JP2004210948A - ゴム組成物、その複合体及びそれを用いたタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】金属コード等へのゴムのインシュレーション或いはコーティング等のゴム加工時の加工作業性を高めて確実且つ容易なものとし、金属コードとの接着耐久性を向上させるゴム組成物、及びそのゴム組成物を用いたい金属の複合体の簡単な提供、及び、このようなゴム・コード複合体が用いられ、長時間の荷重走行や高速走行等のストレスが加えられ場合に接着不良等による故障等を招くことのない大型車両用ラジアルタイヤを提供。
【解決手段】本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分に耐熱架橋剤、特にヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及び/又はビスマレイミド系化合物とファクチスとを配合することを特徴とし、このようなゴム組成物を使用した金属・ゴム複合体、更には大型車両用ラジアルタイヤである。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分に耐熱架橋剤、特にヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及び/又はビスマレイミド系化合物とファクチスとを配合することを特徴とし、このようなゴム組成物を使用した金属・ゴム複合体、更には大型車両用ラジアルタイヤである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物、その複合体及びそれを用いたタイヤに関するものであり、特に、金属製の補強材で補強されるゴム製品、例えば、タイヤ等のスチールコード補強材の被覆用ゴム組成物として使用され、接着耐久性を向上させ、加工作業性を高めることができるゴム組成物、及びこれらのゴム・コード複合材を用いた大型車両用ラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
近年、自動車の足廻りを支えるタイヤに限らず、ベルト、ホース等のゴム製品には金属製の補強材が必要に応じて使用されている。このようなゴム製品にあっては、その補強材とゴム組成物との接着性が問題にされることがしばしばある。従来、補強材とゴム組成物との接着性を高める方法としては、補強材を種々の接着剤で処理した後、その補強材とゴム組成物とを接着する方法、ゴム組成物の加工工程中に各種配合剤と共に、接着剤を配合して未加硫状態の接着性ゴム組成物を調製し、このゴム組成物と補強材とを加硫接着する方法等が知られている。
【0003】
ところで、タイヤ等のベルト層において、そのスチールコードのコーティングゴム、及び1本、1本のコードの表面を直接被覆するゴムとして適用されるゴム組成物(例えば、特許文献1を参照)は、タイヤの耐久性に関与する重要なゴムである。このゴム組成物に求められる性能としては、(1)硬さ、(2)低発熱性、(3)スチールコードとの接着性、(4)耐劣化性などがある。
【0004】
従来、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、又はこれらの混合ゴムを主成分とするゴム組成物に、所定量の硫黄とともに、加硫促進剤としてN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを特定の範囲内で併用するスチールコード被覆用ゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このようなスチールコード被覆用ゴム組成物はスチール/ゴムの接着耐久性を向上させるものとして注目されている。
【0005】
また、スチールコードには従来からゴムとの接着力を高めるため、黄銅メッキを施し、そのゴム組成物には、接着促進剤として有機酸コバルト塩等を配合している。有機酸コバルト塩は、黄銅メッキ−ゴム接着系において、その接着界面層にCux Sの生成を促進する作用を有しているため、加硫直後の接着力が高くなるとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−32810号公報
【特許文献2】
特開平4−53845号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような接着性ゴム組成物の提案にもかかわらず、接着処理製品、例えば、タイヤ等のゴム・スチールコード複合体においては、近年タイヤの寿命が延び、タイヤに要求されるシビアリティーが増したことによる環境ストレス、例えば荷重走行、又は高速走行等での接着不良による故障或いは寿命が問題となる。
ゴムとスチールコードとの接着部或いは面の劣化は、硫化銅からなる接着層が熱を受け、メッキ中から溶け出した亜鉛と反応し、接着層中に硫化亜鉛の層が形成され、接着力を低下させる。そこで、接着部における耐熱寿命を向上させ、硫化銅の破壊を抑えて亜鉛の溶出を防止するために、硫黄を大量に配合することがなされている。
【0008】
しかし、ゴム組成物に硫黄を大量に配合することは、未加硫ゴムの状態で放置した場合に硫黄がブルームして作業性が著しく低下する。また、そのようなタイヤは耐破壊特性、耐熱老化性、疲労破壊性等が維持されず、タイヤの耐久性が低下する場合がある。
また、有機酸コバルトを増加させた場合、加硫後のタイヤ走行によって発生する熱により、Cux Sの生成を促進して接着界面層の肥大化を助長し、凝集破壊を起こし、その接着力は徐々に低下する。さらに、コバルトはゴム物性、特に、耐熱老化性には好ましくない特性を有する。よって、有機酸コバルト塩を多く用いた接着性ゴム組成物は、タイヤの耐久性向上に好ましくない。
