以下、図面を参照して、本発明に係る将来挙動予測装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明に係る将来挙動予測装置を、車車間通信が可能な車両に搭載される運転支援装置に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置は、自車両が直前車両のみならず周辺の交通流に合わせて適正に走行できるように車両制御や注意喚起などの運転支援を行う。本実施の形態に係る運転支援装置では、自車両及び直前車両の走行に対して影響を与える前方の車両(特に、自車両と車車間通信可能な車両(以下、「通信車両」と記載))の将来挙動(特に、将来の速度変動)を予測し、その予測した通信車両の将来挙動が及ぼす影響を考慮して運転支援を行う。
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置における通信車両の将来挙動の予測方法の概要について説明しておく。図1は、本実施の形態に係る運転支援装置における通信車両の将来挙動の予測方法の概要を示す図である。
各車両は、一般に、その周辺の交通流に合わせるように走行している。したがって、自車両MVや同一車線の直前車両BVも、周辺の交通流の影響を受けて走行しており、特に、前方の同一車線走行中の車両の影響を受ける。そこで、リアルタイムで前方の同一車線走行中の車両の将来挙動(特に、将来速度変動)を高精度に予測できると、自車両MVや直前車両BVの将来挙動もより高精度に予測できる。
本実施の形態に係る運転支援装置では、前方の車両としては車車間通信によって情報を取得することができる同一車線走行中の通信車両CV1とし、車車間通信によって通信車両CV1の将来の速度変動を予測するための各種情報を取得する。通信車両CV1から取得する情報としては、例えば、現在から所定時間前までの速度情報や加減速度情報、現在のドライバ操作情報や加減速性能情報がある。その通信車両CV1の将来の速度変動には、その通信車両の前方の周辺環境が影響する。そこで、光ビーコンB、地図データベースDB、通信車両CV1よりも前方の通信車両CV2から、通信車両CV1の速度変動に影響を与える各種周辺環境情報を取得する。この周辺環境情報としては、例えば、交差点、信号機、一時停止、踏切の情報、カーブR、勾配、高速道路、合流/分流、前方通信車両CV2の挙動がある。
本実施の形態に係る運転支援装置では、このような通信車両CV1の情報やその前方の周辺環境情報から通信車両CV1の将来挙動を予測し、その通信車両CV1の将来挙動が自車両MVや直前車両BVに与える影響を予測する。本実施の形態では、通信車両CV1の将来挙動の予測方法として、3つの予測方法について説明する。なお、直前車両BVが通信車両CV1の場合もある。
図2〜図8を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置1について詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図3は、本実施の形態に係る第1の将来挙動予測方法を適用した場合の予測の一例である。図4は、本実施の形態に係る第1の将来挙動予測方法(情報データベース利用型)を適用した場合の予測の一例である。図5は、本実施の形態に係る第2の将来挙動予測方法を適用する場合の車両配置の一例である。図6は、本実施の形態に係る第2の将来挙動予測方法を適用した場合の予測の一例である。図7は、本実施の形態に係る第3の将来挙動予測方法を適用する場合の通信車両の前方の周辺環境の一例である。図8は、本実施の形態に係る第3の将来挙動予測方法を適用した場合の予測の一例である。
運転支援装置1は、周辺監視センサ10、車両センサ11、光ビーコンアンテナ12、光ビーコン受信装置13、車車間通信アンテナ14、車車間通信処理装置15、GPS[Global Positioning System]アンテナ16、地図データベース17、アクチュエータ20、HMI[Human Machine Interface]装置21及びECU30[Electronic Control Unit]を備えている。なお、本実施の形態では、車車間通信アンテナ14及び車車間通信処理装置15が特許請求の範囲に記載する車車間通信手段に相当し、ECU30における処理が特許請求の範囲に記載する速度変動可能範囲推定手段及び将来挙動予測手段に相当する。
