以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両運転支援システムの概要を示す模式図である。本発明に係る車両運転支援システムでは、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m)を有して路上装置21、22を設置してある。また、路上装置21の上流側(例えば、路上装置21から上流300m程度)に、光ビーコン10を設置している。
路上装置21、22は、例えば、超音波感知器、ICタグ、磁気ネール、光センサ等であり、電波、音波、光、磁気などをセンシングすることにより交信地点を特定することができるものである。路上装置21、22は、道路上に車載装置(運転支援装置)との交信領域を有する。車両が交信領域を通過する際に、車載装置は、路上装置21、22から交信領域を通過することを示す信号を受信する。なお、路上装置21、22は、車載装置との間で一方向通信を行うものでも双方向通信を行うものでもよい。また、路上装置21、22は、通信を目的としたものでなく、単に計測のための信号を発するだけでもよい。
光ビーコン10は、道路上に車載装置との通信領域を有する。車両が通信領域を通過する際に、車載装置は、光ビーコン10から所定の情報を受信する。所定の情報は、例えば、通信地点の位置情報、停止線の位置情報(例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、路上装置21、22の位置情報(例えば、停止線から交信領域までの距離、交信領域の絶対位置など)、信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点及び黄信号時間など)、青信号時間の延長時間の上限値、青信号時間の短縮時間の上限値、青信号時間の延長又は短縮制御の有無に関する情報などを含む青信号時間の変動範囲に関する変動情報などである。ここで、上限値は、形式的な上限値という意味ではなく、ある時間帯において現実的に生じる最大値を設定する。例えば、ある日のある時間帯の過去の実績としての延長時間又は短縮時間の分布の最大値を用いることができる。なお、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)などを用いることもできる。
車両が交差点に向かって道路を走行する場合、車載装置は、光ビーコン10との通信により、所定の情報を取得する。例えば、車載装置は、この時点で停止線までの距離が、例えば、700mであることを確認することができる。また、車載装置は、車両が交差点に向かって道路をさらに走行し、車載装置が路上装置21と交信することにより、車載装置は、自車両の位置が停止線から400mの地点にあることを確認することができる。すなわち、車載装置は、停止線までの距離を補正することができる。また、車載装置が路上装置22と交信した場合も同様である。これにより、車載装置は、交差点の上流地点で、予め停止線までの距離を精度良く把握しておくことができる。
その後、車載装置は、停止線(交差点)までの距離、自車両の速度、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間及び所定の標準減速度などに基づいて、自車両が黄信号開始時点で交差点の手前に停止する停止条件及び黄信号の終了時点で交差点に進入する進入条件を算出する。標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。なお、運転支援装置が標準減速度での速度制御を実施するタイミングは、反射反応より十分長い時間、あるいは反射反応の時間に限らない。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。
車載装置は、上述の変動情報、進入条件及び停止条件に基づいて、危険走行状態を特定する。特定される危険走行状態は、進入条件及び停止条件と青信号時間の変動範囲とにより決定される。なお、危険走行状態の特定方法については後述する。車載装置は、自車両が特定した危険走行状態(停止線までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。車載装置は、危険走行状態にあると判定した場合、危険走行状態を回避するために、例えば、車両を停止線に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための処理を行い、あるいは、車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で加速するための処理を行う。
図2は車載装置30の構成を示すブロック図である。車載装置30には、車両に搭載されたビデオカメラ40を接続してある。ビデオカメラ40は、例えば、車両のフロントグリル、前部バンパなどに配置され、車両前方の道路を撮像できるようにしてある。また、車載装置30には、車両の走行状態を制御する車両制御部50を接続してある。車載装置30が出力する制御信号に応じて、車両制御部50は、所要の加減速度で車両を加減速させる。また、車載装置30には、自車両の前方、及び後方に他の車両が存在するか否かを検出するための超音波センサ60を接続してある。なお、超音波センサ60に代えて、ミリ波レーダ等他の車載センサを用いることもできる。
車載装置30は、各種の演算処理を行うCPUからなり、後述する制御周期を計時するための時計を内蔵する制御部31を備える。なお、制御部31は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。制御部31には、内部バスを介して通信部32、測位部33、地図データベース34、表示部35、画像処理部36、操作部37、記憶部38、報知部39などが接続されている。測位部33は、GPS(Global Positioning System)331、車速センサ332、ジャイロセンサ333、走行距離を計測する距離計334などを備えている。また、車載装置30は、専用装置のみならず、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話など、取り外して地上でも別の目的などに利用できる汎用の装置に上述の各部の機能を備えるようにして構成することもできる。
