JP2009016236A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】色素が吸着した半導体多孔質膜の組成および色素を最適に設計することで、半導体多孔質膜中に注入された光電子の取り出し効率を向上させ、更に高効率な色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】透明導電性基板の表面に、少なくとも増感色素を吸着させた半導体多孔質膜層からなる層を形成させたアノード電極と、該アノード電極の半導体多孔質膜層の側に対向するカソード電極、及び前記アノード電極とカソード電極の2枚の電極間に電解質を封止した構成を有する色素増感型太陽電池において、該半導体多孔質膜層が伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成からなり、且つ、前記透明導電性基板に向かって段階的にもしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなるように積層され、前記半導体多孔質膜層に少なくとも2種以上の増感色素が吸着していることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【選択図】図1

Description

本発明は色素増感型太陽電池に関する。更に詳しくは、半導体組成および色素を最適に用いることで光電子の取り出し効率を向上させた高効率な色素増感型太陽電池に関する。
色素増感型太陽電池は一般的な印刷工程で製造できる構成から、素材・プロセス両面で大幅なコスト低減が期待され、シリコン系、GaAs系、CIS系などに続く次世代の太陽電池として注目を集めている。この色素増感型太陽電池は、半導体表面に吸着させた色素分子が太陽光を吸収し、色素のLUMO(最低空軌道)から半導体のCB(伝導帯)へ電子注入が起こることで所謂分光増感を行う。色素分子は半導体表面に吸着基を介して結合させるため、一般的には単分子層であるとされる。即ち、太陽電池セルに入射した光を高い効率で電子に変換させるためには、色素の光吸収能を向上させる技術が必要である。それに対し大きなブレイクスルーを果たしたのが、酸化チタンの超微粒子を適度な空孔を含む多孔質膜として形成させたことにある。
この多孔質膜中の粒子表面に色素分子を単分子吸着させることで、光吸収/電子注入サイトの比表面積を数千倍にまで高めることを可能にし、太陽電池セルに入射した太陽光を効率よく電子に変換することができる。色素から注入された電子は、酸化チタン多孔質膜中を高効率に拡散し透明電極に到達する。一方で、電子を失った色素は電解質中のヨウ素イオンから電子を受け取る。さらには電子を渡したヨウ素イオンが対極のPt基板上で電子を受け取る。色素増感型太陽電池は、この一連の光吸収・酸化還元過程を経て外部回路を駆動する。
色素増感型太陽電池に用いられる半導体電極は、酸化チタンを主成分とするナノポーラス構造が一般的である。この酸化チタン膜は、色素吸着量に依存し電子の失活過程である電子とホールの再結合が生じにくい特性を持っており、ナノポーラス構造にキャリア移動の機能を持たせる上で都合がよい。しかしながら、酸化チタン多孔質膜中で、励起色素から注入されたキャリア(電子)は、浅いトラップへのトラップ/デトラップを繰り返し、ランダムな拡散過程を経て透明導電性層へと到達するため、どうしても途中の過程で色素カチオンへの再結合、半導体中ホールとの結合による失活、電解質への漏電といったロスを生じる可能性がある。
注入された光電子を効率よく集電させる方法として、半導体層中のエネルギー準位が異なる複数の領域によって半導体層が形成され、半導体層中のエネルギー準位が電荷キャリア取り出し方向に段階的及び/又は連続的に低下している領域を有することを特徴とする色素増感型光電変換装置(例えば、特許文献1参照)がある。ここでは半導体の伝導帯のエネルギー準位を、電荷キャリア取り出し方向に、つまり透明導電性基板に向かって勾配をつけることで、注入された光電子を熱的な拡散だけでなく電場勾配を利用して効率よく集電させる技術である。しかしながら、その効果について十分に議論されておらず、また実際にはその効果は小さなものであった。
特開2004−87148号公報
本発明は上述したような従来の課題を解決するためのもので、その目的は、色素が吸着した半導体多孔質膜の組成および色素を最適に設計することで、半導体多孔質膜中に注入された光電子の取り出し効率を向上させ、更に高効率な色素増感型太陽電池を提供することにある。
本発明は色素が吸着した半導体多孔質膜の組成および色素を最適に設計することで前記課題の解決に至り、ここに技術開示するものである。以下にその具体的手段について説明する。
1.透明導電性基板の表面に、少なくとも増感色素を吸着させた半導体多孔質膜層からなる層を形成させたアノード電極と、該アノード電極の半導体多孔質膜層の側に対向するカソード電極、及び前記アノード電極とカソード電極の2枚の電極間に電解質を封止した構成を有する色素増感型太陽電池において、該半導体多孔質膜層が伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成からなり、且つ、前記透明導電性基板に向かって段階的にもしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなるように積層され、更に、前記半導体多孔質膜層に少なくとも2種以上の増感色素が吸着していることを特徴とする色素増感型太陽電池。
2.前記増感色素が、少なくともLUMOレベルの異なる2種以上の色素からなることを特徴とする前記1記載の色素増感型太陽電池。
3.前記増感色素の少なくとも1種が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示される色素であることを特徴とする前記1又は2記載の色素増感型太陽電池。
Figure 2009016236
(式中、X11〜X14及びX21〜X26は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子のいずれかを表し、R12、R13、及びR22、R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、複素環オキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホキシル基、スルホニルオキシ基、アミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基又は複素環チオ基を表し、これらの置換基は上記に示した置換基によってさらに置換されていてもよい。また、R12、R13、及びR22、R23はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。R14は−COOH基または−PO32基を表し、R24、R26は水素原子、−COOH基または−PO32基を表し、少なくとも1つは−COOH基または−PO32基を表す。L11、及びL21、L22はそれぞれ独立にメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を表す。R15、及びR25は置換または無置換アルキル基を表す。R11、及びR21は上述したR12、R13、及びR22、R23と同義の基を表す。nは1〜4の整数を表す。)
4.前記伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成が、少なくとも1種は金属ドープにより形成され、且つ、該金属ドープされた半導体組成は、それぞれが異なる元素種の金属ドープからなることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の色素増感型太陽電池。
5.前記伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成が、少なくとも2種はそれぞれの金属ドーパントのドープ量が異なる半導体組成であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の色素増感型太陽電池。
6.前記伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成が、少なくとも1種は酸化チタン単独組成からなり、且つ、該酸化チタンは最も伝導体のエネルギー準位が低いことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の色素増感型太陽電池。
本発明により、色素が吸着した半導体多孔質膜の組成および色素を最適に設計することで、半導体多孔質膜中に注入された光電子の取り出し効率を向上させ、更に高効率な色素増感型太陽電池を提供することができた。
本発明を更に詳しく説明する。まず、本発明の色素増感型太陽電池について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の色素増感型太陽電池の基本構造を示す概略断面図である。本発明の色素増感型太陽電池は図1によって示される通り、光透過性基材11の上に導電層12を有する透明導電性基材1、色素分子3を吸着させた光吸収層21と光反射層22からなる半導体多孔質膜層2と、電荷移動層(「電解質層」と呼ぶこともある)4、カソード電極5を有する対向基板6から成る。尚、図1において、+は正極を表し、−は負極を表す。
本発明の色素増感型太陽電池を構成する際には、前記半導体多孔質膜層2、電荷移動層4及びカソード電極5を図中7で示される封止剤で、ケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体多孔質膜層2に吸着された色素3は照射された太陽光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体多孔質膜層2に移動し、次いで導電層12を経由して外部回路に供給される。一方、外部回路を駆動してカソード電極5上に移動した電子は、電荷移動層4のレドックス電解質を還元する。半導体多孔質膜層2に電子を移動させた色素3は酸化体となっているが、カソード電極5から電荷移動層4のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層4のレドックス電解質は酸化されて、再びカソード電極5から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の色素増感型太陽電池を構成することができる。
