以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両運転支援システムの概要を示す模式図であり、図2は本発明に係る運転支援装置としての車載装置40の構成を示すブロック図である。本発明に係る車両運転支援システムは、車載装置40、交差点に設置した信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点及び黄信号時間など)を車載装置40へ送信するための通信装置50などを備えている。なお、通信装置50に代えて、光ビーコン20から信号情報を送信してもよい。
図1に示すように、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m)を有して路上装置31、32を設置してある。また、路上装置31の上流側(例えば、路上装置31から上流300m程度)に、光ビーコン20を設置している。なお、路上装置31、32を設置しない場合には、光ビーコン20の設置位置を停止線から約700mの位置ではなく、約200m程度上流側に設置してもよい。
路上装置31、32は、例えば、超音波感知器、ICタグ、磁気ネール、光センサ等であり、電波、音波、光、磁気などをセンシングすることにより交信地点を特定することができるものである。また、路上装置31、32に代えて、光ビーコン、電波ビーコンなどを用いることもできる。路上装置31、32は、車載装置40(運転支援装置)を搭載した車両との交信領域を有する。車両が交信領域を通過する際に、車載装置40は、路上装置31、32から交信領域を通過することを示す信号を受信する。なお、路上装置31、32は、車載装置40との間で一方向通信を行うものでも双方向通信を行うものでもよい。また、路上装置31、32は、通信を目的としたものでなく、単に計測のための信号を発するだけでもよい。
光ビーコン20は、車載装置40との通信領域を有する。車両が通信領域を通過する際に、車載装置40は、光ビーコン20から所定の情報を受信する。所定の情報は、例えば、車載装置40と光ビーコン20との通信地点の位置情報、停止線の位置情報(例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、路上装置31、32の位置情報(例えば、停止線から交信領域までの距離、交信領域の絶対位置など)などである。なお、光ビーコン20に代えて、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)などを用いることもできる。
停止線から上流側の所定距離までの所定範囲Aに、適長離隔して画像感知器10、…を設置してある。各画像感知器10は、例えば、ビデオカメラで構成され、道路上の所定の撮像領域A1、…を走行する車両を撮像することができる。各画像感知器10により、道路上の所定範囲A(撮像領域A1、…)内の車両をすべて撮像することができる。また、各画像感知器10は、通信装置50に接続してある。
各画像感知器10は、撮像された画像データに基づいて、車両の車頭又は車尾などを抽出して車両の位置を検出するとともに、撮像時刻の異なる画像データに基づいて、車両の速度を検出する。また、各画像感知器10は、車両全体の特徴から車種、車色を検出することもできる。各画像感知器10で算出する車両の位置は、車両の道路の進行方向の位置(例えば、交差点の停止線からの距離)、道路の幅方向の位置(例えば、車線、左側の路肩からの距離)などである。なお、各画像感知器10は、単眼カメラでもよく、ステレオカメラでもよい。ステレオカメラの場合には、単眼カメラよりも車両の位置、速度を精度良く求めることが可能となる。また、画像感知器10に代えて、車両の位置、速度などを検出することができるものであれば、他の車両感知器であってもよい。
各画像感知器10は、検出した車両の停止線等の所定の地点からの距離、走行車線情報又は路肩からの距離、速度、車種、車色、撮像時刻などを含む車両情報を通信装置50へ出力する。なお、各画像感知器10は、所定時間(例えば、0.1秒、0.5秒、1秒など)経過の都度、検出処理を繰り返す。
通信装置50は、各画像感知器10から入力された車両情報を一旦記憶する。また、通信装置50は、UHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能などの中域通信機能、又は、携帯電話、PHS等で使用する周波数帯域を使用する広域通信機能を備え、所定時間(例えば、0.1秒、0.5秒、1秒など)の経過の都度、記憶した車両情報を車載装置40へ送信する。また、通信装置50は、交差点に設置した信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点及び黄信号時間など)を車載装置40へ送信する。
車載装置40は、自車両の位置を測位しつつ、通信装置50から受信した車両情報を探索して、車両情報の中で自車両の位置を特定するとともに、自車両の前方を走行するすべての前方車両の位置、速度などの情報を含む周辺車両情報を生成する。なお、周辺車両情報の生成方法の詳細は後述する。
車両が交差点に向かって道路を走行する場合、車載装置40は、光ビーコン20との通信により、所定の情報を取得する。例えば、車載装置40は、この時点で停止線までの距離が、例えば、700mであることを確認することができる。また、車載装置40は、車両が交差点に向かって道路をさらに走行し、車載装置が路上装置31と交信することにより、車載装置は、自車両の位置が停止線から400mの地点にあることを確認することができる。すなわち、車載装置40は、停止線までの距離を補正することができる。また、車載装置40が路上装置32と交信した場合も同様である。これにより、車載装置40は、交差点の上流地点で、予め停止線までの距離を精度良く把握しておくことができる。
その後、車載装置40は、自車両の前方を走行する各前方車両の速度、停止線(交差点)までの距離、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間及び所定の標準減速度などに基づいて、各前方車両が黄信号開始後に停止しようとして交差点の手前に停止する停止条件及び黄信号の終了時点までに交差点に進入する進入条件により決定される特定の状態(停止線までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。なお、前方車両の速度情報は、前方車両の実際の速度でもよく、前方車両の速度が自車両の速度と同じとみなして自車両の速度を用いてもよく、あるいは、予め設定した所定の速度であってもよい。
標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。なお、運転支援装置が標準減速度での速度制御を実施するタイミングは、反射反応より十分長い時間、あるいは反射反応の時間に限らない。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。
車載装置40は、それぞれ前方車両の判定結果に基づいて、自車両が特定の状態(例えば、危険走行状態)にあるか否かを判定する。例えば、複数の前方車両のうちで、ある前方車両が危険走行状態にあると判定した場合、その前方車両が交差点の手前で停止するとして、その前方車両に追従して走行する他の前方車両のうち最後列の前方車両の後ろに停止できるか否かを判定する。また、各前方車両が危険走行状態にないと判定した場合において、すべての前方車両が交差点を通過するときには、自車両が交差点に停止できるか否かを判定する。また、車載装置40は、自車両を危険走行状態から回避させるために、例えば、車両を最後列の前方車両の後方又は停止線に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための処理を行い、あるいは、自車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で加速するための処理を行う。
図2に示すように、車載装置40は、車両内に搭載されたビデオカメラ(車載カメラ)41を接続してある。ビデオカメラ41は、例えば、車両のフロントグリル、前部バンパなどに配置され、車両前方を走行する前方車両及び前方の路面を撮像できるようにしてある。車載装置40は、ビデオカメラ41で撮像した画像に基づいて、自車両の前方を走行する前方車両の位置(車間距離)、速度(相対速度)、車種、車色などを所定の時間周期(例えば、0.1秒)で取得し、取得した情報を隣接車両情報として記憶部406に記憶する。なお、隣接車両情報を生成するためには、ビデオカメラ41に代えて、超音波センサなどを用いることもできる。
