以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、車両に搭載される信号見落とし防止装置に適用する。本実施の形態に係る信号見落とし防止装置は、交差点を赤信号で通過することを防止するために、交差点進入時に赤信号と予測した場合には警報を実施する。本実施の形態には、未来の車速の変化の予測方法の異なる2つの形態があり、第1の実施の形態が交差点手前での一時加速区間(所定領域に相当)を考慮して予測する形態であり、第2の実施の形態が運転者固有の運転行動特性を考慮して予測する形態である。また、本実施の形態(第3の実施の形態)に係る信号見落とし防止装置は、交差点を赤信号で通過することを防止するために、交差点進入時に赤信号と予測した場合には注意喚起を実施する。この第3の実施の形態に係る信号見落とし防止装置では、第2の実施の形態に係る予測方法を適用する。
図1〜図4を参照して、第1の実施の形態に係る信号見落とし防止装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る信号見落とし防止装置の構成図である。図2は、第1の実施の形態に係る交差点手前での一時的な加速を考慮した予測の説明図である。図3は、第1の実施の形態に係る連続的な加速を考慮した場合の通過可能境界線及び警報条件境界線の一例を示す図である。図4は、第1の実施の形態に係る一時的な加速を考慮した場合の通過可能境界線及び警報条件境界線の一例を示す図である。
信号見落とし防止装置1は、自車両が交差点を通過するときの信号機の状態を予測し、その予測結果に基づいて警報判断を行う。特に、信号見落とし防止装置1では、自車両が交差点到達までの経過時間の予測精度を高めるために、交差点手前での一時的な加速を予測し、その一時的な加速を考慮する。そのために、信号見落とし防止装置1は、光ビーコン受信機10、GPS[Global Positioning System]受信機11、車速センサ12、警報装置20及びECU[Electronic Control Unit]31を備えている。
第1の実施の形態では、ECU31における各処理が特許請求の範囲に記載する車速変化予測手段と信号機状態予測手段に相当する。
図2を参照して、交差点手前での一時的な加速について一例を説明しておく。車両が交差点Cに差し掛かるときに前方の信号機Sの青信号を確認した場合、「なるべく青信号で通過したい」という運転者心理が働く。このとき、運転者は、青信号で通過するために、一時的な加速を行う傾向がある。さらに、この一時的な加速行動はアクセルオンの後にアクセルオフ(ブレーキオンはなし)であるので、加速の後にエンジンブレーキによる減速がある。したがって、交差点直前で、一時的に加速して車速が上昇し、その後に減速して車速が低下する。
この交差点手前で一時的な加速を行う区間は、一時加速区間Aとして設定される。一時加速区間Aは、実際の走行実験などによって設定される。一時加速区間Aは、一律の値でもよいし、交差点手前の道路形状(直線路、カーブ路、上り坂、下り坂など)、道路幅、車線数などに応じた値でもよいし、あるいは、運転者固有の運転行動に応じた交差点毎の値でもよい。この一時加速区間Aの情報としては、少なくとも、前端から後端までの区間の長さ、前端から交差点(停止線)までの距離を含む。一律の値の場合にはECU31で予め保持するとよい。各交差点に応じた値の場合には光ビーコンBからインフラ情報の一つとして受信するとよい。運転者固有の値の場合にはECU31で学習機能が必要となり、学習によって得られた値を用いるとよい。
また、一時加速区間Aでの加速度及びその後の減速度は、実際の走行実験などによって設定される。この加速度、減速度は、一律の値でもよいし、現在車速などに応じた値でもよいし、運転者固有の運転行動に応じた値でもよい。一律の値の場合にはECU31で予め保持するとよい。車速などに応じた値の場合にECU31においてその都度演算するとよい。運転者個々の値の場合にはECU31で学習機能が必要となり、学習によって得られた値を用いるとよい。
光ビーコン受信機10は、光ビーコンアンテナや処理装置などを備えており、交差点Cの手前の所定の位置に設置される光ビーコンBから近赤外線によって情報を受信する。光ビーコン受信機10では、光ビーコンアンテナでダウンリンクエリア内で光ビーコンBからの信号を受信する。光ビーコン受信機10では、処理装置でその受信した信号を復調してダウンリンク情報を取り出し、そのダウンリンク情報をECU31に送信する。なお、光ビーコンとの間で情報を送受信できる光ビーコン送受信機でもよい。
ダウンリンク情報としては、VICS[Vehicle Information CommunicationSystem]情報やインフラ情報がある。VICS情報は、全車線で共通の道路交通情報である。道路交通情報は、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラ情報は、車線毎に構成される車線情報であり、車線毎の信号サイクル情報、道路形状情報、停止線情報、車線識別情報などがある。信号サイクル情報は、青信号、黄信号、赤信号の各点灯時間、右折指示信号の点灯時間、現在点灯している信号とその信号が点灯してからの経過時間などである。この信号サイクル情報により、例えば、何秒後に赤信号になるか、右折車線の場合には右折指示に何秒後になり、何秒後に終了するかが判る。道路形状情報は、周囲の道路の形状を示す情報であり、勾配情報(上り坂、下り坂、勾配角度)も含んでいる。停止線情報は、交差点での停止線の位置情報などである。また、光ビーコンBにおいて他車両情報(位置、車速など)の情報を取得できる場合には他車両情報もインフラ情報に含まれる。
GPS受信機11は、GPSアンテナや処理装置などを備えており、自車両の現在位置などを推定する。GPS受信機11では、GPSアンテナでGPS衛星からのGPS信号を受信する。そして、GPS受信機11では、処理装置でそのGPS信号を復調し、その復調された各GPS衛星の位置データに基づいて自車両の現在位置(緯度、経度)などを演算する。そして、GPS受信機11では、自車両の現在位置情報などをECU31に送信する。ちなみに、現在位置を演算するためには3つ以上のGPS衛星の位置データが必要となるで、GPS受信機11では、異なる3つ以上のGPS衛星からのGPS信号をそれぞれ受信している。なお、車両にナビゲーションシステムが搭載される場合、ナビゲーションシステムのGPS受信機を共有するか、あるいは、ナビゲーションシステムから現在位置を取得する。
車速センサ12は、車速を検出するセンサである。車速センサ12では、車速を検出し、検出した車速情報をECU31に送信する。
警報装置20は、自車両が交差点進入時に赤信号と予測される場合にそのことを知らせる警報を出力する装置であり、警報出力として音声出力や画像表示などを行う。警報装置20では、ECU31から警報信号を受信すると、警報信号に応じて音声を出力したり、画像を表示する。
