JP2009127088A - 溶射用マスキング治具 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶射中に開口部内面に堆積する溶射粒子や溶射皮膜の一部が脱落することを効果的に防止でき、かつ溶射後に開口部内面に堆積した溶射皮膜を容易に剥離することのできる溶射用マスキング治具を提供する。
【解決手段】溶射用マスキング治具10は、シリンダブロック(被溶射部材)20のシリンダボア(孔部)21の内壁面21aに金属溶射する際に、端面20aを覆うように配設され、シリンダボア21に対応する開口部11を有する。開口部11の内面11aが、鋼材よりも金属溶射の溶射材料が付着し難い難付着材料よりなり、かつ、凹凸形状とされている。溶射用マスキング治具10自体の材質を難付着材料(カーボン、真鍮、PTFE等)としたり、あるいは難付着材料(DLC等)よりなる処理膜を開口部11の内面11aに形成したりすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は溶射用マスキング治具に関し、詳しくは、端面に開口する孔部を有する被溶射部材の該孔部の内壁面に金属溶射する際に、該端面を覆うように配設され、該孔部に対応する開口部を有する溶射用マスキング治具に関する。
車両用エンジン等のシリンダブロックにおけるシリンダボアの内壁面は、耐摩耗性等が要求される。このため、このシリンダボアの内壁面は、一般に、金属溶射法により形成された溶射皮膜により強化されている。金属溶射法では、金属や金属酸化物の溶射材料を加熱して溶融状態とし、その微粉末等を溶射ガンにより壁面に吹き付けて、溶射皮膜を形成する。このときの溶射の熱源には、一般にプラズマやアーク放電が利用される。
図4に、シリンダブロック20におけるシリンダボア21の内壁面21aに金属溶射する従来の溶射方法が示されるように、シリンダブロック20の一端面20aには、シリンダボア21に対応する開口部71を有する溶射用マスキング治具70が配設される(例えば、特許文献1参照)。なお、シリンダブロック20の一端面20aは一般に機械加工が施されるため、この一端面20aに溶射皮膜が形成されないようにするために、該一端面20aに溶射用マスキング治具70が配設される。
溶射の際には、溶射用マスキング治具70の開口部71からシリンダボア21内に溶射ガン80を挿入する。そして、図4の上下方向に溶射ガン80を移動させながら、溶射ガン80からシリンダボア21の内壁面21aに向けて連続的に溶射フレーム81を吹き付け、内壁面21aに溶射皮膜90を形成する。このとき、溶射用マスキング治具70は一定の板厚を有しているため、開口部71の内面71aにも溶射ガン80からの溶射フレーム81が吹き付けられる。
ここに、従来の溶射用マスキング治具70には、通常、機械構造用炭素鋼が用いられている。この機械構造用炭素鋼には、金属溶射の溶射材料が付着し易い。また、溶射用マスキング治具70の開口部71の内面71aは、機械加工された平滑面となっている。このため、溶射用マスキング治具70の開口部71の内面71aには、平滑面に沿って溶射粒子が付着、堆積して溶射皮膜91が形成される。この堆積した溶射皮膜91は、ある程度の厚みになると、一体となった環状の皮膜として容易に剥離できることが望ましい。しかし、溶射材料が付着し易い機械構造用炭素鋼よりなり、しかも平滑面とされた開口部71の内面71aから溶射皮膜91を一体として剥離することが困難である。このため、通常、溶射用マスキング治具70の開口部71の内面71aに付着した溶射皮膜91を溶射後に旋盤等の機械加工により除去するか、あるいは溶射用マスキング治具70自体を廃棄している。したがって、機械加工やマスキング治具の製作に手間や費用がかかっていた。
一方、溶射用マスキング治具70の材質として、溶射皮膜91が付着し難いシリコンゴム等の特殊な材質を採用する場合もある(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この場合、開口部71の内面71aに対する溶射皮膜91の密着力が不十分となる。このため、溶射中に、開口部71の内面71aから溶射粒子や溶射皮膜91の一部が脱落し、脱落した溶射粒子等がシリンダボア21の内壁面21aに付着することで、この内壁面21aに形成される溶射皮膜90に欠陥が発生することがあった。