周辺監視センサ10は、自車両の周辺を監視するセンサであり、レーダ、フロントカメラ、バックカメラなどがある。例えば、レーダのレーダ情報やフロントカメラの画像情報によって、直前車両の検出や直前車両の各種情報(相対距離、相対速度など)を取得できる。また、バックカメラの画像情報によって、自車両走行中の車線情報を取得でき、車線情報から自車両の位置を特定できる。各周辺監視センサ10では、自車両周辺を監視し、その監視した情報をECU30に送信する。
車両センサ11は、自車両の各種状態を検出するセンサであり、車速センサ、ヨーレートセンサ、操舵センサなどがある。各車両センサ11では、自車両の状態を検出し、その検出した状態をECU30に送信する。
光ビーコンアンテナ12と光ビーコン受信装置13は、路上の光ビーコンから情報を取得するためのものである。光ビーコンアンテナ12では、自車両がダウンリンクエリア内に入ると、光ビーコンからの信号を受信する。光ビーコン受信装置13では、光ビーコンアンテナ12で受信した信号を復調してインフラ情報を取り出し、そのインフラ情報をECU30に送信する。インフラ情報には、VICS[Vehicle Information Communication System]情報などの交通情報の他に、交差点情報、信号機情報、標識情報、踏切情報、道路規制情報、交通事故情報などの情報も含まれるものとする。
車車間通信アンテナ14と車車間通信処理装置15は、自車両周辺の車車間通信可能な他車両と通信するためのものである。車車間通信アンテナ14により、自車両から所定距離以内に存在する他車両に対して信号を送信するとともに、所定距離以内に存在する他車両からの信号を受信する。車車間通信処理装置15では、他車両から信号を受信した場合、車車間通信アンテナ14で受信した信号を復調して他車両からの情報を取り出してECU30に送信する。また、車車間通信処理装置15では、他車両に信号を送信する場合、ECU30からの自車両の情報を変調し、車車間通信アンテナ14からその変調した信号を送信する。車車間通信で送受信する情報としては、現在位置、進行方向、走行車線、速度、加速度、ドライバのアクセル操作情報、ブレーキ操作情報、加減速性能情報(シフトポジション、エンジン回転数、ブレーキ応答性、アクセル応答性、エンジン出力トルク、エンジン性能など)、経路案内情報などがある。
GPSアンテナ16は、GPS衛星からの信号を受信するためのアンテナである。各GPS衛星からの情報によって、自車両の現在位置(緯度、経度)などを算出することができる。GPSアンテナ16では、GPS衛星からの信号を受信する毎に、その受信した信号をECU30に送信する。
地図データベース17は、地図に関する各種情報を格納したデータベースである。格納される情報としては、交差点情報、標識情報、踏切情報、道路種別情報(高速道路、国道、県道、市町村道など)、道路構造情報(カーブR、道路幅、道路勾配、道路形状など)などがある。
アクチュエータ20は、運転支援での車両制御を行う際に用いるアクチュエータであり、ブレーキアクチュエータ、スロットルアクチュエータなどがある。ブレーキアクチュエータは、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータでは、ECU30からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。スロットルアクチュエータは、エンジンのスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータでは、ECU30からのエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
HMI装置21は、運転支援での運転者に対する注意喚起や情報提供を行う際に用いる装置であり、ディスプレイ、スピーカなどがある。ディスプレイは、各種システムで共用される車載ディスプレイである。ディスプレイでは、ECU30からの表示信号を受信すると、その表示信号に応じて画像を表示する。スピーカは、各種システムで共用される車載スピーカである。スピーカでは、ECU30から音声信号を受信すると、その音声信号に応じて音声を出力する。
