JP6700135B2 - 椎体スペーサ - Google Patents

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この発明は椎体スペーサに関し、さらに詳しくは、椎体間に配置したときに椎体間における初期固定性が良好であり、かつ固定された状態が長期間にわたって安定に維持される椎体スペーサに関する。
特許文献1には、「プラスチックから成り、緻密な実質部と、その実質部の表面上に形成された多孔質の表面層とを備える生体インプラントであって、
前記実質部は最表面に凹凸構造を有し、
前記表面層は3次元的に気孔が連結して成り、
前記凹凸構造の凹部に形成される前記表面層の厚みが、前記凹凸構造の凸部に形成される表面層の厚みの少なくとも2倍であることを特徴とする生体インプラント」が開示され(特許文献1の請求項1)、その生体インプラントが「人工椎体、椎体間スペーサ、椎体ケージ、・・・・に適用することができる。」との記載がある(特許文献1の段落番号0124欄)。
特許文献2には、「実質部とその表面に形成されて成る小径気孔及び大径気孔を有する表面層とを備えて成る表面発泡体であって、前記表面層は、前記実質部を形成するエンジニアリングプラスチックからなる基材の表面部を多孔質構造にすることにより得られ、前記小径気孔及び大径気孔の一部は前記表面層の表面に開口する開気孔を形成しており、前記開気孔は平均開気孔径が5μm以下の小径開気孔と平均開気孔径が10〜200μmの大径開気孔とを有し、前記表面層の表面に開口する大径開気孔は、その内壁面に小径気孔及び大径気孔と連通する連通孔が形成されていることを特徴とする生体インプラント」が開示され(引用文献2の請求項1)、その生体インプラントが「人工椎体、椎体間スペーサ、椎体ケージ、・・・・に適用することができる。」との記載がある(特許文献2の段落番号0083欄)。
特許文献3には、「熱可塑性樹脂からなる基材の表面に生体活性物質が固定化された生体インプラントを製造する生体インプラントの製造方法であって、
前記生体活性物質が表面に配置された基材を前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度−30℃以上、融点未満の加熱温度に加熱する工程を有することを特徴とする生体インプラントの製造方法」が開示され(特許文献3の請求項1)、その製造方法により製造された生体インプラントが「人工椎体、椎体間スペーサ、椎体ケージ、・・・・として好適に利用することができる。」との記載がある(特許文献3の段落番号0117欄)。
従来から知られているように、椎体間スペーサは、脊椎における椎体(以下において「第1椎体」と称することがある。)とその椎体に隣接する椎体(以下において「第2椎体」と称することがある。)との間に介装される医療用部材である。従来から開示されている椎体間スペーサは、略直方体をなし、第1椎体と第2椎体との間に挿入された場合に第1椎体に向かう面(以下において「第1面」と称することがある。)が凹凸面に形成され、第2椎体に向かうとともに前記第1面とは反対側の面(以下において「第2面」と称することがある。)が凹凸面に形成され、第1面から第2面までの長さ(高さ)が約5〜13mmであり、第1面及び第2面の横幅が約7〜12mmであり、第1面及び第1面の先端部から後端部までの長さが約20〜25mmの寸法を有するように形成されてなる。
この椎体間スペーサ―は、腰椎固定術(場合によっては脊椎固定術と称されることがある。)という外科手術によって、第1椎体と第2椎体との間に挿入配置される。
特許第5404165号公報 特許第5372782号公報 特許第5728321号公報
非特許文献1に開示される形状に形成された椎体間スペーサの表面に、特許文献1〜3に開示された表面層を、形成することが想定される。この想定される表面層含有椎体間スペーサは、非特許文献1に開示される形状に形成された椎体間スペーサをスペーサ基台とし、この基台と特許文献1〜3に開示された表面層とを備えるものと、考え得る。
しかしながら、この想定される表面層含有椎体間スペーサは、第1椎体と第2椎体との間隙に挿入すると、表面層含有椎体間スペーサの第1面及び第2面に形成された凹凸部における凸部の頂部における表面層が第1椎体又は第2椎体により破損し、これによって表面層が備える多孔質構造を維持することが困難になることが必然である。前記凹凸部における頂部の表面層が備える多孔質構造が維持されていないと、第1椎体又は第2椎体からスペーサ基台の凸部への骨芽細胞の進入が満足に行われず、したがって第1椎体又は第2椎体と表面層含有椎体間スペーサとの結合が不十分になる可能性があり、表面層含有椎体間スペーサを第1椎体と第2椎体との間に挿入して椎骨と表面層含有椎体間スペーサとを固定する脊椎固定術が失敗するというリスクがある。
また、椎体間に表面層含有椎体間スペーサを挿入する際に前記凸部を被覆する表面層が欠落すると、椎体と椎体との間の良好な位置に表面層含有椎体間スペーサを配置することができたとしても、第1椎体又は第2椎体と表面層含有椎体間スペーサとの結合が不十分になり、術後における患者の身体の動きにより、表面層含有椎体間スペーサが椎体間から脱離し、あるいは椎体間での位置ずれを生じさせるとの不具合が想定される。
この発明は、椎体間に配置された場合に初期固定性が良好であり、しかも長期間にわたって安定な固定状態を維持することのできる椎体スペーサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は、
(1) 第1椎体とこの第1椎体に隣接する第2椎体との間に介装される椎体スペーサであり、前記第1椎体に面する第1面と、前記第2椎体に面し、かつ前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有する椎体スペーサであって、
前記第1面には突出部が存在し、その突出部は、高分子材料を含有する基部と、その基部の頂部に存在し、前記高分子材料と生体活性物質とを含有する緻密部と、前記基部の頂部以外の表面を被覆するとともに、前記高分子材料と生体活性物質とを含有する多孔部とを備えることを特徴とする椎体スペーサである。
前記課題を解決するための手段における好適な態様は、
(2) 第1面と前記第2面とを貫通する貫通空隙を有することを特徴とする前記(1)に記載の椎体スペーサであり、
(3) 前記第1面と前記第2面とのそれぞれが側壁に連係し、前記側壁は、前記貫通空隙に連通する連通空隙を備えることを特徴とする前記(2)に記載の椎体スペーサであり、
(4) 前記緻密部は、その空隙率が前記多孔部の空隙率よりも小さいことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(5) 前記多孔部は、その空隙率が30%以上である前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(6) 前記多孔部が小径気孔及び大径気孔を有しており、
前記小径気孔及び前記大径気孔の一部は前記多孔部の表面に開口する開気孔を形成していることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(7) 前記突出部の第1面からの高さが300μm以上2000μm以下である前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(8) 前記突出部は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維及び有機繊維から成る群より選択される少なくとも1つの繊維を含有する前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(9) 前記高分子材料が、ポリエーテルエーテルケトンである前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(10) 前記多孔部における開気孔の内壁面及び前記多孔部の表面の少なくとも一方に生体活性物質を有している前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(11) 前記生体活性物質がリン酸カルシウムであることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の椎体スペーサであり、