ECU31は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、信号見落とし防止装置1を統括制御する。ECU31では、一定時間毎に、光ビーコン受信機10、GPS受信機11、車速センサ12から各情報を受信し、これら情報に基づいて各処理を実行し、警報が必要と判断した場合には警報装置20に警報信号を送信する。
ECU31の各処理について具体的に説明する前に、図3、図4を参照して、ECU31で用いる警報条件境界線WBと通過可能境界線PBについて説明しておく。図3、図4において、横軸は現時点から交差点C(停止線)到達までに要する時間(残時間)であり、縦軸は自車両Vの車速である。なお、横軸については、残時間でなく、現在位置から交差点C(停止線)までの距離(残距離L)としてもよい。
通過可能境界線PBは、自車両Vが交差点Cを通過できるか否か(交差点進入時に青信号又は黄信号かあるいは赤信号か)の境界線である。通過可能境界線PBの上側の領域は、自車両Vが交差点Cを通過できる領域(交差点進入時に青信号又は黄信号の領域)である。通過可能境界線PBの下側の領域は、自車両Vが交差点を通過できない領域(交差点進入時に赤信号の領域)である。通過可能境界線PBは、残時間と車速に応じた可変な線であり、車速が高いほど傾きが小さくなる。図3の例の場合、現時点での残時間tと車速vの場合には通過可能境界線PBtより上側なので交差点Cを通過可能であり、現時点より過去時点での残時間t1と車速v1の場合には通過可能境界線PBt1より上側なので交差点Cを通過可能であり、現時点より未来時点での残時間t2と車速v2の場合には通過可能境界線PBt2より上側なので交差点Cを通過可能である。
警報条件境界線WBは、運転者がブレーキ操作を行った場合の自車両Vの減速度を示す曲線であり、警報出力が必要か否かの境界線である。警報条件境界線WBの下側の領域は、自車両Vが交差点Cの停止線で安全に止まることができる領域であり、警報出力が必要ない領域である。警報条件境界線WBの上側の領域は、自車両Vが交差点Cの停止線で安全に止まることができない領域であり、警報出力が必要な領域である。警報条件境界線WBは、車両のブレーキ性能などに応じた一定の曲線であり、実際の走行実験などによって予め設定される。図3の例の場合、現時点での残時間tと車速vの場合には警報条件境界線WBより下側なので交差点Cの停止線で安全に止まることが可能であり、現時点より過去時点での残時間t1と車速v1の場合には警報条件境界線WBより下側なので交差点Cの停止線で安全に止まることが可能であり、現時点より未来時点での残時間t2と車速v2の場合には警報条件境界線WBより上側なので交差点Cの停止線で安全に止まることが不可能である。
したがって、各時点における残時間と車速の関係を通過可能境界線PB及び警報条件境界線WBでそれぞれ判定し、その残時間と車速の関係が通過可能境界線PBから下側の領域内かつ警報条件境界線WBから上側の領域内にある場合に警報出力を行う。
ECU31では、光ビーコン受信機10からの交差点Cでの停止線の位置情報及びGPS受信機11からの現在位置に基づいて交差点C(停止線)までの残距離Lを演算する。そして、ECU31では、残距離Lと一時加速区間Aの情報に基づいて、自車両Vが一時加速区間Aより手前(一時加速区間Aを通過する前)か否かを判定する。さらに、自車両Vが一時加速区間Aより手前と判定した場合、ECU31では、光ビーコン受信機10からの信号サイクル情報、車速センサ12からの現在車速及び演算した残距離Lに基づいて、一時加速区間Aに進入時に信号機Sが青信号か否かを判定する。
一時加速区間Aを既に通過したと判定した場合又は一時加速区間Aを通過前と判定かつ一時加速区間Aに進入時に青信号以外と判定した場合、ECU31では、一時加速区間Aでの一時的な加速を考慮しない通常の警報判断を実施する。一方、一時加速区間Aを通過前と判定かつ一時加速区間Aに進入時に青信号と判定した場合、一時加速区間Aでの一時的な加速を考慮して警報判断を実施する。この各警報判断では、通過可能境界線PBと警報条件境界線WBを用いた判定を行う。
通常の警報判断の場合、ECU31では、前回(過去)の車速と今回(現時点)の現在車速に基づいて加減速度を演算する。前回の車速だけでなく、過去の数回の車速を用いて加減速度を演算してもよい。そして、ECU31では、この演算した加減速度が未来の連続的に継続すると仮定し、その加減速度に基づいて未来の車速の変化を予測し、その車速の変化を現在車速に加味した未来車速を予測演算する。さらに、ECU31では、その未来車速に応じて通過可能境界線PBを設定する。例えば、図3の例の場合、現時点での残時間tでの車速vと過去時点での残時間t1での車速v1から加速度a1が求められるので、この加速度a1が未来も継続したと仮定すると、この加速度a1と現時点での車速vに基づいて未来時点の残時間t2での車速v2を予測できる。過去時点での車速v1に応じた通過可能境界線PBt1、現時点での車速vに応じた通過可能境界線PBt、予測した未来時点での車速v2に応じた通過可能境界線PBt2を比較した場合、未来ほど、通過可能境界線PBの傾きが徐々に小さくなり、交差点Cを通過できる領域が大きくなる。なお、加減速度は、加速度センサなどを用いて取得してもよい。
ECU31では、予測演算した未来車速を考慮し、交差点C(停止線)到達までに要する残時間を演算する。そして、ECU31では、設定した通過可能境界線PBを基準として、その予測した残時間と未来車速との関係から交差点を通過可能か否かを判定する。交差点を通過可能と判定した場合、ECU31では、この交差点Cについての処理を終了する。一方、交差点を通過不可能と判定した場合(交差点進入時に赤信号と予測した場合)、ECU31では、警報待機状態とし、警報条件境界線WBを基準として、その予測した残時間と未来車速との関係から警報出力を行う必要があるか否かを判定する。警報出力を行う必要がないと判定した場合、ECU31では、一定時間経過後、上記した各処理を再度行う。警報出力を行う必要があると判定した場合、ECU31では、交差点進入時の赤信号に対する警報音声や警報画像を生成し、警報信号として警報装置20に送信する。