更に、有機酸コバルト塩に代えて、亜鉛、ニッケル等の他の有機酸塩を配合した場合には、加硫直後の接着力が劣り、コバルトに代わる金属の有機酸塩は実用化に至っていない。さらに、今日、タイヤの耐久性に対する要求レベルは、益々高くなっている。これらの理由からゴム/金属コードなどの複合体の加工性、及び接着耐久性が望まれている。
【0009】
従って、金属コード等のゴムのインシュレーション或いはコーティング等のゴム加工時の作業性や耐老化性等を悪くすることなく、金属コードとの接着耐久性を向上させるゴム組成物、及びそのゴム組成物を用いたい金属の複合体の簡単な提供、及び、このようなゴム・コード複合体が用いられ、長時間の荷重走行や高速走行等のストレスが加えられた場合にも接着不良等による故障等を招くことのない大型車両用ラジアルタイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合すると、例えば、耐熱架橋剤としてヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物又はビスマレイミド系化合物を配合し、金属コードへのインシュレーション或いはコーティング等の加工作業を確実且つ簡単にすることができるゴム組成物が得られること、そして、そのゴムと金属コードとの接着性耐久性が優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明に係るゴム組成物、複合体及びそれを用いたタイヤは、以下の(1)乃至(8)に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
(1)ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【0012】
(2)前記耐熱架橋剤がヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及びビスマレイミド系化合物の群から少なくとも1種以上のものからなることを特徴とする前記(1)記載のゴム組成物。
(3)前記耐熱架橋剤とファクチスとの総配合量は、ゴム成分100質量部当たり、20質量部以下であることを特徴とする前記(1)記載のゴム組成物。
(4)前記ゴム成分100質量部に、耐熱架橋剤が0.1乃至3.0質量部の範囲で含み、且つ上記ファクチスが1乃至15質量部の範囲で含むことを特徴とする前記(3)記載のゴム組成物。
【0013】
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のゴム組成物を金属補強材に加硫接着させてなることを特徴とする金属・ゴムの複合体。
(6)前記補強材がコードであり、該コード表面に直接ゴム組成物を被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた前記コードの周囲に前記ゴム組成物を被覆して該コードを埋設してなる構造からなることを特徴とする前記(5)記載の複合体。
【0014】
(7)前記(6)記載の複合体をベルト層及び/又はプライ層に用いてなることを特徴とするタイヤ。
(8)前記(7)記載のタイヤが大型車両に用いることを特徴とする大型車両用ラジアルタイヤ。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る好ましい実施の形態を添付図面を参照して詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は本発明に係る金属・ゴムの複合体の断面概要図である。図2は本発明に係るタイヤの部分断面図である。
【0016】
先ず、本発明に係るゴム組成物について説明すると、本発明のゴム組成物は、特に金属製の補強材が設けられているタイヤ、ベルト、ホース等のゴム製品に使用され、例えば、金属コード等の補強材の表面を直接被覆し、或いは金属コード等が織物化した周囲を被覆するコーティングゴムとして使用される。特に、後述するタイヤ等の足廻りを支えるスチールコード等のゴムの補強材に加硫接着させるゴム組成物として望ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合してなる。本発明のゴム成分は特に限定されないが、後述するタイヤ等に使用する場合、イソプレンの重合物、例えば、一般に入手可能な天然ゴム及び合成イソプレンゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分であることが好ましい。
前記ゴム成分は、このように天然ゴムのみ、合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、特に、ジェン系ゴムが好ましく、中でもスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴムから少なくとも1種を適宜選択することができる。
特に、天然ゴムを主成分として用いることが望ましく、天然ゴムの割合は耐破壊性や補強材(スチールコード)との接着性の点でゴム分率(質量%)の50乃至100質量%であることが好ましく、特に60乃至100質量%が好ましい。前記天然ゴム以外の合成ゴム、特に合成イソプレンゴムは50質量%以下の割合でブレンド使用することが望ましく、50質量%を超える使用は耐破壊性やスチールコードとの接着を低下させ易くなる。
【0018】
前記耐熱架橋剤としては、ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物(以下、HTSという。)及び/又はビスマレイミド系化合物(以下、BMIという。)であることが望ましい。
HTSは、硫黄架橋と比較して熱的に安定な架橋構造を与える耐熱架橋剤である。HTSは、接着の際に熱によりラジカル開裂し、構造式;
