る製造上のばらつきを抑制することができるようになる。
また、コラム層の構造として、例えば請求項2に記載の発明のように、前記コラム層は、該コラム層を構成する第1導電型コラム及び第2導電型コラムが単結晶シリコンウエハの一面から該一面と対向する他面まで貫通して構成されていることが望ましい。これにより、コラム層と当該コラム層以外の導電性を有する拡散層との電気的な絶縁を特別に図らなくともそもそも電気的に絶縁された構造となるため、ダイオードを簡素な構造にて実現することができるようになる。さらに、シリコンウエハの一面に平行な方向に電流が流れることになるため、ダイオードとしての体格の大型化を招くことなく、通電電流密度を低下させることができるようにもなる。
もっとも、例えば請求項3に記載の発明のように、前記電極は、第1導電型コラム及び第2導電型コラムが露出する第1面に形成されており、前記コラム層は、第1面と対向する第2面が絶縁膜にて覆われていることとしてもよい。これにより、コラム層と当該コラム層以外の導電性を有する拡散層とを電気的に絶縁することが確実にできるようになる。
なお、上記請求項1〜3に記載の構成において、例えば請求項4に記載の発明のように、前記コラム層は、第1導電型コラム及び第2導電型コラムを1組としてこれらを少なくとも1組有しており、前記電極は、前記コラム層を構成する第1導電型コラムのうち最も端に位置する第1導電型コラムに電気的に接続される第1電極と、前記コラム層を構成する第2導電型コラムのうち最も端に位置する第2導電型コラムに接続される第2電極とを備え、第1電極及び第2電極間に所定の電位差が生じるとき、前記コラム層を介して第1電極及び第2電極間を所定方向に電流が流れる順方向ダイオードとして機能することとしてもよい。
あるいは、上記請求項1〜3に記載の構成において、例えば請求項5に記載の発明のように、前記コラム層は、第1導電型コラム及び第2導電型コラムを1組としてこれらを少なくとも2組有しており、前記電極は、前記コラム層を構成する第1導電型コラムのうち最も端に位置する第1導電型コラムに電気的に接続される第1電極と、前記コラム層を構成する第2導電型コラムのうち最も端に位置する第2導電型コラムに接続される第2電極と、これら第1電極が形成された第1導電型コラム及び第2電極が形成された第2導電型コラムによって挟まれた第1導電型コラム及び第2導電型コラムの双方に電気的に接続される第3電極とを備え、第1電極及び第2電極間に所定の電位差が生じるとき、前記コラム層及び第3電極を介して第1電極及び第2電極間を所定方向に電流が流れる順方向ダイオードとして機能することとしてもよい。
またあるいは、上記請求項1〜3に記載の構成においては、例えば請求項6に記載の発明のように、前記コラム層は、2個の同一の導電型のコラムと、これらコラムに挟まれた少なくとも1個の異なる導電型のコラムとを含む、少なくとも計3個のコラムを有しており、前記電極は、前記同一の導電型のコラムにのみ電気的に接続される2個の第4電極からなり、これら第4電極間に所定の電位が生じるとき、前記コラム層を介して第4電極間を所定方向に電流が流れるツェナーダイオードとして機能することとしてもよい。
一方、上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明では、互いに当接しつつ交互に配置される第1導電型コラム及び第2導電型コラムを有するコラム層を形成するコラム層形成工程と、前記コラム層の表面に少なくとも2つ電極を形成する電極形成工程とを備え、前記電極間に電位差が生じるとき、前記コラム層を介して所定方向に電流を流すダイオードを製造する方法として、前記コラム層形成工程は、単結晶シリコンにて形成された第1導電型のシリコンウエハを準備する準備ステップと、前記シリコンウエハの一面から該一面と対向する他面に向けて前記シリコンウエハを貫通しない所定の深さの溝を形成する深溝加工ステップと、前記溝の底面を含む前記シリコンウエハの一面に単結晶シリコンにて第2導電型のエピタキシャル層を堆積形成するエピタキシャル層形成ステップと、前記シリコンウエハの一面が露出するように前記エピタキシャル層を除去する第1除去ステップと、前記溝に堆積された前記エピタキシャル層が露出するように前記シリコンウエハの前記一面と対向する他面側を除去する第2除去ステップとを備えることとした。
ダイオードの製造方法としての上記方法によれば、上記請求項1及び上記請求項2に記載のダイオードを製造することができるようになる。なお、この方法によって製造されるダイオードの作用効果については、上記請求項1及び2において既に説明しているため、ここでの重複する説明を割愛する。
なお、上記請求項7に記載の方法において、例えば請求項8に記載の発明のように、第1除去ステップは、前記シリコンウエハの一面が露出するまで前記エピタキシャル層を研磨することとしてもよい。同様に、上記請求項7または8に記載の方法において、例えば請求項9に記載の発明のように、第2除去ステップは、前記溝に堆積された前記エピタキシャル層が露出するまで前記シリコンウエハの他面側から該シリコンウエハを研磨することとしてもよい。これにより、既存の半導体プロセスを使用して上記コラム層を形成することができるようになる。
他方、上記目的を達成するため、請求項10に記載の発明では、互いに当接しつつ交互に配置される第1導電型コラム及び第2導電型コラムを有するコラム層を形成するコラム層形成工程と、前記コラム層の表面に少なくとも2つ電極を形成する電極形成工程とを備え、前記電極間に電位差が生じるとき、前記コラム層を介して所定方向に電流を流すダイオードを製造する方法として、前記コラム層形成工程は、単結晶シリコンにて形成された第1導電型のシリコンウエハを準備する準備ステップと、前記シリコンウエハの一面と対向する他面に所定の膜厚にて第1酸化膜を形成する第1酸化膜形成ステップと、前記シリコンウエハを貫通して第1酸化膜を露出させる溝を形成する深溝加工ステップと、露出した第1酸化膜の一面を含む前記シリコンウエハの一面に単結晶シリコンにて第2導電型のエピタキシャル層を堆積形成するエピタキシャル層形成ステップと、前記シリコンウエハの一面が露出するように前記エピタキシャル層を除去する第3除去ステップとを備えることとした。
ダイオードの製造方法としての上記方法によれば、上記請求項3に記載のダイオードを製造することができるようになる。なお、こうした方法によって製造されたダイオードの作用効果については、上記請求項3において既に説明しているため、ここでの重複する説明を割愛する。
また、ダイオードの製造方法としての上記方法では、第1酸化膜形成ステップによって、通常厚さが均一であるシリコンウエハの他面に所定の膜厚にて第1酸化膜を予め形成しておき、深溝加工ステップによって、シリコンウエハを貫通して第1酸化膜を露出させる溝を形成する。そのため、深溝加工ステップにおける溝加工の終点が一定となるため、溝の深さを均一にすることができるようになる。換言すれば、第1導電型コラム及び第2導電型コラムを同一の高さにて形成することができるようになり、ひいては、ダイオードの特性に係る製造上のばらつきをより低減することができるようになる。
