JP2009041608A - 高負荷伝動用vベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】接触部が補強部材から剥離することを抑制し、且つ接触部の樹脂特性と低下させることなくブロックが接触部において欠けることを抑制する。
【解決手段】エンドレスに延びて環状に形成された少なくとも1つの張力帯10と、張力帯10のベルト長さ方向に所定ピッチで係止固定された複数のブロック20とを備え、複数のブロック20が、補強部材27と、その補強部材27におけるベルト幅方向の両側に樹脂によりそれぞれ形成され、プーリに接する接触面30を有する接触部28とをそれぞれ備えた高負荷伝動用VベルトBにおいて、接触部28における上記接触面30に垂直な方向の厚みwを1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成するようにした。
【選択図】図2
【解決手段】エンドレスに延びて環状に形成された少なくとも1つの張力帯10と、張力帯10のベルト長さ方向に所定ピッチで係止固定された複数のブロック20とを備え、複数のブロック20が、補強部材27と、その補強部材27におけるベルト幅方向の両側に樹脂によりそれぞれ形成され、プーリに接する接触面30を有する接触部28とをそれぞれ備えた高負荷伝動用VベルトBにおいて、接触部28における上記接触面30に垂直な方向の厚みwを1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成するようにした。
【選択図】図2
Description
本発明は、高負荷伝動用Vベルトに関するものである。
現在、自動車の走行用変速装置として、ベルト式無段変速装置の開発が進められている。ベルト式無断変速装置は、駆動軸及び従動軸に溝間隔が可変の変速プーリーが取り付けられ、これら変速プーリーにVベルトが巻き掛けられて構成されている。そうして、ベルト式無段変速装置は、変速プーリーの溝間隔を変化させることにより、無段階に変速を行うようになっている。
このベルト式無段変速装置に巻き掛けるVベルトとして、エンドレスに延びて環状に形成された少なくとも1つの張力帯のベルト長さ方向に複数のブロックが所定ピッチで係止固定された高負荷伝動用Vベルトが知られている。
この高負荷伝動用Vベルトは、張力帯におけるベルト外側の表面とベルト内側の表面とにそれぞれベルト長さ方向に並ぶ複数の外側被噛合部及び内側被噛合部が設けられている。一方、各ブロックに上記外側被噛合部に噛合した外側噛合部と上記内側被噛合部に噛合した内側噛合部とが設けられていることにより、複数のブロックが張力帯に係止固定されている。
上記ブロックは、樹脂部材の内部に補強部材が埋設された構造を有している。すなわち、ブロックは、補強部材と、その補強部材のベルト幅方向の両側面にそれぞれ形成されてプーリに接する接触面を有する接触部とを備えている。この接触部は樹脂により形成されている。
上記高負荷伝動用Vベルトは、プーリからの推力を接触部を介して張力帯に伝えて伝動を行う。この高負荷伝動用Vベルトは、一般に、プーリからの推力を張力帯に効率的に伝えて伝動性を向上させるため、接触部が比較的高い弾性率の樹脂により形成されている。
また、上記接触部は、接触面が走行中に摩耗してその厚みが減少するため、接触部における接触面に垂直な方向の厚み(以下、単に接触部の厚みともいう)が小さすぎる場合には、走行中に補強部材が露出して補強部材とプーリとが直接に接触する。補強部材とプーリとが直接に接触した場合には、ベルトが著しく傷んでベルトの寿命が低下してしまう。
一方、接触部の厚みが大きすぎる場合には、補強部材と接触部との界面での剪断応力がベルト走行中に比較的大きくなるため、接触部が補強部材から剥離してブロックが破損するおそれがある。このことから、接触部の厚みは、ベルトの走行による摩耗を考慮しながら補強部材と接触部との界面での剪断応力を可及的に抑制する観点から、走行による摩耗量よりも大きい厚みでなるべく薄く、例えば0.5mm以上且つ0.8mm以下等に形成されている。
この高負荷伝動用Vベルトについて、従来から接触部の耐摩耗性を向上させることが求められている。そこで、特許文献1が知られている。
特許文献1では、ブロックにおける接触部を炭素繊維を含むフェノール系樹脂材料により形成し、上記炭素繊維をオニオン構造中に25オングストローム以上且つ200オングストローム以下の結晶層の厚みを有する炭素繊維としている。そのことより、接触部の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めて、接触部の摩耗を抑制している。