そこで、本出願人は、溶射ガンにより溶射皮膜が付着する開口部の内面を凹凸面とした溶射用マスキング治具について先に出願している(特願2006−143915)。
この溶射用マスキング治具では、開口部の内面に所定の溝等を設けることで、この内面を面粗度(Rz)が20〜70μm程度の凹凸面としている。この溶射用マスキング治具によれば、開口部内面に形成された凹凸の立体効果により、開口部内面の凹凸面に堆積する溶射皮膜の面外の剛性が高まる。このため、溶射中に溶射粒子や溶射被膜の一部が開口部内面から脱落することを抑制でき、また溶射後には凹凸面に堆積した溶射被膜を塊として一体に剥離することができる。
特開平11−172403号公報 米国特許第5691018号明細書
しかし、開口部内面に凹凸面を形成した溶射用マスキング治具であっても、その治具が機械構造用炭素鋼等の溶射材料の付着し易い材料よりなる場合は、以下に示すような問題がある。すなわち、開口部内面に凹凸面を形成した鋼製等の溶射用マスキング治具は、使用の初期段階では良好に機能する。しかし、この溶射用マスキング治具を例えば30回程度繰り返して使用すると、溶射皮膜が凹凸面に強固に固着するようになり、凹凸面に堆積した溶射皮膜を容易に剥離することが困難になるという問題がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、溶射中に開口部内面に堆積する溶射粒子や溶射皮膜の一部が脱落することを効果的に防止でき、かつ溶射後に開口部内面に堆積した溶射皮膜を容易に剥離することのできる溶射用マスキング治具を提供することを目的とする。
(1)本発明の溶射用マスキング治具は、端面に開口する孔部を有する被溶射部材の該孔部の内壁面に金属溶射する際に、該端面を覆うように配設され、該孔部に対応する開口部を有する溶射用マスキング治具であって、前記開口部の内面が、鋼材よりも前記金属溶射の溶射材料が付着し難い難付着材料よりなり、かつ、凹凸形状とされていることを特徴とする。
本発明の溶射用マスキング治具では、開口部の内面が凹凸形状とされている。このため、溶射中に開口部内面に堆積した溶射皮膜は、凹凸の立体効果により、開口部内面に強固に保持される。したがって、溶射中に開口部内面に堆積した溶射粒子や溶射皮膜の一部が脱落することを効果的に防止することができる。よって、被溶射部材の被溶射面(孔部の内壁面)に形成される溶射皮膜に欠陥(溶射中に開口部内面から脱落した溶射粒子等が被溶射面に付着することにより発生する欠陥)が発生することを効果的に防止することが可能となる。
また、本発明の溶射用マスキング治具では、開口部の内面が、鋼材よりも溶射材料が付着し難い難付着材料よりなる。このため、後述する実施例で示されるように、繰り返し使用後においても、開口部内面に堆積した溶射皮膜を容易に剥離することができる。
したがって、本発明の溶射用マスキング治具によれば、開口部内面に対する溶射皮膜の付着性(皮膜欠陥の原因となる溶射粒子等の脱落防止)と剥離容易性とを両立させることが可能となる。
(2)前記構成(1)を有する本発明の溶射用マスキング治具は、好ましくは、本体と、該本体の前記開口部の内面に相当する部位に形成された処理膜とからなり、該処理膜が前記難付着材料よりなることが好ましい。
溶射用マスキング治具の開口部内面に対する、溶射皮膜の付着性と剥離容易性とを両立させるためには、開口部内面と溶射皮膜との密着性を制御する必要がある。しかし、溶射用マスキング治具として使用可能な材質は限られており、治具自体の材質を変更することには制限がある。
その点、溶射皮膜の付着性と剥離容易性とが問題となる開口部の内面に難付着材料よりなる処理膜を形成した、この構成によれば、溶射用マスキング治具の本体の材質にかかわらず、開口部内面と溶射皮膜との密着性を制御することができる。したがって、溶射用マスキング治具の本体を構成する母材として、例えば従来と同様の鋼材を採用しつつ、溶射用マスキング治具の開口部内面に対する溶射皮膜の付着性と剥離容易性とを両立させることが可能となる。
(3)前記構成(2)において、前記処理膜を構成する前記難付着材料が炭素系材料及び高融点金属よりなる群から選ばれる一種であることが好ましい。
(4)前記構成(1)を有する本発明の溶射用マスキング治具は、好ましくは、前記難付着材料よりなることが好ましい。この構成によれば、溶射用マスキング治具の全体を前記難付着材料により一体に成形することができるので、その製造が簡単となる。