なお、上記請求項10に記載の方法において、例えば請求項11に記載の発明のように、第3除去ステップは、前記シリコンウエハの一面が露出するまで前記エピタキシャル層を研磨することとしてもよい。これにより、既存の半導体プロセスを使用して上記コラム層を形成することができるようになる。
シリコンウエハ(コラム層)の他面に第1酸化膜を残しておいてもよいが、例えば請求項12に記載の発明のように、前記コラム層形成工程は、第1酸化膜を除去する第4除去ステップをさらに備えることとしてもよい。これにより、第1酸化膜を除去することができ、上記請求項1または2に記載のダイオードを製造することができるようになる。
ちなみに、そうした第4除去ステップとしては、公知のエッチングを採用し、第1酸化膜を除去することとしてもよく、他に例えば請求項13に記載の発明のように、第1酸化膜の一面側に水素イオンを注入して水素注入層を形成した後、所定の熱処理にて、第1酸化膜と共々前記水素注入層を前記シリコンウエハから剥離させるスマートカット法を採用してもよい。これにより、第1酸化膜を除去することができるようになる。また、第1酸化膜の厚さによっては、エッチングにて第1酸化膜を除去するよりも、スマートカット法にて第1酸化膜を除去する方が第4除去ステップを実行する時間を短縮することができるようになる。すなわち、ダイオードの製造効率の向上を図ることができるようになる。
また他方、上記目的を達成するため、請求項14に記載の発明では、互いに当接しつつ交互に配置される第1導電型コラム及び第2導電型コラムを有するコラム層を形成するコラム層形成工程と、前記コラム層の表面に少なくとも2つ電極を形成する電極形成工程とを備え、前記電極間に電位差が生じるとき、前記コラム層を介して所定方向に電流を流すダイオードを製造する方法として、前記コラム層形成工程は、単結晶シリコンにて形成された第1導電型の半導体層と支持層との間に埋め込み酸化膜を有するSOIウエハを準備する準備ステップと、前記SOIウエハの前記半導体層を貫通して前記埋め込み酸化膜を露出させる溝を形成する深溝加工ステップと、露出した埋め込み酸化膜の一面を含む前記SOIウエハの一面に単結晶シリコンにて第2導電型のエピタキシャル層を堆積形成するエピタキシャル層形成ステップと、前記半導体層の一面が露出するように前記エピタキシャル層を除去する第5除去ステップとを備えることとした。
ダイオードの製造方法としての上記方法によれば、上記請求項3に記載のダイオードを製造することができるようになる。なお、こうした方法によって製造されたダイオードの作用効果については、上記請求項3において既に説明しているため、ここでの重複する説明を割愛する。
また、準備ステップによって準備されたSOIウエハは、通常厚さが均一の半導体層、埋め込み酸化膜及び半導体層を有しており、深溝加工ステップによって、SOIウエハの半導体層を貫通して埋め込み酸化膜を露出させる溝を形成する。そのため、上記請求項9に記載の方法と同様に、溝加工ステップにおける溝加工の終点が一定となるため、形成された溝の深さを均一にすることができるようになる。換言すれば、第1導電型コラム及び第2導電型コラムを同一の高さにて形成することができるようになり、ひいては、ダイオードの特性に係る製造上のばらつきをより低減することができるようになる。
なお、上記請求項14に記載の方法において、例えば請求項15に記載の発明のように、第5除去ステップは、前記半導体層の一面が露出するまで前記エピタキシャル層を研磨することとしてもよい。これにより、既存の半導体プロセスを使用して上記コラム層を形成することができるようになる。
シリコンウエハ(コラム層)の他面に支持層及び埋め込み酸化膜を残しておいてもよいが、例えば請求項16に記載の発明のように、前記コラム層形成工程は前記支持層を除去する第6除去ステップをさらに備えることとしてもよい。これにより、支持層を除去することができるようになる。また、例えば請求項17に記載の発明のように、第6除去ステップは、前記支持層だけでなく前記埋め込み酸化膜も除去するものであることとしてもよい。これにより、埋め込み酸化膜も除去することができるようになる。したがって、上記請求項17に記載の方法によれば、上記請求項1あるいは2に記載のダイオードを製造することができるようになる。
ちなみに、そうした第6除去ステップとしては、公知のエッチングを採用し、支持層及び埋め込み酸化膜を除去することとしてもよく、他に例えば請求項17に記載の発明のように、埋め込み酸化膜の一面側に水素イオンを注入して水素注入層を形成した後、所定の熱処理にて、埋め込み酸化膜と共々前記水素注入層を前記SOIウエハから剥離させるスマートカット法を採用し、支持層及び埋め込み酸化膜を除去することとしてもよい。支持層及び埋め込み酸化膜の厚さによっては、エッチングにてこれら支持層及び埋め込み酸化膜を除去するよりも、スマートカット法にて支持層及び埋め込み酸化膜を除去する方が第6除去ステップを実行する時間を短縮することができるようになる。すなわち、ダイオードの製造効率の向上を図ることができるようになる。
さらに、上記目的を達成するため、請求項19に記載の発明では、互いに当接しつつ交互に配置される第1導電型コラム及び第2導電型コラムを有するコラム層を形成するコラム層形成工程と、前記コラム層の表面に少なくとも2つ電極を形成する電極形成工程とを備え、前記電極間に電位差が生じるとき、前記コラム層を介して所定方向にのみ電流を流すダイオードを製造する方法として、前記コラム層形成工程は、シリコンウエハを準備する準備ステップと、前記シリコンウエハの一面に所定の膜厚にて第2酸化膜を形成する第2酸化膜形成ステップと、露出した第2酸化膜の一面に多結晶シリコンにて第2エピタキシャル層を堆積形成する第2エピタキシャル層形成ステップと、第2エピタキシャル層にレーザ光を照射して加熱することで、多結晶シリコンを再結晶化して単結晶にする単結晶化ステップと、単結晶化された第2エピタキシャル層に所定のイオンを注入することで、第2エピタキシャル層に第1導電型コラムと第2導電型コラムを構成するイオン注入ステップとを備えることとした。
ダイオードの製造方法としての上記方法によれば、上記請求項3に記載のダイオードを製造することができるようになる。なお、こうした方法によって製造されるダイオードの作用効果については、上記請求項3において既に説明しているため、ここでの重複する説明を割愛する。
コラム層の他面に第2酸化膜及びシリコンウエハを残しておいてもよいが、例えば請求項20に記載の発明のように、前記コラム層形成工程は、前記シリコンウエハを除去する第7除去ステップをさらに備えることとしてもよい。これにより、シリコンウエハを除去することができるようになる。また、例えば請求項21に記載の発明のように、第7除去ステップは、前記シリコンウエハだけでなく第2酸化膜も除去するものであることとしてもよい。これにより第2酸化膜も除去することができるようになる。したがって、上記請求項1及び2に記載のダイオードを製造することができるようになる。
