以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,2には、本発明の一実施形態としての電動式アクチュエータ10が示されている。より詳細には、電動式アクチュエータ10は、電動モータ12を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、後述する可動部材28の往復作動方向である図1中の上下方向を言うものとする。
電動モータ12は、既存の電動機であって、駆動軸としての回転軸14を有している。そして、電源装置16から直流電力が給電されることにより、回転軸14に回転力が作用せしめられて、回転軸14が中心軸回りで回転駆動せしめられるようになっている。特に本実施形態では、回転軸14の回転方向が電動モータ12への通電方向に応じて変化せしめられるようになっている。なお、電動モータ12としては、他励直流電動機等の各種公知のモータ(電動機)を採用することが出来る。また、電源装置16は、各種の直流電源と、交流電源および交流電力を直流電力に変換する整流器を組み合わせたもの等が採用されて、例えば、車載用の蓄電池(バッテリ)等が好適に利用される。
また、電動モータ12の回転軸14には、螺子部としての雄ねじ部材18が取り付けられている。雄ねじ部材18は、外周面にねじ山が形成された略円筒形状の部材であって、中心軸上を延びるように回転軸14が挿し入れられて固着されている。そして、回転軸14の回転駆動に伴って雄ねじ部材18が回転せしめられるようになっている。
また、電動モータ12は、支持部材20に取り付けられている。支持部材20は、厚肉の円環形状を有しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂で形成されている。
さらに、支持部材20の内周縁部には、保持筒部24が形成されている。保持筒部24は、略円筒形状であって、支持部材20の内周縁部から上方に向かって延び出している。また、保持筒部24には、その径方向一方向で対向する部分において内周面および上端面に開口する一対の係合切欠部26,26が形成されている。この係合切欠部26は、略一定の周方向幅寸法をもって軸方向に所定の長さで延びる溝状とされており、本実施形態では周方向両側面が相互に平行に広がっている。
そして、電動モータ12の回転軸14が支持部材20の中央孔の中心線上で延びるように、電動モータ12が支持部材20の中央孔に嵌め入れられて固定されている。これにより、保持筒部24の内周側に離隔して回転軸14が位置せしめられている。
また、回転軸14の先端部分には、出力部材としての可動部材28が被せ付けられている。可動部材28は逆向きの略有底円筒形状を有しており、本実施形態では、鉄やアルミニウム合金等の金属で形成することにより変形や磨耗に対する耐久性の向上が図られている。更に、可動部材28の上端部には、外周側に向かって広がる押圧フランジ部30が一体形成されている。本実施形態における押圧フランジ部30は、外周縁部が縦断面において略半球形状を呈するように面取りされている。
更にまた、可動部材28の下端部には、径方向一方向で対向する部分から外周側に向かって突出する一対の係合突起32,32が形成されている。係合突起32は、略ブロック状の突起であって、周方向の両端面が相互に平行となっている。また、係合突起32の周方向での幅寸法が、保持筒部24に形成された係合切欠部26の周方向での幅寸法と略等しくされていると共に、係合突起32の軸方向寸法が係合切欠部26の軸方向寸法よりも充分に小さくなっている。
また、可動部材28には、螺接部としての雌ねじ部34が設けられている。雌ねじ部34は、逆向きの略有底円筒形状を呈する可動部材28の周壁部を利用して形成されており、その内周面には全長に亘ってねじ山が刻設されている。また、雌ねじ部34を構成するねじ山は、回転軸14に取り付けられた雄ねじ部材18の外周面に形成されたねじ山に対応する構造とされている。
そして、このような雌ねじ部34を有する可動部材28は、電動モータ12の回転軸14に対して取り付けられる。即ち、回転軸14に対して可動部材28が上方から被せられて、可動部材28の周壁部が回転軸14の外周側に離隔して回転軸14を取り囲むように位置せしめられる。なお、本実施形態では、電動モータ12の回転軸14が後述する可動部材28の往復作動方向に延びるようにして設けられている。
さらに、回転軸14に取り付けられた雄ねじ部材18が可動部材28の周壁部の内周側に挿し入れられて、雄ねじ部材18の外周面に形成されたねじ山と可動部材28の内周面に形成された雌ねじ部34のねじ山が掛合せしめられている。換言すれば、回転軸14に取り付けられた雄ねじ部材18が、可動部材28の雌ねじ部34に対して下方開口から螺入されている。これにより、可動部材28が回転軸14に対して組み付けられていると共に、それら回転軸14と可動部材28の連結部分において雄ねじ部材18と雌ねじ部34で構成された螺子構造が設けられている。
また、電動モータ12の回転軸14が保持筒部24の内周側に位置せしめられていることにより、可動部材28が保持筒部24に対して挿し入れられる。そこにおいて、図3に示されているように、可動部材28の下端部に一体形成された係合突起32が、保持筒部24に形成された係合切欠部26に対して周方向で位置合わせされており、各係合突起32が各係合切欠部26に嵌め込まれている。そして、係合突起32と係合切欠部26の周方向での係合作用によって、可動部材28が保持筒部24に対して周方向で係止されて相対的に回転不能とされている。かくの如き可動部材28と保持筒部24の係止によって、本実施形態における可動部材28の回転制限機構が構成されている。
そこにおいて、給電によって電動モータ12で発生する回転駆動力が、雄ねじ部材18と雌ねじ部34で構成された螺子構造によって往復駆動力に変換されて、可動部材28に作用せしめられるようになっている。そして、電動モータ12における回転軸14の回転方向を制御することにより、可動部材28を軸方向で所定の位置に駆動変位せしめることが出来るようになっている。以下に、可動部材28の軸方向での往復作動について説明する。
先ず、電動モータ12の回転軸14に装着された雄ねじ部材18が、可動部材28に形成された雌ねじ部34の下端部、即ち、可動部材28の周壁部における下端開口部に位置せしめられている場合には、可動部材28が往復作動方向の上端に位置せしめられるようになっている。なお、このように可動部材28が駆動方向の上端に位置せしめられた状態においても、係合突起32は係合切欠部26内に位置せしめられて、それらによる係合作用が発揮されるようになっている。
次に、電動モータ12に対して電源装置16から通電されて、回転軸14が周方向一方の側に回転せしめられて、雄ねじ部材18が雌ねじ部34に対して相対回転せしめられると、雄ねじ部材18が雌ねじ部34に対して捻じ込まれる。これにより、雌ねじ部34が形成された可動部材28は、雄ねじ部材18が取り付けられた回転軸14延いては電動モータ12に対して軸方向で下方に相対変位せしめられて、往復作動方向の下端まで移動せしめられるようになっている。