通信部32は、光ビーコン10との間で路車間通信を行う通信機能を有する。なお、通信部32は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRCなどの狭域通信に限定されるものではなく、例えば、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能を備えるものでもよく、あるいは、広域通信として携帯電話、PHS、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備えるものでもよい。また、通信部32は、路上装置21、22が送信する信号を受信する受信機能を備えている。
測位部33は、複数のGPS衛星からの電波をGPS331で受け取り、自車の位置を時々刻々測位する。また、測位部33は、GPS衛星からの電波が届かない場所、あるいはGPS331により測位される位置の誤差を小さくするため、車速センサ332、ジャイロセンサ333から出力される信号に基づいて自車位置を推定し、地図データベース34の道路データと照合することにより自車の位置をさらに精度良く測位する。なお、GPS331に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPSで算出した位置のずれを補正することができ、自車の位置の精度を向上させることができる。
表示部35は、フロントガラスディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ、あるいは、カーナビゲーションシステム又は後方監視モニタなどの液晶表示パネルであって、運転者に所要の情報を表示する。
画像処理部36は、制御部31から画像処理開始の信号を受け付けた場合、ビデオカメラ40で道路を撮像して得られた撮像画像に基づいて、停止線を検出するための処理を行う。以下、撮像画像に基づいて停止線の位置を検出する方法について説明する。
ビデオカメラ40のレンズ中心を原点として、道路座標系を(X、Y、Z)、カメラ座標系を(X’、Y’、Z’)とし、道路座標系は、道路の進行方向をY軸(前方向を正)、道路方向と垂直な道路面上の方向をX軸(前方に向かって右方向を正)、路面と垂直な方向をZ(上方を正)とする。また、カメラ座標系は、カメラレンズの光軸をY’軸、光軸に垂直であって水平方向の軸をX’軸、カメラの上方向をZ’軸とする。さらに、カメラ座標系の各軸の道路座標系の各軸に対する回転角を、それぞれθ(ピッチ角)、φ(ロール角)、ψ(ヨー角)とし、全て右ねじの進む方向を正(θ:水平面より上向きが正、φ:右回りが正、ψ:左回りが正)とする。この場合、道路座標系からカメラ座標系の変換式は、式(1)で表すことができる。
変換行列の係数P11〜P33それぞれは、式(2)で表すことができる。また、撮像画像上の座標(x、y)は、レンズの焦点距離をFとすると、式(3)で表すことができる。
停止線の有無の判定は、撮像画像の各画素の画素値に基づいて、エッジ点を抽出し、抽出したエッジ点より得られるエッジ画像と停止線の形状とのパターンマッチングを行うことにより判定することができる。切り出された停止線が撮像画像のy軸と交わる点のy座標を求め(この場合x=0)、求めたy座標を式(3)に代入すれば、停止線までの距離を精度良く算出することができる。
操作部37は、各種操作パネルを備え、運転者と車載装置30とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部37は、運転者の操作により車載装置30の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
報知部39は、スピーカを備え、制御部31の制御のもと、運転者に警告する場合、警告の内容を音声で出力する。例えば、車両が後述する危険走行領域にある場合、危険走行領域を回避すべく自動速度制御を行う(自動速度制御モードに入る)旨を出力する。また、車両を交差点に停止させるために減速させる場合、あるいは交差点に進入(通過)させるため加速させる場合、その旨を出力する。
記憶部38は、通信部32を通じて受信された所定の情報を記憶する。
図3はジレンマ領域及びオプション領域の概念を示す説明図である。図3において、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。
図3において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(5)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件Lは、式(6)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
ジレンマ領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足する領域である。なお、図3において、ジレンマ領域及びオプション領域の下側の領域は交差点停止領域であり、停止線手前に安全に停止することができる領域である。また、ジレンマ領域及びオプション領域の上側の領域は交差点通過領域であり、安全に停止線に進入(通過)することができる領域である。
図4は青信号時間が変動する場合の危険走行領域の一例を示す説明図である。図4において、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。また、進入条件L、停止条件C、判定条件Eは、図3の場合と同様である。停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。青信号の延長時間の上限値をΔt1、青信号の短縮時間の上限値をΔt2とすると、青信号時間が上限値まで延長された場合に、黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(7)で求められる。式(7)は現在の車両の走行状態に基づいた判定条件E1である。
