JP2009070071A - 学習型プロセス異常診断装置、およびオペレータ判断推測結果収集装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】正確な異常検出と共に、実際的なプロセス監視に適切な異常診断性能を実現すること。
【解決手段】対象プロセスの1以上の可調整パラメータに基づいて、対象プロセスが正常状態および異常状態の何れかの状態であるかを診断する診断部と、オペレータが対象プロセスを正常状態および異常状態の何れかの状態であると判別しているかが入力される、或いはオペレータの判断を推測し、入力結果あるいは推測結果を出力するオペレータ判断フィードバック部と、診断部の診断結果と、オペレータ判断フィードバック部の出力結果との比較情報の履歴を保持する履歴保持部と、履歴保持部に保存された履歴に基づいて、可調整パラメータの修正値を学習する可調整パラメータ学習部と、可調整パラメータ学習部が学習した可調整パラメータに基づいて、可調整パラメータの値を診断部に設定する可調整パラメータ設定部とを具備する。
【選択図】 図1
【解決手段】対象プロセスの1以上の可調整パラメータに基づいて、対象プロセスが正常状態および異常状態の何れかの状態であるかを診断する診断部と、オペレータが対象プロセスを正常状態および異常状態の何れかの状態であると判別しているかが入力される、或いはオペレータの判断を推測し、入力結果あるいは推測結果を出力するオペレータ判断フィードバック部と、診断部の診断結果と、オペレータ判断フィードバック部の出力結果との比較情報の履歴を保持する履歴保持部と、履歴保持部に保存された履歴に基づいて、可調整パラメータの修正値を学習する可調整パラメータ学習部と、可調整パラメータ学習部が学習した可調整パラメータに基づいて、可調整パラメータの値を診断部に設定する可調整パラメータ設定部とを具備する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、特に上下水処理プロセス、排水処理プロセス、浄水プロセス、または化学プロセスなどのプロセス系の異常診断を行なうための学習型プロセス異常診断装置、並びに前記プロセス系におけるオペレータの判断を推測するオペレータ判断推測結果収集装置に関する。
上下水道プラント、原子力プラント、化学プラント、発電プラント、などの産業界におけるプロセスにおいては、リスク低減、省エネルギー、省コスト、省人、などを目的としたアドバンストなプロセス監視やプロセス制御が求められる様になってきている。特にプロセス監視においては、様々な異常状態を予測したり、異常状態を素早く検出したりし、それに対する対処の手順を明確にしておく必要がある。例えば、プロセスの運用管理においては、センサ値異常、アクチュエータなどの機器の動作異常、突発的な負荷変動(突発外乱)、プロセスの処理異常、制御系の異常、など様々な異常状況に対して適切に対処することが求められている。また、日常的なプロセス運用だけでなく、プラント運転に関係する制御基盤、受変電盤、ポンプ、ブロワなどの各種機器の故障を予知し、機器更新を、時間ベースではなく機器の状態ベースで行うCondition Based Maintenance(CBM)への要求は多く、上下水道分野や原子力プラント分野など多くの産業分野では、今後は、時間ベースの保全すなわちTime Based Maintenance(TBM)からCBMへ切り替わっていくと予想されている。
このような要求に応える技術が、一般に「異常監視・診断技術」と呼ばれるものである。異常監視・診断技術は、様々な分野で広く使われているが、ある特定の分野においてはその特定分野特有の用語で呼ばれる手法が用いられる。例えば、生産工程などで規格外製品(=異常製品)を生産しないように品質を保証する品質工学の分野では、統計的品質管理(SQC: Statistical Quality Control)という手法が用いられ、その中で統計的プロセス管理(SPC: Statistical Process Control)という手法がしばしば利用されるが、このSPCは一種の異常診断技術である。また、同じ品質工学の分野で良く知られた診断法として、Mahalanobis-Taguchi法(MT法)と呼ばれる異常診断技術がある。例えば、製造工程の管理(概観管理や品質変化(腐食など)の管理)を中心とする産業分野、医学分野(健康診断など)、マネジメント分野などで利用されている。また、石油化学プラントを中心とする化学プロセスの分野では、前述の統計的プロセス管理SPCを複数のセンサ情報がある場合に拡張した多変量統計的プロセス監視(MSPC:Multi-Variate Statistical Process Control)と呼ばれる方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
MSPCは、ケモメトリクス手法と呼ばれることもあり、化学プロセスの分野で発展してきた異常診断方法であり、MSPCの中で最も基本的でありかつよく利用される手法として、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)や部分最小2乗法(PLS:Partial Least Square)という方法がある。また、機械システムや電気システムの分野では、対象機器のダイナミクスを微分方程式や差分方程式などでモデル化し、このモデルをベースにして、オブザーバやカルマンフィルタと呼ばれる推定機構を構成してこの推定機構による出力と実際のセンサ出力の差分を観測する方法が良く用いられる。このように数式モデルを使ってセンサの計測値だけでなくモデルによる計算値を利用して診断する方法は、時に解析的冗長(AR:Analytic Redundancy)法などと呼ばれることもある。また、機械・電気システムに関連する産業分野、例えば、エレベータや交通システムなどの分野では、センサで計測している信号に(高速)フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)やウェーブレット変換(WT:Wavelet Transform, DWT:Discrete Wavelet Transform, CWT:Continuous Wavelet Transform)や各種のディジタルフィルタなどの信号処理を施して異常診断を行うことも多い。
以上の様に、異常診断技術は様々な分野で広く用いられ、特定の分野で固有の用語で呼ばれる特有の手法があるが、どのような異常診断技術を適用する場合であっても、必ず問題になるのは、異常診断の性能の問題である。通常、異常診断における性能は、ミス・アラーム(本当は異常であるのに異常を検出できない)とフォルス・アラーム(本当は正常であるのに異常であると診断してしまう)の回数(あるいは率)で評価される事が多く、ミス・アラームとフォルス・アラームを極力削減することがその異常診断技術の性能を向上させることになる。しかし、ミス・アラームの減少とフォルス・アラームの減少は通常トレードオフの関係にあることが多い。なぜなら、適用する異常診断技術が何であるかに関わらず、通常、最終的に異常と正常とを判断する何等かの基準となるパラメータ(通常はしきい値=スレッシホールド)を設定して正常・異常の判断を行うことが多いためである。
このパラメータ(しきい値)をミス・アラームが少なくなる様に設定すれば、フォルス・アラームの可能性が高くなり、逆にフォルス・アラームが少なくなる様に設定すれば、ミス・アラームの可能性が高くなる。従って、このようなパラメータ(しきい値)の設定レベルを適正化することは異常診断システムにおいて非常に重要な課題である。適切なしきい値設定を行うために、対象とする異常診断システムを構築するエンジニアが試行錯誤によって調整することも多いが、このような方法は、調整を行うエンジニア個人の能力に異常診断システムの性能が大きく依存してしまうことに加え、設定すべきしきい値の数が増えると多大な工数が必要となるという問題がある。
一方、このしきい値の適切な値を、何らかの計算に基づいて自動的に設定する方法も各種提案されている。例えば、品質管理の分野では、データの正規性を前提として、標準偏差σの推定値を基準にして3σで管理することが多く、これは管理限界値と呼ばれ、一種のしきい値である。MSPCでは、異常を検出するデータとしてQ統計量と呼ばれるデータとT2統計量と呼ばれるデータが用いられる。近似的にχ2分布に従うQ統計量については、Q統計量(を変換したもの)を正規分布で近似してその信頼限界値をしきい値とすることが一般に行われる。
T2統計量については、F分布を用いた検定によってしきい値を決定することが一般に行われる。また、機器などの故障診断の分野では、尤度比検定などの検定をベースにして間接的にしきい値を設定して判断することも行われている。
これらの方法は、客観的な基準に基づいて一律にしきい値を設定できるという利点があるが、一方でこのような客観的な設定法は、しばしば、異常診断システムのユーザ(プラントオペレータ)から見ると不適切と思われるしきい値を設定してしまうこともあり、いかなる(自動)設定法を用いても、異常診断システムのユーザ(プラント運用の場合にはプラントオペレータ)を満足させることができない場合も多い。これは、最終的にしきい値設定の適切さは、異常診断システムを利用するユーザ(プラントオペレータ)の判断に依存するケースが多々あるからである。
「適切なしきい値の設定値」が客観的な計算によって求められず、ユーザの判断に依存してしまう最大の理由は、ミス・アラームやフォルス・アラームを正しく定義するためには、「本当に正常な状態」と「本当に異常な状態」を正しく定義しなければならないが、現実のプロセスにおいては、「本当に正常な状態」と「本当に異常な状態」を必ずしも正しく定義できない場合があることによる。つまり、「本当に正常な状態」と「本当に異常な状態」のあいだに「正常とも異常とも言いがたい状態」というグレー(あいまい)な状態が存在し、このグレーな状態に対してそれを「異常」と判断するか「正常」と判断するかを、客観的な事実に基づいて行うことは不可能である場合が多い。「グレーな状態でも異常として報告して欲しい。」と思うか、「グレーな状態をいちいち異常として報告されるのでは異常発報が多くなりすぎプロセス管理が困難になる。」と思うか、は本質的に主観的な判断に依存する問題である。そして、しきい値は、通常、このグレーな状態と考えられる範囲内に設定する必要がある。なぜなら、明らかに正常状態な場合に異常と判断してはならないし、一方明らかに異常状態において異常という診断を行っても、異常診断システムの価値が無くなるからである(異常診断システムは本来重大な故障(異常)が発生する前に通常の状態から状態がずれていることを診断するものであるため。)。グレーな状態に対して、診断のしきい値が主観によって変化する簡単な例を一つ示す。
図42は、ある下水処理場におけるブロワ(空気供給装置)の弁開度の時系列データである。図42(A)と図42(B)は各々異なる系列の弁開度を示している。図42において、弁開度は0%〜100%の間で変化している。図42(A)に示す系列は、比較的頻繁に弁開度が大きくなっていることがある。図42(B)に示す系列では、弁開度が大きくなっていることはめったに無い。このようなデータに対して、単純にしきい値を設定することによって異常判断を行うことを考えてみる。この場合、原理的に以下の4つの立場がある。なお、正常データを一切含まず異常データのみからなるという立場も原理的にはあり得るが、現実にありえない立場なので、この立場は除外する。
(1) 図42(A)も図42(B)も異常データは含まない。従って、しきい値を物理的に可能な100%の点に設定する。
(2) 図42(A)も図42(B)も異常データを含む。従って、しきい値を0%〜100%の適切な箇所に設定する。
(3) 図42(A)は異常データを含まないが、図42(B)は異常データを含む。従って、図42(A)では、しきい値を100%の点に設定するが、図42(B)のしきい値は0%〜100%の適切な箇所に設定する。
(4) 図42(A)は異常データを含むが、図42(B)は異常データを含まない。従って、図42(A)では、しきい値を0%〜100%の適切な箇所に設定するが、下図のしきい値は100%の点に設定する。
このような4つの立場をとりうるが、この中で、(4)の立場をとる人は稀であると思われるが、他の3つの立場をとることはあり得る。
(1)の立場を取る人は、「そもそも弁開度は、0%〜100%の間で動作しうるものであるから、その範囲内で動いていることに何ら問題は無い。従って、これらのデータは全て正常データである。」と主張するであろう。
(2)の立場をとる人は、「弁開度は0%〜100%の間で動作しうるが、データを見れば、弁開度は図42(A)では40%を越えることはあまりなく、図42(B)では20%を越えることはあまりない。従って、この付近の値をしきい値として設定すべきで、それ以上の開度がある場合は、なんらかの(動作)異常動作があったと見なすべきである。」と主張するであろう。
(3)の立場をとる人は、「図42(A)では、しばしば弁開度は100%近くまで大きくなることが多いが、図42(B)では、めったに弁開度が大きくなることは無いため、上図では、100%をしきい値とすべきだが、図42(B)ではもっと低い値に設定すべきである。」と主張するであろう。これらの立場は、それぞれ、一定の説得力を持つものであり、一概にどの立場が正しいと言うことはできない。従って、異常診断システムを実現する立場からは、このような主観を反映させる仕組みを実現することが重要であり、この仕組みが実現できれば、様々な主観を持つユーザの好みに応じたシステムを構築することができる。
加納 学、"多変量統計的プロセス管理"、2005年6月第2版、京都大学大学院工学研究科化学工学専攻プロセスシステム工学研究室、[2007年3月2日検索]、インターネット<URL: http://tech.chase-dream.com/spc/report-MSPC.pdf
加納 学、"多変量統計的プロセス管理"、2005年6月第2版、京都大学大学院工学研究科化学工学専攻プロセスシステム工学研究室、[2007年3月2日検索]、インターネット<URL: http://tech.chase-dream.com/spc/report-MSPC.pdf
プロセスの異常診断において、正確な異常検出を行うには、単に異常検出に対する感度を高めるだけでは不十分であり、ミス・アラームとフォルス・アラームのトレードオフを適切に調整することが重要である。ミス・アラームとフォルス・アラームを共に極力減らすことが理想ではあるが、実際には、正常と異常の境界域では、異常事象と正常事象が混在している重複があり、一つのしきい値では異常と正常を完全には識別をできない場合が多い。このため、通常では、ミス・アラームを減少させようとすると、フォルス・アラームが増大し、逆にフォルス・アラームを減少させようとすると、ミス・アラームが増大することが確認されている。
そこで、本発明の目的は、ミス・アラームとフォルス・アラームのトレードオフの適正化を図り、正確な異常検出と共に、実際的なプロセス監視に適切な異常診断性能を実現した学習型プロセス異常診断装置を提供することにある。
本発明の一例に係わる学習型プロセス異常診断装置は、対象プロセスの1以上の可調整パラメータに基づいて、前記対象プロセスが正常状態および異常状態の何れかの状態であるかを診断する診断部と、前記診断部の診断結果をオペレータに提示する診断結果提示部と、前記オペレータが前記対象プロセスを正常状態および異常状態の何れかの状態であると判別しているかが入力される、或いは前記オペレータの判断を推測し、入力結果あるいは推測結果を出力する前記オペレータ判断フィードバック部と、前記診断部の診断結果と、前記オペレータ判断フィードバック部の出力結果との比較情報の履歴を保持する履歴保持部と、前記履歴保持部に保存された履歴に基づいて、前記可調整パラメータの修正値を学習する可調整パラメータ学習部と、前記可調整パラメータ学習部が学習した前記可調整パラメータに基づいて、前記可調整パラメータの値を前記診断部に設定する可調整パラメータ設定部とを具備することを特徴とする。
本装置によれば、正確な異常検出と共に、実際的なプロセス監視に適切な異常診断性能を実現することが出来る。
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係わる学習型異常診断装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に関するプロセス異常診断装置は、例えば窒素及びリンの除去を目的とした下水処理プロセスなどのプロセス1を監視対象とするプロセス監視システムに用いられる。なお、本実施形態のプロセス異常診断装置は、監視対象のプロセス1としては、下水処理プロセスに限定されるものではなく、化学プロセス、上水道プラント、原子力プラント、発電プラント等の他のプロセスにも適用できる。
[下水処理プロセス]
下水処理プロセス1は、最初沈澱池101、第1嫌気槽102、第2好気槽103、第3無酸素槽104、第4好気槽105、及び最終沈澱池106を有する。また、下水処理プロセス1は、引き抜き流量センサを含む最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111、投入量センサを含む酢酸系有機物を供給する酢酸投入ポンプ112、ステップ流入量センサを含むステップ流入ポンプ113、供給空気流量センサを含む第2好気槽に酸素を供給するブロワ114、投入量センサを含む炭素源(有機物)を供給する炭素源投入ポンプ115、循環流量センサを含む循環ポンプ116、返送流量センサを含む返送汚泥ポンプ117、および供給空気流量センサを含む第4好気槽に酸素を供給するブロワ118、投入量センサを含む凝集剤投入ポンプ119、及び引き抜き流量センサを含む最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ1110のそれぞれを、アクチュエータおよびその操作量センサ群として有する。
下水処理プロセス1は、最初沈澱池101、第1嫌気槽102、第2好気槽103、第3無酸素槽104、第4好気槽105、及び最終沈澱池106を有する。また、下水処理プロセス1は、引き抜き流量センサを含む最初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111、投入量センサを含む酢酸系有機物を供給する酢酸投入ポンプ112、ステップ流入量センサを含むステップ流入ポンプ113、供給空気流量センサを含む第2好気槽に酸素を供給するブロワ114、投入量センサを含む炭素源(有機物)を供給する炭素源投入ポンプ115、循環流量センサを含む循環ポンプ116、返送流量センサを含む返送汚泥ポンプ117、および供給空気流量センサを含む第4好気槽に酸素を供給するブロワ118、投入量センサを含む凝集剤投入ポンプ119、及び引き抜き流量センサを含む最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ1110のそれぞれを、アクチュエータおよびその操作量センサ群として有する。
さらに、下水処理プロセス1は、流入下水量を計測する下水流入量センサ121、流入下水に含まれる全窒素量を計測する流入TNセンサ122、流入下水に含まれる全リン量を計測する流入TPセンサ123、流入下水に含まれる有機物量を計測する流入UV(Ultra Violet)センサあるいは流入COD(chemical oxygen demand)センサ124、第1嫌気槽102のリン酸濃度を計測するリン酸センサ125、第2好気槽103のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ126、第2好気槽103の溶存酸素濃度を計測するDO(dissolved oxygen)センサ127、及び第3無酸素槽104の硝酸濃度を計測する硝酸センサ128を有する。