特に本実施形態では、可動部材28の回転が係合突起32と係合切欠部26の係止によって阻止されていることにより、回転軸14の回転駆動力が雄ねじ部材18と雌ねじ部34の間における摩擦等で伝達されることによって可動部材28が回転するのを防いで、可動部材28の軸方向での駆動変位を効率的に実現出来るようになっている。
また次に、電動モータ12に対して電源装置16から通電されて、回転軸14が周方向で逆向きに回転せしめられると、雄ねじ部材18が雌ねじ部34に対して相対回転せしめられて、雄ねじ部材18が雌ねじ部34に対して抜き方向で捻られる。これにより、雌ねじ部34が形成された可動部材28は、雄ねじ部材18が取り付けられた回転軸14延いては電動モータ12に対して軸方向で上方に相対変位せしめられて、往復作動方向の上端まで移動せしめられるようになっている。なお、本実施形態では、電動モータ12に対して逆極性の電流が給電されることにより、回転軸14が逆回転されるようになっている。
このように、電動モータ12で発生した回転駆動力は、回転軸14と可動部材28の連結部分に設けられた螺子構造によって軸方向での直線的な駆動力に変換されて、可動部材28に伝達されるようになっている。そして、電動モータ12への通電方向を切り換えて、回転軸14の回転方向を異ならせることにより、可動部材28が軸方向上下に往復作動せしめられるようになっている。以上より明らかなように、本実施形態では、回転軸14と可動部材28の間に設けられた螺子構造によって、電動モータ12の回転駆動力を直線的な往復駆動力に変換する動力変換機構が構成されている。
ここにおいて、本実施形態に係る電動式アクチュエータ10には、可動部材28の往復作動を制御する制御回路36が設けられている。この制御回路36は、電源装置16から電動モータ12への通電経路上に設けられており、給電装置38を更に有している。
給電装置38は、電源装置16から電動モータ12へ給電される直流電力の極性を切り換える装置であって、本実施形態では、接続されたセンサ40による検出結果に基づいて電動モータ12への通電方向を制御するようになっている。なお、本実施形態におけるセンサ40は、車速やエンジンの回転数等に基づいて自動車の走行状態を検出するものであって、従来から知られた構造の速度センサ等を採用することが出来る。
また、給電装置38は、第一の給電経路42と第二の給電経路44を通じて電動モータ12に接続されている。更に、第一の給電経路42上には、第一のスイッチ手段としての第一のスイッチ46が設けられていると共に、第二の給電経路44上には、第二のスイッチ手段としての第二のスイッチ48が設けられている。なお、本実施形態では、給電装置38が電源装置16から入力された直流電力を出力する図示しない端子を有しており、一方の端子が電動モータ12の一方の給電端子に接続されていると共に、他方の端子に接続された導線が分岐せしめられて第一のスイッチ46と第二のスイッチ48にそれぞれ接続されることにより、第一の給電経路42と第二の給電経路44が構成されている。
また、第一の給電経路42上には、第一の整流手段としての第一のダイオード50が配設されている。この第一のダイオード50の整流作用によって、第一の給電経路42おいては、第一のスイッチ46側から給電装置38側に向かう方向での通電が許容されていると共に、給電装置38側から第一のスイッチ46側に向かう方向での通電が阻止されている。これによって、第一の給電経路42では、可動部材28を下方に駆動変位させる極性の直流電力だけが電動モータ12に供給されるようになっている。
さらに、第二の給電経路44上には、第二の整流手段としての第二のダイオード52が配設されている。この第二のダイオード52の整流作用によって、第二の給電経路44おいては、給電装置38側から第二のスイッチ48側に向かう方向での通電が許容されていると共に、第二のスイッチ48側から給電装置38側に向かう方向での通電が阻止されている。これによって、第二の給電経路44では、可動部材28を上方に駆動変位させる極性の直流電力だけが電動モータ12に供給されるようになっている。
なお、第一,第二のダイオード50,52としては、シリコンやゲルマニウム,セレン等を材料として形成された公知の整流作用を有するダイオード(例えば、p−n接合ダイオード)を採用することが可能であり、好適には、シリコンダイオードが採用される。
また、給電装置38によって電源装置16から入力された直流電力の極性がコントロールされるようになっていると共に、第一,第二の給電経路42,44上に第一,第二のダイオード50,52を設けることにより、極性を制御された直流電力が給電経路42,44の何れか一方を選択的に通じて電動モータ12に給電されるようになっている。このことからも明らかなように、本実施形態においては、給電装置38と第一,第二のダイオード50,52によって、電動モータ12へ給電される直流電力の極性を切り換える切換手段が構成されている。
そして、給電装置38と第一,第二のダイオード50,52を有する切換手段で、電動モータ12に給電される直流電力の極性を切換制御することにより、可動部材28の駆動方向が切り換えられるようになっている。
また、第一の給電経路42上に設けられる第一のスイッチ46は、第一の電極54と第一のブラシとしての第一の接点金具56を含んで構成されている。第一の電極54は、導電性の金属材料で形成されて、薄肉の長手板形状を呈しており、導線を介して給電装置38の端子に接続されている。また、本実施形態において、第一の電極54は、保持筒部24の内周面に固着されており、可動部材28の作動方向である軸方向に延びるように配設されている。
第一の接点金具56は、導電性の金属材料で形成されて、ロッド形状を呈しており、可動部材28に取り付けられている。また、第一の接点金具56は、可動部材28の保持筒部24への嵌付け下において、周方向で第一の電極54と対応する位置に設けられている。更に、第一の接点金具56の先端部分は、可動部材28が作動方向の中間部分から上端までの領域に位置せしめられると、第一の電極54に接触せしめられるようになっている。
一方、第二のスイッチ48は、第二の電極58と第二のブラシとしての第二の接点金具60を含んで構成されている。第二の電極58は、導電性の金属材料で形成されて、薄肉の長手板形状を呈しており、導線を介して給電装置38の端子に接続されている。また、本実施形態において、第二の電極58は、保持筒部24の内周面に固着されており、可動部材28の作動方向である軸方向に延びるように配設されている。
第二の接点金具60は、導電性の金属材料で形成されて、ロッド形状を呈しており、可動部材28に取り付けられている。また、第二の接点金具60は、可動部材28の保持筒部24への嵌付け下において、第二の電極58と対応する位置に設けられている。更に、第二の接点金具60の先端部分は、可動部材28が作動方向の中間部分から下端までの領域に位置せしめられると、第二の電極58に接触せしめられるようになっている。