[・S−(CH2)6−S・]のラジカルを発生し、金属の表面およびポリマー中の二重結合と反応する。
【0019】
また、前記耐熱架橋剤としての好適なBMIとしては、N,N′−1,2−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン等を例示できるがこれ等に限る必要はない。本発明で特に好ましいのは、N,N’−(ジフェニルメタン)ビスマレイミドである。
【0020】
ゴム組成物中に、HTS及びBMIを1種以上含むことができる。これらかななる耐熱架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3.0質量部が好ましく、特に、0.5乃至2.0質量部であることが好ましい。HTS及び/又はBMIの配合量が3.0質量部を超えると、耐亀裂性が低下し、加硫後のゴム中にHTS又はBMIが未反応のまま残存し、安定な架橋形態が失われ、耐熱老化性を高めることができない。一方、0.1質量部未満では、長時間加硫による耐熱性の低下の抑制効果が十分にでなくなる。
【0021】
本発明のゴム組成物に配合される前記ファクチスは、通常、未加硫時ゴムに軟化剤としても作用する。従って、ファクチスはゴム成分100質量部当たり、1.0乃至15質量部の範囲で配合することが好ましい。特に、3.0乃至10質量部の範囲で配合することが好ましい。ファクチスが15質量部の範囲を超えると、粘度低下が大きくなり弾性率や耐久性の低下を招く場合がある。ファクチスが1質量部未満では、スコーチムーニー粘度の値が上昇せず、加工時、特に、インシュレーション時の加工性が低下してくる。
【0022】
本発明に係るゴム組成物は、上述した配合剤の他にゴム工業で通常使用されている種々の成分を含むことができる。例えば、カーボンブラック、シリカ等の補強性充填剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、タルク等の無機充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、プロセスオイル等の加工助剤、可塑剤、オゾン劣化防止剤などを添加することができる。
また、ゴム組成物には有機酸コバルト塩を適量添加してもよい。ゴム成分100質量部に対して有機コバルト塩を0.1乃至10質量部の範囲で添加することができる。尚、加硫促進剤としては、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤、TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤、並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤を挙げることができる。
【0023】
本発明のゴム組成物は、バンバリーミキサー等の密閉式混練機、オープンロール等の混練機を用いて混練することによって得られ、成形加工後、加硫を行い、前記特性を必要とするタイヤ並びに各種工業用品に用いることができる。この場合、その加硫後、100%伸長時の引張応力(JIS K6301−1995に準拠した測定応力)が3.0MPa(メガパスカル)以上、好ましくは3.0乃至4.0MPaの範囲であることが良い。
このようなゴム組成物にあっては加硫後に金属補強材との間の接着力は十分に維持される。
【0024】
次に、本発明に係る金属及びゴムの複合体について説明する。
本発明の複合体は、前記ゴム組成物を金属補強材に加硫接着させてなるものである。
補強材としての金属は、通常、鉄、銅、アルミニウム、SUS、真鍮等を挙げることができるが本発明はこれに限るものではない。
また補強材は、そのゴム製品によってその形状を異ならせることができ、特に制限されるものではなく、例えば、後述するタイヤにあってはスチールコード、特に、ブラスコートされ、加硫ゴムとの接着性が高められたスチールコードが好ましい。そのコーティング処理の方法は特に制限されず、通常用いる方法を適宜用いることができ、例えば、メッキ処理法、各種CVD法、PVD法などを挙げることができる。
またタイヤ等に使用するコードであれば、1本の線材コード、或いは複数の金属フィラメントを撚り合わせた構成のコードでも良い。また、このようなコードを複数本並べて、或いは織物とした平面状のスチールコードとしても良い、特に本発明において制限されるものではない。
【0025】
本発明の複合体にあっては、金属補強材が例えばコードであれば、そのコード表面に直接ゴム組成物を被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた前記コードの周囲に前記ゴム組成物を被覆して該コードを埋設してなる構造であることを特徴とすることができる。
図1に示すように、スチールコード21がほぼ平面状に配される場合、本発明のゴム組成物からなるインシュレーションゴム22はコードの表面を直接被覆した構造をとることができる。この場合のインシュレーションゴム(インシュレートしたゴム)22の厚みは0.1乃至3.0mmの範囲、特に0.5乃至2.0の範囲であることが望ましい。
また、本発明のゴム組成物からなるコーティングゴム(またカレンダー成形などでも良い。)23は、ほぼ平面状に複数本並べられたコード1の周囲を被覆した構造をとることができる。尚、このコーティングゴム3はインシュレーションゴムなしの直接コード表面に接する構造をとることもできる。
【0026】
本発明に係るタイヤ特に大型車両に用いるタイヤは、これらの複合体を含み、そのベルト層及び/又はプライ層に用いることを特徴とすることができる。