また、青信号時間が上限値まで短縮された場合に、黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(8)で求められる。式(8)は現在の車両の走行状態に基づいた判定条件E2である。なお、図4の例では、判定条件E1、E2で表される直線がジレンマ領域を通過している場合について説明する。
危険走行領域に入るか否かは、青信号時間が上限値まで延長又は短縮された場合に、黄信号開始時刻での車両の状態(位置Xy、速度Vy)がジレンマ領域に入るか否かにより判定することができる。すなわち、黄信号開始時刻での車両の速度Vyが、判定条件E1で表される直線と停止条件Cで表される曲線との交点Qの状態における速度Vq以下であれば、青信号時間が上限値内でどのように変動しても、自車両の状態はジレンマ領域に入ることはなく、安全に交差点に停止することができる。また、黄信号開始時刻での車両の速度Vyが、判定条件E2で表される直線と進入条件Lで表される直線との交点Pの状態における速度Vp以上であれば、青信号時間が上限値内でどのように変動しても、自車両の状態はジレンマ領域に入ることはなく、安全に交差点を通過することができる。すなわち、黄信号開始時刻での車両の速度Vyが、速度Vq(下限速度)と速度Vp(上限速度)との間にある場合には、青信号時間が上限値内で変動したときには、自車両がジレンマ領域、すなわち、危険走行領域に突入することになる。
従って、図3の例のように、青信号時間の変動を考慮しない場合、危険走行領域は、停止条件C及び進入条件Lにより決定され、ジレンマ領域及びオプション領域が危険走行領域となる。一方、図4の例のように、青信号時間が変動する場合、危険走行領域は、停止条件C及び進入条件Lのみにより決定されず、さらに青信号時間の変動範囲(例えば、延長時間の上限値、短縮時間の上限値)に応じて決定される。すなわち、この場合の危険走行領域は、青信号時間が延長時間の上限値Δt1まで延長された場合において、停止条件C及び進入条件Lで決定されるジレンマ領域の黄信号開始時点の下限速度Vqと、青信号時間が短縮時間の上限値Δt2まで短縮された場合において、停止条件C及び進入条件Lで決定されるジレンマ領域の黄信号開始時点の上限速度Vpとで特定することができる。
次に、特定した危険走行領域からの回避制御について説明する。現在位置Xにおける自車両の速度をVaとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図4の点A(速度Va、位置Xa)で示される場合、Va>Vpであって自車両は交差点通過領域にある。従って、青信号時間が変動する場合であっても、自車両の現在の速度Vaを維持して走行すれば、危険走行領域に入る可能性はなく、自車両は安全に交差点を通過することができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVbとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図4の点B(速度Vb、位置Xb)で示される場合、Vq<Vb<Vpであって自車両はジレンマ領域にある。従って、自車両の現在の速度Vbが下限速度Vq又は上限速度Vpに到達するように減速制御又は加速制御を行うことにより、危険走行領域を回避して安全に交差点に停止又は交差点を通過することができる。なお、加速制御又は減速制御のいずれを行うかは、自車両の速度が下限速度Vqよりも上限速度Vpに近い場合には加速制御し、上限速度Vpよりも下限速度Vqに近い場合には減速制御することができる。例えば、自車両の速度が上限速度Vpに近い場合には、自車両の速度が上限速度Vpになるように緩やかな加速度による加速制御を行う。これにより、青信号時間が変動する場合であっても、危険走行状態を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVcとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図4の点C(速度Vc、位置Xc)で示される場合、Vq<Vb<Vpであって自車両は交差点停止領域であってジレンマ領域に近い領域(停止条件Cに近い領域)にある。従って、自車両の現在の速度Vbが下限速度Vq又は上限速度Vpに到達するように減速制御又は加速制御を行う。例えば、自車両の速度が下限速度Vqに近い場合には、自車両の速度が下限速度Vqになるように緩やかな減速度による減速制御を行う。これにより、青信号時間が変動する場合であっても、危険走行領域を回避して安全に交差点に停止又は交差点を通過することができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVdとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図4の点D(速度Vd、位置Xd)で示される場合、Va<Vqであって自車両は交差点停止領域にある。従って、青信号時間が変動する場合であっても、自車両の現在の速度Vdを維持して走行することにより、危険走行領域に入る可能性はなく、自車両は安全に交差点に停止することができる。
図5は青信号時間が変動する場合の危険走行領域の他の例を示す説明図である。図4の例との相違点は、判定条件E1で表される直線が、ジレンマ領域ではなくオプション領域内を通ることである。図5に示すように、車両の現在位置、現在速度、黄信号開始となるまでの時間t(0<t<信号周期)、青信号の延長時間の上限値Δt1、青信号の短縮時間の上限値Δt2などに応じて、判定条件を表す直線がジレンマ領域ではなくオプション領域内を通ることもある。この場合の危険走行領域の回避制御は以下のとおりである。
