JP2009084585A - 窒化シリコン膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】原料ガスとして、シランガス、アンモニアガス、および、不活性ガスを用い、かつ、不活性ガスの流量を、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の1〜10倍とし、ICP−CVD法によって窒化シリコン膜を形成することにより、前記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
また、窒化シリコン膜の形成方法として、プラズマCVDが利用されている。
CCP−CVD法は、対向する2枚の電極に高周波電圧を印加することによって、この電極間にプラズマを生成して、膜を形成する方法である。
CCP−CVD法は、構成が簡易である、電極から原料ガスを供給することにより、電極を大面積化しても成膜領域の全域に均一にガスを供給できる(ガスの均一化が容易である)等の利点を有する。
そのため、例えば、水蒸気バリア膜の製造などにおいて、量産化を目的として、長尺な高分子フィルム等を長手方向に搬送しつつ成膜を行なう設備などでは、基板となる高分子フィルムの搬送速度を向上できずに、良好な生産性を確保できない場合がある。また、電極への膜の付着が有るために、基板となる高分子フィルムの長さも制限される。
さらに、CCP−CVD法は、プラズマの維持に必要な圧力が高く(通常、数十〜数百Pa程度)複数の成膜空間(成膜室)を接続して連続的に成膜を行なう場合などでは、成膜室間におけるガスの混入が生じて膜質低下が生じる等の問題が有る。
ICP−CVD法とは、(誘導)コイルに高周波電力を供給することにより、誘導磁場を形成して誘導電界を形成し、この誘導電界によってプラズマを生成して、基板に膜を形成する方法である。
ICP−CVD法は、コイルに高周波電力を供給することによって、誘導電界を形成してプラズマを生成する方法であるので、CCP−CVD法のプラズマ形成では必須となる対向電極が不要であり、また、容易に高密度(>1×1011cm-3以上)のプラズマが生成できる。さらに、CCP−CVD法のプラズマ形成と比べ、低圧かつ低温でプラズマが生成できる。
例えば、特許文献1には、ICP−CVD法による窒化シリコン膜の形成は、原料ガスとしてシランガスとアンモニアガスとを用い、基板温度を350℃以上として、さらに、高周波電源のパワーを6W/sccm以上として行なわれていることが開示されている。
さらに、特許文献1では、上記窒化シリコン膜の形成方法では、膜中の水素含有量が多くなってしまい、品質が低下するとして、原料ガスとしてシランガスと窒素ガスを用い、シランガスの流量(供給流量)に対して窒素ガスの流量を10倍以上とし、ガスの総流量に対して3W/sccm以上とし、かつ、基板温度を50〜300℃とした条件下で、ICP−CVD法によって窒化シリコン膜を形成する方法が開示されている。
また、この窒化シリコン膜の形成方法では、励起ガスとしての不活性ガスを、シランガスと窒素ガスとの総流量の20%以下の流量で供給することにより、成膜速度を向上することも開示されている。
しかしながら、この窒化シリコン膜の形成方法では、原料ガスとして活性の低い窒素ガスを用いているため、成膜レートが遅く、前述のように、長尺な高分子フィルム等を基板として連続的に成膜を行なう設備では、効率の良い製造ができない。
ここで、有機物層の上に窒化シリコン膜を形成する場合や、基板として前述のような高分子フィルムなどを用いる場合には、基板温度を200℃以下として成膜を行なう必要がある。すなわち、特許文献1に開示されるような、基板温度を350℃以上とする窒化シリコン膜の形成方法は、利用できない。
ところが、このような低温での成膜では、膜の密度が低くなってしまい、従来の窒化シリコン膜の形成方法では、高密度な窒化シリコン膜を形成することができない。
また、本発明の形成方法では、原料ガスとして反応性の高いアンモニアガスを用いるので、良好な成膜レートも確保できる。
その結果、誘導結合プラズマCVD法(以下、ICP−CVD法とする)を用いて、原料ガスとして、直接的に膜の形成に寄与するシランガスおよびアンモニアガスに加え、さらに、ヘリウムガス等の不活性ガスを、シランガスおよびアンモニアガスの総流量(合計流量)の1〜10倍、導入することにより、上記のような低温成膜でも、十分に高密度で、かつ、水蒸気バリア性に優れ、さらに硬度が高く傷等にも強い窒化シリコン膜を形成できることを見いだして、本発明を成すに至った。