一時的な加速を考慮した警報判断の場合、ECU31では、一時加速区間Aでの加速度及びその後の減速度に基づいて未来の車速の変化を予測し、その車速の変化を現在車速に加味した未来車速を予測演算する。そして、ECU31では、その未来車速に応じた通過可能境界線PBを設定する。例えば、図4の例の場合、過去時点での残時間t1から現時点での残時間tまでの間において一時的に加速度a2で加速し、現時点での残時間tから未来時点での残時間t2までの間においてエンジンブレーキによって減速度a3(マイナス値の加速度)で減速する。この減速度a3と現時点での車速vに基づいて未来時点での残時間t2での車速v2を予測できる。この例では、この予測される車速v2は、過去時点での車速v1と等しくなる。過去時点での車速v1に応じた通過可能境界線PBt1と予測した未来時点での車速v2に応じた通過可能境界線PBt2を比較した場合、予測される車速v2と過去時点での車速v1とが等しいので、通過可能境界線PBt1と通過可能境界線PBt2とが同じ傾きとなり、交差点Cを通過できる領域が同じになる。また、現時点での車速vに応じた通過可能境界線PBtと通過可能境界線PBt2を比較した場合、通過可能境界線PBt2の傾きが通過可能境界線PBtより大きくなり、交差点Cを通過できる領域が小さくなる。
ECU31では、予測演算した未来車速を考慮し、交差点C(停止線)到達までに要する残時間を演算する。そして、ECU31では、設定した通過可能境界線PBを基準として、その予測した残時間と未来車速との関係から交差点を通過可能か否かを判定する。交差点を通過可能と判定した場合、ECU31では、この交差点Cについての処理を終了する。一方、交差点を通過不可能と判定した場合、ECU31では、警報待機状態とし、警報条件境界線WBを基準として、その予測した残時間と未来車速との関係から警報出力を行う必要があるか否かを判定する。警報出力を行う必要がないと判定した場合、ECU31では、一定時間経過後、上記した各処理を再度行う。警報出力を行う必要があると判定した場合、ECU31では、上記と同様に、警報信号として警報装置20に送信する。
なお、残時間と車速との関係により通過可能境界線PB、警報条件境界線WBの判定を行うのでなく、残距離と車速との関係により通過可能境界線PB、警報条件境界線WBの判定を行うようにしてもよい。
図1〜図4を参照して、信号見落とし防止装置1の動作について説明する。特に、ECU31における処理について図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
自車両Vが交差点手前のダウンリンクエリアに入ると、光ビーコン受信機10では、光ビーコンBからインフラ情報などを受信し、そのインフラ情報をECU31に送信している。このとき、ECU31では、光ビーコン受信機10からインフラ情報を取得する(S10)。
一定時間毎に、GPS受信機11では、各GPS衛星からGPS情報をそれぞれ受信し、各GPS情報に基づいて現在位置などを演算し、その現在位置をECU31に送信している。また、車速センサ12では、自車両Vの車速を検出し、その車速をECU31に送信している。そして、ECU31では、GPS受信機11からの現在位置を取得するとともに(S11)、車速センサ12からの車速を取得する(S12)。そして、ECU31では、現在位置とインフラ情報における交差点Cの停止線の位置情報から交差点Cまでの残距離Lを演算する(S13)。
ECU31では、残距離Lと一時加速区間Aの情報に基づいて、自車両Vが一時加速区間Aより手前か否かを判定する(S14)。S14にて一時加速区間Aの手前と判定した場合、ECU31では、インフラ情報の信号サイクル情報、現在車速及び残距離Lに基づいて、一時加速区間Aへの進入時に交差点Cの信号機Sが青信号か否かを判定する(S15)。
S15にて一時加速区間Aへの進入時に青信号と判定した場合、ECU31では、一時加速区間Aでの一時的な加速を考慮して警報判断を実施する(S16)。まず、ECU31では、現在車速に一時加速区間Aでの加速及びその後の減速を考慮した未来車速を予測演算する(S18)。そして、ECU31では、その未来車速に応じて通過可能境界線PBを設定する(S18)。また、ECU31では、その未来車速を考慮して残時間を演算する(S18)。そして、ECU31では、その一時的な加速と減速を考慮した各値を用いて、通過可能境界線PBを基準として、その残時間と未来車速との関係から交差点を通過可能か否かを判定する(S18)。S18にて交差点を通過可能と判定した場合(交差点進入時に青信号又は黄信号の場合)、ECU31では、この交差点Cについての処理を終了する。
S14にて一時加速区間Aを既に通過したと判定した場合又はS15にて一時加速区間Aへの進入時に赤信号又は黄信号と判定した場合、ECU31では、通常の警報判断を実施する(S17)。まず、ECU31では、過去時点での車速と現時点での現在車速に基づいて加減速度を演算し、現在車速にその加減速度を考慮した未来車速を予測演算する(S18)。そして、ECU31では、その未来車速に応じて通過可能境界線PBを設定する(S18)。また、ECU31では、その未来車速を考慮して残時間を演算する(S18)。そして、ECU31では、その加減速度を考慮した各値を用いて、通過可能境界線PBを基準として、その残時間と未来車速との関係から交差点を通過可能か否かを判定する(S18)。S18にて交差点を通過可能と判定した場合、ECU31では、この交差点Cについての処理を終了する。
S18にて交差点を通過不可能と判定した場合(交差点進入時に赤信号と予測した場合)、ECU31では、警報待機状態となり(S19)、警報条件境界線WBを基準として、その予測した残時間と未来車速との関係から警報出力を行う必要があるか否かを判定する(S20)。S20にて警報出力を行う必要がないと判定した場合、ECU31では、一定時間経過後、S11に戻って、上記した各処理を再度行う。一方、S20にて警報出力を行う必要があると判定した場合、ECU31では、交差点進入時の赤信号に対する警報出力を行うための警報信号を警報装置20に送信し、この交差点Cに対する処理を終了する(S21)。この警報信号を受信すると、警報装置20では、警報音声を出力したり、警報画像を表示したりする。この警報によって、運転者は、交差点を赤信号で通過できないことを認識し、直ちに、ブレーキ操作を行う。
この信号見落とし防止装置1では、一時加速区間Aでの一時的な加速及びその後の減速に基づく未来の車速の変化を考慮することにより、交差点到達までの残距離や残時間を高精度に予測でき、交差点の通過判定を高精度に行うことができる。また、信号見落とし防止装置1では、一時加速区間Aを既に通過した場合でも過去の車速の変化から求めた加減速度に基づく未来の車速の変化を考慮することにより、交差点到達までの残距離や残時間を高精度に予測でき、交差点の通過判定を高精度に行うことができる。その結果、警報が必要な場合の未警報や警報が不要な場合の誤警報を防止することができる。
図6〜図8を参照して、第2の実施の形態に係る信号見落とし防止装置2について説明する。図6は、第2の実施の形態に係る信号見落とし防止装置の構成図である。図7は、第2の実施の形態に係る交差点手前での運転者固有の運転行動に応じた車速変化を考慮した予測の説明図である。図8は、第2の実施の形態に係る通過可能境界線及び警報条件境界線の一例を示す図である。なお、信号見落とし防止装置2では、第1の実施の形態に係る信号見落とし防止装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
