JP2009064560A - 集電体用アルミニウム合金箔 - Google Patents

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【課題】純アルミニウム箔に比べて耐食性が低下することがなく、箔の厚みを15μm以下にしても電極の製造工程において破断することがない集電体用アルミニウム合金箔を提供する。
【解決手段】集電体用アルミニウム合金箔は、0.1質量%以上1.5質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.8質量%以下の鉄と、0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウムとを含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とを含む。
【選択図】なし

Description

この発明は、一般的には集電体用アルミニウム合金箔に関し、特定的には、リチウムイオン電池等の二次電池の正極用集電体を形成するための材料として使用される集電体用アルミニウム合金箔に関する。
高容量二次電池としてリチウムイオン電池は、携帯用電子機器の電源に用いられるだけでなく、最近ではハイブリッド自動車用電源として用いるための開発が進められている。従来から、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔はリチウムイオン電池の正極用集電体を形成する材料として用いられている。
たとえば、特開2005−133207号公報(特許文献1)に記載されているように、リチウムイオン二次電池の正極用基材として、純アルミニウム(JIS呼称1000系)箔、Al−Mn系(JIS呼称3000系)合金箔、Al−Fe系(JIS呼称8000系)合金箔が使用されている。
また、特開平11−97032号公報(特許文献2)に記載されているように、二次電池用集電体として、アルミニウム純度が99.70重量%以上の高純度アルミニウム箔が用いられている。
特開2005−133207号公報 特開平11−97032号公報
最近では、二次電池の高容量化と小型化の要求に応じて、集電体をより薄くして、二次電池の体積あたりの容量を増大する方法が検討されている。
しかしながら、集電体を形成するアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の厚みを15μmよりも薄くすると、箔の表面に各種の活物質を塗布する工程、塗布した活物質を箔の表面に圧着させる工程等の電極の製造工程において、箔が頻繁に破断するという問題がある。
また、一般に、純アルミニウム箔に比べて、Al−Mn系とAl−Fe系のアルミニウム合金箔は、強度が勝るものの、電解液に対する耐食性が低下するので、たとえば、ハイブリッド自動車用電源として用いられる二次電池のように長期間の寿命が要求される二次電池の集電体に用いることが困難である。
そこで、この発明の目的は、純アルミニウム箔に比べて耐食性が低下することがなく、箔の厚みを15μm以下にしても電極の製造工程において破断することがない集電体用アルミニウム合金箔を提供することである。
上述の課題を解決するために、本発明者は種々検討した結果、アルミニウム合金箔において、少なくとも、マンガン、鉄およびマグネシウムの含有量を制御することにより、好ましくはさらに、シリコン、ジルコニウム、コバルト、タングステン、チタンの含有量を制御することにより、アルミニウム合金箔の厚みを15μm以下にしても電極の製造工程において破断するのを防止するために必要な強度および伸びと、耐食性とが得られることを見出した。このような本発明者の知見に基づいて本発明はなされたものである。
この発明に従った集電体用アルミニウム合金箔は、0.1質量%以上1.5質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.8質量%以下の鉄と、0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウムとを含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とを含む。
好ましくは、この発明の集電体用アルミニウム合金箔は、0.001質量%以上0.5質量%以下のシリコンを含む。
好ましくは、この発明の集電体用アルミニウム合金箔は、ジルコニウム、コバルトおよびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種を0.00001質量%以上0.5質量%以下含む。
また、好ましくは、この発明の集電体用アルミニウム合金箔は、0.00001質量%以上0.5質量%以下のチタンを含む。
さらに、好ましくは、この発明の集電体用アルミニウム合金箔は、厚みが15μm以下、引張強度が240N/mm以上400N/mm以下である。
以上のように、この発明の集電体用アルミニウム合金箔は、強度および伸びに優れているので、アルミニウム合金箔の厚みを15μm以下にしても電極の製造工程において破断するのを防止することができるとともに、純アルミニウム箔に比べて耐食性が低下しないので、長期間の寿命が要求される二次電池の集電体に用いることができる。
この発明の一つの実施の形態として集電体用アルミニウム合金箔は、0.1質量%以上1.5質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.8質量%以下の鉄と、0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウムを含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とを含む。