本発明の半導体多孔質膜層は伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成からなり、且つ、前記透明導電性基板に向かって段階的にもしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなっていくことが特徴である。前記半導体組成は伝導帯のエネルギー準位に差があれば異なる元素組成でも同じ元素組成でもよく、例えば、元素組成の異なる半導体組成、ドーパント種が互いに異なる半導体組成、ドーパント量が互いに異なる半導体組成などを挙げることができる。また、段階的にもしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなっていくとは、つまり半導体組成が段階的にもしくは連続的に変化していくことを意味する。このエネルギー準位に勾配をつけるには、前記互いに組成が異なる半導体を積層もしくは連続的に比率を変えて多孔質膜を形成させることで得ることができる。
更に、本発明においては前記2種以上の半導体組成と共に、少なくとも2種以上の増感色素が吸着してなることが特徴である。以下、図2を使って、本発明に好ましく適用される半導体の伝導帯エネルギー準位と増感色素の構成について説明する。図2は本発明の増感色素が吸着した半導体多孔質膜層を、エネルギー準位の観点から模した図である。縦の直線は透明導電性基板表面を表し、また、矢印はエネルギーレベルを表しており、上に行くほどエネルギー準位が高いことを表している。また、横向きの実線は半導体の伝導帯エネルギー準位を表し、点線は増感色素のLUMOレベルを表している。本発明においては、透明導電性基板に向かって段階的もしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなっていることが特徴であり、横向きの実線は左に行くほど低くなるように示されている。
図2のa)は、伝導帯のエネルギー準位が異なる2種の半導体組成からなる半導体多孔質膜層に、1種の増感色素を吸着させた場合の模式図である。伝導帯が低い半導体と伝導帯が高い半導体を積層した場合、伝導帯が低い半導体に最適化された色素1種では、伝導帯が低い半導体にのみ電子注入が起き、伝導帯が高い半導体には電子注入されない。また、b)では、伝導帯が高い半導体に色素が最適化されており、両半導体に電子注入が起こるものの、高LUMO色素は吸収スペクトルが短波化するため、トータルではロスが大きくなってしまい好ましくない。理想的には、それぞれの半導体に最適なLUMOレベルを有する色素がそれぞれ吸着される構成が好ましい。具体的には半導体の伝導帯エネルギー準位に対して増感色素のLUMOレベルが高いことが好ましく、0.1〜0.6eV高いことが好ましく、0.2〜0.4eV高いことが更に好ましい。d)は半導体組成が3層に設計される例であり、この場合も同様に、それぞれの半導体に最適な色素を吸着させることが好ましい。
以下、これらについて詳細に説明する。
<半導体多孔質膜層>
本発明に掛かる半導体多孔質膜層を形成する多孔質体は、金属酸化物に代表されるセラミック半導体微粒子から成ることが好ましい。半導体微粒子の組成は価電子帯(VB)と伝導帯(CB)のバンドギャップが3eV程度あれば特に限定しないが、ナノポーラス膜の形成し易さから金属酸化物であることが好ましい。代表的な金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウムなどを上げることが出来、中でも酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウムが伝導帯のエネルギーレベルや色素の吸着性を考慮すると好ましく、さらには酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく、酸化チタンが最も好ましい。また、本発明においては、色素増感型太陽電池の性能向上を目的に、前記半導体微粒子を混合して成る構成でもよく、さらには半導体Aの表面に半導体Bを被覆して成るコアシェル微粒子ないしコンポジット微粒子を用いてもよい。
本発明の効果を得るために、金属酸化物半導体に金属元素をドープすることが好ましい。金属元素種としては、1価〜5価の金属イオンドーパントを選択でき、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を上げることが出来る。金属イオンドーパントのドープ量は、金属酸化物半導体の金属原子数に対し0.01〜10mol%が好ましく、0.1〜5.0mol%が更に好ましく、0.1〜1.0mol%が最も好ましい。十分な効果を得るためには0.01%以上のドープ量が好ましく、また、半導体微粒子に固溶化するドープ量として10mol%以下が好ましい。
本発明に用いることができる半導体微粒子の製法としては、一般公知の技術を用いて行うことができる。微粒子形成方法は大きく分けて気相法と液相法に分類される。気相法とは気体状の原料物質から結晶形成させる手法であり、連続的なプロセスを構築しやすく低コストで高純度な粒子を大量生産することに向く。一方で液相法は原料物質1種、あるいは2種以上を溶液中で混合し、原料物質と生成物の溶解度変化を利用して粒子形成する方法であり、シングルジェット法、ダブルジェット法、ゾル−ゲル法などが挙げられ、極端な大量生産には不向きなものの粒子形状の揃った高品質な微粒子を合成できる手法として広く用いられている。また液相法の一種であるが、原料物質を溶融し冷却時の溶解度変化を利用して粒子形成させるメルト法や、メルト法と同様にして高温溶融したフラックス塩中で形成させる手法などが挙げられる。
本発明の光吸収層に用いられる半導体微粒子は、粒子サイズが制御して形成できる方法であれば、上記いかなる手法にて粒子形成されてもよいが、半導体組成をコントロールしやすく、また粒子径が揃った高品質な微粒子を合成できるなどの理由からゾル−ゲル法を用いることが好ましい。ゾル−ゲル法を用いた粒子形成法は、有機金属化合物を酸などを触媒に加水分解し、連続的な縮合反応によって液相中で核形成〜粒子成長させることで所望の金属酸化物微粒子を得る手法である。
有機金属化合物とは金属と有機物が共有結合、配位結合またはイオン結合した化合物であり、例えば、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレート、有機金属塩、ハロゲン金属化合物などを挙げることができ、本発明においては反応性、安定性の観点から金属アルコキシド類を用いることが好ましい。
本発明に有用な有機金属化合物は、下記の一般式で表される化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。
〔一般式〕 M(R1x(R2y(R3z
上記一般式において、Mは金属(例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等)を表し、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。
1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。R2で表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3で表されるβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基としては、β−ジケトン配位基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル配位基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸配位基として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシ配位基として、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は、上記の有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
本発明においては、取り扱いの観点から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またはR3のβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
具体的な有機金属化合物について以下に示す。
有機チタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることができる。またこれらを2種以上同時に混合して使用することもできる。
錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることができる。
有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることができる。
有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムエトキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド、ジルコニウムn−プロポキサイド、ジルコニウムn−ブトキサイド、ジルコニウムt−ブトキサイド、ジルコニウム2−エチルヘキシルオキサイド、ジルコニウム2−メチル−2−ブトキサイド、テトラキス(トリメチルシロキシ)ジルコニウム、ジルコニウムジn−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキサイド、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリn−プロポキサイド、ジルコニウム2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムトリフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
また、アルミニウムアルコキシドの例としては、アルミニウム(III)n−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイド、アルミニウム(III)t−ブトキサイド、アルミニウム(III)エトキサイド、アルミニウム(III)イソプロポキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプポキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)エトキシエトキシエトキサイド、アルミニウムヘキサフルオロペンタジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキサイド、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、アルミニウム(III)フェノキサイド、アルミニウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートを挙げることができる。
