JP2009034302A - 生体インプラント及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】骨又は歯に近い力学的特性を有し、かつ生体インプラントを体内に埋設後に、骨と結合する機能を有する生体インプラントを提供し、さらに前記のような特徴を有する生体インプラントを簡易な方法で製造する方法を提供すること。
【解決手段】実質部と、実質部を形成する物質と生体活性物質とで形成され、多孔質構造であり、かつ、表面に生体活性物質が表面積に対して少なくとも0.5%露出してなる表面層とを備えてなる生体インプラント。生体インプラントの、実質部を形成する物質から成る前駆体の表面を多孔質化する工程1と、工程1で得られた、表面が多孔質化した生体インプラントの前駆体を、少なくとも2Mのカルシウムイオンを含む溶液及び少なくとも2Mのリン酸イオンを含む溶液の両方にいずれか先に浸漬する工程2とを含む生体インプラントの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体インプラント及びその製造方法に関し、特に骨又は歯に近い力学的特性を有し、かつ、生体インプラントを体内に埋設した際に、骨と結合する機能を有する生体インプラント及びその製造方法に関する。
骨が大きく欠損した場合の治療方法として、患者自身の正常な骨を一部切り取って患部に移植する自家骨移植、又は人工材料から成る人工骨を移植する人工骨移植が行われている。しかし、自家移植は、採取できる骨量に制限があり、さらに正常な細胞を傷つけることになるので、患者の身体的負担は大きいうえ、自家骨移植に用いる自家骨移植用骨を患者自身の正常な骨から切り取ることによって新たな欠損部が生じるから、骨が大きく欠損した場合の本質的な治療方法とはいえない。また、人工骨移植では、工業的に生産される人工骨を使用するから自家骨移植の様な問題はないが、人工骨の力学的及び生物学的特性は本来の骨と異なるから、人工骨の前記特性に応じて用途が限定されるという問題を有する。例えば、人工骨の材質としてチタン合金の金属材料を選択すると、金属材料は、通常、高強度である反面、弾性率が高く靭性に欠けるので、大きな荷重が連続的にかかるような部位に埋入すると、周りの骨との力学的特性の差によりストレスシールディングが生じるといった問題や、骨と直接に結合しないといった問題がある。また、人工骨の材質として水酸アパタイト等のバイオセラミックスを選択すると、バイオセラミックスは、通常、生体適合性が良いうえに、生体活性が高くて、骨との結合性に優れている反面、外部衝撃に弱いので、大きな荷重が瞬間的にかかるような部位には用いることができないという問題がある。さらに、人工骨の材料として超高分子量ポリエチレン等のポリマーを選択すると、ポリマーは、通常、柔軟性に優れる反面、生体活性に欠けるので、骨と直接に結合しないという問題がある。
これらの問題を解決することのできる材料として、ポリマーと生体活性を有するバイオセラミックスとを組み合わせて、お互いの欠点を補うような材料の開発が盛んに行われている。
例えば、ポリマーの中でもポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、その力学的特性が本来の骨と近く、また生体適合性も優れていることから、高強度が要求される部位での整形外科材料としての応用が期待されている。ただし、PEEK自身は生体活性に欠けることから骨との結合性を有さない。骨との結合性が要求される部位への生体インプラントとしてPEEKを利用するためには、生体活性を有している必要があることから、PEEK表面に生体活性を有する水酸アパタイトを被覆する試みが幾つかされている。
特許文献1では、「本発明によれば、人工寛骨臼カップが、PEEK樹脂と少なくとも20〜40%のカーボン短繊維とを含む複合材料で作られた支承表面層、ならびに障壁および/または多孔度および/または粗さをもたらすための裏打ち層を含む。」(特許文献1の段落番号0009参照)、「裏打ち層は、必要であれば、生体活性材料で被覆することができる。」(特許文献1の段落番号0010参照)、「裏打ち層は、複合材料と骨細胞との間に障壁を生み出すため、例えばチタニウム、タンタル、またはニオブなどの金属から製作でき、あるいは例えば純粋なPEEKから製作できる。」(特許文献1の段落番号0013参照)と記載されている。
上記記載によれば、特許文献1に記載の人工寛骨臼カップは、少なくとも支承表面層と裏打ち層とを有しており、また、裏打ち層を生体活性材料で被覆することもできる、となっており、裏打ち層と生体活性材料で形成された被膜とは、積層されている。また、支承表面層は、PEEK樹脂と少なくとも20〜40%のカーボン短繊維とを含む複合材料で構成されており、一方裏打ち層は、金属又は純粋なPEEKで構成されており、支承表面層と裏打ち層とは材料が異なっている。
特許文献2では、「特に医療インプラントおよびプロテーゼ用であって、
(A)表面層の可変部分がリン酸カルシウム相からなり、
(B)層の厚さが0.1〜50.0μmであり、そして
(C)表面層が多孔質に構成されている生体活性表面層において、
(D)表面層が無定形またはナノ結晶質リン酸カルシウムを含有し、