かくの如き第一の接点金具56と第二の接点金具60は、固着金具62によって可動部材28に取り付けられている。固着金具62は、薄肉板状の金具であって、導電性材料で形成されている。更に、固着金具62は、可動部材28の外周面形状に対応する湾曲板形状とされており、一方の面が可動部材28の外周面に重ね合わされて固着されていると共に、他方の面には第一の接点金具56と第二の接点金具60の基端部が可動部材28の周方向で所定距離を隔てるようにして固定されている。これにより、第一の接点金具56と第二の接点金具60は、軸直角方向で離隔して配置されて、可動部材28の周壁部から外周側に向かって突出せしめられている。なお、本実施形態では、第一の接点金具56と第二の接点金具60が突出先端側に行くに従って次第に下傾するように延びている。
さらに、固着金具62は、導線を介して電動モータ12の他方の給電端子に接続されており、給電装置38の他方の端子が第一のスイッチ46および第二のスイッチ48を介して電動モータ12の他方の給電端子に接続されている。
ここにおいて、第一の接点金具56と第二の接点金具60が可動部材28に対して取り付けられていることから、可動部材28の軸方向での往復作動に応じて、第一の電極54および第二の電極58に対して軸方向で相対変位せしめられる。
さらに、本実施形態では、図4〜6に示されているように、第一の電極54と第二の電極58が軸方向で相対的にずれて配置されていると共に、第一の接点金具56と第二の接点金具60の先端部分が軸方向で同じ高さに位置せしめられている。より具体的には、第一の電極54の上端部分が第二の電極58の上端部分よりも軸方向上側に位置せしめられていると共に、第二の電極58の下端部分が第一の電極54の下端部分よりも軸方向下側に位置せしめられている。なお、本実施形態では、第一の電極54と第二の電極58のマウント軸方向での長さが等しくなっており、第一の電極54において第二の電極58よりも上側に延び出した部分と、第二の電極58において第一の電極54よりも下側に延び出した部分は、軸方向で同じ長さとなっている。
これらによって、可動部材28の駆動変位に応じて第一のスイッチ46と第二のスイッチ48の接続と切断が切り換えられるようになっている。
すなわち、可動部材28が作動方向の中間部分を駆動変位している状態では、図4に示されているように、第一の接点金具56の先端部分が第一の電極54に接触している状態に維持されていると共に、第二の接点金具60の先端部分が第二の電極58に接触している状態に維持されている。換言すれば、可動部材28が作動方向の中間部分を駆動変位する際には、第一,第二の接点金具56,60が第一,第二の電極54,58に摺接せしめられている。これにより、第一のスイッチ46と第二のスイッチ48が何れも接続状態とされており、第一の給電経路42と第二の給電経路44の両方が接続状態に維持されている。
また、可動部材28が作動方向の下端に位置せしめられた状態では、図5に示されているように、第一の接点金具56の先端部分が第一の電極54を下方に外れて位置せしめられて、それら第一の電極54と第一の接点金具56の接触状態が解除される。更に、第二の電極58が第一の電極54よりも下方まで延びていることにより、第二の電極58と第二の接点金具60が接続状態に維持される。これらにより、第一のスイッチ46が切断状態となると共に、第二の接点金具60の先端部分が第二の電極58の下端部分に当接せしめられた状態とされて、第二のスイッチ48が接続状態に維持される。従って、経路上に第一のスイッチ46を有する第一の給電経路42が遮断されると共に、経路上に第二のスイッチ48を有する第二の給電経路44が接続状態に維持される
一方、可動部材28が作動方向の上端に位置せしめられた状態では、図6に示されているように、第二の接点金具60の先端部分が第二の電極58を上方に外れて位置せしめられて、それら第二の電極58と第二の接点金具60の接触状態が解除される。更に、第一の電極54が第二の電極58よりも下方まで延びていることにより、第一の電極54と第一の接点金具56が接続状態に維持される。これらにより、第二のスイッチ48が切断状態となると共に、第一の接点金具56の先端部分が第一の電極54の上端部分に当接せしめられた状態とされて、第一のスイッチ46が接続状態に維持される。従って、経路上に第二のスイッチ48を有する第二の給電経路44が遮断されると共に、経路上に第一のスイッチ46を有する第一の給電経路42が接続状態に維持される。
特に本実施形態では、第一の電極54と第二の電極58の軸方向でのずれが充分に大きく設定されており、可動部材28が作動方向の下端に位置せしめられた状態で、第二の電極58が第二の電極58と第二の接点金具60の接触部分よりも下方にまで延びていると共に、可動部材28が作動方向の上端に位置せしめられた状態で、第一の電極54が第一の電極54と第一の接点金具56の接触部分よりも上方にまで延びている。これらにより、慣性力等による可動部材28の変位量の誤差によって、第一,第二のスイッチ46,48の両方が切断状態となるのを効果的に防ぐことが出来るようになっている。
そこにおいて、可動部材28が作動方向の中間部分に位置して第一のスイッチ46と第二のスイッチ48の両方が接続状態とされている場合には、第一の給電経路42と第二の給電経路44の何れか一方を通じて電動モータ12に給電されるようになっている。即ち、第一の給電経路42上に第一のダイオード50が配設されて、可動部材28を下方に駆動する極性の直流電力のみが第一の給電経路42を通じて電動モータ12に給電されるようになっていると共に、第二の給電経路44上に第二のダイオード52が配設されて、可動部材28を下方に駆動する極性の直流電力のみが第二の給電経路44を通じて電動モータ12に給電されるようになっているからである。
また、可動部材28が下方に向かって駆動せしめられて作動方向の下端に到達すると、第一の電極54と第一の接点金具56の接触状態が解除されて第一のスイッチ46が遮断される。これにより、電動モータ12に対する第一の給電経路42を通じての給電が停止されて、可動部材28の下方への変位駆動が停止される。
一方、このように可動部材28が作動方向の下端に位置せしめられた状態では、第二の電極58と第二の接点金具60が接触状態に維持されており、可動部材28を上方に駆動する極性とされた直流電力が、第二の給電経路44を通じて電動モータ12に給電され得るようになっている。
そして、給電装置38によって可動部材28を上方に駆動する極性とされた直流電力が第二の給電経路44を通じて電動モータ12に給電されることにより、可動部材28が上方に向かって変位駆動せしめられるようになっている。
さらに、第二の給電経路44を通じて電動モータ12に電力が供給されることにより可動部材28が上方に駆動変位せしめられて、可動部材28が作動方向の上端に到達すると、第二の電極58と第二の接点金具60の接触状態が解除されて第二のスイッチ48が遮断される。これにより、電動モータ12に対する第二の給電経路44を通じての給電が停止されて、可動部材28の上方への変位駆動が停止される。