(12) 前記リン酸カルシウムが水酸アパタイトであることを特徴とする前記(11)に記載の椎体スペーサである。
この発明によると、第1面から突出するように形成された基部の頂部に緻密部が存在するので、第1椎体と第2椎体との間に挿入する際に、緻密部が椎体により切削され、あるいは緻密部の一部が剥落することがない。第1椎体と第2椎体との間に介装された直後においては、凸部の頂部に形成された緻密部が第1椎体にめり込むこと、及び、緻密部が生体活性物質を含むことにより椎体との化学的な結合が促進されること、によって、椎体スペーサを椎骨間に挿入・配置した後における椎体スペーサの位置ずれがなく、したがって、この発明によると、初期位置ずれのない椎体スペーサを提供することができる。
さらにまた、第1椎体と第2椎体との間に介装された後においては多孔部に存在する孔隙を骨芽細胞が円滑に進入することができるようになり、骨芽細胞の進入によって形成された骨により椎体との結合が強固になり、強固な結合によって長期間にわたって椎体間における位置ずれが生じ難くなり、また椎体間からの脱離が起こり難い椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、上記技術的効果に加えて、形成されている貫通空隙に進入した骨芽細胞が成熟した骨によって椎体間で固定的に介装され、脊柱の動きによって位置ずれを起こし難く、また、椎体間から離脱し難い椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、上記技術的効果に加えて、形成されている連通空隙に進入した骨芽細胞が成熟した骨によって椎体間で固定的に介装され、脊柱の動きによって位置ずれを起こし難く、また、椎体間から離脱し難い椎体スペーサを提供することができる。特に、貫通空隙と連通空隙とを備えていると、この貫通空隙及び連通空隙に進入した骨芽細胞の成熟により形成された骨によって脊柱の縦方向及び横方向において椎体間で固定的に介装され、脊柱の動きによって位置ずれを起こし難く、また、椎体間から離脱し難い椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、上記技術的効果に加えて、緻密部が多孔部とは空隙率によって区別することができる椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、上記技術的効果に加えて、多孔部が小径気孔及び大径気孔を有しており、しかも多孔部の表面に開気孔を形成しているので、この多孔部に進入した骨芽細胞が成長して固くなった骨によって確固として椎体間で固定される椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、第1面からの高さが所定の範囲内にある突出部を有しているので、突出部が第1椎体又は第2椎体に適度にめり込み、椎体スペーサを椎体間に挿入・配置した後に、特に配置後の初期における椎体スペーサの位置ずれのリスクを低減することができるといった優れた機能を有する椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、突出部が炭素繊維等を初めとする高張力繊維が配合された、少なくとも一種の繊維を含有するので、繊維により突出部の強度が大きくなり、したがって椎体間に挿入されるときに椎体により前記突出部が擦過されてその突出部の形状が失われ、または変形することがないという優れた技術的効果を奏することのできる椎体スペーサを提供することができる。
この発明によると、基部と緻密部とを構成する一要素である高分子材料がエンジニアリングプラスチック、特にポリエーテルエーテルケトンであると、高強度及び高耐久性の椎体スペーサを提供することができるとの技術的効果が奏される。
この発明によると、多孔部における開気孔の内壁面及び多孔部の表面の少なくとも一方に生体活性物質、特にリン酸カルシウム、中でも水酸アパタイトが含まれているから、骨芽細胞が気孔内に進入しても生体拒絶反応を起こし難くなり、したがって、例えば脊椎固定術終了後に長期間が経過しても生体に炎症を生じさせることのない椎体スペーサを提供することができるとの技術的効果が奏される。
図1は、この発明の一例を示す椎体スペーサを示す斜視図である。 図2は、この発明の一例である椎体スペーサを示す正面図である。 図3は、この発明の一例である椎体スペーサを示す平面図である。 図4は、この発明の一例である椎体スペーサにおける突出部の各種変形例を示す説明図である。 図5は、この発明の一例である椎体スペーサにおける突出部の断面を示す断面説明図である。 図6は、この発明の一例である椎体スペーサにおける多孔部の断面を示す断面説明図である。
図1に示されるように、この発明の一例である椎体スペーサ1は、椎体(これを第1椎体と称することがある。)と、この椎体に隣接する椎体(これを第2椎体と称することがある。)との間に、挿入され得る形状及び大きさを有する。
図1に示される椎体スペーサ1は、第1椎体と第2椎体との間に挿入された場合に、第1椎体に面する第1面2と、第2椎体に面するとともに前記第1面2とは反対側に位置する第2面3とを有する。第1面2及び第2面3それぞれには、その椎体に向かう方向に向かって突出する突出部4が、ある。
前記第1面2と第2面3とは、突出部4を除去したとすると現れる平面が互いに平行であってもよいし、平行でなくてもよい。平行でない場合に、また椎間に挿入する先端部側の高さH1が後端部側の高さH2よりも小さくなるように第2面3に対して第1面2が僅かに傾斜していてもよいし、後端部側の高さH2が先端部側の高さH1よりも小さくなるように第2面3に対して第1面2が僅かに傾斜していてもよい。椎体スペーサ1の先端部、つまり椎間に挿入する場合に挿入される先端部の高さH1が後端部の高さH2よりも小さいと椎間にこの椎体スペーサ1を円滑に挿入することができる。また、後端部側の高さH2が先端部側の高さH1よりも小さいと、椎間へ椎体スペーサ1を挿入した後に、挿入方向の逆側へと椎体スペーサ1が椎間から抜け出るリスクを低減することができる。
この椎体スペーサ1は、図1に示されるように、その先端部5a及び後端部5bが三角柱状に形成されていてもよく、また、図2に示されるように、その先端部6a及び後端部6bが球体を半割した半球状、あるいは楕円体を半割した半割楕円体状であってもよい。椎体スペーサ1の先端部及び後端部の形状は、椎体スペーサ1を挿入しようとする患者における脊椎の状況ないし状態に応じて適宜に決定することができる。
椎体スペーサ1は、その第1面2及び第2面3の横幅が、つまり椎体間に椎体スペーサ1を挿入する方向に直交する方向における長さが、同じであってもよく、また第1面2及び第2面3の横幅のいずれかが大きくてもよい。また椎体スペーサ1は、その先端部の横幅W1と後端部の横幅W2とが同じ寸法であってもよく、また横幅W1及び横幅W2のいずれかが僅かに大きくてもよい。
突出部4は、第1面2、及び第2面3のいずれか一方に形成されていてもよく、また両方に形成されていてもよい。好適な椎体スペーサ1にあっては、第1面2及び第2面3の両方に突出部4が存在する。両面に突出部4が形成されていると、第1面2と椎体との結合及び第2面3と椎体との結合が実現されることにより、椎体と椎体スペーサ1との結合ないし骨癒合が確実なものとなる。
