JP2009078339A - 乾式バレル研磨用メディア及び乾式バレル研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】乾式バレル研磨用メディアは、有機繊維質からなる母材と、40℃における動粘度が30cst以下の脂肪酸エステルと、この脂肪酸エステルで溶解されるワックス類と、この溶解したワックス類で母材の表面にコーティングされる砥材とを含む。40℃における動粘度が30cst以下の脂肪酸エステルであれば、研磨対象ワークに所定の艶を付与でき、かつコーティング均一化に要する時間が短縮される。
【選択図】図1
Description
これに鑑み、ケロシンの代わりに、例えば、植物油(ナタネ油、ヤシ油、ひまわり油、らっかせい油等)や高級アルコール(オレイルアルコール等)のような比較的蒸気になり難い溶剤を用いることが検討された。しかしこれらは、コーティング工程で長時間を要する等し、作業効率が悪いという事情があった。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記脂肪酸エステルの引火点は、100℃以上であるところに特徴を有する。
40℃における動粘度が30cst以下の脂肪酸エステルによってワックス類が溶解されることにより、ワックス類及び砥材が母材の表面に均一にコーティングされるから、研磨対象ワークに所定の艶を付与できる。また、従来と違ってケロシン(灯油)の蒸発工程を省略できるとともに、高級アルコールを用いる場合に比べてコーティング均一化に要する時間も短縮されるから、作業性が良好となる。
40℃における動粘度が10cst以下の脂肪酸エステルを用いることにより、コーティング均一化に要する時間がいっそう短縮される。
<請求項3の発明>
脂肪酸エステルの引火点が100℃以上であるから、製造現場で脂肪酸エステルが蒸発して引火等するのを回避でき、作業環境が良好となる。
オレイン酸メチルエステルを用いることにより、コーティング均一化に要する時間を大幅に短縮できるとともに、優れた艶出し効果を得ることができ、かつ、研磨対象ワークに所定の光沢を付与でき、しかも光沢度のバラツキを小さく抑えることができる。
例えば、高級アルコールでワックス類を溶解させてメディアを調製する場合には、加熱によって高級アルコールの水酸基とワックス類中の脂肪酸とが脱水反応を起こして水を生成する可能性があるため、密閉空間内では生成される水の影響によって研磨対象ワークの艶が出にくいという事情がある。その点、本発明によれば、脱水反応を起こさない脂肪酸エステルを用いてワックス類を溶解させているから、密閉空間内でバレル研磨を行っても、研磨対象ワークに所定の艶を付与できる。
(メディアの調製)
カルナバワックス1%、キャンデリラワックス1%、牛脂1%(以上ワックス類)をオレイン酸メチルエステル1%に溶解させてワックス類溶液を調製した。これと並行してコーン91%と酸化アルミニウム5%を転動ミキサーに投入し、約50℃に加熱しながら前記ワックス類溶液を徐々に添加して、コーンの表面にワックス類及び酸化アルミニウムが均一にコーティングされたメディアを得た。
得られたメディアは、図1にその概略を示す乾式バレル研磨機10に投入され、研磨対象ワークの研磨に用いられた。研磨後、得られた被研磨試料は後述する評価試験に付された。
ここで乾式バレル研磨機10について説明すると、これは、公転するターレット11に複数のバレル槽12が自転可能に取り付けられたものであって、各バレル槽12内に、研磨対象ワーク、上記メディアを投入して密閉状態となし、その状態から稼動されることで、ターレット11が図示時計回りに公転するとともに、各バレル槽12が図示反時計回りに自転し、その遠心力等によって研磨を行うというものである。
研磨対象ワークとしては、真鍮試験片と真珠の2種類が用意された。具体的な研磨条件は次の通りであった。
研磨対象ワーク:真鍮試験片
乾式バレル研磨機:株式会社チップトン製HS−R30(190rpm)
バレル槽容量:7.1L
研磨時間:60分
メディア量:4.2L
−研磨条件2−
研磨対象ワーク:真珠φ7
乾式バレル研磨機:株式会社チップトン製HS−R40(174rpm)
バレル槽容量:10L
研磨時間:30分
メディア量:6.0L
オレイン酸メチルエステル1%をパルミチン酸オクチルエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<実施例3>
オレイン酸メチルエステル1%をアジピン酸ジオクチルエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<実施例4>
オレイン酸メチルエステル1%をセバシン酸ジオクチルエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<実施例5>
オレイン酸メチルエステル1%をトリカプリン酸トリメチロールプロパンエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<実施例6>
オレイン酸メチルエステル1%をテトラエナント酸ペンタエリスリトールエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
オレイン酸メチルエステル1%をトリラウリン酸トリメチロールプロパンエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<比較例2>
オレイン酸メチルエステル1%をトリオレイン酸トリメチロールプロパンエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<比較例3>
オレイン酸メチルエステル1%をテトラオレイン酸ペンタエリスリトールエステル1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<比較例4>
オレイン酸メチルエステル1%をオレイルアルコール1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<比較例5>
オレイン酸メチルエステル1%をラウリルアルコール1%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
<比較例6>
オレイン酸メチルエステル1%を灯油1%に変更し、かつメディアの調製過程で灯油の蒸発工程を加えた以外は、実施例1と同様の手順で、メディア及び被研磨試料を得た。
実施例1〜6、及び比較例1〜6によって得られた被研磨試料に対し、艶、光沢度、光沢度のバラツキを評価した。あわせて、メディアの調製に要する時間を測定した。
◎:極めて良好
○:良好
△:不良ではないが良好より劣る
また、光沢度のバラツキは、上記光沢度の測定結果に基づき、10回研磨時における光沢度の最大値と最小値の差から算出した。
以下、表2を基に考察する。
灯油でワックス類を溶解させた従来品に相当する比較例6は、真珠に極めて良好な艶を付与するものであった。しかし、このものは、灯油の引火点が100℃未満であることに起因し、研磨工程に先立って灯油の蒸発工程を別に必要とし、他に比べてメディアの調製時間が長くなった。その点、実施例1〜6、及び比較例1〜5は、いずれも溶剤(脂肪酸エステル、高級アルコール)の引火点が100℃以上であるため、蒸発工程を省略することができた。また、比較例1では、光沢度のバラツキが他に比べて大きかった。これは、メディア中に残留した灯油が研磨工程で蒸発等したためと推定される。
11…ターレット
12…バレル槽
Claims (5)
- 有機繊維質からなる母材と、40℃における動粘度が30cst以下の脂肪酸エステルと、この脂肪酸エステルで溶解されるワックス類と、この溶解されたワックス類で前記母材の表面にコーティングされる砥材とを含むことを特徴とする乾式バレル研磨用メディア。
- 前記脂肪酸エステルは、40℃における動粘度が10cst以下であることを特徴とする請求項1に記載の乾式バレル研磨用メディア。
- 前記脂肪酸エステルの引火点は、100℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乾式バレル研磨用メディア。
- 前記脂肪酸エステルは、オレイン酸メチルエステルであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乾式バレル研磨用メディア。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の乾式バレル研磨用メディアを用いた乾式バレル研磨方法であって、
前記乾式バレル研磨用メディア及び研磨対象ワークを密閉空間内に収容し、その状態から前記研磨対象ワークをバレル研磨することを特徴とする乾式バレル研磨方法。
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