ECU30は、CPU[CentralProcessing Unit]、各種メモリなどからなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。ECU30は、周辺監視センサ10、車両センサ11、光ビーコン受信装置13、車車間通信処理装置15、GPSアンテナ16からの各情報を受信し、各情報をメモリに格納する。この際、情報毎に、現在から過去の所定期間分のデータを保存しておく。そして、ECU30では、受信した各情報を用いて各種処理を行い、必要に応じてアクチュエータ20やHMI装置21に制御信号を送信する。また、ECU30では、車車間通信で周辺車両に情報を提供するために、自車両の各種情報を車車間通信処理装置15に送信する。
ECU30では、各周辺監視センサ10からの情報に基づいて、自車両前方の同一車線走行中の直前車両を検出し、直前車両を検出できた場合にはその直前車両の情報(相対距離、相対速度など)を算出する。また、ECU30では、周辺監視センサ10からの情報に基づいて、自車両の走行中の車線を検出し、その車線情報を算出する。また、ECU30では、車両センサ11からの情報に基づいて、自車両の走行状態を取得する。また、ECU30では、光ビーコン受信装置13からのインフラ情報から、通信車両の前方の周辺環境情報を抽出する。また、ECU30では、GPSアンテナ16からの各GPS衛星からの信号に基づいて自車両の現在位置(緯度、経度)などを算出する。
ECU30では、車車間通信処理装置15からの自車両周辺の車車間通信可能な他車両の情報に基づいて、自車両と同一車線で前方を走行しかつ自車両から最も近い車両(通信車両)を検出し、その検出した通信車両の将来挙動を予測するために必要な各種情報を抽出する。さらに、必要に応じて、ECU30では、車車間通信処理装置15からの自車両の周辺の車車間通信可能な他車両の情報に基づいて、自車両と同一車線で前方を走行しかつ検出した通信車両の前方で通信車両から最も近い車両(前方通信車両)を検出し、その検出した前方通信車両の速度情報などを抽出する。また、ECU30では、地図データベース17から、検出した通信車両の前方の周辺環境情報を抽出する。
なお、直前車両の情報だけでなく、自車両と通信車両との間の全ての車両の情報を取得するようにしてもよい。この取得方法としては、自車両と通信車両との位置関係(相対距離など)とインフラ情報から得られる渋滞度合いなどから自車両と通信車両との間に存在する車両の台数を予測し、各車間距離を算出する。また、直前車両の1台前の車両程度であれば、周辺監視センサ10による情報を用いて検出可能である。
ECU30では、自車両前方の通信車両の将来挙動(将来速度、将来速度変動など)を予測する。この予測方法には、3つの方法があり、各方法を単独で用いてもよいし、あるいは、各方法を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いたほうが、予測の精度が向上し、予測した情報の信頼性(信頼度)が高くなる。また、予測した前提となる状況(情報)に応じて予測精度(信頼度)にバラツキがあり、状況によって予測精度が高い場合と予測精度が低い場合が混在するので、状況や用途に応じて組み合わせを変えてもよい。
第1の将来挙動予測方法について説明する。第1の将来挙動予測方法は、通信車両の速度変動から予測する方法であり、そのときの速度変動を用いる方法と過去の速度変動履歴を格納した情報データベースを利用する方法がある。
まず、そのときの速度変動を用いる方法について説明する。ECU30では、自車両前方の通信車両から車車間通信で取得した情報を用いて、現在から過去x秒間の速度履歴に基づいてその通信車両の将来y秒間の速度変動を予測する。x秒は、将来の速度変動を十分に予測可能な時間であり、実験などによって予め設定される。y秒は、通信車両の速度変動が自車両に影響を及ぼす十分な時間であり、実験などによって予め設定される。x,yの値については、固定値でもよいし、あるいは、速度などに応じた可変値でもよい。この予測では、加減速度も利用してもよい。この予測方法としては、どのような方法でもよい。