また、下水処理プロセス1は、第1嫌気槽102、第2好気槽103、第3無酸素槽104、第4好気槽105の少なくとも1ヶ所の槽で活性汚泥量を計測するMLSS(mixed liquor suspended solid)センサ129、第4好気槽105のリン酸濃度を計測するリン酸センサ1210、第4好気槽105の溶存酸素濃度を計測するDO(dissolved oxygen)センサ1211、第4好気槽105のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ1212、最終沈澱池106から引き抜かれる汚泥量のMLSS濃度を計測するMLSSセンサ1213、最終沈澱池106から放流される放流水の浮遊物(suspended solid)濃度を計測するSSセンサ1214、放流下水量を計測する下水放流量センサ1215、放流下水に含まれる全窒素量を計測する放流TNセンサ1216、放流下水に含まれる全リン量を計測する放流TPセンサ1217、および放流下水に含まれる有機物量を計測する放流UVセンサあるいは放流CODセンサ1218のそれぞれをプロセスセンサとして有する。
ここで、前述の各種アクチュエータ111〜119,1110は、所定の周期で動作している。また、各種アクチュエータ111〜119,1110の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜129,1218は所定の周期で計測を行っている。
[学習型異常診断装置]
図1に示すように、学習型異常診断装置は、データを収集するプロセスデータ収集・保存部2、異常診断部3、異常診断結果提示部4、オペレータ判断フィードバック部5、異常診断整合性結果保持部6、可調整パラメータ学習部7等を有する。
図1に示すように、学習型異常診断装置は、データを収集するプロセスデータ収集・保存部2、異常診断部3、異常診断結果提示部4、オペレータ判断フィードバック部5、異常診断整合性結果保持部6、可調整パラメータ学習部7等を有する。
異常診断装置は、プロセス1に設けられている各種のセンサから、プロセスの状態又は操作量の計測結果であるプロセスデータ(時系列データ)を所定の周期で収集し、保存するプロセス計測データ収集・保存部2を有する。
プロセスデータ収集・保存部2は、プロセス1に設けられている各種のセンサから、プロセスの状態又は操作量の計測結果であるプロセスデータ(時系列データ)を所定の周期で収集し、所定のフォーマットに従って保存する。
異常診断部3は、可調整パラメータ設定部31および異常診断機能部32を有する。可調整パラメータ設定部31は、プロセス1に設けられている各種のセンサによって計測される各種プロセスデータに対して、予め定義された異常・正常の判断を行うための、例えば異常判断しきい値などの可調整パラメータの値を設定する。異常診断機能部32は、可調整パラメータ設定部31で設定された設定値を持つパラメータとプロセスデータ収集・保存部2に保持されたプロセスデータの情報を用いて、予め定義された異常・正常の判断を行いその結果を出力する。
異常診断結果提示部4は、異常診断機能部32によって出力される異常の有無あるいは異常のレベルなどの情報を異常アラームや異常メッセージに変換する。
オペレータ判断結果フィードバック部5は、異常診断結果提示部4によって提示された異常アラームや異常メッセージなどの結果を受けて、その結果に対するプラント監視者(オペレータなど)の判断結果をフィードバックする。
異常診断整合性結果保持部6は、オペレータ判断結果フィードバック部5によるオペレータの判断結果と、異常診断機能部32による正常・異常の診断結果との比較情報を所定のフォーマットに従って管理する。
可調整パラメータ学習部7は、異常診断整合性結果保持部6が保持する情報と、可調整パラメータ設定部31で設定した異常診断機能部32で用いるパラメータの値を利用して、可調整パラメータの値を異常診断整合性結果保持部6が保持する情報に適合する様に調整して、可調整パラメータの値を更新して、その結果を可調整パラメータ設定部31に引きわたす。
実施例の作用
図1を用いて、本実施例の作用を説明する。
図1を用いて、本実施例の作用を説明する。
まず、下水処理プロセスなどのプロセス1では、各種のセンサにより、所定の周期でプロセスの状態や操作に関する情報が計測されている。プロセス計測データ収集・保存部2は、当該各種のセンサからの計測結果であるプロセスデータを所定の周期で収集し、予め決められたフォーマットに従って時系列データとして保存する。
なお、センサを、プロセス状態量センサ、プロセス入力量センサ、およびプロセス出力量センサの3種類に分ける。
プロセス状態量センサは、対象プロセスの処理に関わる量を計測するセンサである。プロセス状態量センサは、例えば、初沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ111に設けられた引き抜き流量センサ、酢酸投入ポンプ112に設けられた投入量センサ、ステップ流入ポンプ113に設けられたステップ流入量センサ、ブロワ114に設けられた供給空気流量センサ、炭素源投入ポンプ115に設けられた投入量センサ、循環ポンプ116に設けられた循環流量センサ、返送汚泥ポンプ117に設けられた返送流量センサ、ブロワ118に設けられた供給空気流量センサ、凝集剤投入ポンプ119に設けられた投入量センサ、最終沈澱池余剰汚泥引き抜きポンプ1110に設けられた引き抜き流量センサ、リン酸センサ125、アンモニアセンサ126、DOセンサ127、硝酸センサ128、リン酸センサ1210、DOセンサ1211、アンモニアセンサ1212、及びMLSSセンサ1213である。プロセス状態量センサはM個あるものとする。
プロセス入力量センサは、最初沈澱池101に供給される各種供給物の量をそれぞれ計測するセンサである。プロセス入力量センサとしては、下水流入量センサ121、流入TNセンサ122、流入TPセンサ123、流入UVセンサあるいは流入CODセンサ124である。プロセス入力量センサは、N個あるものとする。
プロセス出力量センサは、対象プロセスから出力される各種生成物の量をそれぞれ計測するセンサである。プロセス出力量センサは、SSセンサ1214、下水放流量センサ1215、放流TNセンサ1216、放流TPセンサ1217、および放流UVセンサあるいは放流CODセンサ1218である。プロセス出力量センサは、P個あるものとする。
一方、異常診断部3は、プロセスの異常判定と正常判定を行う異常診断機能部32と、異常診断機能部で用いる可調整パラメータ設定部31から構成されており、この2つの構成要素を持つものであれば、どのような異常診断部であってもよいが、ここでは、具体的な異常診断部の例を2つ示す。
[異常診断部(1)]
一つめの例は、あるプロセス量を計測しているセンサの時系列データに対して、離散ウェーブレット変換(DWT:Discrete Wavelet Transform)を適用して、異常診断を行うものである。この概念図を図2に示す。
一つめの例は、あるプロセス量を計測しているセンサの時系列データに対して、離散ウェーブレット変換(DWT:Discrete Wavelet Transform)を適用して、異常診断を行うものである。この概念図を図2に示す。
図2は、ある下水処理プロセスの流入下水中のリン濃度を計測した信号(時系列データ)に対して、DWTを適用して周波数帯域の異なる複数の信号に分割した様子を示したものである。このようにDWTによって時系列データを分割すると、適当なしきい値を設定することによって、高周波で生じている異常を検出することができる。この場合、可調整パラメータ設定部31で設定するパラメータは図2のDWTによって分割された時系列データに対するしきい値である。また、異常診断機能部32は、センサの時系列データに対するDWTによる信号分割と可調整パラメータ設定部31で設定したしきい値に基づいた正常・異常の判断である。
以下にこの装置の構成について図3を参照して説明する。
異常診断部は、プロセス監視モデル構築用プロセスデータ抽出部(以下単にプロセスデータ抽出部と表記)30と、プロセス監視モデル構築・供給部(以下単にモデル構築部と表記)40と、プロセス異常判定基準設定・供給部(以下単に異常判定基準設定部と表記)50と、プロセス監視部60と、プロセス異常診断部70と、プロセス異常要因センサ特定部8と、及びプロセス異常要因推定部9とを有する。
プロセスデータ抽出部30は、プロセス計測データ収集・保存部2に保存された各種の時系列データの中から、プロセス監視モデルを構築するために、主に正常状態(通常状態)のデータを中心とした所定の期間に亘るプロセスデータを抽出する。モデル構築部40は、プロセスデータ正規化モデル生成部41および異常検出モデル生成部42を含む。プロセスデータ正規化モデル生成部41は、プロセスデータ正規化用事前情報入力部(以下単に正規化用事前情報入力部と表記)411及びパラメータ決定部412を含む。
正規化用事前情報入力部411は、プロセスデータ抽出部30で取り出した各種のプロセスデータ(xi(t),t=1,2,…l=所定の期間,i=1,2,…28)に対して、これらのプロセスデータに含まれる正常データと異常データの割合に対する事前情報を入力する。また、パラメータ決定部412は、正規化用事前情報入力部411から入力される事前情報に従って、各種のプロセスデータを正規化するための式[(xi(t)-ai)/bi, xi(t)はi番目のプロセスデータ]のシフトパラメータ(ai)とスケーリングパラメータ(bi)を決定する。シフトパラメータ(ai)は、i番目のプロセスデータに対するシフトを表す定数である。また、スケーリングパラメータ(bi)は、i番目のプロセスデータに対するスケーリングを表す定数である。
プロセスデータ抽出部30は、プロセス計測データ収集・保存部2に保存された各種の時系列データの中から、プロセス監視モデルを構築するために、主に正常状態(通常状態)のデータを中心とした所定の期間に亘る一連のプロセスデータを抽出する。換言すれば、プロセスデータ抽出部30は、例えばプロセス1の操作量やプロセス量の正常範囲に属しているデータが主要な構成要素となるように、一連のプロセスデータを取り出す。
ここで、プロセスデータ抽出部30において、予め正常データのみを取り出すことは、不可能あるいは困難な場合が多い。即ち、予め正常データのみを取り出すことができるということは、少なくとも、プロセス監視モデル構築用データに対しては異常診断が完了し、正常であると判断されていることを意味するからである。従って、プロセスデータ抽出部30は、予め異常データと正常データの割合に関して推測された事前情報を取得して、ある程度の異常データを含むプロセスデータを抽出する。この事前情報としては、例えば、以下のような情報である。
(1)抽出したデータの中には、殆ど異常データは含まれておらず、含まれていたとしても数点程度である。
(2)抽出したデータの中には、異常データは少し含まれていて、大体X%程度である。
(3)抽出したデータの中には、異常データは数%以上含まれているが、割合に関しては不明である。
プロセスデータ抽出部30は、以上のような事前情報(1)〜(3)を取得できない場合には、抽出したデータの中の異常データと正常データの割合に関しては不明という判断を実行する。但し、抽出したデータの中に、例えば数十%以上の異常データが含まれている場合、プロセス監視モデル自身を構築することができなくなるので、プロセスデータ抽出部30は、主たる構成要素が正常データであるプロセスデータを抽出する必要がある。また、抽出するデータの中には、正常動作範囲内のなるべく多様なデータが混在していることが好ましい。
さらに、プロセスデータの中に、欠測データや異常データ(アウトライアも含む)、あるいはノイズがのっているデータが含まれている場合には、プロセスデータ抽出部30は、予めこれらのデータに前処理を実行する前処理機能を有することが好ましい。アウトライアとは、伝送異常などにより時々突発的に生じる異常データを意味する。前処理機能としては、具体的には、例えば、ノイズを除去するためのFIRフィルタ機能やIIRフィルタ機能などのデジタルフィルタ機能である。アウトライアに対しては、メジアンフィルタ機能やウェーブレットフィルタ機能などを用いて、データの中から本当のプロセスデータであると思われるデータを抽出する。
プロセスデータ抽出部30は、抽出したプロセスデータをモデル構築部40に送る。モデル構築部40では、プロセスデータ正規化モデル生成部41は、各種センサにより計測されたプロセスデータを正規化するための計算式(正規化モデル)を、プロセスデータ抽出部3で抽出したプロセスデータを用いて決定する。このとき、正規化モデル生成部41では、まず、正規化用事前情報入力部411が、プロセスデータ抽出部30で取り出した各種のプロセスデータに関する事前情報を入力する。この事前情報は、プロセスデータに含まれる正常データと異常データの割合に対する情報である。正規化用事前情報入力部411は、例えば図4に示すような画面情報を、ユーザインターフェース部10の表示部に表示して、プロセス監視モデルを構築するユーザに、例えば図4に示すような4つの事前情報(a)〜(d)から選択させる。ここで、ユーザが事前情報(d)を選択した場合には、さらに、プロセスデータの中に混在している異常データの概略的な割合(%)を同時に入力することを促す。
パラメータ決定部412は、正規化用事前情報入力部411から入力される事前情報に基づいて、各種のプロセスデータの正規化に必要なシフトパラメータ(ai)、及びスケーリングパラメータ(bi)の値を、以下に示す手順により決定する。
正規化用事前情報入力部411から、図4に示す事前情報(a)が入力されると、事前情報は何も無いため、パラメータ決定部412は、なるべく異常値に左右されないロバストな正規化手法を採用した場合のパラメータを決定する。
具体的には、ロバスト標本平均、あるいはメジアンとロバスト標本標準偏差を用いる。ここで、ロバスト標本平均やロバスト標本標準偏差とは、予めプロセスデータの最大値の付近及び最小値の付近の例えば0.5%程度のデータを取り除いた上で求めた標本平均と標本標準偏差である。従って、パラメータ決定部412は、予め上下限値付近のいくつかのデータを除いた上で、シフトパラメータ(ai)を「ai=1/N(Σxi(k))」というプロセスデータの平均値、あるいは全データの中央値(メジアン)と決定する。ここで、メジアンは、それ自身異常値に影響されにくいロバストな統計量なのでそのまま用いる。ロバスト標本平均またはメジアンのいずれかを用いるかは、データの基準値を0にすることをより優先するか、またはロバスト性をより優先するかの判断に基づく。
統計量として標本平均は、メジアンよりもロバスト性が著しく低い。これは、次の様な簡単な例から明白である。例えば、「A=1.5, 2.3, 1.3, 1.8, 2.0, 1.7, 1.9, 2.1, 2.2, 1.6, 1.4」というプロセスデータがあり、何らかの理由で異常データ「10」が混入して、「Ab=1.5, 2.3, 1.3, 1.8, 2.0, 1.7, 1.9, 2.1, 10, 1.6, 1.4」という様に計測されたと想定する。この場合、本当のデータAの標本平均は「1.8」であり、メジアンも「1.8」である。しかし、計測されたデータAbの標本平均は、「2.5」となるが、メジアンは「1.8」のままである。このように、標本平均という統計量は、メジアンという統計量よりもロバスト性が弱く、異常データに対して大きく左右される。これを避けるために、プロセスデータの上下限付近のいくつかのデータを取り除いて計算するロバスト標本平均を用いることができる。しかし、上下限付近の何%のデータを取り除くかを、異常データに対する事前情報なしに決定することは困難である。この点においてメジアンは、極端に多くの異常データが存在したり、上限側あるいは下限側に極端に多量の異常データが存在しない限りはあまり異常データに左右されない。しかし、そもそもスケーリングでは、スケーリングされた後のデータの平均がおおよそゼロになる様に変換することが目的であるため、この点ではロバスト標本平均を用いる方が好ましい。このため、設計者がロバスト性を優先するか、スケーリング後の基準値を0に近くすることを優先するかによって、メジアンあるいはロバスト標本平均を使うことを決定することになる。
ここで、分散(標準偏差の2乗)を計算する場合には、不偏分散とするために「1/N」ではなく「1/(N−1)」とすることが多い。但し、不偏分散が最も良い推定であるとは限らないので、「1/N」または「1/(N−1)」とする。また、不偏分散の平方根は、不偏標準偏差ではなく、不偏標準偏差とするために別の係数を乗ずる場合もある。但し、データ数が十分に多ければ、結果として得られる値には殆ど差はない。
前記の標本標準偏差を採用する理由は次の通りである。そもそもスケーリングとは、各種のセンサで計測される様な異なる物理量を、同じ尺度で扱うためにデータの動作範囲を揃えるものである。従って、各センサで計測している物理量の動作範囲が分かっているのであれば、その動作範囲(データレンジ)をそのままスケーリングパラメータとすることが一番素直であり、最も良い方法であると考えられる。しかし、データレンジという統計量は、異常値に対して極めて敏感である。即ち、少しでも異常データが混入すると、その値によってデータレンジは大幅に変化してしまう。例えば、前記の例では、プロセスデータAのデータレンジは1(最小値1.3,最大値2.3)であるが、Abのデータレンジは8.7(最小値1.3,最大値10)となってしまう。このために、前述した様に、プロセスデータの上下限付近のいくつかのデータを取り除いて計算することが考えられるが、上下限付近の何%のデータを取り除くかを、異常データに対する事前情報なしに決定することは困難である。
このようなデータレンジと比較すると、標本標準偏差はロバストな統計量であり、データの動作範囲を示す一つの指標となるため、通常スケーリングパラメータとしてよく利用される。ここで、仮にデータが正規分布に従うならば、標本標準偏差の3倍で99.7%のデータをカバーするので、標本標準偏差の3倍程度がデータレンジに相当する。しかし、データが正規分布に従うかどうかは分からないので、データレンジと標本標準偏差の対応関係は一般に不明である。但し、スケーリングは複数の異なる物理量同士を同じ指標で見るために実施するものであるから、標本標準偏差とデータレンジを対応づける必要は特にない。また、標本標準偏差は、データレンジと比較するとロバストな統計量であるが、異常データにある程度左右されるため、好ましくはロバスト標本標準偏差を用いる。
また仮に、正規化用事前情報入力部411から、図4に示す事前情報(b)が入力されると、パラメータ決定部412は、予め殆ど全てのデータが正常であることが分かっているため、その情報(b)を利用してパラメータを設定する。具体的には、パラメータ決定部412は、シフトパラメータについては、前述した理由により、予め殆ど全てのデータが正常であるとわかっているため、標本平均を用いる。但し、多少の異常値が混入していることを想定して、上下限付近の例えば0.5%程度のデータを除いたロバスト標本平均を用いても良い。
一方、パラメータ決定部412は、スケーリングパラメータについては、予め殆ど全てのデータが正常であるということが分かっているので、念のためプロセスデータの最大値の付近及び最小値の付近の例えば0.5%程度のデータを取り除いた上で、そのプロセスデータの動作範囲を直接スケーリングパラメータとする。
また仮に、正規化用事前情報入力部411から、図4に示す事前情報(c)が入力されると、パラメータ決定部412は、異常データと正常データが混在し、異常データの割合は分からないため、その情報(c)を利用して、予め正常データと異常データの閾値をクラスタリングの方法を用いて決定しておく。クラスタリングとは、複数の異なる集合(クラス)に属していると考えられるデータが混在している場合に、各々のデータがどのクラスに属するかを決定する方法の総称である。この場合、正常データと異常データの2つのクラスに属しているデータが混在していると想定されるので、2クラスのクラスタリング手法を用いる。
ここで、事前情報(a)の場合にも、このような2クラスのクラスタリング手法を適用できる様に思われるが、実際にはそうではない。この理由は、2クラスのクラスタリング手法は、正常データと異常データの2つのクラスのデータが混在している状況下で効果的に働くものであるため、もし事前情報が何もない場合に、2クラスのクラスタリング手法を適用した場合、データに殆ど異常データが混入していない場合に正常データを強引に2つに分割してしまうことになるためである。
このようなクラスタリング手法は、様々な方法が開発されているので、任意の適切なものを用いれば良いが、例えば、「大津の閾値決定法」と呼ばれる一種の判別分析手法を用いることができる。「大津の閾値決定法」とは、2つの異なるクラスに属するデータが混合している際、2つのクラス同士のクラス間分散が最大となる様に閾値を設定する方法である。換言すれば、各々のクラスのクラス内の分散の平均値が、最小になる様に閾値を設定する方法である。すなわち、2つのクラスに属するデータを、お互いになるべく遠ざけるように閾値を決定する方法である。具体的には、以下の式(2)を最小化する様な閾値を求めることである。