信号見落とし防止装置2は、自車両が交差点を通過するときの信号機の状態を予測し、その予測結果に基づいて警報判断を行う。特に、信号見落とし防止装置2では、自車両が交差点到達までの経過時間の予測精度を高めるために、自車両の周囲の状況や運転者固有の運転行動に応じて車速の変化を予測し、その車速の変化を考慮する。そのために、信号見落とし防止装置2は、光ビーコン受信機10、GPS受信機11、車速センサ12、警報装置20及びECU32を備えており、ECU32内にデータベース32aが構成される。
第2の実施の形態では、ECU32における各処理が特許請求の範囲に記載する車速変化予測手段と信号機状態予測手段に相当し、データベース32aが特許請求の範囲に記載する記憶手段に相当する。
図7を参照して、交差点手前の車速の変化について説明しておく。運転者は、交差点手前での道路の状況や他車両の状況などによって、加速操作あるいは減速操作を行う。例えば、下り坂では、車両は通常加速するが、運転者によっては、車速の増加を回避するために減速操作を行う場合もある。また、交差点Cの信号機Sが黄信号に変わったときに、運転者によっては、加速操作を行う場合もあれば、あるいは、減速操作を行う場合もある。また、前方車両が存在すると、運転者によっては、前方車両に追従するように加減速操作を行う場合もあれば、あるいは、前方車両との車間距離をあけるために減速操作を行う場合もある。また、隣接車線に車両が存在すると、運転者によっては、その隣の車両に追従するように加減速操作を行う場合がある。このように、運転者は、周囲の状況に応じて様々な加減速操作を行う。そこで、交差点手前での過去の車速の変化(運転者固有の運転行動に相当)と周囲の状況とを関連付けてデータベース化しておくことにより、交差点手前での周囲の状況から車速の変化を予測することができる。
また、運転者固有の運転行動に関係なく車速が変化する場合がある。例えば、交差点の手前が下り坂の場合には自車両Vは加速し、上り坂の場合には減速する。また、自車両VにACC[Adaptive Cruise Control]装置が搭載され、作動している場合、自車両Vは、前方車両が存在するときには前方車両に応じて加減速し、前方車両が存在しないときには設定車速になるように車速を維持する。したがって、周囲の状況や車速制御装置の作動状況などから、車速の変化を予測することもできる。
なお、光ビーコンBにおいて交差点手前での車両の情報(位置、車速など)を取得できる場合、光ビーコンBからダウンリンクされるインフラ情報の中に車両情報も含まれる。したがって、自車両Vでは、周囲の他車両の情報も取得できる。
ECU32は、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットであり、信号見落とし防止装置2を統括制御する。ECU32では、一定時間毎に、光ビーコン受信機10、GPS受信機11、車速センサ12から各情報を受信し、これら情報とデータベース32aに格納されている情報に基づいて各処理を実行し、警報が必要と判断した場合には警報装置20に警報信号を送信する。
なお、ECU32でも警報条件境界線WBと通過可能境界線PBを用いるが、図8に示すように、横軸を距離、縦軸を時間とした警報条件境界線WBと通過可能境界線PBを用いる。ECU32でも、各位置における自車両Vの交差点C(停止線)到達までに距離(残時間)と車速の関係を通過可能境界線PBと警報条件境界線WBで判定し、その関係が通過可能境界線PBから下側の領域内かつ警報条件境界線WBから上側の領域内にある場合に警報出力を行う。
データベース32aは、RAMの所定の領域に構成され、交差点手前(光ビーコンBからのインフラ情報を受信後)での周囲の状況と運転者固有の運転行動とを対応付けた情報が格納される。データベース32aに格納される情報としては、交差点毎に、時系列での車速及び残距離に対して道路形状情報(上り坂、下り坂、勾配角度、直線路、カーブ路など)、車線線、車線幅、自車両Vの周囲の他車両の情報(位置、車速など)、自車両Vに搭載される車速制御装置の作動状況(例えば、ACC装置の作動状況など)、交差点Cでの信号サイクル情報などである。
ECU32では、光ビーコン受信機10からの交差点Cでの停止線の位置情報及びGPS受信機11からの現在位置に基づいて交差点Cまでの残距離Lを演算する。
ECU32では、運転者固有の運転行動を示す過去の車速の変化情報などを格納したデータベース32aがあるか否か(つまり、データベース32aを利用して車速の変化の予測が可能か否か)を判定する。ここでは、データベース32a自体の有無の他に、データベース32aの中に車速の変化を予測可能なデータが格納されているか否かも判定する。
過去の車速の変化情報などを格納したデータベース32aがある場合、ECU32では、データベース32aの中の情報を参照し、光ビーコン受信機10からの道路形状情報、信号サイクル情報、他車両情報及び自車両Vに搭載の車速制御を行う他装置の作動状況などに基づいて、現在の走行中の状況に一致あるいは近似する情報をデータベース32aの中から抽出する。そして、ECU32では、その抽出した情報の車速情報から未来の車速の変化を予測する。例えば、青信号から黄信号に変わった場合には過去の車速の上昇情報(運転者の過去の加速行動)から車速が上昇すると予測する。前方車両や隣接車両が存在する場合には過去の他車両の車速に従った車速の変化情報(運転者の過去の追従行動)から車速が他車両の車速に合わせて変動すると予測する。車速がどの程度変化するかは、データベース32aから抽出した過去の車速の変化から演算して求める。ECU32では、その予測した車速の変化を現在車速に加味して未来車速を予測演算する。
過去の車速の変化情報などを格納したデータベース32aがない場合、ECU32では、周囲の状況などを考慮した車速の変化の予測が可能か否かを判定する。ここでは、光ビーコン受信機10によって道路形状情報や周囲の他車両の情報を取得できているかや自車両Vに搭載の車速制御装置の作動状況などを取得できているかを判定する。
周囲の状況などを考慮した車速の変化の予測が可能な場合、ECU32では、光ビーコン受信機10からの道路形状情報や車速制御装置の作動状況などに基づいて、未来の車速の変化を予測する。例えば、下り坂の場合には車速が上昇すると予測する。ACC装置が作動し、前方車両が存在しない場合には車速が変化しないと予測する。下り坂、上り坂、カーブ路などで車速がどの程度変化するかは、実際の走行実験などによって予め求めておく。ECU32では、その予測した車速の変化を現在車速に加味して未来車速を予測演算する。