さらに、ECU30では、自車両前方の通信車両から車車間通信で取得した情報を用いて、現在の速度変化に関するドライバ操作状態(アクセルやブレーキの踏み込み量、踏み込み速度など)と加減速性能情報(シフトポジション、エンジン回転数、ブレーキ操作に対する応答性、アクセル操作に対する応答性、エンジン出力トルク、エンジン性能、ブレーキ性能など)に基づいて現在からの車両挙動として実際に表れる可能性のある速度範囲を算出し、その速度範囲から通信車両の将来y秒間の速度変動を予測する。この予測方法としては、どのような方法でもよい。例えば、ドライバがブレーキペダルを現在踏み込んでいる場合、アクセルペダルへの踏み変え時間やアクセル操作に対する応答性を考慮すると加速するまでには所定時間要するので、少なくとも現在からその所定時間は加速しないことを考慮して速度範囲を算出する。
なお、速度変動を用いる方法として、上記の2つを示したが、各方法を単独で行ってもよい、あるいは、予測精度を向上させるために組み合わせて行ってよい。また、経路案内情報などから右左折することなどの通信車両の将来の運転行動が予め判っている場合、その情報を用いて将来の速度変動を予測してもよい。
図3には、通信車両が減速している場合の現在までの速度変化及び予測された将来の速度変動の一例を示している。図3(a)に示すように、現在PTまでの所定期間ΔPTの速度変化PV1から、将来の所定期間ΔFTの速度変化としてそのまま速度が低下してゆく破線FV1と予測している。さらに、図3(b)に示すように、現在PTまでの所定期間ΔPTの減速度変化PA1から、将来の所定期間ΔFTの減速度変化として現在の減速度を維持してゆく破線FA1と予測している。また、図3(a)に示すように、将来の所定期間ΔFTで変化する可能性のある速度範囲を斜線部分FVE1と予測している。さらに、図3(b)に示すように、将来の所定期間ΔFTで変化する可能性のある減速度範囲を破線FAE1と予測している。
情報データベースを利用する方法について説明する。この方法の前提として、車車間通信で情報を送信する各通信車両側で、情報データベースを備えており、走行する毎に速度変動について学習し、情報データベースにその学習した結果を格納している。この情報データベースには、走行毎の加速/巡航/減速時の速度パターン(速度履歴)、加減速度の平均値やバラツキ値(分散値など)などの数値データ、それらのデータから推定されるドライバの操作傾向(せっかちな運転、安全運転、ゆったりとした運転、一般的な運転など)が格納されている。各通信車両では、情報データベースに格納されているこれらの情報も車車間通信によって送信している。なお、このような情報データベースについては、カーナビゲーションなどで利用される情報センタなどで持ってもよいし、あるいは、交差点などに設置されたインフラ装置で持ってもよい。また、自車両で、通信車両から生データを取得して学習を行ってもよい。本実施の形態では、この情報データベースが特許請求の範囲に記載する蓄積手段に相当する。
ECU30では、自車両前方の通信車両から車車間通信で取得した情報を用いて、通信車両の情報データベースに格納された情報に基づいてその通信車両の将来y秒間の速度変動を予測する。この予測方法としては、どのような方法でもよい。例えば、過去の加速/巡航/減速時の速度パターンを用いて、現在の速度からどのように変動するかを統計的/確率的に将来y秒間の速度変動を予測する。また、過去の加速/巡航/減速時の加減速度の平均値やバラツキ値を用いて、将来y秒間の速度変動を予測する。また、ドライバの運転傾向に基づいて、将来y秒間の速度変動を予測する。なお、予測精度を向上させるために、上記したそのときの速度変動を用いる方法にこの情報データベースを利用する方法を組み合わせて行ってよい。
図4(a)には、過去に通信車両が減速したときの多数の速度パターンPVP,PVP・・・から、将来の所定期間ΔFTの速度変化としてそのまま速度が低下してゆく破線FV2と予測している。この予測した速度変化は、ある確率を持った幅で表現され、時間の経過に伴ったその幅が広がってゆく。また、図4(a)には、過去の減速時の減速度の平均値やバラツキ値から、将来の所定期間ΔFTで変化する可能性のある速度範囲を斜線部分FVE2と予測している。また、図4(b)には、ドライバの運転傾向から、ゆっくりとした運転をするドライバの場合には将来の所定期間ΔFTの速度変化として緩やかに速度が低下してゆく破線FV3と予測し、一般的な運転をするドライバの場合には将来の所定期間ΔFTの速度変化としてそのまま速度が低下してゆく破線FV4と予測し、せっかちな運転をするドライバの場合には将来の所定期間ΔFTの速度変化として急速に速度が低下してゆく破線FV5と予測している。