ここで、ω1とω2は、各々、クラス1とクラス2に属するデータの割合(クラス発生確率)である。σ1とσ2は、各々、クラス1とクラス2のクラス内の分散である。これを、図5に示す。
この大津の閾値決定法は、2つのクラスのデータが各々正規分布に従っているという条件、2つのクラスに属するデータ割合に著しい差がないという条件、さらに2つのクラスの正規分布の分散が等しいという条件下での閾値の最尤推定値となることが示されている。ここで、最尤推定値とは、統計的推定法に含まれる最尤推定法による推定値である。
通常では、正常データの割合は、異常データの割合よりかなり大きいため、前記の2つのクラスに属するデータ割合に著しい差がないという条件を満たさない。このように2つのクラスに属するデータ割合に著しい差がある場合には、前記式(2)の代わりに、以下の式(3)を最小化することが好ましい。
ここで、「ω1・σ1+ω2・σ2」の最小化は、「log(ω1・σ1+ω2・σ2)」の最小化と同じ事であることに注意すれば、式(3)は式(2)に対して、「-ω1・log(ω1) −ω2・log(ω2)」という補正項を加えたものになっている。これを以下では、修正大津の閾値決定法と呼ぶことにする。
このように、大津の閾値決定法や修正大津の閾値決定法などの2クラスのクラスタリング法を適用することによって、正常データと異常データの閾値を決定することができる。パラメータ決定部412は、この決定を、各種のセンサで計測される全ての計測項目に対して実行する。図6は、この様にして正常データと異常データを分類する閾値410を決定の概念を示す図である。図6に示すように、クラスタリング手法によって、プロセス監視モデル構築用のプロセスデータは、正常データと異常データに暫定的に分類できるので、正常データの部分400のみを用いて、正常データの標本平均をシフトパラメータとし、正常データの標本標準偏差をスケーリングパラメータとする。
なお、プロセスデータが上限方向と下限方向の両方向に異常が出る可能性のあるデータである場合には、予めプロセスデータの絶対値を計算した上で、大津の閾値決定法や修正大津の閾値決定法などの2クラスのクラスタリング法を適用する。この場合、結果として、図7に示す様なイメージで正常データと異常データを分類できる。
さらに、正規化用事前情報入力部411から、図4に示す事前情報(d)が入力されると、パラメータ決定部412は、正常データが混在している異常データの大よその割合を認識できる。この場合には、前述したように、異常データの割合が追加で入力される。例えば、異常データの割合が5%と入力された場合には、もしプロセスデータが片側方向にしか異常が出ない様なデータである場合には、プロセスデータの最大値(あるいは最小値)から5%のデータを含む点を閾値とする(図6の410を参照)。
また、プロセスデータが両側方向に異常が出る可能性のあるデータである場合には、プロセスデータの最大値および最小値から各々2.5%のデータを含む点を閾値とする(図7の510、511を参照)。このような操作により、正常データの範囲500を決定することができるため、正常データと見なされたデータの標本平均をシフトパラメータとし、標本標準偏差をスケーリングパラメータとする。
以上に手順により、パラメータ決定部412は、正規化用事前情報入力部411から入力される事前情報に基づいて、各種のプロセスデータの正規化に必要なシフトパラメータ(ai)及びスケーリングパラメータ(bi)の値を決定する。即ち、プロセスデータ正規化モデル生成部41は、プロセスデータの事前情報に基づいて、正規化モデルによりプロセスデータを正規化する。
ここで、プロセスデータの適切な正規化と、異常診断との関係について簡単に説明する。正規化という手段は、通常では、値が全く異なる複数の物理量を同じ尺度で評価できるように変換する手段である。この操作が適切でないと、複数の物理量を同じ尺度で評価できないことになり、結果として、異常検出や異常検出をした後の異常要因となるセンサ(=物理量)の特定を誤ることになる。例えば、Aという物理量の動作範囲が0〜10であり、Bという物理量の動作範囲が0〜100である場合に、Bを「1/10」にすることにより、両者を同じ尺度で評価できる。しかし、仮に正規化を間違えて、Bをそのまま用いてしまった場合には、AはBに対して非常に小さく評価されることになる。したがって、Aの量で異常が生じた場合でも、異常が検出されなくなることが多くなる。また、異常が検出された場合であっても、Bの方が大きい動作範囲であるため、ほとんどの場合、その異常要因はBと判断されることになる。このため、プロセスデータの適切な正規化は、異常検出精度や異常要因特定精度を向上させる上で極めて重要である。
異常検出モデル生成部42は、プロセスデータ正規化モデル生成部41によりプロセス監視モデル構築用のプロセスデータを正規化するパラメータが決定されると、当該パラメータを用いてプロセス監視モデル構築用のプロセスデータを正規化する。そして、異常検出モデル生成部42は、当該正規化データを利用して、異常検出用モデルを構築する。
具体的には、異常検出モデル生成部42は、当該正規化データを横(行)方向に各種センサ11〜1Nに対応する変量を設定し、縦(列)方向に時間を考えた行列Xに設定する。次に、前述と同様に、PCAを用いて、前記式(5),(6)に示す様に、Q統計量とホテリングのT2統計量を求める。これでプロセス監視モデル構築が完了したが、本実施形態では、異常検出モデル生成部42は、前記式(5),(6)に示すQ統計量とホテリングのT2統計量を、各々離散ウェーブレット変換を使って複数の周波数帯域毎のデータに分解する。これは、離散ウェーブレット変換によるQ統計量とホテリングのT2統計量の分解と、分解された各々のデータを逆離散ウェーブレット変換で再構成することによって実現できる。この操作は、結果的にデジタルフィルタの形式で実現できるので、そのフィルタを「Wi,i=1,…,p(pはデータ分割数)」とすると、ウェーブレットによって分解された各統計量は、例えば、下記式(4),(5)のように表現できる。
この周波数帯域毎に分解された計算式(モデル)が、本実施形態でのプロセス監視モデルに相当する。図8は、Q統計量を離散ウェーブレット変換により複数の周波数帯域毎のデータに分解した具体例を示す図である。同図(A)は、Q統計量のグラフである。同図(B)〜(F)はそれぞれ、5つの周波数帯域に分割されたQ統計量を示す図である。ここで、図8(D)は、元のQ統計量を近似する図であり、最も遅い変化を表している。それ以外の同図(B),(C),(E),(F)はそれぞれ、平均がほぼゼロになるより速い周波数帯域のQ統計量の分解データを示す図である。図8において、横軸は速い周波数帯域から遅い周波数帯域の順に付けられている。
このように周波数帯域毎にデータを分解する意義は、以下の通りである。
図9は、Q統計量やホテリングのT2統計量ではないが、ある元データを、離散ウェーブレット変換を適用して分解した具体例を示す図である。図9の矢印の左側の元データには、データの中に高周波の異常が含まれていることが確認できる。この元データを、ウェーブレット変換で分解すると、矢印の右側に示すように、高周波部分の異常として現れる。
一般的に、ウェーブレット変換を適用するか否かに関わらず、高周波の異常を人間が目視で確認することは比較的容易であるが、図9の矢印の左側に示すような元データで、異常を機械的に(自動的に)検出する場合、単に閾値を設定するだけでは、異常を検出することは不可能である。一方、図9の矢印の右側に示すような分解されたデータでは、単純に閾値を設定するだけで異常を検出することができる。このように、ウェーブレット変換は、通常行われる閾値による異常検出という単純な操作を継承したままで、より高度に異常を検出できる機能を有する。
本実施形態は、ウェーブレット変換を適用して、Q統計量やホテリングのT2統計量をデータ分解して異常検出を実行するシステムである。この場合、本実施形態では、適切な閾値を設定することにより、異常検出の精度を向上させる構成である。
以上要するに、異常検出モデル生成部42は、プロセスデータ正規化モデル生成部41により正規化用のシフトパラメータとスケーリングパラメータの値が決定されると、ウェーブレット変換をQ統計量やホテリングのT2統計量に適用することにより、異常検出を行う際に必要となる計算モデル(P,Λ,Wi)を決定する。さらに、これらの値を用いた正規化の計算式、周波数帯域毎に分解されたQ統計量、および周波数帯域毎に分解されたホテリングのT2統計量の計算式を生成する。
次に、異常判定基準設定部50は、異常検出モデルである式(4),(5)を使用して異常判定を行うための閾値を決定する。この際、プロセス監視モデル構築用データである正規化データXを用いて、式(4),(5)により計算したプロセス監視モデル構築用データの周波数帯域毎に分解されたQ統計量、および周波数帯域毎に分解されたホテリングのT2統計量を利用する。
まず、閾値決定用事前情報入力部51は、周波数帯域毎に分解されたQ統計量およびホテリングのT2統計量に関する事前情報を入力する。なお、この周波数帯域毎に分解された事前情報を取得できない場合には、プロセスデータに関する事前情報や、Q統計量やホテリングのT2統計量に対する事前情報で代替させてもよい。
次に、閾値決定部52は、閾値決定用事前情報入力部51から入力される事前情報に従って、異常判定のための閾値を決定する。
まず、事前情報が何も無い場合(Q統計量やホテリングのT2統計量に関する情報は不明)には、閾値決定部52は、デフォルトの設定法として、以下の方法を採用する。
図8に示すように、周波数帯域毎に分解されたQ統計量やホテリングのT2統計量の中の最も遅い周波数のものは、元のQ統計量やホテリングのT2統計量の近似になっている。従って、Q統計量の統計的信頼限界値とホテリングのT2統計量に関する統計的信頼限界値、即ちQ統計量とホテリングのT2統計量の閾値を、そのまま最も遅い周波数帯域に分解されたQ統計量とホテリングのT2統計量の閾値として利用する。
一方、最も遅い周波数帯域以外の周波数帯域毎に分解されたQ統計量やホテリングのT2統計量は、図8に示すように、ゼロ平均の周りに正負方向にばらついた分布を示す。このため、事前情報が何も無いので、通常の統計的プロセス監視で行われる方法に従って、周波数帯域毎に分解されたQ統計量とホテリングのT2統計量の標本標準偏差(σrob)あるいはロバスト標本標準偏差(σrob)を利用して、その値の3倍である3σあるいは3σrobを閾値として設定する。
次に、閾値決定用事前情報入力部51から、事前情報として、殆ど全てのデータが正常であるという情報が入力された場合には、閾値決定部52は、原理的に、プロセス監視モデル構築用データの正規化データXを用いて計算した周波数帯域毎に分解されたQ統計量や、周波数帯域毎に分解されたホテリングのT2統計量の最大値を閾値として決定する。但し、ごく僅かに異常データが含まれている可能性があるので、例えば99%信頼区間の考え方を採用して、周波数帯域毎に分解されたQ統計量および周波数帯域毎に分解されたホテリングのT2統計量の最大値から上位1%の値を閾値として決定する方法の方が好ましい。この場合、周波数帯域毎に最大値が求まるが、それぞれの周波数帯域は異なっているので、それぞれの値を周波数帯域毎の閾値として決定する。
さらに、事前情報として、異常データと正常データが混在しているが異常データの割合は不明であるという情報が入力された場合には、閾値決定部52は、例えば、修正大津の閾値決定法などを用いて、周波数帯域毎に分解されたQ統計量および周波数帯域毎に分解されたホテリングのT2統計量の閾値を決定する。
但し、異常データと正常データが混合していることが事前情報として入力されている場合でも、周波数帯域毎に分解された統計量に対して異常が混入しているとは限らない。このため、異常データが混入していない周波数帯域があった場合、その閾値を修正大津の閾値決定法などのクラスタリング法で決定すると、正常データを2分割してしまうことになり、適切な閾値が決定されない。しかし、寄与量による異常診断とは異なり、周波数帯域毎に分解されたQ統計量やホテリングのT2統計量による異常診断では、代表的な閾値を取り出すことができず、各々の計測変数毎に閾値を設定しなければならない。これに対処するためには、修正大津の閾値決定法などのクラスタリング法で決定した閾値と、(a)Q統計量とホテリングのT2統計量に関する情報は不明である場合の閾値決定方法で決定した閾値との値を比較し、クラスタリング法で決定した閾値が著しく小さい場合には、(a)の場合の閾値を採用するという方法を採ることができる。例えば、(a)の場合の閾値の50%を下回る閾値がクラスタリング手法で得られた場合には、(a)の場合の閾値を採用するというルールで対処する。
また、事前情報として、異常データと正常データが混在しており、異常データの大よその割合は分かっているという情報が入力された場合には、閾値決定部52は、正規化データXを用いて計算したQ統計量やホテリングのT2統計量を周波数帯域毎に分解したデータの上位α%(αは事前情報として入力した値)に該当する周波数帯域毎に分解されたQ統計量とホテリングのT2統計量の各値を、予め計算する。仮に、全ての周波数帯域に対しては、異常データの大よその割合がわからず、一部の周波数帯域に対してのみわかっている場合には、わかっていない周波数帯域の閾値は、前述(a)の方法で決定する。また、異常データの割合はおおよそわかっているが、それがどの周波数帯域に属するかはわからない場合には、周波数帯域毎に分解されたQ統計量とホテリングのT2統計量の各値に基づいて、一旦閾値を決定し、前述(a)の場合の閾値決定法で決定した閾値と比較し、(a)の場合の閾値の50%を下回る閾値がクラスタリング手法で得られた場合には、(a)の場合の閾値を採用するというルールで対処する。
以上要するに、異常判定基準設定部5では、閾値決定部52は、閾値決定用事前情報入力部51から入力される事前情報に従って、プロセス1の正常と異常を判断する閾値を決定する。以上の一連の操作は、プロセス監視モデルを構築し、異常判断の基準を設定するためのものであり、通常はオフラインで行われる。
一方、以下で示す作用は、オンラインで実行される。まず、プロセス監視部6は、モデル構築部4で構築したプロセス監視モデルを使用して、プロセス1の監視を実行する。プロセス監視部6は、監視するプロセス変数として、各種センサ11〜1Nから新たに生成されたQ統計量やホテリングのT2統計量を、ウェーブレット変換で分解した周波数帯域毎のQ統計量やホテリングのT2統計量を監視する。即ち、プロセス監視部6は、下記式(6),(7)を使用して、周波数帯域毎に分解したQ統計量およびホテリングのT2統計量を監視する。
即ち、プロセスの監視対象がQ統計量やホテリングのT2統計量ではなく、それらをウェーブレット変換で分解した周波数帯域毎のQ統計量やホテリングのT2統計量である。
次に、プロセス異常診断部7は、Q統計量やホテリングのT2統計量ではなく、それらをウェーブレット変換で分解した周波数帯域毎のQ統計量やホテリングのT2統計量のいずれか一つが閾値を超えた場合に異常と判断する。
[異常診断部(2)]
もう一つの例は、多変量統計解析手法を用いたプロセスの異常診断部である。この方法は、多変量統計的プロセス監視・管理(MSPC:Multivariate Statistic Process Control)とDWTとを併用した異常診断部であるが、より基本的な異常監視装置はMSPCのみを用いるものである。
もう一つの例は、多変量統計解析手法を用いたプロセスの異常診断部である。この方法は、多変量統計的プロセス監視・管理(MSPC:Multivariate Statistic Process Control)とDWTとを併用した異常診断部であるが、より基本的な異常監視装置はMSPCのみを用いるものである。
図10を参照して、本発明の一実施形態に係わる異常診断部の第2の例について説明する。図10は、本発明の一実施形態に係わる異常診断部を含むプロセス制御システムの構成を示すブロック図である。
(プロセス監視装置の構成)
さらに、プロセス監視装置10は、プロセス通常データ抽出部230と、プロセス監視モデル構築部240と、プロセス監視部250(A,Bの2種類を含む)と、プロセス診断部260と、プロセス非通常要因センサ特定部270と、プロセス非通常要因推定部280とを含む。
さらに、プロセス監視装置10は、プロセス通常データ抽出部230と、プロセス監視モデル構築部240と、プロセス監視部250(A,Bの2種類を含む)と、プロセス診断部260と、プロセス非通常要因センサ特定部270と、プロセス非通常要因推定部280とを含む。
プロセス通常データ抽出部230は、プロセス計測データ収集・保存部2に保存された各種時系列データの中から、予め定義された通常状態のデータを抽出する。プロセス監視モデル構築部240は、プロセス通常データ抽出部230により抽出されたプロセスの通常状態のデータに対して、前述の主成分分析(PCA)を施すことにより、PCAのローディング行列(負荷行列)で表されるプロセス監視モデルを構築する(後述する図14を参照)。
プロセス監視部250は、Aタイプのプロセス監視部251及びBタイプのプロセス監視部252を含む。プロセス監視部251は、プロセス監視モデル構築部240で構築したプロセス監視モデルを使用し、後述する統計量データを算出する。具体的には、プロセス監視部251は、プロセス計測データ収集・保存部2から得られたプロセスの計測データをプロセス監視モデルに入力し、統計的誤差指標であるQ統計量(Q誤差)または統計的分散指標であるホテリング(Hotelling)のT2統計量(の少なくともいずれか一方を統計量データとして算出する。一方、プロセス監視部252は、プロセス監視部251により算出されたQ統計量またはホテリングのT2統計量に対して、ウェーブレット変換(離散ウェーブレット変換)を施すことにより、これらのデータを複数の解像度毎にデータ分解する。
プロセス診断部260は、プロセス状況判断基準部261及びプロセス状況判断部262を含む。プロセス状況判断基準部261は、予め設定した通常のプロセス状態から乖離していることを判断する。一方、プロセス状況判断部262は、プロセス状況判断基準部261から供給されたプロセス状況判断に基づいて、プロセス監視部252からの複数の解像度毎のQ統計量やホテリングのT2統計量の統計量データである時系列データからプロセスの状況を判断する。
プロセス非通常要因センサ特定部270は、プロセス状況判断部262によりプロセスが通常状態(正常)でないと診断されたときに、その要因となる少なくとも一つ以上のアクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218を特定する。プロセス非通常要因推定部280は、プロセス非通常要因センサ特定部270により特定された情報に基づいて、予め知識処理などを行っておくことにより、何故そのようなセンサ情報が出力されるかを推定する。
異常診断結果提示部4は、各種の情報を表示出力するための表示部を含み、プロセス監視部252、プロセス状況判断部262、プロセス非通常要因センサ特定部270、及びプロセス非通常要因推定部280の少なくともいずれか一つ以上の情報をオペレータに通知する機能を有する。
次に、図10と共に、図11から図17を参照して、プロセス監視装置10の動作を説明する。
まず、下水処理プロセス1では、アクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218により、所定の周期でプロセスの情報が計測されている。プロセス計測データ収集・保存部2は、予め決められたフォーマットに従って、当該計測結果である時系列データを保存する。
以下、図11のフローチャートを参照して、プロセス監視装置10の処理手順を説明する。
プロセス通常データ抽出部230は、プロセス計測データ収集・保存部2に保存された各種時系列データの中から、予め定義された通常状態のデータ、即ち通常の運転範囲内であると判断される時系列データ(スケーリングパラメータ)を抽出する(ステップS1)。
例えば、N+M+P個のセンサによってそれぞれ計測されるN+M+P個の時系列データの各々のレンジ(動作範囲)を計算し、これを可調整パラメータ設定部31にパラメータ(の初期値)として設定しておく。このスケーリングパラメータをs1〜sN+M+Pとしておく。