(E)Ca/P比が表面層全体にわたって0.5〜2.0の範囲内であり、
(F)表面層内に沈着されたCaイオンとPO4イオンが金属酸化物層全体に分布しており、
(G)表面層の表面の細孔密度が104〜108細孔/mm2であり、
(H)表面層が25〜95原子百分率の割合の金属酸化物を含有することを特徴とする表面層。」(特許文献2の請求項1参照)、
「基質がプラスチック、主にポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルイミド(PEI)または液晶高分子(LCP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESUまたはPES)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)または超高分子ポリエチレン(UHMW−PE)からなり、基質がバルブメタルからなる金属層を備えていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の表面層を有する基質。」(特許文献2の請求項15参照)、
「バルブメタルまたはその合金上にリン酸カルシウム含有生体活性多孔質表面層を製造しまた基質上にバルブメタルコーティングも製造する方法であって、被覆される基質が陽極的に水性電解質に曝され、この電解質内にカルシウムイオンとリン酸塩イオンが含有されており、これらのイオンが生成した層内に沈着され、電解質内で陽極プラズマ化学的表面改質が直流電圧もしくは直流電圧パルスでの火花放電と電圧の時間的変化のもとで行われる方法において、
(A)水性電解質がカルシウムとリン酸塩を添加して0より大きいかまたは等しいpH値に調整され、かつ以下の成分
(B1)濃度範囲0.01〜6.00mol/lの単数または複数の有機キレート剤または無機錯化剤、
(B2)濃度範囲0.01〜6.00mol/l、主に0.01〜0.05mol/lの単数または複数のリン酸塩化合物、
(B3)所要のカルシウム/リン酸塩比を調整するために濃度範囲0.01〜6.00mol/lの単数または複数の水溶性カルシウム化合物、
(B4)所要のpH値を調整するために濃度範囲0.01〜6.00mol/lの単数または複数の塩基性添加物を含有することを特徴とする方法。」(特許文献2の請求項16参照)、
が提案されている。
上記記載によれば、基質と金属層と表面層とが積層して成り、表面層は請求項1により特徴付けられており、基質及び金属層は請求項15により特徴付けられている。基質及び金属層については、材料が示されているのみである。また、生体活性表面層のコーティングは電気的な反応で行うとされている。
特開2006-158953号公報 特表2004-531305号公報
本発明の課題は、骨又は歯に近い力学的特性を有し、かつ、生体インプラントを体内に埋設した際に、骨と結合する機能を有する生体インプラントを提供することである。本発明の他の課題は、前記のような特徴を有する生体インプラントを簡易な方法で製造する製造方法を提供することである。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、
実質部とその表面に形成された表面層とを備えた生体インプラントであって、
前記表面層は、実質部を形成する物質と生体活性物質とで形成された多孔質構造であり、かつ、前記表面層の表面に、生体活性物質が前記表面層の表面積に対して少なくとも0.5%露出してなることを特徴とする生体インプラントであり、
請求項2は、
前記生体活性物質がリン酸カルシウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載の生体インプラントであり、
請求項3は、
前記生体活性物質が水酸アパタイトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体インプラントであり、
請求項4は、
前記生体活性物質が低結晶質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項5は、
前記実質部は、それを形成する物質がエンジニアリングプラスチックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項6は、
前記実質部は、それを形成する物質がポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項7は、
前記表面層は、その厚さが1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項8は、
実質部と表面層とを備えた生体インプラントの製造方法であって、
生体インプラント1の、実質部を形成する物質からなる前駆体の表面を多孔質化する工程1と、
工程1で得られた、表面が多孔質化した生体インプラント1の前駆体を、少なくとも2Mのカルシウムイオンを含む溶液及び少なくとも2Mのリン酸イオンを含む溶液の両方に、いずれか先に浸漬する工程2と、
を含むことを特徴とする生体インプラントの製造方法である。