ちなみに、そうした第7除去ステップとしては、公知の研磨やエッチングを採用し、シリコンウエハや第2酸化膜を除去することとしてもよく、他に例えば請求項22に記載の発明のように、第2酸化膜の一面側に水素イオンを注入して水素注入層を形成した後、所定の熱処理にて、第2酸化膜と共々前記水素注入層を前記コラム層から剥離させるスマートカット法を採用し、シリコンウエハや第2酸化膜を除去することとしてもよい。シリコンウエハ及び第2酸化膜の厚さによっては、研磨やエッチングにてこれらシリコンウエハ及び第2酸化膜を除去するよりも、スマートカット法にてシリコンウエハ及び第2酸化膜を除去する方が第7除去ステップを実行する時間を短縮することができるようになる。すなわち、ダイオードの製造効率の向上を図ることができるようになる。
以下、本発明に係るダイオードの一実施の形態について図1を参照しつつ説明する。なお、図1(a)は、本実施の形態のダイオードについてその平面構造を示す平面図であり、図1(b)は、本実施の形態のダイオードについてその側面構造を示す側面断面図である。また、本実施の形態のダイオードは、順方向ダイオードとして具体化されている。
はじめに、図1を参照して本実施の形態の構成について説明する。図1(a)及び(b)に示されるように、本実施の形態のダイオード1は、単結晶シリコンにて形成されたコラム層10を備える。ここで、コラム層10は、略同一の高さ、略同一の幅及び略同一の奥行きを有する直方体状に形成された、P導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC4を例えば「4組」有している。ちなみに、P導電型コラムPC1〜PC4は例えばイオン注入等を通じて高濃度のP導電型に設定されており、同様に、N導電型コラムNC1〜NC4も例えばイオン注入等を通じて高濃度のN導電型に設定されている。
そして、これらP導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC4は、図1(a)及び(b)において左方から右方へ、「P導電型コラムPC1→N導電型コラムNC1→・・・→P導電型コラムPC4→N導電型コラムNC4」といった態様で側面同士を互いに当接させながら交互に配置されている。このように側面同士を互いに当接しているため、例えばP導電型コラムPC1の方がN導電型コラムNC1よりも高電位となる電位差がこれらコラムPC1及びNC1間に生じると、P導電型コラムPC1からN導電型コラムNC1へ当接面を介して電流が流れることになる。一方、例えばN導電型コラムNC1方がP導電型コラムPC2よりも高電位となる電位差がこれらコラムNC1及びPC2間に生じたとしても、基本的には、N導電型コラムNC1からP導電型コラムPC2へ当接面を介して電流は流れない。当接面を介して電流が流れるか否かについては、当該ダイオード1を構成する他のコラムにおいても同様である。
また、コラム層10(このコラム層10を構成するP導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC4)は、基本的に、単結晶シリコンウエハを用いて形成されている。なお、当該ダイオード1の製造方法については後述する。したがって、既述したコラム構造は、換言すれば、コラムPC1〜NC4がコラム層10の表面(一面)S1から該表面S1と対向する裏面(他面)S2までシリコンウエハを貫通した構造となっている。こうした貫通構造を有するため、コラムPC1〜NC4は、コラム層10以外の導電性を有する拡散層と電気的に接続されない、絶縁された構造となる。
なお、本実施の形態では、例えば「4組」のP導電型コラム及びN導電型コラムにてコラム層を構成していたが、組数については任意であり、コラム層は少なくとも「1組」のP導電型コラム及びN導電型コラムを有していればよい。ただし、コラム層が「1組」の場合にあっては、第3電極E31〜E33は割愛された構成となる。
一方、本実施の形態のダイオード1は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料にて略直方体状に形成される電極E1及びE2並びにE31〜E33を備える。詳しくは、図1(a)及び(b)に示されるように、(第1)電極E1は、コラム層10を構成するP導電型コラムPC1〜PC4のうち最も左端に位置するP導電型コラムPC1の表面S1上に形成されており、このP導電型コラムPC1と電気的に接続されている。同様に、(第2)電極E2は、コラム層10を構成するN導電型コラムNC1〜NC4のうちの最も右端に位置するN導電型コラムNC4の表面S1上に形成されており、このN導電型コラムNC4と電気的に接続されている。ちなみに、電極E1は、本実施の形態のダイオード1のアノード電極として機能する一方、電極E2は、本実施の形態のダイオード1のカソード電極として機能する。
また、電極E1が形成されたP導電型コラムPC1と電極E2が形成されたN導電型コラムNC4によって挟まれた、第1導電型コラムPC2〜PC4及びN導電型コラムNC3〜NC1の表面S1には(第3)電極E31〜E33が形成されている。詳しくは、電極E31は、N導電型コラムNC1の表面S1及びP導電型コラムPC2の表面S1の双方に接触するように形成され、同様に、電極E32は、N導電型コラムNC2の表面S1及びP導電型コラムPC3の表面S1の双方に接触するように形成される。さらに、電極E33は、N導電型コラムNC3の表面S1及びP導電型コラムPC4の表面S1の双方に接触するように形成されている。こうした電極E31〜E33により、N導電型コラムNC1及びP導電型コラムPC2間、N導電型コラムNC2及びP導電型コラムPC3間、並びに、N導電型コラムNC3及びP導電型コラムPC4間は電気的に接続されている。
以上のように構成されたダイオード1において、電極E1における電位の方が電極E2における電位よりも高電位となるように電極E1及びE2間に電圧が印加された(順方向バイアスがかけられた)とする。このとき、電極E1及びE2間には、「電極E1→P導電型コラムPC1→N導電型コラムNC1→電極E31→P導電型コラムPC2→N導電型コラムNC2→電極E32→P導電型コラムPC3→N導電型コラムNC3→電極E33→N導電型コラムNC4→N導電型コラムNC4→電極E2」といった経路にて電流が流れるようになる。一方、電極E1における電位の方が電極E2における電位よりも低電位となるように電極E1及びE2間に電圧が印加された(逆方向バイアスがかけられた)とする。このとき、電極E1及びE2間には基本的に電流が流れない。このようにして、電極E1及びE2間に所定の電位差が生じるとき、コラム層10を介して所定方向に電流が流れるダイオードとして機能することになる。