図1に示されるように、突出部4は、幅方向から見ると横に倒した三角柱体が複数配列された構造を有する集合体を採用することができる。また、突出部4は、これら複数の三角柱体を横倒しにしてこれらを並行に配列してなる構造を有する集合体に限らず、横に倒した四角柱体の複数を一定間隔を設けて並行に配列した配列構造を有する集合体を採用することもできる。さらにまた、突出部4は、図4(a)に示されるように、個々の突出部4aが円錐形をなし、この円錐形の個々の突出部が、ランダムに、又は行列状に配列された配列構造を有する集合体を採用することもでき、また、図4(b)に示されるように、個々の突出部4bが円錐台形をなし、この円錐台形の個々の突出部が、ランダムに、又は行列状に配列された配列構造を有する集合体を採用することもでき、図4(c)に示されるように、個々の突出部4cが円柱形をなし、この円柱形をした個々の突出部が、ランダムに、又は行列状に配列された配列構造を有する集合体を採用することもでき、さらには、図4(a)〜図4(c)に示される円錐形の突出部4a、円錐台形の突出部4b及び円柱系の突出部4cが、ランダムに、又は行列状に配列された集合体であってもよい。なお、この発明においては突出部を、集合体における個々の突出部を意味するが、「突出部」の集合体を「突出部」と称することもある。集合体としての突出部と個々の突出部とはその用語の使用される文脈によって容易に区別することができる。
この椎体スペーサ1は、図3に示されるように、第1椎体に向かう第1面2から第2椎体に向かう第2面3に貫通する貫通空隙7を有することも、好ましい。この貫通空隙7が設けられた椎体スペーサ1を第1椎体と第2椎体との間に介装すると、この貫通空隙7の中に血液が流入するとともに骨芽細胞の進入が促進され、この貫通空隙7内に骨形成が速やかに実現され、その結果として第1椎体及び第2椎体と椎体スペーサ1との骨癒合が早期に実現される。
この椎体スペーサ1は、図2に示されるように、第1椎体に向かう第1面2に連続するとともに第2椎体に向かう第2面3に連続する椎体スペーサ1の正面8に、一つ又は複数の連通空隙9が形成されていてもよい。連通空隙9が形成された椎体スペーサ1を第1椎体と第2椎体との間に介装すると、この連通空隙9の中に血液が流入するとともに骨芽細胞の進入が促進され、この連通空隙9内に骨形成が実現され、その結果として第1椎体及び第2椎体と椎体スペーサ1との骨癒合が実現される。
なお、図2において、正面8は、この椎体スペーサ1における第1面2及び第3面3とに連係する側壁でもある。また、図3における第1面2は、椎体スペーサ1における平面と称することもできる。
この発明に係る椎体スペーサ1は、通常、図2に示されるように、椎体スペーサ1の椎体間に挿入する方向における全長Lが20〜25mmであり、図2に示されるように、第1面2と第2面3との間隔、つまり高さHが、通常、7〜14mmであり、図3に示されるように、第1面2と第2面3とに連係乃至連続する一方の側壁と他方の側壁との間隔、つまり幅Wが、通常、8〜11mmである。また、突出部4の第1面2又は第2面3からの高さは、通常300μm以上かつ2000μm以下である。
図5に示されるように、突出部4は、基部10と緻密部11と多孔部12とを備える。
基部10は、椎体スペーサ1の本体である。基部10は高分子材料で形成することができ、好適には椎骨と同等又は椎骨に近い力学的特性を有する高分子材料が好ましい。前記力学的特性として、弾性率が1〜50GPa、曲げ強度は100MPa以上、を挙げることができる。
力学的特性が骨に近いプラスチックとしては、エンジニアリングプラスチック又は繊維強化プラスチック等が挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニリンオキサイド、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリオキシメチレン、ポリ四フッ化エチレン等が挙げられる。
繊維強化プラスチックのマトリックスとなるプラスチックとしては、前記エンジニアリングプラスチックに加えて、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、EVA樹脂、EEA樹脂、4−メチルペンテン−1樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ACS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エチレン塩化ビニル共重合体、プロピレン塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、メタクリル樹脂、リノル樹脂、ポリアリルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンスルフィド、ポリスチレン、ポリアミノビスマレイミド、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、イソフタル酸系樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン、アルキルベンゼン樹脂、グアナミン樹脂、ポリジフェニルエーテル樹脂等が挙げられる。
この発明に係る椎体スペーサの基部を形成する材料として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が特に好ましい。PEEKは、生体適合性を有し、力学的特性が骨に近い。したがって、椎体スペーサの基部を形成する材料としてPEEKを採用すると、大きな荷重が連続的に長期間かかるような椎体間に椎体スペーサを埋設した場合に、ストレスシールディング、すなわち骨に加わる応力の遮蔽によって生じ得る骨減少及び骨密度の低下等が起こらない、高強度の椎体スペーサを得ることができる。
前記繊維強化プラスチックにおける繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維又は有機繊維が挙げられる。炭素繊維については、ここではカーボンナノチューブも含まれる。ガラス繊維としては、ホウケイ酸ガラス(Eガラス)、高強度ガラス(Sガラス)、高弾性ガラス(YM−31Aガラス)等の繊維、セラミック繊維としては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ素等の繊維、金属繊維としては、タングステン、モリブデン、ステンレス、スチール、タンタル等の繊維、有機繊維としては、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アラミド等の繊維、又はこれらの混合物を用いることができる。
また、この発明に係る椎体スペーサの基部を形成する材料中に、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料などの着色料等の各種添加剤が含有されていても良い。
この発明に係る椎体スペーサの基部は、一般的なプラスチック成形加工方法、たとえば射出成形加工方法、押出成形加工方法等により成形することができる。
前記多孔部は、緻密部が形成されている部位以外の突出部の表面を被覆する層である。この多孔部は、前記基部を構成するのと同様の高分子材料、特にエンジニアリングプラスチック、さらにはポリエーテルエーテルケトン等と生体活性物質とを含有することができる。
生体活性物質は、前記多孔部の表面に固定されているのが好ましい。この生体活性物質は、生体との親和性が高く、生体骨を含む骨組織と化学的に反応する性質を有する物質であれば特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム化合物、生体活性ガラス、炭酸カルシウム等が挙げられる。リン酸カルシウム化合物としては、例えば、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム水和物、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ドロマイト、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト及び塩素アパタイト等が挙げられる。生体活性ガラスは、バイオガラス、結晶化ガラス(ガラスセラミックスとも称する。)等を含み、バイオガラスとしては、例えば、SiO−CaO−NaO−P系ガラス、SiO−CaO−NaO−P−KO−MgO系ガラス、及び、SiO−CaO−Al−P系ガラス等が挙げられ、結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−CaO−MgO−P系ガラス(アパタイトウォラストナイト結晶化ガラスとも称する。)、及び、CaO−Al−P系ガラス等が挙げられる。これらのリン酸カルシウム化合物、バイオガラス及び結晶化ガラスは、例えば、「化学便覧 応用化学編 第6版」(日本化学会、平成15年1月30日発行、丸善株式会社)、「バイオセラミックスの開発と臨床」(青木秀希ら編著、1987年4月10日、クインテッセンス出版株式会社)等に詳述されている。