また、データに欠測データや異常データが含まれていたり、あるいはデータがノイズで乱されている様な場合には、予めこれらのデータに対して前処理を施しておくことが望ましい。具体的には、ノイズに対してはFIRフィルタやIIRフィルタなどのデジタルフィルタを使用した信号処理を行う。異常データに対しては、メジアンフィルタやウェーブレットフィルタなどを用いて、データの中から本当のプロセス情報であると思われる情報を抽出する。
プロセス通常データ抽出部230は、抽出した時系列データを、横(行)方向にアクチュエータ111〜1110の操作量センサ群及びプロセスセンサ121〜1218に対応する変量を設定し、縦(列)方向に時間を設定した行列Xとして保存する。
次に、プロセス監視モデル構築部240は、プロセス通常データ抽出部230により抽出されたプロセスの通常状態のパラメータ(s1〜sN+M+P)に対して、PCAを使用したデータ分解処理を実行し、PCAのローディング行列(負荷行列)で表される異常検出用のプロセス監視モデルを構築する(ステップS2)。
ここで、X∈Rm×nはm個の時系列データとn個の変量からなるデータ行列を意味する。T∈Rm×Pはm個のサンプル(あるいは時系列データ)とp<<n個の主成分数からなるスコア行列を意味する。P∈Rn×pはn個の変量とp<<n個の主成分数からなるローディング行列を意味する。また、E∈Rm×nはm個のサンプル(あるいは時系列データ)とn個の変量からなる誤差行列を意味する。
また、式(9)は、元のデータ行列を図12に示すように分解することに相当する。
以上のように分解されたデータに対して、ローディング行列PがQ統計量やホテリングのT2統計量である統計量データを計算するために用いられるプロセス監視モデルとなる。
ここで、プロセス監視モデル構築部240は、通常のPCAの代わりに、非線形PCAを使用してプロセス監視モデルを構築する構成でもよい。この場合には、ローディング行列Pの代わりに、スプライン関数やニューラルネットワークで用いられるシグモイド関数などの非線形関数がスコアに対して作用されることになる。また、プロセス監視モデルを、所定の周期あるいは所定のタイミングあるいはオペレータの指令によって更新する適応型PCAを使用してもよい。さらに、データ行列Xに同じ変量のデータの時刻をずらせたデータを含ませたダイナミックPCAとして適用することも可能である。下水処理プロセス1が複数の系列から構成されている様な場合には、各系列毎にPCAを適用して、これらのPCAを使用して算出するQ統計量やホテリングのT2統計量に対して、さらに一つのPCAを適用するという階層型のマルチブロックPCAを使用してもよい。また、下水処理プロセス1が、図10に示す様な連続型(CSTR型)のプロセスではなく、バッチ処理型のプロセスである場合には、マルチウェイPCAを使用することも可能である。以上のように、プロセス監視モデル構築部240は、通常範囲のデータに対して、各種のPCAを使用してプロセス監視モデルを構築する。
また、初期閾値設定部290は、異常検出モデルで異常判定を行うための基準となるしきい値を決定する(ステップS3)。例えばQ統計量やT2統計量の推定値の信頼限界を計算し、これをしきい値(の初期値)として可調整パラメータ設定部31のパラメータ初期値として設定しておく。各統計量のしきい値を各々Qlim,T2 limとしておく。
オペレータは、各変数のQ統計量やT2統計量への寄与量を計算する計算式(異常要因特定モデル)を作成し、プロセス非通常要因センサ特定部270に設定する(ステップS4)。このステップではN+M+P個の各センサがQ統計量やT2統計量に寄与する寄与量の計算式を設定する。
で定義される。この寄与が正常時に比べて極端に大きくなっている変数があれば、その変数が異常に関係していると判断できる。一方、T2統計量は主成分得点に関する統計量であるため、各変数の統計量への寄与を定義するのは簡単ではない。これまでに提案されている、第p変数のT2統計量への寄与の定義としては
がある。ここで、tは主成分得点からなるベクトル、vpは負荷量行列の第p行(第p変数に関する係数ベクトル)の転置ベクトルである。寄与はその定義より正数で与えられることが望ましいが、この式で計算される寄与は正負いずれの値も取りうる。しかし、寄与が大きな正の数となる少数の変数のみが重要であるため、寄与が負となる変数があっても実用上は問題ないとされる。
次に、プロセス監視部250は、プロセス監視モデル構築部240で構築されたプロセス監視モデルを使用して、プロセス監視を実行する。ここで、監視するプロセス変数は、アクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218そのものではなく、これらのセンサの出力データから新たに生成されたQ統計量あるいはホテリングのT2統計量であり、少なくともいずれか一方である。
通常では、Q統計量及びホテリングのT2統計量の両方を監視し、必要に応じて他の変数である例えばアクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218の中の重要なセンサ情報そのものや、PCAによって計算されたスコア(後述する)を平面上にプロットして監視することもできる。
プロセス監視部250において、プロセス監視部251は、プロセス計測データ収集・保存部2からの時系列データ及びプロセス監視モデル構築部240で構築されたプロセス監視モデルを使用して、Q統計量(SPE)及びホテリングのT2統計量である統計量データを、下記式(10)及び(11)に示す計算式により算出する(ステップS5)。
SPE(t)= x(t)T(I-PPT)x(t) ・・・(12)
T2(t)= t(t)TΛ-1t(t)= x(t)TPTΛ-1Px(t) ・・・(13)
ここで、アクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218において、ある時刻(t)のセンサ出力値をベクトルx(t)とする。また、Λは、主成分分析による各主成分の分散を対角要素として持つ行列であり、分散を正規化していることを意味する。また、Ιは適当なサイズの単位行列である。
T2(t)= t(t)TΛ-1t(t)= x(t)TPTΛ-1Px(t) ・・・(13)
ここで、アクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218において、ある時刻(t)のセンサ出力値をベクトルx(t)とする。また、Λは、主成分分析による各主成分の分散を対角要素として持つ行列であり、分散を正規化していることを意味する。また、Ιは適当なサイズの単位行列である。
前記の計算式で計算されるSPE(t)やT2(t)はスカラー値であるので、この値をトレンドグラフとして表示することでプロセス監視を行うことができる。また、予め計算しておいた上下限の限界値も、同時にプロットすることもできる。図13は、この概念を示す図である。図13に示すように、上下限値を設けて、その限界値を超えた場合に通常状態で無い(異常)であると判断する方法が通常のPCAによるプロセス監視方法である。
図14は、PCAを利用する異常診断の原理を説明するための概念図である。
PCAでは、座標軸どうしの直交性を保ったまま、データのばらつき(分散)方向に差座標軸を取り直す。最も分散の大きい方向の軸を第1主成分軸と呼び、順に第2主成分軸、…第n主成分軸と呼ぶ。PCAを適用する変量間に何らかの相関がある場合には、データが殆ど分布しない方向(分散が小さい方向)がある。そこで、ある一定値以上の分散を持つ主成分軸からなる超平面を定義すると、データはその超平面付近に分布する。
この超平面の次数は、式(9)に示すPに対応しており、図14ではP=2の平面である。式(9)で定義したローディング行列Pは、この超平面を構成する主成分軸を表現する行列である。また、スコア行列Tは、超平面上でのデータの位置を示す行列である。
式(12)で表されるQ統計量は、診断データが図14の平面から乖離している距離を表すスカラー量である。正常時のデータのQ統計量は、ある微小範囲内で変動する。従って、例えばQ統計量にある閾値を設定することによって、正常または異常の判断を行うことができる。一方、式(13)で表されるホテリングのT2統計量は、各主成分軸の分散を正規化した上で、図14の平面上でのデータのばらつきを表す量である。正常時データのホテリングのT2統計量も、ある一定範囲で変動するため、Q統計量と同じ方法で正常または異常の判断を行うことができる。図14で異常と示したデータは、Q統計量やホテリングのT2統計量の値が通常時から外れた場合を例示したものである。
以上のようなPCAによるプロセス監視方法だけでは、実際のプロセス異常を診断するためには不十分である場合が多い。そこで、本実施形態のプロセス監視装置10では、プロセス監視部250は、プロセス監視部251に加えて、プロセス監視部252を含む構成である。
次に、プロセス監視部250は、プロセス監視部251に加えて、プロセス監視部252を備えている。プロセス監視部252は、離散時間ウェーブレット変換による多重解像度解析を使用して、Q統計量やホテリングのT2統計量データを複数の信号に分解する(ステップS6)。
図15(A)〜(D)は、プロセス監視部252による信号分解の概念を示す図である。図15(A)は、同図(B)〜(D)に示す信号を合成した信号波形を示し、Q統計量やホテリングのT2統計量データ信号に対応するものである。図15(B)は、例えば日常の変動を示す信号波形を示す。図15(C)は、例えばセンサのノイズに対応する信号波形を示す。図15(D)は、なんらかの異常信号に対応する信号を示す。
ここで、図15(A)に示すそのまま監視している場合には、どの時点で異常が生じているのかを検知することは困難である。これに対して、図15(A)に示す信号波形が同図(B)〜(D)に示す信号に分解されていれば、図15(D)に示す異常信号により、どこの時点で異常が生じたかを、明確に検知することができる。
プロセス監視部252は、離散ウェーブレット変換を用いて、統計量データを複数の信号に分解する。離散ウェーブレット変換には、そのマザーウェーブレットの選び方によって様々な種類のものがある。本実施形態の離散ウェーブレット変換では、マザーウェーブレットの種類には特に限定されない。具体的には、最も簡単なHarrウェーブレットを用いれば良い。但し、マザーウェーブレットの種類に従って、フィルタバンクとして構成される要素フィルタのローパスフィルタとハイパスフィルタの構成が変化する。以上の様な方法によって、プロセス監視部250によりプロセス監視処理が実行される。
次に、プロセス診断部260は、プロセス状況判断基準部261及びプロセス状況判断部262を含み、所定の診断ルールに基づいてプロセスの異常診断処理(正常または異常の判断)を実行する(ステップS7)。プロセス状況判断基準部261は、解像度毎に分解された複数のQ統計量やホテリングのT2統計量に対して、図13に示すような限界値を予め設定し、予め設定した通常のプロセス状態から乖離していることを判断する。この場合、判断レベルとして、警告レベル(WL)と限界レベル(CL)を設定することが望ましい。
例えばQ統計量やT2統計量の推定値の信頼限界を計算し、これをしきい値(の初期値)として可調整パラメータ設定部31のパラメータ初期値として設定しておく。各統計量のしきい値を各々Qlim、T2 limとしておく。そして、可調整パラメータ設定部31に設定された各統計量のしきい値QlimとT2 limと計算したQ統計量およびT2統計量の値を比較することによって、正常あるいは異常の判断がなされる。
一方、プロセス状況判断部262は、プロセス状況判断基準部261から供給されたプロセス状況判断(判断レベル)に基づいて、例えば以下の様な診断ルールに基づいて正常と異常を判断する。具体的には、プロセス状況判断部262は、異常診断ルールとして、一点が限界レベル(CL)を超えたときには異常であると判断する。また、異常診断ルールとして、連続する3点のうち、2点以上が警告レベル(WL)を超えたときには異常であると判断する。また、異常診断ルールとして、連続する5点のうち4点以上が1標準偏差を超えたときに異常であると判断する。また、異常診断ルールとして、連続する8点のデータが単調増加あるいは単調減少する場合には、異常であると判断する。さらに、異常診断ルールとして、非ランダム性を持つなんらかのパターンが現れた場合には、異常であると判断する。あるいは、プロセス状況判断部262は、解像度毎に分解された複数のQ統計量やホテリングのT2統計量に対して、必要であれば累積総和(CUSUM)チャートなどのさらなる処理を実行する構成でもよい。要するに、以上のような手順によって、プロセスの通常状態と非通常状態とを識別することができる。
次に、プロセス非通常要因センサ特定部270は、プロセス状況判断部262によりプロセスが非通常状態であると診断されたときに、その要因となる少なくとも一つ以上のアクチュエータ111〜1110の操作量センサ群あるいはプロセスセンサ121〜1218を特定する(ステップS8)。
その要因となるセンサを特定するために、プロセス非通常要因センサ特定部270は、各変数のQ統計量やT2統計量への寄与量を計算する。そして、寄与量が大きいものが非通常状態である要因となるセンサであると推定する。
要因となるセンサの特定方法は色々と考えられる。例えば、以下の三つの特定方法がある。
(1) 最大の寄与量を持つものを異常要因センサの候補とする。
(2) 寄与量の大きい上位三つのセンサを異常要因センサの候補とする。
(3) 各変数の寄与量の平均値周りの分散を求め、分散がある一定値を越えたものを異常要因センサの候補とする。
また、プロセス非通常要因センサ特定部270は、図16に示すように、異常と判断された(分解された)Q統計量あるいはホテリングのT2統計量に対する寄与プロットを行うことによって、その要因となるセンサを特定してもよい。図16では、各バーグラフは、アクチュエータ111〜1110の操作量センサ群及びプロセスセンサ121〜12181に対応している。このバーの長いものが、非通常状態である要因となるセンサであると推定される。但し、ここでは必ずしも、図16に示すような一つの要因だけが大きくなっているとは限らない。例えば、図17に示すように、いくつかのセンサが通常状態で無いと推定される場合がある。このような場合には、プロセス非通常要因センサ特定部270は、複数のセンサを要因として特定する処理を実行する。
次に、プロセス非通常要因推定部280は、プロセス非通常要因センサ特定部270により特定されたセンサ情報に基づいて、このプロセスの本当の異常要因を推定する(ステップS9)。プロセス非通常要因推定部280は、具体的には、例えばエキスパートシステムにより推論を実行する構成である。プロセス非通常要因推定部280は、例えば、図16に示すように、ある一つのセンサだけが傑出して大きな値を示している場合には、そのセンサの故障であると推定する。また、プロセス非通常要因推定部280は、センサによっては故障信号を出すことができる様になっているものも多いので、そこから得られる故障信号との論理和あるいは論理積などを取ることによって、センサの異常を特定する。
更にまた、図17は、アンモニアを除去する硝化菌という微生物が活動しなくなった硝化阻害と呼ばれる現象が生じた場合の図であるが、この場合、硝化が行わなくなるためにアンモニアの濃度が高くなり、また硝化菌が活動しなくなるので、その活動に必要な酸素量が小さくなり、結果として溶存酸素濃度が高くなっている。プロセス非通常要因推定部280は、以上のようなプロセス知識に基づいて、予め「アンモニア濃度が高くかつ溶存酸素濃度が高い場合には硝化阻害の可能性がある」などのルールを作成し、当該ルールに基づいてその要因を推定する。
そして、異常診断結果提示部4は、各種の情報を表示出力するための表示部を含み、プロセス監視部252、プロセス状況判断部262、プロセス非通常要因センサ特定部270、及びプロセス非通常要因推定部280の少なくともいずれか一つ以上の情報をオペレータに通知する。これにより、オペレータは、プロセス監視結果を確認することができる。
以上のように本実施形態のプロセス監視装置であれば、多変量統計解析を用いた多変量統計的プロセス管理(MSPC)の異常検出方法(プロセス監視部250)として、ウェーブレット変換を用いた多重解像度解析を適用することにより異常検出の精度を高めることができる。従って、結果として異常要因となるセンサの特定や、プロセスの本当の異常要因の推定を容易に行なうことが可能となる。また、異常検出精度の向上により、オペレータなどが通常判断に迷う様な早期の異常検出が可能になり、プロセス監視装置としての実際的な価値を高めることができる。さらに、監視モデルに非線形性やダイナミクスを持たせることにより、非線形性の強いプロセスやダイナミックな特性を考慮すべきプロセスに対しても、精度の高い異常検出とその要因推定が可能になる。
この例では、各統計量に対して一つのしきい値を設けることによって正常あるいは異常の2値判断を行っているが、しきい値を複数設けることによってプロセスの正常と異常の状態を異常レベルに応じて判断してもよい。あるいは、しきい値という2値あるいは多値の判断ではなく、異常確率を判断する様にしてもよい。このような場合には、パラメータとして異常確率を表す確率分布の形状を決定するパラメータ(母数)を持つことになる。
[異常診断結果提示部]
次に、異常診断結果提示部4は、異常診断機能部32の結果をオペレータに対して提示する。この際、異常診断機能部32における診断結果が「正常」である場合には、正常であることを提示する様にしておいても良いが、プロセス監視では通常は特別に何かを提示することはしないことが多い。診断結果が「異常」である場合には、通常「異常」であることの何らかのアラームを発する。このアラームは、どのような形態であっても良いが、典型的にはブザーの様な音声によるものである。あるいは、CRTなどの画面上に、例えば赤色の点滅によって異常発生の表示をするなどの方法を採用することができる。また、「プロセスで異常が発生している可能性があります。異常の要因候補であるセンサは○○と△△と××です。」などというメッセージを音声で流す、あるいは、CRT上に表示するようにしておいてもよい。この際、MSPCを用いた場合には、単に「異常」であるというメッセージの他に、どのセンサの値が異常になっているかを同時に提示した方が良い。
次に、異常診断結果提示部4は、異常診断機能部32の結果をオペレータに対して提示する。この際、異常診断機能部32における診断結果が「正常」である場合には、正常であることを提示する様にしておいても良いが、プロセス監視では通常は特別に何かを提示することはしないことが多い。診断結果が「異常」である場合には、通常「異常」であることの何らかのアラームを発する。このアラームは、どのような形態であっても良いが、典型的にはブザーの様な音声によるものである。あるいは、CRTなどの画面上に、例えば赤色の点滅によって異常発生の表示をするなどの方法を採用することができる。また、「プロセスで異常が発生している可能性があります。異常の要因候補であるセンサは○○と△△と××です。」などというメッセージを音声で流す、あるいは、CRT上に表示するようにしておいてもよい。この際、MSPCを用いた場合には、単に「異常」であるというメッセージの他に、どのセンサの値が異常になっているかを同時に提示した方が良い。
[オペレータ判断フィードバック部]
次に、異常診断結果提示部4がユーザに提示した結果を受けて、オペレータ判断フィードバック部5が動作する。このフィードバックの方法に関する部分が、本システムの重要な機能である。
次に、異常診断結果提示部4がユーザに提示した結果を受けて、オペレータ判断フィードバック部5が動作する。このフィードバックの方法に関する部分が、本システムの重要な機能である。
異常診断結果提示部4における提示結果が「異常」である場合の結果のオペレータ判断の結果のフィードバックは、例えば、以下に示すいくつかのの方法によって、実行することができる。
[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)1]
通常、プラントの状態を監視する監視制御装置(SCADA:Supervisory Control and Data Acquisition)というものでは、各種の故障信号に対して、「異常アラーム停止」ボタンと「故障復帰」ボタンという2つのボタンを用意していることが多い。