第2の将来挙動予測方法について説明する。第2の将来挙動予測方法は、通信車両前方の前方通信車両の情報(速度変動など)から予測する方法である。この方法の前提としては、図5に示すように、自車両MVでは、予測対象の通信車両CV1の前方を走行している最も近い前方通信車両CV2を検出しており、その検出した前方通信車両CV2から速度情報(速度パターンなど)を取得している。
ECU30では、自車両前方の通信車両の前方を走行中の前方通信車両から車車間通信で取得した情報を用いて、前方通信車両CV2の速度パターン(例えば、過去x秒間の速度履歴)に基づいて通信車両の将来y秒間の速度変動を予測する。この予測方法としては、どのような方法でもよい。この予測では、第1の将来挙動予測方法で用いた通信車両の過去x秒間の速度履歴などの情報も用いて予測を行ってもよい。
図6を用いて具体的な予測方法の一例を説明する。図6(a)は、図5に示す前方通信車両CV2が減速行動を行っているときにその後方の通信車両CV1も減速行動を行っている場合であり、その車両の位置関係や交通量などの影響も考慮して通信車両CV1に及ぼす影響を予測でき、このときの前方通信車両CV2の速度パターンPV6から通信車両CV1の将来の所定期間ΔFTの速度変化として前方通信車両CV2と同様に速度が低下してゆく破線FV6と予測している。この場合、自車両MVは一点鎖線MV6で示すように現在PTまで減速していなかったが、この通信車両CV1に対して予測された速度変化FV6のように減速すると予測できる。また、図6(b)は、前方通信車両CV2が一時減速し、加速(あるいは等速)行動に移ったときにその後方の通信車両CV1が減速行動を行っている場合であり、このときの前方通信車両CV2の速度パターンPV7から通信車両CV1の将来の所定期間ΔFTの速度変化として前方通信車両CV2と同様に減速の後に速度が上昇してゆく破線FV7と予測している。この場合、自車両MVは一点鎖線MV7で示すように現在PTまで緩やかに減速していたが、この通信車両CV1に対して予測された速度変化FV7のように一時減速後に加速すると予測できる。
第3の将来挙動予測方法について説明する。第3の将来挙動予測方法は、通信車両の速度変動に加えてその前方の周辺環境から予測する方法である。この方法の前提としては、光ビーコンからのインフラ情報、地図データベース17からの道路情報などから通信車両の前方の周辺環境情報を取得している。この周辺環境情報としては、通信車両の速度変動に影響を及ぼすようなものであり、例えば、交差点、信号、踏切、カーブ、勾配、合流、分流、道路種別がある。
ECU30では、光ビーコンからのインフラ情報や地図データベース17からの道路情報を用いて、通信車両の前方の周辺環境情報に基づいて通信車両の将来y秒間の速度変動を予測する。この予測方法としては、どのような方法でもよい。この予測では、第1の将来挙動予測方法で用いた通信車両の過去x秒間の速度履歴などの情報も用いて予測を行ってもよい。
図7及び図8を用いて具体的な予測方法の一例を説明する。図7(a)に示す例では、通信車両CV1の前方に信号機Sがあり、この信号機Sが赤信号あるいは黄信号であった。この場合、通信車両CV1は、停止する可能性が高い(あるいは、停止しなければならない)。この他にも、標識の一時停止、踏切、対人の料金所などが同様の周辺環境である。このような周辺環境が通信車両CV1の前方にあり、通信車両CV1が減速行動を行っている場合、図8(a)で示すように、通信車両CV1の速度パターンPV8と周辺環境(停止予測位置)の位置関係から、通信車両CV1の将来の所定期間ΔFTの速度変化として減速して停止予測位置で停止する破線FV8と予測している。この場合、自車両MVは一点鎖線MV8で示すように現在PTまで減速していなかったが、この通信車両CV1に対して予測された速度変化FV8のように減速して停止すると予測できる。