即ち、図2に示す実施態様の大型車両用のラジアルタイヤ1にあっては、ビードコア2が埋設された一対のビード部3と、これらビード部3からほぼ半径方向外側に向かって延びる一対のサイドウォール部4と、これらサイドウォール部4の半径方向外端同士を連ねるトレッド部5とを有している。タイヤ1は一方のビード部3から他方のビード部3まで延びるカーカス層8によって補強されている。また、トレッドの内側にはベルト層13が配設されている。カーカス層8はタイヤの子午線方向に実質平行に配された有機繊維、或いは金属のコードで補強されたプライ12の一層からなり、ベルト層13は実質平行に配置された前記スチールコードで補強され、前記ゴム組成物で被覆されたプライ12の多層からなる。
【0027】
このように構成される本発明に係るタイヤ1にあっては、スチールコードに対する接着性能及び熱耐久性が向上する。また、加工作業、特にインシュレートなどによるゴムの被覆作業が容易にでき、接着性能が低下しない。このようなことから、タイヤは走行中、荷重走行中等の複合体の接着不良による故障等を起こし難い。尚、本発明のタイヤの内部には空気のほかに、窒素等の不活性ガスを充填することができる。
【0028】
【実施例】
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
【0029】
実施例1乃至4、比較例1乃至6
天然ゴム(NR)及びイソプレンゴム(IR)、カーボンブラック(N330)、亜鉛華、老化防止剤(商品名:SANTOFLEX 6PPD)、有機酸コバルト塩(バーサチック酸コバルト)、加硫促進剤(DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド:商品名“ノクセラーDZG”大内新興科学製)、不溶性硫黄、2号スピンドル(商品名“ダイアナプロセスオイル”出光興産社製)、BMI(N,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド:三井化学社製)、HTS(大塚化学社製)、及びファクチス(商品名:“黒サブ”天満サブ化学工業社製)を使用して、バンバリーミキサーを使用して下記表1、及び表2に示す各組成の質量部を混練りし、未加硫のゴム組成物を得、以下の方法でのゴム組成物の加硫前、加硫後の特性及びその複合体を評価した。その結果を表3に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
試験評価の方法は以下のとおりである。
黄銅鍍金(Cu:63wt%、Zn:37wt%)したスチールコード(1×5×0.25mm(素線径))を1.25mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から各ゴム組成物でコーティングして、これを温度160℃×15分間の条件で加硫し、幅12.5mmの実施及び比較サンプルを作成した。
【0033】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300−1994に準じ、130℃にてムーニー粘度[ML1+4 /130℃]を測定した。この値は小さいほど加工性に優れている。
(2)スコーチ
早期加硫を判断する評価(JIS K6300)として、測定温度130℃における最低ムーニー粘度値とそれぞれの上昇値から測定した。
(3)耐熱性の評価を以下のように行った。
耐熱性の指標として、JIS K 6301に準拠して、加硫直後の引張強さ(TB)Mpa、伸び(EB)%、及び引張張力(M300)MPaを測定する。
(4)初期接着性の評価
初期接着性は、ASTM−D−2229に準拠して各サンプルからスチールコードを引き抜きスチールコードに付着しているゴム量を各接着性の指標とした。初期接着性は前記加硫直後の接着性を測定した。
尚、実施例2の初期接着性のゴム付着量を100の指標として、他の実施例及び比較例の値をその指標に合わせて数値化して示した(数値が大きいほど、接着性が良好となる)。その結果を表2に示した。
【0034】
【表3】
【0035】
表3の結果が示すように、実施例1乃至4のように耐熱架橋剤とファクチスを組み合わせることにより、初期接着性を十分に高めながら、スコーチムーニー粘度が良好となるため加工性、例えば、インシュレーションゴムとしての加工性を十分発揮することが判る。更に、タイヤにあって接着性が十分に維持されることが判る。しかしながら、比較例1乃至4に示されるように、ファクチス及び本発明の耐熱架橋剤を欠く場合は初期接着性も劣りその接着耐久性が十分に発揮されなくなることが判る。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るゴム組成物によれば、ゴム成分に耐熱架橋剤、特にヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及び/又はビスマレイミド系化合物とファクチスとを配合することにより、金属コード等へのゴムのインシュレーション或いはコーティング等のゴム加工時の加工作業性を高めて確実且つ容易なものとし、耐熱老化性等を悪くすることなく金属コードとの接着耐久性を向上させることができる。また、このようなゴム組成物と補強材との複合体は、例えば、タイヤのベルト層、プライ層等に簡単に用いることにより、タイヤ、特に大型荷重用ラジアルタイヤにあっては故障等を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る金属・ゴムの複合体の断面説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る空気入りタイヤの半部分断面概略図である。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 ビードコア
3 ビード部
4 サイドウォール部
5 トレッド部
8 カーカス層
12 プライ
13 ベルト層
21 金属コード
22 インシュレーションゴム
23 コーティングゴム