これに対して、本発明においては、窒化シリコン膜の形成において、ICP−CVD法を用い、膜となるシランガスおよびアンモニアガスに加え、さらに不活性ガスを所定量、導入することによって、低温での膜の形成でも、膜密度および水蒸気バリア性の向上を図り、かつ、硬度も高く、傷等に対しても高い耐性を有する、高品位な窒化シリコン膜の形成を実現したものである。しかも、原料ガスとして、活性の高いアンモニアガスを用いるので、成膜レートも十分に確保でき、例えば、長尺な高分子フィルムを長手方向に搬送しつつ、連続的に窒化シリコン膜を形成する場合でも、フィルムの搬送速度を高速にすることができ、高い生産性を確保することが可能である。
不活性ガスの流量が、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の1倍未満では、密度や水蒸気バリア性の向上効果を十分に得ることができず、特に、基板として高分子フィルム等を用いた低温成膜の場合には、高密度で高い水蒸気バリア性を有する窒化シリコン膜が得られない。
他方、本発明者の検討によれば、基本的に、不活性ガスの流量が多くなるほど、密度および水蒸気バリア性の向上効果を得ることができる。しかしながら、不活性ガスの流量が、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の10倍を超えると、圧力が高くなり過ぎて、膜厚の分布均一性が損なわれてしまい、また、圧力を一定に保とうとすると、反応に寄与せずに排気されるシランガスやアンモニアガスの比率が高くなり、成膜レートが低下してしまう等、窒化シリコン膜の形成に適した成膜条件を確保することができず、すなわち、膜を適正かつ安定して形成することが出来なくなってしまう場合が有る。
不活性ガスの流量を、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の2倍以上とすることにより、基板温度が150℃以下のような低温成膜でも、安定して高密度かつ高い水蒸気バリア性を有する窒化シリコン膜を形成できる。また、不活性ガスの流量を、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の5倍以下とすることにより、窒化シリコン膜の形成に適した成膜条件を安定して確保することができ、すなわち、高品位な窒化シリコン膜を安定して形成することができる。
なお、本発明においては、使用する不活性ガスは1種に限定はされず、複数種の不活性ガスを使用してもよい。
また、本発明においては、不活性ガスの流量が、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の1〜10倍という条件が満たされていれば、必要に応じて、これら以外のガスを原料ガスとして併用してもよい。
なお、本発明者の検討によれば、シランガスおよびアンモニアガスの総流量は、1〜10000sccm、特に、100〜5000sccmとするのが好ましい。
シランガスおよびアンモニアガスの総流量を、上記範囲とすることにより、生産性や放電安定性等の点で好ましい結果を得る。
なお、本発明者の検討によれば、シランガスとアンモニアガスとの流量比は、シランガス:アンモニアガスの比で1:1〜1:10が好ましい。
シランガスとアンモニアガスと流量比を、上記範囲とすることにより、高密度で、かつ、水蒸気バリア性にも優れるなどの優れた特性を有する窒化シリコン膜が、低温成膜でも得られるという本発明の効果を、より好適に発現することができ、さらに、組成が良好な窒化シリコン膜を形成できる等の点でも好ましい結果を得る。
なお、本発明者の検討によれば、成膜のために供給する高周波パワーは、成膜に用いる原料ガスの総流量に対して0.5〜30W/sccm、特に、1〜10W/sccmとするのが好ましい。
高周波パワーを、上記範囲とすることにより、放電安定性や基板へのダメージ低減等の点で好ましい結果を得る。
なお、本発明者の検討によれば、成膜圧力は、0.5〜20Paとするのが好ましい。
成膜圧力を、上記範囲とすることにより、高密度で、かつ、水蒸気バリア性にも優れるなどの優れた特性を有する窒化シリコン膜が、低温成膜でも得られるという本発明の効果を、より好適に発現することができ、さらに、放電安定性や基板へのダメージ低減等の点でも好ましい結果を得る。
これに対して、本発明においては、150℃以下の低温でも、十分に高密度で、かつ、高い水蒸気バリア性を発揮する窒化シリコン膜を形成できる。基板温度を0〜150℃とすることにより、高分子フィルムや、有機層を有する基板など、耐熱性の低い基板にも、高密度かつ水蒸気バリア性に優れた窒化シリコン膜を形成することができる。