図7(b)に示す例では通信車両CV1の前方にカーブCがあり、図7(c)に示す例では通信車両CV1が上り勾配Gを走行中である。この場合、通信車両CV1は、減速する可能性が高い。この他にも、合流、ETCの料金所などが同様の周辺環境である。このような周辺環境が通信車両CV1の前方にあり、通信車両CV1が減速行動を行っている場合、図8(b)で示すように、通信車両CV1の速度パターンPV9と周辺環境の位置関係から、通信車両CV1の将来の所定期間ΔFTの速度変化としてある程度の速度まで減速してゆく破線FV9と予測している。この際、通信車両の加減速性能(エンジン出力、アクセル開度など)やドライバ特性なども考慮するとよい。特に、上り勾配の場合、リアルタイムでアクセル開度を取得し、エンジンの応答遅れやエンジン性能を考慮するとよい。この場合、自車両MVは一点鎖線MV9で示すように現在PTまで減速していなかったが、この通信車両CV1に対して予測された速度変化FV9のように減速すると予測できる。
なお、この第3の将来挙動予測方法を第1の将来挙動予測方法で説明した情報データベースを利用する方法と組み合わせた方法としてもよい。例えば、通信車両の過去の速度パターンやドライバの運転行動などを周辺環境情報と紐付けした形でデータを構成し、このようなデータを情報データベースに格納しておいて、周辺環境情報に応じて情報データベースから過去の速度パターンやドライバの運転行動などを抽出する。
なお、上記の各予測方法で通信車両の将来の速度変動を予測する際に、予測に用いた各情報や予測方法などから、予測の信頼性(信頼度)も求めておくようにしておく。この予測の信頼性に応じて、自車両や直前車両に与える影響度合いも変わってくる。例えば、予測の信頼性が高いほど、予測した通信車両の将来挙動が自車両や直前車両に与える影響度合いを高くする。
ECU30では、通信車両の将来挙動(将来の速度変動)を予測すると、その将来の速度変動の範囲や予測の信頼性から交通流としてその通信車両の将来の速度変動が自車両や直前車両の将来の走行に影響を及ぼすかを予測する(影響を及ぼす可能性があるか否かを判断する)。
ECU30では、自車両の走行状態及び直前車両の情報に基づいて、通信車両の将来の速度変動が自車両や直前車両に及ぼす影響度合いに応じて自車両と直前車両の将来の速度変動を予測する。例えば、影響度合いが大きい場合、前方の通信車両が停止すると予測されているのであれば自車両や直前車両も同様に停止すると予測でき、前方の通信車両が減速あるいは加速すると予測されているのであれば自車両や直前車両も同様に減速あるいは加速すると予測できる。そして、ECU30では、その予測した自車両と直前車両の将来の速度変動に基づいて、前方の交通流に合わせるためにや自車両と直前車両との間が適正な車間となるように車両制御や注意喚起などの運転支援制御を行ったり、あるいは、自車両の将来の運転行動の情報提供制御を行う。
例えば、自車両に対してアシストブレーキが必要と判断した場合や自動運転中で減速が必要と判断した場合、目標ブレーキ油圧を算出し、その目標ブレーキ油圧を示すブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータに送信する。また、前方の赤信号で停止すると判断した場合、自車両も前方の赤信号で停止するために減速が必要であることを通知するための音声や画像を生成し、音声信号をスピーカに送信したり、表示信号をディスプレイに送信する。また、高速道路でのザグ渋滞などの交通の流れを乱すような要因を判断した場合、自車両もそれに応じた運転行動を事前に行うために、そのような交通の流れを乱すような要因があることを知らせることを通知するための音声や画像を生成し、音声信号をスピーカに送信したり、表示信号をディスプレイに送信する。
図2を参照して、運転支援装置1の動作について説明する。特に、ECU30における処理については図9のフローチャートに沿って説明する。図9は、本実施の形態に係る運転支援装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