現在位置Xにおける自車両の速度をVaとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図5の点A(速度Va、位置Xa)で示される場合、Va>Vpであって自車両は交差点通過領域にある。従って、青信号時間が変動する場合であっても、自車両の現在の速度Vaを維持して走行すれば、危険走行領域に入る可能性はなく、自車両は安全に交差点を通過することができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVbとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図5の点B(速度Vb、位置Xb)で示される場合、Vq<Vb<Vpであって自車両は交差点通過領域であってジレンマ領域に近い領域(進入条件Lに近い領域)にある。従って、自車両の現在の速度Vbが下限速度Vq又は上限速度Vpに到達するように減速制御又は加速制御を行うことにより、危険走行領域を回避して安全に交差点に停止又は交差点を通過することができる。なお、加速制御又は減速制御のいずれを行うかは、自車両の速度が下限速度Vqよりも上限速度Vpに近い場合には加速制御し、上限速度Vpよりも下限速度Vqに近い場合には減速制御することができる。これにより、青信号時間が変動する場合であっても、危険走行状態を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVcとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図5の点C(速度Vc、位置Xc)で示される場合、Vq<Vb<Vpであって自車両は交差点停止領域であってジレンマ領域に近い領域(停止条件Cに近い領域)にある。従って、青信号時間が変動する場合であっても、自車両の現在の速度Vbが下限速度Vq又は上限速度Vpに到達するように減速制御又は加速制御を行うことにより、危険走行領域を回避して安全に交差点に停止又は交差点を通過することができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVdとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図5の点D(速度Vd、位置Xd)で示される場合、Va<Vqであって自車両は交差点停止領域にある。従って、青信号時間が変動する場合であっても、自車両の現在の速度Vdを維持して走行することにより、危険走行領域に入る可能性はなく、自車両は安全に交差点に停止することができる。
図5の例では、判定条件E1で表される直線はオプション領域を通り、判定条件E2で表される直線はジレンマ領域を通る場合であるが、判定条件E1、E2で表される両直線がオプション領域を通る場合もあり得る。この場合の危険走行領域の回避制御も同様に行うことができる。
青信号時間の延長制御又は短縮制御を行わない場合には、上限値Δt1又は上限値Δt2を0として扱うことができる。図6は青信号時間の延長制御のみを行う場合の危険走行領域の一例を示す説明図である。図6の例は、青信号時間の短縮制御を行わず、延長制御のみを行う場合を示す。図6において、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。また、進入条件L、停止条件C、判定条件Eは、図4の場合と同様である。停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。青信号の延長時間の上限値をΔt1とすると、青信号時間が上限値まで延長された場合に、黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(7)で求められる。式(7)は現在の車両の走行状態に基づいた判定条件E1である。
危険走行領域に入るか否かは、青信号時間が上限値まで延長された場合に、黄信号開始時刻での車両の状態(位置Xy、速度Vy)がジレンマ領域に入るか否かにより判定することができる。すなわち、黄信号開始時刻での車両の速度Vyが、判定条件E1で表される直線と停止条件Cで表される曲線との交点Qの状態における速度Vq以下であれば、青信号時間が上限値内でどのように変動しても、自車両の状態はジレンマ領域に入ることはなく、安全に交差点に停止することができる。また、黄信号開始時刻での車両の速度Vyが、判定条件Eで表される直線と進入条件Lで表される直線との交点Pの状態における速度Vp以上であれば、青信号時間が上限値内でどのように変動しても、自車両の状態はジレンマ領域に入ることはなく、安全に交差点を通過することができる。すなわち、黄信号開始時刻での車両の速度Vyが、速度Vq(下限速度)と速度Vp(上限速度)との間にある場合には、青信号時間が上限値内で延長したときには、自車両がジレンマ領域、すなわち、危険走行領域に突入することになる。
従って、図6の例のように、青信号時間が延長される場合、危険走行領域は、停止条件C及び進入条件Lのみにより決定されず、さらに青信号時間の延長時間の上限値に応じて決定される。すなわち、この場合の危険走行領域は、青信号時間が延長時間の上限値Δt1まで延長された場合において、停止条件C及び進入条件Lで決定されるジレンマ領域の黄信号開始時点の下限速度Vqと、青信号時間の延長及び短縮が行われない場合に、停止条件C及び進入条件Lで決定されるジレンマ領域の黄信号開始時点の上限速度Vpとで特定することができる。
次に、特定した危険走行領域からの回避制御について説明する。現在位置Xにおける自車両の速度をVaとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図6の点A(速度Va、位置Xa)で示される場合、Va>Vpであって自車両は交差点通過領域にある。従って、青信号時間が変動する場合であっても、自車両の現在の速度Vaを維持して走行すれば、危険走行領域に入る可能性はなく、自車両は安全に交差点を通過することができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVbとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図6の点B(速度Vb、位置Xb)で示される場合、Vq<Vb<Vpであって自車両はジレンマ領域にある。従って、自車両の現在の速度Vbが下限速度Vq又は上限速度Vpに到達するように減速制御又は加速制御を行うことにより、危険走行領域を回避して安全に交差点に停止又は交差点を通過することができる。なお、加速制御又は減速制御のいずれを行うかは、自車両の速度が下限速度Vqよりも上限速度Vpに近い場合には加速制御し、上限速度Vpよりも下限速度Vqに近い場合には減速制御することができる。例えば、自車両の速度が上限速度Vpに近い場合には、自車両の速度が上限速度Vpになるように緩やかな加速度による加速制御を行う。これにより、青信号時間が延長された場合であっても、危険走行状態を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVcとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図6の点C(速度Vc、位置Xc)で示される場合、Vq<Vb<Vpであって自車両は交差点停止領域であってジレンマ領域に近い領域(停止条件Cに近い領域)にある。従って、自車両の現在の速度Vbが下限速度Vq又は上限速度Vpに到達するように減速制御又は加速制御を行う。例えば、自車両の速度が下限速度Vqに近い場合には、自車両の速度が下限速度Vqになるように緩やかな減速度による減速制御を行う。これにより、青信号時間が延長された場合であっても、危険走行領域を回避して安全に交差点に停止又は交差点を通過することができる。