特許第2972104号公報
ところで、高負荷伝動用Vベルトにおけるブロックは、接触部の厚みが小さいほど、接触部におけるプーリからの衝撃に対する緩衝性(クッション性)が低下してブロックの耐衝撃性が低下するため、上述したように、接触部が0.5mm以上且つ0.8mm以下等の厚みに比較的薄く形成されている場合には、ブロックの耐衝撃性が比較的低い。
それに加えて、走行による摩耗によって接触部の厚みが減少することにより、ブロックの耐衝撃性が低下する。特に、接触部の厚みが0.4mmよりも小さくなった場合には、上記緩衝性が急激に低下してブロックの耐衝撃性が著しく低下する傾向がある。そうすると、走行中に各ブロックがプーリーに出入りするときに生じる衝撃によってブロックの接触部が欠けやすく、ベルトの寿命が低下する。
ここで、接触部を形成する樹脂の弾性率を低くすることによってブロックの耐衝撃性を向上させることが考えられる。しかしながら、上記樹脂の弾性率を低くする場合には、それに伴ってベルトの伝動性が低下すると共に耐摩耗性が低下するため、ベルトの特性が低下することとなる。
すなわち、接触部における弾性率等の樹脂特性は、伝動ベルトに必要な伝動性及び耐摩耗性により限定されるため、樹脂特性によりブロックの耐衝撃性を向上させる方策は、伝動性及び耐摩耗性とトレードオフの関係となっている。したがって、特許文献1のVベルトであっても、樹脂特性を調整することのみにより、伝動性及び耐摩耗性等の樹脂特性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させてブロックの接触部が欠けることを抑制することは困難である。
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接触部が補強部材から剥離することを抑制し、且つ接触部の樹脂特性と低下させることなくブロックが接触部において欠けることを抑制することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、接触面に垂直な方向における接触部の厚みを1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成するようにした。
具体的に、本発明に係る高負荷伝動用Vベルトは、エンドレスに延びて環状に形成された少なくとも1つの張力帯と、上記張力帯のベルト長さ方向に所定ピッチで係止固定された複数のブロックとを備え、上記複数のブロックが、補強部材と、該補強部材におけるベルト幅方向の両側に樹脂によりそれぞれ形成され、プーリに接する接触面を有する接触部とをそれぞれ備えた高負荷伝動用Vベルトであって、上記接触部は、上記接触面に垂直な方向の厚みが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されている。
−作用−
ところで、接触部におけるプーリからの衝撃に対する緩衝性(クッション性)は、接触部における接触面に垂直な方向の厚み(接触部の厚み)が大きいほど向上するため、ブロックと接触部との界面に加わるプーリからの衝撃力は、接触部の厚みが大きいほど接触部によって吸収されると共に分散されて低減される。すなわち、接触部の厚みが大きいほど接触部の耐衝撃性が向上する。一方、補強部材と接触部との界面での剪断応力は、接触部の厚みが大きいほど高まる。
ところで、接触部におけるプーリからの衝撃に対する緩衝性(クッション性)は、接触部における接触面に垂直な方向の厚み(接触部の厚み)が大きいほど向上するため、ブロックと接触部との界面に加わるプーリからの衝撃力は、接触部の厚みが大きいほど接触部によって吸収されると共に分散されて低減される。すなわち、接触部の厚みが大きいほど接触部の耐衝撃性が向上する。一方、補強部材と接触部との界面での剪断応力は、接触部の厚みが大きいほど高まる。
仮に、接触部の厚みが1.0mmよりも小さく形成されている場合には、接触部の厚みが比較的小さく接触部の緩衝性が低いため、ブロックの耐衝撃性が比較的低く、ベルト走行中にブロックがプーリに出入りするときに生じる衝撃によってブロックの接触部が欠けやすい。さらに、ベルトの走行に伴って接触面が摩耗することにより接触部の厚みが減少して0.4mmよりも小さくなりやすい。接触部の厚みが0.4mmよりも小さくなった場合には、接触部の厚みが0.4mm以上である場合に対して接触部の緩衝性が急激に低下する傾向がある。その結果、接触部の耐衝撃性が著しく低下し、ブロックが接触部においてさらに欠けやすくなる。