周囲の状況などを考慮した車速の変化の予測が不能な場合、EUU32では、現在車速から一定車速減算した車速を予測演算する。一定車速減算するのは、交差点をより安全に通過できるように、現在車速より少し落とした車速でも交差点を通過できるかを判断するためである。一定車速は、実際の走行実験などによって予め設定される。
ECU32では、予測演算によって求めた未来車速に応じて通過可能境界線PBを設定する。例えば、図8の例の場合、運転者の過去の運転行動から加速(車速が上昇)と予測した場合、光ビーコンBからダウンリンクした直後の現在位置X1(残距離L1)から未来の位置X2(残距離L2<L1)までの間において加速度aで加速し、この加速度aと現在位置X1での車速v1に基づいて未来の位置X2での車速v2を予測できる。この例では、現在位置X1での車速v1に応じた通過可能境界線PBL1と予測した未来車速v2に応じた通過可能境界線PBL2を比較した場合、通過可能境界線PBL2の傾きが通過可能境界線PBL1より小さくなるので、交差点Cを通過できる領域が大きくなる。
ECU32では、予測した未来車速を考慮し、交差点C(停止線)到達までの残距離Lを演算する。そして、ECU32では、設定した通過可能境界線PBを基準として、その予測した残距離Lと未来車速との関係から交差点を通過可能か否かを判定する。交差点を通過可能と判定した場合、ECU32では、この交差点Cについての処理を終了する。
交差点を通過不可能と判定した場合、ECU32では、警報待機状態とし、警報条件境界線WBを基準として、その予測した残距離Lと未来車速との関係から警報出力を行う必要があるか否かを判定する。警報出力を行う必要がないと判定した場合、ECU32では、一定時間経過後、上記した各処理を再度行う。警報出力を行う必要があると判定した場合、ECU32では、上記と同様に、警報信号として警報装置20に送信する。
図6〜図8を参照して、信号見落とし防止装置2の動作について説明する。特に、ECU32における処理について図9のフローチャートに沿って説明する。図9は、図6のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
第1の実施の形態と同様に、自車両Vが交差点手前のダウンリンクエリアに入ると、光ビーコン受信機10では光ビーコンBから受信したインフラ情報をECU32に送信し、ECU32では光ビーコン受信機10からインフラ情報を取得する(S30)。そして、一定時間毎に、GPS受信機11では各GPS衛星から受信した各GPS情報に基づいて演算した現在位置をECU32に送信し、車速センサ12では検出した車速をECU32に送信している。ECU32では、GPS受信機11からの現在位置を取得するとともに(S31)、車速センサ12からの車速を取得し(S32)、現在位置とインフラ情報における交差点Cの停止線の位置から交差点Cまでの残距離Lを演算する(S33)。
ECU32では、周囲の状況と過去の車速の変化とを対応付けたデータベース32aがあるか否か(つまり、運転者の過去の運転行動を考慮した車速変化の予測が可能か否か)を判定する(S34)。S34でデータベース32aがないと判定した場合、ECU32では、自車両Vの周囲の状況や車速制御装置の作動状況などを考慮した車速変化の予測が可能かを判定する(S35)。
S34にてデータベース32aがあると判定した場合、ECU32では、データベース32aを利用し、自車両Vの周囲の状況(道路形状情報、信号サイクル情報、他車両情報など)に応じて未来の車速変化を予測する(S36)。そして、ECU32では、現在車速にその未来の車速変化を加味して未来車速を予測演算する(S36)。
S35にて周囲の状況などを考慮した車速変化の予測が可能と判定した場合、ECU32では、自車両Vの周囲の状況(道路形状情報など)や車速制御装置(ACC装置など)の作動状況などに応じて未来の車速変化を予測する(S37)。そして、ECU32では、現在車速にその未来の車速変化を加味して未来車速を予測演算する(S37)。
S35にて周囲の状況などを考慮した車速変化の予測が不能と判定した場合、ECU32では、現在車速から一定車速減算した車速を予測演算する(S38)。
ECU32では、予測演算によって求めた未来車速に応じて通過可能境界線PBを設定する(S39)。また、ECU32では、その未来車速を考慮して残距離を演算する(S39)。そして、ECU32では、その車速変化を考慮した各値を用いて、通過可能境界線PBを基準として、その残距離と未来車速との関係から交差点を通過可能か否かを判定する(S39)。S39にて交差点を通過可能と判定した場合、ECU32では、この交差点Cについての処理を終了する。
S39にて交差点を通過不可能と判定した場合(交差点進入時に赤信号と予測した場合)、ECU32では、警報待機状態となり(S40)、警報条件境界線WBを基準として、その残時間と未来車速との関係から警報出力を行う必要があるか否かを判定する(S41)。S41にて警報出力を行う必要がないと判定した場合、ECU32では、一定時間経過後、S31に戻って、上記した各処理を再度行う。一方、S41にて警報出力を行う必要があると判定した場合、ECU32では、交差点進入時の赤信号に対する警報出力を行うための警報信号を警報装置20に送信する(S42)。この警報信号を受信すると、警報装置20では、警報音声を出力したり、警報画像を表示したりする。この警報によって、運転者は、交差点を赤信号で通過できないことを認識し、直ちに、ブレーキ操作を行う。さらに、ECU32では、自車両Vの周囲の状況、車速制御装置の作動状況と時系列での車速及び残距離とを対応付けた情報をデータベース32aに記録し、この交差点Cに対する処理を終了する(S43)。
この信号見落とし防止装置2では、運転者の過去の運転行動に基づく未来の車速の変化を考慮することにより、交差点到達までの残距離や残時間を高精度に予測でき、交差点の通過判定を高精度に行うことができる。また、信号見落とし防止装置2では、データベース32aに基づく予測ができない場合でも周囲の状況や車速制御装置の作動状況に基づく未来の車速の変化を考慮することにより、交差点到達までの残距離や残時間を高精度に予測でき、交差点の通過判定を高精度に行うことができる。その結果、運転者の運転行動や周囲の状況などに応じた細やかな警報判断ができ、警報が必要な場合の未警報や警報が不要な場合の誤警報を防止することができる。また、予測に必要な道路状況を取得できれば、道路状況から車速変化を予測することができるので、初めて通る交差点や周囲に他車両が存在しない状況でも車速変化を予測可能である。