車載装置40は、各種の演算処理を行うCPUからなり後述する制御周期を計時するための時計を内蔵する制御部401を備える。なお、制御部401は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。また、車載装置40は、通信部402、GPS(Global Positioning System)受信部403、ナビゲーション部404、センサ部405、記憶部406、自車両特定部407、周辺車両情報生成部408、画像処理部409、表示部410、報知部411、インタフェース部412などを備えている。また、車載装置40は、専用装置のみならず、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話など、取り外して地上でも別の目的などに利用できる装置に上述の各部の機能を備えるようにして構成することもできる。
通信部402は、光ビーコン20との間で路車間通信を行うための狭域通信機能を有する。また、通信部402は、通信装置50との通信のため、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能、あるいは、広域通信として携帯電話、PHS、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備える。また、通信部402は、路上装置31、32が送信する信号を受信する受信機能を備えている。
通信部402は、光ビーコン20から、通信地点の位置情報、停止線の位置情報(例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、路上装置31、32の位置情報(例えば、停止線から交信領域までの距離、交信領域の絶対位置など)など情報を受信する。また、通信部402は、通信装置50から、車両情報、信号情報など所定の時間経過の都度、繰り返し受信する。通信部402は、受信した各情報を記憶部406に記憶する。
センサ部405は、ジャイロセンサ、距離計、超音波センサ、ミリ波センサ等の車載センサを備える。
GPS受信部403は、DGPS(ディファレンシャルGPS)又はRTK−GPS(Real-Time KinematicGPS)などのGPS受信機能を備え、複数のGPSを含むGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を随時繰り返し受信し、自車位置を測位する。これにより、車載装置40は、任意の地点での自車両の位置(例えば、交差点の停止線からの距離)を取得することができる。
ナビゲーション部404は、地図データベース等を内蔵し、GPS受信部403からの情報、センサ部405からの情報に基づいて、自車両の位置(交差点の停止線からの距離、走行車線など)、自車両の速度等を所定の時間周期(例えば、0.1秒)で求め、自車両の走行履歴を示す自車両情報を生成して記憶部406に記憶する。
自車両特定部407は、自車両情報で示される自車両の位置に基づいて、道路上の所定範囲A内に存在する車両を示す車両情報を探索し、自車両の位置に一致又は近似(最も近い)車両を自車両として特定する。この場合、車両位置の誤差、現在時点(例えば、通信装置50から車両情報を受信した時点、あるいは受信した車両情報に基づいて自車両の特定処理を行う時点など)と車両情報で示される車両の検出時点との時間差(時間ずれ)の誤差などに応じて、探索範囲を決定する。なお、詳細は後述する。
周辺車両情報生成部408は、車両情報で示される車両の中から特定された自車両とその他の周辺車両との位置関係を含む周辺車両情報を生成する。
画像処理部409は、制御部401から画像処理開始の信号を受け付けた場合、ビデオカメラ41で道路を撮像して得られた撮像画像に基づいて、停止線を検出するための処理を行う。また、画像処理部409は、撮像画像に基づいて前方車両を抽出し、前方車両の車種又は大きさを特定する。特定した車種又は大きさに応じて、前方車両の車長を算出する。また、画像処理部409は、撮像画像に基づいて前方車両までの距離を算出することもできる。以下、撮像画像に基づいて停止線の位置を検出する方法について説明する。
ビデオカメラ41のレンズ中心を原点として、道路座標系を(X、Y、Z)、カメラ座標系を(X’、Y’、Z’)とし、道路座標系は、道路の進行方向をY軸(前方向を正)、道路方向と垂直な道路面上の方向をX軸(前方に向かって右方向を正)、路面と垂直な方向をZ(上方を正)とする。また、カメラ座標系は、カメラレンズの光軸をY’軸、光軸に垂直であって水平方向の軸をX’軸、カメラの上方向をZ’軸とする。さらに、カメラ座標系の各軸の道路座標系の各軸に対する回転角を、それぞれθ(ピッチ角)、φ(ロール角)、ψ(ヨー角)とし、全て右ねじの進む方向を正(θ:水平面より上向きが正、φ:右回りが正、ψ:左回りが正)とする。この場合、道路座標系からカメラ座標系の変換式は、式(1)で表すことができる。
変換行列の係数P11〜P33それぞれは、式(2)で表すことができる。また、撮像画像上の座標(x、y)は、レンズの焦点距離をFとすると、式(3)で表すことができる。
停止線の有無の判定は、撮像画像の各画素の画素値に基づいて、エッジ点を抽出し、抽出したエッジ点より得られるエッジ画像と停止線の形状とのパターンマッチングを行うことにより判定することができる。切り出された停止線が撮像画像のy軸と交わる点のy座標を求め(この場合x=0)、求めたy座標を式(3)に代入すれば、停止線までの距離を精度良く算出することができる。
表示部410は、ヘッドアップディスプレイ又はモニタなどの液晶表示パネルであり、運転者に対して、各種情報を表示することができる。
報知部411は、スピーカを備え、制御部401の制御のもと、運転者に警告する場合、警告の内容を音声で出力する。例えば、車両が後述する危険走行領域にある場合、危険走行領域を回避すべく自動速度制御を行う(自動速度制御モードに入る)旨を出力する。また、車両を所定地点又は交差点に停止させるために減速させる場合、あるいは交差点に進入(通過)させるため加速させる場合、その旨を出力する。
インタフェース部412は、車両の走行を制御する車両制御部(不図示)に対して制御信号を出力する。インタフェース部412は、例えば、所要の加減速度で車両を加減速させるための制御信号を出力する。
次に車両情報を探索して自車両を特定する方法について説明する。図3は自車両の特定方法を示す説明図であり、図4は車両情報の一例を示す説明図であり、図5は隣接車両情報の一例を示す説明図であり、図6は周辺車両情報の一例を示す説明図である。図3(a)は、各画像感知器10で道路上の所定範囲A内に存在するすべての車両を撮像して車両を検出した検出時点における車両の分布(位置関係)を示したものである。また、図3(b)は、現在時点(例えば、通信装置50から車両情報を受信した時点、あるいは受信した車両情報に基づいて自車両の特定処理を行う時点など)における車両の分布を示す。なお、模様が付された車両は、自車両であり、破線で示された車両は、自車両を特定した後に周辺の車両として認識することができる他の車両である。
図4に示すように、車両情報は、図3(a)で示される車両検出時の車両の分布を表したものである。すなわち、車両情報は、交差点の停止線からの走行車線毎の車両順番、停止線までの距離、速度、走行車線、車種、車色などの情報により構成されている。また、走行車線に代えて、道路の幅方向の位置であってもよい。なお、停止線までの距離は車尾の位置を基準としているが、これに限定されるものではない。
図5に示すように、隣接車両情報は、自車両情報と隣接車両の情報とで構成され、自車両情報は、自車両の停止線までの距離、速度、走行車線などを時系列に記録したものである。図5の例では、0.1秒毎に記録されているが、記録の時間間隔はこれに限定されるものではない。また、時刻00:0が現在時刻(現在時刻)であり、自車両の特定処理を行う時点、あるいは、車両情報を受信した受信時刻などである)。また、時刻99:0、すなわち、現在時刻から1秒前の時刻が車両を検出した検出時刻であるとする。なお、停止線までの距離は推定値であり、括弧内の数値は真値であるとする。
隣接車両の情報は、時刻毎に自車両との車間距離、相対速度、隣接車両の走行車線、車種、車色、前方の隣接車両か後方の隣接車両かの別などの情報で構成されている。例えば、検出時刻99:0において、自車両の前方に車間距離24m、相対速度12km/hで走行する隣接車両が存在することを示す。なお、自車両の後方に隣接車両が存在する場合には、後方の隣接車両の情報についても同様に記録することができる。