通常、プラントの状態を監視する監視制御装置(SCADA:Supervisory Control and Data Acquisition)というものでは、各種の故障信号に対して、「異常アラーム停止」ボタンと「故障復帰」ボタンという2つのボタンを用意していることが多い。
監視制御装置(SCADA)では、機器やセンサの「故障」信号は通常検出する機能を有する事が多いが、本異常診断部は、このような「故障」を検知する前に、「故障」や「異常」の予兆をプロセスデータから検出しようとするものであり、その目的が異なっている。SCADAの異常診断機能は、機器やセンサが「実際に故障したこと」を検出するものであることに対し、本実施形態の異常診断システムではプロセスデータから「通常」の状態からは乖離しており、何か本格的な「異常」や「故障」が起こる可能性があることを診断するものである。従って、本異常診断部で「異常」という診断がなされた場合には、必ずしも機器やセンサが「故障」しているとは限らない。このような考え方は、プロセス監視や品質管理の分野では広く認識されている。例えば、品質管理に用いる統計的プロセス管理(SPC)では3σを基準とした管理を行っているが、この値(3σ)は品質の「管理限界」と呼ばれ、不良品であることを示す「規格外、仕様外」とは異なる。「管理限界」を越えたものは、生産ラインで品質に問題が生じつつあることを示し、放置すれば「規格外、仕様外」の不良品が生産されることを予知している。本実施形態の異常診断システムは、このような「管理限界」で管理することに相当するシステムであり、一般のSCADAに搭載されている異常診断システムは「規格外」を検出するようなシステムに相当する。
本装置では、このようなボタンに類似するボタンを複数用意することによって、オペレータの判断結果をフィードバックするものである。図18は、本装置における異常発報アラーム後の復帰手順を示したものである。通常は、異常アラームが発報された後に、そのアラームを停止するための停止ボタンをオペレータが押すことによってアラームを停止する。その後、実際に機器等が故障していたか否かをオペレータが確認し、修理などの適切な処置を施した上で、故障復帰ボタンを押すことによって、SCADAシステムが正常の監視状態に戻る。
まず、異常診断結果提示部4が異常発報を行った場合、オペレータはその異常アラームを停止するための停止ボタン301を押す。そして、オペレータが該当するプロセスデータ等を十分にチェックして、何らかの異常が認められる場合には、その異常アラームが正しかったと判断する異常復帰(問題無)ボタン302を押す。プロセスデータを十分にチェックしても、オペレータが異常では無いと判断し異常アラームを発報してもらいたくない場合には、異常アラームが誤っていると判断する異常復帰(問題有)ボタン303を押す。このように、単に異常の復帰ボタン302,303を2つ設けて、そのボタンを押す操作を使い分けてもらうだけで、異常診断部からの異常発報アラームに対するオペレータの判断結果を収集することができる。
このようなオペレータ判断結果のフィードバックに関する類似の方法を、例えば図19〜図21に示す。
図19では、異常アラームの停止ボタン311,312を正常・異常の判断に応じて使い分ける構成のものである。何らかの異常が認められる場合には、オペレータは異常アラーム停止(問題無)ボタン311を押す。オペレータが異常では無いと判断し異常アラームを発報してもらいたくない場合には、異常アラームが誤っていると判断する異常復帰(問題有)ボタン312を押す。その後、異常復帰(問題無)ボタン311、異常アラーム停止(問題有)ボタン312の何れかを操作した後、オペレータは異常復帰ボタン313を操作する。
このような構成はオペレータに瞬時での判断を要求するので、一般的には図18の構成の方が好まれると考えられるが、アラームを停止するという操作は早いタイミングで行う必要があるため、オペレータに該当プロセスデータを素早くチェックすることを促す効果があり、このような構成にしてもよい。
また、図20は、異常復帰を3つ以上複数設けて、異常のレベルに応じたオペレータの判断をフィードバックすることを狙ったものである。図20では、異常復帰(正常)ボタン322、異常復帰(異常レベル1)ボタン323、異常復帰(異常レベル2)ボタン324、および異常復帰(異常レベル3)ボタン325が設けられている。この場合、異常のレベルを異常復帰(異常レベル1)ボタン323、異常復帰(異常レベル2)ボタン324、および異常復帰(異常レベル3)ボタン325によって3つに分けている。
このような構成を取る場合には、異常診断の方も1つのしきい値で正常・異常の判断をするのではなく、複数のしきい値を設けて、異常のレベルをメッセージとして提示しておく様にすることが好ましい。
図21に示した構成は、異常要因となるセンサに対するオペレータのフィードバック情報も同時に収集しようとするものであり、異常アラームに対してオペレータの判断が異常であった場合、その要因として特定したセンサも正しかったか否かをフィードバックしてもらうものである。オペレータが問題があると判断した場合の異常復帰ボタン332を押すと、例えば、CRTなどの画面上で図6に示した様な各センサ名と各センサの正常・異常情報333が同時に提示される。デフォルトの提示は、異常診断部3の診断結果に従ったものになっているが、もし、異常と診断されたあるセンサの値は正常と考えられる場合には、それを正常に修正することができる。逆に、異常では無い診断されたあるセンサの値が異常であるとオペレータが判断する場合には、それを異常に修正することもできる。そして、最後に確認ボタンを押すことによってこの修正操作が完了する。このようなボタン操作は、オペレータに多少の負担を強いることにはなるが、その代わりにプロセスの異常状態に対する詳細なフィードバックを収集することができる。そのため、これに基づいて、より適切に可調整パラメータを調整することができる。
[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)2]
異常診断部3で異常発報が生じた場合、オペレータは自動運転モードから一旦手動運転モードに切り替えることが多い。通常、オペレータが監視を行う監視画面上には、現在の運転モードが表示されている場合が多い。
異常診断部3で異常発報が生じた場合、オペレータは自動運転モードから一旦手動運転モードに切り替えることが多い。通常、オペレータが監視を行う監視画面上には、現在の運転モードが表示されている場合が多い。
図22は、監視画面上に表示される運転モードの状態を示す図である。図22(A)では、自動運転モードボタン341が点灯し、手動運転モードボタン342が消灯して、自動運転モードであることを示している。図22(B)では、手動運転モードボタン342が点灯し、自動運転モードボタン341が消灯して、手動運転モードであることを示している。
異常発報が生じた時点を起点として、予め設定した所定期間内(必要に応じて異常発報時点以前の時間を含めても良い。)に、図22(A)から図22(B)に示すように、自動運転モード(図22(A))から手動運転モード(図22(B))への変更が行われた場合、オペレータの判断は異常であったと判定することができる。このようにすると、オペレータに全く負担を強いることなく、オペレータの判断結果を収集できる。
また、システムが自動的に実施してしまうのではなく、その確認をオペレータに求めるようにしてもよい。このような方法は、多少の負担をオペレータに強いることになるが、例えば、「あなたの操作から判断すると何らかの異常が生じていると思われますがその通りですか?」などのメッセージに対してYES/NOで回答してもらうような仕組みを構成しておけば、異常アラームや異常復帰ボタンを複数設けることと比較すると、オペレータに主体的な判断を行うことの要求が最小限にとどめることができ、比較的容易にオペレータの判断結果をシステムにフィードバックすることができる。
[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)3]
異常診断部3で異常発報が生じた際、この異常発報を記録しておく記録装置を持っておく。異常発報のメッセージを表の様な形式のメッセージとして記録し、これをオペレータが操作を行う監視画面で見ることができる様にしておく。通常のSCADAシステムでもこのような異常アラームの記録は見ることができる様に出来ている場合が多い。但し、通常のSCADAシステムではこのような異常アラームの記録を見ることができる様になっているだけである。本装置では、このような異常アラームの記録を削除できる様な装置を設ける。
異常診断部3で異常発報が生じた際、この異常発報を記録しておく記録装置を持っておく。異常発報のメッセージを表の様な形式のメッセージとして記録し、これをオペレータが操作を行う監視画面で見ることができる様にしておく。通常のSCADAシステムでもこのような異常アラームの記録は見ることができる様に出来ている場合が多い。但し、通常のSCADAシステムではこのような異常アラームの記録を見ることができる様になっているだけである。本装置では、このような異常アラームの記録を削除できる様な装置を設ける。
この一例を図23に示す。図23に示す様に、異常発生時刻欄351、異常の種類欄352、異常要因センサ欄352、削除欄353がある、図23に示すように、削除欄353のチェックボックスにチェックをつけた異常メッセージを削除する。あるいは、図24に示すように、ゴミ箱の様なアイコンを設けておき、ある異常メッセージをマウス等でゴミ箱のアイコン355にドラッグ&ドロップすれば、そのメッセージが削除される様な仕組みを作っておく。このような仕組みを構成しておき、システム側では、削除されたメッセージと非削除のメッセージを分類して管理する様にしておく。このようにしておき、オペレータが実際には異常では無いと判断する異常メッセージを削除してもらう様にしておけば、削除されたメッセージに対するオペレータの判断は「正常」、削除されなかったメッセージに対するオペレータの判断は「異常」と解釈することができる。このような仕組みを設けることの利点は、必ずしもオンラインでオペレータの判断を求めなくても、異常メッセージの履歴情報をオペレータに対して提示することによって、十分にオペレータに吟味をしてもらってから、オペレータの判断結果を収集することができる。
[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)4]
[異常診断結果提示部(異常診断)1〜3]に示した例は、実際にオペレータからプロセスの正常・異常に関する情報をフィードバックしてもらっている。この考え方の前提には、「(熟練の)オペレータはプロセスの正常・異常に対する正しい知見を持っている」という前提に基づいている。しかし、必ずしもオペレータが正しい判断をするとは限らないし、たとえ熟練のオペレータであっても、誤った判断を行うこともある。このような場合を想定して、オペレータの判断を修正することを目的としたものである。
[異常診断結果提示部(異常診断)1〜3]に示した例は、実際にオペレータからプロセスの正常・異常に関する情報をフィードバックしてもらっている。この考え方の前提には、「(熟練の)オペレータはプロセスの正常・異常に対する正しい知見を持っている」という前提に基づいている。しかし、必ずしもオペレータが正しい判断をするとは限らないし、たとえ熟練のオペレータであっても、誤った判断を行うこともある。このような場合を想定して、オペレータの判断を修正することを目的としたものである。
先に記載した様に、本異常診断部は、プロセスで生じる「故障」や「(重大)異常」の兆候を検出し、診断するものである。従って、通常は、一般のSCADAシステムの付加価値を向上させるためにSCADAシステムと同時に用いられることが多い。本例はこのようなSCADAシステムと異常診断部が併用して用いられている場合を想定しているものである。このような場合、異常診断システムが異常発報を行った場合、プラントのオペレータが異常では無いと判断して監視を続けた場合に、実際に機器(ポンプやセンサなど)の故障や何らかのプロセスの重大異常状態(例えば、下水処理プロセスの場合は水質処理異常)に陥る可能性がある。このような「故障」や「重大異常」に陥った場合は、SCADAシステムから故障信号が発報され、SCADAシステムが持つ故障診断機能が動作する。従って、異常診断部3による異常発報アラームが出た後の所定の一定期間内にSCADAシステムから故障信号が発報された場合は、異常診断部3の異常発報アラームは正しかったと判断してよい。
正確には、この作用にはオペレータの判断が入っていないので、オペレータ判断のフィードバックでは無いが、異常診断部3の異常診断結果に対する確認や修正をフィードバックするという意味で広義にオペレータ判断フィードバックとして捉ることができる。
異常示した例が、異常診断時のオペレータ判断フィードバック部5の実施例であり、これらの例は、各々独立にあるいは複数を組みあわせて用いることができる。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)]
上述したオペレータ判断フィードバック部の例は、異常診断部3によって、異常アラームが発報された場合に対するオペレータ判断フィードバック部5の場合である。以下に示す作用は、異常診断部3によって異常アラームが発報されていない場合に対するオペレータ判断フィードバック部5の処理について説明する。異常アラームが発報されない正常の場合は、オペレータに対してフィードバックを要求するトリガが無いので、この場合にオペレータの判断結果をフィードバックしてもらうことはかなり難しい事である。
上述したオペレータ判断フィードバック部の例は、異常診断部3によって、異常アラームが発報された場合に対するオペレータ判断フィードバック部5の場合である。以下に示す作用は、異常診断部3によって異常アラームが発報されていない場合に対するオペレータ判断フィードバック部5の処理について説明する。異常アラームが発報されない正常の場合は、オペレータに対してフィードバックを要求するトリガが無いので、この場合にオペレータの判断結果をフィードバックしてもらうことはかなり難しい事である。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1]
プロセスで何らかの異常が発生した場合に、オペレータはプロセスデータのトレンドグラフ(時系列データをプロットしたグラフ)を確認して、その後に何らかの対処を行う場合が多い。そこで、図25(A)に示す様に、プロセス状態量センサ111〜11Nと、プロセス入力量センサ121〜12Mと、プロセス出力量センサ131〜13PのN+M+P個のセンサに対応する各センサの名称を表示する表示画面を用意する。あるセンサ名をマウスなどでクリックして選択すれば、そのセンサに対応する時系列データ(図25(B))を表示できる様にしておく。
プロセスで何らかの異常が発生した場合に、オペレータはプロセスデータのトレンドグラフ(時系列データをプロットしたグラフ)を確認して、その後に何らかの対処を行う場合が多い。そこで、図25(A)に示す様に、プロセス状態量センサ111〜11Nと、プロセス入力量センサ121〜12Mと、プロセス出力量センサ131〜13PのN+M+P個のセンサに対応する各センサの名称を表示する表示画面を用意する。あるセンサ名をマウスなどでクリックして選択すれば、そのセンサに対応する時系列データ(図25(B))を表示できる様にしておく。
図25(C)のフローチャートを参照して、このオペレータ判断フィードバック部5の動作を説明する。例えば、流入リン濃度をクリックした場合(ステップS21)に、対応するリン濃度の時系列データ(図25(B))が表示された(ステップS22)ことを意味する。この時系列データ(図25B中)の円部分が時系列データを表示された時刻に相当している。この場合、センサの値が0を示しているので、センサに何らかの異常が生じていると考えられる。そこで、オペレータは、流入リン濃度を計測しているリンセンサをチェックするために、例えば、センサを停止するあるいはセンサを洗浄するなどのアクションを行う(ステップS23)。あるいは、リン濃度を計測して、例えば有機物の投入量を制御している場合には、有機物投入ポンプを停止させる、あるいは、この制御回路を切るなどのアクションを行う。このように、「プロセス時系列データの表示による確認」に加えて、「何らかのアクション」が起こった場合には、何らかの異常が発生している場合が多い。そこで、「プロセスデータの確認」+「プロセスの機器に対するアクション」の組み合わせが生じた場合に、異常診断部3の診断結果が正常であってもプラントオペレータは異常状態であると判断していると判定(推定)することにする(ステップS24)。
しかしこのように判断すると、たまたま、リン濃度の時系列データを確認した後に、全く関係の無い機器を操作した場合にも、オペレータの判断は「異常」であったと判定されてしまうので、これを避けるために、例えば、図26に示す様に、予め各センサとそれに関連する機器の対応表を用意しておき、「プロセスデータの確認」+「対応表にあるプロセスの機器に対するアクション」があった場合に、異常診断部3の診断結果が正常であってもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する様に修正することもできる。このような方法を採用すると、プロセス毎に図26の様な対応表を作成しなければならないというエンジニアリングが必要となるものの、より信頼度を向上させてオペレータの判断をフィードバックすることができる。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)2]
次に、オペレータ判断フィードバック部5の実施例の具体的処理を示す。[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)1]で説明した処理とほぼ同様である。[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)1]では異常アラームの発報が生じた場合の処理であったのに対し、本例では、異常アラームが生じていない場合の動作である点が異なる。すなわち、あるタイミングで、図22に示した様に自動運転モードから手動運転モードに変更が行われた場合、オペレータの判断は異常であったと判定することにする。
次に、オペレータ判断フィードバック部5の実施例の具体的処理を示す。[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)1]で説明した処理とほぼ同様である。[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)1]では異常アラームの発報が生じた場合の処理であったのに対し、本例では、異常アラームが生じていない場合の動作である点が異なる。すなわち、あるタイミングで、図22に示した様に自動運転モードから手動運転モードに変更が行われた場合、オペレータの判断は異常であったと判定することにする。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)3]
ここで説明するオペレータ判断フィードバック部は、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1]の処理と類似しているが、相違点は機器に対するアクションではなく、電話連絡などの連絡というアクションを考慮している点である。
ここで説明するオペレータ判断フィードバック部は、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1]の処理と類似しているが、相違点は機器に対するアクションではなく、電話連絡などの連絡というアクションを考慮している点である。
つまり、プロセスで何らかの異常が発生した場合に、オペレータはプロセスデータのトレンドグラフ(時系列データをプロットしたグラフ)を確認して、その後に異常の有無や種類を確認するために何らかの連絡を取ることがある。そこで、そこで、図27(A)に示す様に、プロセス状態量センサ111〜11Nと、プロセス入力量センサ121〜12Mと、プロセス出力量センサ131〜13PのN+M+P個のセンサに対応する各センサの名称を表示する表示画面を用意しておき、あるセンサ名をマウスなどでクリックして選択すれば、そのセンサに対応する時系列データ(図27(B))を表示できる様にしておく。
