JP2009034666A - ジメチルエーテル製造用触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】 長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させてジメチルエーテルを製造することができるジメチルエーテル製造用触媒と、該触媒を用いたジメチルエーテルの製造方法とを提供する。
【解決手段】 ジメチルエーテル製造用触媒は、主成分がアルミナであり、アルミナ100重量部に対してマグネシウム元素をMg換算で0.01〜0.8重量部含有する。好ましくは、さらに、イオウ元素を、アルミナ100重量部に対してSO4換算で10重量部以下であり、かつマグネシウム元素とイオウ元素との比率がMg/SO4(重量比)=0.001〜0.1となる範囲で、含有する。ジメチルエーテルの製造方法は、前記ジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、メタノールを脱水反応させてジメチルエーテルを製造するためのジメチルエーテル製造用触媒に関する。
ジメチルエーテルは、次世代合成クリーン燃料として需要が大いに期待されており、特にディーゼルエンジン用燃料として大量に利用されることが見込まれている。また、ジメチルエーテルは、燃料電池への応用も検討されており、水素へ転換する改質原料としても期待されている。そのため、ジメチルエーテルを効率的に製造する方法が求められており、それに用いる触媒の開発要請がある。
ジメチルエーテル〔CH3OCH3〕の製造方法としては、ジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノール〔CH3OH〕を脱水反応させる方法が知られており、ジメチルエーテル製造用触媒としてはアルミナを主成分とするものが知られている。例えば、主成分がアルミナであり、酸化物換算で6A族元素を0.1〜20質量%含有する触媒が提案されている(特許文献1参照)。
特開2006−43548号公報
しかしながら、特許文献1記載の触媒を用いてメタノールの脱水反応を行った場合、反応開始時(初期)には優れた反応率が得られるものの、長時間反応を継続すると充分な反応率が維持できなかった。
そこで、本発明の課題は、長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させてジメチルエーテルを製造することができるジメチルエーテル製造用触媒と、該触媒を用いたジメチルエーテルの製造方法とを提供することにある。
本発明者等は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、特定量のマグネシウム元素を含有するアルミナ触媒、もしくは、さらに特定量のイオウ元素をも含有するアルミナ触媒を用いてメタノールの脱水反応を行うと、従来のアルミナ触媒で生じていた反応率の低下を抑制することができ、長時間にわたり優れた反応率を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、従来公知のアルミナ触媒は、通常、マグネシウム元素やイオウ元素を含まないか、含有する場合であってもその含有量は非常に少量である。例えば前述した特許文献1においては、実施例で得られた触媒中のイオウ元素の含有量は0.24〜0.25質量%であり、マグネシウム元素は含有していない。
すなわち、本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、主成分がアルミナであり、アルミナ100重量部に対してマグネシウム元素をMg換算で0.01〜0.8重量部含有する。好ましくは、さらに、イオウ元素を、アルミナ100重量部に対してSO4換算で10重量部以下であり、かつマグネシウム元素とイオウ元素との比率がMg/SO4(重量比)=0.001〜0.1となる範囲で、含有する。
なお、本発明では、イオウ元素の含有量およびマグネシウム元素の含有量を「アルミナ100重量部」を基準に規定しているが、その場合「アルミナ100重量部に対して」とは、詳しくは「Al23換算で100重量部のアルミナに対して」との意味である。
また、本発明のジメチルエーテルの製造方法は、上記本発明のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる。
本発明によれば、長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させてジメチルエーテルを製造することができる、という効果が得られる。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒(以下、省略して「触媒」という)は、主成分がアルミナである。アルミナは、アルミニウムの酸化物であって、通常は化学式(1)
Al23・nH2O〔0≦n≦0.5〕 (1)
で示されるものであり、χ、γ、ηなどの結晶相を有する活性アルミナが用いられる。活性アルミナは、χ、γ、η以外の結晶相、例えばκ、δ、ρなどの結晶相を含んでいてもよい。
