実施の形態1
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る情報提供装置を用いた情報提供の概要を示す模式図であり、図2は本発明に係る情報提供装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m)を有して情報提供装置10を設置してある。
停止線から上流側の所定距離までの所定範囲Aに、適長離隔して画像感知器20、…を設置してある。各画像感知器20は、例えば、ビデオカメラで構成され、道路上の所定の撮像領域A1、…を走行する車両を撮像することができる。各画像感知器20により、道路上の所定範囲A(撮像領域A1、…)内の車両をすべて撮像することができる。また、各画像感知器20は、情報提供装置10に接続してある。
各画像感知器20は、撮像された画像データに基づいて、車両の車頭又は車尾などを抽出して車両の位置を検出するとともに、撮像時刻の異なる画像データに基づいて、車両の速度を検出する。また、各画像感知器20は、車両全体の特徴から車種、車色を検出することもできる。各画像感知器20で算出する車両の位置は、車両の道路の進行方向の位置(例えば、交差点の停止線からの距離)、道路の幅方向の位置(例えば、車線、左側の路肩からの距離)などである。なお、各画像感知器20は、単眼カメラでもよく、ステレオカメラでもよい。ステレオカメラの場合には、単眼カメラよりも車両の位置、速度を精度良く求めることが可能となる。また、画像感知器20に代えて、車両の位置、速度などを検出することができるものであれば、他の車両感知器であってもよい。
各画像感知器20は、検出した車両の停止線等の所定の地点からの距離、走行車線情報又は路肩からの距離、速度、車種、車色、撮像時刻などを含む車両情報を情報提供装置10へ出力する。なお、各画像感知器20で撮像した画像データを情報提供装置10へ出力し、情報提供装置10で受信した画像データに基づいて車両情報を生成することもできる。各画像感知器20は、所定時間(例えば、0.1秒、0.5秒、1秒など)経過の都度、検出処理を繰り返す。
情報提供装置10は、路車間の通信地点Rを通過する対象車両との通信により、対象車両の位置を取得し、取得した対象車両の位置に基づいて車両情報を探索し、車両情報で示される車両の中から対象車両とその対象車両の前方を走行する1又は複数の前方車両を特定する。これにより、情報提供装置10は、対象車両及び各前方車両の位置(例えば、交差点又は停止線までの距離など)及び速度を求めることができる。
情報提供装置10は、各前方車両及び対象車両がそれぞれ第1状態及び第2状態(例えば、危険走行状態)にあるか否かを判定し、判定結果に応じて安全な運転を支援するための情報を対象車両へ提供する。対象車両の運転者は、提供された情報に基づいて運転操作を行うことで、例えば、緩やかに減速して車両を交差点で停止させ、あるいは、緩やかに加速して交差点を通過させることができる。なお、情報提供装置10の設置位置の交差点からの距離は一例であって、これに限定されるものではない。
情報提供装置10は、例えば、光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などで実現でき、図2に示すように、情報提供装置10全体を制御する制御部11、画像感知器20を通じて車両情報を取得する車両情報取得部12、通信地点Rを通過する対象車両との間で通信を行う通信部13、車両情報を探索して対象車両及び各前方車両を特定する対象車両・前方車両特定部14、対象車両及び各前方車両が後述する危険走行状態(危険走行領域)にあるか否かを判定する走行状態判定部15、信号制御装置又は交通管制装置(不図示)などから信号機の信号情報などを取得するためのインタフェース部16、所定の情報を記憶する記憶部17などを備えている。
車両情報取得部12は、各画像感知器20から入力された車両情報を対象車両・前方車両特定部14へ出力する。なお、車両を撮像して得られた画像データを各画像感知器20から取得し、車両情報取得部12で車両情報を生成する構成であってもよい。
通信部13は、対象車両との間で路車間通信を行うための狭域通信機能を有する。また、通信部13は、交差点の上流側の地点(例えば、交差点から200m程度)から交差点までの比較的広い範囲内に存在する対象車両との通信を行うため、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能、あるいは、広域通信として携帯電話又はPHSなどの移動体通信、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備えることもできる。
通信部13は、対象車両が通信地点Rを通過する際に対象車両との間の通信を確立し、通信地点Rの位置を対象車両の位置情報として取得し、取得した対象車両の位置情報を記憶部17に記憶する。また、通信部13は、対象車両が自車の速度情報を送信する場合、その速度情報を受信して記憶部17に記憶する。なお、通信地点Rを通過する対象車両が複数存在する場合もあることから、各対象車両を識別するための車両IDを使用することができる。この場合、情報提供装置10は、各対象車両に通信地点Rからの所定の走行距離又は通信地点Rを通過した時点から所定の経過時間だけ有効な暫定的な車両IDを付与し、他の対象車両と区別することができる。
また、通信部13は、対象車両が通信地点Rを通過する際に安全な運転を支援するための情報を対象車両へ送信する。
対象車両・前方車両特定部14は、対象車両の位置に基づいて、道路上の所定範囲A内に存在する車両を示す車両情報を探索し、対象車両の位置に一致又は近似(最も近い)車両を対象車両として特定する。また、対象車両・前方車両特定部14は、特定した対象車両の前方に位置する他の車両を前方車両として特定する。これにより、対象車両・前方車両特定部14は、対象車両及び各前方車両の位置(例えば、交差点又は停止線までの距離など)及び速度を求めることができる。
この場合、車両位置の誤差、現在時点(例えば、対象車両の位置を取得した時点など)と車両情報で示される車両の検出時点との時間差(時間ずれ)の誤差などに応じて、探索範囲を決定する。なお、詳細は後述する。
インタフェース部16は、信号制御装置又は交通管制装置などの外部装置との間で無線又は有線による通信機能を備える。インタフェース部16は、外部装置から交差点に設置した信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点及び黄信号時間など)を取得し、制御部11の制御のもと、取得した信号情報を記憶部17に記憶する。
