JP2009078808A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤの耐久性を向上させる。
【解決手段】天然ゴム及びジエン系合成ゴムのうち少なくとも一種からなるゴム成分にビスマレイミドを配合したゴム組成物とスチールコードとからなるゴム−スチールコード複合体を用いてなるタイヤであって、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100重量部に対して前記ビスマレイミドを0.1〜5重量部配合してなり、前記スチールコードが、ブラスめっきを施されたスチールフィラメントの1本からなるモノフィラメントスチールコードまたはこれらスチールフィラメントを撚り合わせてなるマルチフィラメントスチールコードであり、前記ブラスめっきの平均厚みが0.13〜0.30μmであることを特徴とするタイヤ。
【選択図】図1

Description

本発明は、ゴム−スチールコード複合体を用いたタイヤに関し、特に、めっき付きスチールコードのコーティングゴムとスチールコードのめっき部分の改良技術に関する。
例えば、スチールコードで補強したベルト層にコーティングゴムとして適用されるゴム組成物は、タイヤの耐久性に関与する重要なゴムである。このゴム組成物に求められる性能としては、(1)硬さ、(2)低発熱性、(3)スチールコードとの接着性、(4)耐劣化性などがある。これらのうち、前記(1)の硬さを増加させることは、ベルト層間の剪断歪を抑制して、タイヤの耐久性を向上させるためには有効な手段となる。
この硬さを増加させるために、従来より、(a)カーボンブラックなどの充填剤の配合量を増加する、(b)樹脂などを添加する、(c)硫黄などの架橋剤の配合量を増加する、(d)加硫促進剤の配合量を増加する等の方法がある。
しかし、前記(a)、(b)の充填剤の配合量の増加や樹脂の添加などは、確かに硬さは増加するが、低発熱性が低下し、発熱耐久性が悪化する。
また、前記(c)の硫黄の配合量の増加は、未加硫ゴムの状態で放置した場合、硫黄がブルームし、作業性が著しく低下し、タイヤにできたとしても、ゴムの耐劣化性が低下するため、タイヤの耐久性が低下する場合がある。
さらに、前記(d)の加硫促進剤の配合量の増加はある程度までは、作業性、低発熱性、耐劣化性については問題はないが、多過ぎると、スチールコードとの接着性が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、ゴム−スチールコード複合体を改良して、耐久性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究の結果、以下の知見を得、本発明を完成するに至った。
すなわち、ビスマレイミドは、天然ゴムなどのポリマー間を、硫黄を介さずに、直接架橋するため、ゴムの低発熱性および耐劣化性を損なうことなく、ゴムの硬さを増加させることができると考えられる。また、ビスマレイミド単独でも効果はあるが、トランスポリブタジエンを共に添加すると、ビスマレイミドによって大きくなる加硫戻りを抑制することができ、硬さ、発熱性が更に改良されることもわかった。さらに、ビスマレイミド単独あるいはビスマレイミドとトランスポリブタジエンとの併用でゴムとスチールコードとの接着性が向上することがわかった。
一方、コバルト塩は、ゴム−スチールコードの接着において接着プロモーターとして作用するため、接着促進においては必要であるが、同時に、コバルト塩はゴムの耐劣化性を悪化させるという作用も兼ね備える。
そこで、ビスマレイミド単独あるいはビスマレイミドとトランスポリブタジエンとの併用により、コバルト塩の配合量を減らすことを可能とした。
さらに、このゴム組成物に、本発明の新規なスチールコードを組み合わせることにより、接着性をより改良できることがわかった。
本発明の構成は以下の通りである。
(1)天然ゴム及びジエン系合成ゴムのうち少なくとも一種からなるゴム成分にビスマレイミドを配合したゴム組成物とスチールコードとからなるゴム−スチールコード複合体を用いてなるタイヤであって、前記ゴム成分100重量部に対して前記ビスマレイミドを0.1〜5重量部配合してなることを特徴とする。
(2)前記ゴム組成物にさらにトランスポリブタジエンを、前記ゴム成分100重量部に対して、0.1〜15重量部配合してなることを特徴とする。