(5)前記構成(4)において、前記溶射用マスキング治具を構成する前記難付着材料が、炭素系材料、フッ素系樹脂及び銅合金よりなる群から選ばれる一種であることが好ましい。
(6)前記構成(1)〜(5)において、前記開口部の内面の凹凸形状は、ショットブラスト処理により形成されたものであることが好ましい。
(7)前記構成(1)〜(6)において、前記開口部の内面の面粗度がRz20μm〜Rz70μmであることが好ましい。
したがって、本発明の溶射用マスキング治具によれば、溶射後に、開口部内面に付着した溶射皮膜を旋盤等の機械加工により除去したり、あるいは溶射用マスキング治具自体を廃棄したりする必要がないので、機械加工やマスキング治具の製作に手間や費用がかかることがなく、生産性及びコスト面で有利となる。
また、本発明の溶射用マスキング治具によれば、被溶射部材の被溶射面に形成される溶射皮膜の欠陥の原因となる、溶射中の溶射粒子等の脱落を防止できるので、溶射皮膜の品質向上の点でも有利となる。
さらに、本発明の溶射用マスキング治具によれば、開口部内面に対する溶射皮膜の剥離容易性を大幅に向上させることができるので、溶射後に皮膜剥離に要する作業が簡易となり、また溶射用マスキング治具を繰り返して使用できる回数も増大するので、この点においても生産性及びコスト面で有利となる。
以下、本発明の溶射用マスキング治具の実施形態について詳しく説明する。なお、説明する実施形態は一実施形態にすぎず、本発明の溶射用マスキング治具は、下記実施形態に限定されるものではない。本発明の溶射用マスキング治具は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
(実施形態1)
図1及び図2に示される本実施形態の溶射用マスキング治具は、本発明の溶射用マスキング治具を、自動車エンジンのシリンダブロック(被溶射部材)20におけるシリンダボア(孔部)21の内壁面(被溶射面)21aに、耐摩耗性の高い鉄系材料を金属溶射する際に用いられるものである。
前述のとおり、シリンダブロック20の端面20aは一般に機械加工が施されるため、シリンダブロック20におけるシリンダボア21の内壁面21aに対する金属溶射では、端面20aに溶射皮膜が形成されないようにするために、該端面20aに溶射用マスキング治具10を配設する。なお、この金属溶射では、プラズマやアーク放電の熱源を利用することができる。
本実施形態の溶射用マスキング治具10は、シリンダブロック20の端面20aを覆うように所定位置に密着、配設された状態で、シリンダボア21に対応する開口部11を有している。この開口部11は、シリンダボア21と同軸状で、シリンダボア21の内径より若干小さい内径を有する円筒状の内面11aにより区画、形成されている。そして、開口部11の内面11aは、所定の面粗度を有する凹凸形状とされている。
この開口部11の内面11aに形成される凹凸形状の形成方法やその形状及び大きさは、特に限定されない。例えば、平滑面に対してショットブラスト処理を施して粗面としたり、あるいは平滑面に対して旋盤等の機械加工を施して溝を形成したりすることにより、所定の大きさの凹凸形状を開口部11の内面11aに形成することができる。
開口部11の内面11aに堆積した溶射粒子等が溶射中に内面11aから脱落することを効果的に防止する観点からは、前記凹凸形状はショットブラスト処理により形成されたものであることが好ましい。ショットブラスト処理により形成された凹凸形状は、凸と凹が交互に並びつつ処理面全体に均一に分散した形状となる。このため、開口部11の内面11aの全方向において、凹凸の立体効果により溶射粒子等を保持する力が作用する。一方、例えば円筒状の内面11の周方向に沿って延びる環状の溝を軸方向に多数配列することで形成された凹凸形状では、凹凸の立体効果により溶射粒子等を保持する力は円筒状内面11の軸方向にしか働かない。したがって、ショットブラスト処理により形成された凹凸形状は、例えば複数の溝により形成される凹凸形状と比べて、凹凸の立体効果により溶射粒子等を保持する効果が高くなり、溶射中に内面11aから溶射粒子等が脱落することをより効果的に防止することができる。