集電体用アルミニウム合金箔にマンガン(Mn)を含有させる理由は以下のとおりである。マンガンは、アルミニウム合金箔の耐食性を低下させることなく、強度を向上させることができる元素である。マンガンの含有量が0.1質量%未満であると、十分な強度を得ることができない。マンガンの含有量が1.5質量%を越えると、強度が増大しすぎてアルミニウム合金箔の伸びと圧延性を低下させる。
集電体用アルミニウム合金箔に鉄(Fe)を含有させる理由は以下のとおりである。鉄は、マンガンとともに添加することによってAl−Fe−Mn系の化合物としてマンガンを析出させ、結晶粒を微細化することによって伸びを改善することができる元素である。また、このAl−Fe−Mn系の化合物は、アルミニウム合金箔の耐食性を低下させることがなく、圧延時の耐焼付性(ロールへの材料の溶着)と微粉の発生とを抑え、圧延性を向上させる。鉄の含有量が0.5質量%未満であると、上記の効果を十分に発揮することができない。鉄の含有量が1.8質量%を超えると、強度が増大しすぎてアルミニウム合金箔の伸びと圧延性を低下させる。
集電体用アルミニウム合金箔にマグネシウム(Mg)を含有させる理由は以下のとおりである。マグネシウムは、アルミニウム合金箔の耐食性を低下させることなく、強度を向上させることができる元素である。マグネシウムの含有量が0.01質量%未満であると、十分な強度を得ることができない。マグネシウムの含有量が0.5質量%を越えると、強度が増大しすぎてアルミニウム合金箔の圧延性を低下させるとともに、結晶粒が粗大化して伸びを低下させる。
この発明の好ましい一つの実施の形態として集電体用アルミニウム合金箔は、シリコンを0.001質量%以上0.5質量%以下含み、さらに好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下含む。
集電体用アルミニウム合金箔にシリコン(Si)を含有させる理由は以下のとおりである。シリコンは、マグネシウムとともに添加することによってMg−Si系の化合物としてマグネシウムを析出させ、さらに強度を向上させることができる。特に、アルミニウム合金箔を所望の厚みに圧延加工した後に、マグネシウムをMg−Si系の化合物としてMgSiの形で時効析出させると、さらに高い強度を有する集電体用アルミニウム合金箔を得ることができる。シリコンの含有量が0.001質量%未満であると、上記の効果を十分に発揮することができない。また、シリコンの含有量が0.01質量%以上であれば、上記の効果をより顕著に発揮することができる。シリコンの含有量が0.5質量%を超えると、脆性が増大してアルミニウム合金箔の伸びと圧延性を低下させる。
また、この発明の好ましい一つの実施の形態として集電体用アルミニウム合金箔は、ジルコニウム、コバルトおよびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種を0.00001質量%以上0.5質量%以下含み、さらに好ましくは0.001質量%以上0.5質量%以下含み、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下含む。
集電体用アルミニウム合金箔にジルコニウム(Zr)、コバルト(Co)またはタングステン(W)を含有させる理由は以下のとおりである。ジルコニウム、タングステンまたはコバルトは、アルミニウム合金箔の耐食性を低下させることなく、結晶粒を微細化することによって伸びを改善し、強度を向上させることができる元素である。これらの元素の含有量が総量で0.00001質量%未満であると、上記の効果を十分発揮することができない。また、これらの元素の含有量が総量で0.01質量%以上であれば、強度を顕著に向上させることができる。これらの元素の含有量が総量で0.5質量%を超えると、その効果が飽和する。
さらに、この発明の好ましい一つの実施の形態として集電体用アルミニウム合金箔は、チタンを0.00001質量%以上0.5質量%以下含み、さらに好ましくは0.001質量%以上0.5質量%以下含み、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下含む。
集電体用アルミニウム合金箔にチタン(Ti)を含有させる理由は以下のとおりである。チタンは、アルミニウム合金箔の耐食性を低下させることなく、強度を向上させることができる元素である。チタンの含有量が0.00001質量%未満であると、十分な強度を得ることができない。また、チタンの含有量が0.01質量%以上であれば、強度を顕著に向上させることができる。チタンの含有量が0.5質量%を越えると、強度が増大しすぎてアルミニウム合金箔の圧延性を低下させるとともに、結晶粒が粗大化して伸びを低下させる。
なお、本発明のアルミニウム合金箔は、上記の特性や効果に影響を与えない程度の含有量で、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)等の元素を含んでいてもよい。特に、銅の含有量を0.01質量%以下にすると、アルミニウム合金箔の耐食性が低下するのを防止することができる。
通常、材料の強度を高くすると伸びが小さくなり、伸びが高くすると強度が低くなる。強度または伸びを改善する目的で、通常、合金元素の添加が行われているが、強度を向上させることができても耐食性を低下させる場合が多い。
本発明では、上記の元素をアルミニウムに最適量添加することにより、アルミニウム合金の再結晶組織が超微細化し、耐食性を低下させることがないので、厚みが15μm以下のアルミニウム合金箔において強度、伸び、圧延性をともに向上させることができるとともに、耐食性を維持することができる。