図3(b)で示す現在時点における自車両の位置の真値をX、推定値をXd、車両位置の誤差(最大誤差)をXmaxとすると、Xd−Xmax≦X≦Xd+Xmaxとなる。また、時間差の誤差についても考慮するとして、車両検出時点と現在時点との時間差(時刻ずれ)の真値をt、時間差の推定値をtd、時間差の誤差(最大誤差)をtmaxとすると、td−tmax≦t≦td+tmaxとなる。ここで、tmaxは、時間差(時刻ずれ)の推定値の誤差である。自車両の現在時刻の速度をVとする。
この場合、車両探索範囲は、Xd−Xmax+td・V−tmax・V≦X0≦Xd+Xmax+td・V+tmax・Vにより決定される。
図4の例で示される車両情報を探索する場合、図5に示すように、現在時点(時刻00:0)における自車両の位置(停止線までの距離)の真値X=250m、推定値Xd=246、速度V=72km/h=20m/sであり、車両位置の誤差Xmax=5mとする。また、時間差の真値t=1.2s、推定値td=1s、時間差の誤差tmax=0.3sとすると、車両探索範囲は、255≦X0≦277となる。図3及び図4の例では、車両C6、C11が特定され、いずれか一方が自車両であり、他方が周辺車両である。ここで、特定された複数の車両から自車両を特定するために隣接車両情報を用いる。
図3又は図4で示されているように、車両C6、C11の同一車線の前方車両は、それぞれ車両C5、C10である。図4から、車両C6とC5の車尾(頭)間距離は29m、車両C11とC10の車尾(頭)間距離は40mである。一方、隣接車両情報によれば、自車両と前方の車両との車間距離は24mであり、これに自車両の車長(例えば、5m)を加えると車尾(頭)間距離は29mとなる。従って、車両C11は除外され、車両C6が自車両であることが分かる。
図6に示すように、車両情報を探索して自車両を特定することにより、自車両の周辺に存在する車両との相対関係、例えば、位置関係を含む周辺車両情報を生成することができる。周辺車両情報は、自車両の前方を走行する前方車両と、後方を走行する後方車両とに分けて生成することができるが、図6の例では、自車両の前方に存在するすべての前方車両を示している。例えば、停止線から最も近い前方車両の順に、自車両と前方車両との車間距離、前方車両の停止線までの距離、前方車両との相対速度、前方車両の速度、走行車線、車種、車色などの情報で構成されている。なお、隣接車線や同一車線で道路方向の同じ位置を走行している車尾間距離がゼロとなる周辺車両は前方車両で扱えばよい。
図6で示される周辺車両情報は、短時間であるとしても現在時刻から時間差(時刻ずれ)だけ過去の時刻の情報である。このため、周辺車両との車間距離、停止線までの距離をそれぞれの車両の速度に応じて補正することもできる。
車載装置40で自車両情報及び隣接車両情報を取得し、通信装置50から繰り返し送信される車両情報を受信することにより、所定の時間間隔で自車両及びすべての前方車両の速度及び停止線までの距離を求めることができる。
図7は危険走行領域の概念を示す説明図である。図において、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、車両が危険走行状態であることを車両の速度と停止線までの距離とにより表すことができる領域である。危険走行領域は、ジレンマ領域とオプション領域とを含む。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。すなわち、黄信号表示中に(例えば、黄信号開始時点で)車両が危険領域にある状態であると判定した場合、その車両は危険走行状態にあると判定する。
図7において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(5)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件Lは、式(6)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
ジレンマ領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足する領域である。なお、図7において、危険走行領域の下側の領域は交差点停止領域であり、停止線手前に安全に停止することができる領域である。また、危険走行領域の上側の領域は交差点通過領域であり、安全に停止線に進入(通過)することができる領域である。
車載装置40は、車両が黄信号開始時点で危険走行領域(ジレンマ領域及びオプション領域)に突入する可能性がある場合、危険走行領域に陥らないように回避すべく、車両を加速又は減速する制御を所定時間(制御周期)の経過の都度繰り返し行う。例えば、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が停止条件Cに近い場合には、現時点の速度が点Pで特定される停止限界速度になるように緩やかな減速度による減速制御を行う。また、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が進入条件Lに近い場合には、現時点の速度が点Qで特定される進入限界速度になるように緩やかな加速度による加速制御を行う。なお、加速又は減速などの自動制御を行う代わりに運転者に対して加速又は減速を促す情報を報知し、運転者がその情報に従って車両の走行を制御することもできる。
また、車載装置40は、上述の式(4)〜(6)で、Xとして各前方車両の交差点までの距離、Vとして各前方車両の速度を代入することにより、それぞれの前方車両が危険走行領域にあるか否かを判定する。車載装置40は、前方車両の危険走行領域判定の結果に応じて、自車両の危険走行領域の判定を行うとともに、危険走行領域を回避するための自動速度制御を行う。
次に車載装置40による危険走行領域回避の自動速度制御について説明する。図8乃至図12は車載装置40の処理手順を示すフローチャートである。制御部401は、光ビーコン20との通信の有無を判定し(S11)、通信がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、光ビーコン20との通信があるまで待機する。
光ビーコン20との通信があった場合(S11でYES)、制御部401は、光ビーコン20から通信地点、停止線及び路上装置の位置情報を受信する(S12)。
制御部401は、自車両情報を取得し(S13)、隣接車両情報を取得する(S14)。なお、このとき光ビーコン20からの位置情報に基づいて自車両位置情報を補正し、その補正誤差の値をもとに隣接車両の位置情報を補正してもよい。制御部401は、通信装置50から信号を受信したか否かを判定し(S15)、信号を受信していない場合(S15でNO)、ステップS13の以降処理を続け、自車両の走行に伴って、自車両情報、隣接車両情報を所定の時間間隔で繰り返し取得する。
通信装置50から信号を受信した場合(S15でYES)、制御部401は、通信装置50が送信した車両情報及び信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間などを含む信号情報を受信する(S16)。
制御部401は、路上装置31、32から信号を受信したか否かを判定し(S17)、信号を受信した場合(S17でYES)、自車両及び各前方車両の停止線までの距離を修正する(S18)。例えば、停止線から路上装置31との交信地点までの距離をLとすると、自車両の位置を停止線から距離Lにあると修正する。また、各前方車両と自車両との車間距離に応じて各前方車両の停止線までの距離を修正する。これにより、自車両及び各前方車両が停止線に向かって走行するにつれて累積する距離誤差をリセットし、停止線までの距離の精度を向上させることができる。信号を受信していない場合(S17でNO)、制御部401は、ステップS18の処理を行うことなく、後述のステップS19の処理を行う。
制御部401は、受信した車両情報を探索することにより、自車両を特定し、周辺車両情報を生成する(S19)。これにより、制御部401は、自車両及び自車両の前方を走行するすべての前方車両の位置(停止線までの距離など)、速度を所定の時間経過の都度、繰り返し求めることができる。
制御部401は、自動運転開始タイミングであるか否かを判定する(S20)。自動運転開始タイミングは、自車両の位置が停止線から所定の距離(例えば、200m)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点、最後の路上装置32との交信時点など適宜設定できる。また、自動運転開始のタイミングは、自車両の速度、自車両と各前方車両との車間距離又は相対速度などに応じて変化させることもできる。
