以下、図面を参照して、本発明に係る走行支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明に係る走行支援装置を、車車間通信及び路車間通信が可能な車両に搭載されるACC[Adaptive Cruise Control]システムに適用する。本実施の形態に係る車両は、車車間通信で自車両周辺の他車両の情報を取得するとともに、路車間通信でインフラ装置(例えば、光ビーコン)からの情報を取得する。本実施の形態に係るACCシステムでは、レーダで自車両の前方の先行車両を検知し、先行車両を検知できた場合には先行車両との車間時間(車間距離)が目標車間時間(目標車間距離)になるように先行車両追従制御を行い、先行車両を検知できない場合には自車速が目標速度になるようにクルーズ制御(ノーマルクルーズ制御、交通流クルーズ制御)を行う。本実施の形態には、交通流クルーズ制御時に目標速度を算出する際の重み付けの方法が異なる3つの形態がある。
図1〜図4を参照して、第1の実施の形態に係るACCシステム1について説明する。図1は、本実施の形態に係るACCシステムの構成図である。図2は、自車両が渋滞末尾に突入する走行シーンの一例である。図3は、自車両周辺が流れている走行シーンの一例である。図4は、対象車両に対する重み付けの説明図である。
ACCシステム1は、通常、運転者によって設定された目標速度に基づいてクルーズ制御を行う。特に、ACCシステム1では、自車両周辺の他車両から情報を取得できる場合、その他車両の情報から得られる自車両周辺の交通流(実勢速度)に適応した目標速度を算出し、そのシステム側で設定した目標速度に基づいてクルーズ制御する。
ACCシステム1について具体的に説明する前に、図2及び図3を参照して、自車両周辺の交通流に適応した目標速度について説明しておく。図2に示す例が自車両前方が渋滞している場合であり、図3に示す例が自車両周辺が流れている場合である。
図2に示す例では、自車両MVは、高速道路などで高い目標速度でクルーズ制御を行っているときに、前方で発生している渋滞の末尾に突入してゆく。この場合、渋滞中の前方の他車両OV10,OV11,・・・は、低い速度で走行している。また、自車両MVでは、通常、レーダの検知範囲RA内に前方の他車両OV10が入るまで、この高い目標速度でクルーズ制御を継続し、高い速度で走行することになる。そのため、レーダで前方の他車両OV10を検知したときには、自車両MVと前方の他車両OV10との相対速度は、非常に大きい。このような場合、自車両MVは、前方の交通流と速度が合っていないので、事前に前方の交通流との相対速度を小さくしてゆく必要がある。
図3に示す例では、自車両MVは、比較的低い目標速度でクルーズ制御を行っているときに、周辺(特に、前方)が流れている。この際、自車線の前方の他車両OV20,OV21,・・・は、自車両MVの目標速度よりも多少高い速度で走行している。この場合、自車両MVは、周辺の交通流と同じ流れ(実勢速度)に溶け込めていない。また、自車両MVの目標速度が低すぎると、自車両MVを先頭として後続車両OV23,OV24が詰まる場合もある。このような場合、自車両MVは、周辺の交通流と同じ流れ(実勢速度)に迅速に溶け込んでゆく必要がある。
そこで、レーダの検知範囲RAよりも広い通信範囲CAを持つ車車間通信によって、自車両MV周辺の他車両から速度などの情報を取得する。そして、この取得した他車両の速度を用いて、自車両MVの速度が周辺(特に、前方)の交通流の実勢速度に一致するように働く交通流適応加速度を求め、交通流適応加速度に応じてクルーズ制御の目標速度を変化させる。このように、車車間通信で他車両から情報を取得できる場合には、システム側で交通流に応じて目標速度を変化させ、この交通流に適した目標速度になるようにクルーズ制御を行う。
この交通流クルーズ制御では、現在の目標速度V
tgt_nowと交通流適応加速度a
envを用いて、式(1)によって次の目標速度V
tgt_nextを算出する。式(1)におけるΔtは、制御周期である。交通流適応加速度a
envは、自車両の速度をVとし、交通流適応加速度を求める対象の各車両の速度をV
1,V
2,・・・とすると、式(2)によって定義できる。式(2)におけるc
1,c
2,・・・は、ゲインである。
図2に示す例の場合、自車両MVが位置P10に到達するまでの車車間通信の通信範囲CA(特に、自車両の前方)内に他車両が存在しない区間NCでは、運転者によって設定された一定の目標速度Vtgtに基づいてノーマルクルーズ制御を行う。自車両MVが位置P10から位置P12までの車車間通信の通信範囲CA内に他車両が存在する区間TCでは、システム側で設定した目標速度Vtgtに基づいて交通流クルーズ制御を行う。特に、自車両MVが位置P10を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV13からの情報を受信開始し、他車両OV13の速度に基づいて交通流適応加速度aenv10を求め、この交通流適応加速度aenv10に応じて目標速度Vtgtを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV13をダンパC10で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV13の速度との相対速度に応じてダンパC10によって減速側に引っ張られる制御となる。さらに、自車両MVが位置P11を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV11からの情報も受信開始し、他車両OV13の速度と他車両OV11の速度に基づいて交通流適応加速度aenv11を求め、この交通流適応加速度aenv11に応じて目標速度Vtgtを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV13をダンパC10で接続した制御モデルと自車両MVと他車両OV11をダンパC11で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV13の速度との相対速度に応じてダンパC10によって減速側に引っ張られかつ自車両MVの速度と他車両OV11の速度との相対速度に応じてダンパC11によって減速側に引っ張られる制御となる。そして、自車両MVが位置P12以降でのレーダの検知範囲RA内に他車両OV10が存在する区間FCでは、目標車間時間に基づいて先行車両追従制御を行う。なお、ダンパC10,C11の減衰係数が、上記の式(2)のゲインに相当する。