本実施の形態では、コラム層10(ダイオード1)を構成するP導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC4を単結晶シリコンにて形成することとした。課題の欄でも記載したように、多結晶シリコンは、単結晶シリコンとは異なり、粒径の異なる無数の結晶粒から構成される。こうした多結晶シリコンに対して例えばリンやボロン等の不純物をイオン注入で打ち込むことにより導電性を設定すると、打ち込まれたリン原子やボロン原子は結晶粒の界面(粒界)に偏って析出する(偏析)。そして不純物原子が偏析すると、ダイオードを一定の特性で作製することが難しくなり、ダイオードの特性に製造上の大きなばらつきが生じることとなる。しかしながら、本実施の形態では、コラムPC1〜NC4は単結晶にて形成されるため、ダイオードの特性がばらつく原因である偏析自体がそもそも生じない。したがって、本実施の形態のダイオード1は、一定の特性にて作製されるようになり、ダイオード1の特性に係る製造上のばらつきが抑制されるようになる。
また、本実施の形態では、コラム層10は、互いに当接しつつ交互に配置されるP導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC4を有することとした。換言すれば、コラム層10は、このコラム層10を構成するP導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC4が単結晶シリコンウエハの表面S1から裏面S2まで貫通して構成されていることとした。こうした構造では、P導電型コラムPC1〜PC4はそれぞれ、電極E1及び電極E31〜E33を除き、N導電型コラムNC1〜NC4とのみ電気的に接続されることになる。同様に、N導電型コラムNC1〜NC4はそれぞれ、電極E2及び電極E31〜E33を除き、P導電型コラムPC1〜PC4とのみ電気的に接続されることになる。このように、コラム層10は当該コラム層10以外の導電性を有する拡散層と電気的に絶縁されるため、背景技術の欄に記載した従来技術とは異なり、寄生トランジスタが構成されることがなくなる。そのため、寄生トランジスタが動作することに起因して、ダイオードとしての動作に不具合が生じることも、その結果、集積回路全体が破損されることもなくなる。したがって、寄生動作の発生を低減することができるようになる。
また、本実施の形態では、コラム層10と当該コラム層10以外の導電性を有する拡散層との電気的な絶縁を特別に図らなくともそもそも電気的に絶縁された構造となるため、ダイオード1は、簡素な構造にて実現されている。さらに、コラム層10の表面S1に平行な方向に電流が流れることになるため、ダイオード1としての体格の大型化を招くことなく、通電電流密度を低下させることができるようにもなる。
なお、本発明に係るダイオードは、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
上記実施の形態では、本発明に係るダイオードを順方向ダイオード1として具体化していたがこれに限らない。他に例えば、先の図1(a)及び(b)に対応する図として図2(a)及び(b)に示すように、本発明に係るダイオードをツェナーダイオード1aとして具体化することとしてもよい。この場合にあっては、図2(a)及び(b)に示すように、ダイオード1aは、略同一の高さ、略同一の幅及び略同一の奥行きを有する直方体状に形成された、P導電型コラムPC1〜PC4及びN導電型コラムNC1〜NC5を有し、単結晶シリコンにて形成されたコラム層10aを備える。また、ダイオード1aは、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料にて略直方体状に形成される(第4)電極E41及びE42を備える。電極E41は、N導電型コラムNC1の表面S1上に形成されており、このN導電型コラムNC1と電気的に接続されている。同様に、電極E42は、N導電型コラムNC5の表面S1上に形成されており、このN導電型コラムNC5と電気的に接続されている。
このように構成されたダイオード1aにおいて、電極E41及びE42間に所定の電位差をもって電圧が印加されるとき、このとき、電極E41及びE42間には、「電極E41→N導電型コラムNC1→P導電型コラムPC1→N導電型コラムNC2→P導電型コラムPC2→N導電型コラムNC3→P導電型コラムPC3→N導電型コラムNC4→P導電型コラムPC4→N導電型コラムNC5→電極E42」といった経路、あるいは逆に、「電極E42→N導電型コラムNC5→P導電型コラムPC4→N導電型コラムNC4→P導電型コラムPC3→N導電型コラムNC3→P導電型コラムPC2→N導電型コラムNC2→P導電型コラムPC1→N導電型コラムNC1→電極E41」といった経路にて電流が流れるようになる。すなわち、電極E41及びE42間に所定の電位差が生じるとき、コラム層10aを介して所定方向に電流が流れるツェナーダイオードとして機能することになる。
上記実施の形態(変形例を含む)では、コラム構造を採用したため、コラム層と当該コラム層以外の導電性を有する拡散層との電気的な絶縁を特別に図らなくともそもそも絶縁された構造となり、簡素な構造にてダイオード1及び1aを実現することが可能であった。しかしながら、ダイオード1及び1aとしてはこうした構造に限らず、コラム層10及び10aの裏面S2に例えば酸化膜などの絶縁膜を所定膜厚にて形成することとしてもよい。これにより、コラム層と当該コラム層以外の導電性を有する拡散層とを電気的に絶縁することが確実にできるようになる。
(第1の実施の形態)
次に、本発明に係るダイオードの製造方法の第1の実施の形態について、図3を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、先の図1に示したダイオード1を製造する方法として具体化されている。本実施の形態の製造方法は、基本的に、上記コラム層10を形成するコラム層形成工程と、上記電極E1〜E33を形成する電極形成工程とを備えており、図3(a)〜(d)は、そうしたコラム層形成工程を構成する各ステップにおける側面構造を示す側面断面図であり、図3(e)は、電極形成工程における側面構造を示す側面断面図である。
はじめに、図3(a)〜(d)を参照しつつコラム形成工程について説明する。図3(a)に示すように、ダイオード1を製造するに際しては、まず、準備ステップとして、例えば予め高濃度のP導電型に設定された、単結晶シリコンから構成されるシリコンウエハ100を準備する。