また、その他の有機金属化合物としては、例えば、ニオブイソプロポキシド、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
本発明の半導体多孔質膜層は伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成からなることが特徴であり、上記の有機金属化合物を単独もしくは2種以上混合しゾル−ゲル反応を行うことで伝導体のエネルギー準位をコントロールした半導体微粒子を得ることが出来る。また、上記の有機金属化合物を用いてゾル−ゲル反応中に金属イオンを直接ドープすることで半導体組成をコントロールすることも出来る。
次に、ゾル−ゲル反応に用いられる溶媒について述べる。溶媒はゾル液中の各成分を均一に混合させ、本発明の組成物の固形分調製をすると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性及び保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は上記目的の果たせるものであれば特に限定されない。これらの溶媒の好ましい例として、例えば水、及び水と混和性の高い有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、蟻酸、酢酸、酢酸メチル、アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
ゾル−ゲル反応時には、水、及び有機溶媒中で前記金属アルコキシドを加水分解、及び縮重合させるが、この時、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。加水分解の触媒としては、一般に酸が用いられる。酸は、無機酸又は有機酸が用いられる。無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、燐酸など、有機酸化合物としてはカルボン酸類(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、燐酸・ホスホン酸類(燐酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)、ヘテロポリ酸(燐モリブデン酸、燐タングステン酸など)などを挙げることができる。
本発明の半導体多孔質膜層は光透過性基材側から順に、光吸収層と光反射層とを積層した構成が好ましく、該光反射層はアスペクト比(以下、ARと略すこともある)が3以上の形状異方性微粒子であることが更に好ましい。形状異方性微粒子は、平板状、燐片状、板状、針状、柱状、繊維状、ラグビーボール状、紡錘状、など形状異方性を有する粒子を挙げることができ、好ましくは平板状、燐片状、板状であり、光反射能から平板状が最も好ましい。好ましいアスペクト比は3以上〜200以下であり、さらに好ましくは10以上〜100以下である。本発明の光吸収層は、実質的に太陽光を散乱しない5nm〜100nmの平均粒径が好ましく、さらには8nm〜80nm、比表面積と空隙サイズから10nm〜30nmが最も好ましい。また、反射層は太陽光を反射する100nm〜10μmの平均粒径が好ましく、さらに好ましくは200nm〜3μm程度であり、最も好ましくは250nm〜2μm程度が、反射効率と変換効率の観点から好ましい。
本発明の平均粒径とは、透過型電子顕微鏡(例えば日本電子製JEM−2010F型)で観察した粒子の投影面積を真円に換算したときの円相当径を計算し、観測粒子数500個以上での平均円相当径を示す。また、本発明でアスペクト比とは、前記平均粒径を、500個以上の粒子を横方向から観察した平均厚みで除した値を示す。
ここで実質的に太陽光を散乱しないとは、太陽光に含まれる可視光線(主には400nm〜780nm域の光)と、UVAと呼ばれる紫外線(315nm〜400nm域の光)、近赤外線〜遠赤外線(780nm以上の光)を含むスペクトル光を散乱しないことを言う。この波長領域はミー散乱で分類することができ、光の波長、粒子径、粒子の屈折率により散乱特性が影響される。無機微粒子の場合、一般的には波長と同程度の粒径が存在すると散乱が発生すると言われている。実験的には温帯地域で観測される太陽光の平均輻射エネルギーを模して、エアマス1.5(AM1.5)と呼ばれるスペクトル光で、半導体多孔質膜のヘイズ値を評価することで確認できる。
本発明の半導体多孔質膜層に関し、特に光吸収層の膜厚は5μm以上〜20μm以下であることが好ましく、8μm以上〜18μm程度がさらに好ましく、11μm以上〜15μm程度が最も変換効率が高く好ましい。また、光反射層は0.5μm以上〜10μm程度で設計することができ、好ましくは1μm以上〜5μm以下、更に好ましくは1μm以上〜3μm以下である。光反射層の膜厚が薄すぎると十分な光反射能が得られず、逆に厚すぎると半導体多孔質膜層自体の膜厚が厚くなり電解質の拡散を阻害してしまうだけでなく、半導体に注入された電子と色素ホールとの再結合チャンスが増えVocの低下を招く恐れがある。更に、上記の光吸収層と光反射層をトータルした半導体多孔質膜層の膜厚は、10μm〜20μm程度が好ましく、13μm〜17μm程度がさらに好ましく、14μm〜16μmが最も好ましい。
次に、本発明の半導体多孔質膜の作製方法について説明する。
半導体多孔質膜を作製する方法としては公知の方法を適用することが可能であり、
(1)半導体微粒子を含有する懸濁液を導電性基材上に塗布し、乾燥及び焼成を行って半導体層を形成する方法、
(2)コロイド溶液中に導電性基材を浸漬して電気泳動により半導体微粒子を導電性基材上に付着させる泳動電着法、
(3)コロイド溶液や分散液に発泡剤を混合して塗布した後、焼結して多孔質化する方法、
(4)ポリマーマイクロビーズを混合して塗布した後、このポリマーマイクロビーズを加熱処理や化学処理により除去して空隙を形成させ多孔質化する方法などを適用することができる。
上記の作製方法の中で、特に塗布方法としては公知の方法を適用することが可能で、スクリーン印刷法、インクジェット法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー塗布法などを挙げることができる。
特に上記(1)の方法の場合、懸濁液中の半導体微粒子の粒子径は微細である方が好ましく、1次粒子として存在していることが好ましい。
本発明の半導体多孔質膜層は伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成からなることが特徴であり、且つ、前記透明導電性基板に向かって段階的にもしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなっていくことが特徴である。例えば上記の塗布方法を用いて半導体組成の異なる複数の層を積層してもよく、また、2種以上の半導体微粒子分散液を、連続的に比率を変化させてスプレー塗布することで連続的に伝導体のエネルギー準位が低くなるように設計した半導体多孔質膜層を形成することが出来る。
半導体微粒子を含有する懸濁液は、半導体微粒子を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
溶媒としては、半導体微粒子を分散し得るものであれば特に制限は無く、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。
有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。懸濁液中には、必要に応じて界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、分散剤等を加えることができる。溶媒中の半導体微粒子の濃度の範囲は、0.1質量%〜70質量%が好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
上記のペーストは公知の分散機を用いて十分に1次粒子化させることが好ましい。本発明で用いることができる分散機としては、超音波分散機、ビーズミル分散機、ロールミル分散機などを挙げることができ、分散工程やペーストの粘度によって適宜選択することができる。
上記のようにして得られた半導体微粒子を含有する懸濁液を導電性基材上に塗布し、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基材上に金属酸化物半導体層が形成される。
導電性基材上に懸濁液を塗布、乾燥して得られる半導体多孔質膜層は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒子径は使用した半導体微粒子の1次粒子径に依存するものである。導電性基材上に形成された半導体多孔質膜層は、導電性基材との結合力や、微粒子間の結合力が弱く、機械的に脆い膜であるため、この半導体微粒子集合体膜を焼成処理して機械的強度を高め、基板に強く固着した焼成物膜とすることが好ましい。
同時に焼成処理をすることで、粒子間が溶融密着による所謂ネッキングを形成し、半導体多孔質膜中の電子伝導性が向上する効果が得られる。
本発明においては、この焼成物膜はどのような構造を有していても良いが、多孔質構造(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
ここで、半導体多孔質膜層の空隙率は、10体積%以下が好ましく、更に好ましくは、8体積%以下であり、特に好ましくは、0.01体積%〜5体積%以下である。
尚、半導体多孔質膜層の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(例えば、島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することが出来る。
焼成温度は300℃〜1000℃程度で行われるが、酸化チタンの場合は焼成温度によって得られる結晶相が異なるため注意が必要である。
酸化チタンを本発明に用いる場合、900℃以上の焼成温度では、光触媒不活性なルチル晶を形成するため、一般的には600℃以下の温度で形成されるアナターゼ晶を用いることが好ましい。
本発明の半導体多孔質膜層は、前記焼成処理後、半導体微粒子の表面積を増大させる目的、また半導体微粒子と基材電極間、また半導体微粒子間の電子伝導性を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
<色素>