一方、仮に、接触部の厚みが1.8mmよりも大きく形成されている場合には、接触部の厚みが比較的大きく、補強部材と接触部との界面においてベルト走行中に生じる剪断応力が大きくなって接触部の許容応力を上回るため、接触部全体が補強部材から剥離してブロックが破損しやすい。
これに対して、本発明の高負荷伝動用Vベルトは、接触面に垂直な方向における接触部の厚みが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されているため、補強部材と接触部との界面に生じる剪断応力が抑制されると共に、接触部の緩衝性が向上することによって接触面に加わる衝撃力が接触部によって低減されて接触部の耐衝撃性が高められる。そのことに加えて、走行に伴う接触面の摩耗によって接触部の厚みが減少したとしても、接触部が長期に亘って0.4mm以上の比較的大きい厚みで残るため、ブロックの耐衝撃性が著しく低下することが抑制される。したがって、補強部材と接触部との界面における剪断応力が抑制されると共に接触部の耐衝撃性が向上する。その結果、接触部が補強部材から剥離することが抑制され、且つ接触部の樹脂特性が低下することなくブロックが接触部において欠けることが抑制される。
本発明によれば、接触部における接触面に垂直な方向の厚みが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されているため、補強部材と接触部との界面に生じる剪断応力を抑制しながら、接触部の緩衝性を向上させることによって接触部が欠けることを抑制してブロックの耐衝撃性を向上させることができる。そのことに加えて、走行に伴う接触面の摩耗によって接触部の厚みが減少したとしても、接触部が長期に亘って0.4mm以上の比較的大きい厚みで残るため、ブロックの耐衝撃性が著しく低下することを抑制できる。したがって、補強部材と接触部との界面における剪断応力を抑制できると共に接触部の耐衝撃性を向上させることができる結果、接触部が補強部材から剥離することを抑制でき、且つ接触部の樹脂特性を低下させることなくブロックが接触部において欠けることを抑制できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1を示している。図1は、本実施形態1の高負荷伝動用VベルトBの一部を概略的に示す斜視図である。図2は、ブロック20を概略的に示す正面図である。
図1及び図2は、本発明の実施形態1を示している。図1は、本実施形態1の高負荷伝動用VベルトBの一部を概略的に示す斜視図である。図2は、ブロック20を概略的に示す正面図である。
高負荷伝動用Vベルト(以下、単にVベルトともいう)Bは、図1に示すように、エンドレスに延びて環状に形成された一対の張力帯10と、一対の張力帯10のベルト長さ方向に所定ピッチで係止固定された複数のブロック20とを備えている。
上記一対の張力帯10は、ベルト長さ方向に互いに並んで延び、ベルト外側に配置された外ゴム層10aと、ベルト内側に配置された内ゴム層10bと、これら外ゴム層10aと内ゴム層10bとの間に配置された複数の心線11とをそれぞれ有している。
外ゴム層10aには、ベルト外側の表面に外帆布層(図示省略)が外ゴム層10aと一体に設けられている。一方、内ゴム層10bには、ベルト内側の表面に内帆布層(図示省略)が内ゴム層10bと一体に設けられている。外ゴム層10a及び内ゴム層10bは、例えばメタクリル酸亜鉛を混合した水素化ニトリルゴム(H−NBR)にアラミド繊維又はナイロン繊維等の短繊維を含む硬質ゴム材料等により形成されている。
複数の心線11は、ベルト長さ方向に延びると共にベルト幅方向に所定の間隔で配置されている。各心線11は、例えばアラミド繊維等から形成され、比較的高い強度及び弾性率を有している。
この張力帯10のベルト外側の表面には、外側被噛合部として、ベルト幅方向に所定の間隔で並ぶと共にそれぞれベルト幅方向に延びて断面凹字状をなす複数の外溝12が形成されている。一方、張力帯10のベルト内側の表面には、内側被噛合部として、それぞれベルト幅方向に延びて断面円弧状をなす複数の内溝13が形成されている。複数の内溝13は、ベルト厚み方向に外溝12にそれぞれ対向して所定の間隔で形成されている。
上記複数のブロック20は、図2に示すように、それぞれ隣接するブロック20との対向面(正面)が略工字状に形成されている。また、各ブロック20は、ベルト外面を構成する外ビーム部21と、ベルト内側を構成する内ビーム部22と、これら外ビーム部21と内ビーム部22との間に配置されて外ビーム部21と内ビーム部22とを連結するセンターピラー部23とによりそれぞれ構成されている。