また、現在位置Xにおける自車両の速度をVdとし、青信号の残り時間(黄信号開始となるまでの時間)をtとする。この場合、判定条件Eにより、自車両の黄信号開始時点における状態が図6の点D(速度Vd、位置Xd)で示される場合、Va<Vqであって自車両は交差点停止領域にある。従って、青信号時間が延長された場合であっても、自車両の現在の速度Vdを維持して走行することにより、危険走行領域に入る可能性はなく、自車両は安全に交差点に停止することができる。
なお、青信号時間の延長制御を行わずに短縮制御のみを行う場合も同様である。この場合は、図4の例において、判定条件E1を除外し判定条件E及び判定条件E2をも用いればよい。
次に車載装置30による危険走行領域回避の自動速度制御について説明する。図6から図9は自動速度制御の処理手順を示すフローチャートである。制御部31は、光ビーコン10との通信の有無を判定し(S11)、通信がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、光ビーコン10との通信があるまで待機する。
光ビーコン10との通信があった場合(S11でYES)、制御部31は、光ビーコン10から通信地点、停止線及び路上装置の位置情報、青信号延長又は短縮制御の有無、青信号の延長又は短縮の上限値、並びに信号情報を受信する(S12)。
制御部31は、青信号の延長又は短縮制御の有無を判定し(S13)、延長又は短縮制御がある場合(S13でYES)、危険走行領域の回避制御を車載系で実施するか否かを判定する(S14)。延長又は短縮制御がない場合(S13でNO)、制御部31は、ステップS14の処理を行わずに後述のステップS15の処理を行う。例えば、地上系による危険走行領域の回避制御が実施されている場合に、車載系による回避制御を実施しないときにステップS14の処理を行うことができる。地上系で回避制御を実施しているか否かの情報は、交差点上流での通信(例えば、光ビーコン10)で入手することができる。なお、地上系に加えて車載系でも回避制御を行う場合には、ステップS14の処理は行わずにスキップする。ステップS14をスキップすることにより、地上系のみでは必ずしも個々の車両が危険走行領域を回避できるとは限らない場合でも、交差点に向かって走行する車両が危険走行状態にあるのか否かを確実に把握することができる。
危険走行領域の回避制御を車載系で実施する場合(S14でYES)、制御部31は、停止線までの距離を算出し(S15)、路上装置21、22から信号を受信したか否かを判定し(S16)、信号を受信した場合(S16でYES)、停止線までの距離を修正する(S17)。例えば、停止線から路上装置21、22との交信地点までの距離をLとすると、車両の位置を、停止線から距離Lにあると修正する。これにより、自車両が停止線に向かって走行するにつれて累積する距離誤差をリセットし、停止線までの距離の精度を向上させることができる。信号を受信していない場合(S16でNO)、制御部31は、ステップS17の処理を行うことなく、後述のステップS18の処理を行う。
制御部31は、自動運転開始タイミングであるか否かを判定する(S18)。自動運転開始タイミングは、停止線から所定の距離(例えば、200m)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点、最後の路上装置22との交信時点、あるいは光ビーコン10との通信時点など適宜設定できる。自動運転開始タイミングは、自車両の速度に応じて変化させることもできる。
自動運転開始タイミングでない場合(S18でNO)、制御部31は、ステップS15以降の処理を続け、自動運転開始タイミングである場合(S18でYES)、青信号の延長又は短縮の上限値に基づいて危険走行領域を特定する(S19)。なお、青信号の延長又は短縮制御がない場合、延長又は短縮の上限値を0として処理する。
制御部31は、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S20)。自車両が危険走行領域内に突入する場合(S20でYES)、制御部31は、交差点に停止する場合と交差点を通過する場合の目標速度を算出する(S21)。目標速度は、自車両を緩やかな減速度で減速させることで危険走行領域から回避(脱出)するために到達させる速度、あるいは自車両を緩やかな加速度で加速させることで危険走行領域から回避(脱出)するために到達させる速度である。
目標速度の算出は以下のとおり行うことができる。例えば、交差点に停止させる場合において、自車両がジレンマ領域に突入する可能性があるときは、図4に示すように、下限速度Vqが目標速度Vsとなる。停止条件Cを表す式(5)と式(7)で等式とした式からXy、Vを変数として解くことにより目標速度Vsは式(9)で求めることができる。
また、交差点に停止させる場合において、自車両がオプション領域に突入する可能性があるときは、図5に示すように、下限速度Vqが目標速度Vsとなる。この場合、進入条件Lを表す式(6)と式(7)で等式とした式からXy、Vを変数として解くことにより目標速度Vsは式(10)で求めることができる。
また、交差点を通過させる場合において、自車両がジレンマ領域に突入する可能性があるときは、図4、図5に示すように、上限速度Vpが目標速度Vsとなる。この場合、進入条件Lを表す式(6)と式(8)で等式とした式からXy、Vを変数として解くことにより目標速度Vsは式(11)で求めることができる。