シリコンウエハ100を準備すると、次に、深溝加工ステップを実行する。深溝加工ステップにおいては、図3(b)に示すように、例えば公知のドライエッチング等を通じて、シリコンウエハ100の表面S1から裏面S2に向けて、該シリコンウエハ100を貫通しない所定の深さの溝を例えば「8本」形成する。こうして形成された溝D11〜D18は、図3(b)に示すように、シリコンウエハ100の表面S1においてそれぞれ開口し、各底面は雰囲気に露出する。なお、溝D11〜D18は、その各底面が各開口部と平面視略同一の矩形状に形成され、溝D11〜D18は略直方体状の深溝となる。また、本実施の形態では溝を例えば「8本」形成することとしたが、本数については「8本」に限らず任意である。
溝D11〜D18を形成すると、次に、エピタキシャル層形成ステップを実行する。エピタキシャル層形成ステップにおいては、図3(c)に示すように、例えば公知のエピタキシ法を通じて、溝D11〜D18の底面を含むシリコンウエハ100の表面S1にエピタキシャル層110を高濃度のN導電型にて堆積形成する。通常、エピタキシ法にて堆積形成されるエピタキシャル層は、堆積形成される箇所の結晶構造を引き継ぐ。そのため、堆積形成されたエピタキシャル層110は、シリコンウエハ100の結晶構造と同一の単結晶構造を有するシリコンにて堆積形成されることになる。なお、エピタキシャル層形成ステップでは、溝D11〜D18の底面を含むシリコンウエハ100の表面S1の全面に対してシリコン原子を一律に堆積させ、堆積させる時間を管理することによってそうした堆積量(すなわり層厚)を制御する。そのため、形成箇所の凹凸に起因して、エピタキシャル層110の上表面には凹凸が形成されるはずである。しかしながら、図3(c)においては、図示の便宜上、エピタキシャル層110の上表面を平坦面としている。
エピタキシャル層110を形成すると、次に、第1除去ステップを実行する。第1除去ステップにおいては、図3(d)に示すように、例えば研磨布を用いた機械研磨等を通じて、シリコンウエハ100の表面S1が露出するように、エピタキシャル層110の上表面側から該エピタキシャル層110を研磨する。なお、研磨布を用いた機械研磨については公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛する。また、第1除去ステップにおいては、機械研磨を採用してエピタキシャル層110を除去することとしたが、機械研磨に限らず、いわゆるCMP(化学的機械的研磨)等を採用してエピタキシャル層110を除去することとしてもよい。要は、シリコンウエハ100の表面S1が露出するようにエピタキシャル層110を除去することができれば、その除去方法については任意である。
第1除去ステップを実行すると、次に、第2除去ステップを実行する。第2除去ステップにおいても、先の第1除去ステップと同様に、例えば研磨布を用いた機械研磨等を通じて、溝D11〜D18に堆積形成されたエピタキシャル層110の裏面S3が露出するまでシリコンウエハ100の裏面S2側から該シリコンウエハ100を研磨する。なお、既述したように、研磨布を用いた機械研磨については公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛する。また、第2除去ステップにおいては、機械研磨を採用してシリコンウエハ100を除去することとしたが、機械研磨に限らず、いわゆるCMP(化学的機械的研磨)等を採用してシリコンウエハ100を除去することとしてもよい。要は、溝D11〜D18に堆積形成されたエピタキシャル層110の裏面S3が露出するようにシリコンウエハ100を除去することができれば、その除去方法については任意である。
こうして第1除去ステップ及び第2除去ステップを終えると、次に、電極形成工程を実行する。電極形成工程では、図3(e)に示すように、例えば公知のCVD(化学気相成長)やエッチング等を通じて、コラム層10の表面S1の所定位置に電極を例えば「9個」形成する。なお、こうした電極の数については「9個」に限らず、コラム数に応じて任意である。また、こうした電極を形成する位置や機能等については既述しているため、ここでの重複する説明を割愛する。このようにして電極を形成すると、先の図1に示すダイオード1が製造されることになる。
以上説明したダイオードの製造方法によれば、先の図1に示したダイオード1を製造することができるようになる。なお、この製法を通じて製造されたダイオード1についての作用効果は既述しているため、ここでの重複する記載を割愛する。
上記実施の形態では、先の図1に示した順方向ダイオードであるダイオード1を製造していたが、製造することのできるダイオードは順方向ダイオードに限らない。本実施の形態によれば、順方向ダイオードだけでなく、先の図2に示したツェナーダイオードであるダイオード1aを同様に製造することもできる。
また、上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1に示す順方向ダイオードであるダイオード1あるいは先の図2に示すツェナーダイオードであるダイオード1aを製造することとしたが、これに限らない。コラム層10あるいは10aの裏面S2に例えば酸化膜などの絶縁膜を所定膜厚にて形成する絶縁膜形成ステップをさらに備えたコラム層形成工程としてもよい。これにより、コラム層と当該コラム層以外の導電性を有する拡散層とが確実に電気的に絶縁されたダイオードを製造することができるようになる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係るダイオードの製造方法の第2の実施の形態について、図4、図5及び図10を参照しつつ説明する。なお、図4(a)〜(d)並びに図5(a)及び(b)は、コラム層形成工程を構成する各ステップにおける側面構造を示す側面断面図であり、図5(c)は、電極形成工程における側面構造を示す側面断面図である。これら図4及び図5に示されるように、本実施の形態も、先の第1の実施の形態の製造方法に準じた製造方法となっている。そのため、以下、重複する説明についてを割愛する。
本実施の形態では、ダイオード1を製造するにあたり、まず、図4(a)に示すように、準備ステップ(先の図3(a)参照)を実行し、次に、図4(b)に示すように、第1酸化膜形成ステップを実行する。詳しくは、第1酸化膜形成ステップでは、例えばCVD(化学気相成長)を通じて、シリコンウエハ100の裏面S2全面に所定の膜厚にてシリコン酸化膜(SiO2)120を形成する。なお、こうした第1酸化膜形成ステップでは、シリコン酸化膜120を形成するにあたり例えばCVDを採用したが、これに限らず、他に例えば熱酸化等を採用することとしてもよい。要は、シリコンウエハ100の裏面S2全面に所定の膜厚にて絶縁膜を形成することができれば、その形成方法については任意である。
シリコン酸化膜120を形成すると、次に、深溝加工ステップを実行する。深溝加工ステップでは、図4(c)に示すように、例えば公知のドライエッチング等を通じて、シリコンウエハ100を貫通してシリコン酸化膜120の表面S4を露出させる溝D21〜D28を形成する。なお、こうした深溝加工ステップでは、溝D21〜D28を形成するにあたり例えばドライエッチング等を採用したが、これに限らない。要は、シリコンウエハ100を貫通してシリコン酸化膜120の表面S4を露出させる溝を形成することができれば、その形成方法については任意である。