本発明の触媒におけるアルミニウム含有量は、触媒の全体を基準として酸化物換算で、通常80重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
本発明の触媒は、アルミナ100重量部に対してマグネシウム元素をMg換算で0.01〜0.8重量部含有する。これにより、経時的な反応率低下を抑制し、長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させることが可能になる。本発明の触媒中のマグネシウム元素の含有量は、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
本発明の触媒は、さらに、特定量のイオウ元素を含有することが好ましい。これにより、経時的な反応率低下を抑制し、長時間にわたり優れた反応率でメタノールを脱水反応させるとともに、初期反応率をも向上させ、反応開始時から高いメタノール反応率を得ることができる。なお、触媒に含まれるイオウ元素は、通常、硫酸イオンとして存在し、これが反応率低下の抑制に寄与するものと考えられる。
本発明の触媒がイオウ元素をも含む場合、触媒中のイオウ元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してSO4換算で、通常10重量部以下である。イオウ元素の含有量が10重量部を超えると、反応率低下の抑制効果は得られるが、触媒使用後にイオウ成分の減少が確認され、触媒として適さないこととなるおそれがある。イオウ元素の含有量の下限は、特に制限されないが、好ましくは0.8重量部以上である。イオウ元素の含有量が0.8重量部よりも少ないと、イオウ元素による反応率低下の抑制効果や初期反応率の向上効果が不充分となるおそれがある。
また、本発明の触媒がイオウ元素をも含む場合、触媒中のイオウ元素の含有量は、通常、マグネシウム元素とイオウ元素との比率がMg/SO4(重量比)=0.001〜0.1となる範囲とする。マグネシウム元素とイオウ元素との比率(Mg/SO4)が0.001未満であると、イオウ元素に対するマグネシウム元素の割合が減少するため、反応率低下の抑制効果が充分に発現されず、良好な反応率が維持できないおそれがあり、一方、マグネシウム元素とイオウ元素との比率(Mg/SO4)が0.1を超える場合、イオウ元素の量が少なくなり、イオウ元素による反応率低下の抑制効果や初期反応率の向上効果が不充分となるおそれがある。
本発明の触媒にマグネシウム元素を含有させる際のマグネシウム源としては、前記イオウ源を含む水溶液にイオンとして溶解しうる塩であればよく、例えば、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム塩等の各種マグネシウム塩を用いることができる。
本発明の触媒にイオウ元素を含有させる際のイオウ源としては、特に制限されないが、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素アンモニウムなどの各種硫酸塩、各種スルホン酸塩、各種亜硫酸塩等を用いることができる。これらの中でも特に、アルミニウムおよびマグネシウム以外の金属分を含まないものが好ましく、特に、硫酸アルミニウムが好ましい。なお、硫酸もイオウ源として用いることができるが、酸性度が高くなりすぎるとアルミナが溶解するおそれがある。
本発明の触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、ケイ素、チタン、セリウム、ジルコニウム、亜鉛などのアルミニウムおよびマグネシウム以外の金属元素を含んでいてもよい。これらの金属元素は、通常、酸化物の形態で含まれる。
本発明の触媒は、ナトリウム含有量が触媒全体を基準として酸化物換算で、通常0.5重量%以下、好ましくは0.02重量%以下であり、理想的にはナトリウムを実質的に含まない(0重量%)のがよい。ナトリウム含有量が0.5重量%を超えると、反応率が低下する傾向がある。また、通常は、酸化物換算のカリウム含有量は0.01重量%以下、リチウム含有量は0.01重量%以下、塩素含有量は0.5重量%以下、フッ素含有量は0.5重量%以下である。
本発明の触媒は、BET比表面積が100m2/g以上であることが好ましく、通常は300m2/g以下である。
本発明の触媒は、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積容積が、通常0.3cm3/g以上、好ましくは0.5cm3/g以上であり、細孔の累積容積が多いほど反応率が高くなるが、通常は3.0cm3/g以下である。また、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積が、1.8nm〜100μmの細孔の累積容積に対して10%〜60%、さらには15%〜50%程度であることが好ましい。