本発明に係る生体インプラントは、実質部とその表面に形成された表面層とを備えた生体インプラントであって、前記表面層は、実質部を形成する物質と生体活性物質とで形成された多孔質構造であり、かつ、前記表面層の表面に、生体活性物質が前記表面層の表面積に対して少なくとも0.5%露出してなるので、生体インプラントを体内に埋設した後に、骨と結合する機能を有する生体インプラントを提供することができる。
また、本発明に係る生体インプラントは、生体活性物質が前記表面層の表面積に対して少なくとも0.5%露出してなるので、この生体インプラントを体内に埋設すると、前記表面層の表面に露出した生体活性物質が種結晶となって、骨との結合が進行する。
また、表面層は、生体活性物質を含むので、その一部は表面層の表面に露出した生体活性物質と結合し、表面層の表面から生体活性物質が脱落するのを防ぐことができる。
また、前記表面層は、多孔質構造であるので、生体インプラントを体内に埋設した後に、生体インプラントと骨とが結合する際に、表面層に存在する空間を充填するように新たな骨が形成され、さらに表面層の内部に樹枝状に形成されることにより、表面層の外部へと生成した新たな骨と生体インプラントとが強固に結合される。
また、水酸アパタイトは実際の骨の無機成分であるので、生体インプラントの表面層が水酸アパタイトを含有し、かつその表面に水酸アパタイトが露出していれば、より生体親和性が高く、骨と結合し易くなる。さらに、生体活性物質は低結晶質であり、実際の骨と同様の結晶性であるので、生体との結合が速やかに行われる。
また、本発明に係る生体インプラントは、力学的特性が骨又は歯に近いので、骨との結合が必要で、かつ大きな荷重が連続的に長期間かかるような部位に人工骨として適用する場合に、ストレスシールディング、すなわち骨に加わる応力の遮へいによって起こる可能性のある骨減少及び骨密度の低下などを生じることのない、生体活性を有する高強度生体インプラントを提供することができる。
本発明に係る生体インプラントの製造方法は、実質部と表面層とで形成された生体インプラントの前駆体の表面を多孔質化する工程と多孔質化した生体インプラントの前駆体を所定のイオン濃度を有する溶液に浸漬する工程とを含む方法であるので、特別な装置を使用する必要が無く、簡易な方法で前記のような特徴を有する生体インプラントを製造することができる。
まず、図1を参照しつつ本発明に係る一実施例である生体インプラントの構成について説明する。図1に示すように、本発明に係る生体インプラント1は、実質部2とその表面に形成された表面層3とを備えた生体インプラント1であって、前記表面層3は、実質部2を形成する物質と生体活性物質4とで形成された多孔質構造であり、かつ、前記表面層3の表面に、生体活性物質4が前記表面層3の表面積に対して少なくとも0.5%露出してなる。
実質部2を形成する物質は、力学的特性が骨又は歯に近いもの、すなわち、弾性率が10〜50GPa、曲げ強度は100MPa以上であることが望ましい。
このような実質部2を形成する物質としては、エンジニアリングプラスチック又は繊維強化プラスチック等がある。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニリンオキサイド、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリオキシメチレン、ポリ四フッ化エチレン等が挙げられる。
繊維強化プラスチックのマトリックスとなるプラスチックとしては、前記エンジニアリングプラスチックに加えて、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、EVA樹脂、EEA樹脂、4−メチルペンテン−1樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ACS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エチレン塩化ビニル共重合体、プロピレン塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアビニルアセトアセタール、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、メタクリル樹脂、リノル樹脂、ポリアリルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンスルフィド、ポリスチレン、ポリアミノビスマレイミド、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、イソフタル酸系樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン、アルキルベンゼン樹脂、グアナミン樹脂、ポリジフェニルエーテル樹脂等が挙げられる。
実質部2を形成する物質としては、これらの中でも力学的特性が骨と近く、生体適合性のあるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が特に好ましい。
前記繊維強化プラスチックにおける繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維又は有機繊維が挙げられる。