また、可動部材28が作動方向の下端から上方に向かって駆動変位せしめられると、離隔していた第一の電極54と第一の接点金具56が再び接触せしめられて、第一のスイッチ46が接続される。更に、第一の電極54と第一の接点金具56は、可動部材28が作動方向上端に位置せしめられた状態下で接続状態に維持されるようになっている。従って、可動部材28が作動方向の上端に位置せしめられた状態において、第一のスイッチ46は接続状態に維持されており、第一の給電経路42を通じて電動モータ12に給電することが可能とされている。
そして、給電装置38によって可動部材28を下方に駆動する極性とされた直流電力が、第一の給電経路42を通じて電動モータ12に給電されることにより、可動部材28は下方に向かって変位駆動せしめられる。
かくの如くして、本実施形態に係る電動式アクチュエータ10においては、可動部材28の往復作動が目的とするストロークで実現されるようになっている。特に、第一,第二の電極54,58と第一,第二の接点金具56,60の物理的な接触が、可動部材28の駆動変位によって自動的に解除されることによって、可動部材28が停止されるようになっていることから、可動部材28の所定位置での停止を確実に実現することが出来て、可動部材28の変位量を高精度に制御することが可能である。
しかも、本実施形態においては、可動部材28が作動方向端部に位置せしめられている状態下において、第一のスイッチ46と第二のスイッチ48の何れか一方が遮断状態とされると共に、何れか他方が接続状態とされている。従って、給電装置38によって極性が反転されると、接続状態に維持されたスイッチを有する側の接続経路を通じて直流電流が速やかに電動モータ12に給電されて、可動部材28が反対の端部側に向かって作動せしめられる。従って、駆動端における可動部材28の停止と停止状態からの駆動を何れも安定して実現することが出来る。
また、第一,第二の接点金具56,60を可動部材28に固定して、可動部材28の駆動変位に伴って第一,第二の電極54,58に対して相対的に変位させることにより、それら電極54,58と接点金具56,60で構成されたスイッチ46,48の接続と切断を切り換えて可動部材28の駆動端を規定するようになっている。それ故、可動部材28の位置を検出するセンサ等を採用して可動部材28の駆動端を規定する場合に比して、簡単な構造と少ない部品点数で、且つ、安価に可動部材28の駆動端を規定することが出来る。
また、本実施形態では、可動部材28と保持筒部24の中心軸まわりでの相対的な回転を防ぐ回転制限機構が設けられている。これにより、電動モータ12の回転軸14の回転に伴って可動部材28が回転するのを防ぐことが出来て、可動部材28を効率良く駆動変位せしめることが出来る。
このような構造とされた電動式アクチュエータ10は、例えば、流体封入式防振装置としての自動車用エンジンマウント64に採用される。このエンジンマウント64は、マウント本体66を備えており、第一の取付部材としての第一の取付金具68と第二の取付部材としての第二の取付金具70が、本体ゴム弾性体72で相互に連結された構造を有している。そして、第一の取付金具68が振動伝達系を構成する一方の部材である図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具70が振動伝達系を構成する他方の部材である図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、それらパワーユニットと車両ボデーがエンジンマウント64を介して防振連結されるようになっている。
より詳細には、第一の取付金具68は、鉄やアルミニウム合金等で形成されたブロック状の部材であって、本実施形態では、上部が円形ブロック形状とされていると共に、下部が上方に行くに従って次第に大径となる円形ブロック状とされている。また、第一の取付金具68の上端部には、上方に向かって突出する取付ボルト74が一体的に設けられている。
一方、第二の取付金具70は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、第一の取付金具68と同様に鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材とされている。また、上端部には、内フランジ状の段差部76が設けられていると共に、段差部76の内周側端部には上方に向かって延びて次第に拡開するテーパ状部78が一体形成されている。更に、テーパ状部78の上端部には軸直角方向で広がるフランジ状部80が形成されている。
それら第一の取付金具68と第二の取付金具70は、第二の取付金具70のフランジ状部80が設けられた側の開口部側に離隔して、同一中心軸上に配置される。そして、第一の取付金具68と第二の取付金具70の間に本体ゴム弾性体72が介装せしめられて、第一の取付金具68と第二の取付金具70が本体ゴム弾性体72で相互に連結されている。
本体ゴム弾性体72は、厚肉の略円錐台形状を有するゴム弾性体で形成されており、大径側の端部には、端面に開口する半球形状乃至はすり鉢形状の大径凹所82が形成されている。そして、本体ゴム弾性体72の小径側端部には、第一の取付金具68の下端部が挿し込まれて加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体72の大径側端部外周面には、第二の取付金具70のテーパ状部78を含む上端部分が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具68と第二の取付金具70が本体ゴム弾性体72で弾性連結されていると共に、第二の取付金具70の一方の開口部が本体ゴム弾性体72で流体密に閉塞されている。以上により、本実施形態における本体ゴム弾性体72は、第一の取付金具68と第二の取付金具70を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体72の大径側端部の外周縁部には、軸方向下方に向かって薄肉大径の筒状を有するシールゴム層84が一体形成されている。このシールゴム層84は、第二の取付金具70の内周面に被着形成されており、第二の取付金具70の段差部76よりも下側部分の内周面が、シールゴム層84によって略全面に亘って被覆されている。なお、大径凹所82の開口周縁部において、シールゴム層84よりも内周側には、略軸直角方向に広がる環状の段差面86が形成されている。
また、第二の取付金具70の他方の開口部分には、ダイヤフラム88が配設されている。ダイヤフラム88は、薄肉大径の略円板形状を呈するゴム膜であって、外周部分に軸方向で充分な弛みを有している。また、ダイヤフラム88の中央部分は、外周部分に比して厚肉の円板形状とされた中央当接部90とされている。更に、ダイヤフラム88の外周縁部には、円環形状の固着部92が一体形成されている。
また、ダイヤフラム88に設けられた固着部92には、固定金具94が加硫接着されている。固定金具94は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、大径の略円環形状を有しており、固着部92に埋設状態で固着せしめられている。以上のように、本実施形態におけるダイヤフラム88は、固定金具94を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