自動運転開始タイミングである場合(S20でYES)、制御部401は、各前方車両の危険走行領域を算出し(S21)、いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S22)。いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入する場合(S22でYES)、制御部401は、危険走行領域内に突入する前方車両が停止線手前に停止したとして、停止線手手前に停止する前方車両の台数を特定する(S23)。
制御部401は、停止線手前で停止する前方車両の台数に応じて、自車両の停止地点を特定し(S24)、自車両の危険走行領域を算出し(S25)、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S26)。
図13は危険走行領域に入る前方車両と停止台数の関係の一例を示す説明図であり、図14は前方車両及び自車両の危険走行領域判定の一例を示す説明図である。図13(a)に示すように、自車両の前方に各前方車両C1〜C5が走行しているとする。各前方車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定した場合、仮に前方車両C1、C2、C3は危険走行領域内になく、安全に交差点を通過することができる交差点通過領域にあるとする。
一方、前方車両C4が危険走行領域内に突入し、交差点(停止線)手前で停止するものとする。この場合、図13(b)に示すように、危険走行領域内に突入すると判定された前方車両C4、及び前方車両C4に追従して走行する前方車両C5が停止線手前で停止することになる。従って、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する場合において、交差点手前で安全に停止させるためには、停止線から2台分の前方車両C4、C5の車長、停止する際の車間距離を考慮した停止地点Xs1に自車両を停止させることができるか否かに基づいて判定する必要がある。
図14中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。前方車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、図7の例と同様にして行うことができる。図14において、停止線を基準とした前方車両の現在位置をXp、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での前方車両の位置Xpyは、前方車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)と同様にして求められる。式(4)は、現在の前方車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
一方、前方車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cpは、式(5)と同様に求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、前方車両の停止条件Cpは、前方車両が減速したならば停止線で停止することができる前方車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
前方車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない条件である進入条件Lpは、式(6)と同様に求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。前方車両の進入条件Lpは、前方車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる前方車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。前方車両のジレンマ領域、オプション領域は、図14に示すように、停止条件Cpと進入条件Lpとで囲まれる領域となる。
前方車両が危険走行領域にある場合、自車両の危険走行領域は以下のように決定することができる。まず、前方車両が危険走行領域を回避すべく交差点で停止する場合、自車両も交差点の手前であって前方車両の後方に停止する必要があり、自車両の停止条件Cで表される曲線より下側の領域にあれば危険走行領域を回避することができる。すなわち、自車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域は、交差点(前方車両の後方)で停止することができない危険走行領域である。ここで、自車両が停止地点Xs1(図13の例では、停止線を基準として前方車両C4、C5の車長分及び停止時の車間距離に応じた距離だけ上流側の地点とすることができる。)の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(7)で求められる。ここで、gは、自車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。また、Dは停止線と停止地点Xs1との間の距離である。停止条件Cは、自車両が減速したならば停止線(前方車両の後方)で停止することができる自車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
次に、自車両が交差点を通過できるのは、前方車両がいないことが前提であり、自車両の進入条件は前方車両の進入条件Lpと同じになる。従って、自車両が進入条件Lpで表される直線より下側の領域になければ交差点を越えてしまう可能性があるので、前方車両が交差点で停止する場合は、追突する可能性がある走行領域である。すなわち、前方車両が交差点で停止すると判定した場合、前方車両の進入条件Lpで表される直線の上側の領域は、交差点を通過することができず危険走行領域である。
以上のことから、自車両の危険走行領域は、自車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域であり、かつ前方車両の進入条件Lp(これは、自車両の進入条件に等しい)で表される直線の上側の領域となる。
自車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、図7の例と同様にして行うことができる。停止地点Xs1を基準とした自車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での自車両の位置Xyは、自車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の自車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
図15は危険走行領域に入る前方車両と停止台数の関係の他の例を示す説明図である。また、図16は前方車両及び自車両の危険走行領域判定の他の例を示す説明図である。図15(a)に示すように、自車両の前方に各前方車両C1〜C5が走行しているとする。各前方車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定した場合、仮に前方車両C1は、険走行領域内になく、安全に交差点を通過することができる交差点通過領域にあるとする。
一方、前方車両C2が危険走行領域内に突入し、交差点(停止線)手前で停止するものとする。この場合、図15(b)に示すように、危険走行領域内に突入すると判定された前方車両C2、及び前方車両C2に追従して走行する前方車両C3、C4、C5が停止線手前で停止することになる。従って、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する場合において、交差点手前で安全に停止させるためには、停止線から4台分の前方車両C2、C3、C4、C5の車長、停止する際の車間距離を考慮した停止地点Xs2に自車両を停止させることができるか否かに基づいて判定する必要がある。
また、図16において、停止線を基準とした前方車両の現在位置をXp、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での前方車両の位置Xpyは、前方車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)と同様にして求められる。式(4)は、現在の前方車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。一方、前方車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cpは、式(5)と同様に求められる