記憶部17は、所要の情報を予め記憶している。所要の情報としては、上述の信号情報、通信地点R及び停止線の位置情報(例えば、絶対位置、又は通信地点Rから停止線までの距離など)、標準減速度などである。また、記憶部17は、車両情報取得部12、通信部13から取得した情報を記憶する。
走行状態判定部15は、対象車両及び各前方車両の位置(例えば、交差点又は停止線までの距離など)及び速度、信号情報、所定の標準減速度などに基づいて、対象車両及び各前方車両が危険走行領域にあるか否かを判定する。また、走行状態判定部15は、判定結果に応じて、対象車両を危険走行領域から回避させるための停止限界速度、進入限界速度、目標速度及び段階的目標速度などを算出する。停止限界速度、進入限界速度、目標速度及び段階的目標速度については後述する。また、走行状態判定部15は、判定結果に応じて、対象車両に送信する情報を決定する。
標準減速度は、あくまで対象車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。
次に車両情報を探索して対象車両及び前方車両を特定する方法について説明する。図3は対象車両及び前方車両の特定方法を示す説明図であり、図4は車両情報の一例を示す説明図である。図3(a)は、各画像感知器20で道路上の所定範囲A内に存在するすべての車両を撮像して車両を検出した検出時点における車両の分布(位置関係)を示したものである。また、図3(b)は、現在時点(例えば、対象車両の位置を取得した時点など)における車両の分布を示す。模様が付された車両は、通信地点Rを通過する対象車両であり、破線で示された車両は、対象車両を特定した後に周辺の車両(前方車両を含む)として認識することができる他の車両である。なお、狭域通信に代えて、中域通信又は広域通信を用いる場合には、模様が付された車両は、自身の位置を情報提供装置10へ送信した対象車両である。
図4に示すように、車両情報は、図3(a)で示される車両検出時の車両の分布を表したものである。すなわち、車両情報は、交差点の停止線からの走行車線毎の車両順番、停止線までの距離、速度、走行車線、車種、車色などの情報により構成されている。なお、停止線までの距離は車尾の位置を基準としているが、これに限定されるものではない。また、車両情報は、一例であって、これに限定されるものではない。
図3(b)で示す現在時点(例えば、対象車両の位置を取得した時点など)における対象車両の位置の真値をX、推定値をXd、車両位置の誤差(最大誤差)をXmaxとすると、Xd−Xmax≦X≦Xd+Xmaxとなる。また、時間差の誤差についても考慮するとして、車両検出時点と現在時点との時間差(時刻ずれ)の真値をt、時間差の推定値をtd、時間差の誤差(最大誤差)をtmaxとすると、td−tmax≦t≦td+tmaxとなる。ここで、tmaxは、時間差(時刻ずれ)の推定値の誤差である。対象車両の現在時刻の速度をVとする。
この場合、車両探索範囲は、Xd−Xmax+td・V−tmax・V≦X0≦Xd+Xmax+td・V+tmax・Vにより決定される。なお、時間差の誤差が無視できる程度に小さい場合には、位置の誤差のみにより車両探索範囲を決定してもよい。
図4の例で示される車両情報を探索する場合、例えば、現在時点における対象車両の位置の真値X=200m、推定値Xd=196、速度V=72km/h=20m/sであり、車両位置の誤差Xmax=5mとする。また、時間差の真値t=1.2s、推定値td=1s、時間差の誤差tmax=0.3sとすると、車両探索範囲は、205≦X0≦227となる。図3及び図4の例では、車両C6、C11が特定され、いずれか一方が対象車両であり、他方が周辺車両である。
対象車両の位置を情報提供装置10で取得する際に、対象車両が走行する走行車線、あるいは路肩からの距離を特定することができる場合、例えば、図3(b)の例では、対象車両が車線1を走行していることが判明する場合には、車線2を走行する車両C11は除外され、車両C6が対象車両であることが分かる。
また、対象車両に超音波センサ、車載カメラなどを搭載しておき、対象車両の前方を走行する前方車両との車間距離を算出し、算出した車間距離を情報提供装置10へ送信してもよい。この場合には、図3又は図4で示されているように、車両C6、C11の同一車線の前方車両は、それぞれ車両C5、C10であり、車両C5、C6の車尾(車頭)間距離は20m、車両C10、C11の車尾(車頭)間距離は30mなので、車両C6とC5の車間距離は15m、車両C11とC10の車間距離は25mであるとする。一方、対象車両から送信された前方車両との車間距離が、例えば、20mであるとすると、これから対象車両の車長(例えば、5m)を差し引くと車間距離は15mとなる。従って、車両C11は除外され、車両C6が対象車両であることが分かる。
以上により対象車両及び各前方車両を特定することができ、車両検出時の対象車両C6の停止線までの距離は220m、速度は72km/hであり、前方車両C1〜C5それぞれの停止線までの距離は120m、135m、150m、160m、200mであり、速度は55km/h、50km/h、65km/h、65km/h、60km/hである。なお、車両の位置及び速度は、短時間であるとしても現在時刻から時間差(時刻ずれ)だけ過去の時刻の情報である。このため、対象車両及び各前方車両の停止線までの距離をそれぞれの車両の速度に応じて補正することもできる。例えば、現在時刻では、対象車両の停止線までの距離は、速度20m/s×時間差(1s)に相当する距離(20m)だけ停止線に近づくため、現在時刻の対象車両の停止線までの距離は200m(220m−20m)と補正することができる。各前方車両についても同様である。なお、時間差tが無視できるほど小さい場合には、t=0とすることができる。
図5は危険走行領域の概念を示す説明図である。図中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、車両が危険走行状態である(危険走行領域内にある)ことを車両の速度と停止線までの距離とにより表すことができる領域である。危険走行領域は、ジレンマ領域とオプション領域とを含む。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。
図5において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(1)で求められる。式(1)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(2)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件Lは、式(3)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