そして、ダイヤフラム88の一体加硫成形品は、第一の取付金具68と第二の取付金具70を備えた本体ゴム弾性体72の一体加硫成形品に取り付けられる。即ち、第二の取付金具70の本体ゴム弾性体72とは反対側の開口部からダイヤフラム88を挿し入れた後に、第二の取付金具70に対して縮径加工を施すことにより、固定金具94を第二の取付金具70の開口部分に嵌着固定させる。これにより、ダイヤフラム88が第二の取付金具70の他方の開口部分を流体密に覆蓋するように取り付けられる。
かかるダイヤフラム88の第二の取付金具70への組付け下では、第二の取付金具70の内周側において、本体ゴム弾性体72とダイヤフラム88の軸方向対向面間には、外部から隔離されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域96が形成されている。なお、流体封入領域96に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油やそれらの混合液が好適に採用される。また、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体封入領域96には、仕切部材98が収容配置されており、第二の取付金具70で支持されている。仕切部材98は、仕切部材本体100と蓋板金具102を含んで構成されている。
仕切部材本体100は、厚肉の略円板形状を有しており、硬質の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、仕切部材本体100の径方向中央部分には、下方に向かって開口する円形の中央凹所104が形成されている。更に、仕切部材本体100の径方向中央部分には、上方に向かって突出する小径の中央突起106が一体形成されている。
また、仕切部材本体100の外周縁部には、第一の周溝108が形成されている。第一の周溝108は、仕切部材本体100の外周面に開口せしめられており、仕切部材本体100の外周縁部を周方向に一周弱の所定長さで連続して延びている。更に、仕切部材本体100の径方向中間部分には、凹溝110が形成されている。凹溝110は、仕切部材本体100の上端面に開口せしめられており、中央凹所104と第一の周溝108の径方向間を周方向に一周弱の所定長さで連続して延びている。なお、この凹溝110は、一方の端部が軸直角方向に延びる連通路112を通じて中央凹所104に連通されている。
一方、蓋板金具102は、略円板形状を有する金属製の部材とされている。また、本実施形態の蓋板金具102は、外周部分が段差を介して中央部分よりも軸方向上方に位置せしめられている。更に、蓋板金具102の中央部分には、円形の貫通孔114が形成されている。貫通孔114は、仕切部材本体100に形成された中央突起106の形状に対応する小径の孔とされている。
そして、それら仕切部材本体100と蓋板金具102が相互に組み合わされることにより、本実施形態における仕切部材98が構成されている。即ち、仕切部材本体100の上端面に対して蓋板金具102が重ね合わされると共に、仕切部材本体100に突設された中央突起106を蓋板金具102に貫通形成された貫通孔114に対して嵌め入れることにより、蓋板金具102が仕切部材本体100に対して固定されて、仕切部材98が構成される。
かかる仕切部材98においては、仕切部材本体100と蓋板金具102が、径方向中央部分で相互に密着せしめられて重ね合わされていると共に、外周部分で軸方向に所定距離を隔てて位置せしめられている。そして、仕切部材本体100と蓋板金具102が相互に離隔せしめられた外周部分には、それら仕切部材本体100と蓋板金具102の対向面間を周方向に延びる第二の周溝116が形成されている。この第二の周溝116は、図中において必ずしも明らかではないが、周方向に一周弱の所定長さで連続的に延びている。なお、第二の周溝116の周方向端部間には、仕切部材本体100と一体形成された図示しない隔壁が設けられて、第二の周溝116を周方向で一周弱の長さに仕切っている。
また、仕切部材本体100と蓋板金具102の組付け下において、第一の周溝108の一方の端部と第二の周溝116の一方の端部が、第一の周溝108の一方の端部において仕切部材本体100の上端面に開口する接続窓118を通じて相互に接続されている。これにより、第一の周溝108と第二の周溝116によって周方向に二周弱の所定長さで延びる螺旋状の周溝120が形成されている。
このように仕切部材本体100と蓋板金具102で構成された仕切部材98は、流体封入領域96内に収容配置される。即ち、ダイヤフラム88の第二の取付金具70への取付け前に、仕切部材98が、第二の取付金具70に対して本体ゴム弾性体72を加硫接着された側と反対側の開口部から嵌め入れられる。その後、ダイヤフラム88が同開口部から第二の取付金具70に嵌め入れられて、第二の取付金具70に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材98とダイヤフラム88が第二の取付金具70に対して嵌着固定される。
かかる仕切部材98とダイヤフラム88の配設下において、仕切部材98の上端面の外周部分が本体ゴム弾性体72の段差面86に圧接されると共に、仕切部材98の下端面の外周部分が固着部92を介して固定金具94に圧接されて、それぞれ流体密にシールされている。更に、仕切部材98の外周面が、シールゴム層84を介して第二の取付金具70に対して流体密に重ね合わされている。これらにより、流体封入領域96が仕切部材98を挟んで軸方向で上下に二分されており、仕切部材98を挟んだ一方の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体72で構成されて、本体ゴム弾性体72の弾性変形によって圧力変動が惹起せしめられる受圧室122が形成されていると共に、仕切部材98を挟んだ他方の側には、壁部の一部がダイヤフラム88で構成されて、ダイヤフラム88の弾性変形によって容積変化が許容される平衡室124が形成されている。なお、それら受圧室122と平衡室124には、流体封入領域96に封入された非圧縮性流体がそれぞれ封入されている。
また、仕切部材98の外周縁部に形成された周溝120の外周側開口部が、第二の取付金具70によって流体密に閉塞されている。また、周溝120の一方の端部が蓋板金具102に形成された図示しない連通窓を通じて受圧室122に連通されていると共に、周溝120の他方の端部が仕切部材本体100に形成された連通窓126を通じて平衡室124に連通されている。これらにより、周方向に所定の長さで延びて、受圧室122と平衡室124を相互に連通する流体流路としての第一のオリフィス通路128が、仕切部材98の周溝120を利用して形成されている。
本実施形態では、第一のオリフィス通路128を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。