本発明において、前述した半導体多孔質膜層2の表面に吸着させる色素3としては、種々の可視光領域および/または赤外光領域に吸収を有し、金属酸化物半導体の伝導帯より高い最低空準位を有する色素が好ましく、公知の様々な色素を使用することができる。例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、シアニジン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ローダミン系色素、ローダニン系色素などが挙げられる。なお、金属錯体色素も好ましく使用され、その場合においては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの種々の金属を用いることができる。
上記の中で、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素などのポリメチン色素は好ましい態様の1つであり、具体的には特開平11−35836号、特開平11−67285号、特開平11−86916号、特開平11−97725号、特開平11−158395号、特開平11−163378号、特開平11−214730号、特開平11−214731号、特開平11−238905号、特開2004−207224号公報、特開2004−319202号公報、欧州特許892411号および同911841号などの各明細書に記載の色素を挙げることができる。更に金属錯体色素も好ましい態様の1つであり、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素またはルテニウム錯体色素が好ましく、ルテニウム錯体色素が特に好ましい。ルテニウム錯体色素としては、例えば米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、特開平7−249790号、特表平10−504512号、WO98/50393号、特開2000−26487号、特開2001−223037号、特開2001−226607号、特許第3430254号公報、などの各明細書に記載の錯体色素を挙げることができる。
これらの色素は、吸光係数が大きくかつ繰り返しの酸化還元に対して安定であることが好ましい。また、上記色素は金属酸化物半導体上に化学的に吸着することが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ホスフィン基などの官能基を有することが好ましい。
本発明に用いられる色素は、前期半導体多孔質膜に少なくとも2種以上吸着させて成ることが特徴であり、前記の色素例から適宜選択して用いることができる。選択される2種以上の色素は、少なくとも互いのLUMOレベルが異なることが好ましく、更には前記半導体組成における伝導体のエネルギー準位に対して最適に選択されることがより望ましい。
本発明では、金属酸化物の表面に吸着する色素として、ローダニン系色素を使用することが特に好ましい。ローダニン系色素であればどのような構造であっても好ましく用いることが可能であるが、前記一般式(1)または一般式(2)で表される少なくとも1種の色素を用いることが特に好ましい。
前記一般式(1)または一般式(2)において、X11〜X14及びX21〜X26は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子のいずれかを表し、好ましくはX11、X12、X14、及びX21、X22、X24、X26がそれぞれ硫黄原子またはセレン原子であり、更に好ましくは硫黄原子である。X13、及びX23、X25は酸素原子であることが好ましい。R12、R13、及びR22、R23はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R14は−COOH基または−PO32基を表し、R24、R26は水素原子、−COOH基または−PO32基を表し、少なくとも1つは−COOH基または−PO32基を表す。L11、及びL21、L22はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基の例としてはメチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)などが挙げられるが、特に好ましくはメチレン基、エチレン基である。R15、及びR25は置換または無置換アルキル基を表すが、炭素数1〜8の直鎖及び分岐のアルキル基が好ましく、炭素数2〜4の直鎖及び分岐のアルキル基(例えばエチル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)が更に好ましい。
12、R13、及びR22、R23等の置換基の例としてはアルキル基(例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ドデシル基及び1−ヘキシルノニル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基及びアダマンチル基等)及びアルケニル基(例えば2−プロピレン基、オレイル基等)、アリール基(例えばフェニル基、オルト−トリル基、オルト−アニシル基、1−ナフチル基、9−アントラニル基等)、複素環基(例えば2−テトラヒドロフリル基、2−チオフェニル基、4−イミダゾリル基及び2−ピリジル基等)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルボニル基(例えばアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル基等のアリールカルボニル基等)、オキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基及び2−ピリジルオキシカルボニル基、1−フェニルピラゾリル−5−オキシカルボニル基などの複素環オキシカルボニル基等)、カルバモイル基(例えばジメチルカルバモイル基、4−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブチルアミノカルボニル基等のアルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、1−ナフチルカルバモイル基等のアリールカルバモイル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、2−エトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ基、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ基等)、複素環オキシ基(例えば4−ピリジルオキシ基、2−ヘキサヒドロピラニルオキシ基等)、カルボニルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等のアリールオキシ基等)、ウレタン基(例えばN,N−ジメチルウレタン基等のアルキルウレタン基、N−フェニルウレタン基、N−(p−シアノフェニル)ウレタン基等のアリールウレタン基)、スルホキシル基、スルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、n−ドデカンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基)、アミノ基(例えばジメチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−ドデシルアミノ基等のアルキルアミノ基、アニリノ基、p−t−オクチルアニリノ基等のアリールアミノ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ヘプタフルオロプロパンスルホニルアミノ基、n−ヘキサデシルスルホニルアミノ基等のアルキルスルホニルアミノ基、p−トルエンスルホニルアミノ基、ペンタフルオロベンゼンスルホニルアミノ等のアリールスルホニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(例えばN,N−ジメチルスルファモイルアミノ基等のアルキルスルファモイルアミノ基、N−フェニルスルファモイルアミノ基等のアリールスルファモイルアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ミリストイルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等アリールカルボニルアミノ基)、ウレイド基(例えばN,N−ジメチルアミノウレイド基等のアルキルウレイド基、N−フェニルウレイド基、N−(p−シアノフェニル)ウレイド基等のアリールウレイド基)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基及びp−トルエンスルホニル基等のアリールスルホニル基)、スルファモイル基(例えばジメチルスルファモイル基、4−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブチルアミノスルホニル基等のアルキルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等のアリールスルファモイル基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、t−オクチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)及び複素環チオ基(例えば1−フェニルテトラゾール−5−チオ基、5−メチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−チオ基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記に示した置換基によってさらに置換されていてもよい。
12、R13、及びR22、R23はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよく、形成される環構造としては脂肪族環、芳香族環のいずれでもよく、炭化水素環であっても複素環であってもよい。これら結合して形成された環も、上記に示した置換基によって置換されていてもよいし、更に別の環構造と縮合していてもよく、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物そのものと更に縮合していてもよい。
12、R13、及びR22、R23の置換基の例としては上記のものが挙げられるが、好ましいものはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基であり、更に好ましくは水素原子、置換または無置換アルキル基である。