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物、その複合体及びそれを用いたタイヤに関するものであり、特に、金属製の補強材で補強されるゴム製品、例えば、タイヤ等のスチールコード補強材の被覆用ゴム組成物として使用され、接着耐久性を向上させ、加工作業性を高めることができるゴム組成物、及びこれらのゴム・コード複合材を用いた大型車両用ラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
近年、自動車の足廻りを支えるタイヤに限らず、ベルト、ホース等のゴム製品には金属製の補強材が必要に応じて使用されている。このようなゴム製品にあっては、その補強材とゴム組成物との接着性が問題にされることがしばしばある。従来、補強材とゴム組成物との接着性を高める方法としては、補強材を種々の接着剤で処理した後、その補強材とゴム組成物とを接着する方法、ゴム組成物の加工工程中に各種配合剤と共に、接着剤を配合して未加硫状態の接着性ゴム組成物を調製し、このゴム組成物と補強材とを加硫接着する方法等が知られている。
【0003】
ところで、タイヤ等のベルト層において、そのスチールコードのコーティングゴム、及び1本、1本のコードの表面を直接被覆するゴムとして適用されるゴム組成物(例えば、特許文献1を参照)は、タイヤの耐久性に関与する重要なゴムである。このゴム組成物に求められる性能としては、(1)硬さ、(2)低発熱性、(3)スチールコードとの接着性、(4)耐劣化性などがある。
【0004】
従来、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、又はこれらの混合ゴムを主成分とするゴム組成物に、所定量の硫黄とともに、加硫促進剤としてN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを特定の範囲内で併用するスチールコード被覆用ゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このようなスチールコード被覆用ゴム組成物はスチール/ゴムの接着耐久性を向上させるものとして注目されている。
【0005】
また、スチールコードには従来からゴムとの接着力を高めるため、黄銅メッキを施し、そのゴム組成物には、接着促進剤として有機酸コバルト塩等を配合している。有機酸コバルト塩は、黄銅メッキ−ゴム接着系において、その接着界面層にCux Sの生成を促進する作用を有しているため、加硫直後の接着力が高くなるとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−32810号公報
【特許文献2】
特開平4−53845号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような接着性ゴム組成物の提案にもかかわらず、接着処理製品、例えば、タイヤ等のゴム・スチールコード複合体においては、近年タイヤの寿命が延び、タイヤに要求されるシビアリティーが増したことによる環境ストレス、例えば荷重走行、又は高速走行等での接着不良による故障或いは寿命が問題となる。
ゴムとスチールコードとの接着部或いは面の劣化は、硫化銅からなる接着層が熱を受け、メッキ中から溶け出した亜鉛と反応し、接着層中に硫化亜鉛の層が形成され、接着力を低下させる。そこで、接着部における耐熱寿命を向上させ、硫化銅の破壊を抑えて亜鉛の溶出を防止するために、硫黄を大量に配合することがなされている。
【0008】
しかし、ゴム組成物に硫黄を大量に配合することは、未加硫ゴムの状態で放置した場合に硫黄がブルームして作業性が著しく低下する。また、そのようなタイヤは耐破壊特性、耐熱老化性、疲労破壊性等が維持されず、タイヤの耐久性が低下する場合がある。
また、有機酸コバルトを増加させた場合、加硫後のタイヤ走行によって発生する熱により、Cux Sの生成を促進して接着界面層の肥大化を助長し、凝集破壊を起こし、その接着力は徐々に低下する。さらに、コバルトはゴム物性、特に、耐熱老化性には好ましくない特性を有する。よって、有機酸コバルト塩を多く用いた接着性ゴム組成物は、タイヤの耐久性向上に好ましくない。
更に、有機酸コバルト塩に代えて、亜鉛、ニッケル等の他の有機酸塩を配合した場合には、加硫直後の接着力が劣り、コバルトに代わる金属の有機酸塩は実用化に至っていない。さらに、今日、タイヤの耐久性に対する要求レベルは、益々高くなっている。これらの理由からゴム/金属コードなどの複合体の加工性、及び接着耐久性が望まれている。
【0009】
従って、金属コード等のゴムのインシュレーション或いはコーティング等のゴム加工時の作業性や耐老化性等を悪くすることなく、金属コードとの接着耐久性を向上させるゴム組成物、及びそのゴム組成物を用いたい金属の複合体の簡単な提供、及び、このようなゴム・コード複合体が用いられ、長時間の荷重走行や高速走行等のストレスが加えられた場合にも接着不良等による故障等を招くことのない大型車両用ラジアルタイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合すると、例えば、耐熱架橋剤としてヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物又はビスマレイミド系化合物を配合し、金属コードへのインシュレーション或いはコーティング等の加工作業を確実且つ簡単にすることができるゴム組成物が得られること、そして、そのゴムと金属コードとの接着性耐久性が優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明に係るゴム組成物、複合体及びそれを用いたタイヤは、以下の(1)乃至(8)に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