生体活性物質は、これらの中でも生体活性に優れる点で、リン酸カルシウム化合物及び生体活性ガラスの少なくとも1種であるのが好ましく、さらに、生体骨と組成や構造、性質が似ており体内環境における安定性が優れて体内で顕著な溶解性を示さない点で、水酸アパタイト又はリン酸三カルシウムが特に好ましい。
この生体活性物質は、高結晶性又は低結晶性であっても非結晶性であってもよく、また複数の結晶性を有していてもよい。多孔層の表面に固定化される生体活性物質の結晶性によって生体活性物質の溶解性すなわち生体結合性を調整できる。例えば、生体活性物質の結晶性を高結晶性とすると、生体活性物質の溶解速度が小さく多孔層に長期間固定化され、生体骨が形成されにくい部分であっても生体骨を形成できる。一方、生体活性物質の結晶性を非結晶質とすると、生体活性物質の溶解速度が大きくて椎体スペーサと椎骨とが速やかに結合する。したがって、この発明においては椎骨と椎体スペーサとを骨癒合させる骨芽細胞による骨形成速度等に応じて生体活性物質の結晶性を適宜に選択できる。
ここで、低結晶性とは結晶の発達程度が低い状態を意味し、水酸アパタイトを例にすると粉末X線回折測定において2θ=25.878°、面間隔(d値)=3.44Åの回折線における半価幅が0.2°以上のものをいい、高結晶性とは結晶の発達程度が高い状態を意味し、水酸アパタイトを例にすると前記半価幅が0.2°未満のものをいう。生体骨の水酸アパタイトは低結晶性(上記条件下における半価幅:0.4°程度)であることから、同様の結晶性(同条件下における半価幅:0.2〜1.0°)又は非結晶性にすることによって生体インプラントと生体骨とが速やかに結合する。また、非結晶性とは粉末X線回折測定において2θ=30°付近にブロードなピークが観察され、500℃以上の温度で焼成することで水酸アパタイトになるという特性を有するものをいう。
生体活性物質の結晶性は、後述する「生体活性物質を固定する方法」によって適宜に調整することができ、例えば、生体活性物質の懸濁液に椎体スペーサ本体を浸漬させる方法を採用する場合には懸濁させる生体活性物質の結晶性に依存し、一方、椎体スペーサ本体をカルシウムイオンを含有する溶液及びリン酸イオンを含有する溶液に交互に浸漬する方法を採用する場合にはこれらの溶液の組成成分の種類、組成比率及び/又は浸漬温度により調整することができる。
高結晶性又は低結晶性の生体活性物質の形状は、基部の表面に形成された多孔質の高分子材料層の表面に分散又は散在して多孔部を形成することのできる粒状、顆粒状、粉末状であればよく、また凝集物であってもよく、例えば、球状、楕円球状、針状、柱状、棒状、板状、多角形状等が挙げられる。そして、多孔部を構成する一要素となって固定化された生体活性物質の粒子径は、後述する観測領域(100μm)よりも小さければ特に限定されないが、多孔部を構成する要素である高分子材料層の表面に、より強固に固定化される点で、例えば、0.001〜10μmであるのが好ましく、0.01〜5μmであるのが特に好ましい。なお、本明細書中に記載している「粒子」及び「粒子径」とは、特に説明がない場合はそれぞれ「一次粒子」及び「一次粒子径」を言い、多孔部において固定されている生体活性物質が凝集物である場合は、その凝集物を構成している最小単位である一次粒子及びその径のことである。粒子径は、インターセプト法により算出することができる。具体的には、走査型電子顕微鏡にて写真撮影を行い、少なくとも15以上の粒子に交わる直線を引き、この直線と粒子とが交わっている部分の長さの平均値から算出することができる。球状粒子以外の形状である場合にはその面積換算直径を算出する。
この発明に係る椎体スペーサにおける多孔部では、生体活性物質の粒子が、基部の表面を被覆する多孔質の高分子材料膜の表面に分散又は散在した状態になって固定化されている。生体活性物質の粒子が固定化される表面は多孔質の高分子材料膜の外表面である。そして、生体活性物質の粒子は多孔質の高分子材料膜の表面に分散又は散在した状態に固定化されている。したがって、生体活性物質の粒子は、多孔質の高分子材料膜の輪郭を形作る表面上にそれぞれ散り散りに散乱乃至分散した状態になって付着されているから、散在した粒子の大部分が多孔質の高分子材料膜に完全に埋没されることなく露出している。このように大部分又は一部が露出した生体活性物質の粒子が分散又は散在した状態に固定化されていると、椎体スペーサと椎体とが迅速かつ均一に骨癒合・結合される。なお、生体活性物質の粒子は分散又は散在した状態にあるが、複数粒子の凝集物の分散又は散在を完全に除外するものではなく、生体活性物質の粒子の殆どが分散又は散在していればよく、その一部が凝集していてもよい。
この発明の椎体スペーサにおいて、生体活性物質の粒子は分散又は散在した状態に固定化されており被膜を形成していないから、椎体スペーサ本体の外表面、特に基部の表面をこの粒子が被覆する被覆率等は100%未満であればよい。
図6に示されるように、本発明に係る椎体スペーサ1における多孔部12は、基部10の表面に形成されて成る小径気孔14及び大径気孔15を多数有する表面層16からなる表面発泡体層である。前記表面発泡体層は高分子材料特にエンジニアリングプラスチックと生体活性物質とを含有して成り、前記小径気孔14及び大径気孔15の一部は前記表面層16の表面に開口する開気孔17を形成している。前記開気孔17は平均開気孔径Aが5μm以下の小径開気孔18と平均開気孔径Bが10〜200μmの大径開気孔19とを有し、前記表面層16の表面に開口する大径開気孔19は、その内壁面に小径気孔14及び大径気孔15と連通する連通孔20が形成されている。
表面層16は、大きさの異なる小径気孔14及び大径気孔15を複数有しており、これらの気孔は、独立して形成されている独立気孔21及び2つ以上の独立気孔が連通して形成されている連通気孔22を形成している。
一部の小径気孔14及び大径気孔15は表面層16の表面に開口する開気孔17を形成しており、この開気孔17は平均開気孔径Aが5μm以下、好ましくは3μm以下の小径開気孔18と平均開気孔径Bが10〜200μm、好ましくは30〜150μmの大径開気孔19とを有している。この大径開気孔19の内壁面には、小径気孔14及び大径気孔15と連通して形成される連通孔20が形成されている。この連通孔20は、一つの開気孔17に対して複数の連通孔20が形成されているのが好ましく、小径気孔14と連通して形成される小径連通孔径Cが5μm以下、好ましくは3μm以下の小径連通孔23と大径気孔15と連通して形成される大径連通孔径Dが10〜200μm、好ましくは30〜150μmの大径連通孔24とにより形成されている。小径気孔14及び大径気孔15は、球状及び/又は扁球状及び/又は長球状及び/又はこれらの形状が組み合わされてなる形状を有する。このような気孔を有する表面層16とすることにより、例えば、本発明における多孔部を有する椎体スペーサにあっては、この椎体スペーサを椎体間に挿入配置すると、表面層16の表面に開口している多数の開気孔17及びこの開気孔17と表面層の内部に形成されている小径気孔14及び大径気孔15とが連通することにより形成される連通孔20とを介して、骨芽細胞及び破骨細胞といった骨組織を表面層16の内部に侵入させることができる。その結果、表面層16の内部に存在する空間を充填するように新たな骨が形成されるので、骨と強固に結合させることのできる椎体スペーサを提供することができる。さらに、大径気孔15により形成されている大径開気孔19の内壁面に連通孔20、特に大径連通孔24が多数形成されている程、骨組織を表面層16の表面から深部にまで到達させることができ、表面層16の深部において新たな骨を形成させることができるので、骨と椎体スペーサとを強固に結合させることができる。