(3)前記ゴム成分が天然ゴムを50重量%以上含有してなることを特徴とする。
(4)前記ビスマレイミドが、下記の一般式[化1]で表されるビスマレイミドであることを特徴とする。
Figure 2009078808

(式中、Rは炭素数6〜18の芳香族基、または炭素数7〜24のアルキル芳香族基を表し、xおよびyは0〜3のいずれかの整数をそれぞれ独立に表す。)
(5)前記スチールコードが、周面に、最表層の銅濃度が15〜45アトミック%のブラスめっきを施されたスチールフィラメントの表面からフィラメント半径方向内側に15nmの深さまでの表層領域に、コバルト原子およびニッケル原子のうち少なくとも1種を含有してなるブラスめっき付きフィラメントの1本からなるモノフィラメントスチールコードまたはこれらスチールフィラメントを撚り合わせてなるマルチフィラメントスチールコードであることを特徴とする。
ここで、「最表層」とは、装置の測定可能な最小単位長さであり、X線光電子分光法で1nm〜2nm程度である。
(6)前記表層領域に含有されるコバルト原子およびニッケル原子の総量が0.1アトミック%以上かつ前記表層領域の銅原子含有量以下であることを特徴とする。
(7)前記表層領域に含有されるコバルト原子およびニッケル原子の総量が0.5〜5.0アトミック%であることを特徴とする。
(8)前記表層領域で、酸化物に含まれないコバルト原子およびニッケル原子が、前記表層領域に含有されるコバルト原子およびニッケル原子の総量の50アトミック%以上であることを特徴とする。
(9)前記ブラスめっきの平均厚みが0.13〜0.30μmであることを特徴とする。
(10)前記フィラメントの直径が0.40mm以下であることを特徴とする。
本発明のゴム−スチールコード複合体を使用したタイヤは、ゴムの硬さを増加させ、かつ低発熱性、スチールコードとの接着性、耐劣化性を損なうことのないゴム組成物を提供し、およびさらに接着性を向上できるスチールコードを提供し、これにより、車両用等の空気入り等のタイヤの耐久性を向上させることができる。
本発明を詳細に説明する。
本発明のタイヤにはスチールコードと特定のゴム組成物(コーティングゴム)とからなるゴム−スチールコード複合体を配設する。
コーティングゴムのゴム成分は、天然ゴムとジエン系合成ゴムのうち少なくとも1種からなるが、天然ゴムを50重量%以上含有することが好ましい。50重量%未満では、接着特性およびゴム破壊特性の低下を招くことがあるからである。また、ゴム成分の残部をなす合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、好ましくは、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、パラメチルスチレン基を有するブチルゴム(具体的には、イソブチレンとp−ハロゲン化メチルスチレンとの共重合体等)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。
SBRの場合、ブタジエン部分のビニル結合含量が35〜85%であり、かつ結合スチレン量が30重量%以下である溶液重合SBRであると好ましいが、これは、前記ビニル結合量を35%以上とすることにより、ゴムの耐熱老化性が改良でき、85%以下とすることにより、ゴムの破壊特性を維持できるからである。また、結合スチレン量を30重量%以下とすることにより、接着性の低下を抑制することができる。
本発明において、ビスマレイミドの配合量は、ビスマレイミド単独、ビスマレイミドとトランスポリブタジエンの併用の場合共に、ゴム成分100重量部あたり0.1重量部から5重量部である。0.1重量部未満では配合効果を発揮せず、5重量部より多いと、加硫戻りが大きくなり、発熱性が悪化する。
本発明で好適なビスマレイミドとしては、N,N′−1,2−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル]メタン等を例示でき、特に好ましいのは、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドである。ゴム組成物中に、これらを1種以上含むことができる。
