JP3955917B2 - 接着促進剤組成物およびこれを配合した接着性ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着促進剤組成物およびこれを配合した接着性ゴム組成物に関し、特に、黄銅めっきが施されたスチールコードと、該スチールコードのコーティングゴムとの接着促進に適した接着促進剤組成物およびこれを配合した接着性ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車タイヤ、コンベヤベルト等の性能を向上させるため、一般に、スチールコードを補強材として使用している。
かかるスチールコードには、ゴムとの接着力を高め、その補強効果を高めるために、黄銅メッキが施されている。
一方、ゴム組成物には、ゴムとスチールコードとの接着力を高めるため、接着促進剤として、有機酸のコバルト塩を配合している。
しかし、有機酸のコバルト塩を使用した場合には、加硫直後の接着性には優れるものの、耐熱老化接着性に劣るという不都合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、経時的に安定した高接着力を有する接着促進剤組成物およびこれを配合した接着性ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の接着促進剤組成物は以下の構成とする。
(1) 有機酸のコバルト塩と有機モリブデン化合物とを含有してなることを特徴とする。
(2) 有機酸のコバルト塩と有機モリブデン化合物とのモル比が1:100〜100:1であることを特徴とする。
また、本発明の接着性ゴム組成物は以下の構成とする。
(3) イ)天然ゴムおよび合成ゴムのうち少なくとも1種からなるゴム成分、
ロ)上記のいずれかの接着促進剤組成物、および
ハ)硫黄、
を配合してなることを特徴とする。
(4) ゴム成分100gに対して、上記いずれかの接着促進剤組成物がその成分である有機酸のコバルト塩中のコバルトに換算して1.0×10-4〜2.0×10-2モルかつ有機モリブデン化合物中のモリブデンに換算して1.0×10-6〜2.0×10-2モル配合されてなることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
〔1〕本発明の接着促進剤組成物については以下のとおりである。
a)本発明の有機酸のコバルト塩を構成する有機酸としては、とくに限定されず、飽和、不飽和、あるいは直鎖、分岐鎖を問わない。さらに、ナフテン環やベンゼン環等を有するかさ高い脂肪酸であってもよい。具体的には、ネオデカン酸、ステアリン酸、ナフテン酸、ロジン、トール油酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を例示できる。また、かかる有機酸は一部をホウ酸などのホウ素を含有する化合物と置換することもできる。
b)本発明の有機モリブデン化合物が有機酸のモリブデン塩である場合には、それを構成する有機酸は、上記と同様であるが、有機酸でない場合に、その化合物形態は特に限定されず、モリブデンジチオフォスフェート(Mo−DTP)あるいはモリブデンジチオカーバメート等のリンや窒素を含む有機モリブデン硫黄化合物であってもよい。
また、本発明の接着促進剤組成物は、上記成分の他に、含水無機塩を含有することも可能であり、その場合、含水無機塩としては、NiSO4 ・7H2 O、CoSO4 ・7H2 O、NaSO4 ・10H2 O、CaSO4 ・2H2 O、CuSO4 ・5H2 O、Al2 (SO4 )3 ・18H2 O、FeSO4 ・7H2 O、ZnSO4 ・7H2 O、MgSO4 ・7H2 O、Na2 S・9H2 O、Na3 PO4 ・12H2 O、NaH2 PO4 ・2H2 O、Na2 HPO4 ・12H2 O、Ni3 (PO4 )2 ・8H2 O、Mg3 (PO4 )2 ・8H2 O、Li3 PO4 ・5H2 O、Na4 P2 O7 ・10H2 O、Ni2 P2 O7 ・6H2 O、Mn4 (P2 O7 )3 ・14H2 O、CoCO3 ・6H2 O、NiCO3 ・6H2 O、Na2 CO3 ・10H2 O、Nd2 (CO3 )3 ・8H2 O、Na2 SO3 ・7H2 O、CaCl2 ・6H2 O、NiCl2 ・6H2 O、Na2 B4 O7 ・10H2 O、FeCl3 ・6H2 O、Na2 SiO3 ・9H2 O等を例示できる。このような含水無機塩を配合した場合、含まれるH2 Oが放出されることで、含水率の比較的低い合成ゴムを配合したり、空気が乾燥する冬季にあっても、水分を確保することができ、接着力の低下を回避できるものと考えられる。また、加硫直後の接着力、すなわち、初期接着力の向上に有効である。
さらに、本発明の接着促進剤組成物を構成する有機酸のコバルト塩と有機モリブデン化合物との割合は、モル比(Mo/Co)が0.01〜100であると好ましいが、0.01未満の場合は、モリブデンの効果が十分に得られず、100超過の場合は、効果には変化がなく、コストが高くなるからである。
また、接着促進剤組成物の成分として、含水無機塩を含有する場合には、含有されるH2 OとCoとのモル比(H2 O/Co)が0.1〜100であると好ましいが、これは、0.1未満では十分な効果が得られず、100超過では水分率が増えすぎ、接着性が落ちる傾向にあるからである。
【0006】
〔2〕本発明の接着性ゴム組成物については以下のとおりである。
ゴム成分としては、天然ゴムおよび合成ゴムのうち少なくとも1種が選択されるが、合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、好ましくは、臭素化ブチルゴム、パラメチルスチレン基を有するブチルゴム(具体的には、イソブチレンとp−ハロゲン化メチルスチレンとの共重合体等)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム等を例示できる。
なお、接着特性およびゴム破壊特性の観点から、ゴム成分のうち、天然ゴムおよび合成イソプレンゴムのうち少なくとも1種が50重量%以上であると好ましい。
また、接着促進剤組成物に関しては、上記のとおりであり、ゴム成分に対する配合割合は、接着促進剤組成物の配合量が、所定の下限値未満の場合は効果が得られず、所定の上限値を超えた場合は得られる効果に対してコストアップとなるからである。