図3に示す例の場合も、図2の例と同様に、区間NCではノーマルクルーズ制御を行い、区間TCでは交通流クルーズ制御を行い、区間FCでは先行車両追従制御を行う。特に、区間TCでは、自車両MVが位置P20を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV21からの情報を受信開始し、他車両OV21の速度に基づいて交通流適応加速度aenv20を求め、この交通流適応加速度aenv20に応じて目標速度Vtgtを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV21をダンパC20で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV21の速度との相対速度に応じてダンパC20によって加速側に引っ張られる制御となる。さらに、自車両MVが位置P21を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV22からの情報も受信開始し、他車両OV21の速度と他車両OV22の速度に基づいて交通流適応加速度aenv21を求め、この交通流適応加速度aenv21に応じて目標速度Vtgtを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV21をダンパC20で接続した制御モデルと自車両MVと他車両OV22をダンパC21で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV21の速度との相対速度に応じてダンパC20によって加速側に引っ張られかつ自車両MVの速度と他車両OV22の速度との相対速度に応じてダンパC21によって加速側に引っ張られる制御となる。なお、ダンパC20,C21の減衰係数が、上記の式(2)のゲインに相当する。
特に、実際の交通の流れでは、速度の低い車両ほど後続車両群の流れに影響を与える。例えば、前方の交通流の実勢速度を車車間通信で情報を取得できる車両の平均速度とし、自車両の速度が実勢速度になるように交通流適応加速度を求め、交通流クルーズ制御を行った場合を想定する。この場合、自車両は前方の交通流の実勢速度(平均速度)に一致するように加減速するが、前方の車群の中にその実勢速度よりも低い速度の車両が存在すると、その低速度の車両で後続車両が詰まるので、自車両も詰まる。その結果、自車両では、減速が必要となる。そこで、交通流適応加速度(ひいては、交通流クルーズ制御の目標速度)を求める場合には、車車間通信で情報を取得できる他車両の中で速度の低い車両ほど重視する必要がある。したがって、交通流適応加速度を求めるときの交通流の実勢速度は、車車間通信で情報を取得できる他車両の中で速度の低い車両ほど重視された速度となる。
図4に示す例の場合、自車両MVの前方の他車両OV30,・・・,OV36のうち、3台の他車両OV31,OV33,OV36が車車間通信可能な車両であり、速度を取得できる。例えば、他車両OV31の速度を100km/h、他車両OV33の速度を50km/h、他車両OV36の速度を70km/hとした場合、100km/hで走行している他車両OV31は、50km/hで走行して他車両OV33に追い付き、減速することになる。したがって、他車両OV31の後続の自車両MVも、他車両OV31,OV36よりも、他車両OV33の影響を最も受けて走行することになる。したがって、他車両OV33の速度を最も重視して、交通流適応加速度を求める必要がある。
上記の式(2)は、交通流適応加速度を求める対象の車両からなる車群の参照速度V
ref(交通流の実勢速度に相当)と自車両の速度Vを用いて式(3)に変形できる。式(3)におけるcは、ゲインであり、実験などによって予め決められた値である。この参照速度
refは、交通流適応加速度を求める対象の各車両の速度V
1,V
2,・・・,V
nを用いて、式(4)によって算出できる。式(4)におけるm
1,m
2,・・・,m
nは、各車両に対する重みであり、交通流適応加速度を求めるときに重視する車両ほど大きいな値が設定される。式(5)に示すように、重みm
1,m
2,・・・,m
nは、合計が1になるように、0以上1以下の値が割り振られる。
それでは、ACCシステム1の各部について具体的に説明する。ACCシステム1は、前方車間距離センサ10、無線アンテナ11、車速センサ12、加速度センサ13、クルーズレバー14、前方センサECU[Electronic Control Unit]20、無線制御ECU21、車速センサECU22、加速度センサECU23、エンジン制御ECU30(アクセルペダルセンサ15、スロットルアクチュエータ40)、ブレーキ制御ECU31(ブレーキペダルセンサ16、ブレーキアクチュエータ41)及び車両制御ECU51を備えている。前方センサECU20、無線制御ECU21、車速センサECU22、加速度センサECU23、クルーズレバー14と車両制御ECU51との間では通信・センサ系のCAN[Controller Area Network]60で通信を行っており、エンジン制御ECU30、ブレーキ制御ECU31と車両制御ECU51との間では制御系のCAN61で通信を行っている。
なお、第1の実施の形態では、無線アンテナ11及び無線制御ECU21が特許請求の範囲に記載する他車両速度取得手段に相当し、車両制御ECU51が特許請求の範囲に記載する目標速度算出手段に相当する。