表面層16の表面に開口する小径開気孔18の平均開気孔径と大径開気孔19の平均開気孔径は、表面層16の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、表面層16の表面を示す画像を利用して次のように求めることができる。
まず、表面層16の表面を走査型電子顕微鏡により、所定の倍率、例えば300倍に設定したSEM画像を得る。次いで、前記SEM画像の全視野における比較的大型の最表面部の開気孔、例えば平均径が約10μm以上の開気孔の長径と短径とを測定する。次いで、これらの測定値の算術平均を算出することにより、大径開気孔19の平均開気孔径を求めることができる。
小径開気孔18は、通常、大径開気孔19と大径開気孔19との間の骨格部分に存在する。小径開気孔18の平均開気孔径を測定する場合には、測定誤差を小さくするために、さらに走査型電子顕微鏡の倍率を上げるのが好ましい。例えば、走査型電子顕微鏡を3000倍に設定したSEM画像を得る。次いで、骨格部分に形成されている開気孔の長径と短径とを測定する。すなわち、先に測定した大径開気孔19を除くすべての開気孔の長径と短径とを測定する。次いで、これらの測定値の算術平均を算出することにより、小径開気孔18の平均開気孔径を求めることができる。
SEM画像上の大径開気孔19又は小径開気孔18の数が多い場合、例えば50個以上の場合、SEM画像上を横断するようにランダムに5本の直線を引き、この直線上にある大径開気孔19又は小径開気孔18を上述の基準で選択し、長径と短径とを測定する。次いで、これらの測定値の算術平均を算出することにより、大径開気孔19と小径開気孔18との平均開気孔径を求めることができる。
表面層16の表面に開口する開気孔17に小径気孔14及び大径気孔15が連通して形成されている連通孔20の孔径は、上記と同様に、所定の倍率で撮影したSEM画像から求めることができ、その他の方法として、水銀ポロシメータを使用して求めることもできる。
表面層16の最表面を投影した場合の大径開気孔19の面積割合は、特に限定されないが、10〜95%であるのが好ましく、20〜85%であるのが特に好ましい。大径開気孔19の面積割合が、前記範囲内にあると、骨組織を表面層16の内部に浸入させることができるので、表面層16の内部に新たな骨が形成され、その結果、骨と強固に結合することのできる椎体スペーサを提供することができる。
表面層16の最表面を投影した場合の大径開気孔19の面積割合は、表面層16の表面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析ソフト(例えば、Scion社製 Scion Image)を使用して、大径気孔15により形成される大径開気孔19とそれ以外の部分とに2値化し、次いで、写真全体の面積に対する大径開気孔の面積割合を算出することにより、求めることができる。
表面層16における小径気孔14及び大径気孔15の気孔率は、特に限定されないが、小径気孔14と大径気孔15とを合算した気孔率が99%以下になる範囲であり、小径気孔14の気孔率は5〜50%であるのが好ましく、10〜40%であるのが特に好ましく、大径気孔15の気孔率は20〜90%であるのが好ましく、30〜80%であるのが特に好ましい。小径気孔14の気孔率が、前記範囲内にあると、骨形成に関与するタンパク質や細胞等が付着する足場を多く確保できるため、新たな骨が表面層16の内部に形成されやすく、椎骨スペーサと骨とを強固に結合することができる。大径気孔15の気孔率が、前記範囲にあると、骨組織が表面層16の内部に侵入した後に保持されやすくなると共に、新たな骨が形成される空間が十分に確保され、この空間を埋めるように新たな骨が形成されるので、より一層強固に骨と椎体スペーサとを結合させることができる。
前記表面層16の小径気孔14の気孔率及び大径気孔15の気孔率は、表面層16の表面に直交する断面を走査型電子顕微鏡により撮影した画像を画像解析ソフト(例えば、Scion社製 Scion Image)を使用して、大径気孔15及び小径気孔14の面積をそれぞれ算出することにより求めることができる。なお、上述した平均開気孔を算出する場合と同様にして、走査型電子顕微鏡画像は、大径気孔15及び小径気孔14の面積を測定するのに適度な倍率で表示する。画像全体の面積に対する大径気孔の面積割合(a)から大径気孔の気孔率(a×100(%))が算出される。画像全体から大径気孔を除いた面積に対する小径気孔の面積割合(b)から小径気孔の気孔率((1-a)×b×100(%))が算出される。
表面層16の厚さは、例えば、10〜1000μmであるのが好ましく、20〜200μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であれば、椎体スペーサを椎体間に挿入配置した後に、表面層16の表面に開口している多数の開気孔17及びこの開気孔17と表面層16の内部に形成されている小径気孔14及び大径気孔15とが連通することにより形成される連通孔20を通じて、骨組織を表面層16の内部に侵入させることができる。その結果、表面層16の内部に新たな骨が形成されるので、生体骨と結合させることのできる椎体スペーサを提供することができる。
この発明における多孔部12は開気孔17の表面及び表面層16の表面に、生体活性物質の粒子が固定されている。開気孔17の表面及び表面層16の表面に生体活性物質の粒子を固定する方法については、後述する。
この発明における緻密部11は、突出部4の頂部に存在する。この緻密部11は、基部の構成要素となっている高分子材料又は多孔部の構成要素となっている高分子材料と同じ高分子材料、特にエンジニアリングプラスチック、さらにはポリエーテルエーテルケトンと、前記多孔部の構成要素となっている生体活性物質と同じ、又は異なる種類の生体活性物質とで形成されることができる。
好適な緻密部11は空隙のない緻密質であってもよいし、多孔質であってもよい。もっとも、多孔質となっている緻密部11は前記多孔部におけるような複雑な多孔構造を有している必要がなく、後述するように椎体に接触しても容易に切削乃至剥離されることのない構造であればよい。
多孔質であるこの緻密部11の空隙率は、多孔部12(表面層16)の空隙率よりも小さく、通常、30%未満、好ましくは1%以上25%以下である。この空隙率は、緻密部11又は多孔部12の表面に直交する断面を走査型電子顕微鏡により撮影した画像から画像解析ソフト(例えば、Scion社製 Scion Image)を使用して、空隙の面積を算出することにより、測定することができる。なお、走査型電子顕微鏡画像は、空隙の面積を測定するのに適度な倍率で表示する。画像全体の面積に対する空隙の面積割合(c)から空隙率(c×100(%))が算出される。緻密部11が前記空隙率の範囲内にあると、この椎体スペーサを椎体間に挿入する際に緻密部11が椎体に接触しても容易に切削乃至剥離されることがない。
緻密部11は、突出部4の頂部から5〜50μm、好ましくは10〜40μmの厚みを有しているのが好ましい。緻密部11の厚み及び前記面積が前記範囲内にあると、生体活性物質を適度に含有することから骨との結合乃至癒合に寄与し、まあ、厚みが大き過ぎないことから椎体スペーサ1全体としての力学特性、特に圧縮特性に及ぼす影響を極力低減することができるので、好ましい。
この発明に係る椎体スペーサにおける緻密部11及び多孔部12は、次のようにして形成することができる。
緻密部11及び多孔部12を形成していないが、突出部4を有する椎体スペーサ本体を先ず製造する。
前記椎体スペーサ本体の表面、特に突出部の表面に微小気孔を形成させる方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、第1工程として、高分子材料製の前記椎体スペーサ本体を、濃硫酸、濃硝酸、又はクロム酸等の腐食性溶液に所定時間浸漬し、次いで、この椎体スペーサ本体を高分子材料が溶出しない洗浄用溶液、例えば純水に浸漬させる方法を挙げることができる。高分子材料として、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を採用した場合には、濃硫酸にPEEK製の椎体スペーサ本体を所定時間浸漬させ、次いで、純水に浸漬させることにより突出部の表面に微小気孔を形成させることができる。