また、交差点を通過させる場合において、自車両がオプション領域に突入する可能性があるときは、上限速度Vpが目標速度Vsとなる。この場合、停止条件Cを表す式(5)と式(8)で等式とした式からXy、Vを変数として解くことにより目標速度Vsは式(12)で求めることができる。
制御部31は、自車両の現在速度と各目標速度(上限速度Vp及び下限速度Vq)との各速度差を算出し(S22)、各速度差が所定の閾値より大きいか否かを判定する(S23)。各速度差が所定の閾値より大きくない場合(S23でNO)、制御部31は、算出した目標速度と現在速度との間に大きな差がないとして、交差点を通過する場合の速度差が交差点に停止する場合の速度差より小さいか否かを判定する(S24)。
交差点を通過する場合の速度差が交差点に停止する場合の速度差より小さい場合(S24でYES)、すなわち、自車両の現在速度が下限速度Vqよりも上限速度Vpに近い場合、制御部31は、加速制御が可能であるか否かを判定する(S25)。また、交差点を通過する場合の速度差が交差点に停止する場合の速度差より小さくない場合(S24でNO)、すなわち、自車両の現在速度が上限速度Vpよりも下限速度Vqに近い場合、制御部31は、ステップS25の処理を行わずに後述のステップS26の処理を行う。
加速制御の可否の判定は、自車両を加速しても安全であるか否かを確認するものである。例えば、自車両を加速した場合の速度が所定速度(例えば、制限速度、制限速度に若干の余裕を上乗せした速度など)以下であることを必須条件とし、自車両の前方に他の車両(前方車両)が存在しないこと、自車両の後方に後続車両が存在すること、及び交差点の交差道路の交通が閑散であることを選択条件とし、必須条件及び少なくとも1つの選択条件を満たす場合に加速可能と判定することができる。なお、前方車両とは、例えば、自車両の速度と超音波センサ60などから前方車両との相対速度を所定の周期で検出し、検出した相対速度に基づいて、所定の速度まで加速した場合に衝突する可能性があると判断できる範囲内に存在している車両を対象とする。交通が閑散であるか否かは、交通量が少ない場合であり、例えば、通常、青時間1分間あたりの交通量が20〜30台の地点の道路で、1分間あたりの交通量が15台より少ない場合など、地点毎の飽和流率も考慮して閑散であると判断する。規制速度は、地図データベース34から取得してもよく、光ビーコン10などの外部から取得してもよい。また、自車両周辺の他の車両の状況は、超音波センサ60から取得することができ、交差点の交通情報は、外部の光ビーコン10又は後述する他の通信装置70などから取得することができる。
加速制御が可能でない場合(S25でNO)、制御部31は、自動速度制御モードに入る旨を報知し(S26)、段階的目標速度Vrを算出する(S27)。段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、目標速度Vsへの速度変化が大きいため、緩やかな減速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定の制御周期、例えば、0.05〜1秒経過の都度算出することができる。制御周期の計時は、例えば、制御部31で行うことができる。なお、制御周期に代えて所定距離の移動の都度算出するようにしてもよい。上述の例では、運転者に対して車両が減速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して減速の指示を与え、運転者がその指示に従って減速するように構成することもできる。
段階的目標速度Vrの算出は、減速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて大きい場合、その差分をn分割した値ΔV=(V−Vs)/nだけ減速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V−Δv=V−(V−Vs)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両は、後続車両に対して減速を感じさせないように緩やかな減速度で減速することができるので、後続車両は、急ブレーキを踏み込むような事態を防止でき、安全性が向上する。
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値β(例えば、β=1km/h)を用いて、V−Vs≧βの場合、Vr=V−βとし、V−Vs<βの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
制御部31は、現時点の速度Vを、算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな減速度で減速制御を行い(S28)、制御周期を経過したか否かを判定し(S29)、制御周期を経過していない場合(S29でNO)、ステップS29の処理を続け、制御周期が経過するまで減速制御を続ける。これにより、後続車両に対し、自車両の減速を感じさせないようにすることができる。
制御周期を経過した場合(S29でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S30)。危険走行領域の境界に到達したか否かは、自車両の速度が下限速度Vq、すなわち、目標速度Vsに到達したか否かにより判定することができる。危険走行領域の境界に到達していない場合(S30でNO)、制御部31は、ステップS27以降の処理を続ける。これにより、減速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな減速制御を実現することができる。
危険走行領域の境界に到達した場合(S30でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、目標速度Vsで速度維持を行う(S31)。危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。これにより、後続車両が自車両に追突し、あるいは自車両を無理に追い越すという危険を防止することができる。