前方車間距離センサ10は、ミリ波などを利用して前方の車両を検出するレーダセンサである。前方車間距離センサ10は、自車両の前端部の中央の所定の高さ位置(検出対象の車両を確実に検出可能な高さ位置)に取り付けられる。前方車間距離センサ10では、レーダビームを左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたレーダビームを受信する。そして、前方車間距離センサ10では、その受信できた各反射点(検出点)についてのレーダ情報(左右方向のスキャン角、送信時刻、受信時刻、受信強度など)を前方センサECU20に送信する。
前方センサECU20では、前方車間距離センサ10から送信されたレーダ情報に基づいて、前方車間距離センサ10の検出範囲内の自車線において自車両前方に車両が存在するか否かを判定する。車両(先行車両)が存在すると判定した場合、前方センサECU20では、レーダ情報を各種処理し、デジタル値で先行車両までの相対距離(車間距離)などを出力する。そして、前方センサECU20では、この先行車両の有無や先行車両が存在する場合には距離などの情報を前方車間距離信号として車両制御ECU51に送信する。
無線アンテナ11は、送受信兼用の無線アンテナである。また、無線アンテナ11は、車車間通信用と路車間通信用の共用アンテナである。車車間通信する場合、無線アンテナ11では、通信範囲内に存在する車車間通信可能な車両からの信号を受信するとともに通信範囲内の車両に信号を送信する。信号を送信する場合、車車間送信信号が無線制御ECU21から無線アンテナ11に送られる。信号を受信した場合、車車間受信信号が無線アンテナ11から無線制御ECU21に送られる。路車間通信する場合、無線アンテナ11では、インフラ装置(例えば、光ビーコン)からの信号を受信するとともにインフラ装置に信号を送信する。信号を送信する場合、路車間送信信号が無線制御ECU21から無線アンテナ11に送られる。信号を受信した場合、路車間受信信号が無線アンテナ11から無線制御ECU21に送られる。
無線制御ECU21は、無線で送受信される各種信号を制御する。車車間通信の場合、無線制御ECU21では、車両制御ECU51からの車車間送信情報に各種変換処理を施して車車間送信信号を生成し、その車車間送信信号を無線アンテナ11に送る。また、無線制御ECU21では、無線アンテナ11で受信した車車間受信信号に各種変換処理を施して情報を取り出し、その情報を車車間受信情報信号として車両制御ECU51に送信する。車車間通信で送受信される情報としては、例えば、車両の速度、位置、加速度、走行車線、道路種別(高速道路、一般道路など)、車両識別情報(車両IDなど)がある。路車間通信の場合、無線制御ECU21では、車両制御ECU51からの路車間送信情報に各種変換処理を施して路車間送信信号を生成し、その路車間送信信号を無線アンテナ11に送る。また、無線制御ECU21では、無線アンテナ11で受信した路車間受信信号に各種変換処理を施して情報を取り出し、その情報を路車間受信情報信号として車両制御ECU51に送信する。路車間通信で送信される情報としては、例えば、車両識別情報がある。路車間通信で受信される情報としては、例えば、VICS[Vehicle Information Communication System]情報(渋滞情報、交通規制情報、VICS旅行速度など)やインフラ情報(信号サイクル情報など)がある。各車両の走行車線の情報を路車間通信で受信できる場合もある。
なお、車車間通信及び路車間通信で共用で使用する無線アンテナ及び無線制御ECUとしたが、車車間通信と路車間通信とで別々の無線アンテナ及び無線制御ECUとしてもよい。また、路車間通信では、情報を送受信するのではなく、情報を受信するだけでもよい。
車速センサ12は、自車両の速度を検出するためのセンサである。車速センサ12では、一定時間毎に、自車両の速度に関する情報を検出し、その検出した情報を車速センサECU22に送信する。
車速センサECU22は、車速センサ12から送信された情報を各種処理し、デジタル値の自車両の速度を出力する。そして、車速センサECU22では、その自車両の速度を車速信号として車両制御ECU51に送信する。
加速度センサ13は、自車両の加速度を検出するためのセンサである。加速度センサ13では、一定時間毎に、自車両の加速度に関する情報を検出し、その検出した情報を加速度センサECU23に送信する。
加速度センサECU23は、加速度センサ13から送信された情報を各種処理し、デジタル値の自車両の加速度を出力する。そして、加速度センサECU23では、その自車両の加速度を加速度信号として車両制御ECU51に送信する。
クルーズレバー14は、ACCシステム1のオン(起動)/オフ(停止)操作や目標速度の設定操作(所定速度間隔毎の速度アップ操作と速度ダウン操作が可能)などの各種操作を行うためのレバーである。クルーズレバー14では、運転者によって行われた操作情報をクルーズレバー信号として車両制御ECU51に送信する。なお、先行車両追従制御時の目標車間時間(目標車間距離)を設定(例えば、長、中、短の設定)するために、レバーあるいはスイッチを別体で設けてもよいし、あるいは、クルーズレバー14に組み込んでもよい。
アクセルペダルセンサ15は、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ15では、一定時間毎に、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をアクセルペダル信号としてエンジン制御ECU30に送信する。
エンジン制御ECU30は、エンジンを制御する制御装置である。エンジン制御ECU30では、通常、一定時間毎に、アクセルペダルセンサ15からのアクセルペダル信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に応じて目標加速度を設定する。そして、エンジン制御ECU30では、その目標加速度になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、その目標開度を目標スロットル開度信号としてスロットルアクチュエータ40に送信する。特に、車両制御ECU51からのエンジン制御信号を受信した場合、エンジン制御ECU30では、エンジン制御信号に示される目標加速度となるための目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータ40に送信する。