さらに、信号見落とし防止装置2では、データベース32aに基づく予測や周囲の状況に基づく予測ができない場合でも現在車速から一定車速減算した車速を用いることにより、交差点通過時の安全性を高めることができる。これによって、ぎりぎりで交差点を通過できるような場合に交差点付近で少しでも車速を落とすと警報されるような場面においても、適切な警報判断が可能となる。また、黄信号時における強引な交差点進入を防止することができるとともに、交差点を通過できるかどうかの判断に迷うジレンマ状態などを回避できる。
ここで、図10を参照して、時々刻々とリアルタイムで変化する車速や現在位置を検出し、その車速や残距離(リアルタイム値)に基づいて交差点通過の可否判定を行う場合と上記した第1の実施の形態に係る信号見落とし防止装置1あるいは第2の実施の形態に係る信号機見落とし防止装置2における未来の車速の変化を予測し、車速や残距離(リアルタイム値)にその車速の変化(予測値)を考慮して交差点通過の可否判定を行う場合とによる警報出力のHMI[Human Machine Interface]について考える。なお、図10では、○印は交差点通過可能判定を示し、×印は交差点通過不能判定であることを示す。
リアルタイム値だけを用いた判定の場合、交差点通過可能判定のときには警報出力は行わず、交差点通過不能判定のときには「減速して下さい」などと警報出力する。
予測値も用いた判定の場合、交差点通過可能判定のときには警報出力は行わず、交差点通過不能判定のときには「減速が必要になりそうです」などと少し柔らかい表現で警報出力する。
リアルタイム値を用いた判定と予測値を用いた判定とを融合した場合、2つの判定結果に基づいて警報判断及び警報出力を行う。リアルタイム値判定で交差点通過可能判定かつ予測値判定で交差点通過不能判定のときには、予測値判定において車速の低下(減速)を予測しているので、「まもなく信号が赤に変わります」などと警報出力し、運転者に早めの停止を促す。逆に、リアルタイム値判定で交差点通過不能判定かつ予測値判定で交差点通過可能判定のときには、予測値判定において車速の上昇(加速)を予測しているので、「信号に注意して下さい」などと警報出力し、運転者に早めの通過を促す。
なお、このリアルタイムで変化する車速を検出する手段が特許請求の範囲に記載する車速検出手段に相当し、このリアルタイム値だけを用いて交差点通過の可否判定を行う手段が特許請求の範囲に記載する第2信号機状態予測手段に相当し、リアルタイム値を用いた判定と予測値を用いた判定とを融合して警報判断及び警報出力を行う手段が特許請求の範囲に記載する運転支援手段に相当する。
このように、リアルタイム値を用いた判定と予測値を用いた判定で交差点通過判定の判定結果が異なる場合(すなわち、一方の判定だけで車両の交差点進入時の信号機の状態として停止信号点灯状態を予測した場合)には、両方の判定で車両の交差点進入時の信号機の状態として停止信号点灯状態を予測した場合よりも警報レベル(停止支援の支援レベル)を下げる。これによって、誤った警報による煩わしさを回避しつつ、警報もれも防止することができ、より適切な警報出力を行うことができる。ちなみに、両方で停止信号点灯状態を予測した場合には、「信号が赤に替わるので、停止して下さい。」などと強い表現で警報出力する。
なお、リアルタイム値を用いた判定と予測値を用いた判定で交差点通過判定の判定結果が異なる場合に警報レベルを下げる以外にも、停止支援として情報提供、注意喚起、自動ブレーキなどのブレーキ制御を行う場合にはこれらの支援レベルを下げるようにしてもよいし、あるいは、警報出力から注意喚起や情報提供程度に変更してもよいし、ブレーキ制御から警報出力などに変更してもよい。
図7、図8及び図11〜図16を参照して、第3の実施の形態に係る信号見落とし防止装置3について説明する。図11は、第3の実施の形態に係る信号見落とし防止装置の構成図である。図12は、リアルタイムで検出した車速と残距離に基づく注意喚起判定の一例である。図13は、リアルタイムで検出した車速と残距離に基づく注意喚起判定の他の例である。図14は、第3の実施の形態に係る赤信号の点灯開始時点での予測した車速と残距離に基づく注意喚起判定の一例である。図15は、第3の実施の形態に係る赤信号の点灯開始時点での予測した車速と残距離に基づく注意喚起の領域判定マップである。図16は、第3の実施の形態に係る予測した車速と残距離に応じた注意喚起の内容(HMI)とタイミングの一覧表である。
信号見落とし防止装置3は、自車両が交差点を通過するときの信号機の状態を予測し、その予測結果に基づいて注意喚起を行う。特に、信号見落とし防止装置3では、自車両の周囲の状況や運転者固有の運転行動に応じて車速の変化を予測し、その車速の変化を考慮して赤信号の点灯開始時点での車速と残距離を予測し、その予測した車速と残距離に基づいて注意喚起の内容とタイミングを決定する。そのために、信号見落とし防止装置3は、光ビーコン受信機10、GPS受信機11、車速センサ12、注意喚起装置23及びECU33を備えており、ECU33内にデータベース33aが構成される。
第3の実施の形態では、ECU33における各処理が特許請求の範囲に記載する車速変化予測手段、信号機状態予測手段及び走行状態推定手段に相当し、データベース33aが特許請求の範囲に記載する記憶手段に相当し、ECU33における処理及び注意喚起装置23が特許請求の範囲に記載する運転支援手段に相当する。
図7及び図12〜図14を参照して、注意喚起を行うか否かの判定について説明しておく。図12〜図14において、横軸は現時点から交差点C(停止線)到達までの距離(残距離)であり、縦軸は自車両Vの車速である。
なお、第3の実施の形態では、警報ではなく、注意喚起を行うので、第1及び第2の実施の形態で用いた警報条件境界線WBを停止可能境界線SBと呼ぶ。また、通過可能境界線PBは、上記で説明したように車速が高いほど傾きが小さくなるとともに、時間が経過するほど(すなわち、自車両Vが交差点Cに近づくほど)傾きが大きくなる。さらに、第3の実施の形態では、ECU33で注意喚起境界線ABを用いる。
注意喚起境界線ABは、注意喚起が必要か否かの境界線である。注意喚起境界線ABの下側(右側)の領域は、通常、注意喚起が必要ない領域である。注意喚起境界線ABの上側(左側)の領域は、通常、注意喚起が必要な領域である。注意喚起境界線ABは、残距離と車速に応じた一定の直線であり、実際の走行実験などによって予め設定される。
図12には、光ビーコンBからダウンリンクした直後における自車両Vの現在位置X1(残距離L1)と車速v1がリアルタイム値として検出された場合を示している。この残距離L1と車速v1との関係は、注意喚起境界線ABより上側なので、通常、注意喚起が必要である。しかし、自車両Vが車速v1を維持したとすると、この残距離L1と車速v1との関係は、通過可能境界線PBL1より上側なので、交差点Cを通過可能である。この場合、注意喚起は不要と判定され、運転者に対して注意喚起されない。しかし、この後、図13に示すように、交差点Cに近づくのに従って自車両Vが減速したとする。