(1)ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【0012】
(2)前記耐熱架橋剤がヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及びビスマレイミド系化合物の群から少なくとも1種以上のものからなることを特徴とする前記(1)記載のゴム組成物。
(3)前記耐熱架橋剤とファクチスとの総配合量は、ゴム成分100質量部当たり、20質量部以下であることを特徴とする前記(1)記載のゴム組成物。
(4)前記ゴム成分100質量部に、耐熱架橋剤が0.1乃至3.0質量部の範囲で含み、且つ上記ファクチスが1乃至15質量部の範囲で含むことを特徴とする前記(3)記載のゴム組成物。
【0013】
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のゴム組成物を金属補強材に加硫接着させてなることを特徴とする金属・ゴムの複合体。
(6)前記補強材がコードであり、該コード表面に直接ゴム組成物を被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた前記コードの周囲に前記ゴム組成物を被覆して該コードを埋設してなる構造からなることを特徴とする前記(5)記載の複合体。
【0014】
(7)前記(6)記載の複合体をベルト層及び/又はプライ層に用いてなることを特徴とするタイヤ。
(8)前記(7)記載のタイヤが大型車両に用いることを特徴とする大型車両用ラジアルタイヤ。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る好ましい実施の形態を添付図面を参照して詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は本発明に係る金属・ゴムの複合体の断面概要図である。図2は本発明に係るタイヤの部分断面図である。
【0016】
先ず、本発明に係るゴム組成物について説明すると、本発明のゴム組成物は、特に金属製の補強材が設けられているタイヤ、ベルト、ホース等のゴム製品に使用され、例えば、金属コード等の補強材の表面を直接被覆し、或いは金属コード等が織物化した周囲を被覆するコーティングゴムとして使用される。特に、後述するタイヤ等の足廻りを支えるスチールコード等のゴムの補強材に加硫接着させるゴム組成物として望ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合してなる。本発明のゴム成分は特に限定されないが、後述するタイヤ等に使用する場合、イソプレンの重合物、例えば、一般に入手可能な天然ゴム及び合成イソプレンゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分であることが好ましい。
前記ゴム成分は、このように天然ゴムのみ、合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、特に、ジェン系ゴムが好ましく、中でもスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴムから少なくとも1種を適宜選択することができる。
特に、天然ゴムを主成分として用いることが望ましく、天然ゴムの割合は耐破壊性や補強材(スチールコード)との接着性の点でゴム分率(質量%)の50乃至100質量%であることが好ましく、特に60乃至100質量%が好ましい。前記天然ゴム以外の合成ゴム、特に合成イソプレンゴムは50質量%以下の割合でブレンド使用することが望ましく、50質量%を超える使用は耐破壊性やスチールコードとの接着を低下させ易くなる。
【0018】
前記耐熱架橋剤としては、ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物(以下、HTSという。)及び/又はビスマレイミド系化合物(以下、BMIという。)であることが望ましい。
HTSは、硫黄架橋と比較して熱的に安定な架橋構造を与える耐熱架橋剤である。HTSは、接着の際に熱によりラジカル開裂し、構造式;
[・S−(CH2)6−S・]のラジカルを発生し、金属の表面およびポリマー中の二重結合と反応する。
【0019】
また、前記耐熱架橋剤としての好適なBMIとしては、N,N′−1,2−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン等を例示できるがこれ等に限る必要はない。本発明で特に好ましいのは、N,N’−(ジフェニルメタン)ビスマレイミドである。
【0020】
ゴム組成物中に、HTS及びBMIを1種以上含むことができる。これらかななる耐熱架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3.0質量部が好ましく、特に、0.5乃至2.0質量部であることが好ましい。HTS及び/又はBMIの配合量が3.0質量部を超えると、耐亀裂性が低下し、加硫後のゴム中にHTS又はBMIが未反応のまま残存し、安定な架橋形態が失われ、耐熱老化性を高めることができない。一方、0.1質量部未満では、長時間加硫による耐熱性の低下の抑制効果が十分にでなくなる。
【0021】
本発明のゴム組成物に配合される前記ファクチスは、通常、未加硫時ゴムに軟化剤としても作用する。従って、ファクチスはゴム成分100質量部当たり、1.0乃至15質量部の範囲で配合することが好ましい。特に、3.0乃至10質量部の範囲で配合することが好ましい。ファクチスが15質量部の範囲を超えると、粘度低下が大きくなり弾性率や耐久性の低下を招く場合がある。ファクチスが1質量部未満では、スコーチムーニー粘度の値が上昇せず、加工時、特に、インシュレーション時の加工性が低下してくる。
【0022】