図27(C)のフローチャートを参照して、このオペレータ判断フィードバック部の動作を説明する。例えば、流入リン濃度をクリックした場合(ステップS31)に、対応するリン濃度の時系列データが表示される(ステップS32)。そして、オペレータはそこに異常を認めた場合やあるいは異常が疑われる場合には、例えば、電話などで別のオペレータやプロセス管理を行うマネージャに確認の連絡を行う(ステップS33)。そこで、「プロセスデータの確認」+「通信機器による連絡」の組み合わせが生じた場合に、異常診断部3の診断結果が正常であっても、プラントオペレータは異常状態であると判断していると判定(推定)する(ステップS34)。
このような組み合わせを検出するためには、電話などでの通信を行う手段を別途監視する必要があるが、これは、例えば、ITV(Interactive TV)などによる動画監視によってオペレータの行動を監視すれば良い。このようなシステムを別途構築するコストが問題になる場合には、異常診断システム、あるいは、これと通常併用して用いられるSCADAシステムに通信手段を設置し、このシステムを通して通信を行ってもらう様にすれば良い。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)4]
何らかの異常が生じた場合、オペレータは各種アクチュエータ111〜119,1110を頻繁に操作することが多い。そこで、例えば10分毎などの所定期間毎に対するオペレータの操作回数をカウントしておき、図28に示す様な所定期間毎の操作回数の履歴グラフを作成する。そして、この所定期間毎の操作回数が所定の回数を越えた場合に、たとえ異常診断部3の診断結果が正常であったとしてもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する。この判断のしきい値は、例えば、所定期間毎の操作回数の平均mと標準偏差σを予め計算しておき、操作回数がm±ασ(αは2.5〜3.5程度の値)を越えた場合とすることができる。
何らかの異常が生じた場合、オペレータは各種アクチュエータ111〜119,1110を頻繁に操作することが多い。そこで、例えば10分毎などの所定期間毎に対するオペレータの操作回数をカウントしておき、図28に示す様な所定期間毎の操作回数の履歴グラフを作成する。そして、この所定期間毎の操作回数が所定の回数を越えた場合に、たとえ異常診断部3の診断結果が正常であったとしてもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する。この判断のしきい値は、例えば、所定期間毎の操作回数の平均mと標準偏差σを予め計算しておき、操作回数がm±ασ(αは2.5〜3.5程度の値)を越えた場合とすることができる。
なお、「操作回数」の代わりに「電話等通信機器による連絡回数」をカウントしても良い。則ち、所定期間毎の連絡回数の履歴を作成し、所定期間毎の連絡回数が所定の回数を越えた場合に、たとえ異常診断部3の診断結果が正常であったとしてもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)5]
先に述べた様に、オペレータは何か異常が生じた場合には、各種アクチュエータ111〜119,1110を頻繁に操作することが多いが、異常発報がある場合には操作回数が増えていることは当然である。そこで、操作回数そのものをカウントするのではなく、例えば図29に示す様に所定期間毎の操作回数と異常発報回数のバランスの履歴グラフを作成する。そして、このバランスが崩れた場合に、異常診断部3の診断結果が正常であったとしてもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する。バランスの計算方法は例えば、「操作回数−異常発報回数」や「操作回数/異常発報回数」などの指標で評価し、この指標に対して、所定期間毎に平均mと標準偏差σを予め計算しておき、指標がm±ασ(αは2.5〜3.5程度の値)を越えた場合とすることができる。
先に述べた様に、オペレータは何か異常が生じた場合には、各種アクチュエータ111〜119,1110を頻繁に操作することが多いが、異常発報がある場合には操作回数が増えていることは当然である。そこで、操作回数そのものをカウントするのではなく、例えば図29に示す様に所定期間毎の操作回数と異常発報回数のバランスの履歴グラフを作成する。そして、このバランスが崩れた場合に、異常診断部3の診断結果が正常であったとしてもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する。バランスの計算方法は例えば、「操作回数−異常発報回数」や「操作回数/異常発報回数」などの指標で評価し、この指標に対して、所定期間毎に平均mと標準偏差σを予め計算しておき、指標がm±ασ(αは2.5〜3.5程度の値)を越えた場合とすることができる。
なお、「操作回数」の代わりに「電話等通信機器による連絡回数」を用いても良い。則ち、所定期間毎の連絡回数と異常発報回数とのバランスの履歴グラフを作成し、このバランスが崩れた場合に、異常診断部3の診断結果が正常であったとしてもプラントオペレータの判断は異常であったと判定(推定)する。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)6]
本例は、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能に付加して用いられるものである。通常のプラント運用において、オペレータは、「操作量等の機器に対するアクション」や「電話等の通信機器による連絡」をプラントで何らかの異常が生じた場合に、頻繁に行うという特徴があるが、プラントが異常で無い場合であっても、例えば保守点検日やプロセス特性試験日などの特殊な日にも、「操作量等の機器に対するアクション」や「電話等の通信機器による連絡」の回数が増えることがある。これらの特殊日は予めいつ行われるがわかっているので、このような保守点検日やプロセス特性試験日における判断は行わない様にしておくことができる。このような作用を追加することによって、オペレータ判断のフィードバック情報の確信度を高めることができる。
本例は、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能に付加して用いられるものである。通常のプラント運用において、オペレータは、「操作量等の機器に対するアクション」や「電話等の通信機器による連絡」をプラントで何らかの異常が生じた場合に、頻繁に行うという特徴があるが、プラントが異常で無い場合であっても、例えば保守点検日やプロセス特性試験日などの特殊な日にも、「操作量等の機器に対するアクション」や「電話等の通信機器による連絡」の回数が増えることがある。これらの特殊日は予めいつ行われるがわかっているので、このような保守点検日やプロセス特性試験日における判断は行わない様にしておくことができる。このような作用を追加することによって、オペレータ判断のフィードバック情報の確信度を高めることができる。
例えば、下水処理プロセスなどでは、水質の測定を1時間あるいは2時間毎に1日を通して測定する通日試験日などがある。他のプロセスでも定期的にプロセス状態をチェックすることがある。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)6]
本例は、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能に付加して用いられるものである。[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能は、正確にはオペレータの判断を「推測する」ものであって、オペレータの判断そのものでは無い。一方、オペレータの判断そのものを、オペレータに対するシステムからのアクション(トリガ)を無くして収集することは、現実的には難しいことが多い。
本例は、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能に付加して用いられるものである。[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能は、正確にはオペレータの判断を「推測する」ものであって、オペレータの判断そのものでは無い。一方、オペレータの判断そのものを、オペレータに対するシステムからのアクション(トリガ)を無くして収集することは、現実的には難しいことが多い。
そこで、[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜5]の機能によってオペレータの判断を「推測」し、その結果「オペレータが異常と判断しているであろう」と推定される場合に、オペレータに対して確認をとる。
つまり、システム側で勝手にオペレータの判断を推定するのではなく、システムからオペレータに確認をとるというステップを踏むことによって、本当のオペレータの判断を収集することができる。これは、別の見方をすれば、異常診断部とは別に、オペレータの行動履歴からオペレータが判断しているであろう異常状態を推定する異常状態推定装置を設け、これと異常診断部と併用して用いていると考えることもできる。
このような事を行うことのメリットは、オペレータに自主的に判断を任せるのではなく、あくまでもシステムからオペレータに「判断をフィードバックしてほしい」という旨のメッセージを必要に応じて提示している点である。これにより、より容易にかつ確実にオペレータの判断を収集することができる。この場合のフィードバックの具体的収集方法は、[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)1]に説明した例と同様にすれば良い。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)7]
本例は、オペレータに負担をかけるものの、確実にオペレータからの判断結果を収集することを狙ったものである。
本例は、オペレータに負担をかけるものの、確実にオペレータからの判断結果を収集することを狙ったものである。
ここでは、オペレータが何らかのプロセスに対する異常を検知し、プロセス状態が異常である場合に、その旨をシステムに入力することを要請するものである。このような方法の欠点は、オペレータに過剰に負担を強いる点とシステム側から常にトリガを発するわけではないので、オペレータがフィードバックすることを忘れがちになるという点である。しかしその一方、オペレータは、何らかの異常が生じた場合には、その記録を残している場合も多く、通常はノートの様なものに手書きで残すことが多いが、これをシステム上に電子的に残してもらう様に変更すれば、オペレータが異常と判断した結果を確実に収集できる。特に、熟練したオペレータは、几帳面に記録を残していることも多く、この記録の残し方を電子的なものに変更するだけで、異常診断部34の診断結果が正常であることに対してオペレータの判断結果が異常であったという情報を収集することができる。
[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)8]
本オペレータ判断フィードバック部5の動作は、[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)4]の動作とほぼ同様である。異なる点は異常診断部3が異常発報のアラームを出しておらず、正常であると診断している点のみである。このような場合においても、SCADAシステムと異常診断システムを併用している場合には、「故障」や「重大異常」に陥った場合は、SCADAシステムから故障信号が発報されることがあるので、たとえ、異常診断部3から異常発報アラームが発せられていなくとも、SCADAシステムから故障信号が発報された場合は、オペレータの判断結果に関わらず、実際に異常が生じていると判定する。この機能を[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜6]に説明した機能の代わり、あるいは追加して持たせることができる。
本オペレータ判断フィードバック部5の動作は、[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)4]の動作とほぼ同様である。異なる点は異常診断部3が異常発報のアラームを出しておらず、正常であると診断している点のみである。このような場合においても、SCADAシステムと異常診断システムを併用している場合には、「故障」や「重大異常」に陥った場合は、SCADAシステムから故障信号が発報されることがあるので、たとえ、異常診断部3から異常発報アラームが発せられていなくとも、SCADAシステムから故障信号が発報された場合は、オペレータの判断結果に関わらず、実際に異常が生じていると判定する。この機能を[オペレータ判断フィードバック部(正常診断)1〜6]に説明した機能の代わり、あるいは追加して持たせることができる。
[オペレータ判断フィードバック部(異常診断)4]でも述べたとおり、正確にはこの作用にはオペレータの判断が入っていないので、オペレータ判断のフィードバックでは無いが、異常診断部3の異常診断結果に対する確認や修正をフィードバックするという意味で広義にオペレータ判断フィードバックとして捉えられる。
[異常診断整合性結果保持部]
次に、異常診断整合性結果保持部6では、オペレータ判断フィードバック部5による「オペレータによるプロセスの正常・異常の判断」と、異常診断機能部32で診断された「異常診断部3によるプロセスの正常・異常の判断」との一致性をまとめたものを整理して保持する。最も単純な例は、ある所定期間にわたる異常診断機能部32によって診断された「正常」あるいは「異常」の回数と、オペレータ判断フィードバック部5によって判断された「正常」あるいは「異常」の回数を、図30に示す様なテーブルを作成することである。図30では、異常診断機能部32が正常であると判断し、且つオペレータが正常と判断した回数がW回である。異常診断機能部32が正常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が正常である回数がW回である。異常診断機能部32が正常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が異常である回数がX回である。異常診断機能部32が異常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が正常である回数がY回である。異常診断機能部32が異常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が異常である回数がZ回である。
次に、異常診断整合性結果保持部6では、オペレータ判断フィードバック部5による「オペレータによるプロセスの正常・異常の判断」と、異常診断機能部32で診断された「異常診断部3によるプロセスの正常・異常の判断」との一致性をまとめたものを整理して保持する。最も単純な例は、ある所定期間にわたる異常診断機能部32によって診断された「正常」あるいは「異常」の回数と、オペレータ判断フィードバック部5によって判断された「正常」あるいは「異常」の回数を、図30に示す様なテーブルを作成することである。図30では、異常診断機能部32が正常であると判断し、且つオペレータが正常と判断した回数がW回である。異常診断機能部32が正常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が正常である回数がW回である。異常診断機能部32が正常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が異常である回数がX回である。異常診断機能部32が異常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が正常である回数がY回である。異常診断機能部32が異常であると判断し、且つオペレータ判断フィードバック部の出力が異常である回数がZ回である。
上述したように、MSPCの様に単純に正常・異常の判断をするだけでなく、異常要因となるセンサまで特定し、オペレータも単純に「正常」あるいは「異常」の判断をするだけでなく、各センサについて「正常」あるいは「異常」の判断をしている場合には、例えば、図31に示すようなテーブルを作成する。図31では、センサ毎に異常診断機能部32の判断結果と、オペレータ判断フィードバック部5の出力結果とが整理されたテーブルである。
また、「正常」あるいは「異常」の2値判断ではなく、異常レベルに応じた多値判断を異常診断部3とオペレータ判断フィードバック装置5で行っている場合には、図32に示すような、多値判断を反映したテーブルを作成する。
[可調整パラメータ学習部]
次に、可調整パラメータ学習部7では、可調整パラメータ設定部31に設定されている、その時点(学習を行う時点)での可調整パラメータすなわち、s1〜sN+M+P、Qlim、T2 limの(いずれか一つ以上)の値を、異常診断整合性結果保持部6に保持された異常診断部3による「正常」あるいは「異常」の診断結果とオペレータ判断フィードバック部5による「正常」あるいは「異常」の判断結果の比較結果を用いて、調整(更新、学習、修正)する。この調整方法や調整手順はどのようなものであっても良いが、異常診断整合性結果保持部6で、図30〜図32に示した様な形式保持されたデータに基づいて、可調整パラメータを調整する場合には、「ベイズの定理」と呼ばれる確率に関する定理を利用した推定方法を用いることが、調整方法のアルゴリズムを実装する上で、実施しやすい。以下では、ベイズの定理を用いた具体的な可調整パラメータの推定について説明する。
次に、可調整パラメータ学習部7では、可調整パラメータ設定部31に設定されている、その時点(学習を行う時点)での可調整パラメータすなわち、s1〜sN+M+P、Qlim、T2 limの(いずれか一つ以上)の値を、異常診断整合性結果保持部6に保持された異常診断部3による「正常」あるいは「異常」の診断結果とオペレータ判断フィードバック部5による「正常」あるいは「異常」の判断結果の比較結果を用いて、調整(更新、学習、修正)する。この調整方法や調整手順はどのようなものであっても良いが、異常診断整合性結果保持部6で、図30〜図32に示した様な形式保持されたデータに基づいて、可調整パラメータを調整する場合には、「ベイズの定理」と呼ばれる確率に関する定理を利用した推定方法を用いることが、調整方法のアルゴリズムを実装する上で、実施しやすい。以下では、ベイズの定理を用いた具体的な可調整パラメータの推定について説明する。
以下に、このパラメータ推定の実施手順を、図33のフローチャートを参照して説明する。可調整パラメータとしてQlimあるいはT2 limのしきい値とした場合で説明する。ここでは、Qlimが可調整パラメータとして選択されていると仮定しておく。
ベイズの定理を適用する場合には、事前確率と呼ばれる主観的な確率(客観的な確率である必要は無い)である異常発報確率p(+)と正常確率p(-)を計算する(ステップS41)。そのために、まず、可調整パラメータQlimの現在の値が、どのくらいの頻度(確率)で、異常発報アラームを発するかを、過去のデータに基づいて計算する。この際、例えば、所定の一定期間T日の全データ数xallに対する異常データ数x+の割合、すなわち、
p(+)=x+/xall …(14)
として計算することができる(図34)。
p(+)=x+/xall …(14)
として計算することができる(図34)。
として求めることになる。ここで、“mean”は平均を取る操作を意味し、x1は一日の全データ数、x+*,*=1,2,…,Tは各日における異常データ数を表す。異常発報確率p(+)がわかれば、正常である確率p(-)は、式(16)によって求めることが出来る。
p(-)=1−p(+) …(16)
このようにして求めた異常発報確率p(+)と正常確率p(-)を、ベイズの定理を適用するための事前確率とする。
このようにして求めた異常発報確率p(+)と正常確率p(-)を、ベイズの定理を適用するための事前確率とする。
ベイズの定理の適用にあたっては、このように事前確率を決定する必要があるが、事前確率は一種の主観確率であるので、必ずしも、上記の様に事前確率を設定することが適切であるとは限らない。このような場合には、主観を排除するために、事前確率を一様にする方法もある。このような方法を採用する場合、正常である確率p(-)を(17)式で設定しても良い。