ジレンマ領域は、式(2)及び式(3)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(2)及び式(3)の両者とも満足する領域である。なお、図中、危険走行領域の下側の領域は交差点停止領域であり、停止線手前に安全に停止することができる領域である。また、危険走行領域の上側の領域は交差点通過領域であり、安全に停止線に進入(通過)することができる領域である。
情報提供装置10は、走行状態判定部15で判定した判定結果に基づいて、車両に提供する情報を決定する。
図6は危険走行領域に入る前方車両と停止台数の関係の一例を示す説明図であり、図7は前方車両及び対象車両の危険走行領域判定の一例を示す説明図である。図6(a)に示すように、対象車両の前方に各前方車両C1〜C5が走行しているとする。各前方車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定した場合、仮に前方車両C1、C2、C3は危険走行領域内になく、安全に交差点を通過することができる交差点通過領域にあるとする。
一方、前方車両C4が危険走行領域内に突入し、交差点(停止線)手前で停止するものとする。この場合、図6(b)に示すように、危険走行領域内に突入すると判定された前方車両C4、及び前方車両C4に追従して走行する前方車両C5が停止線手前で停止することになる。従って、対象車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する場合において、交差点手前で安全に停止させるためには、停止線から2台分の前方車両C4、C5の車長、停止する際の車間距離を考慮した停止地点Xs1に対象車両を停止させることができるか否かに基づいて判定する必要がある。
図7中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。前方車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、図5の例と同様にして行うことができる。図7において、停止線を基準とした前方車両の現在位置をXp、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での前方車両の位置Xpyは、前方車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(1)と同様にして求められる。式(1)は、現在の前方車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
一方、前方車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cpは、式(2)と同様に求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、前方車両の停止条件Cpは、前方車両が減速したならば停止線で停止することができる前方車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
前方車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない条件である進入条件Lpは、式(3)と同様に求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。前方車両の進入条件Lpは、前方車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる前方車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。前方車両のジレンマ領域、オプション領域は、図7に示すように、停止条件Cpと進入条件Lpとで囲まれる領域となる。
前方車両が危険走行領域にある場合、対象車両の危険走行領域は以下のように決定することができる。まず、前方車両が危険走行領域を回避すべく交差点で停止する場合、対象車両も交差点の手前であって前方車両の後方に停止する必要があり、対象車両の停止条件Cで表される曲線より下側の領域にあれば危険走行領域を回避することができる。すなわち、対象車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域は、交差点(前方車両の後方)で停止することができない危険走行領域である。ここで、対象車両が停止地点Xs1(図6の例では、停止線を基準として前方車両C4、C5の車長分及び停止時の車間距離に応じた距離だけ上流側の地点とすることができる。)の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(4)で求められる。ここで、gは、対象車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。また、Dは停止線と停止地点Xs1との間の距離である。停止条件Cは、対象車両が減速したならば停止線(前方車両の後方)で停止することができる対象車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
対象車両が交差点を通過できるのは、前方車両がいないことが前提であり、対象車両の進入条件は前方車両の進入条件Lpと同じになる。従って、対象車両が進入条件Lpで表される直線より下側の領域になければ交差点を越えてしまう可能性があるので、前方車両が交差点で停止する場合は、追突する可能性がある走行領域である。すなわち、前方車両の進入条件Lpで表される直線の上側の領域は、交差点を通過することができず危険走行領域である。
以上のことから、対象車両の危険走行領域は、対象車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域であり、かつ前方車両の進入条件Lp(これは、対象車両の進入条件に等しい)で表される直線の上側の領域となる。
対象車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、図5の例と同様にして行うことができる。停止地点Xs1を基準とした対象車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での対象車両の位置Xyは、対象車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(1)で求められる。式(1)は、現在の対象車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