本発明に係るゴム組成物は、上述した配合剤の他にゴム工業で通常使用されている種々の成分を含むことができる。例えば、カーボンブラック、シリカ等の補強性充填剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、タルク等の無機充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、プロセスオイル等の加工助剤、可塑剤、オゾン劣化防止剤などを添加することができる。
また、ゴム組成物には有機酸コバルト塩を適量添加してもよい。ゴム成分100質量部に対して有機コバルト塩を0.1乃至10質量部の範囲で添加することができる。尚、加硫促進剤としては、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤、TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤、並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤を挙げることができる。
【0023】
本発明のゴム組成物は、バンバリーミキサー等の密閉式混練機、オープンロール等の混練機を用いて混練することによって得られ、成形加工後、加硫を行い、前記特性を必要とするタイヤ並びに各種工業用品に用いることができる。この場合、その加硫後、100%伸長時の引張応力(JIS K6301−1995に準拠した測定応力)が3.0MPa(メガパスカル)以上、好ましくは3.0乃至4.0MPaの範囲であることが良い。
このようなゴム組成物にあっては加硫後に金属補強材との間の接着力は十分に維持される。
【0024】
次に、本発明に係る金属及びゴムの複合体について説明する。
本発明の複合体は、前記ゴム組成物を金属補強材に加硫接着させてなるものである。
補強材としての金属は、通常、鉄、銅、アルミニウム、SUS、真鍮等を挙げることができるが本発明はこれに限るものではない。
また補強材は、そのゴム製品によってその形状を異ならせることができ、特に制限されるものではなく、例えば、後述するタイヤにあってはスチールコード、特に、ブラスコートされ、加硫ゴムとの接着性が高められたスチールコードが好ましい。そのコーティング処理の方法は特に制限されず、通常用いる方法を適宜用いることができ、例えば、メッキ処理法、各種CVD法、PVD法などを挙げることができる。
またタイヤ等に使用するコードであれば、1本の線材コード、或いは複数の金属フィラメントを撚り合わせた構成のコードでも良い。また、このようなコードを複数本並べて、或いは織物とした平面状のスチールコードとしても良い、特に本発明において制限されるものではない。
【0025】
本発明の複合体にあっては、金属補強材が例えばコードであれば、そのコード表面に直接ゴム組成物を被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた前記コードの周囲に前記ゴム組成物を被覆して該コードを埋設してなる構造であることを特徴とすることができる。
図1に示すように、スチールコード21がほぼ平面状に配される場合、本発明のゴム組成物からなるインシュレーションゴム22はコードの表面を直接被覆した構造をとることができる。この場合のインシュレーションゴム(インシュレートしたゴム)22の厚みは0.1乃至3.0mmの範囲、特に0.5乃至2.0の範囲であることが望ましい。
また、本発明のゴム組成物からなるコーティングゴム(またカレンダー成形などでも良い。)23は、ほぼ平面状に複数本並べられたコード1の周囲を被覆した構造をとることができる。尚、このコーティングゴム3はインシュレーションゴムなしの直接コード表面に接する構造をとることもできる。
【0026】
本発明に係るタイヤ特に大型車両に用いるタイヤは、これらの複合体を含み、そのベルト層及び/又はプライ層に用いることを特徴とすることができる。
即ち、図2に示す実施態様の大型車両用のラジアルタイヤ1にあっては、ビードコア2が埋設された一対のビード部3と、これらビード部3からほぼ半径方向外側に向かって延びる一対のサイドウォール部4と、これらサイドウォール部4の半径方向外端同士を連ねるトレッド部5とを有している。タイヤ1は一方のビード部3から他方のビード部3まで延びるカーカス層8によって補強されている。また、トレッドの内側にはベルト層13が配設されている。カーカス層8はタイヤの子午線方向に実質平行に配された有機繊維、或いは金属のコードで補強されたプライ12の一層からなり、ベルト層13は実質平行に配置された前記スチールコードで補強され、前記ゴム組成物で被覆されたプライ12の多層からなる。
【0027】
このように構成される本発明に係るタイヤ1にあっては、スチールコードに対する接着性能及び熱耐久性が向上する。また、加工作業、特にインシュレートなどによるゴムの被覆作業が容易にでき、接着性能が低下しない。このようなことから、タイヤは走行中、荷重走行中等の複合体の接着不良による故障等を起こし難い。尚、本発明のタイヤの内部には空気のほかに、窒素等の不活性ガスを充填することができる。
【0028】
【実施例】
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
【0029】
実施例1乃至4、比較例1乃至6