すなわち、外ビーム部21及び内ビーム部22は、それぞれベルト長さ方向に延び、ベルト幅方向の大きさがセンターピラー部23におけるベルト幅方向の大きさよりもそれぞれ大きい。センターピラー部23は、外ビーム部21におけるベルト幅方向の中央部と内ビーム部22におけるベルト幅方向の中央部とを連結している。
そして、センターピラー部23におけるベルト幅方向の両側には、それぞれベルト幅方向の外側に開放され、外ビーム部21及び内ビーム部21により区画形成されたスリット状の一対の嵌合部24が設けられている。この一対の嵌合部24には、それぞれ上記張力帯10が圧入して嵌合している。
すなわち、嵌合部24には、外側噛合部として、ベルト外側の壁面に張力帯10の外溝12に噛合する突条の外突条部25が形成されている一方、内側噛合部として、ベルト内側の壁面に張力帯10の内溝13に噛合する突条の内突条部26が形成されている。これら外突条部25及び内突条部26は、ベルト厚み方向に対向して配置されている。そうして、外突条部25が外溝12に噛合すると共に内突条部26が内溝13に噛合することにより、複数のブロック20が張力帯10のベルト長さ方向にそれぞれ係止固定されている。
これら複数のブロック20は、補強部材27と、その補強部材27におけるベルト幅方向の両側に樹脂によりそれぞれ形成され、プーリに接する接触面30を有する接触部28をそれぞれ備えている。
すなわち、複数のブロック20は、樹脂部材の内部に補強部材27がブロック20の略中央に埋め込まれてそれぞれ形成されている。つまり、各ブロック20は、例えばフェノール系樹脂等により形成された樹脂部29と、この樹脂部29に埋設された補強部材27とにより構成されている。補強部材27は、例えばアルミニウム合金等により形成されている。具体的には、補強部材27は、ブロック20と略同じ輪郭形状の略工字状をなしている。樹脂部29は、補強部材27の全面又は略全表面を覆うように形成されている。
上記フェノール系樹脂は、例えばノボラック、レゾール又はベンジリックエーテル型のフェノール系樹脂等であり、これらのフェノール系樹脂は変性又は未変性のいずれでもよい。変性フェノール系樹脂としては、例えばアルキル変性フェノール系樹脂、トールオイル変性フェノール系樹脂等が挙げられる。さらに好ましくは、カルドール等、すなわち、カシューオイル、カシューオイルに含まれているカルドール、アナカルド酸及びカルダノールの少なくとも1つで変性されたフェノール系樹脂等が挙げられる。また、上記フェノール系樹脂は、単独又は複数混合して使用することができる。特に、未変性フェノール系樹脂とカルドール等による変性フェノール系樹脂とを併用する場合には、両者の混合比率を適宜選択するとよい。
外ビーム部21及び内ビーム部22は、補強部材27におけるベルト幅方向の両側の表面全体が樹脂部29により覆われている。上記接触部28は、外ビーム部21及び内ビーム部22のベルト幅方向の両端部にそれぞれ形成されている。各接触部28は、外ビーム部21及び内ビーム部22における補強部材27のベルト幅方向の両側に形成された樹脂部29によりそれぞれ構成されている。すなわち、接触部28は、フェノール系樹脂により形成されている。
ところで、仮に、接触部28における常温での弾性率が9000MPa未満である場合には、接触部28の機械的強度が比較的小さくなるため、ベルト走行時にプーリからの推力を効率的に張力帯10に伝えることが困難となる。このことから、接触部28は、常温での弾性率が9000MPa以上となっている。すなわち、樹脂部29は、常温での弾性率が9000MPa以上である。
また、接触部28は、補強部材27とは反対側の表面に接触面30を有している。すなわち、各ブロック20は、外ビーム部21及び内ビーム部22におけるベルト幅方向の両側の表面にそれぞれ接触面30を有している。
ところで、接触部28におけるプーリからの衝撃に対する緩衝性(クッション性)は、接触部28における接触面30に垂直な方向の厚み(以下、単に接触部28の厚みともいう)wが大きいほど向上するため、ブロック20と接触部28との界面に加わるプーリからの衝撃力は、接触部28の厚みwが大きいほど接触部28によって吸収されると共に分散されて低減される。すなわち、接触部28の厚みwが大きいほど接触部28(ブロック20)の耐衝撃性が向上する。一方、補強部材27と接触部28との界面での剪断応力は、接触部28の厚みwが大きいほど高まる。