また、開口部11の内面11aの面粗度は、十点平均高さで、Rz20μm〜Rz70μmであることが好ましい。内面11aの面粗度がRz20μm〜Rz70μmの範囲内であれば、溶射中に内面11aから溶射粒子等が脱落することを効果的に防止することができ、かつ内面11aに堆積した溶射被膜を容易に剥離することができる。
ここに、本実施形態の溶射用マスキング治具10では、開口部11の内面11aが、難付着材料よりなる。より具体的には、この溶射用マスキング治具10は、図2に示されるように、母材よりなる本体10Aと、この本体10Aの開口部11の内面11aに相当する部位に形成された処理膜10Bとからなり、この処理膜10Bが難付着材料よりなる。
本体10Aを構成する母材の材料としては、特に限定されず、従来と同様の機械構造用炭素鋼(S45C等)等の鋼材としたり、あるいはアルミニウム合金等としたりすることができる。
処理膜10Bを構成する難付着材料は、少なくとも母材としての鋼材よりも金属溶射の溶射材料が付着し難い材料である。具体的には、処理膜10Bの材料は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素系材料や、ニッケル−タングステン合金(Ni−50W合金)等の高融点金属材料とすることが好ましい。
また、処理膜10Bの膜厚は、特に限定されないが、開口部11の内面11aに形成された凹凸形状が維持されて、内面11aにおける所望の面粗度を確保することができる程度の厚さとすることが好ましい。具体的には、処理膜10Bの膜厚は、1〜10μm程度とすることが好ましい。処理膜10Bが過度に厚くなると、開口部11の内面11aに形成した凹凸形状における凹凸が小さくなって、内面11aの面粗度が過度に低くなるため、凹凸による前記立体効果が小さくなる。
溶射用マスキング治具10の板厚は、特に限定されないが、必要な剛性を確保する上で通常10mm程度とされる。
上記構成を有する本実施形態の溶射用マスキング治具10は、母材から所定のマスキング治具形状の本体10Aを鋳造等により成形し、その後本体10Aの開口部11aの内面11aに相当する部位にショットブラスト処理等を施して、該内面11aに所定の凹凸形状を形成し、最後にこの内面11aに処理膜10Bを形成することで製造することができる。
なお、DLCよりなる処理膜10Bを形成する場合は、例えばCVDやPVD(スパッタリングやイオンプレーティング等)を利用することができ、ニッケル−タングステン合金等の高融点金属材料よりなる処理膜10Bを形成する場合は、例えば電気めっきを利用することができる。
以下、本実施形態の溶射用マスキング治具10の使用形態及び作用効果について説明する。溶射の際には、シリンダブロック20の端面20aの所定位置に溶射用マスキング治具10を密着、配設する。そして、溶射用マスキング治具10の開口部11からシリンダボア21内に溶射ガン80を挿入し、図1の上下方向に溶射ガン80を移動させながら、溶射ガン80からシリンダボア21の内壁面21aに向けて連続的に溶射フレーム81を吹き付け、内壁面21aに溶射皮膜90を形成する。このとき、溶射用マスキング治具10は一定の板厚を有しているため、開口部11の内面11aにも溶射ガン80からの溶射フレーム81が吹き付けられる。その結果、開口部11の内面11aにも溶射粒子が堆積して溶射皮膜91が形成される。
本実施形態の溶射用マスキング治具10では、開口部11の内面11aが凹凸形状とされている。このため、溶射中に開口部11の内面11aに堆積した溶射皮膜91は、凹凸の立体効果により、開口部11の内面11aに強固に保持される。特に本実施形態では、内面11aの凹凸形状がショットブラスト処理により形成されたものであり、しかも内面11aの面粗度がRz20μm〜Rz70μmとされていることから、凹凸の立体効果により、溶射粒子や溶射皮膜91が内面11aに強固に保持される。したがって、溶射中に開口部11の内面11aに堆積した溶射粒子や溶射皮膜91の一部が脱落することを効果的に防止することができる。よって、シリンダブロック20のシリンダボア21の内壁面21aに形成される溶射皮膜90に欠陥が発生することを効果的に防止することが可能となる。
また、本実施形態の溶射用マスキング治具10では、開口部10の内面10aに難付着材料よりなる処理膜10Bが形成されている。このため、繰り返し使用後においても、開口部11の内面11aに堆積した溶射皮膜90を容易に剥離することができる。