天然ゴム(NR)及びイソプレンゴム(IR)、カーボンブラック(N330)、亜鉛華、老化防止剤(商品名:SANTOFLEX 6PPD)、有機酸コバルト塩(バーサチック酸コバルト)、加硫促進剤(DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド:商品名“ノクセラーDZG”大内新興科学製)、不溶性硫黄、2号スピンドル(商品名“ダイアナプロセスオイル”出光興産社製)、BMI(N,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド:三井化学社製)、HTS(大塚化学社製)、及びファクチス(商品名:“黒サブ”天満サブ化学工業社製)を使用して、バンバリーミキサーを使用して下記表1、及び表2に示す各組成の質量部を混練りし、未加硫のゴム組成物を得、以下の方法でのゴム組成物の加硫前、加硫後の特性及びその複合体を評価した。その結果を表3に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
試験評価の方法は以下のとおりである。
黄銅鍍金(Cu:63wt%、Zn:37wt%)したスチールコード(1×5×0.25mm(素線径))を1.25mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から各ゴム組成物でコーティングして、これを温度160℃×15分間の条件で加硫し、幅12.5mmの実施及び比較サンプルを作成した。
【0033】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300−1994に準じ、130℃にてムーニー粘度[ML1+4 /130℃]を測定した。この値は小さいほど加工性に優れている。
(2)スコーチ
早期加硫を判断する評価(JIS K6300)として、測定温度130℃における最低ムーニー粘度値とそれぞれの上昇値から測定した。
(3)耐熱性の評価を以下のように行った。
耐熱性の指標として、JIS K 6301に準拠して、加硫直後の引張強さ(TB)Mpa、伸び(EB)%、及び引張張力(M300)MPaを測定する。
(4)初期接着性の評価
初期接着性は、ASTM−D−2229に準拠して各サンプルからスチールコードを引き抜きスチールコードに付着しているゴム量を各接着性の指標とした。初期接着性は前記加硫直後の接着性を測定した。
尚、実施例2の初期接着性のゴム付着量を100の指標として、他の実施例及び比較例の値をその指標に合わせて数値化して示した(数値が大きいほど、接着性が良好となる)。その結果を表2に示した。
【0034】
【表3】
【0035】
表3の結果が示すように、実施例1乃至4のように耐熱架橋剤とファクチスを組み合わせることにより、初期接着性を十分に高めながら、スコーチムーニー粘度が良好となるため加工性、例えば、インシュレーションゴムとしての加工性を十分発揮することが判る。更に、タイヤにあって接着性が十分に維持されることが判る。しかしながら、比較例1乃至4に示されるように、ファクチス及び本発明の耐熱架橋剤を欠く場合は初期接着性も劣りその接着耐久性が十分に発揮されなくなることが判る。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るゴム組成物によれば、ゴム成分に耐熱架橋剤、特にヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及び/又はビスマレイミド系化合物とファクチスとを配合することにより、金属コード等へのゴムのインシュレーション或いはコーティング等のゴム加工時の加工作業性を高めて確実且つ容易なものとし、耐熱老化性等を悪くすることなく金属コードとの接着耐久性を向上させることができる。また、このようなゴム組成物と補強材との複合体は、例えば、タイヤのベルト層、プライ層等に簡単に用いることにより、タイヤ、特に大型荷重用ラジアルタイヤにあっては故障等を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る金属・ゴムの複合体の断面説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る空気入りタイヤの半部分断面概略図である。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 ビードコア
3 ビード部
4 サイドウォール部
5 トレッド部
8 カーカス層
12 プライ
13 ベルト層
21 金属コード
22 インシュレーションゴム
23 コーティングゴム
Claims (8)
- ゴム成分に耐熱架橋剤とファクチスとを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
- 前記耐熱架橋剤がヘキサメチレン−1,6−ビス(チオ硫酸ナトリウム)水和物及びビスマレイミド系化合物の群から少なくとも1種以上のものからなることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記耐熱架橋剤とファクチスとの総配合量は、ゴム成分100質量部当たり、20質量部以下であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記ゴム成分100質量部に、耐熱架橋剤が0.1乃至3.0質量部の範囲で含み、且つ上記ファクチスが1乃至15質量部の範囲で含むことを特徴とする請求項3記載のゴム組成物。
- 前記請求項1乃至4のいずれかに記載のゴム組成物を金属補強材に加硫接着させてなることを特徴とする金属・ゴムの複合体。
- 前記補強材がコードであり、該コード表面に直接ゴム組成物を被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた前記コードの周囲に前記ゴム組成物を被覆して該コードを埋設してなる構造からなることを特徴とする請求項5記載の複合体。
- 前記請求項6記載の複合体をベルト層及び/又はプライ層に用いてなることを特徴とするタイヤ。
- 前記請求項7記載のタイヤが大型車両に用いることを特徴とする大型車両用ラジアルタイヤ。
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