さらに、硫黄は、ゴム成分100gに対して、3〜8gであることが好ましいが、これは、3g未満では、接着力発現の元となるCux Sの生成に充分な硫黄を供給できず、接着力が低下し、8g超過では、Cux Sが過剰に生成するため、肥大化したCux Sの凝集破壊が起こり、接着力が低下し、さらに、ゴム物性としての耐熱老化性も低下する傾向にあるからである。
【0007】
さらに、本発明では、上記成分の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。
具体的には、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、アロマオイル等の軟化剤、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム類などの加硫促進剤、酸化亜鉛等の加硫促進助剤、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン類などの老化防止剤等である。
これらのうち、カーボンブラックやシリカなどの充填剤は加硫ゴムの引っ張り強さ、破断強度、モジュラス、硬さなどの増加、および耐摩耗性、引っ張り抵抗性の向上などの補強剤として知られており、酸化亜鉛は脂肪酸と錯化合物を形成し、加硫促進効果を高める加硫促進助剤として知られている。
また、本発明の接着性ゴム組成物と接着されるスチールコードは、ゴムとの接着を良好にするために黄銅、亜鉛、あるいはこれにニッケルやコバルトを含有する合金でメッキ処理されていることが好ましく、とくに好ましくは黄銅めっき処理が施されていることである。スチールコードの黄銅メッキ中のCu含有率が75重量%以下、好ましくは55〜70重量%で、良好で安定な接着が得られる。なお、コードの撚り構造は特に制限されるものではない。
さらに、本発明にかかる接着剤組成物およびこれを配合した接着性ゴム組成物の製造法は、常法による。
【0008】
【実施例】
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明する。
表記1載の配合に従いゴム組成物を調製し、さらに、下記のようにしてコード補強ゴムを作製し、下記の方法により試験し、結果を同じ表中に記載する。
また、接着性は、ゴム練り日の季節、天候等に左右されるため、同じ配合であっても、ゴム練り日が異なれば、接着性は異なることがある。本実施例においては、各例共、同じゴム練り日である。
(1)引張試験
各ゴム組成物について、160℃×20分間の条件で加硫したサンプルを作製した後、JIS K 6301−1995に準拠して、引張試験を行い、100%伸長時の引張応力(M100)および切断時の伸び(EB ) を測定した。
(2)接着試験
黄銅メッキ(Cu:63重量%,Zn:37重量%)したスチールコード(1×5構造、素線径0.25mm)を12.5mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを両側から各ゴム組成物からなるシートでコーティングして、これを160℃×20分間の条件で加硫し、厚さ12.5mmのサンプルを作製し、下記の各条件にて、ASTM−D−2229に準拠して、スチールコードを引き抜き、その時の引き抜き力を測定した。これを、初期接着性、耐熱老化接着性、および耐湿熱老化接着性のそれぞれにつき、比較例1の値を100として、指数表示した。この数値が大きい程、良好であることを示す。
初期接着性
前記加硫の直後に測定した。
耐熱老化接着性
前記加硫後、空気中、100℃、7日間の条件で老化させた後、室温で測定した。
耐湿熱老化接着性
前記加硫後、70℃、湿度95%の恒温恒湿槽に100時間放置した後、室温で測定した。
【0009】
【表1】
*1:N330
*2:大内新興化学工業株式会社製、商品名 ノクラック6C
N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン
*3:大内新興化学工業株式会社製、商品名 ノクセラーDZ
N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*4:ローヌプーラン社製、商品名 マノボンド C22.5
【0010】
以上より、各実施例は、ゴム物性を低下させることなく、安定した接着性を高レベルで有することが分かる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によると、接着劣化することのない接着促進剤組成物およびこれを含有した接着性ゴム組成物を提供することができる。
従って、本発明は、特に、黄銅めっきが施されたスチールコードと、該スチールコードのコーティングゴムとの接着促進において利用できる。
また、本発明の接着性ゴム組成物を空気入りタイヤのベルトコーティングゴムとして使用した場合には、補強用のスチールコードとの接着力を安定して得られるため、ベルトの耐久性を向上させることができる。
Claims (4)
- 有機酸のコバルト塩と有機モリブデン化合物とを含有してなることを特徴とする接着促進剤組成物。
- 有機酸のコバルト塩と有機モリブデン化合物とのモル比が1:100〜100:1であることを特徴とする請求項1記載の接着促進剤組成物。
- イ)天然ゴムおよび合成ゴムのうち少なくとも1種からなるゴム成分、
ロ)請求項1または2記載の接着促進剤組成物、および
ハ)硫黄、
を配合してなることを特徴とする接着性ゴム組成物。 - ゴム成分100gに対して、請求項1または2記載の接着促進剤組成物がその成分である有機酸のコバルト塩中のコバルトに換算して1.0×10-4〜2.0×10-2モルかつ有機モリブデン化合物中のモリブデンに換算して1.0×10-6〜2.0×10-2モル配合されてなることを特徴とする請求項3記載の接着性ゴム組成物。
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1998
- 1998-03-04 JP JP05205898A patent/JP3955917B2/ja not_active Expired - Lifetime
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