図13には、自車両Vが位置X1から減速しながら交差点Cに接近しているときに、自車両Vの現在位置X2(残距離L2)と車速v2(<v1)がリアルタイム値として検出された場合を示している。この残距離L2と車速v2との関係は、注意喚起境界線ABより上側なので、通常、注意喚起が必要である。さらに、時間の経過に伴って通過可能境界線PBL2の傾きが大きくなったため、この残距離L2と車速v2との関係は、通過可能境界線PBL2より下側となり、交差点Cを通過不能(自車両Vが交差点進入時に赤信号)となった。この場合、注意喚起は必要と判定されるが、注意喚起を行ったとしても無駄である。つまり、自車両Vが交差点Cに接近し過ぎているため、注意喚起後に運転者がブレーキ操作を行っても、自車両Vが交差点Cの停止線で停止することはできない。
したがって、このような状態に至る前のタイミングで注意喚起を行い、その注意喚起によって自車両Vが交差点Cの停止線で安全に停止できるようにする必要がある。そこで、第2の実施の形態に係る予測方法により未来の車速変化を予測し、その未来の車速変化を利用する。つまり、その未来の車速変化に基づいて赤信号が点灯を開始する時点での自車両Vの残距離と車速を予測するとともに通過可能境界線PBを予測し、その予測した自車両Vの残距離と車速との関係及び通過可能境界線PBに基づいて自車両Vが交差点Cを通過可能か否かを判定する。そして、交差点Cを通過不能と判定した場合、その予測した車速と残距離との関係に応じた注意喚起の内容及びタイミングを決定し、事前に注意喚起を行う。
図14には、光ビーコンBからダウンリンクした直後における自車両Vの現在位置X1(残距離L1)と車速v1がリアルタイム値として検出されるとともに、未来の車速変化に基づいて所定時間後の自車両Vの位置X2(残距離L2)と車速v2及び通過可能境界線PBL2が予測された場合を示している。図12に示す例と同じように、リアルタイム値である残距離L1と車速v1との関係では、注意喚起は不要と判定される。しかし、予測値である残距離L2と車速v2との関係では、予測された通過可能境界線PBL2より下側となり、交差点Cを通過不能(自車両Vが交差点進入時に赤信号)と判定される。この場合、予測値である残距離L2と車速v2との関係で注意喚起の内容(HMI)とタイミングが決定され、自車両Vが実際に位置X2に至る前に注意喚起を行う。この注意喚起により、運転者がブレーキ操作を行い、自車両Vが交差点Cの停止線で安全に停止することができる。
注意喚起装置23は、自車両が交差点進入時に赤信号と予測される場合にそのことを知らせる注意喚起を出力する装置であり、注意喚起として音声出力や画像表示などを行う。注意喚起装置23では、ECU33から注意喚起信号を受信すると、注意喚起信号に応じて音声を出力したり、画像を表示する。
ECU33は、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットであり、信号見落とし防止装置3を統括制御する。ECU33では、一定時間毎に、光ビーコン受信機10、GPS受信機11、車速センサ12から各情報を受信し、これら情報とデータベース33aに格納されている情報に基づいて各処理を実行し、注意喚起が必要と判断した場合には注意喚起装置23に注意喚起信号を送信する。なお、データベース33aは、第2の実施の形態に係るデータベース32aと同様のデータベースである。
ECU33における残距離演算、車速変化の予測、未来車速の予測、通過可能境界線PBによる交差点通過判定の各処理については、第2の実施の形態に係るECU32と同様の処理を行うので、説明を省略する。ちなみに、未来の通過可能境界線PBL2の傾きについては、未来車速の他に経過時間も考慮して設定される。
交差点を通過可能と判定した場合、ECU33では、注意喚起を行う必要はないと判断する。
交差点を通過不可能と判定した場合、ECU33では、注意喚起を行う必要があると判断する。ECU33では、光ビーコンBからダウンリングしてからの未来への経過時間毎に、予測した車速の変化に基づいて、未来の車速及び位置(残距離)を順次予測するとともに未来の通過可能境界線PBを順次設定する。つまり、ダウンリンク後に一定時間(極短時間)ずつ時間が経過した(自車両Vが交差点Cに徐々に近づく)と仮定した場合の未来の車速及び残距離と通過可能境界線PBを予測する。そして、ECU33では、未来への経過時間毎に未来の車速と残距離との位置と通過可能境界線PBとを比較し、その未来の車速と残距離との位置が通過可能境界線PB上に位置する時点(つまり、赤信号の点灯が開始する時点での自車両Vの車速と残距離)を探索する。未来の車速と残距離Lとの位置が通過可能境界線PB上に位置する時点を探索できると、ECU33では、その時点での未来の車速及び残距離を記憶する。そして、ECU33では、その赤信号の点灯が開始する時点での未来の車速及び残距離に基づいて、注意喚起の内容(HMI)とタイミングを決定する。
この決定方法としては、まず、ECU33では、図15に示す領域判定マップを参照し、未来の車速と残距離の関係に該当する領域を判定する。つまり、自車両Vが予測された車速の変化で走行すると、所定時間後の赤信号が点灯を開始する時点で自車両Vが入っている領域を判定する。この領域判定マップは、停止可能境界線SBと注意喚起境界線ABによって、車速と残距離との関係を4つの領域AA,BA,CA,DAに区分けしたマップである。領域AAは、停止可能境界線SBより下側(自車両Vが交差点Cの停止線で停止可能)かつ注意喚起境界線ABより上側(注意喚起が必要)の領域である。領域BAは、停止可能境界線SBより上側(自車両Vが交差点Cの停止線で停止不能)かつ注意喚起境界線ABより下側(注意喚起が不要)の領域である。領域CAは、停止可能境界線SBより上側(自車両Vが交差点Cの停止線で停止不能)かつ注意喚起境界線ABより上側(注意喚起が必要)の領域である。領域DAは、停止可能境界線SBより下側(自車両Vが交差点Cの停止線で停止可能)かつ注意喚起境界線ABより下側(注意喚起が不要)の領域である。
次に、ECU33では、図16に示す注意喚起の内容(HMI)とタイミングの一覧表を参照し、赤信号が点灯を開始する時点で入っていると予測される領域に対応する注意喚起の内容(HMI)とタイミングを決定する。領域AAに入ると予測される場合、この領域AAに極力入らないように、実際の車速vと残距離Lとの関係が注意喚起境界線ABを通過する時点を注意喚起のタイミングとし、「赤信号になります。ご注意ください。」という内容で注意喚起を行う。領域BAに入ると予測される場合、停止可能境界線SBを上回り停止不能とならないように、実際の車速vと残距離Lとの関係が停止可能境界線SBを通過する時点を注意喚起のタイミングとし、「赤信号になります。減速してください。」という内容で注意喚起を行う。領域CAに入ると予測される場合、停止可能境界線SBを上回り停止不能とならないように、光ビーコンBからダウンリングした直後を注意喚起のタイミングとし、「信号注意!」という内容で注意喚起を行う。領域DAに入ると予測される場合、余裕がある領域であるが情報提供程度に、黄信号が点灯を開始する時点を注意喚起のタイミングとし、「まもなく赤信号になります。」という内容で注意喚起を行う。