高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面に形成される微小気孔の気孔径は、次の工程において使用される発泡剤を高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面、特に突出部の表面内に浸入させることのできる気孔径を有していれば良く、発泡剤の種類により適宜選択することができる。発泡剤として、例えば炭酸ナトリウムを採用した場合には、微小気孔の気孔径は、0.1〜200μmであるのが好ましい。高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面に形成されている微小気孔の気孔率、特に突出部の表面に形成されている微小気孔の気孔率は、次の工程(第2工程)において使用される発泡剤を十分に保持することができれば良く、例えば、発泡剤として炭酸ナトリウムを採用した場合には、高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面、特に突出部の表面に形成され、微小気孔を有する層の気孔率は、10〜90%であるのが好ましい。前記気孔率の範囲の内、気孔率が低い範囲にある場合には、例えば高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面から内部方向に気孔が連通して形成されているか、又は高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面から内部方向に垂直に柱状の孔が形成されているなど、高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面から所望の深さに発泡剤が保持されるように孔が形成されているのが好ましい。多数の微小気孔が形成されている多孔層の厚さは、10〜1000μmであるのが好ましい。この多数の微小気孔を有する多孔層の厚さ、気孔径及び気孔率は、PEEKの腐食性溶液として例えば濃硫酸を採用する場合には、PEEKを濃硫酸に浸漬する時間及び/又は温度などにより層の厚さを調整することができる。また、濃硫酸に浸漬した後に続いて浸漬する洗浄用溶液の種類及び/又は温度などによって気孔径や気孔率を調整することができる。
次いで、第2工程として、第1工程で得られたところの微小気孔を有する多孔層を形成した椎体スペーサ本体を、発泡剤を含有する溶液に所定時間浸漬させて、多数の微小気孔を有する椎相スペーサ本体の表面に発泡剤が保持されて成る発泡剤保持基材を作製する。 発泡剤としては、高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面、特に突出部の表面に所望の多孔質構造を形成させることのできる物質であれば良く、そのような発泡剤として、炭酸塩、アルミニウム粉末などの無機系発泡剤や、アゾ化合物、イソシアネート化合物などの有機系発泡剤を挙げることができる。この発明に係る椎体スペーサを製造する場合、発泡剤は生体に悪影響を与えない物質であるのが好ましく、そのような発泡剤としては炭酸塩が好ましく、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを挙げることができる。
次いで、第3工程として、第2工程で得られた発泡剤保持基材を、高分子材料を膨潤させ、かつ、発泡剤を発泡させる発泡溶液に所定時間浸漬させて、高分子材料の膨潤と発泡剤の発泡とを同時に進行させることにより形成されて成る発泡基材を作製する。前記発泡溶液としては、例えば、濃硫酸、塩酸及び硝酸などの酸性溶液を挙げることができる。発泡剤保持基材を形成する材料がPEEKであり、発泡剤が炭酸塩である場合には、前記発泡溶液としては、濃度が90%以上の濃硫酸が好ましい。
次いで、第4工程として、第3工程で得られた発泡基材を、膨潤した高分子材料を凝固させる凝固溶液に浸漬することにより表面発泡体を作製する。前記凝固溶液、すなわち高分子材料が溶出しない溶液としては、例えば、水、アセトン、エタノールなどの水性溶液を挙げることができる。発泡基材を形成する材料がPEEKである場合には、上記に挙げた他に、濃度が90%未満の硫酸、硝酸、リン酸、塩酸等の無機酸水溶液、水溶性有機溶剤がある。水溶性有機溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、テトラヒドロフラン、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエトレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、グリセリンエタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、ペンタノ−ル、ヘキサノ−ル等のアルコ−ル及びこれらの水溶液、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリビニルピロリドン等の液状高分子またはそれらの水溶液及びこれらの混合物を挙げることができる。
第4工程において、第3工程で得られた発泡基材は、凝固溶液として使用できる複数種類の溶液から選択される少なくとも1つの溶液に浸漬すれば良く、複数種類の溶液に順次浸漬しても良い。また、少なくとも2つの種類の溶液を混合して使用しても良い。
第4工程の後には、表面発泡体に残存している発泡剤及び凝固溶液等を純水で洗浄するのが好ましい。
高分子材料製の椎体スペーサ本体の表面に形成される多孔質構造、すなわち表面発泡体の表面層の多孔質構造を規定する大径開気孔径、小径開気孔径、連通孔径、気孔率などは、発泡剤の種類及び濃度、発泡溶液の種類及び濃度、発泡溶液への浸漬時間、凝固溶液の種類及び濃度、凝固溶液への浸漬時間、各工程における温度などを適宜選択することにより調整することができる。
これらの中でも特に、凝固溶液の種類と、凝固溶液の濃度と、凝固溶液への浸漬時間とから選択される少なくとも1つを変化させることにより、表面層が所望の多孔質構造を有する表面発泡体を、容易に得ることができる。凝固溶液の種類及び濃度としては、水と、膨潤したプラスチックを凝固させるのに水よりも長時間を要する低凝固溶液の少なくとも1つを適宜選択するのが好ましい。発泡基材を形成する材料がPEEKである場合には、低凝固溶液として、濃度が90%未満の硫酸を挙げることができる。
例えば、PEEKにより形成される発泡基材を、低凝固溶液として濃度が86%の硫酸に浸漬すると、水に浸漬する場合に比べて緩やかにPEEKが凝固する。すなわち、凝固速度が遅くなる。そのため、発泡基材を低凝固溶液に浸漬する時間の経過に従って、発泡基材の表面の多孔質構造は変化する。
以下に、発泡基材を低凝固溶液に浸漬する浸漬時間の違いによって生じる発泡基材の表面の構造の変化を、図6に示される多孔部12における、大径気孔15と大径気孔15が連通して形成される大径連通孔24と小径気孔14とに分けて説明する。
大径気孔15が表面に開口する大径開気孔19と大径連通孔24との孔径は、浸漬時間の経過に従って次第に大きくなる。所定時間以上経過すると、これらの孔径は逆に小さくなる。また、大径開気孔19と大径連通孔24との数は、浸漬時間の経過に従って次第に少なくなる。浸漬時間の経過に従って、孔径が大きくなるのは、発泡剤により形成された複数の孔が、膨潤したPEEKが緩やかに凝固する間に連結して大きくなるものと理解される。一方、所定時間以上経過すると孔径が小さくなってしまうのは、膨潤したPEEKが緩やかに凝固する間に、発泡剤の効力が弱まってしまい、連結して大きくなった孔も含めて、全ての孔が小径化してしまうと考えられる。また、浸漬時間の経過に従って、大径開気孔19と大径連通孔24の数が少なくなるのは、膨潤したPEEKが緩やかに凝固する間に、複数の大径開気孔19及び大径連通孔24が連結して統合されてしまうためであると理解される。