なお、ビスマレイミドの一般式中、xまたはyが4以上では、分子量が大きくなり、配合量の割に、目的とする動的貯蔵弾性率の増加効果が得られないため好ましくない。
本発明のタイヤに用いるゴム組成物には、耐破壊特性をさらに向上させるために、トランスポリブタジエンを配合することが好ましい。トランスポリブタジエンとしては、トランス結合含量が82%〜98%であることが好ましく、効果の点から86%〜98%がさらに好ましい。また、その重量平均分子量が30,000〜200,000であるときに、未加硫時の加工性を改良できると共に、加硫ゴムの耐破壊特性も維持することができる。トランスポリブタジエンの配合量はゴム成分との相溶性、加硫ゴムの耐破壊特性などの観点から、ゴム成分100重量部あたり0.1重量部〜15重量部であることが好ましい。さらには、3重量部〜15重量部、特には4重量部〜12重量部配合したときにその効果が大きい。
本発明におけるゴム組成物には、上記成分の他、必要に応じて、ゴム工業で通常使用されている補強性充填剤、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、プロセス油、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸等を適宜配合することができる。
以下、本発明のブラスめっき付きスチールコードについて説明する。
さて、本発明者は、フィラメントの周面に施したブラスめっきについて、めっき表面からその深さ方向における成分組成と初期接着性との関係を明らかにするため、通常使用しているブラスめっきフィラメントへCoイオン注入を行って、接着促進剤を減量もしくは無添加とした被覆ゴムとの接着性を検討した。すなわち、イオンプランテーションの技術を用いて、イオン注入時間とブラスめっき表面のCo含有量との関係、及び例えば図1に示す注入するCoのイオン化率とCo含有量の深さ方向分布との関係を予め把握して、めっき表層のCo含有量を種々に制御し、初期接着性との関係を調査した。
その結果、めっき表面から15nmの深さまでCoを含有させることが、初期接着性の改善に最も有効であることを新たに見出し、この発明を完成するに至ったのである。すなわち、めっき表面から深さ方向にCo含有領域を拡げて、その領域の拡大過程の種々の段階において、初期接着性を評価したところ、Co含有領域を深さ方向に拡げるほど、初期接着性は改善されるが、15nmをこえる深さにまでCo含有領域を拡げても、それ以上に初期接着性が改善されることはなく、その効果が15nmの深さを境に飽和することが、判明した。
一方、めっき表面のみのCo含有量を増加して同様に初期接着性を評価したところ、一定の深さまでCoが拡散されていなければ、初期接着性の改善効果は小さく、実際にコバルト金属塩を減量もしくは無添加とした被覆ゴムとの初期接着性が確保されるレベルにないことも判明した。
そこで、表層領域を15nmまでとした。上記のように、接着性の改善に影響を与えるのが、このあたりが主な領域だからである。
さらに、めっき表面から15nmの深さまでの表層領域におけるCo含有量について検討したところ、その含有量が0.1アトミック%未満では上記の初期接着性の改善効果に乏しく、一方表層領域のCu含有量をこえると初期接着性の改善効果が飽和するため、0.1アトミック%以上表層領域のCu含有量以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5.0アトミック%の範囲とすることが推奨される。
なお、めっき表面から15nmの深さまでの表層領域に限定してCoを含有させる際、イオン注入を用いると、先に図1に例示したように、Coの含有はめっき表面から深さ方向に漸減する濃度勾配を示すことになる。この場合、上記の表層領域におけるCo含有量とは、後述する通り、X線光電子分光(XPS)法を用いて図3のようなデプスプロファイルを作成し、表層領域全体のCu、Zn、Coの全アトミック量に対するCoアトミック%量を算出して得る。Ni含有量についても同様である。
ここで、めっき表面から15nmの深さまでの表層領域にCoを含有させることによって初期接着性が改善するのは、Coがめっき表面から15nmの深さまで拡散して初めて、加硫接着時におけるめっき内部のCuの有効な拡散を実現させることができるからである。また、この深さをこえる領域にCoがめっき中に拡散していたとしても、その効果は飽和することが明らかであり、Coの増加によるコスト増をまねくことになる。