溝D21〜D28を形成すると、次に、エピタキシャル層形成ステップを実行する。エピタキシャル層形成ステップにおいては、図4(d)に示すように、例えば公知のエピタキシ法を通じて、溝D21〜D28の底面を含むシリコンウエハ100の表面S1にエピタキシャル層110を高濃度のN導電型にて堆積形成する。
エピタキシャル層110を形成すると、次に、第3除去ステップを実行する。第3除去ステップにおいては、図5(a)に示すように、例えば研磨布を用いた機械研磨等を通じて、シリコンウエハ100の表面S1が露出するように、エピタキシャル層110の上表面側から該エピタキシャル層110を研磨する。なお、この第3除去ステップについては、上記第1除去ステップ(図3(d)参照)に準じているため、ここでの重複する説明を割愛する。
第3除去ステップを実行すると、次に、第4除去ステップを実行する。第4除去ステップにおいては、図5(b)に示すように、例えばエッチング等を通じて、シリコンウエハ100の裏面S2側に形成されたシリコン酸化膜120を除去する。なお、エッチングについては公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛する。また、第4除去ステップにおいては、エッチングを採用してシリコン酸化膜120を除去することとしたが、エッチングに限らない。他に例えば、図5(b)に対応する図として図10(a)に示すように、第4除去ステップとして、シリコン酸化膜120の表面S4側に水素イオンを注入して水素注入層100dを形成した後、所定の熱処理にて、シリコン酸化膜120と共々、水素注入層100dをシリコンウエハ100から剥離させる、いわゆるスマートカット法等を採用して、シリコン酸化膜120を除去することとしてもよい。シリコン酸化膜120の厚さによっては、エッチングにてシリコン酸化膜120を除去するよりも、スマートカット法にてシリコン酸化膜120を除去する方が第4除去ステップを実行する時間を短縮することができるようになり、ダイオードの製造効率の向上を図ることができるようになる。要は、シリコンウエハ100の裏面S2が露出するようにシリコン酸化膜120を除去することができれば、その除去方法については任意である。
こうして第4除去ステップを終えると、次に、電極形成工程を実行する。電極形成工程では、図5(c)に示すように、例えば公知のCVD(化学気相成長)やエッチング等を通じて、コラム層10の表面S1の所定位置に電極を例えば「9個」形成する。なお、この電極形成工程については、上記電極形成工程(図3(e)参照)に準じているため、ここでの重複する説明を割愛する。
以上説明したダイオードの製造方法によれば、先の図1に示したダイオード1を製造することができるようになる。なお、この製法を通じて製造されたダイオード1についての作用効果は既述しているため、ここでの重複する記載を割愛する。
また、本実施の形態のダイオードの製造方法によれば、第1酸化膜形成ステップによって、通常厚さが均一であるシリコンウエハ100の裏面S2に所定の膜厚にてシリコン酸化膜120を予め形成しておき、深溝加工ステップによって、シリコンウエハ100を貫通してシリコン酸化膜120を露出させる溝を形成する。そのため、深溝加工ステップにおける溝加工の終点が一定となるため、溝の深さを均一にすることができるようになる。換言すれば、P導電型コラム及びN導電型コラムを同一の高さにて形成することができるようになり、ひいては、ダイオードの特性に係る製造上のばらつきをより低減することができるようになる。
上記実施の形態では、先の図1に示した順方向ダイオードであるダイオード1を製造していたが、製造することのできるダイオードは順方向ダイオードに限らない。本実施の形態によれば、順方向ダイオードだけでなく、先の図2に示したツェナーダイオードであるダイオード1aを同様に製造することもできる。
また、上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1に示す順方向ダイオードであるダイオード1あるいは先の図2に示すツェナーダイオードであるダイオード1aを製造することとしたが、これに限らない。シリコンウエハ100の裏面S2に例えば酸化膜などの絶縁膜を所定膜厚にて形成する絶縁膜形成ステップをさらに備えたコラム層形成工程としてもよい。あるいは、コラム層形成工程の第4除去ステップを割愛することとしてもよい。これにより、シリコンウエハ100(すなわちコラム層10あるいは10a)の裏面S2にシリコン酸化膜120等の絶縁膜が所定膜厚にて形成された順方向ダイオードあるいはツェナーダイオードを形成することができるようになる。ちなみに、こうしたダイオードでは、コラム層は当該コラム層以外の導電性を有する拡散層と確実に電気的に絶縁されている。
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係るダイオードの製造方法の第3の実施の形態について、図6及び図7並びに図10を参照しつつ説明する。なお、図6(a)〜(c)並びに図7(a)及び(c)は、コラム層形成工程を構成する各ステップにおける側面構造を示す側面断面図であり、図7(c)は、電極形成工程における側面構造を示す側面断面図である。これら図6及び図7に示されるように、本実施の形態も、先の第2の実施の形態の製造方法に準じた製造方法となっている。そのため、以下、重複する説明についてを割愛する。
本実施の形態では、ダイオード1を製造するにあたり、まず、図6(a)に示すように、準備ステップとして、例えば予め高濃度のP導電型に設定された、単結晶シリコンから構成される半導体層101aと支持層101cとの間に埋め込み酸化膜101bを有するSOIウエハ101を準備する。
SOIウエハ101を準備すると、次に、深溝加工ステップを実行する。深溝加工ステップにおいては、図6(b)に示すように、例えば公知のドライエッチング等を通じて、SOIウエハ101の半導体層101aを貫通して埋め込み酸化膜101bの表面S41を露出させる溝を例えば「8本」形成する。こうして形成された溝D31〜D38は、図6(b)に示すように、SOIウエハ101の表面S11においてそれぞれ開口し、各底面は雰囲気に露出する。なお、溝D31〜D38は、その各底面が各開口部と平面視略同一の矩形状に形成され、溝D31〜D38は略直方体状の深溝となる。また、本実施の形態では溝を例えば「8本」形成することとしたが、本数については「8本」に限らず任意である。さらに、こうした深溝加工ステップでは、溝D31〜D38を形成するにあたり例えばドライエッチング等を採用したが、これに限らない。要は、SOIウエハ101の半導体層101aを貫通して埋め込み酸化膜101bの表面S41を露出させる溝を形成することができれば、その形成方法については任意である。