本発明の触媒は、例えば、前記マグネシウム源と必要に応じて前記イオウ源とを含む溶液(好ましくは水溶液)をアルミナ前駆体に充分に吸収させた後、焼成する方法により製造することができる。前記溶液をアルミナ前駆体に吸収させるには、前記溶液中にアルミナ前駆体を含浸させるか、アルミナ前駆体に前記溶液をスプレー等により塗布するなどの手段を採用すればよい。アルミナ前駆体としては、特に制限はなく、従来公知の方法で得られたものを使用してもよいし、市販のベーマイト結晶水酸化アルミニウム等を使用してもよい。焼成に際しては、特に制限はないが、焼成温度は通常400℃〜1100℃程度、焼成時間は通常2時間〜24時間程度とする。
本発明の触媒は、粉末状でジメチルエーテルの製造に用いられてもよいが、通常は、例えば球状に成形された成形体として用いられる。成形は、焼成後に行ってもよいし、前記マグネシウム源と必要に応じて前記イオウ源とを含む溶液を吸収させる前もしくは吸収させた後のアルミナ前駆体の段階で行ってもよい。成形方法としては、特に制限はなく、例えば、転動造粒法、プレス成形法、打錠成形法、押出成形法などの通常の方法で行うことができる。
なお、本発明の触媒の製造方法は、上述の方法に限定されるものではなく、アルミナ前駆体を焼成した後に前記マグネシウム源と必要に応じて前記イオウ源とを付与する方法でも製造することができる。
本発明のジメチルエーテル製造用触媒を用いてジメチルエーテルを製造するには、例えば、本発明のジメチルエーテルの製造方法のように、本発明の触媒の存在下にメタノールを脱水反応させればよい。具体的には、メタノールを気化させたメタノールガスを脱水反応温度で触媒と接触させればよい。
メタノールガスは、全量がメタノールである純メタノールガスであってもよいが、水(水蒸気)や、エタノール、イソプロパノールなどのようなメタノール以外のアルコールを含んでいてもよい。メタノールとこれら水およびアルコールとの合計量に対するメタノールの含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。また、メタノールガスは通常、窒素(N2)、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスなどで希釈されて用いられる。メタノールの気化は、通常反応前に熱交換器などにより行われる。
メタノールの脱水反応の際の反応温度は、通常250℃以上、好ましくは270℃以上であり、通常450℃以下、好ましくは400℃以下である。反応圧力は、温度により異なるが、通常1×105Pa以上であり、通常30×105Pa以下、好ましくは20×105Pa以下である。
メタノールの脱水反応は、通常、多管式反応器のような固定床反応器を用いて行われ、そのときのメタノールの空間速度は、通常500h-1以上、150000h-1以下である。
反応により得られたジメチルエーテルは、そのまま使用することもできるが、必要に応じて、蒸留などの通常の方法で精製して使用してもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例において得られた触媒中のマグネシウム元素およびイオウ元素の含有量は、次の方法により測定した。
<マグネシウム元素含有量、イオウ元素含有量>
触媒を粉砕し、炭酸ナトリウムおよびホウ酸を加えて1050℃で焼成した後、硝酸を加えてサンプル液を作製した。このサンプル液についてICP発光分析を実施することにより、マグネシウム元素含有量およびイオウ元素含有量を求めた。
(実施例1−1)
ベーマイト結晶水酸化アルミニウム(アルマティス社製「HIQ−40」)を振動ミルで中心粒径7.5μmまで粉砕し、粉砕品を得た。この粉砕品を600℃で2時間焼成したところ、得られたアルミナの結晶形はγアルミナで、Na2O量は0.001重量%以下であった。
次に、上記粉砕品にアルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」:ゾル中のアルミナ当たりのNa2O量は0.001重量%以下)を10倍に希釈した液をスプレーして加えながら、直径58cmの皿型造粒機を用いて造粒し、直径2〜4mmの球状の成形体とし、この成形体を200℃で乾燥させて、水酸化アルミニウム成形体を得た。
この水酸化アルミニウム成形体100gを、硫酸マグネシウム〔MgSO4・7H2O〕0.259gと硫酸アルミニウム〔Al2(SO43・16H2O〕2.19gとを水20.0gに溶解させた水溶液に含浸させて該水溶液を成形体に充分に吸水させ、6時間程度室温で放置して乾燥させた後、得られた成形体を600℃で焼成して、触媒(1)を得た。
得られた触媒(1)は、アルミナを主成分とするものであり、イオウ元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してSO4換算で1.30重量部であり、マグネシウム元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してMg換算で0.08重量部であり、Mg/SO4(重量比)は0.062であった。
(実施例1−2)