前方車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない条件である進入条件Lpは、式(6)と同様に求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。前方車両の進入条件Lpは、前方車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる前方車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。前方車両のジレンマ領域、オプション領域は、図16に示すように、停止条件Cpと進入条件Lpとで囲まれる領域となる。
前方車両が危険走行領域を回避すべく交差点で停止する場合、自車両も交差点の手前であって前方車両の後方に停止する必要があり、自車両の停止条件Cで表される曲線より下側の領域にあれば危険走行領域を回避することができる。すなわち、自車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域は、交差点(前方車両の後方)で停止することができない危険走行領域である。ここで、自車両が停止地点Xs2(図15の例では、停止線を基準として前方車両C2、C3、C4、C5の車長分及び停止時の車間距離に応じた距離だけ上流側の地点とすることができる。)の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(7)で求められる。
次に、自車両が交差点を通過できるのは、前方車両がいないことが前提であり、自車両の進入条件は前方車両の進入条件Lpと同じになる。従って、自車両が進入条件Lpで表される直線より下側の領域になければ交差点を越えてしまう可能性があるので、前方車両が交差点で停止する場合は、追突する可能性がある走行領域である。すなわち、前方車両が交差点で停止すると判定した場合、前方車両の進入条件Lpで表される直線の上側の領域は、交差点を通過することができず危険走行領域である。
以上のことから、自車両の危険走行領域は、自車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域であり、かつ前方車両の進入条件Lp(これは、自車両の進入条件に等しい)で表される直線の上側の領域となる。自車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、図14の例と同様に、停止地点Xs2を基準とした自車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での自車両の位置Xyは、自車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の自車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
図13乃至図16に例示するように、自車両の前方に複数の前方車両が走行している場合、いずれの前方車両が危険走行領域に突入するかに応じて、自車両が危険走行領域に突入するか否かの条件、より具体的には停止条件が異なる。従って、前方車両のいずれかが危険走行領域に突入するかに応じて、停止線に停止する前方車両の停止台数を特定することで自車両の停止地点を求めることで、自車両が危険走行領域に突入するか否かを精度良く判定することができ、交差点手前で安全に停止又は交差点を安全に通過することが可能となる。
いずれかの前方車両が危険走行領域に突入しており、かつ自車両が前方車両停止による危険走行領域内に突入する場合(S26でYES)、制御部401は、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S27)。この場合、運転者に対して車両が減速することを報知するが、制御部401による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して減速の指示を与え、運転者がその指示に従って減速するように構成することもできる。
制御部401は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S28)。目標速度は、自車両を緩やかな減速度で減速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。目標速度Vsは、以下のとおり算出することができる。前方車両が危険走行領域を回避すべく交差点で停止する場合に、自車両が危険走行領域に突入する可能性があると判定されたときは、式(4)、式(7)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsを目標速度とする。式(4)が式(7)よりも小さい場合、目標速度Vsは、式(8)で表され、図14、図16の点Pにおける速度として求められる。式(8)において、Xは前方車両が交差点で停止した場合において、前方車両の停止末尾の位置を基準とした距離である。なお、前方車両が交差点で停止しない場合(例えば、後述のステップS47の場合)、Xは交差点の停止線位置を基準として距離である。
また、自車両が式(7)の下限値が式(4)よりも小さくなる範囲のところで、危険走行領域に突入する可能性があると判定された場合、上述の式(4)及び式(6)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsの下限値を目標速度とする。目標速度Vsは、式(9)で表される。
段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな減速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
段階的目標速度Vrの算出は、減速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて大きい場合、その差分をn分割した値ΔV=(V−Vs)/nだけ減速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V−Δv=V−(V−Vs)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両は、後続車両に対して減速を感じさせないように緩やかな減速度で減速することができるので、後続車両は、急ブレーキを踏み込むような事態を防止でき、安全性が向上する。
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値β(例えば、β=1km/h)を用いて、V−Vs≧βの場合、Vr=V−βとし、V−Vs<βの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
制御部401は、現時点の速度Vを、算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな減速度で減速制御を行い(S29)、制御周期を経過したか否かを判定し(S30)、制御周期を経過していない場合(S30でNO)、ステップS30の処理を続け、制御周期が経過するまで減速制御を続ける。これにより、後続車両に対し、自車両の減速を感じさせないようにすることができる。なお、制御周期を経過したか否かを判定する代わりに車両が所定距離を移動したか否かを判定することもできる。
制御周期を経過した場合(S30でYES)、制御部401は、自車両が危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S31)。例えば、自車両の速度が停止条件Cで示される停止限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S31でNO)、制御部401は、ステップS28以降の処理を続ける。これにより、減速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな減速制御を実現することができる。