溝D31〜D38を形成すると、次に、エピタキシャル層形成ステップを実行する。エピタキシャル層形成ステップにおいては、図6(c)に示すように、例えば公知のエピタキシ法を通じて、溝D31〜D38の底面を含むSOIウエハ101の表面S11にエピタキシャル層110を高濃度のN導電型にて堆積形成する。
エピタキシャル層110を形成すると、次に、第5除去ステップを実行する。第5除去ステップにおいては、図7(a)に示すように、例えば研磨布を用いた機械研磨等を通じて、SOIウエハ101の表面S11が露出するように、エピタキシャル層110の上表面側から該エピタキシャル層110を研磨する。なお、この第5除去ステップについては、上記第1及び第3除去ステップ(図3(d)及び図5(a)参照)に準じているため、ここでの重複する説明を割愛する。
第5除去ステップを実行すると、次に、第6除去ステップを実行する。第6除去ステップにおいては、図7(b)に示すように、例えばエッチング等を通じて、支持層101c及び埋め込み酸化膜101bを除去する。なお、エッチングについては公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛する。
また、第6除去ステップにおいては、エッチングを採用して支持層101c及び埋め込み酸化膜101bを除去することとしたが、エッチングに限らない。他に例えば、図7(b)に対応する図として図10(b)に示すように、第6除去ステップとして、埋め込み酸化膜101bの表面S41側に水素イオンを注入して水素注入層101dを形成した後、所定の熱処理にて、支持層101c及び埋め込み酸化膜101bと共々、水素注入層101dを半導体層101aから剥離させる、いわゆるスマートカット法等を採用して、支持層101c及び埋め込み酸化膜101bを除去することとしてもよい。支持層101c及び埋め込み酸化膜101bの厚さによっては、エッチングにてこれら支持層101c及び埋め込み酸化膜101bを除去するよりも、スマートカット法にて支持層101c及び埋め込み酸化膜101bを除去する方が第6除去ステップを実行する時間を短縮することができるようになり、ダイオードの製造効率の向上を図ることができるようになる。要は、SOIウエハ101の裏面S21が露出するように支持層101c及び埋め込み酸化膜101bを除去することができれば、その除去方法については任意である。
こうして第4除去ステップを終えると、次に、電極形成工程を実行する。電極形成工程では、図7(c)に示すように、例えば公知のCVD(化学気相成長)やエッチング等を通じて、半導体層101a(コラム層)の表面S11の所定位置に電極を例えば「9個」形成する。なお、この電極形成工程については、上記電極形成工程(図3(e)及び図5(c)参照)に準じているため、ここでの重複する説明を割愛する。
以上説明したダイオードの製造方法によれば、先の図1に示したダイオード1を製造することができるようになる。なお、この製法を通じて製造されたダイオード1についての作用効果は既述しているため、ここでの重複する記載を割愛する。
また、本実施の形態のダイオードの製造方法によれば、準備ステップによって準備されたSOIウエハ101は、通常厚さが均一の半導体層101a、埋め込み酸化膜101b及び支持層101cを有しており、深溝加工ステップによって、SOIウエハ101の半導体層101aを貫通して埋め込み酸化膜101bを露出させる溝を形成する。そのため、溝加工ステップにおける溝加工の終点が一定となるため、形成された溝D31〜D38の深さを均一にすることができるようになる。換言すれば、P導電型コラム及びN導電型コラムを同一の高さにて形成することができるようになり、ひいては、ダイオードの特性に係る製造上のばらつきをより低減することができるようになる。
上記実施の形態では、先の図1に示した順方向ダイオードであるダイオード1を製造していたが、製造することのできるダイオードは順方向ダイオードに限らない。本実施の形態によれば、順方向ダイオードだけでなく、先の図2に示したツェナーダイオードであるダイオード1aを同様に製造することもできる。
また、上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1に示す順方向ダイオードであるダイオード1あるいは先の図2に示すツェナーダイオードであるダイオード1aを製造することとしたが、これに限らない。SOIウエハ101の半導体層101aの裏面S21に例えば酸化膜などの絶縁膜を所定膜厚にて形成する絶縁膜形成ステップをさらに備えたコラム層形成工程としてもよい。あるいは、コラム層形成工程の第6除去ステップにおいて、支持層101cのみを除去して埋め込み酸化膜101bを除去せず残すこととしてもよい。またあるいは、そもそも、コラム層形成工程の第6除去ステップを割愛することとしてもよい。これにより、SOIウエハ101の半導体層101a(すなわちコラム層10あるいは10a)の裏面S21に埋め込み酸化膜101b等の絶縁膜が所定膜厚にて形成された順方向ダイオードあるいはツェナーダイオードを形成することができるようになる。ちなみに、こうしたダイオードでは、コラム層は当該コラム層以外の導電性を有する拡散層と確実に電気的に絶縁されている。
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係るダイオードの製造方法の第4の実施の形態について、図8〜図10を参照しつつ説明する。なお、図8(a)〜(d)並びに図9(a)及び(b)は、コラム層形成工程を構成する各ステップにおける側面構造を示す側面断面図であり、図9(c)は、電極形成工程における側面構造を示す側面断面図である。これら図8及び図9に示されるように、本実施の形態も、先の第1〜第3の実施の形態の製造方法に準じた製造方法となっている。そのため、以下、重複する説明についてを割愛する。
本実施の形態では、ダイオード1を製造するにあたり、まず、図8(a)に示すように、準備ステップとして、例えば単結晶シリコンにて形成されるシリコンウエハ102を準備する。
シリコンウエハ102を準備すると、次に、図8(b)に示すように、第2酸化膜形成ステップを実行する。詳しくは、第2酸化膜形成ステップでは、例えばCVD(化学気相成長)を通じて、シリコンウエハ102の表面S12全面に所定の膜厚にてシリコン酸化膜(第2酸化膜)130を形成する。なお、こうした第2酸化膜形成ステップでは、シリコン酸化膜130を形成するにあたり例えばCVDを採用したが、これに限らず、他に例えば熱酸化等を採用することとしてもよい。要は、シリコンウエハ102の表面S12全面に所定の膜厚にて絶縁膜を形成することができれば、その形成方法については任意である。