スロットルアクチュエータ40は、スロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータ40では、エンジン制御ECU30からの目標スロットル開度信号を受信すると、その目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
ブレーキペダルセンサ16は、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ16では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をブレーキペダル信号としてブレーキ制御ECU31に送信する。
ブレーキ制御ECU31は、各輪のブレーキを制御する制御装置である。ブレーキ制御ECU31では、通常、一定時間毎に、ブレーキペダルセンサ16からのブレーキペダル信号に基づいて、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量に応じて目標減速度を設定する。そして、ブレーキ制御ECU31では、その目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダ(図示せず)の目標ブレーキ油圧を設定し、その目標ブレーキ油圧を目標油圧信号としてブレーキアクチュエータ41に送信する。特に、車両制御ECU51からのブレーキ制御信号を受信した場合、ブレーキ制御ECU31では、ブレーキ制御信号に示される目標減速度となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータ41に送信する。
ブレーキアクチュエータ41は、各輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ41では、ブレーキ制御ECU31からの目標油圧信号を受信すると、その目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
車両制御ECU51は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、ACCシステム1を統括制御する。車両制御ECU51では、クルーズレバー14からのクルーズレバー信号に示されるON操作情報に応じて起動すると、ROMに格納されているアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、制御切替制御、先行車両追従制御、ノーマルクルーズ制御、交流流クルーズ制御などを行う。車両制御ECU51では、制御周期Δt毎に、制御切替制御で先行車両追従制御、ノーマルクルーズ制御、交流流クルーズ制御のうちのいずれの制御を行うかを決定し、その決定した制御を行う。また、車両制御ECU51では、クルーズレバー14からのクルーズレバー信号に示される目標速度を設定するためのアップ操作量又はダウン操作量を取得する毎に、その操作量にゲインを乗算し、そのアップ分又はダウン分の速度を現在設定されている目標速度に加味した新たな目標速度を演算する。この運転者によって設定される目標速度は、運転者が視認できるように表示される。
制御切替制御について説明する。車両制御ECU51では、前方センサECU20からの前方車間距離信号に基づいて、自車両の前方に先行車両が存在するか否かを判定する。先行車両が存在すると判定した場合、車両制御ECU51では、先行車両追従制御を行う。先行車両が存在しないと判定した場合、車両制御ECU51では、無線制御ECU21からの車車間受信情報信号に基づいて、自車両周辺(特に、前方)に車車間通信可能な他車両が存在するか否かを判定する。自車両周辺に車車間通信可能な他車両が存在しないと判定した場合、車両制御ECU51では、ノーマルクルーズ制御を行う。自車両周辺に車車間通信可能な他車両が存在すると判定した場合、車両制御ECU51では、交通流クルーズ制御を行う。
先行車両追従制御について説明する。車両制御ECU51では、前方センサECU20からの前方車間距離信号に示される先行車両との車間距離と車速センサECU22からの車速信号に示される自車両の速度を用いて、先行車両との車間時間(=車間距離/自車速)を演算する。そして、車両制御ECU51では、車間時間と目標車間時間との差に基づいて、先行車両との車間時間が目標車間時間になるために必要な目標加減速度を演算する。目標加減速度がプラス値の場合(加速制御が必要な場合)、車両制御ECU51では、目標加速度を設定し、その目標加速度をエンジン制御信号としてエンジン制御ECU30に送信する。目標加減速度がマイナス値の場合(減速制御が必要な場合)、車両制御ECU51では、目標減速度を設定し、その目標減速度をブレーキ制御信号としてブレーキ制御ECU31に送信する。なお、先行車両追従制御で用いられる目標車間時間は、上記したレバーなどで運転者によって設定される目標車間時間である(デフォルト値は、例えば、「長」の目標車間時間である)。
ノーマルクルーズ制御について説明する。車両制御ECU51では、車速センサECU22からの車速信号に示される自車両の速度と目標速度との差に基づいて、自車両の速度が目標速度になるために必要な目標加減速度を演算する。目標加減速度がプラス値の場合、車両制御ECU51では、目標加速度を設定し、その目標加速度をエンジン制御信号としてエンジン制御ECU30に送信する。目標加減速度がマイナス値の場合、車両制御ECU51では、目標減速度を設定し、その目標減速度をブレーキ制御信号としてブレーキ制御ECU31に送信する。なお、ノーマルクルーズ制御で用いられる目標速度は、クルーズレバー14で運転者によって設定された目標速度である。