実施例1−1と同様にして得た水酸化アルミニウム成形体122gを、酢酸マグネシウム6水和物〔Mg(CH3COO)2・6H2O〕3.6gを水28.1gに溶解させた水溶液に含浸させて該水溶液を成形体に充分に吸水させ、6時間程度室温で放置して乾燥させた後、得られた成形体を600℃で焼成して、触媒(2)を得た。
得られた触媒(2)は、アルミナを主成分とするものであり、マグネシウム元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してMg換算で0.37重量部であり、イオウ元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してSO4換算で0.001重量部(検出下限)未満であった。
(比較例1−1)
実施例1−1において水酸化アルミニウム成形体を硫酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウム含有水溶液に含浸させなかったこと以外は、実施例1−1と同様にして、触媒(C1)を得た。
得られた触媒(C1)は、アルミナを主成分とするものであり、イオウ元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してSO4換算で0.001重量部(検出下限)未満であった。マグネシウム元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してMg換算で0.003重量部であった。
(比較例1−2)
実施例1−1で用いた硫酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウム含有水溶液に変えて、硫酸マグネシウム〔MgSO4・7H2O〕10.1gを水11.1gに溶解させた硫酸マグネシウム水溶液を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、触媒(C2)を得た。
得られた触媒(C2)は、アルミナを主成分とするものであり、イオウ元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してSO4換算で4.04重量部であり、マグネシウム元素の含有量は、アルミナ100重量部に対してMg換算で1.08重量部であり、Mg/SO4(重量比)は0.267であった。
(実施例2−1〜2−2および比較例2−1〜2−2)
上記触媒(1)、(2)、(C1)および(C2)をそれぞれ使用してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。すなわち、固定床流通式の反応装置を用い、温度290℃、圧力1MPaGの条件で、メタノール100%液を気化させ、空間速度(SV)2000h-1で供給してメタノールの脱水反応を行ってジメチルエーテルを連続製造した。そして、反応開始から約2時間後(初期)と7日間経過後の触媒性能を以下の方法で評価した。すなわち、反応装置の入口ガスのメタノール濃度IMeOHを100%とし、反応装置の出口ガスを採取して、出口ガスのメタノール濃度OMeOH(モル濃度)を測定し、これらのメタノール濃度から、下式(2)に従いメタノール反応率を求めた。また、初期および7日後のメタノール反応率から下式(3)に従い維持率を求めた。これらの結果を表1に示す。
メタノール反応率(%)=100×(IMeOH−OMeOH)/IMeOH (2)
維持率(%)=(7日後のメタノール反応率/初期のメタノール反応率)×100 (3)
Figure 2009034666
表1から、特定量のマグネシウム元素と特定量のイオウ元素とを含有する本発明の触媒を用いた実施例2−1では、7日後にも高い維持率で70%を超える反応率が得られることがわかった。さらに、実施例2−1では、イオウ元素を含有しているので、初期の反応率も他の例より格段に高いことがわかった。また、特定量のマグネシウム元素を含有する本発明の触媒を用いた実施例2−2でも、7日後にも高い維持率で70%を超える反応率が得られることがわかった。
これに対して、マグネシウム元素の含有量が少なすぎるか、もしくは逆に、マグネシウム元素の含有量が多すぎる触媒を用いた比較例2−1および比較例2−2では、7日経過後には維持率が下がり、明らかに反応率が低下することがわかった。

Claims (3)

  1. 主成分がアルミナであり、アルミナ100重量部に対してマグネシウム元素をMg換算で0.01〜0.8重量部含有することを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒。
  2. さらに、イオウ元素を、アルミナ100重量部に対してSO4換算で10重量部以下であり、かつマグネシウム元素とイオウ元素との比率がMg/SO4(重量比)=0.001〜0.1となる範囲で、含有する、請求項1記載のジメチルエーテル製造用触媒。
  3. 請求項1または2記載のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
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