制御部31は、停止のための減速制御開始地点に到達したか否かを判定する(S32)。この場合、減速制御開始地点は、停止線からの所定の距離の地点とすることができ、例えば、標準減速度、自車両の速度などに基づいて算出することができる。例えば、標準減速度gを3m/s2、速度vを20m/sとすると、減速制御開始地点は、v2 /2gより求めることができ、停止線から67m程度の地点となる。
減速制御開始地点に到達していない場合(S32でNO)、制御部31は、ステップS31以降の処理を続ける。減速制御開始地点に到達した場合(S32でYES)、制御部31は、標準減速度で減速制御する(S33)。標準減速度gは、例えば、3m/s2 とすることができる。これにより、停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線上を推移して、自車両の速度を減速させることができる。
制御部31は、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定し(S34)、停止線を検出していない場合(S34でNO)、ステップS33以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S34でYES)、制御部31は、停止線までの距離を算出し、停止線までの距離を補正して微調整制御で速度を制御し(S35)、車両を停止させ(S36)、自動速度制御モードを解除し、その旨を報知し(S37)、処理を終了する。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、車両の速度を微調整することができ、車両を停止線に確実に停止させることができる。
加速制御可能な場合(S25でYES)、制御部31は、自動速度制御モードに入る旨を報知し(S38)、段階的目標速度を算出する(S39)。段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな加速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定の制御周期、例えば、0.05〜1秒経過の都度、算出する。上述の例では、運転者に対して車両が加速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して加速の指示を与え、運転者がその指示に従って加速するように構成することもできる。
段階的目標速度Vrの算出は、加速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて小さい場合、その差分をn分割した値ΔV=(Vs−V)/nだけ加速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V+Δv=V+(Vs−V)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両の加速を感じさせないように緩やかな加速度で自車両を加速することができる。
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値β(例えば、β=1km/h)を用いて、Vs−V≧βの場合、Vr=V+βとし、Vs−V<βの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
制御部31は、現時点の速度Vを目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな加速度で加速制御を行い(S40)、制御周期を経過したか否かを判定し(S41)、制御周期を経過していない場合(S41でNO)、ステップS41の処理を行い制御周期が経過するまで加速制御を続ける。
制御周期を経過した場合(S41でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S42)。危険走行領域の境界に到達したか否かは、自車両の速度が上限速度Vp、すなわち、目標速度Vsに到達したか否かにより判定することができる。危険走行領域の境界に到達していない場合(S42でNO)、制御部31は、ステップS39以降の処理を続ける。これにより、加速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな加速制御を実現することができる。
危険走行領域の境界に到達した場合(S42でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、目標速度Vsで速度維持を行う(S43)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。
制御部31は、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定し(S44)、停止線を検出していない場合(S44でNO)、ステップS43以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S44でYES)、制御部31は、停止線までの距離を補正して速度を微調整し(S45)、停止線を通過したか否かを判定する(S46)。停止線を通過していない場合(S46でNO)、制御部31は、ステップS45以降の処理を続ける。停止線を通過した場合(S46でYES)、制御部31は、自動速度制御モードを解除するとともに、その旨報知し(S47)、処理を終了する。
危険走行領域の回避制御を車載系で実施しない場合(S14でNO)、自車両が危険走行領域内に突入しない場合(S20でNO)、又は各速度差が所定の閾値より大きい場合(S23でYES)、制御部31は、処理を終了する。
図11は危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30による自動速度制御が行われ、まず危険走行領域を回避するための制御を行う回避制御領域となる。車載装置30は、自車両の速度が下限速度Vq(目標速度)に到達するように緩やかな減速度で減速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、減速制御開始位置まで一定の速度制御を行う。なお、青信号の延長又は短縮制御がない場合、減速制御開始位置を黄信号開始時点としてもよい。