11、及びR21は任意の置換基を表し、上述したR12、R13、及びR22、R23と同様の置換基とすることが可能であるが、少なくとも1つ以上は電子吸引性の置換基であることが好ましく、その場合、nは1〜4の整数を表す。電子吸引性の置換基である場合、ハメットの置換基定数σpの値が0.1以上、0.8以下の置換基であることが好ましく、更には、置換基のσp値の総和が0.2以上、2.0以下であることが好ましく、0.25以上、1.5以下であることが最も好ましい。
ここでいうハメットの置換基定数σpの値としては、Hansch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16、1207(1973);ibid.20、304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
例えば、σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えばトリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環アシル基(例えばホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えばトリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、置換芳香族基(例えばペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、複素環残基(例えば2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えばフェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えばジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えばN−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)などが挙げられる。
σpの値が0.35以上の置換基としてはシアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、弗素置換アルキル基(例えばトリフルオロメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環アシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えばトリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、弗素またはスルホニル基置換芳香族基(例えばペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル)、複素環残基(例えば1−テトラゾリル)、アゾ基(例えばフェニルアゾ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えばジメトキシホスホリル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基などが挙げられる。
σpの値が0.60以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えばトリフルオロメタンスルホニル、ジフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)などが挙げられる。
11、及びR21として好ましいのは、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基(トリフルオロメチル基等)、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基である。
一般式(1)または一般式(2)の化合物には、該一般式で表される化合物そのものの他に、該化合物から誘導されるイオン及び塩を含む。例えば分子構造中にスルホン酸基を有している場合には、該化合物の他にスルホン酸基が解離して生じる陰イオン、及び該陰イオンと対陽イオンとで形成される塩を含む。このような塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属イオンと形成した塩であっても良いし、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、アニリン、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基と形成した塩であっても良い。分子内に塩基性基を有する化合物の場合も同様に該化合物がプロトン化されて生成する陽イオン、及び塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、メチルスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの、酸と形成した塩である場合も含まれる。
以下に、本発明における一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の内容がこれら例示化合物に限定されるものではない。
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本発明の上記化合物は、例えばエフ・エム・ハーマ著「シアニン・ダイズ・アンド・リレーテッド・コンパウンズ」(1964,インター・サイエンス・パブリッシャーズ発刊)、米国特許第2,454,629号、同2,493,748号、特開平6−301136号、同2003−203684号等に記載された従来公知の方法を参考にして合成することができる。
これらの色素は、吸光係数が大きくかつ繰り返しの酸化還元に対して安定であることが好ましい。また、上記色素は金属酸化物半導体上に化学的に吸着することが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ホスフィン基などの官能基を有することが好ましい。
本発明において、半導体多孔質膜層に色素を吸着させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、色素を有機溶剤に溶解して色素溶液を調製し、得られた色素溶液に透明導電膜上の半導体層を浸漬する方法、または得られた色素溶液を半導体層表面に塗布する方法などが挙げられる。前者においてはデイプ法、ローラ法、エヤーナイフ法などが適用でき、後者においてはワイヤーバー法、アプリケーション法、スピン法、スプレー法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などが適用できる。なお、色素の吸着に先立って、半導体層の表面を予め減圧処理や加熱処理など処理を施し、表面を活性化し膜中の水分を除去する工程を有しても良い。
半導体層への増感効果を好ましく得る観点から、半導体膜を色素の溶液に浸漬する時間は、3時間〜48時間が好ましく、更に好ましくは、4時間〜24時間である。
また、浸漬にあたり色素溶液は、色素が分解しないかぎりにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10℃〜50℃、とくに好ましくは15℃〜35℃であるが、前記のとおり溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。また、沸騰する上限で吸着させる場合は、還流装置などを用いて溶媒が枯渇しない条件で吸着処理を行うことが好ましい。
また、半導体膜を浸漬した色素溶液に超音波照射を行うこともできる。超音波照射は市販の装置を用いることができ、また、照射時間としては、好ましくは30分〜4時間であり、更に好ましくは1時間〜3時間である。
色素溶液に用いる溶媒は、色素を溶解するものであればよく、従来公知の溶媒を用いることができる。また、当該溶媒は、常法に従って精製された溶媒、また溶媒の使用に先立って、必要に応じて蒸留および/または乾燥を行い、より純度の高い溶媒であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、1種又はそれ以上の疎水性溶媒、非プロトン性溶媒、疎水性かつ非プロトン性の溶媒またはそれらの混合物が挙げられる。ここで、疎水性溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル等のエステル類等、並びにそれらの組合せた混合溶媒等が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の窒素化合物類;二硫化炭素、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;ヘキサメチルホスホルアミド等のリン化合物類、並びにそれらの組み合せが挙げられる。好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、窒素化合物類であるアセトニトリルであり、特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトニトリルである。
色素溶液中の色素の濃度は、使用する色素、溶媒の種類、色素吸着工程により適宜調整することができ、例えば、1×10-5モル/リットル以上、好ましくは5×10-5〜1×10-2モル/リットル程度が挙げられる。
尚、色素の吸着量が少ないと増感効果が不十分になり、逆に吸着量が多いと酸化物半導体に吸着していない色素が浮遊して、これが増感効果を減じ、光電変換効率の低下をもたらす原因となるので好ましくない。上記のことから、未吸着の色素を洗浄により速やかに除去するのが好ましい。洗浄溶剤としては、色素の溶解性が比較的低く、かつ乾燥しやすい溶剤が好ましい。また、洗浄は加熱状態で行うのが好ましい。また、洗浄により余分な色素を除去した後、色素の吸着状態をより安定にするために、酸化物半導体微粒子の表面を有機塩基性化合物で処理して、未反応色素の除去を促進させてもよい。有機塩基性化合物としては、ピリジン、キノリンなどの誘導体が挙げられる。これら化合物が液体の場合にはそのまま用いてもよいが、固体の場合には溶剤、好ましくは色素溶液と同一の溶剤に溶解して用いてもよい。