図8は危険走行領域に入る前方車両と停止台数の関係の他の例を示す説明図である。また、図9は前方車両及び対象車両の危険走行領域判定の他の例を示す説明図である。図8(a)に示すように、対象車両の前方に各前方車両C1〜C5が走行しているとする。各前方車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定した場合、仮に前方車両C1は、険走行領域内になく、安全に交差点を通過することができる交差点通過領域にあるとする。
一方、前方車両C2が危険走行領域内に突入し、交差点(停止線)手前で停止するものとする。この場合、図8(b)に示すように、危険走行領域内に突入すると判定された前方車両C2、及び前方車両C2に追従して走行する前方車両C3、C4、C5が停止線手前で停止することになる。従って、対象車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する場合において、交差点手前で安全に停止させるためには、停止線から4台分の前方車両C2、C3、C4、C5の車長、停止する際の車間距離を考慮した停止地点Xs2に対象車両を停止させることができるか否かに基づいて判定する必要がある。
また、図9において、停止線を基準とした前方車両の現在位置をXp、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での前方車両の位置Xpyは、前方車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(1)と同様にして求められる。式(1)は、現在の前方車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。一方、前方車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cpは、式(2)と同様に求められる
前方車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない条件である進入条件Lpは、式(3)と同様に求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。前方車両の進入条件Lpは、前方車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる前方車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。前方車両のジレンマ領域、オプション領域は、図9に示すように、停止条件Cpと進入条件Lpとで囲まれる領域となる。
前方車両が危険走行領域を回避すべく交差点で停止する場合、対象車両も交差点の手前であって前方車両の後方に停止する必要があり、対象車両の停止条件Cで表される曲線より下側の領域にあれば危険走行領域を回避することができる。すなわち、対象車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域は、交差点(前方車両の後方)で停止することができない危険走行領域である。ここで、対象車両が停止地点Xs2(図8の例では、停止線を基準として前方車両C2、C3、C4、C5の車長分及び停止時の車間距離に応じた距離だけ上流側の地点とすることができる。)の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(4)で求められる。
対象車両が交差点を通過できるのは、前方車両がいないことが前提であり、対象車両の進入条件は前方車両の進入条件Lpと同じになる。従って、対象車両が進入条件Lpで表される直線より下側の領域になければ交差点を越えてしまう可能性があるので、前方車両が交差点で停止する場合は、追突する可能性がある走行領域である。すなわち、前方車両の進入条件Lpで表される直線の上側の領域は、交差点を通過することができず危険走行領域である。
以上のことから、対象車両の危険走行領域は、対象車両の停止条件Cで表される曲線の上側の領域であり、かつ前方車両の進入条件Lp(これは、対象車両の進入条件に等しい)で表される直線の上側の領域となる。対象車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、図7の例と同様に、停止地点Xs2を基準とした対象車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での対象車両の位置Xyは、対象車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(1)で求められる。式(1)は、現在の対象車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
図6乃至図9に例示するように、対象車両の前方に複数の前方車両が走行している場合、いずれの前方車両が危険走行領域に突入するかに応じて、対象車両が危険走行領域に突入するか否かの条件、より具体的には停止条件が異なる。従って、前方車両のいずれかが危険走行領域に突入するかに応じて、停止線に停止する前方車両の停止台数を特定することで対象車両の停止地点を求めることで、対象車両が危険走行領域に突入するか否かを精度良く判定することができ、交差点手前で安全に停止又は交差点を安全に通過することが可能となる。
図10は前方車両及び対象車両の危険走行領域判定の他の例を示す説明図である。図10は各前方車両が危険走行領域に突入することなく交差点を通過する可能性が高く、かつ対象車両が危険走行領域に突入する可能性がある場合を例示している。すなわち、停止線を基準とした前方車両の現在位置をXp、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での前方車両の状態(位置Xpy、速度Vy)は、危険走行領域の外(交差点通過領域)にあり、安全に停止線に進入(停止線を通過)することができる。
一方、交差点で停止する前方車両は存在しないため、対象車両の停止位置は停止線となる。停止線を基準とした対象車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始時点までの時間をtとする。図10に示すように、仮に黄信号開始時刻での対象車両の状態(位置Xy、速度Vy)が危険走行領域にある場合、危険走行領域回避のための情報を提供することになる。