交通流クルーズ制御について説明する。車両制御ECU51では、無線制御ECU21からの車車間受信情報信号に含まれる自車両周辺の車車間通信可能な他車両毎の車両ID、速度、加速度、位置、走行車線、道路種別などの情報を取得する。また、車両制御ECU51では、インフラ装置から信号を受信できた場合には、無線制御ECU21からの路車間受信情報信号に含まれる車両ID毎の走行車線などの情報を取得する。そして、車両制御ECU51では、他車両からの情報とインフラ情報(取得できた場合のみ)に基づいて、車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度(ひいては、クルーズの目標速度)を求めるための対象の車両を選択する。この選択方法としては、自車両の前方で同方向を走行している他車両を選択し、その中でも基本的には自車線の前方を走行している他車両であるが、場合によっては他車線を走行している他車両や後方を走行している他車両も選択する。他車両の走行車線の情報が取得できない場合、同じ道路種別の他車両を選択する。
車両制御ECU51では、選択した全ての対象車両の速度に基づいて、速度の低い対象車両ほど大きな重みとなるように、各対象車両に対して重みmiをそれぞれ設定する。この重み付け方法としては、例えば、車両の速度が低いほど大きな重みが対応付けられたマップを用いて、全ての重みの合計値が1となるように(式(5)参照)、速度が低い対象車両ほど大きな重みを設定する。このマップは、対象車両の台数、走行シーン(例えば、前方が渋滞のシーン、渋滞中で走行しているシーン、低速で流れているシーン、高速で流れているシーン)などに応じてチューニングされたものにしてもよい。なお、選択された対象車両が1台の場合、その対象車両の重みが1となる。
車両制御ECU51では、各対象車両の速度Viと重みmiを用いて、上記の式(4)により参照速度Vrefを算出する。さらに、車両制御ECU51では、参照速度Vrefと自車両の速度Vを用いて、上記の式(3)により交通流適応加速度aenvを算出する。そして、車両制御ECU51では、交通流適応加速度aenvと現在の目標速度Vtgt_nowを用いて、上記の式(1)により次の目標速度Vtgt_nextを算出する。そして、車両制御ECU51では、この算出した目標速度Vtgt_nextを目標速度として、ノーマルクルーズ制御と同様の加減速制御を行う。
図1を参照して、ACCシステム1における交通流クルーズ制御中の動作について説明する。特に、車両制御ECU51における交通流クルーズ制御の処理については図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、第1の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。ここでは、運転者によるクルーズレバー14でのON操作に応じてACCシステム1が起動しており、車車間通信で自車両の周辺の車車間通信可能な他車両から情報を取得できるが、前方車間距離センサ10で先行車両を検知できていない。
前方車間距離センサ10では、一定時間毎に、自車両の前方をスキャンしながらレーダビームを送信するとともに反射してきた場合にはそのレーダビームを受信し、そのレーダ情報を前方センサECU20に送信している。前方センサECU20では、このレーダ情報を受信し、レーダ情報に基づいて先行車両が存在しないと判定し、そのことを示す前方車間距離信号を車両制御ECU51に送信する。
無線アンテナ11では、通信範囲内の他車両からの信号が送信される毎に、その送信された信号を受信し、車車間受信信号を無線制御ECU21に送信する。無線制御ECU21では、この車車間受信信号を受信すると、車車間受信信号から他車両の各種情報を取り出し、車車間受信情報信号を車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この車車間受信情報信号を受信し、自車両周辺の他車両の情報を取得する(S10)。
また、無線アンテナ11では、自車両がインフラ装置の送信エリアを通過するときに、インフラ装置から送信された信号を受信し、路車間受信信号を無線制御ECU21に送信する。無線制御ECU21では、この路車間受信信号を受信すると、路車間受信信号からインフラ情報を取り出し、路車間受信情報信号を車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この路車間受信情報信号を受信し、インフラ情報を取得する(S11)。
車速センサ12では、一定時間毎に、自車両の速度に関する情報を検出し、その情報を車速センサECU22に送信する。車速センサECU22では、この車速センサ12からの情報を受信すると、各種処理を行ってデジタル値の自車両の速度を車速信号として車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この車速信号を受信し、自車両の速度を取得する。
加速度センサ13では、一定時間毎に、自車両の加速度に関する情報を検出し、その情報を加速度センサECU23に送信する。加速度センサECU23では、この加速度センサ13からの情報を受信すると、各種処理を行ってデジタル値の自車両の加速度を加速度信号として車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この加速度信号を受信し、自車両の加速度を取得する。
アクセルペダルセンサ15では、一定時間毎に、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、アクセルペダル信号をエンジン制御ECU30に送信している。エンジン制御ECU30では、このアクセルペダル信号を受信し、アクセルペダルの踏み込み量を取得する。
ブレーキペダルセンサ16では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキペダル信号をブレーキ制御ECU31に送信している。ブレーキ制御ECU31では、このブレーキペダル信号を受信し、ブレーキペダルの踏み込み量を取得する。