小径気孔14が表面に開口する小径開気孔18の孔径及び気孔率は、浸漬時間の経過に従って次第に小さくなる。大径気孔が発泡剤の作用により形成されるのに対し、小径気孔14は膨潤したPEEKの相分離現象に基づき形成されていると考えられる。膨潤したPEEKは、緩やかに凝固が進行する低凝固溶液との間では相分離が生じにくく、低凝固溶液の浸漬時間が長いほど、膨潤したPEEKと低凝固溶液とが均質化しながら凝固が進行するため、小径開気孔18の数や孔径が小さくなると共に、気孔率も低下すると考えられる。
以上に説明したように、発泡基材の低凝固溶液への浸漬時間の違いにより、多孔部12における表面層16の多孔質構造が異なる椎体スペーサにおける多孔部の前身となる多孔質高分子材料層を得ることができる。特に、大径開気孔19及び大径連通孔24の孔径が最大となる時間に、水などに浸漬することにより速やかに凝固を完了させれば、表面層16の内部まで連通性が良好な多孔質高分子材料層を得ることができる。
上記においては、低凝固溶液として濃度が86%の硫酸を例として説明したが、さらに低濃度の硫酸を低凝固溶液として使用した場合には、発泡基材の表面の構造の時間経過による変化の有様は、相違する。例えば、さらに低濃度の硫酸を使用すると、濃度が86%の硫酸を使用する場合よりも短時間で膨潤したPEEKが凝固するので、発泡剤の効力が弱まる前に、大径気孔15が凝固することがある。その場合には、発泡基材を低凝固溶液に長時間浸漬しておいても、大径開気孔19及び大径連通孔24の孔径が小さくなったり、数が少なくなったりすることがない。
低凝固溶液の種類及び濃度により、上述したように、浸漬時間の経過に伴う、発泡基材の表面の構造の変化の仕方は相違する。従って、所望の低凝固溶液を選択し、所定時間発泡基材を浸漬して、発泡基材の表面の構造が所望の多孔質構造を有する時間になったら、水に浸漬すれば、速やかに膨潤したプラスチックを凝固させることができるので、表面層が所望の多孔質構造を有する表面発泡体を得ることができる。なお、膨潤したプラスチックを凝固させるために、発泡基材を水に浸漬させることの他に、膨潤したプラスチックが凝固するのに十分な時間だけ低凝固溶液に浸漬させておいても良い。
上記のようにして椎体スペーサ本体の表面全体にわたって、高分子材料を発泡して為る高分子発泡層が形成された表面発泡椎体スペーサ本体が得られる。この表面発泡椎体スペーサ本体は、その第1面に存在する基部の表面にも高分子発泡層が形成されている。
この表面発泡椎体スペーサ本体につき、以下のようにして、高分子発泡層に生体活性物質を固定する。
高分子発泡層に生体活性物質を固定する方法として、例えば、表面発泡椎体スペーサ本体の表面に生体活性物質を散布する方法、生体活性物質形成液に表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させて表面発泡椎体スペーサ本体の表面、特に基部の表面に形成された高分子発泡層に生体活性物質を固定する方法、生体活性物質の懸濁液に表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させる方法等が挙げられる。
これらの方法の中でも、複数の突出部の集合体を第1面に有していて複雑な形状を有する椎体スペーサにおいて、その複雑な形状を有する表面に生体活性物質を均一な分散状態で、又は均一に散在した状態で簡易に固定することができる点で、生体活性物質を含有する懸濁液に前記表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させる方法が好ましい。生体活性物質を含む懸濁液に前記表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させて生体活性物質を固定する方法は、生体活性物質を含む懸濁液に前記表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させる工程の他に、所望により、生体活性物質含有の懸濁液を調製するサブ工程、前記表面発泡椎体スペーサ本体を懸濁液から取り出した後にこれを洗浄するサブ工程、洗浄後の前記表面発泡椎体スペーサ本体を乾燥するサブ工程等を有するのが好ましい。
この浸漬させる工程を実施するには、まず、生体活性物質の懸濁液を調製するサブ工程を実施する。生体活性物質を懸濁させる液媒体は、前記表面発泡椎体スペーサ本体及び生体活性物質を溶解させない液媒体であれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、水、アセトン等の水性媒体、並びにヘキサン等が挙げられる。生体活性物質は前記範囲の粒子径及び前記形状を有する粒子であるのが好ましい。準備した生体活性物質を液媒体中に投入して、攪拌機等によって攪拌することによって、所望により例えば周波数38kHzで出力200Wの超音波を照射すること、又は、超音波ホモジナイザーで均質化すること等によって、生体活性物質を液媒体中に均一に懸濁させることができる。このときの生体活性物質の投入量は前記表面発泡椎体スペーサ本体の表面積、その表面に生体活性物質を配置する量に応じて適宜に調整されればよく、例えば、媒体100mLに対して0.01〜100gとすることができる。また、超音波の照射時間は生体活性物質を均一に分散可能な時間に調整され、例えば、5〜180分とすることができる。
次いで、このようにして調製した懸濁液に前記表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させる工程を実施する。この浸漬させる工程は、前記表面発泡椎体スペーサ本体を懸濁液に浸漬させて所望により懸濁液を攪拌して、実施される。このときの懸濁液の液温すなわち浸漬温度及び浸漬時間は特に限定されず、前記表面発泡椎体スペーサ本体の表面に生体活性物質を固定する量に応じて適宜に調整されればよく、例えば、浸漬温度は前記表面発泡椎体スペーサ本体を形成する高分子材料特にエンジニアリングプラスチックのガラス転移温度未満、具体的には溶媒の沸点以下の温度、浸漬時間は1分以上24時間以下とすることができる。懸濁液に浸漬される前記表面発泡椎体スペーサ本体の体積は特に限定されないが懸濁液の液量が十分でないと配置される生体活性物質の固定量が少なくなることがあるので、懸濁液100mLに対して0.001〜50cmとすることができる。
浸漬させる工程においては、所望により、前記表面発泡椎体スペーサ本体を懸濁液から取り出した後に洗浄するサブ工程を実施する。前記表面発泡椎体スペーサ本体を洗浄する洗浄液は前記表面発泡椎体スペーサ本体及び生体活性物質を溶解させない液媒体であれば特に限定されず、例えば、水、懸濁液の液媒体と同じ液媒体が挙げられ、水又は純水であるのが好ましい。浸漬させる工程においては、所望により、洗浄後の前記表面発泡椎体スペーサ本体を乾燥するサブ工程を実施する。乾燥方法は、公知の乾燥方法を特に限定されることなく採用でき、例えば、風乾、送風乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。この乾燥するサブ工程において加熱する場合の加熱温度は前記表面発泡椎体スペーサ本体を形成している高分子材料特にエンジニアリングプラスチックのガラス転移温度未満である。
このようにして生体活性物質を含有する懸濁液に前記表面発泡椎体スペーサ本体を浸漬させる工程が実施される。この浸漬させる工程において前記表面発泡椎体スペーサ本体の表面、特に第1面の突出部の表面に固定された生体活性物質は、洗浄するサブ工程及び乾燥するサブ工程においても、その殆どが前記表面発泡椎体スペーサ本体の表面から脱落しない。