次に、対象車両を危険走行領域から回避させるための速度制御について説明する。情報提供装置10は、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度又は対象車両が所定距離移動する都度、対象車両が、例えば、黄信号開始後に停止しようとして停止地点(例えば、交差点で停止する前方車両のうち最後列の前方車両の車尾から所定の車間距離の地点)又は交差点の手前に停止できる停止限界速度、又は対象車両が黄信号の終了時点までに交差点に進入できる進入限界速度を算出する。
情報提供装置10は、対象車両が危険走行領域にあると判定した場合、危険走行領域から回避させるべく対象車両の速度及び算出した停止限界速度又は進入限界速度に基づいて対象車両の加減速度を制御するための情報を対象車両へ送信する。例えば、情報提供装置10は、対象車両が危険走行状態にあると判定した場合において、対象車両を停止地点又は交差点に停止させるときは、所定時間経過の都度又は所定距離の移動の都度算出した停止限界速度を目標速度として現時点の対象車両の速度を目標速度に近づけるべく対象車両の減速制御のための情報を送信する。
また、情報提供装置10は、対象車両を交差点に進入させるときは、所定時間経過の都度又は所定距離の移動の都度算出した進入限界速度を目標速度として現時点の対象車両の速度を目標速度に近づけるべく対象車両の加速制御のための情報を対象車両へ送信する。目標速度は、対象車両を緩やかな減速度で減速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。
例えば、目標速度Vsは以下のとおり算出することができる。前方車両が危険走行領域を回避すべく交差点で停止する場合に、対象車両が危険走行領域に突入する可能性があると判定されたときは、式(1)、式(4)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsを目標速度とする。式(1)が式(4)よりも小さい場合、目標速度Vsは、式(5)で表され、図7、図9の点Pにおける速度として求められる。式(5)において、Xは前方車両が交差点で停止した場合において、前方車両の停止末尾の位置を基準とした距離である。
また、対象車両が式(4)の下限値が式(1)よりも小さくなる範囲のところで、危険走行領域に突入する可能性があると判定された場合、上述の式(1)及び式(3)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsの下限値を目標速度とする。目標速度Vsは、式(6)で表される。
段階的目標速度Vrは、対象車両の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな減速を行うことができなくなる事態を防ぐため、対象車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
段階的目標速度Vrの算出は、減速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて大きい場合、その差分をn分割した値ΔV=(V−Vs)/nだけ減速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V−Δv=V−(V−Vs)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、対象車両は、後続車両に対して減速を感じさせないように緩やかな減速度で減速することができるので、後続車両は急ブレーキを踏み込むような事態を防止でき、安全性が向上する。
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値β(例えば、β=1km/h)を用いて、V−Vs≧βの場合、Vr=V−βとし、V−Vs<βの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
対象車両の運転者は、提供された情報に基づいて運転制御することにより、所定時間の都度又は所定距離の移動の都度、対象車両の速度を停止限界速度又は進入限界速度に徐々に近づけることができ、急な減速あるいは急な加速を行うことなく緩やかな加減速で安全にかつ確実に危険走行状態を回避することができる。
上述の例で、道路勾配を含む道路情報に基づいて標準減速度gを決定して危険走行領域の判定をすることもできる。例えば、道路勾配が0の場合、式(2)を用い、道路勾配を考慮する場合には、式(2)に代えて式(7)及び式(9)、あるいは、式(4)に代えて式(8)及び式(9)を用いればよい。ここで、gは標準減速度、hは車種毎に一意の定数である勾配係数、γは勾配(単位は度、登りが正)である。
これにより、例えば、対象車両が下り坂を走行する場合、標準減速度が小さくならないように、下り勾配でかかる力の分だけ減速制御量を増し(h・tan|γ|、γ<0)、登り坂を走行する場合、標準減速度が大きくなり過ぎないように、上り勾配でかかる力の分だけ減速制御量を減少(−h・tan|γ|、γ<0)させる。これにより、一層精度良く車両の停止又は進入を制御することができる。
情報提供装置10は、対象車両を危険走行領域から回避させるべく、対象車両を減速させて停止地点で停止させるための情報を提供する。例えば、前方車両が停止線で停止する場合には、「交差点でxx台の前方車両が停止するので、速度を落として走行してください」、「前方車両が赤信号で急停止する可能性があるので、xxkm/h程度速度を落として走行しないと危険です」、「xx台の前方車両が赤信号で急停止する可能性があるので、xxkm/h程度で走行しないと危険です」、「xx台の前方車両が赤信号で停止する可能性があるので、速度を落としなさい」などの情報提供を行うことができる。
また、前方車両が交差点を通過する場合には、「赤信号になるので速度を落としなさい」、「速度を落として走行しないと交差点で追突される可能性があります」、「速度を落として走行しないと交差点で衝突する可能性があります」、「xxkm/h程度速度を落として走行しないと、交差点で追突される可能性があります」、「xxkm/h程度で走行しないと交差点で追突される可能性があります」などの情報提供を行うことができる。
また、情報提供装置10は、対象車両を危険走行領域から回避させるべく、対象車両を加速させて交差点を通過させるための情報を提供する。例えば、「赤信号になるので交差点を素早く通過しなさい」、「速度をやや上げて走行しないと交差点で追突される可能性があります」、「速度をやや上げて走行しないと交差点で衝突する可能性があります」、「xxkm/h程度速度を上げて走行しないと、交差点で追突される可能性があります」、「xxkm/h程度で走行しないと交差点で追突される可能性があります」などの情報提供を行うことができる。