炭素繊維ついては、ここではカーボンナノチューブも含まれる。
ガラス繊維としては、ホウケイ酸ガラス(Eガラス)、高強度ガラス(Sガラス)、高弾性ガラス(YM−31Aガラス)等の繊維、
セラミック繊維としては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ素等の繊維、
金属繊維としては、タングステン、モリブデン、ステンレス、スチール、タンタル等の繊維、
有機繊維としては、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アラミド等の繊維、又はこれらの混合物を用いることができる。
また実質部2を形成する物質中に、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料などの着色料、等の各種添加剤が含有されていても良い。
表面層3の厚さは、1〜50μmであるのが好ましく、3〜30μmであるのが特に好ましい。1μm未満の場合は表面層3の表面に露出した生体活性物質4が脱落し易くなるおそれがあり、その結果、生体インプラントの表面に生体活性物質4が存在しないので、生体インプラントを生体内に埋設した場合に、生体インプラントの表面に骨が生成されず、生体インプラントと骨との結合が行われないおそれがある。50μmを越える場合には、表面層3が多孔質構造であることによる強度の低下のおそれがある。
表面層3は多孔質構造であるのが好ましい。つまり、表面に開口する気孔及び表面層3の内部に形成された気孔を多数有し、これら複数の気孔が連通してなる連通孔を形成している場合もある。表面層3は、これら多数の気孔を有することにより網目構造を形成する。表面層3が多孔質構造である場合には、本発明に係る一実施例である生体インプラントを生体内に埋設し、表面層3に含まれる生体活性物質4を起点として骨との結合が進む際に、表面層3に多数の極微細な空間が存在するので、この空間にも新たな骨を容易に生成することができる。したがって、生体インプラントと骨との結合が表面層3の外部で進行するとともに、内部へと樹枝状に広がって結合することができるので、生体インプラントと骨との結合が強固になる。
表面層3の表面に開口する気孔径、表面層3の内部に形成される気孔径、複数の気孔が連通してなる連通孔の長径、表面層3の表面に開口する気孔の気孔率、及び表面層3の断面の気孔の気孔率は、通常の方法で算出することができる。例えば、気孔径及び連通孔の長径は、表面層3の表面及び断面を走査型電子顕微鏡で観察し、表面層3の表面及び断面の写真を使用して、気孔径及び連通孔の長径を測定することにより、求めることができる。また、気孔率は、表面層3の表面及び断面の走査型電子顕微鏡により撮影した写真を、画像解析ソフトを使用して、気孔とそれ以外の部分とに2値化する。次に、写真全体の面積に対する気孔の面積の割合を算出することにより、気孔率を求めることができる。他の方法としては、水銀ポロシメーターを使用して、上記気孔径、気孔率を求めることができる。
表面層3の表面に開口する気孔径を走査型電子顕微鏡により測定した場合の気孔径の範囲は、0.1〜200μmであることが好ましい。気孔径が0.1μm未満の気孔は、生体インプラントが骨と結合する際に、表面層内に新たな骨が形成する空間が十分に確保されず、骨との結合力をより強固にすることができないことがある。また、200μmを越えると、生体インプラントの強度が低下するおそれがある。
表面層3の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、その断面写真を使用して上述した方法で算出した気孔率は、10〜90%が好ましく、20〜80%がより好ましい。気孔率が、10〜90%の範囲であれば、新たな骨が形成される空間が十分に確保されるので、この空間を埋めるように新たな骨が形成され、複数の気孔が連通する連通孔にも新たな骨が形成できるので、さらに強固に生体インプラントと骨とを結合することができる。
表面層3への多孔質構造の形成は、濃硫酸又は濃硝酸、クロム酸等の腐食性溶液に浸漬することにより行うことができる。この他にも公知の方法で多孔体を形成することができる。例えば、ショ糖等の低分子水溶性有機物質又は塩化ナトリウム等の低分子水溶性無機物質をポリマーに分散させて溶融成形し、次いで、得られた成形体を前記有機物質又は前記無機物質が溶出する水等の溶媒に所定時間浸漬することにより多孔体を形成することができる。また、発泡剤等を使用する方法及び樹脂の粒子の表面を溶着させて多孔体を形成する方法も採用することができる。
多孔質層の厚さ、気孔径、気孔率については、濃硫酸に浸漬する方法で気孔を形成する場合には、濃硫酸に浸漬する時間及び/又は温度により多孔層の厚さを調整することができ、また、濃硫酸浸漬に続いて浸漬する洗浄用溶液の種類及び/又は温度によって気孔径や気孔率を調整することができる。洗浄用溶液としては、純水等が挙げられる。