制御周期Δt毎に、車両制御ECU51では、自車両周辺の車車間通信可能な他車両の情報とインフラ情報(取得できている場合だけ)に基づいて、自車両周辺の車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度を求める対象の車両を選別する(S12)。そして、車両制御ECU51では、その選別した各対象車両の速度Viに基づいて、対象車両毎に重み付けを行う(S13)。
車両制御ECU51では、各対象車両の重みmiと速度Viに基づいて、式(4)により参照速度Vrefを演算する(S14)。そして、車両制御ECU51では、参照速度Vrefと自車両の速度Vに基づいて、式(2)により交通流適応加速度aenvを演算する(S15)。さらに、車両制御ECU51では、交通流適応加速度aenvと現目標速度Vtgt_nowに基づいて、式(1)により次目標速度Vtgt_nextを演算する(S16)。
車両制御ECU51では、自車両の速度Vと次目標速度Vtgt_nextとの差に基づいて、自車両の速度が目標速度になるために必要な目標加減速度を演算する(S17)。目標加減速度がプラス値の場合、車両制御ECU51では、目標加速度を設定し、エンジン制御信号をエンジン制御ECU30に送信する(S17)。エンジン制御ECU30では、このエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標加速度になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータ40に送信する。スロットルアクチュエータ40では、この目標スロットル開度信号を受信すると、目標スロットル開度信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。これによって、自車両では、次目標速度Vtgt_next(ひいては、交通流適応加速度aenv)になるように加速する。目標加減速度がマイナス値の場合、車両制御ECU51では、目標減速度を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキ制御ECU31に送信する(S17)。ブレーキ制御ECU31では、このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダの目標ブレーキ油圧を設定し、目標油圧信号をブレーキアクチュエータ41に送信する。ブレーキアクチュエータ41では、この目標油圧信号を受信すると、目標油圧信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。これによって、自車両では、次目標速度Vtgt_next(ひいては、交通流適応加速度aenv)になるように減速する。
このACCシステム1によれば、交通流での影響の大きい速度の低い対象車両ほど大きい重みを設定して交通流適応速度(ひいては、目標速度)算出することにより、情報を取得できない他車両(車車間通信が不能な他車両)が存在する場合でも、算出した目標速度に基づくクルーズ走行で無駄な加減速を抑制できる。その結果、安全で交通流に乗ったスムーズな走行が可能となる。例えば、前方の渋滞に突入する場合にはレーダで前方の車両を検知する前に事前に減速でき、周辺が流れている場合にはその流れに迅速に溶け込んで走行できる。
ACCシステム1では、車車間通信を利用して自車両周辺の他車両の情報を取得することにより、車車間通信の通信範囲内かつ前方の同方向に車車間通信可能な他車両が存在するほど、確からしい交通流流加速度を得ることができ、より適切なクルーズ制御ができる。この際、他車両の速度や走行車線が正確に判れば、他車両の位置の精度が低くてもよい。また、通信相手の特定も不要なため、実現が容易である。
図1及び図6を参照して、第2の実施の形態に係るACCシステム2について説明する。図6は、対象車両の位置に基づく重み付けの一覧表である。
ACCシステム2は、第1の実施の形態に係るACCシステム1と比較すると、交通流クルーズ制御時に自車両周辺の対象車両の速度以外に位置も考慮して目標速度を算出する。したがって、ACCシステム2は、第1の実施の形態に係るACCシステム1の構成と比較すると、車両制御ECU52だけが異なる。なお、第2の実施の形態では、車両制御ECU52が特許請求の範囲に記載する目標速度算出手段に相当する。
車両制御ECU52は、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51と比較すると、交通流クルーズ制御の処理だけが異なる。そこで、車両制御ECU52における交通流クルーズ制御についてのみ説明する。
交通流クルーズ制御について説明する。車両制御ECU52では、第1の実施の形態に係る車両制御ECU52と同様の処理により、車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度を求めるための対象の車両を選択する。なお、ここでは、自車両の前方の他車両以外に、自車線の前方では自車線以外の他車線の他車両も対象車両として選択し、自車線の後方では自車線の他車両のみ対象車両として選択する。
そして、車両制御ECU52では、選択した全ての対象車両の速度と位置(走行車線情報も含む)に基づいて、各対象車両の重みmiをそれぞれ設定する。この重み付け方法としては、速度については、第1の実施の形態で説明した同様の方法によって速度の低い対象車両ほど大きな重みを設定する。また、位置については、図6に示すように、自車線の前方の対象車両の重みを大きく設定し、他車線の前方の対象車両の重みを小さく設定し(0でも可)、自車線の後方に自車両より速い対象車両が存在する場合には重みを小さく設定し、自車線の後方に自車両より遅い対象車両が存在する場合には重みを0に設定する。例えば、まず、対象車両毎に速度に応じて重みをそれぞれ設定し、自車線の前方の対象車両の場合には速度に応じて設定されている重みに1より大きな第1係数を乗算し、他車線の前方の対象車両の場合には速度に応じて設定されている重みに1より小さい第2係数(0の場合あり)を乗算し、自車線の後方の対象車両の場合には速度に応じて設定されている重みに1より小さい第3係数(0の場合あり)を乗算する。この各係数については、全ての重みの合計値が1となるように、適宜調整される。