また、情報提供装置10は、対象車両が危険走行領域内にない場合には、例えば、「現在の速度を維持すれば、交差点を安全に通過できる」旨の情報提供を行う。危険走行領域内に突入する可能性がない場合には、何も情報を提供しなくてもよい。また、黄信号開始時の対象車両の状態量(速度、位置)が、危険走行領域に近い(停止条件C、進入条件Lに近い)場合には、例えば、「交差点を安全に通過するため速度を下げないで走行してください」などの情報提供を行うこともできる。
加速又は減速のいずれの情報提供を行うかは、例えば、対象車両がジレンマ領域内にあるとした場合、対象車両の速度が停止限界速度(停止条件C上の速度)よりも進入限界速度(進入条件L上の速度)に近い場合には加速のための情報を提供し、進入限界速度よりも停止限界速度に近い場合には減速のための情報の提供を行うことができる。なお、停止限界速度、進入限界速度に代えて、対象車両の状態量(速度Vy、位置Xy)を表す点から縦軸に平行な直線と進入条件Lとの交点、及び前記点から縦軸に平行な直線と停止条件Cとの交点それぞれと前記点との距離により加速又は減速を決定してもよい。
なお、対象車両を交差点で停止させるか、交差点を通過させるかの判断は、上述の例に限定されるものではない。例えば、対象車両がジレンマ領域に突入すると予想される場合に、対象車両の速度と進入限界速度との速度差が、対象車両の速度と停止限界速度との速度差に比して、1/2、あるいは1/3以下の場合に交差点を通過させる、進入限界速度が所定の速度上限値以上のときには対象車両を交差点に停止させる、対象車両の速度と停止限界速度との速度差が所定値(10km/h等)以下のとき交差点に停止させる等である。
情報提供装置10は、車両(対象車両又は前方車両)の速度が所定の範囲内である場合、危険走行領域にあるか否かを判定し、判定結果に応じた情報提供をすることもできる。例えば、比較的低速度(例えば、20km/h)で走行している車両は、交差点で安全に停止することができ危険走行領域に突入する可能性が少ないと考えられるため、危険走行状態の判定は不要である。また、比較的高速度(例えば、100km/h)で走行している車両は、緊急性のある車両や暴走車両等に該当すると考えられるため、危険走行状態の判定結果に基づく情報の提供は不要である。そこで、車両の速度が所定の範囲内である場合に危険走行状態の判定を行って情報を提供する。あるいは、規制速度をオーバーする場合には、加速制御は指示せず、減速制御のみ指示しても良い。これにより、危険走行領域の判定が不要な車両を除外して処理負荷を低減することができる。なお、上述の範囲は一例であって、これに限定されるものではない。
情報提供装置10で車両(対象車両又は前方車両)が危険走行領域にあるか否かを判定する場合、交差点に設置された信号機の切り替わりタイミングによっては、交差点で安全に停止できるか、交差点を安全に通過できることが明らかなときがある。例えば、黄信号開始時点までの時間が比較的短い場合には、車両が停止線より十分上流側の地点に到達した時点で黄信号に切り替わるため、危険走行領域に突入することなく安全に交差点で停止することが可能である。また、黄信号開始時点までの時間が比較的長い場合には、車両が停止線を通過する時点でまだ青信号のままであるため、危険走行領域に突入することなく安全に交差点を通過することが可能である。そこで、情報提供装置10は、黄信号開始時点までの時間が所定の範囲内である場合に、車両が危険走行領域にあるか否かを判定することができる。
進入条件Lで表される直線と停止条件Cで表される曲線との交点の速度をV0とする。例えば、標準減速度g=3m/s、ブレーキ時間遅れα=0.5s、Ty=3sとすると、V0=54km/hとなる。また、車両の速度が小さい場合には、交差点で安全に停止できる可能性が高く、車両の速度が大きい場合には、交差点を安全に通過できる可能性が高い。そこで、車両の速度範囲をV1以上V2以下とする。例えば、速度V1は、18km/h、速度V2は、108km/hとする。
車両の速度が比較的低速度であり、V0より小さい場合には、その車両はオプション領域にあるか否かが問題となる。また、車両の速度が比較的高速度であり、V0より大きい場合には、その車両はジレンマ領域にあるか否かが問題となる。
この場合、車両の速度がV1以上の車両は、式(10)、式(11)の条件を満たす時間帯(黄信号開始となるまでの時間t)では、交差点通過領域になる。
一方、車両の速度がV2以下の車両は、式(12)、式(13)の条件を満たす時間帯(黄信号開始となるまでの時間t)では、交差点停止領域になる。
上述の各式で、V1=18km/h(5m/s)、V2=108km/h(30m/s)、α=0.5s、g=3m/sを代入し、車両の現在位置X=200mとすると、式(10)〜式(13)を満たす時間tは、t>59s、t<17sとなる。すなわち、黄信号開始となるまでの時間tが、17≦t≦59の時間帯でのみ、車両の危険走行領域の判定及び判定結果に基づく情報の提供を行えばよい。また、例えば、車両の現在位置X=300mとすると、10≦t≦39の時間帯でのみ、車両の危険走行領域の判定及び判定結果に基づく情報の提供を行えばよい。従って、信号周期が2分で、青信号時間が半分よりやや少ない場合、危険走行領域の判定を行う時点で赤信号であれば、情報提供を行わないことになる。これにより、情報提供が不要な車両を除外することができ、処理負荷を低減することができる。
また、車両の現在位置(車両から交差点までの距離)に応じて、情報提供を行うための黄信号開始時点までの時間tの範囲を設定することができる。上述のように、車両と交差点との距離が比較的短い場合には、時間tの範囲を小さく、車両と交差点との距離が比較的長い場合には、時間tの範囲を大きく設定する。これにより、車両の交差点までの距離に応じて、対象車両を制限することができ、処理負荷を一層低減することができる。また、上述の例では、黄開始時刻を基準とした危険走行領域の回避を示したが、ぎりぎり黄信号で通過せず余裕を持たせる目的で、例えば黄信号時間Tyを意図的に小さくしたり、黄信号開始時刻の黄信号時間だけ手前の時刻を基準として停止線を青信号で通過させるようにしたり、危険走行領域を広くするために式(1)〜式(4)を補正したりする等、本願の概念を損なわない範囲内で、種々、数式、定数等を追加又は変更して用いても良い。
図11及び図12は情報提供装置10の処理手順を示すフローチャートである。情報提供装置10(以下、装置10という)は、車両情報を取得し(S11)、対象車両との通信の有無を判定し(S12)、通信がない場合(S12でNO)、ステップS11の処理を続け、車両情報を繰り返し取得して対象車両との通信があるまで待機する。