仮に、接触部28の厚みwが1.0mmよりも小さく形成されている場合には、接触部28の厚みwが比較的小さく接触部28の緩衝性が低いため、ブロック20の耐衝撃性が低く、ベルト走行中に各ブロック20がプーリーに出入りするときに生じる衝撃によってブロック20の接触部28が欠けやすい。さらに、ベルトの走行に伴って接触面30が摩耗することによって接触部28の厚みwが減少して0.4mmよりも小さくなりやすく、接触部28の厚みwが0.4mm以上である場合に対して接触部28の緩衝性が急激に低下する傾向がある。その結果、接触部28の耐衝撃性が著しく低下し、ブロック20が接触部28においてさらに欠けやすくなる。
一方、仮に、接触部28の厚みwが1.8mmよりも大きく形成されている場合には、接触部28の厚みwが比較的大きく、補強部材27と接触部28との界面に生じる剪断応力が大きくなって接触部28の許容応力を上回るため、接触部28全体が補強部材27から剥離してブロック20が破損しやすい。
このことから、上記接触部28は、接触面30に垂直な方向の厚みwが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されている。すなわち、外ビーム部21及び内ビーム部22のそれぞれにおける補強部材27のベルト幅方向の両側に形成された樹脂部29は、それぞれ接触面30に垂直な方向の厚みwが1.0mm以上且つ1.8mm以下である。
また、外ビーム部21及び内ビーム部22は、ベルト外側の表面からベルト内側に向かってベルト幅方向の大きさが小さく形成されている。そして、外ビーム部21及び内ビーム部22は、それぞれ接触面30同士がなす角度がVベルトBが巻き掛けられるVプーリ(図示省略)のプーリ溝面が互いになす角度と同じに形成されている。
ところで、仮に、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数が0.16よりも小さい場合には、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数が比較的小さいため、プーリからの推力を十分に接触部28で受けることが困難となり、伝動用ベルトとして十分な伝動性を確保することが困難である。
一方、仮に、ブロック20におけるベルト幅方向の両側の接触面30同士がなす角度をαとしたとき、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数がtan(α/2)以下である場合には、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数が比較的大きいため、ベルトがプーリから脱離するときにプーリに巻き込まれやすくなる。ベルトがプーリに巻き込まれた場合には、ベルトを走行させたときの騒音が比較的大きくなると共にベルトに必要以上の加重が加わるため、ベルトが破損しやすい。
そのことから、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数は、0.16以上且つtan(α/2)以下となっている。
また、ブロック20は、ベルト長さ方向の一方の表面に突出して形成された凸部31と、ベルト長さ方向の他方の表面に形成され、隣接するブロック20の凸部31に係合する凹部(図示省略)とを有している。これら凹部及び凸部31は、センターピラー部23のピッチラインに形成されている。
上記凹部は、断面円弧状等に形成され、内径が底面側に向かうに連れて徐々に小さくなるテーパ状に形成されている。一方、上記凸部31は、断面円弧状に形成され、外径が先端側に向かうに連れて徐々に小さくなるテーパ状に形成されている。
VベルトBは、ベルト長さ方向に隣り合うブロック20の間において、一方のブロック20の凹部に他方にブロック20の凸部31が係合していることにより、各ブロック20のベルト厚み方向及びベルト幅方向への揺動が規制されるようになっている。こうして、高負荷伝動用VベルトBは、プーリからの推力を接触部28を介して張力帯10に伝えることにより伝動を行うようになっている。
−実施形態1の効果−
したがって、この実施形態1によると、接触部28における接触面30の表面に垂直な方向の厚みwが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されているため、補強部材27と接触部28との界面に生じる剪断応力を抑制しながら、接触部28の緩衝性を向上させることによって接触面30に加わる衝撃を接触部28に吸収させると共に分散させることができ、接触部28の耐衝撃性を高めることができる。そのことに加えて、走行に伴う接触面30の摩耗によって接触部28の厚みwが減少したとしても、接触部28が長期に亘って0.4mm以上の比較的大きい厚みで残るため、ブロック20の耐衝撃性が著しく低下することを抑制できる。したがって、補強部材27と接触部28との界面における剪断応力を抑制できると共に接触部28の耐衝撃性を向上させることができる。その結果、接触部28が補強部材27から剥離することを抑制でき、且つ接触部28の樹脂特性を低下させることなくブロック20が接触部28において欠けることを抑制できる。