表面層3は生体活性物質4を含む。生体活性物質4は、生体との親和性が高く、歯を含む骨組織と化学的に反応する性質を有する物質であれば特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム系材料、バイオガラス、結晶化ガラス(ガラスセラミックスとも称する。)、炭酸カルシウム等が挙げられる。リン酸カルシウム系材料としては、例えば、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム水和物、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ドロマイト、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト及び塩素アパタイト等が挙げられる。バイオガラスとしては、例えば、SiO−CaO−NaO−P系ガラス、SiO−CaO−NaO−P−KO−MgO系ガラス、及び、SiO−CaO−Al−P系ガラス等が挙げられる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−CaO−MgO−P系ガラス(アパタイトウォラストナイト結晶化ガラスとも称する。)、及び、CaO−Al−P系ガラス等が挙げられる。これらのリン酸カルシウム系材料、バイオガラス及び結晶化ガラスは、例えば、「化学便覧 応用化学編 第6版」(日本化学会、平成15年1月30日発行、丸善株式会社)、「バイオセラミックスの開発と臨床」(青木秀希ら編著、1987年4月10日、クインテッセンス出版株式会社)等に詳述されている。
生体活性物質4としては、これらの中でも生体活性に優れる点でリン酸カルシウム系材料が好ましく、さらに、実際の骨と組成や構造、性質が似ているので体内環境における安定性が優れており、体内で顕著な溶解性を示さないことから水酸アパタイトが特に好ましい。
また、生体活性物質4は、低結晶性であることが好ましい。ここでいう低結晶性とは、結晶の発達程度が低い状態を意味し、水酸アパタイトを例にすると、粉末X線回折測定において2θ=25.878°、面間隔(d値)=3.44Åの回折線における半価幅が0.2°以上のものを示す。骨の水酸アパタイトは低結晶性(上記条件下における半価幅:0.4°程度)であることから、同様の結晶性(同条件下における半価幅:0.2〜1.0°)にすることにより生体インプラントと骨とが速やかに結合できる。
生体活性物質4の結晶性は、例えば、カルシウム又はリンを含有する溶液に浸漬する方法により生体活性物質4を生成する場合は、この溶液の組成成分の種類や組成比率及び/又は浸漬温度により調整することができる。
表面層3の表面には、生体活性物質4が前記表面層3の表面積に対して、少なくとも0.5%露出していることが好ましい。生体活性物質4が、表面層3の表面積に対して少なくとも0.5%の面積割合で表面層3の表面に露出していることにより、生体インプラントを生体内に埋設した場合に、この露出した生体活性物質4が種結晶となって生体の骨組織との化学的な反応が始まり、生体インプラントと骨との結合が進む。表面層3の表面における生体活性物質4の露出面積が大きいほど、骨組織と化学的に反応する面積が大きくなるので、その結果、早期に骨と結合し易くなる。
表面層3は多孔質構造であるので、その表面に開口した気孔も存在し、表面層3の表面は平坦ではなく、凹凸が認められる。生体活性物質4が表面層3の表面に露出しているとは、例えば、この表面層3を所定の溶液に浸漬した場合に、生体活性物質4がこの浸漬した溶液と直接接触する部分のことであり、表面層3から生体活性物質4が突出している場合及び表面に形成された凹部に生体活性物質4が嵌入しているような場合も含む。
表面層3の表面積に対する生体活性物質4の割合は、上述した気孔率の測定方法と同様にして求めることができる。つまり、表面層3の表面の走査型電子顕微鏡により撮影した写真を、画像解析ソフトを使用して、生体活性物質4とそれ以外の部分とに2値化する。次に、写真全体の面積に対する生体活性物質4の面積の割合を算出することにより、表面層3の表面積に対する生体活性物質4の割合を求めることができる。
生体活性物質4は、表面層3の体積の3〜70%含有するのが好ましい。生体活性物質4は、表面層3の内部に独立した状態、表面層3の表面に露出した状態、及びこれらの生体活性物質4が結合して樹枝状に表面層3内部に張り巡らされた状態で存在する。したがって、上記範囲内の生体活性物質4を表面層3が有すれば、表面層3の表面に露出している生体活性物質4が、表面層3の内部に存在する生体活性物質4との結合に助けられて、容易に表面層3から脱落しない。また、生体インプラントを生体内に埋設した場合に、表面層3の表面に露出した生体活性物質4から外部へ又は表面層3の内部へと骨形成が進むとともに、表面層3の内部に存在する生体活性物質4とも化学的に結合される。このとき、独立して存在する生体活性物質4からも骨形成が進む場合には、生体活性物質4の周囲に存在する空間及び気孔を充填するように骨形成が進むので、独立して存在していた生体活性物質4同士が、骨形成が進むことによって繋がり、これらの生体活性物質4及び新たな骨が、表面層3の内部にさらに複雑に樹枝状に広がって形成されることになる。したがって、上記範囲内の生体活性物質4を表面層3が有すれば、生体インプラントと骨とが強固に結合される。