上記の知見は、Coの場合に限らず、Niの場合も同様であった。
以上、めっき表面から深さ方向にCoを含有させるに当りイオン注入技術を用いたが、ブラスめっきの表層領域にCoまたはNiを入れ込む、他の方法を検討したところ、ブラスめっきを施したフィラメントを、例えば水100重量部に対して5〜10重量部のコバルト金属塩と適度な界面活性剤とを分散させたコロイドに浸して乾燥させる工程を繰り返した後に、150〜250℃の温度で熱処理を施すことによっても、Coを15nm深さのめっき内部まで拡散させることができた。その際、コードを液に浸す回数、乾燥回数及び熱拡散回数のいずれか少なくとも1つを制御することによって、表層のコバルト含有量を調整可能である。このようにして製造したフィラメントのめっき深さ方向において、Cu、Zn及びCoの光電子分光分析を用いて元素定量した結果の一例を、Co含有量について図2に示す。
同様に、スチールコードを製造する際、そのフィラメントの伸線工程において、潤滑剤中に接着促進剤であるCoやNiの金属塩を適量添加し、伸線時の発熱を利用してCoやNiを15nmのめっき内部まで拡散させることも可能である。
次に、めっき表面における、Cu含有量について鋭意検討した。すなわち、めっきの基本組成は、初期接着性に加えて、ゴム加硫後の耐熱及び耐湿接着性などの接着耐久性を考慮する必要があり、接着耐久性の観点から、最表面におけるCu含有量を45アトミック%以下、好ましくは40アトミック%以下に制限することが好ましい。一方、初期接着性を確保するには一定量以上のCuの含有が必要であり、Cu含有量を15アトミック%以上、好ましくは25アトミック%以上とする。
ちなみに、この発明に従ってめっき基本組成及びCo含有量を規制した際の、めっき表層領域を含む、めっき深さ方向の各成分の濃度分布の典型例を、図3に示す。
また、表層領域に含有されるCoおよびNiは、酸化物として存在するものは、それらの総量の50アトミック%未満であることが好ましい。なぜなら、金属原子と酸素原子との結合は強固であるため、金属酸化物はそれ自体が安定しており、例えば、CoないしCoイオンの金属中での拡散や移動が困難になるためである。その結果としてCoとCuとの交換反応や置換反応が充分に進まなくなり、接着促進剤としての役割を充分に果たせないことがある。
なお、表層領域に含有される酸化物に含まれないCoまたはNiの定量は、めっき表面をX線光電子分光法にて測定した結果に基づく、例えば図4に示すCoのスペクトル模式図における、酸化物と金属との面積比から両者の存在比から求めることができる。
さらに、ブラスめっきの平均厚みを0.13〜0.30μmとすることが有利である。すなわち、めっき平均厚みが0.13μm未満になると、鉄地が露出する部分が増加し初期接着性が阻害され、0.30μmを超えると、ゴム物品使用中の熱によって過剰に接着反応が進行し脆弱な接着しか得らなくなるからである。
なお、フィラメント直径は0.40mm以下であることが有利である。なぜなら、0.40mmを超えると、使用したゴム物品が曲げ変形下で繰り返し歪を受けたときに、表面歪が大きくなり、座屈を引き起し易くなるからでる。
また、めっきにおけるCoの定量は、X線光電子分光法を用いて、めっき表面からSiO2のエッチングスピード換算で15nm以上の深さまで、Cu、Zn、Co、O及びCの特徴的な光電子をモニターにしてアルゴンエッチングを行いながら、各深さiに存在する元素量を定量し、Cuiアトミック%及びCoiアトミック%をそれぞれ求め、さらに15nmまでのデプスプロファイル(図3参照)を作成し、その領域でのCu、Zn及びCoの相対面積から表層領域のCoアトミック%を算出した。なお、めっき厚さは、0.25μmである。
ここで、Cuiアトミック%及びCoiアトミック%は、
Cuiアトミック %=[fcu Cuin/(fcuCuin+fznZnin+fcoCoin)]×100
Coiアトミック %=[fco Coin/(fcuCuin+fznZnin +fcoCoin)]×100
ただし、fcu, fzn, fco は各元素の感度係数であり、Cuin、Znin、Coinは深さiの位置での各元素のカウント数で単位はcount per secondである。