したがって、この実施形態1によると、接触部28における接触面30の表面に垂直な方向の厚みwが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されているため、補強部材27と接触部28との界面に生じる剪断応力を抑制しながら、接触部28の緩衝性を向上させることによって接触面30に加わる衝撃を接触部28に吸収させると共に分散させることができ、接触部28の耐衝撃性を高めることができる。そのことに加えて、走行に伴う接触面30の摩耗によって接触部28の厚みwが減少したとしても、接触部28が長期に亘って0.4mm以上の比較的大きい厚みで残るため、ブロック20の耐衝撃性が著しく低下することを抑制できる。したがって、補強部材27と接触部28との界面における剪断応力を抑制できると共に接触部28の耐衝撃性を向上させることができる。その結果、接触部28が補強部材27から剥離することを抑制でき、且つ接触部28の樹脂特性を低下させることなくブロック20が接触部28において欠けることを抑制できる。
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、接触部28はフェノール系樹脂により形成されて常温での弾性率が9000MPa以上であるとしたが、本発明はこれに限られず、樹脂部29は、フェノール系樹脂以外の樹脂により形成されていてもよく、弾性率が9000MPaよりも小さくてもよい。
上記実施形態1では、接触部28はフェノール系樹脂により形成されて常温での弾性率が9000MPa以上であるとしたが、本発明はこれに限られず、樹脂部29は、フェノール系樹脂以外の樹脂により形成されていてもよく、弾性率が9000MPaよりも小さくてもよい。
上記実施形態1では、ブロック20におけるベルト幅方向の両側の接触面30同士がなす角度をαとしたとき、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数は、0.16以上且つtan(α/2)以下であるとしたが、本発明はこれに限られず、接触面30とプーリの表面との動摩擦係数はその他の数値をとっていてもよく、伝動用ベルトとしての伝動性を十分保っていればよい。
上記実施形態1では、VベルトBが一対の張力帯10を備えているとしたが、本発明はこれに限られず、VベルトBは、少なくとも1つの張力帯10を備えていればよい。
《実施例》
(第1実施例)
本第1実施例では、上記実施形態1に示す構造を有する実施例1〜実施例4の高負荷伝動用VベルトBを形成して、各VベルトB又は各Vベルトのブロック20に対して耐衝撃性試験、伝動性試験及び高速耐久性試験をそれぞれ行った。
(第1実施例)
本第1実施例では、上記実施形態1に示す構造を有する実施例1〜実施例4の高負荷伝動用VベルトBを形成して、各VベルトB又は各Vベルトのブロック20に対して耐衝撃性試験、伝動性試験及び高速耐久性試験をそれぞれ行った。
実施例1〜実施例4のVベルトBは、接触部28の厚みwがそれぞれ異なる。実施例1〜実施例4のVベルトBは、接触部28の厚みwが順に1.0mm、1.2mm、1.5mm、1.8mmである。これら実施例1〜実施例4のVベルトBは、接触部28の弾性率がそれぞれ常温で20000MPaである。
また、上記実施例1〜実施例4に対する比較例として、接触部28の厚みwがそれぞれ異なる比較例1〜比較例4のVベルトを形成して、上記実施例1〜実施例4のVベルトBと同様の試験を行った。尚、以降では、比較例1〜比較例4のVベルトについても、理解しやすいように上記実施例1〜実施例4と同様の参照符号を用いて説明する。比較例1〜比較例4のVベルトは、接触部28の厚みwがそれぞれ順に0.3mm、0.5mm、0.8mm、2.0mmであり、その他の構成については、上記実施例1〜実施例4のVベルトBと同様である。
次に、耐衝撃性試験、伝動性試験及び高速耐久性試験について説明する。