さらに、仕切部材98に形成された凹溝110の開口部が蓋板金具102によって覆蓋されており、凹溝110の一方の端部が蓋板金具102に形成された図示しない連通窓を通じて受圧室122に連通されていると共に、凹溝110の他方の端部が中央凹所104を通じて平衡室124に連通されている。これにより、周方向に所定の長さで延びて、受圧室122と平衡室124を相互に連通する流体流路としての第二のオリフィス通路130が、仕切部材98の凹溝110と中央凹所104を利用して形成されている。
第二のオリフィス通路130を通じて流動せしめられる流体の共振周波数は、第一のオリフィス通路128よりも高周波数にチューニングされており、本実施形態では、該流体の共振作用に基づいてアイドリング振動等に相当する20〜40Hz前後の中乃至高周波数域の振動に対して有効な防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようにチューニングされている。
なお、オリフィス通路128,130のチューニングは、例えば、受圧室122や平衡室124の各壁ばね剛性、即ちそれら各室122,124を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体72やダイヤフラム88等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路128,130の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路128,130を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路128,130のチューニング周波数として把握することが出来る。
かくの如き構造を有する本実施形態に係るマウント本体66は、ブラケット金具132に組み付けられている。ブラケット金具132は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、マウント本体66が嵌め入れられる嵌着部134を有している。嵌着部134は、全体として有底円筒形状を有しており、上端部にフランジ部136を有している。また、嵌着部134の外周面には、環状の脚部138が溶接等によって固定されている。この脚部138には、周上の複数箇所において図示しないボルト孔が貫通形成されており、ボルト孔に挿通される同じく図示しない固定用ボルトによって脚部138が車両ボデーに螺着固定されるようになっている。
そして、マウント本体66が、ブラケット金具132の嵌着部134に対して上側開口部から嵌め入れられて、第二の取付金具70が嵌着部134に圧入固定されることにより、マウント本体66がブラケット金具132に嵌着固定されている。なお、本実施形態では、第二の取付金具70の上端に設けられたフランジ状部80が、嵌着部134の上端に設けられたフランジ部136に対して上方から当接せしめられることにより、第二の取付金具70と嵌着部134が相対的に位置決めされるようになっている。
そこにおいて、本発明に従う構造の電動式アクチュエータ10が、ブラケット金具132の嵌着部134に対して嵌め入れられて、嵌着部134の底壁部上に載置された状態で固定される。かかるブラケット金具132への装着状態において、マウント本体66がブラケット金具132に対して組み付けられることにより、本実施形態に係るエンジンマウント64が構成されている。なお、図7,8に示されているように、電動式アクチュエータ10を構成する支持部材20が、ブラケット金具132に応じた形状とされており、支持部材20の外周面および下面がブラケット金具132の内面に重ね合わされて固着せしめられている。
また、エンジンマウント64において、電動式アクチュエータ10は、マウント本体66の下方に位置せしめられており、可動部材28がダイヤフラム88の中央当接部90に対して、軸方向で所定距離を隔てて、或いは、重ね合わされた当接状態で下方に位置せしめられている。
換言すれば、電動式アクチュエータ10は、ダイヤフラム88を挟んで仕切部材98と反対側に位置せしめられており、電動式アクチュエータ10の可動部材28がダイヤフラム88の中央当接部90を挟んで第二のオリフィス通路130の平衡室124側の開口部である中央凹所104に対して対向位置せしめられている。
そして、可動部材28は、軸方向で駆動変位せしめられることによって、ダイヤフラム88の中央当接部90に対して当接或いは離隔せしめられるようになっており、中央当接部90が可動部材28の軸方向での往復作動に応じて上下に変位せしめられるようになっている。これにより、ダイヤフラム88の中央当接部90は、可動部材28の駆動変位に応じて、仕切部材98の中央凹所104に対して相対的に接近または離隔せしめられるようになっている。
すなわち、可動部材28が往復作動方向で上端に位置せしめられると、中央当接部90が可動部材28によって押圧されて、仕切部材98の下面に押し付けられることにより、中央凹所104の開口部が中央当接部90を介して可動部材28で閉塞されるようになっている。
一方、可動部材28が往復作動方向で下端に位置せしめられると、可動部材28がダイヤフラム88の中央当接部90に対して下方に離隔せしめられて、中央当接部90が仕切部材98の下方に離隔位置することで、中央凹所104が平衡室124に開口せしめられる。
以上により、可動部材28の往復作動を制御することによって、第二のオリフィス通路130の平衡室124側の開口部である中央凹所104の開口部を、開口状態と閉塞状態に切り換えることが出来るようになっており、第二のオリフィス通路130の連通状態と遮断状態が切り換えられるようになっている。なお、図8からも明らかなように、本実施形態では、可動部材28とダイヤフラム88が非接着で重ね合わされており、相互に離隔可能とされている。また、上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、可動部材28によって作用部材としての可動弁体が構成されており、出力部材と作用部材が同一の部材で構成されている。
このような構造とされた自動車用エンジンマウント64は、マウント本体66を構成する第一の取付金具68が、取付ボルト74によって図示しないパワーユニットに取り付けられるようになっていると共に、第二の取付金具70がブラケット金具132を介して図示しない車両ボデーに取り付けられるようになっている。これにより、エンジンマウント64が、パワーユニットと車両ボデーの間に介装されるようになっており、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント64が自動車に装着されて、走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波数域の振動が入力されると、受圧室122に比較的に大きな圧力変動が生ぜしめられる。そして、受圧室122と平衡室124の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差により第一のオリフィス通路128を通じての流体の流動量が効果的に確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、エンジンシェイク等の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるのである。