表面層3に含まれる生体活性物質4の体積割合は、上述した表面層3の表面積に対する生体活性物質4の割合を測定する方法と同様にして求めることができる。つまり、表面層3の断面における生体活性物質4の面積割合を算出することができれば、この算出値から生体活性物質4の体積割合を推定することができる。
次に、本発明に係る生体インプラントの製造方法の一実施例を説明する。
本発明に係る生体インプラントの製造方法は、実質部2と表面層3とで形成された生体インプラントの、実質部を形成する物質からなる前駆体である基体の表面を多孔質化する工程1と、工程1で得られた、表面が多孔質化した基体を、少なくとも2Mのカルシウムイオンを含む溶液及び少なくとも2Mのリン酸イオンを含む溶液の両方に、いずれか先に浸漬する工程2と、を含むことを特徴とする。
工程1として、具体的には、実質部2を形成する物質からなる基体、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の表面部に、前述した、いずれかの方法、例えば濃硫酸を使用する方法により多孔質構造を形成する。基体を所定のイオン濃度を有する溶液に浸漬することにより、基体の内部に生体活性物質4を形成させようとする場合に、基体が多孔質構造であると、多数の微細な空間が存在するので、この空間に生体活性物質4を容易に生成することができるからである。
工程2としては、具体的には、次のような処理をする。まず、工程1で得られた、表面に多孔質構造を有する基体を、少なくとも2Mのカルシウムイオンを含む溶液に所定時間浸漬する。このカルシウムイオンを含む溶液は、少なくともカルシウムイオンを含んでいれば良く、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、水素イオンなどを含んでいても良いが、リン酸イオンは実質的に含まないほうが好ましい。カルシウムイオンを含む溶液としては、通常、水溶性が高く、人体に悪影響を与えない化合物の水溶液を挙げることができ、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの混合溶液等が挙げられ、塩化カルシウムの水溶液が好ましい。
カルシウムイオンを含む溶液に所定時間浸漬した後に、表面に多孔質構造を有する基体を、少なくとも2Mのリン酸イオンを含む溶液に浸漬する。このリン酸イオンを含む溶液は、少なくともリン酸イオンを含んでいればよく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、水素イオンなどを含んでいても良いが、カルシウムイオンは実質的に含まないほうが好ましい。リン酸イオンを含む溶液としては、通常、水溶性が高く、人体に悪影響を与えない化合物の水溶液を挙げることができ、例えば、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、およびこれらの混合溶液等が挙げられ、リン酸水素二カリウムの水溶液が好ましい。
表面に多孔質構造を有する基体を、上記2種類の水溶液に浸漬する順序は、特に限定されないが、例えば生体活性物質として水酸アパタイトを多孔質構造内に生成させる場合は、水酸アパタイトの溶解度がより低いアルカリ域で生成反応が進むことが生成量の面から好ましく、そのため、後半に浸漬する溶液のpHがpH8〜10のアルカリ域であることが好ましい。
少なくとも2Mのカルシウムイオンを含む溶液及び/又は少なくとも2Mのリン酸イオンを含む溶液に、表面に多孔質構造を有する基体を浸漬する時間は、1分〜5時間が好ましく、3分〜3時間が特に好ましい。1分〜5時間の範囲内であれば、十分にカルシウムイオン又はリン酸イオンが基体の内部まで染み込み、また、生体活性物質4が十分生成されることにより表面多孔層に生体活性物質4が強固に固定化されるからである。
このように、生体活性物質4が、基体表面の多孔質構造を有する全ての部分又は多孔質構造を有する部分の中でもさらに表面部分に生成され、表面層3を形成する。
最終工程として、適宜、工程2で得られた基体を、超音波照射をしつつ純水に浸漬して洗浄した後に、乾燥させると、基体を形成する物質(例えばPEEK)からなる実質部2と表面層3とを備え、前記表面層3が基体を形成する物質と生体活性物質4とで形成された多孔質構造であり、かつ、前記表面層3の表面に、生体活性物質4が一部露出してなる生体インプラントを得ることができる。
表面層3の形成は、上記の方法に限られず、例えば工程1で得られた基体を、あらかじめ多量の生体活性物質4を含む溶液に浸漬し、これを乾燥させて基体表面の多孔層内部に生体活性物質4を固定化した後、超音波照射をしつつ純水に浸漬して洗浄した後に、再度乾燥させることにより行うこともできる。
本発明に係る生体インプラントは、生体内の使用部位に合わせて様々な形状、例えば、粒子状、繊維状、ブロック状、フィルム状等で用いられる。好ましくは、本発明の生体インプラントが補填される骨欠損部又は歯欠損部等の形状と同様の形状、又は骨欠損部又は歯欠損部等の形状に相当する形状、例えば、相似形等に、成形、整形及び/又は調製されて用いられる。
本発明に係る生体インプラントは、基体を所望の形状に成形、整形及び/又は調製した後に、表面層3を基体の表面部に形成することもできるし、基体に表面層3を形成させた後に、生体インプラントを所望の形状に成形、整形及び/又は調製することもできる。