本発明の色素を2種以上用いる場合は、混合する色素の比率は特に限定は無く、それぞれの色素より最適化し選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき10%モル程度以上使用するのが好ましい。色素を2種以上併用する場合の具体的方法としては、混合溶解して吸着させても、色素を半導体層に順次吸着させても良い。また、予め色素を吸着させた半導体を後工程で積層する構成でも良い。併用する色素を混合し溶解した溶液を用いて酸化物半導体層に色素を吸着する場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。色素を混合して使用する場合の溶媒としては前記したような溶媒が使用可能である。併用する色素それぞれについて溶液を調製し半導体層に吸着させる場合も、溶媒としては前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。各色素について別々の溶液を調製し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、第1の色素を浸漬吸着させた半導体層をその色素の良溶媒で表層を軽く洗浄し、続く工程で第2の色素を浸漬吸着させることで多層吸着とすることができる。
酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために包摂化合物の共存下、色素を担持することが効果的である。ここで包摂化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものとしてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。また、色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体層表面を処理しても良い。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体微粒子薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
<導電性基材>
本発明で用いられる導電性基材1は実質的に透明であることが好ましく、所謂透明導電性基材であることが重要である。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。導電性基材とはそれ自体が導電性を有する基材、またはその表面に導電層を有する基材を利用することができる。後者の場合、基材としてはガラス板や、酸化チタンやアルミナなどのセラミックの研磨板、更に公知の種々のプラスチックシートを使用することが可能である。
具体的なプラスチックシートの例としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリステレン(SPS)、ポリカーボネート(PC),ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、環状ポリオレフィン、フェノキシ樹脂、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。本発明においてはプラズマ照射工程で高温下にさらされるため、より軟化点の高いプラスチックシートを用いることが好ましく、軟化点は好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上である。軟化点はJIS−K7206のビカット軟化点を測定することで評価することができる。
図1中、光透過性基材11上に設ける導電層12に使用する導電性材料は、種々公知の金属や金属酸化物等からなる無機系導電性材料、ポリマー系導電性材料、無機有機複合型の導電性材料、またはこれらを任意に混合した導電性材料など、あらゆるものを使用することができる。
無機系導電性材料として具体的には、白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、導電性カーボン、更にスズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛(ZnO2)等の金属酸化物を挙げることができる。ポリマー系導電性材料として具体的には、各種チオフェン、ピロール、フラン、アニリンなどの誘導体を重合させてなる導電性ポリマーやポリアセチレン等を挙げることができるが、導電性が高い観点からポリチオフェンが好ましく、特にポリエチレンジオキシチオフェン類(PEDOT/PSS)が好ましい。
基材上に導電層を形成する方法としては、導電性材料に応じた公知の適切な方法を用いることが可能で、例えば、ITOなどの金属酸化物からなる導電層を形成する場合、スパッタ法、CVD法、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法などの薄膜形成法が挙げられる。また、ポリマー系導電性材料からなる導電層を形成する場合は、公知の様々な塗布法により形成することが好ましい。
導電層の膜厚は0.01μm〜10μm程度が好ましく、0.05μm〜5μm程度が更に好ましい。
導電性基材としては表面抵抗が低いほど良く、具体的には50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることが更に好ましい。
また、導電性基材の集電効率を向上し更に導電性を上げるために、光透過率を著しく損なわない範囲の面積率で、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、インジウム、チタン、タングステンなどからなる金属配線層を前記導電層と併用してもよい。金属配線層を用いる場合、格子状、縞状、櫛状などのパターンとして、光が導電性基材を均一に透過するように配設するとよい。金属配線層を併用する場合、基材に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上に前記導電層を設けるのが好ましい。
色素増感型太陽電池においては、前記光透過性基材上に設けた導電層とセル中に封止された電解質との短絡による開放電圧の低下を抑制するため、透明導電性基材の上に金属酸化物などを数nm〜数十nm程度形成させておくことが好ましい。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウムなどを上げることが出来、これらを単体もしくは混合した膜を、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ディップコート法などを用いて形成させておくことが望ましい。
<電荷移動層>
電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する層である。本発明で用いることのできる代表的な電荷輸送材料の例としては、酸化還元対イオンが溶解した溶剤や酸化還元対イオンを含有する常温溶融塩などの電解液、酸化還元対イオンの溶液をポリマーマトリクスや低分子ゲル化剤等に含浸したゲル状の擬固体化電解質、更には高分子固体電解質等が挙げられる。また、イオンが関わる電荷輸送材料の他に、固体中のキャリア移動が電気伝導に関わる材料として、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料を挙げることもでき、これらは併用してすることも可能である。
電荷移動層に電解液を使用する場合、含有する酸化還元対イオンとしては、一般に公知の太陽電池などにおいて使用することができるものであれば特に限定されない。
具体的には、I-/I3-系、Br2-/Br3-系等の酸化還元対イオンを含有させたもの、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオン、コバルト錯体などの金属錯体等の金属酸化還元系、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ハイドロキノン/キノン等の有機酸化還元系、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物などを挙げることができる。ヨウ素系として更に具体的には、ヨウ素とLiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物との組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物や4級イミダゾリウム化合物のヨウ素塩などとの組み合わせなどが挙げられる。臭素系として更に具体的には、臭素とLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物との組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩などとの組み合わせなどが挙げられる。
溶剤としては電気化学的に不活性で、粘度が低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く有効キャリア濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、更にテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、スルフォランなど非プロトン極性物質などを用いることができる。
好ましい電解質濃度は0.1M/L以上15M/L以下であり、更に好ましくは0.2M/L以上10M/L以下である。また、ヨウ素系を使用する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01M/L以上0.5M/L以下である。
溶融塩電解質は、光電変換効率と耐久性の両立という観点から好ましい。溶融塩電解質としては、例えばWO95/18456号、特開平8−259543号、特開2001−357896号、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩を含む電解質を挙げることができる。これらの溶融塩電解質は常温で溶融状態であるものが好ましく、溶媒を用いない方が好ましい。
オリゴマ−及びポリマー等のマトリックスに電解質あるいは電解質溶液を含有させたものや、ポリマー添加、低分子ゲル化剤やオイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(擬固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合は、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合は、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。また、ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマーおよび架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、含窒素複素環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環など)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネートなど)である。電解質の濃度は通常0.01〜99質量%で好ましくは0.1〜90質量%程度である。