したがって、本実施形態の溶射用マスキング治具10によれば、開口部11の内面11aに対する溶射皮膜90の付着性(皮膜欠陥の原因となる溶射粒子等の脱落防止)と剥離容易性とを両立させることが可能となる。
さらに、本実施形態の溶射用マスキング治具10は、母材よりなる本体10Aと、難付着材料よりなる処理膜10Bとからなるため、本体10Aを構成する母材として従来と同様の鋼材等を採用しつつ、溶射用マスキング治具10の開口部11の内面11aに対する溶射皮膜90の付着性と剥離容易性とを両立させることが可能となる。
(実施形態2)
図3に示される本実施形態の溶射用マスキング治具10は、本体10Aのみからなり、本体10Aの開口部11の内面11aに相当する部位に前記処理膜10Bが形成されていない。そして、この溶射用マスキング治具10における本体10Aは、鋼材よりも金属溶射の溶射材料が付着し難い難付着材料よりなる。すなわち、この溶射用マスキング治具10の開口部11の内面11aは難付着材料よりなる。
本実施形態における溶射用マスキング治具10を構成する難付着材料としては、カーボン等の炭素系材料、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂又は真鍮等の銅合金とすることが好ましい。
その他の構成は前記実施形態1と同様である。
したがって、本実施形態の溶射用マスキング治具10も、前記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
(その他の実施形態)
前記実施形態1、2では、自動車用エンジンのシリンダブロック20におけるシリンダボア21の内壁面21aに、耐摩耗性の高い鉄系材料を金属溶射する場合に本発明の溶射用マスキング治具を用いる例について説明したが、本発明の溶射用マスキング治具はこれに限られず、例えばシリンダブロック(被溶射部材)におけるシリンダボアの内壁面(被溶射面)にアルミニウム系材料を金属溶射する場合に適用することができる。
また、本発明の溶射用マスキング治具は、被溶射部材の孔部に対応する開口部を有する形状である限りにおいて、任意の形状とすることができる。
以下、実施例及び比較例を説明する。
(実施例1)
前記実施形態1に準じて、実施例1の溶射用マスキング治具10を製造した。
すなわち、内径がφ79mmの開口部11を有し、機械構造炭素鋼(S45C)よりなる板厚10mmの本体10Aを鋳造により成形した。そして、本体10Aの開口部11の内面11aに相当する部位にショットブラストを施し、内面11aをRz20〜70μmの面粗度に粗面化して凹凸形状とした。
なお、このときのショットブラスト条件は、ブラスト材:アルミナ♯24、エアー圧:3.92×10Pa、処理距離:100mmとした。
そして、プラズマCVDにより、本体10Aの開口部11の内面11aを表面処理して、難付着材料としてのDLCよりなる膜厚5μmの処理膜10Bを内面11aに形成した。
こうして得られた本実施例の溶射用マスキング治具10をシリンダブロック20の端面20aの所定位置に配設して、鉄系材料(Fe−0.8%C)をアーク溶射し、シリンダブロック20のシリンダボア21の内壁面21aに溶射皮膜20を形成した。
(実施例2)
溶射方法をアーク溶射からプラズマ溶射に変更すること以外は前記実施例1と同様である。
(実施例3)
前記実施形態2に準じて、実施例3の溶射用マスキング治具10を製造した。
すなわち、内径がφ79mmの開口部11を有し、難付着材料としてのカーボンよりなる板厚10mmの本体10Aを機械加工により作製した。そして、本体10Aの開口部11の内面11aに相当する部位にショットブラストを施し、内面11aをRz20〜70μmの面粗度に粗面化して凹凸形状とした。
なお、このときのショットブラスト条件は、前記実施例1と同様である。
こうして得られた本実施例の溶射用マスキング治具10をシリンダブロック20の端面20aの所定位置に配設して、鉄系材料(Fe−0.8%C)をアーク溶射し、シリンダブロック20のシリンダボア21の内壁面21aに溶射皮膜20を形成した。
(実施例4)
難付着材料をカーボンから真鍮に変更すること以外は前記実施例3と同様である。
(実施例5)
難付着材料をカーボンからPTEFに変更すること以外は前記実施例3と同様である。