表面層3は、基体の全表面部に形成させても良いし、また骨又は歯との結合が必要な面のみに形成させても良い。
本発明に係る生体インプラントは、骨補填材、人工関節、骨接合材、人工椎体、椎体間スペーサ、椎体ケージ及び人工歯根などに適用することができる。
次に、この発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、この発明は、以下の実施例及び比較例に限定されない。
<生体インプラントの試験体の作製>
(実施例1)
生体インプラントを形成する物質としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用した場合の実施例である。
下記の手順により生体インプラントの試験体を作製した。
PEEKで構成される円盤状の基体(直径10mm、厚さ2mm、Victrex製450G)の表面をサンドペーパー(#1000)で研磨し、濃硫酸に5分間浸漬した。濃硫酸から取り出した基体を純水に10分間浸漬し、その後この純水のpHが中性になるまで繰り返し洗浄し、表面に多孔質構造を有する基体を得た。
次いで、この多孔質構造を有する基体を、カルシウムイオン濃度2Mの塩化カルシウム水溶液に60分間浸漬した。
続けて、この多孔質構造を有する基体を、リン酸イオン濃度2Mのリン酸水素2カリウム水溶液に60分間浸漬した。
次いで、この多孔質構造を有する基体を純水中に3時間浸漬し、続いて、この多孔質構造を有する基体を純水中に超音波照射しながら10分間浸漬して洗浄した後に、120℃で3時間乾燥して、生体インプラントの試験体を得た。
上記のように作製した生体インプラントの試験体について、各処理段階での基体の表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率3000倍)。
濃硫酸に浸漬処理した後の基体の表面を図2に示す。基体は表面に多数の気孔を有し、内部は網目構造となっており、表面に認められる気孔径はほとんどが2μm以下で極微細であった。
リン酸水素2カリウム水溶液に浸漬した後の基体の表面を図3に示す。基体の表面に形成された網目構造に、塩化カルシウム水溶液及びリン酸水素2カリウム水溶液に浸漬したことにより析出した粒子が付着していた。この粒子をX線回折装置により分析した結果を図4に示す。X線回折パターンには、水酸アパタイトに帰属するピークが確認された。また、これらのピークはブロードであり、低結晶質の水酸アパタイトが生成していることが確認された。
純水中に超音波照射しながら浸漬した後の基体の表面を図5に示す。基体の表面に析出していた水酸アパタイトの粒子は、超音波照射をすることにより一部脱離したものの、基体表面に開口している気孔の内部に粒子が残存していた。この基体の表面に残存していた水酸アパタイトの割合を、走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析ソフト(Scion Image)を使用して、水酸アパタイトの粒子とそれ以外の部分とに2値化することにより、写真全体の面積に対する水酸アパタイトの粒子の面積割合を算出したところ、24.1%であった。
純水中に超音波照射しながら浸漬した後の基体の断面を図6に示す。また、図6と同一の視野におけるEDS分析像においてカルシウム元素をマッピングした結果を図7に、リン元素をマッピングした結果を図8に示す。基体表面には基体を形成するPEEKと水酸アパタイトとで形成された多孔質構造を有する表面層が形成されており、この表面層の厚さは約3μmであった。
(比較例1)
塩化カルシウム水溶液とリン酸水素2カリウム水溶液の濃度をそれぞれ1M(カルシウムイオン濃度:1M、リン酸イオン濃度:1M)とした以外は、実施例1と同様にして生体インプラントの試験体を作製した。
作製した生体インプラントの試験体について、各処理段階での基体の表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率3000倍)。
リン酸水素2カリウム水溶液に浸漬した後の基体の表面を図9に示す。基体の表面に形成された網目構造に塩化カルシウム水溶液及びリン酸水素2カリウム水溶液に浸漬したことにより析出した粒子が付着していた。
しかし、その後、この基体を純水中に超音波照射しながら浸漬したところ、図10に示されるように、基体の表面に付着していた粒子のほとんどは脱落してしまった。
(比較例2)
塩化カルシウム水溶液とリン酸水素2カリウム水溶液の濃度をそれぞれ0.5M(カルシウムイオン濃度:0.5M、リン酸イオン濃度:0.5M)とした以外は、実施例1と同様にして生体インプラントの試験体を作製した。
作製した生体インプラントの試験体について、各処理段階での基体の表面を走査型電子顕微鏡で観察した。
リン酸水素2カリウム水溶液に浸漬した後の基体の表面には何も析出物が認められなかった。
<擬似体液浸漬試験>
作製した生体インプラントの試験体が生体内において骨と結合する機能を有するか否かを評価するために、この試験体を擬似体液に浸漬し、試験体の表面に生体活性を有する水酸アパタイトが形成されるか否かにより評価した。