本発明にかかるスチールコードの製造法は、上記にように、ドライ技術を使用したイオン注入の他に、ブラスめっきフィラメントをコバルト金属塩と適度な界面活性剤を分散させたコロイドに浸し、乾燥する工程を繰り返したのち、150〜250℃で熱処理することにより、Coをめっき表層領域に拡散することができる。コードをコロイド液に浸す回数、乾燥回数、熱拡散回数により、Co量を制御できる。Niに関しても同様である。
なお、本発明のタイヤには、空気の他、窒素等の不活性な気体を充填できる。
本発明を具体的に説明する。
表1および表2記載の配合の各ゴム組成物(コーティングゴム)およびこれにスチールコードを埋設したゴム−スチールコード複合体を作製し、これらについて、下記の方法でゴム物性および接着力を測定した。
(1)貯蔵弾性率E’および損失係数 tanδ
加硫条件[160℃×14分]で加硫したゴム組成物について、東洋精機(株)製、スペクトロメータ(動的粘弾性測定試験機)を用い、初期荷重160g,周波数52Hz、歪1%、測定温度25℃で測定した。比較例1を100として指数表示した。数値が大きい程、E’にあっては加硫ゴムの弾性率が高く良好であることを示し、tanδにあっては低発熱性であり良好であることを示す。
(2)劣化後の破断伸びEbの保持率
上記と同様の加硫条件[160℃×14分]で加硫したゴム組成物について、劣化前のEBと、劣化条件[100℃×24時間、空気中]に放置して劣化させた後のEBを、JIS K6301−1995(3号試験片)に準じて測定し、次式により、該保持率を求めた。
保持率=100×[劣化後Eb]/[劣化前Eb]
数値が大きい程、耐劣化性が高く良好であることを示す。
(3)3日放置後のブルーム性
上記と同様の加硫条件[160℃×14分]で加硫したゴム組成物について、25℃で3日間放置した後、ゴム表面を目視観察し、硫黄のブルームによって生じる白さの無視できる程に少ないものを[良]、白い部分が多いものを[不良]と判定した。
(4)ゴム−コード接着力
下記のブラスめっきを施された各スチールコード(1×5構造、素線径0.25mm)を12.5mm間隔で平行に並べ、該スチールコードを両側からゴム組成物でコーティングしてサンプルを作製した。これを、加硫条件[160℃×10分]で加硫し、これについて、ASTM−D−2229に準拠してスチールコードを引き抜き、引き抜かれたコード表面のうち、ゴムで被覆されている表面積の割合を目視で求めた。数値が大きい程、接着力が大きく、良好であることを示す。
Figure 2009078808
Figure 2009078808
(付記)
トランスポリブタジエン:(合成法)特開平11−158207号公報[0054]による。(つまり、オーブンで乾燥させておいた750mlのガラス製ボトルをブチルライナーと王冠で密封した。このボトルを冷却した後、乾燥ブタジエン/ヘキサンブレンド物(22.3重量%)を223グラム仕込んだ。このモノマー溶液にランタントリス[ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート](0.27ミリモル)を加えた。これに続いてn−BuLi(1.08ミリモル)を加えた。上記ボトルを65℃の水浴に2時間入れた。次に、溶媒を蒸発させることで白色粉末を得た。単離収率は87%であった。)
コバルト塩:ナフテン酸コバルト
加硫促進剤:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーDZ)
ビスマレイミド:N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド
スチールコード[従来品]:従来のブラスめっき(Cu63重量%、Zn37重量%、めっきの厚み少なくとも15nm)を施している。なお、表面のCuは15〜45アトミック%である。
スチールコード[発明品]:本発明の組成のブラスめっきを施している。(Cu63重量%、表層領域のCo0.5〜5.0アトミック%、最表層のCu15〜45アトミック%、めっきの平均厚み0.13〜0.3μm)
老化防止剤:N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製 ノクラック6C)