その際、可動部材28は、図7に示されているように、往復作動方向の上端に位置せしめられており、ダイヤフラム88の中央当接部90を介して第二のオリフィス通路130の平衡室124側開口部に押し付けられている。これにより、第二のオリフィス通路130の平衡室124側の開口部が流体密に閉塞せしめられて、第二のオリフィス通路130が遮断状態となっている。従って、第二のオリフィス通路130を通じて受圧室122と平衡室124の間で流体が流動して受圧室122内の液圧が平衡室124に逃されるのを防いで、第一のオリフィス通路128を通じての流体流動を効率的に生ぜしめ、流体の流動作用に基づく防振効果を効果的に得ることが出来る。
また、停車時に問題となるアイドリング振動や走行時に問題となる低速こもり音等の中乃至高周波数域の振動の入力では、受圧室122に対して小さな振幅の圧力変動が惹起されることとなる。かかる振動の入力時には、電動モータ12への給電により、回転軸14が周方向一方向に回転作動せしめられて、図8に示されているように、可動部材28が軸方向下方に駆動変位せしめられるようになっている。
これにより、第二のオリフィス通路130の平衡室124側の開口部が連通状態に切り換えられて、第二のオリフィス通路130によって受圧室122と平衡室124が相互に連通される。そして、受圧室122と平衡室124の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差により第二のオリフィス通路130を通じての流体の流動量が効果的に確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、アイドリング時振動等の中乃至高周波数域の振動に対して有効な防振効果(低動ばね効果)が発揮されるのである。
要するに、本実施形態に係る流体封入式防振装置においては、可動部材28の往復作動によって、第二のオリフィス通路130が連通と遮断に制御されて、防振特性が切り換えられるようになっている。なお、図7,図8においては、分かり易さのために、可動部材28の往復作動のストロークが誇張されて示されている。それに伴って、雄ねじ部材18および雌ねじ部34の形状、具体的には、例えば、それら雄ねじ部材18と雌ねじ部34におけるねじ山の傾斜やサイズ等も誇張して図示されている。
このような本実施形態に従う構造の自動車用エンジンマウント64においては、上述の如き構造の電動式アクチュエータ10を可動部材28の駆動手段として採用することにより、第二のオリフィス通路130の開閉制御を高精度に実現することが出来て、防振特性の安定した切換制御が可能となる。
しかも、可動部材28の往復作動を制御する制御回路36が簡単な構造とされていることから、部品点数の増加やコストの増大等も防ぐことが出来る。
さらに、電動モータ12への給電によって発揮される回転駆動力を、軸方向での直線的な往復駆動力に変換して可動部材28に伝達する動力変換機構として、螺子構造を採用することにより、雄ねじ部材18と雌ねじ部34の螺合作用(ねじ山間の係止力や摩擦力)によって、可動部材28に保持力が及ぼされるようになっている。それ故、電動モータ12への通電が停止される可動部材28が駆動端に位置する状態においても、可動部材28を駆動端に保持することが出来て、目的とする第二のオリフィス通路130の切換状態を維持することが出来る。
特に可動部材28が往復作動方向の上端に位置せしめられている場合において、有効な保持力を非通電で容易に得られる構造となっていることから、第二のオリフィス通路130の実質的な遮断状態を確実に維持することが出来て、エンジンシェイク等に相当する低周波数振動の入力時に、目的とする防振性能を実現することが出来る。
しかも、雄ねじ部材18と雌ねじ部34の間での摩擦や係合を利用して可動部材28に保持力を及ぼす構造とされたエンジンマウント64では、連続的な通電状態の維持によって第二のオリフィス通路130の遮断状態を維持する場合に比べて、受圧室122内の圧力が第二のオリフィス通路130を通じて可動部材28に及ぼされた場合にも、可動部材28が該圧力に抗して目的とする切換え状態に安定して維持されて、第二のオリフィス通路130の実質的な遮断状態がより確実に実現される。
さらに、電動モータ12への通電を要することなく可動部材28に保持力を及ぼすことが出来るため、切り換えられた防振特性を維持する際に消費される電力を抑えることが出来ると共に、通電状態の連続的な維持による発熱を抑えて、熱による耐久性の低下を防ぐことが出来る。
また、可動部材28の中央穴を利用して形成された雌ねじ部34に対して、回転軸14に固定された雄ねじ部材18が螺嵌されることによって、可動部材28が回転軸14に取り付けられていることから、可動部材28と回転軸14の相対的な傾斜や軸方向での抜け等を防ぐことが出来る。従って、可動部材28の安定した作動を実現して、防振特性の切換えを高精度に且つ安定して行うことが出来る。
また、例えば、リニアモータ等を採用して可動部材28の駆動方向でのストロークを制御する場合に比べて、電動モータ12への供給電圧のぶれに対する可動部材28の駆動変位量の変化が小さく抑えられることから、防振特性の切換えをより高精度に実現することが出来る。
また、本実施形態では、可動部材28の上端部に外周側に広がる押圧フランジ部30が一体形成されている。これにより、可動部材28の上端面の面積が大きく確保されて、ダイヤフラム88の中央当接部90に及ぼされる単位面積当たりの圧力を抑えることが出来る。しかも、押圧フランジ部30の外周面が円弧状の湾曲面とされていることにより、ダイヤフラム88に対して可動部材28による押圧力が及ぼされる際に、押圧力が局所的に集中して作用するのを防ぐことが出来て、ダイヤフラム88の耐久性を向上せしめることが出来る。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態においては、第一,第二の電極54,58が保持筒部24側に取り付けられていると共に、第一,第二の接点金具56,60が可動部材28側に取り付けられており、可動部材28の駆動変位に伴って第一,第二の接点金具56,60が第一,第二の電極54,58に対して相対変位せしめられるようになっている。しかし、これはあくまでも一例であって、例えば、第一,第二の電極54,58が可動部材28の外周面に取り付けられていると共に、第一,第二の接点金具56,60が保持筒部24の内周面に取り付けられていても良い。
また、前記実施形態では、第一の電極54と第二の電極58の端部が軸方向で相互にずれていると共に、第一の接点金具56と第二の接点金具60の先端部分が軸方向で相互に揃うように位置せしめられているが、例えば、第一の電極54と第二の電極58の軸方向端部を軸方向で相互に揃えて位置せしめると共に、第一の接点金具56と第二の接点金具60の先端部分を軸方向で相互にずらして位置せしめて、可動部材28が作動方向の端部に位置せしめられた場合に、第一,第二のスイッチ46,48の何れか一方が遮断状態となるようにすると共に、何れか他方が接続状態に維持されるようにすることも出来る。