上記耐衝撃性試験では、図3に示す耐衝撃性試験機を用いて実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例4のVベルトにおけるブロック20の耐衝撃性をそれぞれ測定した。上記耐衝撃性試験機は、固定されたロードセル50と、そのロードセル50に部材51を介して接続された略コ字状の第1受圧部材52と、第1受圧部材52に係合する略逆コ字状の第2受圧部材53と、この第2受圧部材53のロードセル50とは反対側に形成された柱状のガイド部材54と、ガイド部材54に沿って落下する重錘55とを備えている。図3の56は、重錘55が落下する方向を示している。
第1受圧部材52と第2受圧部材53との間には、Vベルトのブロック20を、ブロック20と第1受圧部材52及び第2受圧部材との間に隙間を設けることなく狭持させることが可能である。このように、第1受圧部材52と第2受圧部材53との間にブロック20を狭持させた状態で、第2受圧部材53に重錘55を落下させる。そのことにより、ブロック20の接触部28に衝撃を与え、ブロック20の接触部28が欠けるまでの重錘55の落下回数を測定して、その重錘55の落下回数をブロック20の耐衝撃性として測定した。
この耐衝撃性試験では、重錘55を第2受圧部材53よりも15mm上方から第2受圧部材53へ落下させた。また、落下周期は毎分20回とした。このときの雰囲気温度は13℃である。
上記伝動性試験は、図3及び図4に示すように、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例4のVベルトを、それぞれ駆動プーリ60及び従動プーリ61に巻き掛けて300時間走行させ、ベルト走行前に予め測定したベルトの張力とベルト走行後に測定したベルトの張力とをそれぞれベルトの伝動性として比較した。図3及び図4の67はベルトの走行方向を示している。
まず、本伝動性試験に用いるベルト走行装置と共にベルトの張力の測定方法について説明する。
この伝動性試験に用いるベルト走行装置は、図示は省略するが、駆動プーリ60がベース板62上に固定して配置され、従動プーリ61がベース板63上に固定して配置されている。従動プーリ61が固定されたベース板63は、ベース板63に取り付けられたベアリング64を介して一対のL/Mガイド65上に配置されている。
一対のL/Mガイド65は、駆動プーリ60と従動プーリ61とが対向する方向に互いに並んで延びており、ベース板63はL/Mガイド65に沿って駆動プーリ60と従動プーリ61とが対向する方向に移動可能になっている。ベース板63における駆動プーリ60側の端部には、固定して配置されたロードセル66が接続されている。このロードセル66は記録計67に接続され、ロードセル66で測定された張力を記録するようになっている。
また、従動プーリ61は、回転軸方向からバネトルクカム(図示省略)により一定の推力が加えられてプーリの溝幅が狭められる。そのことにより、ベルトに張力が付与される。図5の68は、上記一定の推力を加える方向を示している。そうして、このベルト走行装置は、駆動プーリ60と従動プーリ61とに巻き掛けられたベルトの張力により、従動プーリ61が接触プーリ60側に向かって移動する力によってロードセル66に加わる圧縮力を測定することにより、ベルトの張力を測定するようになっている。
上記ベルト走行装置は、駆動プーリ60のプーリ径が73.23mmであり、従動プーリ61のプーリ径が124.49mmである。これら駆動プーリ60と従動プーリ61との軸の間隔は148.5mmとした。また、試験中のベルト温度は130℃であった。
上記高速耐久性試験は、図6示すように、駆動プーリ70及び従動プーリ71に実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例4のVベルトをそれぞれ巻き掛けて500時間走行させ、各Vベルトの走行可能時間を高速耐久性としてそれぞれ測定した。
この高速耐久性試験での駆動プーリ70のプーリ径は133.6mmであり、従動プーリ71のプーリ径は、61.4mmである。駆動プーリ70の回転数を5016±60rpmとし、駆動プーリ70のトルクを63.7N・mとした。また、試験中の雰囲気温度は、120℃とした。
また、この高速耐久試験と同様の条件で各Vベルトをそれぞれ300時間走行させた後に、各Vベルトの接触部28の厚みwを測定して、ベルト走行前に予め測定した各Vベルトの接触部28の厚みwとベルト走行後の接触部28の厚みwとを比較することにより、各Vベルトの接触部28の摩耗量をそれぞれ測定した。
上述した耐衝撃性試験、伝動性試験及び高速耐久性試験を実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6のVベルトについて行った結果を図7に示す。