p(-)=p(+)=0.5 …(17)
次に、オペレータの判断が正しいという仮定の下で、異常診断整合性結果保持部6が保持するテーブルに基づいて、異常診断部3が異常発報を行ったり行わなかったりする条件付き確率を求める(ステップS42)。例えば、異常診断整合性結果保持部6で保持されているテーブルが、図29の場合には、テーブルから以下の4つの条件付確率を計算することができる(図35)。
次に、オペレータの判断が正しいという仮定の下で、異常診断整合性結果保持部6が保持するテーブルに基づいて、異常診断部3が異常発報を行ったり行わなかったりする条件付き確率を求める(ステップS42)。例えば、異常診断整合性結果保持部6で保持されているテーブルが、図29の場合には、テーブルから以下の4つの条件付確率を計算することができる(図35)。
この計算によって、オペレータの判断結果の下での異常診断システムの診断結果の確率を計算できる。
次に、事前確率と条件付き確率とベイズ推定を用いて正解率を計算する(ステップS43)。(14)〜(17)式の事前確率と(18)〜(21)式の条件付確率から、ベイズの定理を用いて、次の様に事後確率を計算する。
式(24)と式(25)は、各々、式(22)と式(23)を1から引くことによって得られるので、本質的には、この事後確率は2つの式が意味を持っている。そこで、例えば、互いに独立な式(22)と式(23)を本質的な事後確率と見なすことにする。そこで、仮に式(22)を「正常正解率」、式(23)を「異常正解率」と名づけることにすれば、
「正常正解率」と「異常正解率」に基づいて、閾値の値を更新する(図36)(ステップS44)。閾値の値を更新するために、「正常正解率」と「異常正解率」に基づいて、しきい値を調整する調整則を求める。この調整則の構成方法も多数考えられるが、例えば、以下の様な差分型の調整方法によって、しきい値の値を更新することができる。
「正常正解率」と「異常正解率」に基づいて、閾値の値を更新する(図36)(ステップS44)。閾値の値を更新するために、「正常正解率」と「異常正解率」に基づいて、しきい値を調整する調整則を求める。この調整則の構成方法も多数考えられるが、例えば、以下の様な差分型の調整方法によって、しきい値の値を更新することができる。
p(F|+)−p(T|-)>0の場合
Qlim(k+1)=Qlim(k)+(THmax−Qlim(k)−(p(F|+)−p(T|-)) …(26)
p(F|+)−p(T|-)<0の場合
Qlim(k+1)=Qlim(k)−(THmin−Qlim(k))−(p(F|+)−p(T|-)) …(27)
ここで、kは離散的な時間を表すパラメータであり、更新前と更新後の関係を表している。また、THminとTHmaxは、しきい値の取りうる値の最小値と最大値を表す。この式において、Qlim(k)の値は、可調整パラメータ設定部31からその値を参照する。また、p(F|+)やp(T|-)の値は、異常診断整合性結果保持部6の比較結果から上記手順に従って導出した式(22)と式(23)の値を用いる。
Qlim(k+1)=Qlim(k)+(THmax−Qlim(k)−(p(F|+)−p(T|-)) …(26)
p(F|+)−p(T|-)<0の場合
Qlim(k+1)=Qlim(k)−(THmin−Qlim(k))−(p(F|+)−p(T|-)) …(27)
ここで、kは離散的な時間を表すパラメータであり、更新前と更新後の関係を表している。また、THminとTHmaxは、しきい値の取りうる値の最小値と最大値を表す。この式において、Qlim(k)の値は、可調整パラメータ設定部31からその値を参照する。また、p(F|+)やp(T|-)の値は、異常診断整合性結果保持部6の比較結果から上記手順に従って導出した式(22)と式(23)の値を用いる。
この他の調整方法を採用することもできる。例えば、固定幅を与える調整方法として、以下の様な調整方法を採用することもできる。
Qlim(k+1)=Qlim(k)+α(p(F|+)−p(T|-)),α>0 …(28)
Qlim(k+1)=THmaxifQlim(k+1)>THmax …(29)
Qlim(k+1)=THminifQlim(k+1)<THmin …(30)
これらの調整は差分形式の調整方法であるが、これ以外にも、比率形式の調整方法を採用することもできる。
Qlim(k+1)=THmaxifQlim(k+1)>THmax …(29)
Qlim(k+1)=THminifQlim(k+1)<THmin …(30)
これらの調整は差分形式の調整方法であるが、これ以外にも、比率形式の調整方法を採用することもできる。
以上の手順は、可調整パラメータの値を調整するための基本的な手順である。但し、異常診断整合性結果保持部6で保持されている図30〜図32に示したようなテーブルは、異常診断部3による異常診断が実施される周期Tc毎に更新されているが、可調整パラメータ学習部7での学習は、必ずしもこれと同期して行う必要は無く、むしろ、異常診断が実施される周期Tcよりも長い期間Tf>>Tcで実施した方が良い場合が多い。その理由は、オペレータの判断によって比較結果が更新される毎に調整を行うと、システムが過剰にオペレータの判断に適応してしまう可能性が高くなるからである。この時、以下の事柄が問題になる。
(A) 学習を行うタイミングTfの定めかた。
(B) 異常診断の周期Tcと学習を行う期間Tfの間において、「式(14)〜(17)の事前確率計算」と「式(18)〜(21)式の条件付確率計算」」と「式(22)〜(25)の事前確率計算(ベイズの定理)」と「式(26)〜(30)式の可調整パラメータの調整(適応調整則)」とを組みあわせる方法。
(A)の問題に関しては、学習を行う期間Tfを異常診断の周期Tcより長い一定の周期(固定期間)で行うこともできるが、効率の良い学習を行うためには、可変のタイミングで実施することが好ましい。
学習を行う期間Tfを可変にして行う方法についていくつか説明する。最初の方法は、異常アラームの発報回数の上限(および必要に応じて下限)を設定しておき、その限界値を越えた場合に学習を行うこととするというものである。既に述べた様に、異常診断システムは、実際の機器の故障や重大な異常を診断するよりは、むしろ、そのような状況に陥らない様に、通常の状態から乖離している一種の異常状態を診断するものである。あまりに異常発報の回数が多すぎると、実際にプラント運用に関わるオペレータは対処できなくなる。そのため、オペレータが対処できない様な頻度で異常発報が生じるシステムは実際には利用されなくなることが多い。
そこで、オペレータが対処可能な異常発報頻度の上限値を設けておいて、このタイミングで可調整パラメータの値を調整することにより、効率の良い学習方法を実現することができる。一方、SCADAシステムが持っている故障情報と同程度の異常発報しか生じない様な異常診断システムは、異常診断システムを新たにSCADAシステムに追加して設置する必要が無くなるため、異常発報に関する下限値も必要に応じて設定して、この下限値を下まわった場合も学習タイミングとすることができる。
次に、学習を行う期間Tfを可変にして行う別の方法について説明する。オペレータの判断が正しいという前提の下でオペレータの判断にシステムの診断結果が適応していく様に調整するものであるから、オペレータの判断とシステムの診断結果との整合性が保たれている限り、可調整パラメータを調整する必要は無い。従って、オペレータ判断とシステム診断との不一致数(図30の例では、XとY)のみをカウントしておき、その不一致回数が所定のしきい値を越えた時刻を学習タイミングとするものである。
(B)の問題については、いくつかの学習手順を具体的に構成することができる。
先ず、最初の学習手順について図37を参照して説明する。この学習手順では、ある学習タイミングT0:=Tf(k)において事前確率計算を行っておく。そして、学習タイミングT0から次の学習タイミングTf(k+1)までの期間に亘って異常診断整合性結果保持部6で保持しているテーブルのみを周期Tcで更新しておき、学習タイミングTf(k+1)になった時点で、この表に基づいて条件付確率計算とベイズの定理による事後確率計算と可調整パラメータの調整を行う。
次に、二番目の学習手順について図38を参照して説明する。ある学習タイミングT0:=Tf(k)において事前確率計算を行っておく。そして、T0から次の学習タイミングTf(k+1)までの期間に亘って異常診断整合性結果保持部6で保持しているテーブルを更新しておくと同時に、更新が行われる診断周期Tc毎に、その時刻におけるテーブルに基づいて条件付確率計算とベイズの定理による事後確率計算を行う。
そして、学習タイミングTf(k+1)になった時点で、Tf(k)〜Tf(k+1)までの間に得られた複数の事後確率の推定値として例えばその平均値やメジアン(中央値)やモード(最頻値)などの統計量を用い、これを事後確率の代表値として、これに基づいて可調整パラメータの調整を行う。
次に、三番目の学習手順について図39を参照して説明する。ある学習タイミングT0:=Tf(k)において事前確率計算をまず行う。そして、異常診断が行われる周期後の時刻T0+Tcにおいて、異常診断整合性結果保持部6で保持しているテーブルを更新すると同時にその時刻における表に基づいて条件付確率計算とベイズの定理による事後確率計算を行う。そして、この事後確率をT0+Tcにおける事前確率と見なす。ここで、事前確率は「異常確率」あるいは「正常確率」の2つの確率であるが、事後確率は、式(22)〜(25)の4つの条件付き確率になる様に一見感じられるが、このようなことは起こらないことに注意する。なぜなら、T0〜T0+Tcの間においては、異常診断システムは1回しか診断を行っていないので、その診断結果は「正常」であったか「異常」であったかのいずれかしかありえないため、式(22)〜(25)の中の2つの確率しか計算されないためである(診断結果が「正常」の場合は−の条件付確率が計算され、診断結果が「異常」の場合には+の条件付確率が計算される。)。従って、このように計算された事後確率を新たに事前確率と見なすことができる。このような操作を学習タイミングTf(k+1)になるまで繰り返し、Tf(k+1)における事後確率に基づいて可調整パラメータの調整を行う方法である。
次に、四番目の学習手順について図40を参照して説明する。ある学習タイミングT0:=Tf(k)において事前確率計算をまず行う。そして、異常診断が行われる周期後の時刻T0+Tcにおいて、異常診断整合性結果保持部6で保持しているテーブルを更新すると同時にその時刻における表に基づいて条件付確率計算とベイズの定理による事後確率計算を行う。そして、この事後確率をT0+Tcにおける事前確率と見なすと同時に、これをその時刻までの暫定的な事後確率としてその結果を保持する。そして、この操作を学習タイミングTf(k+1)になるまで繰りかえす。そして、Tf(k+1)になった時点で、Tf(k)〜Tf(k+1)までの間に得られた複数の事後確率の推定値として例えばその平均値やメジアン(中央値)やモード(最頻値)などの統計量を用い、これを事後確率の代表値として、これに基づいて可調整パラメータの調整を行う。
以上の様な学習手順によって、可調整パラメータ学習部7のパラメータの値が調整(更新、修正、学習)される。
この実施例は、可調整パラメータとしてしきい値を選択した場合のものであり、このようにしきい値を可調整パラメータとして選択すると、フォルス・アラームの削減とミス・アラームの削減のトレードオフの適正化を行えるので、非常に都合が良い。
一方、本実施例で示しているようにN+M+P個の複数のセンサがある場合には、単に異常診断部から提示される「正常」あるいは「異常」に対して、オペレータが判断するだけでなく、「あるセンサAが異常という診断は正しいが、別のセンサBが異常という診断は正しくない」という様な判断がある場合がある。この場合には、既にその作用を述べた様に、図31に示した様にセンサ毎に比較結果を表すテーブルを持つ必要があり、このようなテーブルが構成できる様にオペレータからの判断結果を収集しておく。このようにしてオペレータの判断結果が詳細にフィードバックされている場合の具体的な学習方法は、上述の可調整パラメータ学習部7の実施例の作用のいくつかの点を修正することにより実行することができる。
修正すべき点の一つは、可調整パラメータとしてしきい値であるQlimやT2 limを選定するのではなく、スケーリングパラメータs1〜sN+M+Pを選定する様に変更することである。この際、スケーリングパラメータの数はN+M+P個存在し、図31のテーブルもN+M+P個存在するので、各センサに対応するテーブルと各センサのスケーリングパラメータを1対1に対応させることができることに注意する。また、スケーリングパラメータを可調整パラメータとして選定すると、上述した「あるセンサAが異常という診断は正しいが、別のセンサBが異常という診断は正しくない」というような場合に学習が可能になる理由を以下で説明する。スケーリングは、本来、物理的に単位の異なる複数の変数の大きさの絶対値を規格化して均等に扱おうとする目的で導入されているものであるが、見方を変えると、これは、各センサに対する重みを決定していると考えることもできる。例えば、下水処理プロセスでは、溶存酸素濃度という量は0[mg/L]〜8[mg/L]の値を示し、MLSS濃度という量は1000[mg/L]〜3000[mg/L]程度の値を示すことが多いが、もしスケーリングを行わなかった場合には、DO濃度の値はMLSS濃度の値に対して無視されてしまう。そこで、DO濃度の変化を捉えるためには、DO濃度の値を拡大する(あるいは同じことであるが、MLSS濃度の値を縮小する)ことが必要になる。この拡大(縮小)を決定するパラメータがスケーリングパラメータであり、これは、DO濃度とMLSS濃度に対して適切な重みを与えていると考えることもできる。この見方をすると、スケーリングパラメータの値を調整することによって、ある変数の他の変数に対する相対的な影響度を変化させることができることがわかる。この原理を利用すると、例えば、DO濃度に異常発報が生じやすく、この異常発報のみを押さえたい場合には、DO濃度の拡大率を落とせばよく、これはスケーリングパラメータの値を調整する(大きくする)ことによって実現できる。以上がスケーリングパラメータの値の設定により、センサ毎に異常診断性能を変化させることができる理由である。
もう一つの修正すべき点は、スケーリングパラメータをしきい値と同様に扱うという点である。先に述べた様にスケーリングパラメータは例えばあるセンサのレンジ(動作範囲)の値とすることがあるが、これは一種のしきい値と見なすことができる。例えば、図41に示す様に、図41(A)の正常動作範囲は0%〜100%であり、図41(B)の正常動作範囲は0%〜40%であるとすることは、図41に示したしきい値を設定していることと同じである。従って、スケーリングパラメータの値を一種のしきい値と見なして、上述の実施例と同様な学習を行って、スケーリングパラメータの値を調整すれば、センサ毎の異常診断性能を調整できる。
[可調整パラメータ設定部]
最後に、可調整パラメータ学習部8によって調整された可調整パラメータの値が可調整パラメータ設定部31に設定されることによって、異常診断部3の学習が完了する。
最後に、可調整パラメータ学習部8によって調整された可調整パラメータの値が可調整パラメータ設定部31に設定されることによって、異常診断部3の学習が完了する。
この学習は、上述の様に所定の学習タイミングTf(k),k=1,2,3,…で繰りかえされ、それによって異常診断部3の診断結果は、オペレータの判断結果に徐々に適合していく様になる。
なお、本装置は、異常診断部3の診断結果を更新していくことを目的としたが、この際、オペレータに過剰な負担を強いることなく、オペレータの判断結果を収集する点が一つのポイントであった。特に、異常診断部3が異常発報のアラームを出していない場合には、オペレータに対してシステム側からは何もアクションをしていないにも関わらず、オペレータの判断をシステムにフィードバックする方法が重要な点であった。このため、オペレータの行動パターンから、「オペレータはプロセスで異常が生じていると判断しているであろう」という推定を別途行う必要があり、この具体的な推定方法とこの推定の正しさをオペレータに対して確認する点が一つの重要なポイントとなる。
この点に注目すると、必ずしも異常診断部3が実装されていない場合であっても、本実施例で示した事と全く同様の方法によって、「オペレータはプロセスで異常が生じていると判断しているであろう」という情報を収集することができることがわかる。このような、情報が収集できるだけでも、プラント運用を改善していく場合には非常に有用であることが多い。
また、本装置は、オペレータの判断が正しいという前提の下で、異常診断部3の診断結果をオペレータの判断に適合する様に修正していくものであるが、オペレータの好みや熟練度などの個人差によって、オペレータの判断結果が異なる場合も十分にありうる。このような場合、平均的なオペレータの操作に適合する様に異常診断部の診断結果を調整する方法もあるが、オペレータ毎に異常診断部の診断結果を調整させることも考えられる。オペレータ毎にloginしてシステムを利用することを要請するものである。
[効果]
オペレータの判断に適合する様に異常診断システムの診断結果を調整していくことにより、オペレータにとって利用しやすい異常診断システムを構築することができる。特に、重大な故障や異常と完全に正常という状態の間にあるグレーな状態において、より利用者によって使いやすい異常診断システムを構築することができる。
オペレータの判断に適合する様に異常診断システムの診断結果を調整していくことにより、オペレータにとって利用しやすい異常診断システムを構築することができる。特に、重大な故障や異常と完全に正常という状態の間にあるグレーな状態において、より利用者によって使いやすい異常診断システムを構築することができる。
本実施例を用いると、異常診断システムの異常診断結果を、プラントのオペレータに大きな負担を強いることなく、オペレータが判断する診断結果に適合する様に調整していくことができる。これによって、オペレータにとって利用しやすい様に異常診断システムが改良されていく。
プラントオペレータの行動からプラントで生じている異常状態を推定することができる。そして、これらの結果を、オペレータ、プラント管理者、あるいは、異常診断システム開発者が、定量的に解析する、あるいは、オペレータや管理者間で議論をする資料とすることによって、プラント運用を改善していくことができる。
プラントオペレータの個々の判断の相違点や類似点を分析することができる。例えば、熟練オペレータと非熟練オペレータの運用方法の相違点を分析することができる。そして、オペレータ間でより良いプラント運用を行うための議論を行うための基礎資料とすることができる。また、異常診断システムをプラントオペレータの判断の個人差に併せて、各々のオペレータの判断に適合したカスタマイズされた異常診断システムを構築することができる。
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1…プロセス,2…プロセスデータ収集・保存部,3…異常診断部,3…プロセスデータ抽出部,4…異常診断結果提示部,5…オペレータ判断フィードバック部,6…異常診断整合性結果保持部,7…可調整パラメータ学習部,9…プロセス異常要因推定部,10…ユーザインターフェース部,10…プロセス監視装置,11〜1N…種センサ,30…プロセス監視モデル構築用プロセスデータ抽出部,31…可調整パラメータ設定部,32…異常診断機能部,34…異常診断部,40…プロセス監視モデル構築・供給部,42…異常検出モデル生成部,50…プロセス異常判定基準設定・供給部,51…閾値決定用事前情報入力部,52…閾値決定部,60…プロセス監視部,70…プロセス異常診断部。
Claims (31)
- 1以上の可調整パラメータに基づいて、対象プロセスが正常状態および異常状態の何れかの状態であるかを診断する診断部と、
前記診断部の診断結果をオペレータに提示する診断結果提示部と、
前記オペレータが前記対象プロセスを正常状態および異常状態の何れかの状態であると判別しているかが入力される、或いは前記オペレータの判断を推測し、入力結果あるいは推測結果を出力するオペレータ判断フィードバック部と、