各周辺監視センサ10では、一定時間毎に、自車両周辺を監視し、その監視した情報をECU30に送信する。各車両センサ11では、一定時間毎に、自車両の状態を検出し、その検出した情報をECU30に送信する。光ビーコンアンテナ12では、自車両がダウンリンクエリアに入ると、光ビーコンからの信号を受信する。光ビーコン受信装置13では、その受信した信号からインフラ情報を取り出し、そのインフラ情報をECU30に送信する。車車間通信アンテナ14では、通信範囲内の他車両からの信号が送信される毎に、その送信された信号を受信する。車車間通信処理装置15では、車車間通信アンテナ14で信号を受信すると、その信号から他車両の各種情報を取り出し、その情報をECU30に送信する。GPSアンテナ16では、受信可能なGPS衛星からの信号を受信し、その受信した信号をECU30に送信する。
一定時間毎に、ECU30では、車車間通信処理装置15からの情報を用いて、自車両前方の通信車両の情報を取得するとともに、必要に応じて、その通信車両の更に前方の前方通信車両の情報を取得する(S1)。また、ECU30では、光ビーコン受信装置13からのインフラ情報、地図データベース17に格納されている各種情報を用いて、通信車両の前方の周辺環境情報を取得する(S2)。また、ECU30では、周辺監視センサ10からの情報などを用いて、自車両と通信車両との間の車両(直前車両など)の情報を取得する(S3)。また、ECU30では、車両センサ11からの情報、GPSアンテナ16で受信した信号などを用いて、自車両の走行状態を取得する。
ECU30では、通信車両の情報、その通信車両の前方の周辺環境情報、前方通信車両の情報に基づいて、通信車両の将来挙動(将来の速度変動)を予測する(S4)。そして、ECU30では、その予測した通信車両の将来挙動が自車両や直前車両に及ぼす影響を予測する(S5)。さらに、ECU30では、自車両の走行状態や直前車両の情報に基づいて、通信車両の将来挙動が自車両や直前車両に及ぼす影響に応じて運転支援制御を実施する(S6)。この際、ECU30では、自車両に対する車両制御が必要と判断した場合、アクチュエータ20に制御信号を送信する。アクチュエータ20では、この制御信号を受信すると、制御信号に応じて駆動する。ECU30では、運転者に対して情報提供や注意喚起が必要と判断した場合、HMI装置21に表示信号や音声信号を送信する。HMI装置21では、この各信号を受信すると、各信号に応じて出力する。
この運転支援装置1によれば、自車両前方の通信車両の将来挙動を予測し、この通信車両の将来挙動が自車両などに及ぼす影響に応じて運転支援を行うことにより、直前車両のみならず周辺の交通流に合わせた運転支援を行うことができ、より信頼性の高い運転支援を行うことができる。
特に、運転支援装置1によれば、通信車両の速度履歴に基づいて将来挙動を予測することにより、通信車両の将来挙動を高精度に予測でき、信頼性の高い通信車両の将来挙動を得ることができる。さらに、運転支援装置1によれば、通信車両のドライバ操作情報や加減速性能情報から将来の速度変動可能範囲を推定して、その速度変動可能範囲を加味して将来挙動を予測することにより、通信車両の将来挙動をより高精度に予測でき、より信頼性の高い通信車両の将来挙動を得ることができる。また、運転支援装置1によれば、情報データベースを利用して通信車両の過去の情報を考慮して将来挙動を予測することにより、通信車両の将来挙動をより高精度に予測でき。また、運転支援装置1によれば、通信車両の前方の通信車両の速度パターンを加味して将来挙動を予測することにより、通信車両の将来挙動をより高精度に予測できる。また、運転支援装置1によれば、通信車両の前方の周辺環境情報を加味して将来挙動を予測することにより、通信車両の将来挙動をより高精度に予測でき。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では自車両に対して車両制御や注意喚起などを行う運転支援装置に適用したが、通信車両の将来挙動を予測するだけの装置、自動運転を行う制御装置などの他の装置に適用してもよい。
また、本実施の形態では自車両前方の通信車両の将来挙動を予測する構成としたが、自車両周辺の他の方向(側方や後方など)の通信車両の将来挙動を予測してもよい。このように他の方向の通信車両の将来挙動も予測することにより、自車両周辺の交通の流れをより高精度に予測できる。