危険走行領域の境界に到達した場合(S31でYES)、制御部401は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、停止限界速度で速度維持を行う(S32)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。これにより、仮に自車両の後方を走行する後続車両がある場合でも、後続車両が自車両に追突し、あるいは自車両を無理に追い越すという危険を防止することができる。
制御部401は、黄信号開始時点から所定時間経過したか否かを判定する(S33)。この場合、所定時間は、通常、運転者が黄信号に切り替わったのを見てブレーキを踏むまでの時間遅れに合わせればよく、例えば、0.5秒程度の値である。所定時間経過していない場合(S33でNO)、制御部401は、ステップS32以降の処理を続け、所定時間経過まで一定の速度で走行を続ける。
黄信号開始時点から所定時間経過した場合(S33でYES)、制御部401は、標準減速度で減速制御する(S34)。標準減速度gは、例えば、3m/s2 とすることができる。これにより、停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線上を推移して、自車両の速度を減速させることができる。
制御部401は、すべての前方車両が交差点を通過することが確実か否かを判定し(S35)、交差点通過が確実である場合(S35でYES)、標準減速度以下の減速度で速度制御する(S36)。前方車両が交差点を通過するか否かの判定は、例えば、各前方車両の交差点(停止線)までの距離、各前方車両の速度に基づいて判定することができる。各前方車両が交差点に近づいた場合に速度が所定値以上であれば、交差点を通過することが確実であると判定できる。また、標準減速度以下の減速度での速度制御は、標準減速度よりも緩やかな減速度で速度制御することであり、減速制御及び加速制御を含む。例えば、減速し過ぎた場合には、緩やかな加速度で加速させることで速度を調整する。
制御部401は、撮像画像に基づいて停止線を検出したか否かを判定し(S37)、停止線を検出していない場合(S37でNO)、ステップS36以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S37でYES)、制御部401は、停止線までの距離を算出し、停止線までの距離を補正して微調整制御で速度を制御し(S38)、車両を停止させ(S39)、自動速度制御モードを解除するとともに、その旨報知し(S40)、処理を終了する。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、車両の速度を微調整することができ、車両を停止線に確実に停止させることができる。
いずれかの前方車両の交差点通過が確実でない場合、すなわち、いずれかの前方車両の交差点停止が確実である場合(S35でNO)、制御部401は、自車両を最後列の前方車両の後方に追従させ、ほぼ標準減速度で減速制御し(S41)、前方車両の後方に停止し(S42)、ステップS40の処理を行う。
いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入しない場合(S22でNO)、制御部401は、すべての前方車両が交差点通過領域にあるか否かを判定し(S43)、交差点通過領域にある場合(S43でYES)、自車両の危険走行領域を算出し(S44)、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S45)。
図17は前方車両及び自車両の危険走行領域判定の他の例を示す説明図である。図17は各前方車両が危険走行領域に突入することなく交差点を通過する可能性が高く、かつ自車両が危険走行領域に突入する可能性がある場合を例示している。すなわち、停止線を基準とした前方車両の現在位置をXp、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での前方車両の状態(位置Xpy、速度Vy)は、危険走行領域の外(交差点通過領域)にあり、安全に停止線に進入(停止線を通過)することができる。
一方、交差点で停止する前方車両はないため、自車両の停止位置は停止線となる。停止線を基準とした自車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始時点までの時間をtとする。黄信号開始時刻での自車両の状態(位置Xy、速度Vy)は、危険走行領域にあり、危険走行領域回避のための速度制御を行うことになる。
すべての前方車両が交差点通過領域にあり、自車両が危険走行領域内に突入する場合(S45でYES)、制御部401は、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S46)。この場合、運転者に対して車両が減速することを報知するが、制御部401による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して減速の指示を与え、運転者がその指示に従って減速するように構成することもできる。
制御部401は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S47)。制御部401は、現時点の速度Vを、算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな減速度で減速制御を行い(S48)、制御周期を経過したか否かを判定し(S49)、制御周期を経過していない場合(S49でNO)、ステップS49の処理を続ける。これにより、後続車両に対し、自車両の減速を感じさせないようにすることができる。
制御周期を経過した場合(S49でYES)、制御部401は、自車両が危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S50)。例えば、危険走行領域がジレンマ領域である場合には、自車両の速度が停止条件Cで示される停止限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S50でNO)、制御部401は、ステップS47以降の処理を続ける。これにより、減速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな減速制御を実現することができる。なお、制御周期を経過した都度減速制御の処理を行う代わりに車両が所定距離を移動した都度減速制御の処理を行うこともできる。
危険走行領域の境界に到達した場合(S50でYES)、制御部401は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、停止限界速度で速度維持を行う(S51)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。これにより、後続車両が自車両に追突し、あるいは自車両を無理に追い越すという危険を防止することができる。
制御部401は、黄信号開始時点から所定時間経過したか否かを判定する(S52)。所定時間は、通常、運転者が黄信号に切り替わったのを見てブレーキを踏むまでの時間遅れに合わせればよい。所定時間経過していない場合(S52でNO)、制御部401は、ステップS51以降の処理を続け、所定時間経過まで一定の速度で走行を続ける。
黄信号開始時点から所定時間経過した場合(S52でYES)、制御部401は、標準減速度で減速制御する(S53)。標準減速度gは、例えば、3m/s2 とすることができる。これにより、停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線上を推移して、自車両の速度を減速させることができる。
制御部401は、撮像画像に基づいて停止線を検出したか否かを判定し(S54)、停止線を検出していない場合(S54でNO)、ステップS53以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S54でYES)、制御部401は、ステップS38以降の処理を行う。
一方、自車両が危険走行領域内に突入しない場合(S26でNO、及びS45でNO)、制御部401は、処理を終了する。また、すべての前方車両が交差点通過領域にない場合、すなわち、交差点停止領域にある場合(S43でNO)、制御部401は、処理を終了する。なお、処理を終了する代わりに、前方車両への自動追従制御を行うようにすることもできる。
自動運転開始タイミングでない場合(S20でNO)、制御部401は、停止線を通過したか否かを判定し(S55)、停止線を通過していない場合(S55でNO)、ステップS13以降の処理を続け、停止線を通過した場合(S55でYES)、ステップS11以降の処理を続ける。