この発明に係る椎体スペーサを製造する方法においては、このようにして実施された固定する工程に次いで、突出部における基部の頂部及び周側面それぞれの表面に生体活性物質が固定された前記表面発泡椎体スペーサ本体を、椎体スペーサ本体を構成する要素である高分子材料のガラス転移温度よりも30℃低い温度以上で融点未満の範囲内にある加熱温度に加熱する工程を実施する。なお、表面に生体活性物質が固定された表面発泡椎体スペーサ本体を、説明の便宜上、以下において、「生体活性物質固定椎体スペーサ本体」と称することがある。この生活活性物質固定椎体スペーサ本体を加熱する加熱温度は、生活活性物質固定椎体スペーサ本体を形成する高分子材料のガラス転移温度(Tg)よりも30℃低い温度(Tg−30°)以上であって、その高分子材料の融点未満である温度範囲内から適宜に選択される。この温度範囲に生体活性物質固定椎体スペーサ本体を加熱すると生体活性物質固定椎体スペーサ本体の表面近傍の一部が軟化して、それまでは単に付着していた状態である一部の生体活性物質が生体活性物質固定椎体スペーサ本体の表面、特に基部の表面に強固に固着し、固定されることができる。加熱温度の下限は、(Tg−30)℃であり、生体活性物質固定椎体スペーサ本体と生体活性物質とをさらに強固に密着させることができる点で、ガラス転移温度(Tg)以上であるのが好ましく、ガラス転移温度(Tg)より40℃以内の高い温度であるのが特に好ましく、加熱温度の上限は、高分子材料の融点未満であり、生体活性物質固定椎体スペーサ本体と生体活性物質とをさらに強固に密着させることができる点でガラス転移温度(Tg)よりも80℃以内の高い温度であるのが好ましい。なお、この発明において、高分子材料のガラス転移温度(Tg)は、「高分子材料」が二種以上の高分子材料を含む場合にその「高分子材料」を「ブレンド高分子材料」と称することにするとき、そのブレンド高分子材料を構成する個々の高分子材料における最も低いガラス転移温度を指標にして加熱温度を決定することができる。
この加熱する工程において、生体活性物質固定椎体スペーサ本体を加熱する時間すなわち前記加熱温度に保持する時間は、生体活性物質固定椎体スペーサ本体の表面近傍を軟化可能な時間であればよく、生体活性物質固定椎体スペーサ本体と生体活性物質とをさらに強固に密着させることができる点で、1時間以上であるのが好ましく、3時間以上であるのが特に好ましい。加熱する時間の上限値は、特に限定されず、大幅に長くしても生体活性物質の基材に対する密着度の向上は見込めないので経済的又は作業効率等を考慮すると、例えば、24時間とすることができる。生体活性物質固定椎体スペーサ本体の加熱方法は公知の加熱方法を適宜に採用できる。このようにして生体活性物質固定椎体スペーサ本体の表面に配置された生体活性物質を固定化することができる。
このようにして生体活性物質が固定化された生体活性物質固定椎体スペーサ本体においては、椎体スペーサ本体の外表面が、高分子材料と生体活性物質とを含有する多孔質の層で被覆されてなり、したがって、基部の頂部及び基部の周側面が前記多孔質の層で被覆されてなる。この基部の頂部及び基部の周側面が前記多孔質の層で被覆されてなる生体活性物質固定椎体スペーサ本体を、説明の便宜上、以下において、「多孔質層被覆椎体スペーサ本体」と称することがある。
次に、多孔質層被覆椎体スペーサ本体は、緻密部を形成する工程に、供される。
緻密部は、多孔質層被覆椎体スペーサ本体の第1面に形成されている突出部の頂部を被覆するところの、高分子材料と生体活性物質とを含有する多孔質の層を、圧縮することにより、形成することができる。
圧縮装置としては、水平な基台面に、多孔質層被覆椎体スペーサ本体の第2面が接するように、多孔質層被覆椎体スペーサ本体を配置し、次いで、多孔質層被覆椎体スペーサ本体の上方に配置され、かつ多孔質層被覆椎体スペーサ本体に向かって下降可能な押圧面を備えた押圧部を具備した押圧装置を採用することができる。
前記押圧装置における押圧面で、多孔質層被覆椎体スペーサ本体における突出部における基部の頂部を被覆する前記多孔質の層を、押圧して、前記多孔質の層を圧縮することにより緻密部を形成することができる。
前記押圧装置における押圧面で押圧するときの加圧力等の加圧条件は、前記多孔質の層を圧縮した結果の層における空隙率が30%未満となるように、適宜に設定するのが好い。
かくして得られた椎体スペーサは、第1面に突出部、正確には突出部の集合体が存在し、個々の突出部においては、基部の頂部に緻密部が存在し、基部の外周面には緻密部よりも空隙率の大きい多孔部が存在するので、この椎体スペーサを椎体間に挿入し、配置すると、突出部における緻密部を先端にして突出部が椎骨にめり込み易く、しかも椎骨に突出部が突き刺さる量が増大する結果となり、この結果は、椎体スペーサの椎体間における固定性の向上を実現する。つまり、この椎体スペーサを椎体間に挿入・配置した場合に、椎体スペーサが椎体間で位置ずれを起こすことがない。また、この緻密部が多孔質であると、緻密部における孔の中に骨芽細胞が容易に進入することにより骨芽細胞による骨形成が実現し、その結果、椎体スペーサと椎骨との結合乃至骨癒合が強固なものになる。したがって、この発明に係る椎体スペーサは、椎体間に挿入・配置してから長時間が経過した後においても、椎体スペーサが椎体間で位置ずれを生じたり、椎体間から脱離したりすることがなくて長期間の固定安定性を実現することができる。
1 椎体スペーサ
2 第1面
3 第2面
4 突出部
4a 突出部
4b 突出部
4c 突出部
5a 先端部
5b 項端部
6a 先端部
6b 後端部
7 貫通空隙
8 正面
9 連通空隙
10 基部
11 緻密部
12 多孔部
14 小径気孔
15 大径気孔
16 表面層
17 開気孔
18 小径開気孔
19 大径開気孔
20 連通孔
21 独立気孔
22 連通気孔
23 小径連通孔
24 大径連通孔

Claims (12)

  1. 第1椎体とこの第1椎体に隣接する第2椎体との間に介装される椎体スペーサであり、前記第1椎体に面する第1面と、前記第2椎体に面し、かつ前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有する椎体スペーサであって、
    前記第1面には突出部が存在し、その突出部は、高分子材料を含有する基部と、その基部の頂部に存在し、前記高分子材料と生体活性物質とを含有する緻密部と、前記基部の頂部以外の表面を被覆するとともに、前記高分子材料と生体活性物質とを含有する多孔部とを備えることを特徴とする椎体スペーサ。
  2. 第1面と前記第2面とを貫通する貫通空隙を有することを特徴とする前記請求項1に記載の椎体スペーサ。
  3. 前記第1面と前記第2面とのそれぞれが側壁に連係し、前記側壁は、前記貫通空隙に連通する連通空隙を備えることを特徴とする前記請求項2に記載の椎体スペーサ。
  4. 前記緻密部は、その空隙率が前記多孔部の空隙率よりも小さいことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  5. 前記多孔部は、その空隙率が30%以上である前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  6. 前記多孔部が小径気孔及び大径気孔を有しており、
    前記小径気孔及び前記大径気孔の一部は前記多孔部の表面に開口する開気孔を形成していることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  7. 前記突出部の第1面からの高さが300μm以上2000μm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  8. 前記突出部は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維及び有機繊維から成る群より選択される少なくとも1つの繊維を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  9. 前記高分子材料が、ポリエーテルエーテルケトンである請求項1〜8のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  10. 前記多孔部における開気孔の内壁面及び前記多孔部の表面の少なくとも一方に生体活性物質を有している請求項1〜9のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  11. 前記生体活性物質がリン酸カルシウムであることを特徴とする前記請求項1〜10のいずれか一項に記載の椎体スペーサ。
  12. 前記リン酸カルシウムが水酸アパタイトであることを特徴とする前記請求項11に記載の椎体スペーサ。

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