前記診断部の診断結果と、前記オペレータ判断フィードバック部の出力結果との比較情報の履歴を保持する履歴保持部と、
前記履歴保持部に保存された履歴に基づいて、前記可調整パラメータの修正値を学習する可調整パラメータ学習部と、
前記可調整パラメータ学習部が学習した前記可調整パラメータに基づいて、前記可調整パラメータの値を前記診断部に設定する可調整パラメータ設定部と
を具備することを特徴とする学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータの操作に応じて前記対象プロセスから測定されるプロセスデータの履歴の情報を表示するプロセスデータ履歴表示部と、
前記診断部が正常状態であると診断している状態で、前記プロセスデータ履歴表示部が操作された後、前記オペレータが前記対象プロセスが有する機器を操作する場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータの操作に応じて前記対象プロセスから測定されるプロセスデータの履歴を表示するプロセスデータ履歴表示部と、前記対象プロセスが有する機器を前記オペレータが操作するための操作部とを更に有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、各プロセスデータと各機器の相関の情報を有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記診断部が正常状態であると診断している状態で、前記プロセスデータ履歴表示部が操作された後に、前記プロセスデータ履歴表示部に表示されたプロセスデータとの相関が高い機器が前記操作部によって操作された場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推測することを特徴とする
請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記対象プロセスは、前記オペレータによって切り替えられる自動運転モードと手動運転モードとを有し、
前記診断部が正常状態であると診断している状態で、前記オペレータによって前記自動運転モードから前記手動運転モードに切り替えられた場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータの操作に応じて前記対象プロセスから測定されるプロセスデータの履歴の情報を表示するプロセスデータ履歴表示部と、
前記オペレータが通信機器を用いて他者に連絡を行ったか否かを判別する判別部とを更に有し、
前記診断部が正常状態であると診断している状態で、前記プロセスデータ履歴表示部が前記オペレータによって操作された後、前記オペレータが他者に連絡を行ったと前記判別部が判別した場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記対象プロセスが有する機器を前記オペレータが操作するための操作部を更に有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記オペレータによる前記操作部の操作回数の履歴を保持する操作回数履歴保持部を有し、
前記診断部が正常状態であると診断している状態で、前記操作回数履歴保持部が保持する所定期間内の操作回数がしきい値回数を越えた場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記対象プロセスが有する機器を操作するための操作部を更に有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記オペレータによる前記操作部の操作の履歴を保持する操作回数履歴保持部と、前記診断部が異常状態であると診断した診断結果の履歴を保持する異常状態診断履歴保持部とを有し、
前記操作回数履歴保持部に保持されている所定期間内の操作回数と、異常状態診断履歴保持部に保持されている前記所定期間内の異常状態診断回数とのバランスが崩れた場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータが他者に連絡を行ったか否かを判別する判別部と、
前記オペレータが他者に連絡を行ったと前記判別部が判別した履歴を保持する連絡履歴保持部とを更に有し、
所定期間内の連絡回数がしきい値を超えた場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記診断部が異常状態であると診断した結果の履歴を保持する異常状態診断履歴保持部と、
前記オペレータが他者に連絡を行ったか否かを判別する連絡判別部と、
前記連絡判別部が前記オペレータが他者に連絡を行ったと判別した履歴を保持する連絡履歴保持部とを更に有し、
前記異常状態診断履歴保持部に保持されている所定期間内の異常診断回数と、前記連絡履歴保持部に保持されている前記所定期間内の連絡回数とのバランスが崩れた場合に、前記オペレータ判断フィードバック部は前記オペレータが異常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - イベントの日時を記憶する記憶部を更に有し、
前記記憶部が記憶するイベントの日時の場合、前記オペレータ判断フィードバック部は、前記入力結果或いは前記推測結果を出力しない
ことを特徴とする請求項2〜9の何れか1項に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータ判断フィードバック部は、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定している場合に、前記オペレータが異常状態であるか否かの判断を入力するための判断入力部を有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記オペレータが前記判断有力部に入力した結果を出力する
ことを特徴とする請求項2〜9の何れか1項に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータ判断フィードバック部は、前記オペレータが異常状態であると判断している場合に、前記オペレータが異常状態であると判断していることを入力するための異常判断入力部を有し、
前記オペレータが前記異常判断入力部に入力した場合、前記オペレータ判断フィードバック部は前記異常状態であることを出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記対象プロセスは、前記対象プロセスが有する機器の異常を検出するプロセス監視装置を具備し、
前記診断部が正常状態であると診断している状態で、前記プロセス監視装置が異常を検出した場合、前記オペレータ判断フィードバック部の出力は異常状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記診断結果提示部は、前記診断部が異常状態であると診断した場合に、前記異常状態であることを前記オペレータに知らせるための警告を発し、
前記診断部が異常状態であると診断した場合に、前記プロセス状態を自動運転モードから手動運転モードに切り替える運転モード切替部と、
前記オペレータの入力操作に応じて前記警告を停止するための警告停止部と、
前記警告を停止した後で、前記オペレータの入力操作に応じて、前記手動運転モードから前記自動運転モードに切り替えるための復帰部とを更に有し、
前記警告停止部、或いは前記復帰部は、前記オペレータの異常の有無の判断結果、或いは異常状態のレベルの判断結果を前記オペレータが入力するための複数の入力手段を有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記入力手段への入力結果に応じた情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記プロセス装置は、自動運転モードと手動運転モードとを有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記自動運転モード、且つ前記診断部が異常状態であると診断している状態で前記オペレータが手動運転モードに切り替える操作を行った場合に前記オペレータは異常状態であると判断していると推測し、前記自動操作モード、且つ前記診断部が異常状態であると診断している状態で前記オペレータが手動運転モードに切り替える操作を行わない場合に前記オペレータは正常状態であると判断していると推測する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記オペレータ判断フィードバック部は、前記推測が正しいか否かを前記オペレータに確認するために、前記オペレータの判断結果が入力される推測結果確認部を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記診断部が異常状態であると診断した結果を異常診断記録に記録する異常診断記録部と、前記異常診断記録を表示する異常診断記録表示部とを更に有し、
前記オペレータ判断フィードバック部は、前記オペレータが選択した異常状態の記録を前記異常診断記録から削除すると共に、削除した異常状態の情報を削除記録情報に記録する異常発報記録削除部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記対象プロセスは、前記対象プロセスが有する機器の異常を検出するプロセス監視装置を具備し、
前記診断部が異常状態であると診断してから所定期間内に前記プロセス監視装置が異常を検出した場合、前記オペレータ判断フィードバック部は、前記推定結果或いは前記判断結果にかかわらずに異常状態にする
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータは、異常の有無を判断するための異常検出用データに対する異常判断基準値であって、
前記診断部は、前記異常検出用データが入力され、入力された前記異常検出用データと前記異常判断基準値とを比較することによって異常状態であるか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記診断部は、前記対象プロセスから測定されるプロセスデータから異常の有無を判断するための異常検出用のモデルを用いて異常であるか否かを判断し、
前記モデルは内部に前記可調整パラメータを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータ学習部は、前記可調整パラメータの調整にベイズの定理を利用した推定方法を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータ学習部は、
前記ベイズの定理を利用した推定方法を実施する前の異常状態および正常状態の事前確率を時刻t=T0において計算し、
前記時刻t=T0から学習タイミング時刻Tfに至るまで、前記一致性履歴保持部が保持する一致性結果を診断周期Tc(Tc<Tf)で更新し、
その一致性結果から前記推測結果を条件とする異常診断装置の診断結果の条件付確率を計算し、
ベイズの定理を適用して異常状態および正常状態の事後確率(分布)を計算し、
前記事後確率(分布)を利用して可調整パラメータの値を調整することを特徴とする
請求項21に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータ学習部は、
前記ベイズの定理を利用した推定方法を実施する前の異常状態および正常状態の事前確率を時刻t=T0において計算し、
前記時刻t=T0から学習タイミング時刻Tfに至るまで診断周期Tc(Tc<Tf)毎に、前記一致性履歴保持部が保持する一致性の履歴に基づいて前記異常状態および前記正常状態の条件付確率および事後確率を複数回計算し、
計算された複数の事後確率の平均値、トリム平均値、メジアン(中央値)、モード(最頻値)のいずれかに基づいて可調整パラメータの値を調整する
ことを特徴とする請求項21に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータ学習部は、
前記ベイズの定理を利用した推定方法を実施する前の異常状態および正常状態の事前確率を時刻t=T0において計算し、
前記時刻t=T0から学習タイミング時刻Tfに至るまで診断周期Tc(Tc<Tf)毎に、前記ベイズの定理を適用して異常状態および正常状態の事後確率を計算すると共に、計算された事後確率を新たに異常状態および正常状態の事前確率と見なして、異常状態および正常状態の事後確率の計算を行い、
時刻t=Tfにおける事後確率に基づいて可調整パラメータの値を調整する
ことを特徴とする請求項21に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータ学習部は、
前記ベイズの定理を利用した推定方法を実施する前の異常状態および正常状態の事前確率(分布)を時刻t=T0において計算し、
前記時刻t=T0から学習タイミング時刻Tfに至るまで診断周期Tc(Tc<Tf)毎に、ベイズの定理を適用して異常状態および正常状態の事後確率(分布)を計算すると共に、前記事後確率を新たに異常状態および正常状態の事前確率(分布)と見なして、異常状態および正常状態の事後確率(分布)を計算し、
前記診断周期Tc毎に計算された複数の事後確率の平均値、トリム平均値、メジアン(中央値)、モード(最頻値)のいずれかの値に基づいて可調整パラメータの値を調整する
ことを特徴とする請求項21に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記可調整パラメータ学習部は、
前記履歴保持部に保持されたオペレータの判断の推測結果と前記診断結果とが一致しない回数をカウントし、不一致回数がしきい値を越えた時刻を学習タイミング時刻Tfとする
ことを特徴とする請求項23〜25の何れか1項に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記診断部は、異常の有無を判断するための異常検出用データと、前記可調整パラメータとして異常検出用データに対する異常判断基準値(しきい値)から成る異常検出部を有する
ことを特徴とする請求項23〜25の何れか1項に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 前記対象プロセスは、複数のオペレータによって操作され、
操作するオペレータ毎に前記オペレータ判断フィードバック部の出力の情報を保持する手段を更に具備することを特徴とする請求項1〜27の何れか1項に記載の学習型プロセス異常診断装置。 - 対象プロセスから測定されるプロセスデータの履歴を確認するための操作がオペレータによって行われた後、前記対象プロセスが有する機器に対して操作を行われた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記対象プロセスから測定される各プロセスデータと各機器の相関の情報を有し、前記プロセスデータの履歴を確認するための操作が前記オペレータによって行われた後に、前記履歴が確認されたプロセスデータに対して相関が高い機器に対して操作が行われた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記オペレータによって前記対象プロセスが自動操作モードから手動操作モードに切り替えられた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記プロセスデータの履歴を確認するための操作がオペレータによって行われた後、前記オペレータが通信機器によって他者に連絡を行った場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記機器に対するユーザの操作の履歴を収集し、前記履歴に基づいて所定期間内の操作回数が、しきい値を越えた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記機器に対するユーザの操作の履歴を収集し、前記対象プロセスが異常状態であるか否かを診断する診断機が異常状態であると診断した履歴を収集し、所定期間内の操作回数と前記所定期間内の異常状態であると診断した回数とのバランスがくずれた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記オペレータが通信機器で連絡を行った履歴を収集し、所定期間内の連絡回数がしきい値を越えた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、および
前記オペレータが通信機器で連絡を行った履歴を収集し、診断機が異常状態であると診断した履歴を収集し、所定期間内の連絡回数と前記所定期間内の異常状態であると診断した回数とのバランスがくずれた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
から選ばれる一つ以上の手段を有するプラントオペレータ判断推測部と、
イベントの日時を記憶する記憶部とを有し、
前記プラントオペレータ診断部は、前記記憶部が記憶するイベントの日時の場合、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定することを除外する
ことを特徴とするオペレータ判断推測結果収集装置。 - 対象プロセスから測定されるプロセスデータの履歴を確認するための操作がオペレータによって行われた後、前記対象プロセスが有する機器に対して操作を行われた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記対象プロセスから測定される各プロセスデータと各機器の相関の情報を有し、前記プロセスデータの履歴を確認するための操作が前記オペレータによって行われた後に、前記履歴が確認されたプロセスデータに対して相関が高い機器に対して操作が行われた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記オペレータによって前記対象プロセスが自動操作モードから手動操作モードに切り替えられた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記プロセスデータの履歴を確認するための操作がオペレータによって行われた後、前記オペレータが通信機器によって他者に連絡を行った場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記機器に対するユーザの操作の履歴を収集し、前記履歴に基づいて所定期間内の操作回数が、しきい値を越えた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記機器に対するユーザの操作の履歴を収集し、前記対象プロセスが異常状態であるか否かを診断する診断機が異常状態であると診断した履歴を収集し、所定期間内の操作回数と前記所定期間内の異常状態であると診断した回数とのバランスがくずれた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
前記オペレータが通信機器で連絡を行った履歴を収集し、所定期間内の連絡回数がしきい値を越えた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、および
前記オペレータが通信機器で連絡を行った履歴を収集し、診断機が異常状態であると診断した履歴を収集し、所定期間内の連絡回数と前記所定期間内の異常状態であると診断した回数とのバランスがくずれた場合に、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定する手段、
から選ばれる一つ以上の手段を有するプラントオペレータ判断推測部と、
前記プラントオペレータ判断推測部が、前記オペレータは異常状態であると判断していると推定している場合に、前記オペレータが異常状態であるか否かの判断を入力するための判断入力部と
を具備することを特徴とするオペレータ判断推測結果収集装置。 - 前記対象プロセスは、複数のオペレータによって操作され、
操作するオペレータ毎に前記プラントオペレータ判断推測部の推測結果の情報を保持する手段を更に具備することを特徴とする請求項29または30の何れか1項に記載のオペレータ判断推測結果収集装置。
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