また、第一,第二の電極54,58と第一,第二の接点金具56,60の何れか一方が、可動部材28に取り付けられていることは必須ではない。例えば、回転軸14の回転に応じて回転せしめられて、減速歯車列等を介することで回転軸14に比して回転数を減じられた動力伝達部材としての回転部材を出力部材とは別に設けて、該回転部材の外周面に第一,第二のブラシを装着すると共に、それら第一,第二のブラシの先端部分に対応する位置には、回転部材の回転方向に延びる第一,第二の電極を配設する。更に、第一,第二のブラシの電極への接触部分を周方向で同じ位置に配置すると共に、第一,第二の電極の端部を回転部材の回転方向で相互にずれるように位置せしめる。そして、回転部材が一定量だけ回転せしめられると、第一,第二のスイッチ手段の何れか一方が遮断状態とされると共に、何れか他方が接続状態に維持されて、出力部材の変位量が規定されるようになっていても良い。
なお、上記説明からも明らかなように、第一,第二の電極と第一,第二のブラシの相対変位は、必ずしも出力部材の駆動方向での相対変位に限定されるものではなく、例えば、出力部材の往復作動の中心線まわりでの回転による相対変位や、出力部材の往復作動方向とは異なる方向での直線的な相対変位によって、電極とブラシの接触状態と非接触状態が切り換えられるようになっていても良い。
また、前記実施形態では、電動モータ12に給電される直流電力の極性を切り換える切換手段が、第一,第二のダイオード50,52を含んで構成されているが、切換手段は、必ずしも第一,第二のダイオード50,52を含んでいなくても良く、第一の給電経路42と第二の給電経路44が互いに異なる極性の直流電力を電動モータ12に給電するようになっていれば良い。具体的には、例えば、電動モータ12に給電される直流電力の極性に応じて、第一の給電経路42と第二の給電経路44の何れか一方を遮断状態に切り換える機械的なスイッチ手段を第一,第二のスイッチ46,48とは別に設けることにより、ダイオード等の整流手段を省略することも出来る。
また、前記実施形態では、動力変換機構の一例として、回転軸14に取り付けられた雄ねじ部材18と可動部材28に設けられた雌ねじ部34を含んで構成された螺子構造が示されているが、動力変換機構はこのような螺子構造に限定されるものではなく、例えば、動力変換機構として、ウォームギヤ構造を採用することも可能である。
より具体的には、例えば、図9に示されている自動車用エンジンマウント140においては、電動式アクチュエータ142を構成する可動部材144の外周面に対して、周方向で所定の長さに亘ってねじ山を刻設することによりギヤ部146が形成されている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
そして、電動モータ12の回転軸14に固定された雄ねじ部材18が、可動部材144に設けられたギヤ部146に螺接せしめられる。これによって、動力変換機構としてのウォームギヤ構造がそれら雄ねじ部材18とギヤ部146を含んで構成されており、電動モータ12に給電されると、回転軸14の回転駆動力がウォームギヤ構造で直線的な往復駆動力に変換されて可動部材144に伝達されるようになっている。
このように、雄ねじ部材18が周上の一部においてギヤ部146に螺接せしめられた構造のウォームギヤ構造を採用することによっても、電動モータ12の回転駆動力を直線駆動力として出力部材である可動部材144に伝達せしめる動力変換機構を実現することが出来る。
また、前記実施形態に係るエンジンマウント64では、第二のオリフィス通路130の連通状態と遮断状態を切り換える作用部材としての可動弁体が、電動式アクチュエータ10を構成する出力部材としての可動部材28によって構成されているが、例えば、流体流路の連通状態と遮断状態を切り換える作用部材を出力部材とは別体で設けて、該作用部材を出力部材に対してラック等を介して連結したり、或いは直接に固定することにより、出力部材に及ぼされる往復駆動力を作用部材に伝達させても良い。これによっても、出力部材の往復駆動に伴って作用部材が往復駆動せしめられることから、流体流路の切換制御を有効に実現することが出来る。
なお、本発明に係る電動式アクチュエータにおいては、直線的に往復作動せしめられる出力部材を有している一方で、例えば、流体流路の連通と遮断を切り換えたり、他の部材乃至は部位に外力を及ぼすための作用部材は必須ではなく、作用部材が、出力部材に対して別途設けられて後付けされるようになっていても良い。
また、前記実施形態において示されたエンジンマウント64は、本発明に係る流体封入式防振装置の具体例であって、前記実施形態に記載された具体的な構造によって本発明に係る流体封入式防振装置の構造が限定的に解釈されるものではない。例えば、前記実施形態に係るエンジンマウント64は、第一のオリフィス通路128と第二のオリフィス通路130を有しているが、オリフィス通路は三本以上が設けられていても良い。また、例えば、ゴム弾性体で形成されて受圧室と平衡室を仕切る可動板や可動膜を設けて、それら可動板や可動膜の微小変位乃至は微小変形によって受圧室の液圧を平衡室に伝達する液圧吸収機構を設けることも出来る。
また、前記実施形態には、電動モータ12への給電手段として電源装置16が示されているが、本発明に係る電動式アクチュエータが電動モータに給電する給電手段を予め備えていても良いし、電動式アクチュエータとは別に給電手段が用意されるようになっており、電動式アクチュエータ自体は給電手段を含まない構造とされていても良い。
また、本発明は、必ずしも流体封入式防振装置用の電動式アクチュエータにのみ適用されるものではなく、直線的な往復駆動力を必要とする各種用途の電動式アクチュエータに適用することが可能である。
また、本発明に係る流体封入式防振装置は、必ずしもエンジンマウントとしてのみ採用されるものではなく、例えば、ボデーマウントやメンバマウント等、エンジン以外のマウントとしても採用可能であると共に、マウント以外の各種用途の防振装置にも本発明を適用することが出来得る。
さらに、本発明に係る流体封入式防振装置は、必ずしも自動車用の流体封入式防振装置にのみ適用されるものではなく、例えば、列車用のエンジンマウントやメンバマウント等に適用可能であると共に、その他各種用途の流体封入式防振装置としても好適に採用され得る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:電動式アクチュエータ,12:電動モータ,14:回転軸,18:雄ねじ部材,28:可動部材,34:雌ねじ部,38:給電装置,42:第一の給電経路,44:第二の給電経路,46:第一のスイッチ,48:第二のスイッチ,50:第一のダイオード,52:第二のダイオード,54:第一の電極,56:第一の接点金具,58:第二の電極,60:第二の接点金具,64:エンジンマウント,68:第一の取付金具,70:第二の取付金具,72:本体ゴム弾性体,88:ダイヤフラム,122:受圧室,124:平衡室,128:第一のオリフィス通路,130:第二のオリフィス通路