生体インプラントの試験体は、37℃環境下で5日間擬似体液に浸漬した。次いで、擬似体液に浸漬した後の試験体を純水で洗浄した後、120℃で3時間乾燥した。
なお、この擬似体液浸漬試験は、人の血漿とほぼ等しい無機イオン濃度を有し、アパタイトに対して過飽和な溶液である擬似体液に試験体を浸漬し、試験体表面におけるアパタイト形成能を評価する試験であり、詳細は、大槻ら「Mechanizm of apatite formation on CaO−SiO−P glasses in a simulated body fluid」、ジャーナル オブ ノン−クリスタリン ソリッド(Jornal of Non−Crystaline Solides)、第143巻、84〜92頁、1992年の論文に記載されている。
(実施例1)
実施例1で得られた試験体を、擬似体液に浸漬した後の試験体の表面を、走査型電子顕微鏡で観察(拡大率3000倍)した結果を図11に示す。試験体の表面全体に一様に燐片状の結晶が形成されていた。これらの結晶は、結晶形態から判断すると、水酸アパタイトであると推察される。
(比較例1、2)
比較例1、2で得られた試験体を、擬似体液に浸漬した後の試験体の表面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの試験体の表面にも変化は認められず、水酸アパタイトは生成されなかった。
図1は、本発明の生体活性インプラントの模式図である。 図2は、実施例1において、濃硫酸処理した後の基体表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図3は、実施例1において、リン酸水素二カリウム水溶液に浸漬した後の基体表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図4は、実施例1において、リン酸水素二カリウム水溶液に浸漬した後の基体表面のX線回折パターンである。 図5は、実施例1において、超音波処理した後にその表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図6は、実施例1において、超音波処理した後にその断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図7は、図6の視野におけるEDS分析像のカルシウム元素マッピング図である。 図8は、図6の視野におけるEDS分析像のリン元素マッピング図である。 図9は、比較例1において、リン酸水素2カリウム水溶液に浸漬した後の基体表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図10は、比較例1において、超音波処理した後にその表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図11は、実施例1において、生体インプラントの試験体を擬似体液に浸漬した後にその表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 生体インプラント
2 実質部
3 表面層
4 生体活性物質

Claims (8)

  1. 実質部とその表面に形成された表面層とを備えた生体インプラントであって、
    前記表面層は、実質部を形成する物質と生体活性物質とで形成された多孔質構造であり、かつ、前記表面層の表面に、生体活性物質が前記表面層の表面積に対して少なくとも0.5%露出してなることを特徴とする生体インプラント。
  2. 前記生体活性物質がリン酸カルシウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載の生体インプラント。
  3. 前記生体活性物質が水酸アパタイトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体インプラント。
  4. 前記生体活性物質が低結晶質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  5. 前記実質部は、それを形成する物質がエンジニアリングプラスチックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  6. 前記実質部は、それを形成する物質がポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  7. 前記表面層は、その厚さが1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  8. 実質部と表面層とを備えた生体インプラントの製造方法であって、
    生体インプラントの、実質部を形成する物質からなる前駆体の表面を多孔質化する工程1と、
    工程1で得られた、表面が多孔質化した生体インプラントの前駆体を、少なくとも2Mのカルシウムイオンを含む溶液及び少なくとも2Mのリン酸イオンを含む溶液の両方に、いずれか先に浸漬する工程2と、
    を含むことを特徴とする生体インプラントの製造方法。
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