自動速度制御のうち、減速制御開始位置以降は、自車両を標準減速度で減速制御する標準減速度制御領域である。すなわち、車載装置30は、減速制御開始位置から標準減速度で減速制御を行う。ビデオカメラ40により停止線を検出した場合、それ以降は、停止線までの距離を補正しつつ微調整制御で速度を制御する微調整領域となる。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、図中曲線pで示すように、停止線で安全かつ確実に自車両を停止させることができる。なお、図中、破線で表示した直線m、曲線nは、回避制御を行わない場合の走行軌跡である。直線mは、交差点をそのまま走行した場合の走行軌跡であり、黄信号の終了時点で停止線に到達しておらず、赤信号で交差点を通過することになる。また、曲線nは、黄信号になってから標準減速度で停止を試みるが、停止線で停止することができない。
危険走行領域から脱出するための回避制御は、上述の例に限定されるものではなく、種々の方法を取り得る。例えば、回避制御領域において、現在速度から一定の減速度で減速し、減速制御開始位置で目標速度Vsに到達するようにすることもできる。
図12は危険走行領域を回避して停止制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。図12に示すように、回避制御領域において、車載装置30は、停止線から200mの位置から減速制御開始位置までの間、一定の減速度で減速制御を行う。例えば、現在の速度Vから、一定の減速度βで減速し、減速制御開始位置で目標速度Vs(下限速度Vq)に到達させることができる。
図13は危険走行領域を回避して停止制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。図13に示すように、回避制御領域において、車載装置30は、減速制御開始位置に至るまでの途中まで速度を変えず一定速度で走行させ、その後、所定の減速度βで減速し、減速制御開始位置で目標速度Vs(下限速度Vq)に到達させることができる。
図14は危険走行領域を回避して加速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30は、自動速度制御を行い、危険走行領域を回避する制御を行う回避制御領域となる。車載装置30は自車両の速度が上限速度Vp(目標速度Vs)に到達するように緩やかな加速度で加速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
黄信号開始時点以降も、速度を維持し一定の速度で停止線を通過する。なお、車載装置30は、ビデオカメラ40により停止線を検出した時点以降は、停止線までの距離を補正しつつ速度を微調整し、自車両が黄信号の終了時点で停止線を進入(通過)するように制御する。これにより、図中曲線pで示すように、黄信号の終了時点で安全かつ確実に自車両を、停止線を通過させることができる。なお、破線で表示した直線m、曲線nは、回避制御を行わない場合の走行軌跡である。直線mは、交差点をそのまま走行した場合の走行軌跡であり、黄信号の終了時点で停止線に到達しておらず、赤信号で交差点を通過することになる。また、曲線nは、黄信号になってから標準減速度で停止を試みるが、停止線で停止することができない。
図15は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。図15に示すように、路上装置21、22を設置せずに、光ビーコン10のみを設置することもできる。この場合には、光ビーコン10を、停止線の上流側200m〜1000m程度の位置に設けることができる。また、この場合も、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRCなどを用いることもできる。
図16は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。車両位置検出システムの概要の他の例を示す模式図である。図16に示すように、光ビーコン10、路上装置21、22に加えて、通信装置70を設ける。通信装置70は、例えば、無線LANなどの中域通信機能を備え、信号情報を広い範囲に送信する。なお、通信装置70は、信号制御、交通情報収集、交通情報提供などの処理を行う装置などを利用することも可能である。また、通信装置70は、中域通信に限らず、FM放送、携帯電話、インターネット通信等の広域通信機能を備えた装置でもよい。
上述の例では説明を簡単にするために記していないが、回避制御で一旦目標速度に達して危険走行領域から外れた後、何らかの原因で再び、危険走行領域に入った場合には、再度目標速度を設定して回避制御を行う必要がある。
以上説明したように、本発明にあっては、青信号時間が変動する場合でも、交差点に向かって走行する車両が危険走行状態にあるのか否かを確実に把握することができるため、仮に危険走行状態にある場合には、確実に危険走行状態から回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
上述の実施の形態において、危険走行領域を回避するため停止条件C、進入条件Lを用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。例えば、黄信号時間Tyを意図的に小さくすることができる。また、目標速度として、上限速度Vp、下限速度Vqそのものを使用する代わりに、これらを基準として、例えば、上限速度Vp、又は下限速度Vqに所定の定数を乗じる等して算出した数値を用いることもできる。さらに、上記の危険走行領域は、対象とする速度の範囲を、予め決めておいても良いし、ジレンマ領域だけを対象としたり、オプション領域だけを対象としたりしても良い。
上述の実施の形態では、自車両が危険走行領域に突入する可能性があると判断してからは、停止線に停止するまで、あるいは、停止線を通過するまで、自動速度制御モードとしているが、危険走行領域の境界線に到達した時点で自動速度制御モードを終了し、後は運転者による手動運転に切り替えることも可能である。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。