自車両の前方の場合、基本的には自車線の他車両の速度に影響されるが、渋滞などの場合には他車線の他車両の速度も考慮してもよい。そこで、他車線の他車両の速度を考慮する必要のある走行シーンでは、他車線の対象車両の重みを自車線の対象車両の重みよりも小さくして、他車線の他車両の速度も交通流適応加速度の算出に寄与させる。但し、他車線の他車両の速度を考慮する必要のない走行シーンでは、他車線の対象車両の重みを0にして、交通流適応加速度の算出に寄与させない。
また、自車両の後方の場合、他車線の他車両には影響されないが、自車線の他車両の速度が速いと自車両で後続車両が詰まるので、周囲の渋滞を防ぐために、自車線の後方の他車両の速度も考慮してもよい。そこで、自車線の他車両の速度が自車両より速い場合のみ、自車線後方の対象車両の重みを自車線前方の対象車両の重みよりも小さくして、自車線後方の他車両の速度も交通流適応加速度の算出に寄与させる。
車両制御ECU52では、全ての対象車両の重みmiを設定すると、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51と同様の処理により、参照速度Vref、交通流適応加速度aenv、次目標速度Vtgt_nextを順次算出し、その次目標速度Vtgt_nextに基づいて加減速制御を行う。
図1及び図6を参照して、ACCシステム2における交通流クルーズ制御中の動作について説明する。特に、車両制御ECU52における交通流クルーズ制御の処理については図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、第2の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。ここでは、第1の実施の形態で説明したACCシステム1における動作と比較すると、車両制御ECU52における処理だけが異なるので、車両制御ECU52における処理のみ説明する。
車両制御ECU52では、S20〜S22の各処理については第1の実施の形態に係る車両制御ECU51におけるS10〜S12の各処理と同様の処理を行う。S22で対象車両を選別すると、車両制御ECU52では、その選別した各対象車両の速度と位置に基づいて、対象車両毎に重み付けを行う(S23)。そして、車両制御ECU52では、S24〜S27の各処理については第1の実施の形態に係る車両制御ECU51におけるS14〜S17の各処理と同様の処理を行う。
このACCシステム2は、第1の実施の形態に係るACCシステム1における効果を有する上に、以下の効果も有している。ACCシステム2によれば、対象車両の重みを設定する際に速度の他に位置も考慮することにより、対象車両の自車両に対する影響度合いに応じてより適切な重みを設定でき、より確からしい交通流適応速度(ひいては、目標速度)算出できる。その結果、無駄な加減速をより抑制でき、より安全でスムーズな走行ができる。
図1を参照して、第3の実施の形態に係るACCシステム3について説明する。
ACCシステム3は、第2の実施の形態に係るACCシステム2と比較すると、交通流クルーズ制御時に自車両周辺の対象車両の速度と位置以外に車両状態と属性も考慮して目標速度を算出する。したがって、ACCシステム3は、第1の実施の形態に係るACCシステム1の構成や第2の実施の形態に係るACCシステム2の構成と比較すると、車両制御ECU53だけが異なる。なお、第3の実施の形態では、無線アンテナ11及び無線制御ECU21が特許請求の範囲に記載する他車両走行傾向取得手段に相当し、車両制御ECU53が特許請求の範囲に記載する目標速度算出手段に相当する。
なお、無線アンテナ11と無線制御ECU21による車車間通信では、送受信される情報として上記で示した情報以外に、ABS[Anti-lock Brake System]、VSC[Vehicle Stability Control],PCS[Pre Crash Safety]などの安全システムの有無やその作動/非作動の情報、救急車などの緊急車両の場合にはその車両の属性情報、事故車の場合には事故車であることの情報も含まれるものとする。また、無線アンテナ11と無線制御ECU21による路車間通信では、インフラ装置から受信される情報として上記で示した情報以外に、事故車が存在する場合にはその事故車の車両IDや位置などの情報も含まれるものとする。
車両制御ECU53は、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51や第2の実施の形態に係る車両制御ECU52と比較すると、交通流クルーズ制御の処理だけが異なる。そこで、車両制御ECU53における交通流クルーズ制御についてのみ説明する。
交通流クルーズ制御について説明する。車両制御ECU53では、第1の実施の形態に係る車両制御ECU52と同様の処理により、車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度を求めるための対象の車両を選別する。
そして、車両制御ECU53では、選別択した全ての対象車両の速度と位置及び走行状態と属性に基づいて、各対象車両の重みmiをそれぞれ設定する。この重み付け方法としては、速度と位置については、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した同様の方法によって対象車両に重みを設定する。さらに、走行状態については、前方の対象車両が事故車両(停止中)の場合には極大の重み(=1)を設定し(したがって、他の全ての対象車両の重みに0を設定)、前方の対象車両が安全システムを搭載している場合には安全システムが作動中の場合には重みを大きく設定し(例えば、速度と位置に応じて設定されている重みに1より大きい係数を乗算)、対象車両が極端な運転行動を行っている場合には重みを0に設定する。属性については、救急車などの緊急車両の場合には重みを0に設定する。