上表のように、ビスマレイミドを配合したコーティングゴムは、高硬度、低発熱性、耐劣化性、外観性、接着性が揃って比較的高く、トランスポリブタジエンと併用したコーティングゴムは、高硬度、低発熱性、耐劣化性がより良好で、さらに、めっきを改良したスチールコードとの複合体にあっては、接着性が一層向上した。
イオンプランテーションによってCoをブラスめっき表面に注入した時のめっき表面から内部への深さ方向Co含有量の分布を示す図である。 コバルト金属塩を含むコロイドに浸漬、乾燥して200℃でCoをめっき内部に熱拡散させた時のめっき表面から内部への深さ方向Co含有量の分布を示す図である。 ブラスめっきにおける各成分の深さ方向の濃度分布を示す図である。 ブラスめっき表面のCoの状態をX線光電子分光法で回折したときのスペクトル模式図である。

Claims (10)

  1. 天然ゴム及びジエン系合成ゴムのうち少なくとも一種からなるゴム成分にビスマレイミドを配合したゴム組成物とスチールコードとからなるゴム−スチールコード複合体を用いてなるタイヤであって、
    前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100重量部に対して前記ビスマレイミドを0.1〜5重量部配合してなり、
    前記スチールコードが、ブラスめっきを施されたスチールフィラメントの1本からなるモノフィラメントスチールコードまたはこれらスチールフィラメントを撚り合わせてなるマルチフィラメントスチールコードであり、
    前記ブラスめっきの平均厚みが0.13〜0.30μmである
    ことを特徴とするタイヤ。
  2. 前記ゴム組成物にさらにトランスポリブタジエンを、前記ゴム成分100重量部に対して、0.1〜15重量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記ゴム成分が天然ゴムを50重量%以上含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
  4. 前記ビスマレイミドが、下記の一般式[化1]で表されるビスマレイミドであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ。
    Figure 2009078808

    (式中、Rは炭素数6〜18の芳香族基、または炭素数7〜24のアルキル芳香族基を表し、xおよびyは0〜3のいずれかの整数をそれぞれ独立に表す。)
  5. 前記ビスマレイミドがN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドであることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ。
  6. 前記フィラメントの直径が0.40mm以下であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. 前記スチールコードが、周面に、最表層の銅濃度が15〜45アトミック%のブラスめっきを施されたスチールフィラメントの表面からフィラメント半径方向内側に15nmの深さまでの表層領域に、コバルト原子およびニッケル原子のうち少なくとも1種を含有してなるブラスめっき付きフィラメントの1本からなるモノフィラメントスチールコードまたはこれらスチールフィラメントを撚り合わせてなるマルチフィラメントスチールコードであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. 前記表層領域に含有されるコバルト原子およびニッケル原子の総量が0.1アトミック%以上かつ前記表層領域の銅原子含有量以下であることを特徴とする請求項7に記載のタイヤ。
  9. 前記表層領域に含有されるコバルト原子およびニッケル原子の総量が0.5〜5.0アトミック%であることを特徴とする請求項7または8に記載のタイヤ。
  10. 前記表層領域で、酸化物に含まれないコバルト原子およびニッケル原子が、前記表層領域に含有されるコバルト原子およびニッケル原子の総量の50アトミック%以上であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のタイヤ。
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