図18は危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図18は危険走行領域にある前方車両が停止線に停止する場合を示し、自車両は最後列の前方車両の後方に安全に停止する。図中、上段は自車両の停止線までの距離(位置)と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離(位置)と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置40は、前方車両及び自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
前方車両が危険走行領域にあると判定し、自車両が危険走行領域にあると判定した場合には、この地点からは車載装置40による自動速度制御が行われ、まず危険走行領域を回避するための制御を行う回避制御領域となる。車載装置40は、例えば、自車両の速度が停止条件Cを満たす停止限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな減速度で減速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
自動速度制御のうち、黄信号開始時点以降は、自車両を標準減速度で減速制御する標準減速度制御領域である。すなわち、車載装置40は、黄信号開始時点(黄信号開始位置)から標準減速度で減速制御を行う。自車両は、超音波センサ等により前方車両を常時監視し、最後列の前方車両の後方に追従し、ほぼ標準減速で減速制御して、最後列の前方車両の後方に停止する。なお、この場合、前方車両との車間距離をビデオカメラ41又は他のセンサで把握し、速度に対して車間距離が小さくならないように常時監視する必要がある。仮に自動制御中に自車両が前方車両に異常接近した場合には、接近を防ぐように制御することを優先する。これにより、自車両を自動制御する場合でも安全走行を確保することができる。
図19は危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。図19は危険走行領域にあると判定された前方車両が停止線で停止することなく交差点(停止線)を通過する場合を示し、自車両は停止線に停止する。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置40は、前方車両及び自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
前方車両が危険走行領域にあると判定し、自車両が危険走行領域にあると判定した場合には、この地点からは車載装置40による自動速度制御が行われ、まず危険走行領域を回避するための制御を行う回避制御領域となる。車載装置40は、例えば、自車両の速度が停止条件Cを満たす停止限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな減速度で減速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
自動速度制御のうち、黄信号開始時点以降は、自車両を標準減速度で減速制御する標準減速度制御領域である。すなわち、車載装置40は、黄信号開始時点(黄信号開始位置)から標準減速度で減速制御を行う。自車両は、超音波センサ等により前方車両を常時監視し、すべての前方車両が交差点を通過することが確実になった場合、標準減速度以下の減速度で速度制御する。標準減速度以下の減速度での速度制御は、標準減速度よりも緩やかな減速度で速度制御することであり、減速制御及び加速制御を含む。例えば、減速し過ぎた場合には、緩やかな加速度で加速させることで速度を調整する。さらに、ビデオカメラ41により停止線を検出した場合、それ以降は、停止線までの距離を補正しつつ標準減速度よりさらに小さい微減速度で減速制御を行う。これにより、前方車両の当初停止予測位置に基づいた停止制御を補正して、自車両を停止線に停止させることができる。
図20は危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。図20はすべての前方車両が危険走行領域に突入する可能性がなく停止線に進入(交差点を通過)する場合を示し、自車両は危険走行領域を回避して停止線に停止する。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置40は、前方車両及び自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
すべての前方車両が危険走行領域にないと判定し、前方車両が交差点通過領域にある場合において、自車両が危険走行領域にあると判定したときには、この地点からは車載装置40による自動速度制御が行われ、まず危険走行領域を回避するための制御を行う回避制御領域となる。車載装置40は、危険走行領域がジレンマ領域である場合、自車両の速度が停止条件Cを満たす停止限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな減速度で減速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
自動速度制御のうち、黄信号開始時点以降は、自車両を標準減速度で減速制御する標準減速度制御領域である。すなわち、車載装置40は、黄信号開始時点(黄信号開始位置)から標準減速度で減速制御を行う。車載装置40は、ビデオカメラ41により停止線を検出した場合、それ以降は、停止線までの距離を補正しつつ微調整制御で速度を制御する微調整領域となる。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。従って、減速し過ぎた場合には、緩やかな加速度で加速させることで速度を調整する。
上述の例で、前方車両が危険走行領域になく交差点を通過する場合において、自車両も交差点を通過するときは、所要の加速度で加速制御可能であるか判定し、加速制御可能であれば、加速制御して交差点を通過させることもできる。
この場合、加速制御の可否の判定は、自車両を加速しても安全であるか否かを確認するものである。例えば、自車両を加速した場合の速度が所定速度(例えば、制限速度、制限速度に若干の余裕を上乗せした速度など)以下であることを必須条件とし、自車両の前方に他の車両(接近した前方車両)が存在しないこと、自車両の後方に後続車両が存在すること、及び交差点の交差道路の交通が閑散であることを選択条件とし、必須条件及び少なくとも1つの選択条件を満たす場合に加速可能と判定することができる。なお、接近した前方車両とは、例えば、自車両の速度と超音波センサなどから前方車両との相対速度を所定の周期で検出し、検出した相対速度に基づいて、所定の速度まで加速した場合に衝突する可能性があると判断できる範囲内に存在している車両を対象とする。交通が閑散であるか否かは、交通量が少ない場合であり、例えば、通常、青時間1分間あたりの交通量が20〜30台の地点の道路で、1分間あたりの交通量が15台より少ない場合など、地点毎の飽和流率も考慮して閑散であると判断する。規制速度は、地図データベースから取得してもよく、光ビーコン20などの外部から取得してもよい。また、自車両周辺の他の車両の状況は、超音波センサ等から取得することができ、交差点の交通情報は、外部の光ビーコン20又は通信装置50などから取得することができる。
上述の例で、道路勾配を含む道路情報に基づいて標準減速度gを決定することもできる。例えば、道路勾配が0の場合に、式(5)を用いることとし、道路勾配を考慮する場合には、式(5)に代えて式(10)及び式(12)、あるいは、式(7)に代えて式(11)及び式(12)を用いればよい。ここで、gは標準減速度、hは車種毎に一意の定数である勾配係数、γは勾配(単位は度、登りが正)である。
また、路面状態、タイヤの状態に基づいて、補正後の標準減速度g’を用いることもできる。ここで、g’=g×(μ+1)、μは摩擦係数である。図21は摩擦係数の一例を示す説明図である。なお、道路情報は、光ビーコン20など外部から取得してもよく、あるいは、地図データベースから取得するようにしてもよい。
これにより、例えば、自車両が下り坂を走行する場合、標準減速度が小さくならないように、下り勾配でかかる力の分だけ減速制御量を増し(h・tan|γ|、γ<0)、登り坂を走行する場合、標準減速度が大きくなり過ぎないように、上り勾配でかかる力の分だけ減速制御量を減少(−h・tan|γ|、γ<0)させる。また、路面状態が乾燥、湿潤、砂地、雪面であるかに応じて、あるいはタイヤの磨耗状態に応じて、標準減速度を変化させることもできる。これにより、一層精度良く車両の停止又は進入を制御することができる。