(比較例1)
難付着材料としてのDLCよりなる処理膜10Bを形成しないこと以外は前記実施例1と同様である。
(比較例2)
難付着材料としてのDLCよりなる処理膜10Bを形成しないこと以外は前記実施例2と同様である。
(比較例3)
本体10の材質を機械構造炭素鋼(S45C)からアルミニウム合金(A7075)に変更すること、及び難付着材料としてのDLCよりなる処理膜10Bを形成しないこと以外は前記実施例2と同様である。
(溶射皮膜の剥離容易性の評価)
前記実施例1〜5及び比較例1〜3の溶射用マスキング治具について、治具の使用初期(溶射回数:1〜5回)と、治具を100回使用した後とにおいて、溶射後に開口部11の内面11aから溶射皮膜91を容易に剥離できるか否かの剥離容易性を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 2009127088
表1から明らかなように、本体10AがS45Cよりなり、開口部11の内面11aにDLCよりなる処理膜10Bを形成した実施例1及び2の溶射用マスキング治具10では、使用の初期のみならず、100回の使用後においても、開口部11の内面11aに堆積した溶射皮膜91を容易に剥離することができた。
同様に、本体10Aがそれぞれカーボン、真鍮、PTFEからなる実施例3、4、5の溶射用マスキング治具10でも、使用の初期のみならず、100回の使用後においても、開口部11の内面11aに堆積した溶射皮膜91を容易に剥離することができた。
一方、本体10AがS45Cよりなり、開口部11の内面11aにDLCよりなる処理膜10Bを形成していない比較例1及び2の溶射用マスキング治具、並びに本体10AがA7075よりなり、開口部11の内面11aにDLCよりなる処理膜10Bを形成していない比較例3の溶射用マスキング治具では、100回の使用後において、開口部11の内面11aに堆積した溶射皮膜91を容易に剥離することができなかった。
本発明の実施形態1に係る溶射用マスキング治具の概略構成及びその使用形態を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る溶射用マスキング治具の要部を拡大して示す部分断面図である。 本発明の実施形態2に係る溶射用マスキング治具の要部を拡大して示す部分断面図である。 従来の溶射用マスキング治具の一例を示す断面図である。
符号の説明
10…溶射用マスキング治具 11…開口部
11a…内面 10A…本体
10B…処理膜 20…シリンダブロック(被溶射部材)
20a…端面 21…シリンダボア(孔部)
21a…内壁面(被溶射面)

Claims (7)

  1. 端面に開口する孔部を有する被溶射部材の該孔部の内壁面に金属溶射する際に、該端面を覆うように配設され、該孔部に対応する開口部を有する溶射用マスキング治具であって、
    前記開口部の内面が、鋼材よりも前記金属溶射の溶射材料が付着し難い難付着材料よりなり、かつ、凹凸形状とされていることを特徴とする溶射用マスキング治具。
  2. 本体と、該本体の前記開口部の内面に相当する部位に形成された処理膜とからなり、該処理膜が前記難付着材料よりなることを特徴とする請求項1に記載の溶射用マスキング治具。
  3. 前記処理膜を構成する前記難付着材料が炭素系材料及び高融点金属よりなる群から選ばれる一種であることを特徴とする請求項2に記載の溶射用マスキング治具。
  4. 前記溶射用マスキング治具が前記難付着材料よりなることを特徴とする請求項1に記載の溶射用マスキング治具。
  5. 前記溶射用マスキング治具を構成する前記難付着材料が、炭素系材料、フッ素系樹脂及び銅合金よりなる群から選ばれる一種であることを特徴とする請求項4に記載の溶射用マスキング治具。
  6. 前記開口部の内面の凹凸形状は、ショットブラスト処理により形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の溶射用マスキング治具。
  7. 前記開口部の内面の面粗度がRz20μm〜Rz70μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の溶射用マスキング治具。
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