また、ゲル状電解質としては、電解質と、金属酸化物粒子および/または導電性粒子とを含む電解質組成物を用いることもできる。金属酸化物粒子としては、TiO2、SnO2、WO3、ZnO、ITO、BaTiO3、Nb25、In23、ZrO2、Ta25、La23、SrTiO3、Y23、Ho23、Bi23、CeO2、Al23からなる群から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられる。これらは不純物がドープされたものや複合酸化物などであってもよい。導電性粒子としては、カーボンを主体とする物質からなるものが挙げられる。
次に、高分子電解質としては、酸化還元種を溶解あるいは酸化還元種を構成する少なくとも1つの物質と結合することができる固体状の物質であり、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンスルフィドなどの高分子化合物またはそれらの架橋体、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイドなどの高分子官能基に、ポリエーテルセグメントまたはオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として付加したものまたはそれらの共重合体などが挙げられ、その中でも特にオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として有するものやポリエーテルセグメントを側鎖として有するものが好ましい。
前記の固体中に酸化還元種を含有させるには、例えば、高分子化合物となるモノマーと酸化還元種との共存下で重合する方法、高分子化合物などの固体を必要に応じて溶媒に溶解し、次いで、前記の酸化還元種を加える方法等を用いることができる。酸化還元種の含有量は、必要とするイオン伝導性能に応じて、適宜選定することができる。
本発明では、溶融塩などのイオン伝導性電解質の代わりに、有機または無機あるいはこの両者を組み合わせた固体の正孔輸送材料を使用することができる。有機正孔輸送材料としては、芳香族アミン類やトリフェニレン誘導体類、更にポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレン)およびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリトルイジンおよびその誘導体等の導電性高分子を好ましく用いることができる。正孔(ホール)輸送材料にはドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO22N]のような塩を添加しても構わない。無機正孔輸送材料としては、p型無機化合物半導体を用いることができる。この目的のp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。好ましいp型無機化合物半導体は一価の銅を含む化合物半導体であり、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。p型無機化合物半導体を含有する電荷移動層の好ましいホール移動度は10-4cm2/V・sec以上104cm2/V・sec以下であり、更に好ましくは10-3cm2/V・sec以上103cm2/V・sec以下である。また、電荷輸送層の好ましい導電率は10-8S/cm以上102S/cm以下であり、更に好ましくは10-6S/cm以上10S/cm以下である。
本発明において、電荷移動層4を半導体電極とカソード電極5との間に形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、半導体電極とカソード電極とを対向配置してから両電極間に前述した電解液や各種電解質を充填して電荷移動層4とする方法、半導体電極またはカソード電極の上に電解質や各種電解質を滴下あるいは塗布等することにより電荷移動層4を形成したのち電荷移動層4の上に他方の電極を重ね合わせる方法、電荷移動層以外を封止したセルの電極に電解質注入用の穴を設け、そこから電解質を注入して電荷移動層4を形成させる方法等を用いることができる。また、半導体電極とカソード電極との間から電解質が漏れ出さないようにするため、必要に応じて半導体電極とカソード電極との隙間にフィルムや樹脂を用いて封止したり、半導体電極と電荷移動層4とカソード電極5を適当なケースに収納したりすることも好ましい。
前者の形成方法の場合、電荷移動層の充填方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、または常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
後者の形成方法の場合、塗布方法としてはマイクログラビアコーティング、ディップコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング等を用いることができる。湿式の電荷移動層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置を施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法があり、その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。
固体電解質や固体の正孔(ホール)輸送材料の場合には真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷移動層を形成し、その後カソード電極を付与することもできる。具体的には、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができ、必要に応じて基材を任意の温度に加熱して溶媒を蒸発させるなどにより形成する。
電荷移動層の厚さは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に1μm以下であることが好ましい。また電荷移動層の導電率は1×10-10S/cm以上であることが好ましく、1×10-5S/cm以上であることが更に好ましい。
<カソード電極>
本発明で使用できるカソード電極は、前述した導電性基材と同様に、それ自体が導電性を有する基材の単層構造、またはその表面に対極導電層を有する基材を利用することができる。後者の場合、対極導電層に用いる導電性材料、基材、更にその製造方法としては、前述した導電性基材1の場合と同様で、公知の種々の材料及び方法を適用することができる。その中でも、I3−イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものを使用することが好ましく、具体的には白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。また、前述と同様にコスト面や可撓性を考慮すると、プラスチックシートを基材として使用し、導電性材料としてポリマー系材料を塗布して使用することも好ましい態様の1つである。
対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層が金属である場合は、その厚さは好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは10nm〜3μmの範囲である。カソード電極の表面抵抗は低い程よく、具体的には表面抵抗の範囲としては50Ω/□以下であることが好ましく、20Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが更に好ましい。
前述した導電性基材1とカソード電極5のいずれか一方または両方から光を受光してよいので、導電性基材とカソード電極の少なくとも一方が実質的に透明であれば良い。発電効率の向上の観点からは、導電性基材を透明にして、光を導電性基材側から入射させるのが好ましい。この場合カソード電極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このようなカソード電極としては、金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
カソード電極は、前述した電荷移動層上に直接導電性材料を塗布、メッキまたは蒸着(PVD、CVD)するか、対極導電層を有する基材の導電層側または導電性基材単層を貼り付ければよい。また、導電性基材の場合と同様に、特にカソード電極が透明の場合には、金属配線層を併用することも好ましい態様のひとつである。
対極としては導電性を持っており、レドックス電解質の還元反応を触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス、もしくは高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着し、導電性微粒子を塗り付けたものが用いうる。
《半導体微粒子ペーストの調製》
半導体多孔質膜層は、半導体微粒子を含有するペーストを透明導電性基板上に積層塗布し、乾燥させた後に焼成させて作製した。以下、それぞれ半導体微粒子の分散ペーストを準備した。
〔ペーストAの調製〕
テトライソプロポキシチタン(東京化成工業社製)28gに酢酸6gを滴下し、しばらく撹拌した後に0.1M硝酸を150ml加え、80℃まで昇温して5時間撹拌させた。得られた分散液にさらに純水を200ml加え、チタンカップを内包したオートクレーブ中で250℃高圧下12時間処理した。その後、SMT社製超音波分散機UH−300を用いて10分間間欠分散した後、遠心分離〜上澄み除去を繰り返しエタノールに置換した。ロータリーエバポレーターを用いて、最終的な固形分が15質量%となるまで調整し、30質量%のポリエチレングリコール(関東化学社製、分子量20000)水溶液を20g、活性剤(花王社製、エマルゲン120)0.5gを加えた。得られたペースト状分散液を、EXAKTテクノロジーズ社製3本ロールミルEXAKT80を用いて分散し、半導体微粒子分散ペーストAを調製した。
〔ペーストBの調製〕
前記テトライソプロポキシチタンに加えて、ペンタエトキシニオブ(高純度化学研究所社製)0.38gを混合した以外は前記ペーストAと同様にして半導体微粒子分散ペーストBを調製した。
〔ペーストCの調製〕
前記ペーストAのテトライソプロポキシチタンに加えて、テトラブトキシジルコニウム(高純度化学研究所社製)0.38gを混合した以外は前記ペーストAと同様にして半導体微粒子分散ペーストCを調製した。
〔ペーストDの調製〕