すなわち、本発明においては、基板温度を0〜150℃とすることにより、本発明の効果をより好適に発現して、例えば、従来の窒化シリコン膜の形成方法では作製することができなかった、高分子フィルムをベースにした、高い水蒸気バリア性を有する水蒸気バリア膜(防湿膜(防湿フィルム))を、良好な生産性で作製できる。
中でも、低温成膜でも高密度かつ高水蒸気バリア性を有する窒化シリコン膜が形成可能であるという、本発明の効果を好適に発現できるという点で、低温成膜が好ましいのと同様に、高分子層(樹脂層)などの有機層(有機物層)を有する基板、特に成膜面が有機層である基板が好ましく、中でも特に高分子フィルム(樹脂フィルム)を基板として、窒化シリコン膜を形成するのが好ましい。
従って、本発明は、特殊な成膜装置を用いる必要はなく、(誘導)コイルに高周波電力を供給することにより、誘導磁場を形成して誘導電界を形成し、この誘導電界に原料ガスを導入してプラズマを生成して、基板に膜を形成する、通常のICP−CVD法による成膜装置を用いて実施すればよく、公知のICP−CVD法によるCVD装置(成膜装置)が、全て利用可能である。但し、本発明は、前述のように、基板温度が0〜150℃の低温成膜で行なうのが好ましいので、基板の冷却機能を有する成膜装置を利用するのが好ましい。
一般的なICP−CVD法によるCVD装置を用いて、基板に窒化シリコン膜を形成した。
基板を真空チャンバ内の所定位置にセットして、真空チャンバを閉塞した。
次いで、真空チャンバ内を排気して、圧力が7×10−4Paとなった時点で、シランガス、アンモニアガス、および、ヘリウムガスを導入した。なお、シランガスの流量は50sccm、アンモニアガスの流量は150sccm、ヘリウムガスの流量は300sccmとした。すなわち、ヘリウムガスの流量は、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の1.5倍である。
さらに、真空チャンバ内の圧力が5Paとなるように、真空チャンバ内の排気を調整した。
次いで、誘導コイルに2kWの高周波電力を供給して、基板の表面にICP−CVD法によって、窒化シリコン膜の形成を開始した。なお、膜の形成中は、基板ホルダに配置された温度調節手段によって、基板の温度が70℃となるように温度制御した。
予め、実験で調べておいた成膜レートに応じて、膜厚が100nmとなった時点で、窒化シリコン膜の形成を終了して、真空チャンバから、基板を取り出した。
また、窒化シリコン膜を形成した基板について、モコン法によって透湿度を測定した。
結果を密度の測定結果を図1に、透湿度の測定結果を図2に、それぞれ示す。
ヘリウムガスの流量を500sccmとし、すなわち、ヘリウムガスの流量を、シランガスおよびアンモニアガスの総流量の2.5倍とした以外は、前記実施例1と全く同様にして、同じ基板の表面に窒化シリコン膜を形成した(実施例2)。
さらに、ヘリウムガスを導入しなかった以外は、前記実施例1と全く同様にして、同じ基板の表面に窒化シリコン膜を形成した(比較例)。
得られた窒化シリコン膜、および、窒化シリコン膜を形成した基板について、実施例1と全く同様に、密度および透湿度を測定した。結果を図1および図2に併記する。
なお、ESCAを用いて、実施例2の窒化シリコン膜の組成を調べた。その結果、珪素が48%、窒素が48%、酸素が1%、その他の不純物が3%と、不純物が非常に少ない、良好な組成の窒化シリコン膜が得られていた。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
Claims (5)
- 誘導結合プラズマCVDによって窒化シリコン膜を形成するに際し、
原料ガスとして、シランガス、アンモニアガス、および、不活性ガスを用い、前記シランガスおよびアンモニアガスの総流量に対して、前記不活性ガスを1〜10倍の流量で供給しつつ、窒化シリコン膜を形成することを特徴とする窒化シリコン膜の形成方法。 - 前記不活性ガスがヘリウムガスである請求項1に記載の窒化シリコン膜の形成方法。
- 基板温度を0〜150℃として、前記窒化シリコン膜の形成を行なう請求項1または2に記載の窒化シリコン膜の形成方法。
- 有機材料の上に、前記窒化シリコン膜の形成を行なう請求項1〜3のいずれかに記載の窒化シリコン膜の形成方法。
- 高分子フィルム製の基材を有する基板に、前記窒化シリコン膜の形成を行なう請求項1〜4のいずれかに記載の窒化シリコン膜の形成方法。
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