この発明の一つの実施の形態として集電体用アルミニウム合金箔は、圧延時には、引張強度が340N/mm以下、伸びが1.2%以上であることが好ましい。引張強度が340N/mm以下、かつ、伸びが1.2%以上の条件を満たさない場合、15μm以下の厚みに圧延することが困難である。圧延加工後に最終的に得られた集電体用アルミニウム合金箔は、厚みが15μm以下、引張強度が240N/mm以上400N/mm以下、伸びが0.4%以上であることが好ましい。引張強度が240N/mm以上400N/mm以下、かつ、伸びが0.4%以上の条件を満たさない場合、箔の表面に各種の活物質を塗布する工程、塗布した活物質を箔の表面に圧着させる工程等の電極の製造工程において箔が破断する恐れがある。より好ましい引張強度は280N/mm以上である。好ましくは、アルミニウム合金箔の厚みは4μm以上である。アルミニウム合金箔の厚みが4μm未満であれば、電極としての機械的強度を維持することができない。
アルミニウム合金箔の厚みを上記範囲にするには、通常の方法に従って、鋳造、圧延を行えばよい。また、アルミニウム合金箔に適宜熱処理を施してもよい。
具体的には、上記の組成を有するアルミニウム合金の溶湯を調製し、アルミニウム合金の溶湯を凝固させることにより鋳塊を製造する。得られた鋳塊に400〜630℃程度の温度で1〜20時間程度の均質化処理を施してもよい。その後、鋳塊に熱間圧延と冷間圧延を施すことによって所望の厚みの箔に圧延する。連続鋳造によって薄板のアルミニウム合金を製造する場合には、連続鋳造後、直接冷間圧延によって所望の厚みの箔を得ることもできる。軟質のアルミニウム合金箔を製造する場合には、アルミニウム合金箔に250〜450℃程度の温度で1〜30時間程度の熱処理を施せばよい。
また、0.001質量%以上0.5質量%以下のシリコンを含む圧延加工後のアルミニウム合金箔に230℃以下、好ましくは200℃以下の温度で1〜1000時間程度の低温時効処理を施すことにより、さらに高い引張強度を有する集電体用アルミニウム合金箔を得ることができる。
軟質のアルミニウム合金箔を製造する場合には、冷間圧延によって所望の厚みに加工したアルミニウム合金箔に250〜450℃程度の温度で1〜30時間程度の熱処理を施せばよい。
以下、この発明の実施例について説明する。
表1に示すさまざまな組成のアルミニウム合金(実施例1〜14、比較例1〜7)の溶湯を調製し、アルミニウム合金の溶湯を凝固させることにより鋳塊を製造した。得られた鋳塊に温度600℃で10時間の均質化処理を施した後、熱間圧延によって6mmの厚みまで圧延した。その後、冷間圧延によって12μmの厚みまで圧延した。このようにして得られたアルミニウム合金箔の特性(引張強度・伸び・圧延性・耐食性)を評価した。その評価された特性を表1に示す。
また、実施例13と実施例14で得られたアルミニウム合金箔のそれぞれに、温度80℃で50時間の低温時効処理を施した。このようにして得られたアルミニウム合金箔を実施例15と実施例16とし、その特性(引張強度・伸び・耐食性)を評価した。その評価された特性を表1に示す。
さらに、現在、リチウムイオン電池用集電箔として使用されているJIS呼称の1N30、8021、8079、3003のアルミニウム合金箔についても、上記と同様の評価を行った。その評価結果も表1に示す。
ここで、「耐食性」の評価は、リチウムイオン電池用電解液(ジエチレンカーボネートとエチレンカーボネートを体積比で1:1の割合で混合した非水系電解液にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解したもの)に室温で30日間浸漬した後、腐食の程度を目視で観察することによって行った。ほとんど腐食されていないものを○、孔食等の腐食の形跡のあるものを×として「耐食性」を評価した。また、「圧延性」は、12μmの厚みまで連続的に破断なく製造できたものを○、圧延中に破断または圧延できなかったものを×として評価した。
Figure 2009064560
表1からわかるように、本発明の実施例1〜14では、耐食性を低下させることがなく、引張強度が240N/mm以上で、かつ、伸びが2%以上で圧延性に優れたアルミニウム合金箔を得ることができる。また、本発明の実施例15〜16では、耐食性を低下させることがなく、さらに高い引張強度を有するアルミニウム合金箔を得ることができる。
今回開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものであることが意図される。

Claims (5)

  1. 0.1質量%以上1.5質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.8質量%以下の鉄と、0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウムとを含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とを含む、集電体用アルミニウム合金箔。
  2. 0.001質量%以上0.5質量%以下のシリコンを含む、請求項1に記載の集電体用アルミニウム合金箔。
  3. ジルコニウム、コバルトおよびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種を0.00001質量%以上0.5質量%以下含む、請求項1または請求項2に記載の集電体用アルミニウム合金箔。
  4. 0.00001質量%以上0.5質量%以下のチタンを含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の集電体用アルミニウム合金箔。
  5. 厚みが15μm以下、引張強度が240N/mm以上400N/mm以下である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の集電体用アルミニウム合金箔。
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