前記ペーストAのテトライソプロポキシチタンに加えて、テトラブトキシジルコニウム(高純度化学研究所社製)0.76gを混合した以外は前記ペーストAと同様にして半導体微粒子分散ペーストDを調製した。
《伝導帯およびLUMOのエネルギー準位評価》
上記で作製したペーストA〜Dに関し、それぞれのペーストを乾燥させ、500℃で60分間焼成して半導体粉末を得て、紫外線光電子分光装置(UPS)を用いて半導体の価電子帯(VB)を求め、別途、拡散反射紫外可視吸収スペクトルの吸収端からバンドギャップ(Eg)を求めることで、その差から伝導帯(CB)のエネルギー準位を算出した。その結果、ペーストAから得た半導体に対し、ペーストBがより高く、ペーストBよりもペーストCがより高く、更にペーストCよりもペーストDが伝導帯のエネルギー準位がより高い結果となった。
また同様にして、下記化合物Aと化合物Bに示す色素についてもLUMOのエネルギー準位を見積もった。その結果、化合物A<化合物Bの順でLUMOのエネルギー準位が高い色素であることがわかった。
Figure 2009016236
《色素増感型太陽電池の作製》
〔SC−01の作製〕
フッ素をドープした酸化スズを導電層としてコートした透明導電性ガラス基板に、高周波マグネトロンスパッタリング装置を用い、酸化チタンをターゲット材に10nmの半導体膜を形成させた。その上から、上記ペーストAをスクリーン印刷法にて塗布し、自然乾燥の後、同様にして光反射層用の酸化チタンペースト(触媒化成工業社製HPW−400C)を印刷した。前記ペーストAにより形成される半導体多孔質膜の膜厚は約12μm、光反射層は2μm膜厚となるように、スクリーン印刷法で重ね印刷することで調製した。
自然乾燥させた後、150℃の乾燥ゾーンに10分かけて通し、形成した半導体多孔質膜を5mm×5mm(有効面積0.25cm2)になるように周囲を削りとり、更に電気炉を用いて500℃で60分間焼成して、基板上に酸化チタンからなる半導体多孔質膜層を形成した。電気炉での焼成後、80℃程度まで冷却したところで、色素増感型太陽電池用のルテニウム錯体色素化合物A(N719)の3.0×10-3mol/L、アセトニトリル:t−ブタノール=1:1の溶液に24時間浸漬し、色素吸着後、前記のアセトニトリル:t−ブタノール溶液で過剰な色素を十分に洗い落とし、真空乾燥して色素を吸着させた半導体多孔質膜層を作製した。
カソード電極として、ITOガラス基板上に白金を真空蒸着し電解質を注入するための穴を設けた。前記半導体多孔質膜層と前記カソード電極とを6.5mm角の穴を開けた25μm厚のシート状スペーサー兼封止材(SOLARONIX社製SX−1170−25)を用いて張り合わせ、カソード電極に設けた電解液注入穴から、体積比が1:4であるアセトニトリル:炭酸エチレンの混合溶媒にテトラプロピルアンモニウムアイオダイド、沃素、t−ブチルピリジンとを、それぞれの濃度が0.46モル/リットル、0.06モル/リットル、0.50モル/リットルとなるように溶解したレドックス電解液を入れた電荷移動層を注入し、ホットボンドで穴を塞ぎ、上から前記封止剤を用いてカバーガラスを貼り付け封止した。前期透明導電性ガラス基板の受光面側に反射防止フィルム(コニカミノルタオプト社製ハードコート/反射防止タイプセルロース系フィルム)を張り合わせ、色素増感型太陽電池封止セルSC−01を作製した。
〔SC−02の作製〕
前記SC−01の作製において、透明導電性ガラス基板側から順にペーストA、ペーストB、ペーストCをそれぞれ均等な膜厚になるよう積層し、ペーストA〜Cの積層膜厚が12μmと成るように半導体多孔質膜層を形成した以外は前記SC−01と同様にSC−02を作製した。
〔SC−03の作製〕
前記SC−02の作製において、色素を化合物Bに示す色素に置き換えた以外は前記SC−01と同様にSC−03を作製した。
〔SC−04の作製〕
前記SC−02の作製において、化合物Aおよび化合物Bを等molずつ混合した、3.0×10-3mol/Lの色素溶液を用いた以外は前記SC−01と同様にSC−04を作製した。
〔SC−05の作製〕
前記SC−04の作製において、透明導電性ガラス基板側から順にペーストC、ペーストB、ペーストAをそれぞれ均等な膜厚になるよう積層した以外は前記SC−04と同様にSC−05を作製した。
〔SC−06の作製〕
前記SC−01の作製において、透明導電性ガラス基板側から順にペーストA、ペーストC、ペーストDをそれぞれ均等な膜厚になるよう積層し、ペーストA、C、Dの積層膜厚が12μmと成るように半導体多孔質膜層を形成し、また、前記SC−04と同様に色素吸着させた以外は前記SC−01と同様にSC−06を作製した。
〔SC−07の作製〕
前記SC−06の作製において、化合物Aに示した色素を吸着したのち、アセトンで半導体多孔質膜の表層付近を洗浄し、続いて化合物Bに示した色素の3.0×10-3mol/Lアセトニトリル:t−ブタノール=1:1溶液に浸漬させた以外は前記SC−06と同様にしてSC−07を作製した。
《太陽電池の光電変換特性評価》
上記方法で作製した太陽電池セルについて、ソーラーシミュレーター(日本分光社製、低エネルギー分光感度測定装置CEP−25)により、AM1.5フィルタ、100mW/m2の強度の光を照射した時の特性を測定し、短絡電流Jsc(mA/cm2)および開放電圧値Voc(V)を、同じ構成および作製方法で3つ評価し平均値を表1に示した。またJsc、VocとFF(フィルファクター)から光電変換効率η(%)を求め同じく表1に示した。
Figure 2009016236
表1から、本発明の実施によって更に高効率な色素増感型太陽電池が達成できていることがわかる。具体的には、本発明の実施例SC−04では、伝導体のエネルギー準位が異なる半導体組成を積層し、且つ、2種以上の色素を併用することによって、比較例のSC−01〜SC−03に対して特にJscの向上が見られた。これは、エネルギー準位が異なる半導体組成を、SC−04とは逆に積層した比較例SC−05の構成が、予想通り逆効果であったことからも本発明の効果が確認できた。また、SC−06では、金属ドーパントの量を変化させることで伝導体のエネルギー準位をコントロールする水準としたが、この構成でも同様に本発明の効果が得られた。更に、SC−07では増感色素を複層吸着させることで更なるJscの向上が見られ、また興味深いことに取り出し電圧のVocにも効果が見られることが明らかとなった。これは、半導体の伝導体エネルギー準位に最適なLUMOレベルを有する色素との組み合わせで初めて見出される効果だと考えられる。
図1は本発明の色素増感型太陽電池の基本構造を示す概略断面図である。 図2は本発明に掛かる、半導体の伝導帯エネルギー準位と、増感色素のLUMOレベルの関係を模した図である。
符号の説明
1 導電性基材
11 光透過性基材
12 導電層
2 半導体多孔質膜層
21 光吸収層
22 光反射層
3 色素
4 電荷移動層
5 カソード電極
6 対向基板
7 封止材

Claims (6)

  1. 透明導電性基板の表面に、少なくとも増感色素を吸着させた半導体多孔質膜層からなる層を形成させたアノード電極と、該アノード電極の半導体多孔質膜層の側に対向するカソード電極、及び前記アノード電極とカソード電極の2枚の電極間に電解質を封止した構成を有する色素増感型太陽電池において、該半導体多孔質膜層が伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成からなり、且つ、前記透明導電性基板に向かって段階的にもしくは連続的に伝導帯のエネルギー準位が低くなるように積層され、更に、前記半導体多孔質膜層に少なくとも2種以上の増感色素が吸着していることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 前記増感色素が、少なくともLUMOレベルの異なる2種以上の色素からなることを特徴とする請求項1記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記増感色素の少なくとも1種が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示される色素であることを特徴とする請求項1又は2記載の色素増感型太陽電池。
    Figure 2009016236
    (式中、X11〜X14及びX21〜X26は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子のいずれかを表し、R12、R13、及びR22、R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、複素環オキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホキシル基、スルホニルオキシ基、アミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基又は複素環チオ基を表し、これらの置換基は上記に示した置換基によってさらに置換されていてもよい。また、R12、R13、及びR22、R23はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。R14は−COOH基または−PO32基を表し、R24、R26は水素原子、−COOH基または−PO32基を表し、少なくとも1つは−COOH基または−PO32基を表す。L11、及びL21、L22はそれぞれ独立にメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を表す。R15、及びR25は置換または無置換アルキル基を表す。R11、及びR21は上述したR12、R13、及びR22、R23と同義の基を表す。nは1〜4の整数を表す。)
  4. 前記伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成が、少なくとも1種は金属ドープにより形成され、且つ、該金属ドープされた半導体組成は、それぞれが異なる元素種の金属ドープからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成が、少なくとも2種はそれぞれの金属ドーパントのドープ量が異なる半導体組成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の色素増感型太陽電池。
  6. 前記伝導帯のエネルギー準位が異なる少なくとも2種以上の半導体組成が、少なくとも1種は酸化チタン単独組成からなり、且つ、該酸化チタンは最も伝導体のエネルギー準位が低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の色素増感型太陽電池。
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