注意喚起の内容とタイミングを決定すると、ECU33では、決定したタイミングになったか否かを判定する。決定したタイミングになった場合、ECU33では、決定した内容に応じて注意喚起音声や注意喚起画像を生成し、注意喚起信号として注意喚起装置23に送信する。
図11及び図14〜図16を参照して、信号見落とし防止装置3の動作について説明する。特に、ECU33における処理について図17のフローチャートに沿って説明する。図17は、図11のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
信号見落とし防止装置3では、交差点を通過可能か否かの判定までの各動作(特に、ECU33におけるS50〜S59の各処理)については、第2の実施の形態に係る信号見落とし防止装置2(特に、ECU32におけるS30〜S39の各処理)と同様の動作を行うので、説明を省略する。
S59にて交差点を通過可能と判定した場合、ECU33では、この交差点Cについての処理を終了する。一方、S59にて交差点を通過不可能と判定した場合(交差点進入時に赤信号と予測した場合)、ECU33では、予測した未来の車速の変化に基づいて、赤信号が点灯開始する時点での自車両Vの車速と残距離を予測演算する(S60)。そして、ECU33では、この予測した車速と残距離に応じて注意喚起の内容及びタイミングを決定する(S61)。
ECU33では、一定時間毎に、決定した注意喚起のタイミングになったか否かを判定する(S62)。注意喚起のタイミングになったと判定した場合、ECU33では、決定した注意喚起の内容を出力するための注意喚起信号を注意喚起装置23に送信する(S62)。この注意喚起信号を受信すると、注意喚起装置23では、決定した注意喚起の内容で音声を出力したり、画像を表示したりする。この注意喚起よって、運転者は、交差点を赤信号で通過できないことを認識し、ブレーキ操作を行う。さらに、ECU33では、自車両Vの周囲の状況、車速制御装置の作動状況と時系列での車速及び残距離とを対応付けた情報をデータベース33aに記録し、この交差点Cに対する処理を終了する(S63)。
この信号見落とし防止装置3によれば、交差点進入時に赤信号と予測した場合には未来の車速の変化に基づいて予測した赤信号が点灯開始するときの車速と残距離に応じて注意喚起の内容とタイミングを設定することにより、事前に適切なタイミングで適切な内容の注意喚起を行うことができる。その結果、運転者は適切なタイミングでブレーキ操作を行うことができ、自車両を交差点の停止線で安全に停止させることができる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では信号見落とし防止装置に適用したが、他の運転支援も行う運転支援装置あるいは自動運転装置などに組み込まれる構成としてもよい。
また、本実施の形態では車両が交差点に赤信号で進入すると予測される場合に運転者に対して音声出力や画像表示によって警報出力を行う構成としたが、自動ブレーキなどの他の制御を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では光ビーコンからの情報を受信することによって信号サイクル情報、道路形状情報などを取得する構成としたが、他の方法によって取得する構成としてもよい。
また、本実施の形態ではGPSからの情報を受信することによって自車両の現在位置を取得する構成としたが、他の方法によって取得する構成としてもよい。
また、本実施の形態では警報出力を一度行うと処理を終了する構成としたが、警報出力後も判定を継続し、判定結果が変わった場合にはその判定結果に応じて再度出力する構成としてもよい。
また、本実施の形態では警報出力するか否かの判断として通過可能境界線での交差点を通過できるか否かの判定の後に警報条件境界線での交差点で安全に止まれるか否かの判定を行う構成としたが、警報出力するか否かの判断として通過可能境界線での判定だけを行う構成としてもよい。
また、第1の実施の形態では通常の警報判断の場合に現時点と過去時点との車速変化から予測した加減速度に基づいて判断する構成としたが、リアルタイムで検知した現在車速と残距離だけで判断するなど他の判断方法でもよい。
また、第1の実施の形態では交差点手前で一時的に加速する運転者を想定した構成としたが、運転者によっては、「青信号で通過したい」という思いが強く、交差点を通過するまで加速する運転者や通過区間の終了までに青信号から黄信号に変化するかどうかによって行動が変わる(黄信号にならなければ通常どおりであるが、黄信号になれば通過できるように加速するあるいは減速する)運転者などもいると想定できる。このような場合も、その運転者のタイプに合わせて予測方法を切り替えることにより、より効果的なシステムを実現できる。
また、第2の実施の形態ではデータベースをECU内に備える構成としたが、ECU外に備える構成としてもよいし、あるいは、基地局などにデータベースがあり、通信によって情報を送受信する構成としてもよい。
また、第2の実施の形態では光ビーコンからのダウンリンク情報によって自車両の周囲の状況を取得する構成としたが、他の方法によって周囲の状況を取得してもよく、例えば、勾配センサによって道路の勾配情報を取得したり、他車両検知センサによって他車両の位置や車速を検知したり、車車間通信によって他車両の情報を取得する。
また、第3の実施の形態では第2の実施の形態の予測方法を適用したが、第1の実施の形態の予測方法などの他の予測方法を適用してもよい。
また、第3の実施の形態では予測した残距離(車両位置)と車速に応じて注意喚起の内容とタイミングを決定する構成としたが、注意喚起以外の停止支援を行う場合には予測した残距離と車速などの走行状態に応じて警報の内容、自動ブレーキやアシストブレーキなどの車両制御の内容などを決定する構成としてもよいし、あるいは、車両制御(ブレーキ制御)、警報出力、注意喚起、情報提供などの停止支援を段階的に変えてもよい。
また、第3の実施の形態では車速と残距離との関係に応じて4つの領域についての注意喚起の内容及びタイミングの一例を示したが、この内容やタイミングについては任意に設定可能である。また、4つの領域について全て注意喚起を行ったが、情報提供程度のものについては行わなくてもよい。また、領域の区分けについても、他の区分け方でもよい。
また、第3の実施の形態では注意喚起の内容及びタイミングを変更する構成としたが、注意喚起の内容だけを変更するようにしてもよい。