比較例2及び比較例3のブロック20は、耐衝撃性試験におけるベルト走行前とベルト走行後とのブロック20が欠けるまでの重錘55の落下回数(耐衝撃性)を比較すると、走行前の重錘55の落下回数に比べて走行後の重錘55の落下回数が著しく低下している。比較例1のブロック20については、高速耐久試験中に接触部28が摩耗により減少して補強部材27が露出したため、ベルト走行後における耐衝撃性試験を行うことができず走行後の重錘55の落下回数が測定不可能であった。
また、これら比較例1〜比較例3のVベルトは、伝動性試験において、走行後の張力(伝動性)が走行前の張力よりも低下していた。また、その他に、比較例2〜比較例4は、高速耐久試験において、走行時間が400時間以下で補強部材27の露出又はブロック20の破損により走行不可能となった。
これに対して、実施例1〜実施例4のブロック20は、耐衝撃性試験におけるベルト走行前とベルト走行後とのブロック20が欠けるまでの重錘55の落下回数が共にそれぞれ3000回以上であり、ベルト走行前とベルト走行後とを比較しても比較例1〜比較例3のブロック20ほど著しく低下しなかった。特に、実施例3及び実施例4のブロック20については、耐衝撃性試験におけるベルト走行前とベルト走行後とのブロック20が欠けるまでの重錘55の落下回数が同じであった。
また、実施例1〜実施例4のベルトは、伝動性試験において、走行後のベルトの張力(伝動性)が走行前のベルトの張力とそれぞれ同じであり、300時間に亘る走行によってもベルトの張力が低下しなかった。さらに、これら実施例1〜実施例4のベルトは、高速耐久試験において、500時間走行させても問題なく走行した。
(第2実施例)
本第2実施例では、上記実施形態1に示す構造を有する複数のブロック20を形成して、各ブロック20に対して上記第1実施例の耐衝撃性試験を行った。複数のブロック20は、1.8mm以下の厚みwで略同じ又は同じ接触部28の厚みwを有するものを2個ずつ(合計16個)形成した。
本第2実施例では、上記実施形態1に示す構造を有する複数のブロック20を形成して、各ブロック20に対して上記第1実施例の耐衝撃性試験を行った。複数のブロック20は、1.8mm以下の厚みwで略同じ又は同じ接触部28の厚みwを有するものを2個ずつ(合計16個)形成した。
この耐衝撃性試験の結果を図8に示す。図8は、接触部28の厚みwに対する重錘55の落下回数の変化を示す図である。図8に示すように、接触部28の厚みwが1.0mmよりも小さいブロック20については、厚みwが小さくなるほどに重錘55の落下回数が少なくなる傾向が見られる。特に、接触部28に厚みwが0.4mmよりも小さいブロック20については、接触部28に厚みwが0.4mm以上のブロック20に対して、重錘55の落下回数が著しく少なくなっている。これに対して、接触部28の厚みwが1.0mm以上且つ1.8mm以下のブロック20については、安定して重錘55の落下回数が多い。
以上のことから、接触部28の厚みwが0.4mmよりも小さい場合には、ブロック20の耐衝撃性が著しく低下することがわかった。また、接触部28の厚みwを1.0mm以上且つ1.8mm以下にすることにより、接触部28の樹脂特性を低下させることなく、接触部28の耐衝撃性を向上させてブロック20が接触部28において欠けることを抑制できることがわかった。
以上説明したように、本発明は、高負荷伝動用Vベルトについて有用であり、特に、接触部が補強部材から剥離することを抑制し、且つ接触部の樹脂特性と低下させることなくブロックが接触部において欠けることを抑制する場合に適している。
B 高負荷伝動用Vベルト(Vベルト)
10 張力帯
20 ブロック
27 補強部材
28 接触部
30 接触面
10 張力帯
20 ブロック
27 補強部材
28 接触部
30 接触面
Claims (1)
- エンドレスに延びて環状に形成された少なくとも1つの張力帯と、
上記張力帯のベルト長さ方向に所定ピッチで係止固定された複数のブロックとを備え、
上記複数のブロックが、補強部材と、該補強部材におけるベルト幅方向の両側に樹脂によりそれぞれ形成され、プーリに接する接触面を有する接触部とをそれぞれ備えた高負荷伝動用Vベルトであって、
上記接触部は、上記接触面に垂直な方向の厚みが1.0mm以上且つ1.8mm以下に形成されている
ことを特徴とする高負荷伝動用Vベルト。
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