対象車両との通信があった場合(S12でYES)、装置10は、対象車両の位置を取得し(S13)、信号情報を取得する(S14)。この場合、対象車両の位置は通信地点Rの位置とすることができる。
装置10は、取得した対象車両の位置に基づいて車両情報を探索し、車両情報で示される車両の中から対象車両及びその対象車両の前方に存在する1又は複数の前方車両を特定する(S15)。これにより、装置10は、対象車両及びその対象車両の前方を走行する各前方車両の状態量である位置(停止線までの距離)、速度を把握することができる。装置10は、進入条件L及び停止条件Cにより決定される各前方車両の危険走行領域を算出し(S16)、判定条件Eに基づいて、いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入するか否か判定する(S17)。
いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入する場合(S17でYES)、装置10は、危険走行領域内に突入する前方車両が停止線手前に停止したとして、停止線手前に停止する前方車両の台数を特定する(S18)。装置10は、停止線手前で停止する前方車両の台数に応じて、対象車両の停止地点を特定し(S19)、対象車両の危険走行領域を算出する(S20)。
装置10は、対象車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定し(S21)、危険走行領域内に突入する場合(S21でYES)、黄信号開始時の対象車両の状態量(位置及び速度)、停止条件C、進入条件Lなどを参照して、対象車両を交差点で停止させるか又は交差点を通過させるかを決定する(S22)。
装置10は、対象車両に提供する情報を決定し(S23)、決定した情報を対象車両へ送信する(S24)。なお、この場合には、交差点で停止させるか又は交差点を通過させるに応じた情報を決定して送信する。対象車両が危険走行領域内に突入しない場合(S21でNO)、装置10は、ステップS23の処理を行う。この場合、例えば、対象車両の速度をそのまま維持して走行する旨の情報を提供する。
装置10は、処理終了の指示の有無を判定し(S25)、指示がない場合(S25でNO)、ステップS11以降の処理を続け、指示があった場合(S25でYES)、処理を終了する。
一方、いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入しない場合、すなわち、いずれの前方車両も危険走行領域に突入しない場合(S17でNO)、装置10は、すべての前方車両が交差点通過領域にあるか否かを判定する(S26)。すべての前方車両が交差点通過領域にある場合(S26でYES)、装置10は、ステップS20の処理を行う。この場合、対象車両の停止地点は停止線位置である。
すべての前方車両が交差点通過領域にない場合、すなわち、すべての前方車両が交差点停止領域にある場合(S26でNO)、装置10は、ステップS23の処理を行う。この場合、提供する情報は、例えば、「前方車両に追従して走行すれば交差点で停止できます」、「前方車両に追従して交差点で停止してください」等である。
実施の形態2
実施の形態1では、対象車両が所定の通過地点を通過する際に、その対象車両及び各前方車両が危険走行領域に突入するか否かを判定し、判定結果に応じて運転支援のための情報を対象車両に送信する構成であった。すなわち、対象車両の運転者は、所定の通過地点を通過する際に、情報提供を受けるものである。情報提供の方法は、これに限定されるものではなく、対象車両が交差点に向かって走行する際に、繰り返し情報を提供する構成とすることもできる。
図13は実施の形態2の情報提供の概要を示す模式図である。実施の形態2では、情報提供装置10は、狭域通信機能に代えて中域通信機能又は広域通信機能を用い、道路上の所定範囲A(撮像領域A1、…)内の車両と通信可能な通信領域Mを有する。対象車両には、予めナビゲーションシステム、GPS受信機等の測位装置を搭載しておき、自車の位置を時々刻々測位して測位結果を繰り返し情報提供装置10へ送信する。繰り返し送信する送信タイミングは、対象車両と交差点との距離、対象車両の速度などに応じて変化させてもよい。この場合、対象車両及び前方車両が危険走行領域にあるか否かの判定は、黄信号開始時点の直前以降であっても行うことができる。また、多数の対象車両を識別するために、対象車両毎に付与された車両IDを用いることは実施の形態1と同様である。
情報提供装置10は、対象車両から繰り返し送信される位置情報に基づいて、その都度危険走行領域の判定を行うとともに、目標速度又は段階的目標速度を算出して、判定結果及び算出結果に基づいて決定される情報を繰り返し対象車両へ送信することができる。
あるいは、対象車両から1度だけ位置情報を情報提供装置10へ送信し、情報提供装置10は、受信した位置情報に基づいて、危険走行領域の判定、目標速度又は段階的目標速度の算出などを所定の時間間隔で繰り返し行い、その結果を繰り返し対象車両へ送信することもできる。この場合には、対象車両から情報提供装置10への送信は1度だけで、その後は情報提供装置10から対象車両への送信のみが繰り返されるため、全体として通信量を低減させることができる。
また、この場合、対象車両から自車の速度を情報提供装置10へ送信することもできる。これにより、対象車両の特定をより精度良く行うことができる。
図14及び図15は実施の形態2の情報提供装置10の処理手順を示すフローチャートである。装置10は、車両情報を取得し(S31)、対象車両との通信の有無を判定し(S32)、通信がない場合(S32でNO)、ステップS31以降の処理を続け、車両情報を繰り返し取得して対象車両との通信があるまで待機する。
対象車両との通信があった場合(S32でYES)、装置10は、対象車両の位置を取得し(S33)、信号情報を取得する(S34)。この場合、対象車両は、自車の位置を測位しながら走行し、随時測位した位置を情報提供装置10へ送信する。なお、対象車両は、自車の速度を送信することもできる。
装置10は、取得した対象車両の位置に基づいて車両情報を探索し、車両情報で示される車両の中から対象車両及びその対象車両の前方に存在する1又は複数の前方車両を特定する(S35)。これにより、装置10は、対象車両及びその対象車両の前方を走行する各前方車両の状態量である位置(停止線までの距離)、速度を把握することができる。装置10は、進入条件L及び停止条件Cにより決定される各前方車両の危険走行領域を算出し(S36)、判定条件Eに基づいて、いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入するか否か判定する(S37)。
いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入する場合(S37でYES)、装置10は、危険走行領域内に突入する前方車両が停止線手前に停止したとして、停止線手前に停止する前方車両の台数を特定する(S38)。装置10は、停止線手前で停止する前方車両の台数に応じて、対象車両の停止地点を特定し(S39)、対象車両の危険走行領域を算出する(S40)。
装置10は、対象車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定し(S41)、危険走行領域内に突入する場合(S41でYES)、現在の時刻が黄信号開始前であるか否かを判定する(S42)。現在の時刻が黄信号開始前である場合(S42でYES)、装置10は、黄信号開始時の対象車両の状態量(位置及び速度)、停止条件C、進入条件Lなどを参照して、対象車両を交差点で停止させるか又は交差点を通過させるかを決定する(S43)。
装置10は、対象車両に提供する情報を決定し(S44)、決定した情報を対象車両へ送信する(S45)。なお、この場合には、交差点で停止させるか又は交差点を通過させるに応じた情報を決定して送信する。対象車両が危険走行領域内に突入しない場合(S41でNO)、装置10は、ステップS44の処理を行う。この場合、例えば、対象車両の速度をそのまま維持して走行する旨の情報を提供する。
現在の時刻が黄信号開始前でない場合(S42でNO)、装置10は、警告の情報を車両へ送信し(S47)、後述のステップS46の処理を行う。黄信号開始時点以降に対象車両が危険走行領域にある場合、もはや緩やかに減速して交差点に停止することも、緩やかに加速して交差点を通過することも困難であると考えられる。したがって、このような場合には、危険が迫っていることを運転者に確実に知らせるため警告情報を提供する。これにより、交差点の手前で対象車両が危険走行状態から回避できていない場合、あるいは危険走行状態に突入してしまった場合でも、危険走行状態から回避するための情報を提供することができる。
装置10は、処理終了の指示の有無を判定し(S46)、指示がない場合(S46でNO)、ステップS31以降の処理を続ける。対象車両から所定時間(例えば、0.05〜1秒)の経過の都度、自車の位置を送信することにより、情報提供装置10は、対象車両及び各前方車両が危険走行領域内にあるか否かを繰り返し判定し、対象車両が危険走行領域内にある場合には、危険走行領域から回避するための情報を対象車両へ繰り返し送信することができ、実施の形態1の場合に比べて、危険走行領域を回避する可能性を大きくすることができ、より一層安全な運転を支援することができる。
処理終了の指示があった場合(S46でYES)、処理を終了する。一方、いずれかの前方車両が危険走行領域内に突入しない場合、すなわち、いずれの前方車両も危険走行領域に突入しない場合(S37でNO)、装置10は、すべての前方車両が交差点通過領域にあるか否かを判定する(S48)。すべての前方車両が交差点通過領域にある場合(S48でYES)、装置10は、ステップS40の処理を行う。この場合、対象車両の停止地点は停止線位置である。
すべての前方車両が交差点通過領域にない場合、すなわち、すべての前方車両が交差点停止領域にある場合(S48でNO)、装置10は、ステップS44の処理を行う。この場合、提供する情報は、実施の形態1と同様、「前方車両に追従して走行すれば交差点で停止できます」、「前方車両に追従して交差点で停止してください」等である。
以上説明したように、本発明にあっては、複数の前方車両が存在する場合であっても、車両の運転者に対して、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させるための的確な情報を提供することができる。
上述の実施の形態において、危険走行領域を回避するため停止条件C、進入条件Lを用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。例えば、黄信号時間Tyを意図的に小さくすることができる。また、黄信号開始時点又は黄信号の終了時点を見かけ上変更することで、危険走行領域を広く設定することもできる。また、危険走行領域を回避するための目標速度となる上限速度又は下限速度そのものを使用する代わりに、これらを基準として、例えば、上限速度又は下限速度に所定の定数を乗じる等して算出した数値を用いることもできる。さらに、上記の危険走行領域は、対象とする速度の範囲を、例えば、20km/h以上100km/h以下というように予め決めておいても良い。また、危険走行領域は、ジレンマ領域だけを対象としたり、オプション領域だけを対象としたりしても良い。
上述の実施の形態において、情報提供は種々の形態を取り得る。例えば、情報提供装置から対象車両に対して、音声に対応するディジタルデータをそのまま送信する構成であってもよく、予め対象車両との間で設定したインタフェース仕様に基づいて、提供する情報の内容に対応する数字や記号などを送信しても良い。また、危険走行領域にあるか否かの判定の結果、いずれの領域(ジレンマ領域、オプション領域、交差点通過領域、交差点停止領域など)にあるかを示す情報を提供すること、交差点通過と交差点停止の別を提供すること、目標速度や目標速度との差を提供することもできる。また、対象車両は、提供された情報をそのまま運転者に提供すること、あるいは提供された情報に基づいて自動的に車両制御することもできる。
上述の例では、車両情報を画像感知器20などから取得する構成であるが、これに限定されるものではなく、道路を走行する各車両が、自車の位置、速度などの情報を所定の時間間隔で情報提供装置へ送信する機能を備える場合には、各車両から直接受信するようにすることもできる。この場合、情報提供装置10では、交差点から上流側の所定の範囲(例えば、停止線から上流側200mまでの範囲)内に存在する各車両それぞれを対象車両とみなして、対象車両の前方を走行する他の車両を前方車両として上述の危険走行領域の判定を行い、それぞれの対象車両に対して運転支援のための情報を送信することができる。また、この場合には、各対象車両に送信する情報それぞれは、整合性を有するように決定する必要がある。例えば、交差点で停止させる場合には、各対象車両へ送信する情報としては、各対象車両の位置、速度に応じて車両同士が急接近しないような減速度あるいは目標速度などを提供することができる。
上述の実施の形態において、車両に搭載される車載機は、例えば、簡易ナビ又は携帯電話等のように持ち運びできるものでもよい。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。