また、自車両が危険走行状態にない場合であっても、運転者の操作ミスにより危険走行状態に陥る事態を防止するため、交差点停止領域又は交差点通過領域であり、かつ危険走行領域の近傍に危険走行近傍領域を設けることもできる。
図22は危険走行近傍領域の概念を示す説明図である。図中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、図7の場合と同様である。危険走行近傍領域は、交差点停止領域であって危険走行領域に近い領域、及び交差点通過領域であって危険走行領域に近い領域を含む。
すなわち、危険走行近傍領域にあるか否かの判定は、例えば、黄信号開始時点における交差点までの距離及び速度で特定される自車両の状態と停止条件C又は進入条件Lとの近さ度合いにより判定することができる。これにより、自車両が危険走行状態にない場合であっても、運転者の操作ミスにより危険走行状態に陥る事態を防止することができる。
図23は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。図23の例では、路上装置31、32、通信装置50を設置しない。また、光ビーコン20は、停止線の上流側200m程度の位置に設置する。この場合、各画像感知器10で撮像して得られた撮像画像に基づいて車両を検出し、光ビーコン20を通じて検出結果により得られた車両情報を自車両へ送信する。また、光ビーコン20は、信号機の信号情報を自車両へ送信する。
すなわち、図23の例では、車載装置40は、自車両が光ビーコン20との通信地点を通過する際に、光ビーコン20から、通信地点の位置情報、停止線の位置情報(停止線までの距離、停止線の絶対位置など)に加えて、車両情報、信号機の信号情報などを受信する。車載装置は、受信した車両情報を探索して自車両の前方を走行する前方車両の停止線までの距離、速度を求めるとともに、危険走行領域の判定処理を行う。
図24は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。図24の例では、路上装置31、32、各画像感知器20、通信装置50を設置せず、光ビーコン20は、停止線の上流側200m程度の位置に設置する。
この場合、光ビーコン20により、常時、通過した車両の車頭時間又は車間時間、速度を計測しておく、自車両が通過した際に、信号情報、停止線までの距離(又は通信地点から停止線までの距離など)等とともに、自車両の通過時点前の通過車両の車頭時間又は車間時間、速度などを自車両(車載装置40)へ送信する。車載装置40は、受信した車頭時間又は車間時間、速度と自車両の速度から前方車両の位置(停止線までの距離など)及び速度を算出し、信号情報により自車両及び各前方車両の危険走行領域に突入する可能性を判断する。
上述の例では、車両情報を通信装置50又は光ビーコン20などから取得する構成であるが、これに限定されるものではなく、自車両と前方を走行する各前方車両との間の車々間通信により、各前方車両から位置情報を受信するようにしてもよい。
車々間通信により各前方車両の位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいて、各前方車両と交差点との距離に関する情報を取得する。交差点の位置が予め分かっている場合には、各前方車両の位置が分かれば、各前方車両と交差点との距離を求めることができる。なお、各前方車両の交差点までの距離を各前方車両の位置情報として車々間通信で受信することもできる。また、各前方車両の位置情報を繰り返し受信することにより、各前方車両の速度を求めることもできる。これにより、自車両の前方を走行する各前方車両の位置及び速度を精度良く把握することができる。
また、車々間通信に代えて、各前方車両から送信された位置情報などを一旦通信装置で受信し、通信装置は、受信した情報を対象となる自車両へ送信するようにしてもよい。
なお、上述の例では説明を簡単にするために記していないが、回避制御で一旦目標速度に達して危険走行領域から外れた後、何らかの原因で再び、危険走行領域に入った場合には、再度目標速度を設定して回避制御を行う必要がある。また、上述の例では、説明を分かり易くするため、図8から図12において、自車両が交差点に停止する場合について説明したが、交差点を通過させることもできる。この場合、回避制御に入る前に、加速制御の可否などを判定して、交差点停止又は交差点通過のどちらを選定するかを判断することになる。さらに、加速条件が満たされない場合には、交差点停止制御を行っても良い。
以上説明したように、本発明にあっては、自車両の前方に複数の前方車両が走行する場合であっても、危険走行状態から回避して安全かつ確実に自車両を交差点手前で停止させるための判定を行うことができる。また、危険走行状態を回避するために、車両を交差点に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速することができ、停止線で安全かつ確実に車両を停止させることができる。
上述の実施の形態において、危険走行領域を回避するため停止条件C、進入条件Lを用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。また、目標速度として、危険走行領域の停止限界速度又は進入限界速度(境界線の速度)そのものを使用する代わりに、これらを基準として、例えば、限界速度に所定の定数を乗じる等して算出した数値を用いることもできる。
上述の実施の形態では、黄開始時刻を基準とした危険走行領域の回避を示した。しかし、ぎりぎり黄信号で通過せず余裕を持たせる目的で、例えば黄信号時間Tyを意図的に小さくしたり、黄信号開始時刻の黄信号時間だけ手前の時刻を基準として停止線を青信号で通過させるようにしたり、危険走行領域を広くするために式(4)〜式(7)を補正したりする等、本願の概念を損なわない範囲内で、種々、数式、定数等を追加又は変更して用いても良い。また、対象とする危険走行領域は、ジレンマ領域のみとしても良く、あるいは、オプション領域のみとしても良い。また、対象とする車両の速度を、例えば、20km/h以上100km/h以下というように限定しても良い。
上述の実施の形態では、自車両が危険走行領域に突入する可能性があると判断してからは、停止線に停止するまで、あるいは、停止線を通過するまで、自動速度制御モードとしているが、危険走行領域の境界線に到達した時点で自動速度制御モードを終了し、後は運転者による手動運転に切り替えることも可能である。
上述の実施の形態において、危険走行領域から脱出するための回避制御は、上述の例に限定されるものではなく、種々の方法を取り得る。例えば、回避制御領域において、現在速度から一定の減速度で減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。また、この場合、黄信号開始時刻までの時間tのうち、最初の時間t1(t1<t)だけ、所定の減速度で減速し、残りの時間(t−t1)は、一定速度で制御し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。また、黄信号開始時刻までの時間tのうち、最初の時間t1だけ速度を変えず一定速度で走行させ、その後、所定の減速度で減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。
上述の実施の形態において、自車両が危険走行領域を回避すべく加速して停止線に進入(交差点を通過)する場合にも、減速する場合と同様に、自動速度制御を行い、危険走行領域を回避する制御を行う。例えば、危険走行領域がジレンマ領域である場合、車載装置40は、自車両の速度が進入条件Lを満たす進入限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな加速度で加速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。黄信号開始時点以降も、速度を維持し一定の速度で停止線を通過する。なお、車載装置40は、ビデオカメラ41により停止線を検出した時点以降は、停止線までの距離を補正しつつ速度を微調整し、自車両が黄信号の終了時点で停止線を進入(通過)するように制御することができる。これにより、黄信号の終了時点で安全かつ確実に自車両を、停止線を通過させることができる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。