前方に事故車両が存在する場合、後続車両である自車両を速やかに停止させる必要があるので、そのような対象車両を交通流適応加速度の算出により最大限寄与させる。
前方に安全システムが作動している対象車両が存在する場合、その対象車両は車両挙動を安定するためや衝突を回避するために車両制御を行う。このような対象車両は危険状態を予測し、安全走行度合いが高くなるように車両制御を行っているので、安全性を高める上で、そのような対象車両を交通流適応加速度の算出により寄与させる。
極端な運転行動の車両としては、例えば、極端に短い車間距離で走行している車両、パッシングをしていた車両、無理な追い越しをしていた車両である。このような対象車両は急加減速度合いが高く、安全性が低下するので、そのような対象車両の速度を交通流適応加速度の算出に寄与させない。このような車両を判断するために、取得できている他車両の速度や位置などを時系列で記憶し、その走行履歴から判断したり、カメラなどの検知手段がある場合にはその検知手段を用いて車両の状況を監視し、その車両状況から判断する。
緊急車両は、赤信号でも走行するなど特異な走行行動を採るので、周囲の車両と異なる速度で走行する。したがって、緊急車両の速度を交通流適応加速度の算出に寄与させない。
車両制御ECU53では、全ての対象車両の重みmiを設定すると、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51と同様の処理により、参照速度Vref、交通流適応加速度aenv、次目標速度Vtgt_nextを順次算出し、その次目標速度Vtgt_nextに基づいて加減速制御を行う。
図1を参照して、ACCシステム3における交通流クルーズ制御中の動作について説明する。特に、車両制御ECU53における交通流クルーズ制御の処理については図8のフローチャートに沿って説明する。図8は、第3の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。ここでは、第1の実施の形態で説明したACCシステム1における動作と比較すると、車両制御ECU53における処理だけが異なるので、車両制御ECU53における処理のみ説明する。
車両制御ECU53では、S30〜S32の各処理については第1の実施の形態に係る車両制御ECU51におけるS10〜S12の各処理と同様の処理を行う。特に、S30の処理で自車両周辺の他車両の情報を取得した場合、車両制御ECU53では、他車両毎に、その取得した情報(速度、位置など)を時系列で記憶しておく。S32で対象車両を選別すると、車両制御ECU52では、その選別した各対象車両の速度、位置、車両状態(走行履歴も含む)及び属性に基づいて、対象車両毎に重み付けを行う(S33)。そして、車両制御ECU53では、S34〜S37の各処理については第1の実施の形態に係る車両制御ECU51におけるS14〜S17の各処理と同様の処理を行う。
このACCシステム3は、第2の実施の形態に係るACCシステム2における効果を有する上に、以下の効果も有している。ACCシステム3によれば、対象車両の重みを設定する際に速度と位置の他に走行状態及び属性も考慮することにより、自車両の走行に影響する対象車両に応じてより適切な重みを設定でき、より確からしい交通流適応速度(ひいては、目標速度)算出できる。その結果、安全性をより向上でき、無駄な加減速をより抑制できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では先行車両追従制御とクルーズ制御を行うACCシステムに適用したが、クルーズ制御(特に、交通流クルーズ制御)だけを行う装置、交通流に応じた車両の目標速度の設定だけを行う装置などの他の装置にも適用可能である。
また、本実施の形態ではクルーズ制御のための目標速度を求める構成としたが、運転者による操作によって走行する場合の目標速度を求める場合でも適用可能である。
また、本実施の形態では他車両速度取得手段や他車両走行傾向取得手段として無線通信で他車両の速度などを取得する構成としたが、他の手段で取得してもよい。
また、本実施の形態では選別された複数の対象車両において低い速度の対象車両から順に大きい重みを設定する構成としたが、速度の低い対象車両に大きな重みが設定されればどのような重み付けでもよく、例えば、最も低い速度の対象車両に重みとして1を設定し、それ以外の対象車両に重みとして0を設定する構成としてもよいし(つまり、最も速度の低い対象車両の速度のみを考慮)、あるいは、速度の低い数台(例えば、2〜3台)の対象車両に重みを速度の低い順にそれぞれ設定し、それ以外の対象車両に重みとして0を設定する構成としてもよい(つまり、より速度の低い数台の対象車両の速度のみを考慮)。
また、本実施の形態では選別された対象車両に対して重みをそれぞれ設定し、各対象車両の速度と重みに基づいて参照速度を算出し、その参照速度と自車両の速度に基づいて交通流適応加速度を算出し、その交通流適応加速度と現目標速度に基づいて自車両の次目標速度を算出する構成としたが、対象車両の速度と設定される重みを用いて自車両の目標速度を算出する方法としては他の方法でもよい。例えば、交通流適応加速度を求めることなく、対象車両毎の速度と重みから自車両の目標速度を直接算出する。
また、第3の実施の形態では交通流クルーズ制御時に対象車両の速度と位置に加えて車両状態と属性を考慮して目標速度を求める構成としたが、対象車両の速度だけに加えて車両状態と属性を考慮して目標速度を求めてもよいし、あるいは、対象車両の速度と位置に加えて車両属性と属性のうちのいずれか一方だけを考慮して目標速度を求めてもよい。
また、第3の実施の形態では対象車両の走行傾向として車両状態と属性で一例を挙げたが、走行傾向としては車両状態や属性以外の交通流での実勢速度に影響を与えるような他のものでもよいし、車両状態と属性についても例に挙げたもの以外のものでもよい。