シリコン酸化膜130を形成すると、次に、第2エピタキシャル層形成ステップを実行する。エピタキシャル層形成ステップにおいては、図8(c)に示すように、例えば公知のエピタキシ法を通じて、露出したシリコン酸化膜130の表面S5全面にエピタキシャル層140を多結晶シリコンにて所定の層厚だけ堆積形成する。
エピタキシャル層140を形成すると、次に、単結晶化ステップを実行する。単結晶化ステップにおいては、図8(d)に示すように、エピタキシャル層140にレーザ光を照射して加熱することで多結晶シリコンを再結晶化して単結晶にする、いわゆるレーザアニール法を採用している。詳しくは、図示しないレーザ光照射手段によってエピタキシャル層140の上方からエピタキシャル層140に対しレーザ光を照射する。このレーザ光によってエピタキシャル層140が加熱され例えば「1000度」を越えるような高温になると、シリコン原子が再配置(再結晶化)される。これにより、エピタキシャル層140を構成していたシリコンは、多結晶構造から単結晶構造に単結晶化される。なお、こうしたレーザアニール法については公知であるため、ここでのこれ以上の説明を割愛する。
エピタキシャル層140を構成するシリコンを単結晶化すると、次に、イオン注入ステップを実行する。イオン注入ステップにおいては、例えばイオン注入機(図示略)を使用してボロンなどのP型不純物あるいはリンなどのN型不純物をイオン化し、これらイオンを電界加速して第2エピタキシャル層140の所定位置に打ち込む。これにより、図9(a)に示すように、互いに当接しつつ交互に配置されるP導電型コラムPC1〜PC9及びN導電型コラムNC1〜NC8を有するコラム層がシリコンウエハ102に形成される。
イオン注入ステップを実行すると、次に、第7除去ステップを実行する。第7除去ステップにおいては、図9(b)に示すように、例えばエッチング等を通じて、シリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130を除去する。なお、エッチングについては公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛する。
また、第7除去ステップにおいては、エッチングを採用してシリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130を除去することとしたが、エッチングに限らない。他に例えば、図9(b)に対応する図として図10(c)に示すように、第7除去ステップとして、シリコン酸化膜130の表面S5側に水素イオンを注入して水素注入層140dを形成した後、所定の熱処理にて、シリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130と共々、水素注入層140dを剥離させる、いわゆるスマートカット法等を採用して、シリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130を除去することとしてもよい。シリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130の厚さによっては、エッチングにてこれらシリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130を除去するよりも、スマートカット法にてシリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130を除去する方が第7除去ステップを実行する時間を短縮することができるようになり、ダイオードの製造効率の向上を図ることができるようになる。要は、エピタキシャル層140の裏面が露出するようにシリコンウエハ102及びシリコン酸化膜130を除去することができれば、その除去方法については任意である。
こうして第7除去ステップを終えると、次に、電極形成工程を実行する。電極形成工程では、図9(c)に示すように、例えば公知のCVD(化学気相成長)やエッチング等を通じて、エピタキシャル層140(コラム層)の表面S6の所定位置に電極を例えば「9個」形成する。なお、この電極形成工程については、上記電極形成工程に準じているため、ここでの重複する説明を割愛する。
以上説明したダイオードの製造方法によれば、先の図1に示したダイオード1を製造することができるようになる。なお、この製法を通じて製造されたダイオード1についての作用効果は既述しているため、ここでの重複する記載を割愛する。
また、本実施の形態のダイオードの製造方法によれば、準備ステップによって準備されたSOIウエハ101は、通常厚さが均一の半導体層101a、埋め込み酸化膜101b及び半導体層101cを有しており、深溝加工ステップによって、SOIウエハ101の半導体層101aを貫通して埋め込み酸化膜101bを露出させる溝を形成する。そのため、溝加工ステップにおける溝加工の終点が一定となるため、形成された溝D31〜D38の深さを均一にすることができるようになる。換言すれば、P導電型コラム及びN導電型コラムを同一の高さにて形成することができるようになり、ひいては、ダイオードの特性に係る製造上のばらつきをより低減することができるようになる。
また、上記実施の形態(変形例を含む)では、先の図1に示す順方向ダイオードであるダイオード1あるいは先の図2に示すツェナーダイオードであるダイオード1aを製造することとしたが、これに限らない。エピタキシャル層140の裏面S62に例えば酸化膜などの絶縁膜を所定膜厚にて形成する絶縁膜形成ステップをさらに備えたコラム層形成工程としてもよい。あるいは、コラム層形成工程の第7除去ステップにおいて、シリコンウエハ102のみを除去してシリコン酸化膜130を除去せず残すこととしてもよい。またあるいは、そもそも、コラム層形成工程の第7除去ステップを割愛することとしてもよい。これにより、エピタキシャル層140(すなわちコラム層10あるいは10a)の裏面S62にシリコン酸化膜130等の絶縁膜が所定膜厚にて形成された順方向ダイオードあるいはツェナーダイオードを形成することができるようになる。ちなみに、こうしたダイオードでは、コラム層は当該コラム層以外の導電性を有する拡散層と確実に電気的に絶縁されている。
(他の実施の形態)
上記ダイオード1及び1a(変形例を含む)並びに上記各実施の形態(変形例を含む)においては、P導電型をN導電型に、N導電型をP導電型に置き換えてもよい。
1、1a…ダイオード、10、10a…コラム層、100、102…シリコンウエハ、101…SOIウエハ、101a…半導体層、101b…埋め込み酸化膜、101c…支持層、101d…水素注入層、110…エピタキシャル層、120…シリコン酸化膜(第1酸化膜)、130…シリコン酸化膜(第2酸化膜)、140…(第2)エピタキシャル層、140d…水素注入層、PC1〜PC9…P導電型コラム、NC1〜NC8…N導電型コラム、D11〜38…溝、E1…(第1)電極、E2…(第2)電極、E31〜E33…(第3)電極、E41、E42…(第4)電極。